平成26年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第1章 道路交通事故の動向
第2節 平成26年中の道路交通事故の状況
1 概況及び交通事故死者数の減少幅が縮小している背景
平成26年中の交通事故発生件数は57万3,842件で,これによる死者数は4,113人,負傷者数は71万1,374人であった(死傷者数は71万5,487人)。
前年と比べると,発生件数は5万5,179件(8.8%),死者数は260人(5.9%),負傷者数は7万120人(9.0%)減少した(死傷者数は7万380人(9.0%)減少)。
交通事故による死者数は14年連続で減少となり,ピーク時(昭和45年:1万6,765人)の4分の1以下となり,交通事故発生件数及び負傷者数も10年連続で減少した。
しかしながら,交通事故死者数の減少幅は縮小傾向にあり,交通事故死者数全体に占める65歳以上の高齢者の割合が高い水準で推移している。
また,死者数の指標となる致死率についても2年連続で上昇に転じており,死者数が減りにくい状況となっており交通事故情勢は厳しい状況にある(第1-4図)。
死者数の減少幅が縮小している背景としては,「高齢者人口の増加」,「シートベルト着用者率等の頭打ち」,「飲酒運転による交通事故の下げ止まり」を挙げることができる。
(1)高齢者人口の増加
高齢者は他の年齢層に比べて致死率が約6倍高く,さらに,他の年齢層の人口が減少していく一方で,高齢者人口は年々増加の一途をたどっている。このことが高齢者の交通事故死者数を減少しにくくさせており,近年,全体の死者数の約半数を占める高齢者の死者数が減りにくくなることにより,全体の死者数の減少幅も縮小していると考えられる(第1-5図)。
(2)シートベルト着用者率等の頭打ち
エアバッグ装着車率は平成17年までにほぼ100%,ABS装着車率は98.1%まで上昇したが,シートベルト着用者率は,最近は90%台前半で横ばい状態にある。これまで,シートベルト着用者率,エアバッグ装着車率等の向上が自動車乗車中の死者数減少に大きく寄与していたが,シートベルト着用者率がかつてに比べ伸び悩んでいることのほか,エアバッグ等装着車率が頭打ちとなっていることが死者数の減少幅が縮小している一因となっていると考えられる(第1-6図)。
(3)飲酒運転による交通事故の下げ止まり
原付以上運転者(第1当事者(交通事故の当事者のうち,過失が最も重い者又は過失が同程度の場合は被害が最も軽い者をいう。以下同じ。))の飲酒運転による事故での死亡事故率は,交通事故全体の死亡事故率に比べて高くなっているが,近年,飲酒運転による交通事故が下げ止まり傾向にあり,これが死者数の減少を阻む一つの要因になっていると考えられる(第1-7図)。
2 交通死亡事故等の特徴
(1)年齢層別交通事故死者数及び負傷者数
平成26年中の交通事故死者数を年齢層別にみると,65歳以上の高齢者(2,193人)が最も多く,次いで50~59歳(411人),40~49歳(381人)の順に多い。
高齢者の死者数は前年に比べ減少(前年比-110人,-4.8%)したものの,死者数のうち高齢者の死者数が占める割合は53.3%と過去最高となった(第1-8図)。
高齢者の死者数は,高齢者人口の増加などに伴って,昭和50年代前半から増加傾向を示し,平成5年には若者(16~24歳)を上回り,年齢層別で最多の年齢層となった。その後,7年(3,241人)をピークに概ね横ばいで推移し,14年以降は,ほぼ毎年減少している。しかしながら,過去10年間の推移をみると,25~29歳(平成16年の0.34倍),若者(同0.36倍)などと比較して,高齢者(同0.71倍)は減少率が少ないことから,全体に占める高齢者の割合は年々増加している(第1-9図)。
交通事故負傷者数を年齢層別にみると,30~39歳(12万9,751人)と40~49歳(12万9,064人)の年齢層が多く,両者で全体の36.3%を占めている。前年と比べると,全ての年齢層で減少し,その中でも30~39歳(1万4,207人減)と16~24歳(1万3,449人減)の年齢層が特に減少した(第1-10図)。
(2)状態別交通事故死者数及び負傷者数等
平成26年中の交通事故死者数を状態別にみると,歩行中(1,498人)が最も多く,次いで自動車乗車中(1,370人)となっており,両者で全体の69.7%を占めている(第1-11図)。
交通事故死者数に占める割合が最も多い65歳以上の年齢層について状態別にみると,歩行中がほぼ半数(48.5%)を占め,次いで自動車乗車中(27.4%),自転車乗用中(15.7%)の順に多い(第1-12図)。
状態別の交通事故死者数の推移をみると,昭和50年以降,自動車乗車中の死者数が状態別で最多であったが,シートベルト着用率の向上などにより,平成5年(4,835人)をピークに減少に転じ,その後は,ほぼ一貫して減少しており,歩行中死者数との差は年々縮小し,20年には歩行中死者が最多の状態となり,26年も継続している(第1-13図)。
交通事故負傷者数を状態別にみると,自動車乗車中が46万6,769人と最も多く,全負傷者数の65.6%を占めており,次いで自転車乗用中が10万7,998人(15.2%)となっている(第1-14図)。
(3)状態別・年齢層別の交通事故死者数
平成26年中の状態別の交通事故死者数を年齢層別にみると,次のような特徴がみられる(第1-15図)。
- <1> 自動車乗車中については,65歳以上の年齢層が全体の43.8%と最も多くを占めている。
- <2> 自動二輪車乗車中については,40~49歳の年齢層が全体の24.7%と最も多くを占めている。
- <3> 原付乗車中については,65歳以上の年齢層が全体の51.8%と最も多くを占めている。
- <4> 自転車乗用中及び歩行中については,65歳以上の年齢層が,それぞれ全体の63.9%,71.0%と最も多くを占めている。
さらにこれを各年齢層別の人口100万人当たりで比較すると
- <1> 自動車乗用中については,65歳以上の年齢層が18.8人と最も多い。
- <2> 自動二輪車乗車中については,16歳~24歳の年齢層が8.8人と最も多い。
- <3> 原付乗車中については,65歳以上の年齢層が4.1人と最も多い。
- <4> 自転車乗用中及び歩行中については,65歳以上の年齢層が,それぞれ10.8人,33.3人と最も多い。
また,平成26年中の状態別・年齢層別の交通事故死者数を前年と比較すると,65歳以上の歩行中(54人減),自転車乗用中(33人減)が特に減少した。その他では,16~24歳の自動車乗車中(24人減),60~64歳の原付乗車中(19人減)等が減少し,一方で25~29歳の歩行中(9人増),50~59歳の自動車乗車中(9人増)等が増加した(第1-16図)。
(4)男女別・状態別の交通事故死者数
平成26年中の交通事故死者数を男女別にみると,男性は自動車乗車中が36.0%を占め,女性は歩行中が52.7%を占めた。
10年前と比べると,男女とも減少しているが,男性の減少(46.0%減)が顕著である(第1-17図)。
また,年齢層別にみると,16~24歳の女性の自動車乗車中,65歳以上の女性の歩行中と15歳以下の男性の歩行中の占める割合が高い(第1-18図)。
(5)飲酒運転による交通事故発生状況
平成26年中の原付以上運転者(第1当事者)の飲酒運転による交通事故件数は4,155件(構成率0.8%)で,前年と比べると179件(4.1%)減少した。交通死亡事故発生件数は227件(構成率6.2%)で,前年と比べると11件(4.6%)減少した。
飲酒運転による死亡事故は,平成14年以降,累次の飲酒運転の厳罰化,飲酒運転根絶に対する社会的気運の高まりにより大幅に減少してきたが,20年以後は減少幅が縮小している(第1-19図)。
(6)シートベルト着用の有無別死者数
平成26年中の自動車乗車中の交通事故死者数をシートベルト着用の有無別にみると,非着用は605人で,前年に比べて54人(8.2%)減少した(第1-20図)。
これまでシートベルト着用者率の向上が自動車乗車中の死者数の減少に大きく寄与していたが,シートベルト着用者率がかつてに比べて伸び悩んでいることが死者数の減少幅を縮少させている(第1-21図)。
平成26年中の自動車乗車中の死傷者をシートベルト着用有無別の致死率でみると,非着用者の致死率は着用者の14.3倍と高くなっている(第1-22図)。
(7)チャイルドシート使用の有無別死傷者数
平成26年中の6歳未満幼児の自動車同乗中の死者数は,9人(うちチャイルドシート使用は3人)であり,重傷者数は90人であった(第1-23図)。
チャイルドシートの使用者率(6歳未満幼児の自動車同乗中死傷者に占める使用の死傷者の割合)は75.4%であり,前年と比較すると0.4ポイント上昇し,近年は漸増傾向にある。
6歳未満幼児の自動車同乗中の死亡重傷率は, 10年前の1.54%から1.21%に低下している(第1-24図)。
平成26年中のチャイルドシート使用有無別の死亡重傷率をみると,正しく使用した場合に比べ,不使用者は2.7倍,不適正使用者は6.0倍であり,致死率をみると,不使用者は18.5倍となる(第1-25図)。
(8)月別,曜日別,昼夜別交通事故発生状況
平成26年中の交通事故発生状況を月別,曜日別,昼夜別にみると次のとおりである。
ア 月別交通事故発生状況
交通事故発生件数,交通事故死者数ともに12月がピークとなっており,年の後半に多くなる傾向が続いている(第1-26図)。
イ 曜日別交通死亡事故発生件数
曜日別一日平均交通死亡事故発生件数をみると,土曜日(11.7件),金曜日(11.4件),日曜日(11.1件)の順に多い(第1-27図)。
ウ 昼夜別交通事故発生状況
交通事故全体でみると,夜間の発生が約4分の1(27.3%)であったのに対して,交通死亡事故でみると,夜間の発生がほぼ半数であった(50.3%)。交通死亡事故件数を前年と比較すると,昼夜間のいずれも減少し,特に夜間の交通死亡事故件数は4年連続で減少した(第1-28図)。
(9)道路形状別交通死亡事故発生件数
平成26年中の交通死亡事故発生件数を道路形状別にみると,交差点内が最も多く(35.7%),次いで一般単路(交差点,カーブ,トンネル,踏切等を除いた道路形状をいう。)(32.6%),カーブ(14.8%)の順になった(第1-29図)。
(10)第1当事者別の交通死亡事故発生件数
平成26年中の第1当事者の交通死亡事故発生件数を車種別にみると,自家用乗用車(50.0%)及び自家用貨物車(18.3%)で全体の約7割を占めている(第1-30図)。
自動車運転者が第1当事者となった交通死亡事故発生件数は,減少傾向で推移している。10年前と比較すると,16~24歳の若者は約3分の1に減少したのに対し,65歳以上の高齢者は増加している(第1-31図)。
(11)法令違反別交通死亡事故発生件数
平成26年中の交通死亡事故発生件数を法令違反別(第1当事者)にみると,安全運転義務違反が56.8%を占め,中でも漫然運転(16.5%),脇見運転(12.9%)が多い(第1-32図)。
(12)事故類型別交通死亡事故発生件数
平成26年中の交通死亡事故発生件数を事故類型別にみると,人対車両の横断中が最も多く(25.6%),次いで車両単独の工作物衝突(15.5%),車両相互の出会い頭衝突(13.5%)の順に多い(第1-33図)。
3 高速自動車国道等における交通事故発生状況
(1)概況
平成26年中の高速自動車国道等(高速自動車国道及び指定自動車専用道路(道路交通法第110条第1項の規定により国家公安委員会が指定する自動車専用道路)をいう。以下同じ。)における交通事故発生件数は1万202件(うち交通死亡事故189件)で,これによる死者数は204人,負傷者数は1万8,062人であった(第1-34図)。
前年と比べると,交通事故発生件数及び負傷者数は減少し,死者数も23人(10.1%)減少した。
(2)死亡事故率
高速自動車国道等は自動車専用の道路であり,原則として平面交差がないことなどから事故率は低く,高速自動車国道についてみれば,平成26年で1億走行台キロ当たりの交通事故発生件数は6.5件である。
しかし,高速自動車国道等は高速走行となるため,わずかな運転ミスが交通事故に結びつきやすく,事故が発生した場合の被害も大きく,関係車両や死者も多数に及ぶ重大事故に発展することが多い。このため,死亡事故率は,その他の道路の約2.7倍である。
(3)事故類型別及び法令違反別発生状況
平成26年中の高速自動車国道等における事故類型別交通事故発生状況をみると,車両相互の事故の割合(90.4%)が最も高い。車両単独事故の割合(8.7%)は,その他の道路(3.3%)と比較して高くなっている。
車両相互の事故では,車線上の停止車への追突が最も多く,次いで走行車への追突が多くなっている。
車両単独の事故では,防護さく等への衝突が最も多く,次いで中央分離帯への衝突が多くなっている。また,法令違反別発生状況をみると,安全運転義務違反が92.1%を占めており,その内容は前方不注意(44.7%),動静不注視(23.0%),安全不確認(11.2%),ブレーキ操作不適(5.3%)が多い。
(4)昼夜別交通事故発生状況
平成26年中の高速自動車国道等における昼夜別交通事故発生状況をみると,交通事故全体では昼間の発生(71.2%)が夜間の発生(28.8%)の約2.5倍となっているが,交通死亡事故でみると,夜間の発生(57.1%)が昼間の発生(42.9%)の約1.3倍となっており,死亡事故率では夜間(3.7%)が昼間(1.1%)の約3.3倍となっている。