特集 通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策について
第2章 通学路における点検のこれまでの取組及び飲酒運転根絶に向けたこれまでの取組
第2節 飲酒運転根絶に向けたこれまでの取組

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特集 通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策について

第2章 通学路における点検のこれまでの取組及び飲酒運転根絶に向けたこれまでの取組

第2節 飲酒運転根絶に向けたこれまでの取組

1 危険運転致死傷罪の新設(改正刑法(平成13年12月施行))

平成11年に,東名高速道路で飲酒運転のトラックに追突された乗用車が炎上して幼児2人が死亡した交通事故が発生するなど,悪質・危険な運転行為による交通事故が後を絶たず,厳罰化を求める声が高まった。

このことも踏まえ,平成13年の刑法の一部改正(平13法138)では,危険運転致死傷罪が新設され,飲酒の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させるなどの行為を行い,人を死傷させた者に対して,より法定刑の重い罰則が適用されることとなった。

2 飲酒運転罰則等の引上げ,酒気帯び運転の罰則適用対象の見直し(改正道路交通法(平成14年6月施行))

平成14年には,飲酒運転等に対する罰則や違反行為に付する行政処分の基準点数が引き上げられた。また,罰則の対象となる酒気帯び運転の基準値が,呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25ミリグラムから0.15ミリグラムに引き下げられるなどした(特集-第32図)。

特集-第32図 改正道路交通法(平成14年6月施行)の危険な運転行為等に対する罰則等の引上げ
区分 基礎点数
施行前 施行後
酒酔い運転 15点 25点
酒気帯び運転 6点 13点
無免許運転 12点 19点
共同危険行為 15点 25点
区分 付加点数
施行前 施行後
死亡事故(注) 13点 20点
ひき逃げ 10点 23点

注: 専ら違反行為をした者の不注意により発生したもの

違反行為 改正前 改正後
救護義務違反(ひき逃げ) 3年以下の懲役又は20万円以下の罰金 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
飲酒運転(酒酔い) 2年以下の懲役又は10万円以下の罰金 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
飲酒運転(酒気帯び) 3月以下の懲役又は5万円以下の罰金 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
過労運転(麻薬等) 2年以下の懲役又は10万円以下の罰金 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
過労運転(その他) 6月以下の懲役又は10万円以下の罰金 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
無免許運転 6月以下の懲役又は10万円以下の罰金 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
不正手段による免許証取得 1年以下の懲役又は10万円以下の罰金 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
共同危険行為等 6月以下の懲役又は10万円以下の罰金 2年以下の懲役又は50万円以下の罰金

注 基礎点数については,罰則の対象となる酒気帯び運転の基準値が,呼気1リットル当たりのアルコール濃度が0.25ミリグラム以上のものである。

3 飲酒検知拒否の罰則引上げ等(改正道路交通法(平成16年11月施行))

平成14年6月の改正道路交通法施行により,飲酒による交通事故,交通死亡事故が減少した一方で,罰則等の強化以後,飲酒検知拒否による検挙件数が増加した。その要因として,飲酒運転に対する罰則と比べ,相対的に飲酒検知拒否に対する罰則が低くなったため,飲酒運転による処罰を逃れるため呼気検査を拒否する悪質なドライバーが増加したことが考えられたことから,平成16年の道路交通法の一部改正(平16法90)により,飲酒検知拒否の罰則を引き上げ,警察官が呼気検査を確実に実施し,飲酒運転による交通の危険を防止するための措置を適切に講ずることができるようにした。

4 飲酒運転罰則等の引上げ,助長行為の直罰化(改正道路交通法(平成19年9月施行)等)

平成18年に福岡県で発生した,飲酒運転の乗用車に追突された乗用車が橋の下の海中に転落して幼児3人が死亡した交通事故を契機に,国民の飲酒運転根絶の機運が一層高まり,平成19年に飲酒運転を助長する行為を直罰化するとともに,飲酒運転に対する罰則を強化するなど,罰則の引上げ,行政処分の強化を行った(特集-第33図)。

特集-第33図 改正道路交通法(平成19年9月施行)の内容。運転者本人に対する罰則、運転者の周辺者に対する罰則、救護義務違反、飲酒検知拒否、を示している

また,平成19年の刑法の一部改正(平19法54)では,それまで業務上過失致死傷罪等が適用されていた自動車運転による死傷事故について,交通事故事件の実態に即した適正な科刑を実現するため,自動車運転過失致死傷罪が新設された。

5 行政処分の強化(改正道路交通法(平成21年6月施行))

平成21年には,飲酒運転に対する行政処分が強化された(特集-第34図)。

特集-第34図 改正道路交通法(平成21年6月施行)の内容。基礎点数及び相当する欠格期間の規定、酒気帯び運転に付する基礎点数の引上げ、を示している
6 自動車運転死傷処罰法(平成26年5月施行)

飲酒運転や無免許運転など悪質・危険な運転行為による死傷事犯が依然として発生しており,このような悪質・危険な運転行為による死傷事犯であっても,現行の危険運転致死傷罪に該当せず自動車運転過失致死傷罪が適用された事件などを契機として,これらの罰則の見直しを求める意見がみられるようになった。

そのような状況を踏まえ,危険運転致死傷罪の規定の整備,過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪の新設,無免許運転による加重の新設などを内容とする「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(「自動車運転死傷処罰法」(平25法86))」が平成25年11月に成立し,26年5月20日に施行された。

7 事業用自動車を対象とした飲酒運転対策

平成21年3月に策定した「事業用自動車総合安全プラン2009」において,目標に「飲酒運転ゼロ」を設定し,重点施策として「点呼時におけるアルコールチェッカーの使用の義務付け」「飲酒運転に対する行政処分の強化」を掲げた。

平成23年5月1日からは,運送事業者が運転者の乗務の開始前,終了後等において実施する点呼の際に,目視で確認することに加え,アルコール検知器の使用を義務付け,運転者の酒気帯びの有無を確認することとした。

(アルコール検知器の例)。検知器、運転免許証のカードリーダー、表示器などがある
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