第2章 パートナーシップ事業

I.目的

本章においては、平成18年度「交通事故被害者サポート事業」のうち、「パートナーシップ事業」について報告する。

本年度は、昨年度までに自助グループを立ち上げた支援センターのうち、(社)いばらき被害者支援センター、(社)秋田被害者支援センター及びNPO法人長崎被害者支援センターにおいて自助グループの継続支援を実施するとともに、当事業において自助グループを立ち上げたすべての支援センターが参加して自助グループ連絡会議を実施した。

以下、その概要を紹介する。

表2-1 継続支援・連絡会議開催日程表
  いばらき 秋田 長崎 石川 大阪 愛知
パートナーシップ事業 継続支援 12月12日 12月8日

12月9日
12月9日

12月10日
     
連絡会議 12月18日〜12月19日(於:東京)

II.自助グループ継続支援

自助グループ継続支援は、平成18年12月に(社)秋田被害者支援センター、NPO法人長崎被害者支援センター及び(社)いばらき被害者支援センターにおいて実施したが、その内容は以下のとおりである。

1.(社)秋田被害者支援センター

(1)事前打ち合わせの実施

平成18年12月8日(金)11時30分から12時30分まで、北都銀行別館会議室において、自助グループメンバー1名、(社)被害者支援都民センター4名、(社)秋田被害者支援センター(以下「秋田」という)7名、秋田県警察(臨床心理士)2名が参加して行われた。

まず自己紹介と担当業務の説明があり、その中で、今回始めて秋田の支援員がファシリテーターを務めることも説明された。その後、会で取り上げたい内容や進め方、ファシリテーターからの要望、被害者と支援者側の参加人数のバランスについて、会の内容の記録について等が話し合われた。

(2)自助グループの会の開催

平成18年12月8日(金)13時20分から15時30分まで、北都銀行別館会議室において、自助グループメンバー3名、(社)被害者支援都民センター4名、秋田3名、秋田県生活環境文化部県民文化政策課総合的対応窓口担当者(以下「県の窓口担当者」という)1名、県警臨床心理士1名が参加して行われた。

まず、今回ファシリテーターを秋田の支援員が行うことが告げられ、その後自助グループの今年度の活動報告と、会の約束事を読み上げての確認があった。続いて参加者が自己紹介及び被害概要について話し、その中では、「ここでは、これまで誰にも話せず溜めてきたものを話すことができて楽になれる」「自助グループで初めて同じ思いをしている人達に出会えてほっとした」等、被害者同士が集まって話をすることの重要性が語られた。また、事件後の年数が様々である参加者の話を聞くことで、多くのことを得られるという話もあった。その後は以下の内容について話された。

1.加害者に対する思い

事件からの年数や加害者の謝罪の有無などには関わらず、加害者のことを意識し、事件についてどう思っているのか、きちんと更生しているのかが気になるとの話があった。中でも加害者が再び車の運転をしているのかどうかは特に気になる事であり、そのことを含めた加害者のその後の様子をぜひ教えてもらえるようにして欲しいという意見も出た。その他、加害者やその家族の態度や言葉による二次被害への憤りや、加害者が謝罪に来ても来なくても、いずれにしても心が乱される遺族の複雑な心境などが語られた。

2.被害者と世間一般との意識のギャップについて

世間がまだまだ被害者の立場に立っては物事を考えていないという話が、親戚など周囲の人だけでなく、警察官や検事からまでも「加害者も被害者」「加害者にも生活があるのだから免許が必要」などの発言を受けて深く傷付いたとの体験等を交えて語られ、その意識のギャップに気付かせないと、現在のような、加害者に甘い車社会の常識は変わっていかないという話があった。

3.被害者支援における行政の役割、各機関との連携

まず県の窓口担当者から、県としてはまだどのように被害者支援を進めていくのかという方向性が定まっていないという現状についての説明があった。それに対して被害者からは、遺族はこれまで行政が役割を担ってくれることを、生きるのに精一杯という状態で待ち続けてきたこと、そして様々な機関が秋田市内に集中しており、そこまでたどり着けない被害者もたくさんいることなどが語られた。そして、多くの被害者の声を聴きながら、緊張感を持って一日も早く県および各地区の窓口を整えて欲しいとの要望があげられた。

また、秋田や県警との連携については、まだ繋がりがない現状に対し、行政が責任をもってイニシアティブをとって欲しいとの意見があった。県警からは、地区行政の理解不足が被害者を苦しめていること、(社)被害者支援都民センターからは、行政と警察と被害者支援センターはそれぞれに果たすべき役割が違うので、それを分担していくことが必要ではないかとの話があった。

最後に県の窓口担当者から、被害者や関係機関の率直な意見を聞き、行政にはどのような役割が求められているのか、どのような方向に進むべきなのかが見えてきたこと、今後も協力を願い、県としての支援を確立させていきたいと考えていることが述べられた。

(3)フォローアップの実施

自助グループ終了後、15時50分から16時50分まで、北都銀行別館会議室において、自助グループメンバー1名、(社)被害者支援都民センター4名、秋田7名、県警臨床心理士2名が参加して行われた。

まずファシリテーターから会の進行についての話があり、続いて自助グループメンバーから、支援者が多数同席したにもかかわらず、メンバーがほぼ普段通りに話せていたとの感想が述べられた。その後(社)被害者支援都民センターから、会の進行上で気付いた点についての助言があり、更に自助グループと被害者支援センターとの連携に関する問題点が、双方の連携がより良い被害者支援には欠かせないという内容と共に語られた。

(4)秋田からの報告
1.被害者支援センターの活動状況

秋田は、「犯罪被害者等早期援助団体」に秋田県公安委員会から平成17年4月1日に指定され、警察情報に基づく直接支援活動を実施している。

電話相談活動は、平成18年4月よりフリーダイヤルを通年で実施し、平成18年11月まで177件受理し、内交通事故関係については、損害賠償や示談などの相談が多く寄せられ、専門機関等への紹介をしている。

直接支援は、司法機関への付添や病院付添いと子供の世話等を実施している。直接支援については、関係機関と連携しながら円滑に対応できる体制づくりに努めている。

平成18年11月25日には、犯罪被害者等に対する国民の理解を深めるため「犯罪被害者週間国民のつどい秋田大会」を内閣府、秋田県、秋田の共催により、約300名の県民参加のもと開催した。大会では、秋田交通死亡事故被害者の会の代表がパネリストとして参加し、被害者の心情を広く県民に伝える機会となった。

また、平成18年2月には「秋田県犯罪被害者等支援基本計画」が制定され、県における「犯罪被害者等に対する総合的対応相談窓口」や市町村にも同様の窓口が設けられ、官民上げての支援体制づくりをはじめた。

「秋田交通死亡事故被害者の会」に対する支援については、平成16年の設立以来、支援員の派遣、会場の提供・確保、資金の支援など後方的支援を行っている。新規参加希望者については、秋田が申し込みの窓口となっているが、自助グループに参加することで、被害者の被害回復に役立つかどうかについては、自助グループの代表者が面接のうえ判断している。秋田の支援員は、自助グループによる語り合いの場にこれまで内閣府事業以外に同席することはなかったが、自助グループ代表者の意向により、平成18年度から設立以来係わっている支援員が同席するようになった。

平成17年には、秋田市以外でも自助グループを開催し、日頃参加出来ない被害者も参加した。平成18年は、横手市と能代市で自助グループを開催した。また、秋には秋田市郊外へのリンゴ狩りや小旅行を行い、秋田の支援員も同行し、日頃の活動とは違う交流を深めた。

秋の交通安全キャンペーンでは、自助グループ参加者からのメッセージを展示し、自助グループとして自主的な活動を行った。また、「犯罪被害者週間国民のつどい秋田大会」では、会場内で実施したパネル展示に協力し、来場した県民の交通事故被害者の心情について理解を深める一助になった。このような広報啓発活動に際しては、自助グループを日頃担当し支援している支援員以外の支援員も積極的に関わり協力している。

2.継続研修を受けた感想

秋田としては、平成18年を含み4回目の継続研修であった。当日は、支援員7名が出席し、内3名が自助グループに参加、4名が準備や会場への案内などをした。当日の事前打ち合わせやフォローアップには、支援員全員が出席した。

今回初めて、秋田の支援員が、ファシリテーターを務めた。終了後(社)被害者支援都民センターからは、自助グループの実施や会の進行上気づいた点について具体的な助言があった。参加者からは、自助グループ活動をより向上させるためには、この経験を無駄にすることなく、支援活動に活かしたいとの感想が述べられた。また、今後は、ファシリテーターの育成を目的とした研修も必要であると痛感した。

東京の継続研修では、「自助グループは被害者支援センターの支援の一環であり、回復の程度に応じて提供する支援内容の一つである」と述べられた。支援を実施している各センターの取り組みは、地域の実状に即したものであり多少の相違点も見られたが、センター内の共通認識を図り、被害者の被害回復に役立つ支援を目指していきたいと感じた。

3.自助グループ活動における今後の方針及び課題等

「秋田交通死亡事故被害者の会」及び秋田は、内閣府の自助グループ立ち上げ支援事業を、自助グループ活動の研修の場と捉え、これまで研鑽を積んできた。その結果、「秋田交通死亡事故被害者の会」としては、これまでの研修が活かされ、非常に質の高い自助グループになったと考えている。

しかし、継続研修の中では、自助グループの参加者に対する支援員同士の共通認識の確立や支援の体制をどのように整備していくべきかという課題が再度提示された。(社)被害者支援都民センターからは、「センターが早期介入から継続的支援につながる支援体制を確立すること、その体制の中に自助グループを位置付け、支援の一環としての自助グループの役割を認識することが大切である。また、支援員が自助グループに参加することにより、個々の支援員の質の向上とより適切な支援を提供することにもつながる。」と、秋田における支援方針の見直しと自助グループ支援体制の確立を優先課題とすることをフォローアップで助言された。

現在、県内には交通事故以外の自助グループは存在しないが、将来様々な被害に対する自助グループが組織された場合、それらとの関わりを考えると、自助グループ育成研修やファシリテーター育成研修なども含み、被害者の立場に即した支援が出来るよう、支援員同士の共通認識や支援体制の強化を図らなければならない。そのためには、秋田の自助グループとしてどのように関わるか、または被害者支援センターから離れた自助グループとして支援活動を続けていくのか、などを秋田だけではなく、「秋田交通死亡事故被害者の会」とも密接に連携し合う機会をつくり、自助グループの被害者支援について要請がある場合はコーディネーターを中心に積極的に支援していく方向で、今後の取り組み方や方向性を検討している段階である。

2.(社)いばらき被害者支援センター

(1)自助グループの会の開催

平成18年12月12日(火)10時から12時まで、水戸市社会福祉ボランティア会館において、いばらき自助グループメンバー3名、(社)被害者支援都民センター4名、(社)いばらき被害者支援センター(以下「いばらき」という。)7名(内オブザーバー4名)が参加して行なわれた。

まず、ファシリテーターが自己紹介及びパートナーシップ事業で都民センターが参加する旨を伝え、続いてメンバーが被害概要及び近況報告を行い、以下のことを語った。

1.亡くなった家族への思い

亡くなった家族に対する今も変わらぬ愛情、大切な家族を亡くした悲しみは時間を経ても変わらないこと、亡くなった子どもの兄弟に対する複雑な思い、亡くなった家族に生前してあげられなかった事に対する自責の念等が語られた。また、遺された家族がお互いを思い合うが故の苦しさや、伴侶を亡くした場合と子どもを亡くした場合との差異についても語られた。

2.裁判について

刑事・民事共に納得いく結果ではなかったこと、民事裁判の準備に大きな労力が必要であること、精神的に負担が大きく民事裁判自体を起こせなかったり、控訴できなかったりするなど、被害者遺族にとって、裁判が大変な負担であることが語られた。

3.現行の裁判制度について

現行の裁判制度については、被害者が当事者として扱われないことに対する不満が語られた。また、加害者に自分の犯した罪を忘れさせないための損害賠償の方法として分割払いを求めても、懲罰的な支払い方法が認められていない現行制度に対する無念な思いが語られた。

4.(社)被害者支援都民センター自助グループメンバー小畑智子氏の存在

いばらき自助グループ立ち上げ初年度から関わってきた小畑氏は、メンバーの回復の目標になっているだけでなく、いばらきのスタッフにとっては自助グループの目的や効果を理解し実感する上でも大きな力となっている様子だった。小畑氏からは、事故直後からこれまでの気持ちの変化や、(社)被害者支援都民センター自助グループでの経験、いばらき自助グループの立ち上げに関わったことが自らの回復に役立ったこと、被害者と支援センターとの関わりの重要性などが語られた。

5.基本法成立後の動きについて

ファシリテーターから、基本法成立後の動きについての解説があった。(社)被害者支援都民センター自助グループメンバー小畑氏からは、基本法ができた今こそ、被害者が声を上げて被害者に対する施策の未完成な部分を変えていく必要があるとの指摘があった。

(2)フォローアップの実施

自助グループ終了後、13時30分から15時30分まで、いばらき事務局会議室において、(社)被害者支援都民センター4名、いばらき7名が参加して行われた。まず、一人ずつ感想を述べ、ファシリテーターからはいばらき自助グループの現状と方向性について語られた。

1.感想の中から

被害者にとって自助グループで自分の思いを話すことがいかに大切なことであるか、遺族の中でも男女の差異によって悲しみの表現に違いがあること等が語られた。また、被害者の言葉には支援者として学ぶものが多く、自助グループで被害者の心情に接することが支援者にとって他の支援の場でとても有益であることが語られた。小畑氏からは、大切な家族を亡くした遺族は、亡くした家族が誰であってもその悲しみは同じであること、自助グループではその接点を大切にすることが重要であることが語られた。

2.基本法・基本計画を受けて

基本法・基本計画を受けての各機関の変化と残る問題点について話し合われた。ファシリテーターからは、参加すればするほど被害者支援の必要性を感じるとの言葉があった。

3.(社)被害者支援都民センターから

(社)被害者支援都民センターからは、いばらきの自助グループは、地域性が生かされ、心遣いの行き届いた自助グループであるとの感想が伝えられた。加えて、支援者として自助グループに入った際、自分が何をどう感じたかを見つめること、支援者の発する言葉がどのような影響を与えるかに気を配ることの必要性を伝えた。これらについて、支援に関わるものとして日常的に注意を払っていくことの重要性を相互に確認した。

(3)いばらきからの報告
1.被害者支援センターの活動状況(昨年度からの変化等)

電話相談を中心に始まった支援活動であるが、昨年度から被害者等に直接接する直接的支援が増えてきている。平成18年度は、一層その傾向が強くなり、外での支援が多い日は、支援員が出払ってしまい、電話相談を休止する日も出てきている。

直接的支援は、検察庁や裁判所への付き添いなどの法廷関連支援が中心だが、自宅へ出向いての支援や一時保護、関連機関との調整など、その内容は多様化している。いばらきが当初から目指していた総合的支援にやっと近づいてきたという思いである。

そのような状況の中、重要な支援と月1回の自助グループが、重なってしまうこともあるが、グループのメンバーとの調整をこまめに行い、月1回の開催は、欠かすことなく大切な時間として位置づけている。

当初からの4人のメンバーにさらに2人が加わり、これから参加したいという希望者も数名いるので、参加することが、その遺族の回復に適切かどうかを十分に判断しながら徐々にメンバーを増やしていきたいと考えている。

(社)被害者支援都民センターの指導を受けて立ち上げた自助グループ「よつばのクローバー」だが、いばらきの重要な支援の一つとなっている。4年目に入り、時間の経過とともにその意義が大きいと実感している。

遺族は、失った大切な人への思いを語りたいのに、時間が経てば経つほど周りの人には理解されず、話せなくなることが多いようである。安心して思いを吐き出せる場、それが、月1回の自助グループである。現在、海外にいるメンバーが、一時帰国して自助グループに参加したとき、「海外生活の中で、亡くなった子のことを話したいのに話せない。話せないことがこんなに辛いとは思わなかった。」と語っていたことが印象的であった。

また、刑事裁判、民事裁判、周囲との人間関係など、遺族は、様々な困難さを抱えることが多い。自助グループの中で、それらについて情報交換をできるのも効果の一つであろう。

これまでの自助グループの経験を通して、なにより有難いのは、被害者や遺族を長いスタンスで見ることができるようになり、それが、他の支援に生かされることである。被害直後の思い、刑事裁判時の思い、民事裁判の大変さ、加害者への怒り、遺された他の家族への思いなど、時間とともに変化する遺族の心情等を知ることによって、現在支援を行っている被害者等に対してどのように対応することが、よりよい回復につながるのかを考えられるようになった。

2.継続研修を受けた感想

今年度も12月に(社)被害者支援都民センターから4名が自助グループに参加し、継続研修としてフォローアップを実施した。また、いばらきからも新たな支援員4名が、オブザーバーとして参加した。

(社)被害者支援都民センターの自助グループメンバーとは、立ち上げ当初から面識があるため気兼ねなく相談することができ、これらの人々とは貴重な出会いであったと改めて痛感している。フォローアップ時に(社)被害者支援都民センター及びいばらきの新メンバー(支援員)による意見交換もまた有意義であった。

その後、全国被害者支援ネットワークとの共催で連絡会議も開催され3名が参加したが、他団体の活動の状況を知ることも大変参考になった。しかし、そのスタンスや運営方法には差があり、考えさせられることも多かった。通常の支援体制及び事務局の体制がしっかり機能してこそ、自助グループ支援はより被害者のためになるのではないかと考える。

3.自助グループ活動における今後の方針及び課題

a.今後の方針

b.課題

(事務局長 照山 美知子)

3.NPO法人長崎被害者支援センター

(1)意見交換会の実施

平成18年12月9日(土)17時から18時30分まで、NPO法人長崎被害者支援センター(以下、「長崎」という。)において、長崎3名、(社)被害者支援都民センター4名が参加して行われた。

長崎の被害者支援の方向性については、「早期援助団体」の指定を目標にしており、来年度から相談電話の開所日数の増加に向けて、支援員の確保及び養成を進めていることが報告された。また、支援員の選考に当たっては、支援員としての適性等を慎重に考慮するため、人材を確保することの難しさが課題として挙げられたため、(社)被害者支援都民センターでは、行政機関で養成されているボランティアの人材利用について助言した。

さらに、「早期援助団体」の指定を受けることで警察からの正確な情報に基づき、より適切な支援活動の実施が可能になることを伝え、引き続き生命身体犯による犯罪被害者への支援の充実を図っていくよう確認した。

(2)事前打ち合わせの実施

平成18年12月10日(日)12時45分から13時30分まで、長崎3名、(社)被害者支援都民センター4名が参加して行われた。長崎から昨年度からの自助グループの経過と参加しているメンバーについて説明を受け、改めて被害者支援の一環としての自助グループの意義について確認した。

(3)自助グループの会の開催

同日、13時30分から15時40分まで、長崎自助グループメンバー1名、長崎3名、(社)被害者支援都民センター4名が参加して行われた。まず、ファシリテーターが自己紹介を行い、事前に準備されたレジュメを読み上げる形で、自助グループの目的と原則について説明した。続いて、参加者が自己紹介及び被害概要等について話をした後、以下のことが語られた。

1.遺族が抱える想い

被害からの年数を経ても大切な家族を奪われた悲しみは消えることはなく、日常生活における様々な場面や出来事のたびに思い起こされ、その悲しみは遺された家族の中で異なった形で一生続いていくことが語られた。

そして、遺された家族が被害を受け止め、折り合いをつけて日常生活を過ごすことができるようになるまでの葛藤や苦しみ、亡くなった人々の無念を思うと悔しさは一生消えないという想いが語られた。

また、被害直後からの支援を受けることによって、社会からの孤立感や疎外感を防ぎ、被害を受け止めることができるようになった、と被害直後からの自分の変化に対する気づきや、被害からの回復の実感について語られた。

さらに、自助グループでは、家族の中では話すことができない様々な想いを安心して語ることができることも被害からの回復に大切であることが述べられた。

2.加害者からの二次被害について

加害者について、犯した罪を重く受け止めることなく刑を軽減するための不誠実な態度や言動に対する憤りや、一切の謝罪もしない加害者及びその家族、弁護士、交通事犯における保険会社からの二次被害について語られた。

3.現行の法制度と加害者の処遇について

現行の刑事裁判において加害者が手厚く守られているのに対して、被害者には権利が認められておらず、様々な負担や苦痛を強いられている理不尽で不平等な制度に対する憤りが語られた。

また、加害者の処遇にかかわる法律の改正や矯正教育のあり方の見直しが行われているが、加害者をより手厚く保護したり、制限が緩和されるなどの状況をみると、加害者が真に更生して社会復帰できる内容になっているのかどうか、現行の制度や加害者の処遇のあり方に対する疑問が投じられた。

4.被害者支援に関わる専門家について

精神科医や弁護士など様々な専門家による二次被害や、被害者が各専門家に支援を依頼しても、各専門家が被害者支援におけるそれぞれの役割を理解していないため、十分な支援を受けられなかったという体験が語られた。

特に、被害者支援に精通した弁護士が少なく、被害者の心情に配慮し、意向を尊重した言動や対応が不十分で二次被害を受ける被害者が多いことについて述べられた。

各専門家には被害者の心情を十分に理解した上で、それぞれの専門家としてできる支援を提供してほしいと要望が述べられた。

(4)フォローアップの実施

自助グループ終了後、16時から16時30分まで、長崎3名、(社)被害者支援都民センター4名が参加して行われた。

現在、長崎の自助グループのメンバーは5人であるが、参加者が集まらないことが多いため、自助グループを開催しても他の遺族と語り合う場としての本来の自助グループ活動が困難で、メンバーにも負担感があることがわかり、参加者が少数の自助グループを継続することの難しさについて感想が述べられた。

参加して間もない被害者にとって、自助グループに参加して自らの被害体験を語ることに抵抗を感じたり躊躇することは当然であるが、何度か自助グループ活動を重ねていくことで、他のメンバーとの交流を通して回復への希望を持てたり、被害からの回復に役立つという実感を得られるようになるため、継続的に参加することが大切であることを確認した。そして、支援者が自助グループ活動の意義を十分に理解して、被害者に押し付けることのないよう留意し、現在は少ないメンバーでも無理に増やそうとせず、個々の支援を通して信頼関係を築きながら、被害者のグループ活動への適正や参加する時期を判断して、自助グループへの参加者を増やしていけばよいと助言した。

メンバー自身が被害からの回復のための自助グループ活動の意義を体感できるようになると、自助グループへの継続的な参加にもつながるため、被害者が長崎に信頼感を持てるよう、日々の支援活動の充実を図っていくことが求められると確認した。

(5)長崎からの報告
1.被害者支援センターの活動状況

長崎は、平成15年3月20日に発足し、同年6月に週2日の電話相談からスタートした。3年目を迎えた長崎は、9名の相談員で電話相談を担当し、4名の相談員で面接相談から弁護士への付き添い、裁判所への付き添い等を行っている。

現在、週2日の電話相談を実施しているが、電話相談日外でも頻繁に掛かるようになり、平成19年4月からは、常勤相談員を1名置き、週5日の電話相談を行うこととした。電話相談日を増やすことで、一歩踏み込んだ直接的支援へ繋ぎ、被害者や遺族の方々の意向に添った支援を通して信頼関係を築くことが長崎には必要である。

そのような必要性を考えると、まずは、長崎の存在と活動内容を長崎県に周知徹底させるため、毎年、街頭宣伝活動や講演会などを行っているが、平成18年度からは新たな啓発活動の一環として、佐世保市、島原市に出向き地域別相談会も開催した。

また、内閣府による交通事故被害者支援事業の一環として平成17年度に立ち上げた自助グループは、月1回開催している。

平成18年4月からは、長崎県の行政でも、「長崎県県民生活部県民安全課」が犯罪被害者支援の窓口となり、センター理事、県警支援室、県民安全課の関係者らと早期援助団体指定に向けて毎月運営委員会を行っている。

(事務局長 山本 泰子)

2.主催者としての感想

長崎開催になってからは、記録係としての参加を半年ほど続けてきた。しかし、参加者がおらず、自助グループを経験したのは、実際には今回が始めてといってもよかった。

記録係とは、どんなスタンスで望めばいいのか分らず、戸惑いを隠しきれないまま参加した形ではあったが、私にとっては学びの多い自助グループであったと考える。

私は、これまでに、本業において、性被害女性のカウンセリングを担当したことがある。その中で、心理療法の効果は出たにも関わらず、犯罪被害に遭ったことのない私にできることの限界を感じていた。その際に、「本心から共感できる仲間」が必要でないかと感じることが多く、それが、私の中での自助グループの必要性の大きな原点となっていた。

参加者が不在であっても、開催してきた長崎の自助グループであるが、以上のような経験から、私の中で「被害者が本音を話せる場所」という位置づけで活動を続けてきたことは有益であった。カウンセリングの中では、被害にあったことから自己を否定するようになり、加害者を罵倒するような言葉は、なかなか語れないものである。

しかし、自助グループには、「加害者を(時間が経過しても)許せない」という感情を表出しても、受け取ってもらえるという安心感がある。したがって、自助グループが「被害者が本音を話せる場所」であるという認識は、決して間違いではない。ただし、今回の継続支援で、参加者にとって自助グループとは、「仲間を得るとともに本音を話せる」だけの場所ではなく、「被害の回復を実感していく場所」でもある事が理解できた。

私自身、自助グループの必要性の認識が薄かったため、これまでメンバーにしっかりと説明をすることなく参加を促し続けた経緯もあり、このことは私自身の反省点である。

今回、自助グループについての認識を深める事ができたので、今後メンバーに自助グループの意義を伝えることを課題として取り組んで行きたいと考える。いまだに、どのような働きかけが、被害者に対してよいものなのか模索中の段階であるため、(社)被害者支援都民センターの指導を仰ぎながら、検討していきたいと考える。

(相談員 松田 純子)

3.自助グループ活動における今後の方針及び課題

自助グループ活動は、立ち上げてから毎月実施してきたが、出席者が少ない時、あるいは長崎のスタッフだけという状況が続き、「今日も出席者がいない」、「どうやったら出席者が集まるのか」等、「これでいいのか」と悩む中で受けた今年度の継続研修であった。

このような状況の中で行われた継続研修は、久しぶりに実施したことによる自助グループに対する緊張感、それを共有した長崎スタッフ同士の認識の確認、また(社)被害者支援都民センタースタッフからの的確な助言など有意義なものであった。

自助グループを充実させることは、それと同じく長崎を充実させていくことであり、その長崎の役割は、被害者及び被害遺族の回復支援のためにある。

しかし、毎月行われる自助グループの取り組みでは、参加者の人数等に一喜一憂するなど、目先のことばかりに気が向きがちであった。それが今回の継続支援を受けたことによって、事前打ち合わせに始まり、自助グループ、フォローアップ、意見交換会を通して、スタッフそれぞれが長崎の一員として、どのような姿勢や理念で支援を行っていくのか自覚することの大切さ、ひいてはそれをスタッフ間で共有し、確認していくことの必要性を実感した。例えば、自助グループの参加人数を増やすことにこだわり、オープンに参加を募ったり促すのではなく、長崎がそれぞれの被害者や被害者遺族のニーズに合わせた支援をするための一環として、自助グループを機能させることが、自助グループの充実つまりは長崎の充実につながるものと考える。

そのためには、自助グループ活動のみならず、被害者支援センターとして長崎の現状に則した範囲内での取り組みとその継続、活動内容のスタッフへの周知徹底、知識の自己研鑽が今後の課題と考える。

(ファシリテーター 長浦 由紀)

III.自助グループ連絡会議

平成18年12月18日(月)から19日(火)の2日間にわたって、東京医科歯科大学難治疾患研究所内会議室において、(社)いばらき被害者支援センター3名、NPO法人石川被害者サポートセンター3名、(社)秋田被害者支援センター3名、NPO法人大阪被害者支援アドボカシーセンター3名、(社)被害者サポートセンターあいち2名、NPO法人長崎被害者支援センター2名及び(社)被害者支援都民センター9名が参加して行なわれた。

なお、今年度の自助グループ連絡会議は、全国被害者支援ネットワークによる自助グループ立ち上げ支援事業の継続研修会と合同で行なわれたため、参加者は総勢18団体、43名であった(2日間のスケジュールについては、表2-2を参照のこと)。

(1)第1日目(平成18年12月18日(月))
1.講義「自助グループの必要性について」

大久保恵美子氏((社)被害者支援都民センター事務局長)が、犯罪被害者が求める支援及び自助グループの必要性についてレジュメ及びビデオを用いて行った。被害者が求める支援は、(1)事件直後からの直接的支援、(2)刑事手続き等の様々な情報提供、(3)精神的支援、(4)仲間同士の交流、とした上で、被害者支援の一環としての自助グループの意義及び目的、効果、実際の進め方、留意点等について講義を行なった。

また、ファシリテーターの役割について、話す速さや声の調子に気を配り、参加者一人ひとりの表情を見ながら進行することが大切であると説明した。

質疑応答では、罪種の異なる被害者遺族が同じグループに集うことへの懸念について、自助グループ活動の目的は、被害の違いを比べるのではなく、大切な家族を失った悲しみ等、遺族が抱える共通の想いを分かち合うことであるため、グループで語り合うテーマも参加するメンバーの共通点を見つけてすすめていくことが自助グループ活動の基本であることを確認した。

2.講義「ネットワークの自助グループへの取組み」

山上皓氏(全国被害者支援ネットワーク理事長、東京医科歯科大学教授)が、日本における被害者支援活動及び自助グループ活動の歴史、全国被害者支援ネットワークの自助グループとの連携について講義を行なった。

自助グループの意義について、被害者の回復だけでなく、支援者にとっても被害者からの学びの場として重要な役割を担うことを確認した。さらに、海外の自助グループ活動及び全国被害者支援ネットワークが連携する日本の被害者団体について紹介した。

3.課題検討会

今回参加している18の各被害者支援センターから、自助グループ活動を運営していく上での問題点及び自助グループに対する被害者支援センターとしての関わりについて、現状を把握した上で共通の課題について意見交換を行った。

各被害者支援センターにおける自助グループ活動の現状は、被害者支援活動の一環として被害者支援センターがファシリテーター等の役割を担って主体的に運営している自助グループは少なく、自助グループを立ち上げていても場所の提供やお茶菓子の準備等の側面的な関わりにとどまっており、支援の一環として自助グループ活動が十分に機能していないところが多く、参加メンバーが少ないために休止しているところもあった。

このような現状を踏まえて、参加メンバーが少ない自助グループでも、毎月開催のご案内を送付する等継続的に被害者支援センターの存在を発信することで、被害者遺族にとって大きな支えとなることを確認した。そして、無理にメンバーを増やすのではなく、個々の被害者遺族にとって被害からの回復に有効かどうか、また、グループへの適正及び参加の時期を面接によって慎重に判断していくことが大切であると述べられた。

さらに、自助グループは被害直後からの直接的支援を終了した後の支援として、被害者の回復プログラムの重要な柱として位置づけられるため、被害者支援センターに自助グループがあることによって支援の幅が広がることも確認した。

しかし、長期にわたる関わりの中で加害者の出所や生活状況の変化等によって被害者が求める支援は変化するため、自助グループ活動と平行して被害者個々に対する補足的な支援が必要となることをふまえると、被害者支援センターの支援の充実が必須となることも指摘された。

また、自助グループの運営について、被害者支援センターは被害者遺族であるメンバーの主張や要望をすべて受け入れるのではなく、支援活動に対する方針をしっかりと持って、自助グループ活動と被害者支援センターの支援活動が車の両輪のように機能するよう、支援活動の充実を図る必要があるとの共通認識を深めた。

(2)第2日目(平成18年12月19日(火))
1.講義「犯罪被害や交通事故遺族の心理と治療」

中島聡美氏(国立精神・神経センター精神保健研究所 成人精神保健部犯罪被害者等支援研究室長)が、レジュメを配布して講義を行なった。

犯罪被害者及び交通事故遺族に起こる精神的症状及び併発しやすい精神疾患とその治療等について、支援者に必要な基礎的知識を学んだ。また、支援活動を行う中で精神科医療の必要性を判断するときの留意点等について確認した。

2.講義「自助グループに参加して」

(社)被害者支援都民センター自助グループメンバーが、被害者支援センターにかかわるようになったきっかけ及び自助グループに参加した感想について述べた。

自助グループ活動は、家族の中で話せない想いや、被害からの年数が経って周囲に言えないことを繰り返し安心して語れる場であること、また、自分の被害について繰り返し語る体験を積み重ねることで、被害と向き合い、回復することができたと語った。そして、メンバーが自分の想いを安心して語るために、自助グループ活動における「約束事」を会の冒頭に毎回確認することの必要性も指摘した。

自助グループ活動に参加して他の遺族と交流することは、孤立感の軽減につながるとともに、被害から間もないメンバーにとっては回復への希望を持つ場となり、年数の経ったメンバーは回復を実感する場となること、さらに、回復までの時間や方法は個人差があることを知る機会となると語った。

被害体験の無い支援者が毎回グループ活動に参加することによって、被害者遺族が社会への信頼感を取り戻す一助となることも指摘され、その重要性を再確認した。

3.グループワーク

自助グループ活動における役割ごとにグループワークを実施し、ファシリテーター、被害者支援センター事務局、ボランティアスタッフの3つのグループに分かれて意見交換を行い、終了後、各グループ代表者がその内容について報告した。

  1. ファシリテーター
    自助グループを開催するために必要な様々な準備における留意点や、実際のグループ活動の時間配分や進行の仕方について検討を行った。その中で、メンバーの会話が雑談にならないよう留意し、自助グループ活動の「約束事」を守り目的に沿った活動になるよう、ファシリテーターが状況を判断して適切に介入していく必要があると確認した。また、終了した後はしばらくの間会場を開放し、メンバー同士や被害者支援センターのスタッフが交流できるようにしておくことも大切であると述べた。
    自助グループ活動の運営は、被害者支援センター内で自助グループ活動に対する理解及び共通認識の周知を徹底することが不可欠であること、また、メンバーの選び方についてもセンターとしての方針を持って慎重に判断する必要があることについて再確認した。
  2. 事務局
    罪種の異なるメンバーを含む自助グループ活動及びメンバー間の人間関係への対応について検討した。また、自助グループの運営にあたって、場所の確保等各被害者支援センターが抱えるハード面での課題が取り上げられた。
    安定した自助グループ活動の運営を行うためには、被害者支援センターが組織として円滑に機能していることが求められることをふまえ、被害者支援センター内において自助グループ活動に対する理解を周知し、地域性に基づく自助グループを作り上げていけるよう、参加者各自の課題を確認した。
  3. ボランティア
    自助グループに関する理解や基礎的知識を持つための研修を積み重ねること、さらに、ボランティアスタッフとして何ができるのかを各自が再考するべきであると確認し、自助グループに対する共通認識の周知を徹底することが課題としてあげられた。

以上、3つのグループにおける検討の結果、“被害者の回復のための自助グループ活動”という視点を見失わずに、被害者支援センターの組織の充実を図ることが自助グループの運営における共通の課題として確認した。

表2-2 内閣府パートナーシップ事業連絡会議プログラム

開催場所:東京医科歯科大学難治疾患研究所1階 会議室

1日目:12月18日(月)
時間 内容 講師
13:15〜13:30 受付・オリエンテーション ネットワーク
挨拶 高橋 広幸氏
内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付参事官(交通安全対策担当)
13:30〜14:00 自助グループ活動の必要性について 大久保 恵美子氏*1
14:00〜14:30 ネットワークの自助グループへの取り組み 山上 皓氏*2
14:30〜14:45 休憩  
14:45〜17:00 課題検討会 コーディネーター
照山 美知子氏*3
17:00〜17:15 1日目の感想・気付きのまとめ 各参加者
18:0019:30〜 懇親会  
*1
社団法人 被害者支援都民センター事務局長
*2
NPO法人 全国被害者支援ネットワーク理事長・東京医科歯科大学教授
*3
社団法人 いばらき被害者支援センター事務局長
2日目:12月19日(火)
時間 内容 講師
9:00〜10:00 犯罪被害や交通事故遺族の心理と治療 中島 聡美氏*4
10:10〜10:40 「自助グループに参加して」 都民センター自助グループメンバー*5
10:40〜10:50 休憩  
10:50〜12:10 グループワーク
  • ファシリテーター
  • 支援センター事務局
  • ボランティアスタッフ
三浦 芳子氏*6
望月 廣子氏*7
堀河 昌子氏*8
12:10〜12:20 休憩  
12:20〜13:00 2日目の感想・気付き
今後の取り組みについてのまとめ
各参加者
*4
国立精神・神経センター精神保健研究所 成人精神保健部 犯罪被害者等支援研究室長
*5
都民センター自助グループメンバー(久保田由枝子氏・清澤郁子氏・小畑智子氏・糸賀美恵氏・廿楽奈穂美氏)
*6
社団法人 秋田被害者支援センター自助グループ代表
*7
社団法人 被害者支援都民センター相談支援室長
*8
NPO法人 大阪被害者支援アドボカシーセンター代表

IV.まとめ

今年度の当該事業は、昨年度までに立ち上げられた6つの自助グループのうち、3つの自助グループに対する継続支援と、これまでの事業で自助グループを立ち上げたすべての支援センターを含めた全国の被害者支援センターの自助グループ担当者が参加して連絡会議を実施した。

継続支援では、メンバーとの信頼関係を築き上げ着実に自助グループ活動が根付いている所や、メンバーが思うように集まらなかったり、支援の一環としての自助グループ活動の効果における十分な理解が得られないまま苦慮しているところもあった。

支援センターは、自助グループがメンバーにとって安心して気持ちを語れる場所、参加する意義や被害からの回復を実感できる場所として認識できるよう努め、徐々に信頼関係を築いていくことが大切である。

連絡会議では、被害者支援活動における自助グループ活動の意義や効果に対する理解について再確認をする場となったが、依然として、その理解が不十分であったり、支援センター内において共通認識を持てていないために、被害からの回復に寄与する充実した自助グループ活動の運営ができていない支援センターの現状も浮き彫りとなった。

自助グループ活動を円滑に実施していくためには、支援センターとしての被害者支援の方針を確立し、支援センターが被害者遺族にとって安心して支援を受けることができ、信頼されるような支援活動を積み重ねていくことが大切である。そして、「支援の一環としての自助グループ」という位置づけがセンター内で共通理解されていることが重要であるため、各支援センターは各自の支援センターの現状を振り返る必要があるだろう。

支援センターの支援活動の充実と自助グループ活動は連動しており、車の両輪として機能するとき、民間支援団体における充実した支援活動が可能となる。また、多岐にわたる支援活動は様々な関係機関や専門家等との連携が欠かせないため、自助グループ活動を通して被害者遺族と支援センターの協力関係の下で支援や広報啓発活動等を実施することで、関係機関からの信頼や社会の理解を得ることができ、更なる有機的な連携を図ることができる。

全国の被害者支援センターにおける支援活動のより一層の充実に向けて、人材育成及び組織体制の整備を図り、自助グループを立ち上げ、共に被害者支援を担う体制作りが望まれる。