【中学生区分】 ◆最優秀賞 小田 莉子(おだ りこ)

全部理解して欲しいと思いません。しかし、知って欲しいです。
小田 莉子 (氷川町及び八代市中学校組合立氷川中学校 2年 熊本県)

「何でお前笑っているの。ヤバッ。」や「授業中にそれ(足が動いてしまう)止めてくれない。集中できないから。」
など言われたことがあります。直す努力をしていますが、今ひとつ空気を読むことが苦手です。また、体のどこかが自然と動きます。他にも、人とは違った感覚があり、よく指摘を受けます。

学習では、国語と数学が他の教科よりも分かりません。運動も、言われた通りに動かそうとしても思うように動かせず、姿勢も悪いです。それに、大きな音が嫌で、特に花火の音や運動会のピストルの音、爆竹の音が異常に怖くてしかたがありません。

私は、保育園の頃からいろいろと言われてきましたが、年齢が上がるに連れて周りから厳しい言葉をかけられることが増えました。自分を守ろうとして言葉や態度が悪くなってきたと思います。同時に、自分も責めるようにもなり「私なんか必要か?」と思うことも。

いわゆる、私は「発達障がい」です。「自閉症スペクトラム症」と診断されました。他にも「注意欠如・多動症」「学習障害」「発達性協調運動症」の疑いもあります。たくさんの障がいをもって生まれたことに、「かわいそう。」と思う人も多いかもしれません。

できない私を、ゆっくりと成長する私を、母は理解してくれています。だからと言って、他のお母さんのように優しい言葉でなぐさめたり、甘やかしたりしません。「人のことをとやかく言う前に、自分はどうなの?」や「自分がどう生きたいのかしっかり自分で考えなさい。」と言うような母です。ただ、私にだけ厳しくしているわけではなく、弟にも同じです。また、母の仕事で関わった人たちも同様のようです。それに、母自身も自分に厳しい人です。でも、人には親身になって手を差し伸べる人です。母をしたう人にとって、表面上の優しい言葉よりも、実際に行動する母の姿を見ているので、厳しさの裏に込められた愛情を感じます。私も成長したのか今ではそれを、感じます。弟は、まだのようです。

私の母は、学校の先生をしています。音楽の先生から、特別支援学級の先生をするようになりました。きっと私がきっかけです。

家では、よく勉強したり生徒やその家族についての支援方法を考えたりしています。そして、保護者の方に「迷惑をかけますと言わないでください。迷惑だと思っていませんよ。私も同じ悩みをもつ同士、一緒に頑張っていきましょうね。」のような言葉を伝えています。逆に、私のことになると「ご迷惑をおかけしてすみません。」と言っています。そのせいか、二つの立場で板挟みのようになると、「特性は個性だと分かってもらえないのか。」と、愚痴をこぼす母がいます。私のような人にとって、母のような存在は、救われます。

私のことを全部理解して欲しいとは、思いません。しかし、見た目で分からない障がいがあることを知って欲しいです。治療をして軽減できても、治るものではありません。どんなに一生懸命に頑張っても悔しいですがすぐに成果は出ません。だからと言って、特別扱いをして欲しいのではありません。具体的に教えて欲しいだけです。何がだめだったのか振り返りながら直す努力をしていきます。冷たい言い方や軽蔑するような言い方にも慣れていますが、やはり傷つきます。そして、防衛本能が働くのか、反抗的になってしまいます。

障がいの有無に関わらず、一人ひとりの個性を自分のものさしで否定したり、皆と同じような考えを押しつけたりするのは違います。花がそれぞれ色と形に特徴があるように、個性にも特徴があります。カラフルに咲き乱れる花が綺麗なように、カラフルを認め合える世界も、きっと綺麗なはずです。バリアを外した、その様な世界に興味をもってみませんか。