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無人航空機の登録制度の創設と有人地帯上空での目視外飛行(レベル4)の実現に向けた制度整備について

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無人航空機の登録制度の創設

近年,無人航空機の利活用が急速に進展する半面,無人航空機による事故や航空法により必要とされる許可・承認を受けずに無人航空機を飛行させるような事案が頻発しており,こうした中,無人航空機の所有者が分からず,事故等発生時の原因究明や安全確保のための措置を講じさせることができない場合があることが課題となっていた。

このため,事故等の原因究明や安全確保上必要な措置の確実な実施を図る上での基盤となる,無人航空機の所有者情報等の把握等の仕組みを整備する必要があり,第201回通常国会において,無人航空機の登録制度の創設を内容とする航空法の改正が成立し,令和2年6月24日に公布された。

具体的には,無人航空機は,国土交通大臣の登録を受けたものでなければ飛行させてはならないこととなる。また,国土交通大臣は,無人航空機の登録を行った際には,申請者に対し登録記号等を通知することとし,登録を受けた無人航空機は,登録記号の表示等の措置を講じなければ飛行させてはならないこととなる。この規定により,書き込みやシールの貼付による機体への登録記号の表示に加えて,技術開発が進められている,無人航空機の情報を電波で発信することで識別を可能とする「リモートID」と呼ばれる技術等についても,技術開発の進捗状況等を踏まえ義務付けられることとなる。

このほか,登録の要件や更新,取消し・抹消等の制度を整備している。

登録制度は,令和4年6月までに施行することとされており,また,これに先立ち令和3年12月までに登録の受付を開始することとされている。なお,確実な登録を確保するため,簡便で申請者負担の少ない手続きとするためのオンラインシステムを構築することとしている。

無人航空機の登録制度のイメージ。登録申請所有者がオンラインで手続(機体情報、所有者・使用者情報)をし、国土交通大臣が登録すると、オンラインで登録記号が通知され、機体へ表示する。(1)登録義務、(2)表示義務、(3)その他が新設されている

有人地帯上空での目視外飛行(レベル4)の実現に向けた制度整備

無人航空機は,「空の産業革命」ともいわれる新たな可能性を有する技術であり,既に空撮,農薬散布,測量,インフラの点検等の場で広く活用されている。また,離島や山間部,過疎地域等における荷物配送への活用が始まりつつあるところ,今後,都市部での物流等,更に多様な産業分野の幅広い用途に利用され,多くの人々がその利便性を享受し,産業,経済,社会に変革をもたらすためには,有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4)の実現が不可欠である。

このような背景から,「空の産業革命に向けたロードマップ2020」(小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会)や「成長戦略実行計画」(令和元年6月21日閣議決定)において,2022年度を目途に,安全上の観点からこれまでは飛行を認めていなかったレベル4などのリスクの高い飛行の実現を目指すことが官民・政府全体での目標とされ,飛行リスクの程度に応じて飛行の安全性が厳格に担保されるよう,制度整備を行うことが求められている。

このため,レベル4の実現に向け,令和2年3月に,小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会において,「小型無人機の有人地帯での目視外飛行実現に向けた制度設計の基本方針」が取りまとめられたところであり,これに基づいた必要な制度整備等についての議論の場として,交通政策審議会航空分科会技術・安全部会の下に「無人航空機の有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会」(以下「検討小委員会」という。)を設置し,令和3年3月に無人航空機のレベル4飛行等の実現のための機体認証や操縦ライセンス等の制度の創設等に関する中間取りまとめを公表した。

この結果,新たな制度においては,無人航空機の飛行類型を3つに区分し,それぞれの飛行のリスクの程度に応じて規制を適用することとした。

まず,レベル4のように,第三者の上空を飛行する場合は,現在,安全の観点から飛行を認めていないところ,厳格に飛行の安全性を確保する必要があることから,新たに創設する機体認証を受けた機体を,新たに創設するライセンスを有する者が操縦し,運航管理の方法等を確認するための国土交通大臣の許可・承認を受けた場合には,飛行できるようにすることとする。

また,これまで個別の許可・承認によって認めていた第三者上空以外での飛行は,機体認証を受けた機体を,ライセンスを有する者が操縦し,飛行経路下への第三者の立ち入りを管理するなどのルールに従う場合には,原則として飛行ごとの許可・承認を不要とし,ユーザーの利便向上を図ることとする。

なお,これまで許可・承認を必要としていない飛行については,現行規制どおり,特段の手続きなく飛行を可能とする。

機体認証は,無人航空機の個別の機体の安全性を国が認証するものであり,メーカーが型式について認証を受けた場合は個別の機体認証の手続きを簡素化する。また,操縦ライセンスは,学科試験と実地試験を実施し,無人航空機の操縦者の技能を国が証明する制度を創設するものである。これら機体認証制度及び操縦ライセンス制度においては,利用者利便等を確保しつつ,民間の能力を最大限活用することとする。

あわせて,現在運用上求めている飛行計画の通報や事故発生時の国への報告などを法的に義務づけることとする。

これらの制度について,航空法改正案を閣議決定した。

無人航空機(ドローン)の飛行の環境整備。無人航空機の飛行形態として、レベル1は、目視内での操縦飛行。レベル2は、目視内飛行(自動/自律飛行)。レベル3は、無人地帯における目視外飛行。レベル4は、有人地帯における目視外飛行(現行では飛行を認めていない)
無人航空機(ドローン)のレベル4の実現のための新たな制度の方向性。機体の安全性に関する認証制度(機体認証)、操縦者の技能に関する証明制度(操縦ライセンス)を創設し、(1)機体認証を受けた機体を、(2)操縦ライセンスを有する者が操縦し、(3)国土交通大臣の許可・承認(運航管理の方法等を確認)を受けた場合に可能とする
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