第3部 航空交通の安全についての施策
第2節 航空機の安全な運航の確保

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安全を確保しつつ,航空輸送の発展等を図るためには,十分な技能を有する操縦士等の安定的な供給を確保することが必要である。このため,独立行政法人航空大学校における着実な操縦士養成の実施や新たな在留資格(特定技能)による航空機整備分野での外国人の受入れ等,操縦士・整備士の養成・確保に向けた各種取組を推進する。

航空機の運航に係る新たな技術や手法(衛星等の新しいサービスを用いた運航方式や乗員の疲労管理等)に加え,航空機運航分野におけるCO2排出削減に向けた取組(RNAV航行の運航基準の見直し等)について,ICAOや諸外国の動向を継続的に把握し,国内の運航基準への適切な反映を行う。

平成30年から令和元年にかけて,操縦士の飲酒に係る不適切事案が相次いで発生したこと等を踏まえ,操縦士のアルコール摂取に関する適切な教育を含む日常の健康管理の充実や身体検査の適正な運用に資する知識の普及啓発を図るとともに,航空会社に対する定期的な監査・指導を実施する。さらに,操縦士の身体検査を行う医師(指定医)等に対する講習会の内容の充実化を図るとともに,指定医が所属する航空身体検査指定機関等に対する立入検査を強化することにより,更なる能力水準の向上・平準化を図る。

危険物輸送に関する国際的な安全基準の検討に積極的に参画し,我が国としての技術的な提案を行う。また,これらの動向を踏まえ国内基準の整備を図るとともに,危険物教育訓練の徹底・指導や,危険物に関するルールの周知・啓発を図ることで制度の実効性を高める。

小型航空機の事故を防止するため,特定操縦技能審査制度における審査項目の見直し等を通じて操縦者の技量維持を図るとともに,審査員の認定を含めた技能審査の在り方を検討する。また,安全情報発信については国と関係団体とが連携して情報を発信する取組を引き続き実施していく。事故及び重大インシデント等が発生した際には必要に応じ,小型航空機の運航者に指導を行う。さらに,小型航空機へ簡易型飛行記録装置(FDM)を搭載しての実証試験から得られた活用策の検討結果を踏まえ,当該機器の普及促進を図る。

事業者が社内一丸となって安全管理体制を構築・改善し,国がその実施状況を確認する運輸安全マネジメント評価については,運輸防災マネジメント指針を活用し,自然災害への対応を運輸安全マネジメント評価において重点的に確認するなど,事業者の取組の深化を促進する。

平成29年9月に航空機からの落下物事案が続けて発生したことを踏まえ,30年3月に「落下物対策総合パッケージ」を策定した。同パッケージに基づき,同年9月に「落下物防止対策基準」を策定し,本邦航空会社のみならず,日本に乗り入れる外国航空会社にも対策の実施を義務付けており,本邦航空会社は31年1月から,外国航空会社は同年3月から適用している。また,29年11月より,国際線が多く就航する空港を離着陸する航空機に部品欠落が発生した場合,外国航空会社を含む全ての航空会社等から報告を求めている。報告された部品欠落情報については,原因究明の結果等を踏まえて国として航空会社への情報共有や指示,必要に応じて落下物防止対策基準への対策追加等を実施しており,再発防止に活用している。引き続き,「落下物対策総合パッケージ」に盛り込まれた対策を関係者とともに着実かつ強力に実施していく。

我が国に乗り入れている外国航空会社の運航する機体に対する立入検査(ランプ・インスペクション)の充実・強化を図るとともに,外国航空機による我が国内での事故及び重大インシデント等の不具合が発生した際には,必要に応じ,関係国の航空安全当局及び日本に乗り入れている外国航空会社に対して原因の究明と再発防止を要請する。また,諸外国の航空当局と航空安全に係る情報交換を進めるなど連携の強化に努める。

悪天による航空交通への影響を軽減し,航空交通の安全に寄与するとともに,航空機の運航・航空交通流管理を支援するため,航空気象情報を提供している。航空気象情報の更なる精度向上と適時・適切な発表及び関係機関への迅速な提供を実施するため,航空機の運航に必要な空港の気象状況を観測する装置の整備や高度化を進める。特に,令和5年度は,航空機の離着陸に多大な影響を及ぼす低層ウィンドシアー(大気下層の風の急激な変化)を検知する空港気象ドップラーレーダーを鹿児島空港において,空港気象ドップラーライダーを東京国際空港において,それぞれ更新整備を行う。加えて,航空気象情報の作成に資する数値予報モデルの更なる高度化のため,新しいスーパーコンピュータの運用を開始する。また,火山灰に対する航空交通の安全の確保及び効率的な航空機運航に資するよう,航空路火山灰情報を適時・適切に発表する。

  1. 安全な運航の確保等に係る乗員資格基準や運航基準等の整備
  2. 危険物輸送安全対策の推進
  3. 小型航空機等に係る安全対策の推進
  4. 運輸安全マネジメント評価の実施
  5. 落下物防止対策の強化
  6. 外国航空機の安全性の確保
  7. 航空交通に関する気象情報等の充実
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