平成19年度交通安全施策に関する計画
第3部 航空交通の安全についての施策
第1節 航空交通環境の整備

第3部 航空交通の安全についての施策

第1節 航空交通環境の整備

1 航空保安システムの整備と提供サービスの充実

 航空交通の安全確保を最優先としつつ、交通量の増大やユーザーニーズの多様化に適切に対応した航空交通システムの構築を図るため、次期管制システムを始めとする「次世代航空保安システム」の整備を着実に推進する。また、引き続き整備あるいは更新が必要となる従来の航空保安システムについては、その有効利用を図るとともに、次世代航空保安システムへの移行の進捗状況に応じ、縮退可能な地上航法施設等については漸次廃止を進めていく。
 さらに、既存ストックを有効活用し、運航者に提供する航空交通サービス(ATS)の質的充実を図る。

(1)次世代航空保安システム
次期管制システムの整備
ヒューマンエラーを防止するための一元的なインターフェースの導入等により、管制処理能力の向上とより一層の安全性の向上を図るため次期管制システムの整備を推進する。
航空交通管理(ATM)システムの高度化
増大する今後の交通需要に対応するため、航空交通管理センターの段階的な機能向上を図るとともに、運航者、管制機関及び航空気象機関等による協調的意志決定(CDM)を発展させる等により、航空交通管理(ATM)システムの高度化を推進する。
航空灯火・無線施設の整備
空港において、交通の高密度空域における航空機の監視機能の強化等を図るため「改良型二次監視レーダー(SSRモードS)」の整備を推進する。
(2)現行航空保安システム
 空港において、就航率や定時性の改善による利便性向上を図るため、費用対効果を勘案した上で、新空港の整備に併せた航空保安施設の新設及び既存空港における離着陸性能向上のための高カテゴリー化整備等を推進する。
(3)航空交通サービスの充実
RNAV運航環境の整備
柔軟に飛行ルートを設定できる広域航法(RNAV)ルートを順次全国に導入展開し、飛行ルートの直線化による運航効率の向上及びルート数拡大による上空の受入容量(空域容量)の拡大、さらに一方通行化等の安全対策を図る。
航空情報の高度化
航空情報(AIS)センターの運用を開始し、航空情報の提供体制の拡充及び品質管理体制の強化を進めるとともに、航空情報の電子化のためのデータベースの構築や国際的な情報交換を図り、更なる航空情報の高度化を推進する。
小型航空機の安全対策
既存ストックの利活用による積極的な情報提供やヘリコプターの特性を生かした計器飛行方式による運航の実現に向けた環境整備を図る。また、海上部や山間部における送電線への接触事故等を未然に防止するため、特定された地区の航空障害物件への航空障害標識(航空障害灯及び昼間障害標識の総称)の適切な設置を促すとともに運航者に対して物件情報の提供を行う。
飛行検査の充実
航空保安施設の検査内容について改善を図り、既存の施設については効率的な検査を行うとともに、RNAV等次世代システムに対応した飛行検査体制の整備及び強化を推進する。

2 空域の整備等

(1)空域の容量拡大
洋上空域
現在、特に混雑している北太平洋路線において、運輸多目的衛星(MTSAT)を活用することにより管制間隔の短縮を図り、上空の受入容量を拡大し、安全かつ効率的な運航が実現する環境を確保する。
国内航空路
RNAVルートを全国的に展開するとともに、既存の飛行ルート(VOR/DME等地上航法施設間を直線で結んだルート)を飛行する航空機とRNAVルートを飛行する航空機を運用的に分離する航空路再編(スカイハイウェイ計画)を羽田空港再拡張事業に併せて実施する。
空港周辺空域
衛星を利用したRNAV(GNSS)に対応した出発経路、到着経路、進入方式等のRNAVルートの拡大を図る。
特に、東京国際空港及び成田国際空港を含む関東の上空空域では交通混雑が顕著となっており、交通量は更に増加していくとみられることから、羽田再拡張事業に併せて、RNAV及び新システム等を導入することにより、関東空域の再編を行う。
(2)空域の有効活用
基本的な考え方
空域の効率的な運用を実現するため、以下の考え方の下、所要の措置を図る。
(ア)
航空機運航者が飛行経路、高度等をより少ない制限で選択し飛行することを可能とする運航上の新しい概念等を導入し、運用を行う。
(イ)
諸外国及び米軍等の空域管理機関との連携を強化し、空域の有効活用を行う。
ATMセンターの機能活用
米軍、自衛隊等が使用する訓練試験空域等の空域及び民間航空機の空域に対する需要を総合的に勘案し、運航者、管制機関及び訓練空域等使用者との状況の共有、緊密な調整機能の高度化等を推進することにより、安全かつ効率的な空域の利用を促進する。

3 空港の整備

 成田国際空港については、平成21年度末の供用に向けた北伸による平行滑走路の2,500メートル化の整備、旅客ターミナルビル等空港施設の能力増強を推進する。
 東京国際空港については、再拡張事業として新設滑走路等の整備、PFI手法を活用した国際線地区の整備等を推進するとともに、機能向上事業として既存施設における空港能力、利便性、安全性を図るための整備を推進する。
 関西国際空港の二期事業の施設整備については、2本目の滑走路を供用するために必要不可欠なものに限定し、平成19年に「限定供用」を図ることとされたが、18年12月には第2滑走路・誘導路が概成されるなど、19年8月2日の2本目の滑走路供用に向けて整備を着実に推進する。
 一般空港等については、滑走路の延長等として、継続事業6空港の整備を行うとともに、各空港において、空港機能を保持するための維持・更新等を行う。
 また、航空輸送サービスの質の向上を図り、国際競争力の強化、観光立国の実現等に資するため、「航空サービス高度化推進事業」を実施し、就航率の向上等既存空港の機能の高度化や空域・航空路の抜本的な再編等運航効率の向上を推進するとともに、重点戦略の展開、物流機能の高度化、ユニバーサルデザインの推進、空港を核とした観光交流の促進に取り組む。

4 空港・航空保安施設の災害対策の強化

 空港・航空保安施設については、既存施設の耐震補強及び調査を継続するとともに、最近の耐震技術の動向や地震動、津波に関する研究成果等を考慮しつつ、さらに空港の耐震設計基準等の検討及び整備を進める。

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