(PDF形式:375KB)別ウインドウで開きます

障がい者制度改革推進会議 差別禁止部会(第2回)
議事録

○棟居部会長 定刻になりましたので、これより第2回「障がい者制度改革推進会議差別禁止部会」を開催させていただきます。
差別禁止部会は一般傍聴者の方にも公開しております。また、会議の模様はインターネットを通じても幅広く情報提供いたします。
なお、御発言に際してのお願いとして、発言を求めるときはまず挙手をいただき、指名を受けた後、御自身のお名前を述べられてから、可能な限りゆっくりと御発言いただくようお願いいたします。
本日の会議は16時55分までは予定しております。
それでは、東室長から構成員、オブザーバー及び専門協力員の出席状況と資料説明をお願いします。
○東室長 こんにちは。担当室の東です。今年もよろしくお願いします。
今日出席いただく方の中で、遠藤オブザーバーが御都合により15時ごろ到着されるということです。まだ大谷委員、池原委員が来られておりませんけれども、早晩来られると思います。また、竹下委員は御都合により15時30分ごろに退席される予定です。
本日の議事は差別禁止に関する諸外国の法制度についてのヒアリングということで、3名の研究者の方のレクチャーを予定しております。ただ、中央学院大学法学部准教授の長谷川聡先生が体調不良ということで今日御欠席になりますので、本日は2名の方からの御報告になります。長谷川先生につきましては、資料は今日ありますけれども、次回か次々回に御報告いただくことになります。
続きまして、資料の確認をさせていただきますが、議事次第、座席表に続きまして、資料1がEUにおける障害者差別禁止法制、引馬知子先生の資料です。
資料2がイギリスの障害者差別禁止法制、長谷川聡先生が書かれたものです。
資料3がフランスの障害者差別禁止法制、永野仁美先生が書かれたものです。
以上お手元にありますでしょうか。御確認をお願いします。以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
それでは、議事に入らせていただきます。本日のテーマは差別禁止に関する諸外国の法制度についてです。2名の研究者から諸外国の差別禁止法制についてレクチャーをしていただき、討議を通じて共通理解を深めていきたいと思います。
最初のレクチャーは田園調布学園大学准教授で、差別禁止部会の専門協力員でもある引馬知子さんからEUにおける障害者差別禁止法制についてお願いします。引馬さん、お願いします。
○引馬専門協力員 今、御紹介いただきました引馬知子と申します。私は「障害を事由とする均等(差別禁止)法制の国際的動向とEU-多様性を活かす社会の創造に向けて-」という題で報告させていただきます。
最初に、差別禁止法制の国際的動向に若干触れたいと思います。その後、EU域内の障害に関わる均等法の成立の経緯やその内容について、一定の最低基準や枠組みが形成されつつあることを含めて御報告します。限られた時間での御報告ということで、詳細について割愛する部分もあるかと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
現在、日本を含む先進国は少子高齢・グローバル競争社会に面しております。長寿に関わる生きがいや医療、福祉、社会保障の課題、あるいは生産年齢人口の減少による経済成長の低下への懸念などが取り上げられています。こうした状況をかんがみ、安定し活力のある成熟社会をいかに再構築していくかが模索されています。
多くの国々で活力ある社会は、社会を構成するすべての人がその個性を最大限発揮し、主体的に参画してこそ成り立つという考えが共有されています。そのような社会は言い換えるとインクルーシブな社会、一人ひとりが尊重される共生社会であると言えます。もとより性別、障害の有無やその度合い、年齢、人種、宗教、言語など、人は多様性に富んでいます。これら変えることのできない、あるいは変えてしまってはその人でなくなってしまう属性をすべての人が有しています。
一方で、多様性あるいは違いは、その人と社会の関わりを往々にして相当程度規定し、均等ではない扱い、区別や差別は、ときに社会的に不利な状況あるいは排除を生み出します。社会的な不利や排除を削減し、いかに多くの開かれた機会を提供していけるか、このためにどのような制度設計をするかが多様性を社会の力に変換する鍵となっています。
多くの先進国では1990年代から2000年代、社会的に不利な立場にある人々の社会経済的な選択の幅を拡大する取組みに着手し始めました。そのかなめの1つは障害に関わる差別禁止法の制定です。これは言い換えますと均等法ということで、両者は内容的には同じです。この動きはまずアングロサクソン系の国々で始まりました。アメリカの1990年の障害を持つアメリカ人法、イギリスの1995年の障害差別禁止法などがその例です。1990年代後半からこの動きは更に広まりました。伝統的な福祉国家、大陸モデルの国々からなるEU地域でも次に報告しますように、EU指令を起点に障害の事由を含む均等法が次々と制定されました。韓国でも2007年に障害者差別禁止法が制定されています。
グローバルな動きとしては、国連の障害者権利条約があります。国連の同条約は人としての当たり前の権利と自由を障害がある人にもない人と同じように認め、障害者が社会の一員として尊厳を持って生活することを目的としています。その実質的な確保を目指すため、同条約は障害のある人々への非差別を広く謳い、これを実現するための合理的配慮の実施を含めた諸手段を盛り込んでおります。すなわち、国連条約と各国の障害者差別禁止法制には重複する部分が多くあるのです。
これらの国際的な動向を前提として、次にEUと加盟国の障害を事由とする均等法制に焦点を当てていきたいと思います。EU、欧州連合は拡大を続ける地域的な統合機関です。現在加盟国は27、総人口は5億人です。人口に占める障害者の割合は高齢化とともに増加し、最新情報では現在約6人に1人を占める約8,000万人に何らかの障害があると報告されております。EU地域では障害分野や均等待遇保障においても、EUと加盟国がますます協働し合いながらその枠組みを決め、取組みを行うに至っています。
さまざまな経過の後、EU障害法政策の現在の目的は、障害のある人が、障害のない人が既に有する権利と等しい権利を享受し、社会参加することに置かれています。この目的の達成のために相互に関係のある3つの柱が挙げられます。
第1にこの部会と深く関わる差別禁止(均等)です。
第2にメインストリーム化です。
第3にアクセシビリティです。
1つ目の柱である均等待遇、差別禁止に焦点を当てて、EU及び加盟国で障害を事由とする均等法が制定される経過と現状、その内容に触れていきたいと思います。まず経過です。EUは1970年代、障害を視野に入れた政策に着手しました。当時、地域的な格差や障害のある人々の貧困率の高さ、社会的排除の事実に対する認識が徐々に高まり、EUの対応が求められるようになったためです。
こうした中、1982年にはEUの行政機関である欧州委員会に障害対策室が設置され、特に経済社会的な視点からさまざまなプログラムが実施されていきました。
EUの加盟国の閣僚で構成される閣僚理事会は、1989年、加盟国の努力にもかかわらず経済成長と雇用の創出が必ずしも障害者の雇用の機会などに結び付いていない、EUが共通目標を設定し、特に職業訓練、雇用、就労上の差別をなくすよう積極的な措置を講じるという方針を出しております。
1990年代初頭、障害を事由とする均等法をEUで制定する動きが活発化しました。当時ほとんどの加盟国にこうした立法はなく、市民権モデルに基づく均等法あるいは差別禁止法の導入に対しては欧州の福祉モデルを切り崩すのではないかを理由として反対も起こりました。
一方、EU域内では障害のある人々に関する割り当て雇用制度、雇用主への税控除、特別な教育訓練や金銭的な保障制度などが実施されているものの、障害当事者はこれらの「権利の主体」ではなく、その時代毎の情勢に左右される政策の間接的な対象者である、つまり「保護の客体」であるという共通認識もありました。こうした議論の中で、欧州では福祉モデルと市民権モデルが相反せず、むしろお互いを補完し合うという結論が導かれました。
こうした議論と並行してEU経済社会政策は少子高齢・グローバル競争社会への対応として、障害者を含む社会的に排除された人々の雇用・就労促進と支援を打ち出しました。障害者の就業率の向上が持続的な経済成長と社会の安定につながるという見方が大勢を占めるようになり、非就業者への福祉的給付の拡大よりも就労支援が、保護雇用よりも一般労働市場での就労支援が、長期的には財政支出が少ないという考えが提示されました。
以上の結果、EUの基本条約を改正するアムステルダム条約、これは1999年に発効しておりますが、このアムステルダム条約にはEUが障害などを事由とする差別に取り組む適切な措置をとれるという新規定が13条として設けられました。アムステルダム条約が発効した翌年の2000年、EUは13条を根拠として、障害を事由とする初のEU均等指令を労働分野で採択しました。いわゆる雇用均等枠組み指令です。労働分野の均等法を他分野に先じて速やかに制定したことについて、同指令の前文は「雇用・就労と職業がすべての人にとって均等な機会を保障する鍵である。これがEU市民の経済、文化、社会生活への完全な参加に大きく貢献し、市民の可能性を最大限に引き出す」と記しています。この指令の内容や加盟国での履行については、後ほど触れたいと思います。
こうした経緯を受けて2000年代後半から現在になりますと、障害に関わる均等待遇、差別の法的取組みはより包括的に実施されてきております。現状について4つの動向が挙げられます。時間の関係から、レジュメの2)にある一部分もここでまとめて触れたいと思います。
4つの動向ですが、1つ目にEUでは2008年、生活全域にわたるEU均等法として、「宗教及び信条、障害、年齢、性的指向によらない、人の均等取扱いの原則に関する指令」が提案されております。その内容は、社会保障、保健医療などの社会保護、教育、公共交通、文化、物やサービス提供へのアクセスを含む包括的な非差別・権利保障です。生活全般におけるEU均等法の必要性は、雇用均等枠組み指令が就労・雇用分野のみを対象として、その領域が狭いことへの批判、就労上の均等待遇は就労分野での対応だけでは完結しないという事実に基づいています。更にこれは、包括的な非差別保障を規定する国連の障害者権利条約のEU自身による批准を見据えた、2007年3月のEUによる同条約の署名との関わりからも提起されました。この法案は、現在EUの閣僚理事会で審議中となっております。
また、EUでは障害に関連する第二次法が少なくとも40以上はあると言われています。その中でも差別禁止に関わる法規は、資料2が示すとおりです。
2つ目に近年の動向として、資料2の中に記載したEU規則が挙げられます。これは特に航空、鉄道の移動に関わって採択されており、障害者や移動に制限がある人を対象とするEU非差別規則です。同規則は障害のある人が支援や情報を得て、EU域内の空港や飛行機などを障害のない人と同様に自己負担なく使用できるよう定めたものです。空港や旅客機等のスタッフには、障害がある人を支援できるよう適切な訓練を行わなければならないことになっています。また、船舶や長距離バスについても新たなEU法制が検討されています。EU規則は後に触れます指令と異なって、規則の文言がそのまま加盟国に適用されます。
3つ目は、こうしたEUの第二次法における差別禁止の積み上げにも呼応しまして、EUの第一次法、先ほどのアムステルダム条約の改正となりますリスボン条約においても障害を事由とする差別禁止に関わる規定が盛り込まれていることです。リスボン条約は2009年12月に発効しています。EU条約が規定するEUの価値や目的、更には政策の実施に関わり、障害者差別への取組みが明言されているということです。レジュメをご覧いただき、ここでは詳細は割愛いたします。
新たな動向の4つ目になります。1か月前になりますが、2010年12月23日、EUは国連の障害者権利条約の批准書を国連に寄託しました。正確には、国には批准、EUのような地域的統合機関には正式確認という用語を使用しますので、正式確認書を寄託したことになります。批准と正式確認は同じ意味で、ここでは便宜上、批准という一般的な用語を使わせていただきます。
国連に批准書を寄託したことで、障害者権利条約はEUに対して法的拘束力を有するようになりました。地域的統合のための機関が国連人権条約を批准をしたのは歴史的に初めてのことです。EUが障害者権利条約を批准したことから、EU加盟国のうち国連条約を未批准である国々の批准、更には先ほど述べた生活全般にわたる新しい指令案の閣僚理事会での早期の採択に弾みがつくものと考えられます。
資料1の図の上半分をご覧ください。国連の条約は批准をもってその内容の履行が約束され、EU指令は加盟国の国内法に優位するため、加盟国には指令に即した国内法の制定や改正をする義務が生じます。EU域内では2010年代に至り、EU法、国連の権利条約、加盟各国法が相互に関係性を持ち合って障害のある人々の均等待遇と、このための具体的権利の保障がなされつつあると言えます。全体としてEUの障害者への均等待遇、差別禁止法は、まず社会経済政策の影響を大きく受けて制定され現在に至り、更に人権保障として包括的に取り組まれるようになっています。
レディング欧州委員会副委員長は、今月の初め、次のように述べています。「EUが国連の人権条約を批准した歴史的な出来事を称える。2010年秋に公表した"欧州障害戦略2010~2020"はEUが国連同条約を履行するための具体的な措置とその時間設定を示している。障害のある人々が、日々の生活において負荷的な障壁に直面しないように保障することは、我々全員の責務である」ということです。
"欧州障害戦略"において、EUが直近の5年間に差別禁止分野で取り組むことは資料3が示すとおりです。いろいろな取組みが載っておりますが、例えば先ほど申しました「合理的配慮」が労使あるいは市民社会に理解されて、よりよく実行されるための取組みを行っていくなどを含んでいます。
また、欧州経済成長戦略が社会経済政策の中で出されており、これが"欧州2020"といいます。欧州2020では域内の就業率を75%に引き上げることを目指しており、この戦略の下で、すべての人への職と機会の保障を掲げています。この枠組みの中でも障害者の差別への取り組みが含まれております。
次にEUの障害を事由とする差別禁止法として、現在、中核的な位置づけにあります雇用均等枠組み指令の概要や各加盟国における同指令の国内法化、これは置き換えと呼ばれていますが、この履行について見ていきたいと思います。
雇用均等枠組み指令は、「障害」を始めとする5つの事由による、自営業を始めとするすべての雇用・就労分野における職業訓練や職業へのアクセス、昇進、再訓練、解雇や賃金を含む雇用条件や労働条件における直接差別、間接差別、ハラスメントを禁止しています。同指令の均等原則には一定の範囲で例外が認められます。また、特に「障害者」に対して均等待遇を実質的に確保する新たな手段として、合理的な配慮の規定とこれに対する社会的な支援などを定めています。
合理的配慮とは、ある職務に適格な、あるいは有資格の障害のある人への均等な取扱いの原則を遵守するために、使用者にとって不釣り合いな負担にならない限り、障害者の就労への参加や昇進あるいは訓練へのアクセスを可能とする適切な措置を使用者がとることを意味しています。合理的配慮の例としましては、例えば車いすでのアクセスの提供、労働時間の調整、在宅勤務、人的支援の提供などが挙げられます。これらについて整理した報告書が、EUでは既に出ております。
一方で、EU同指令はポジティブ・アクション、差別や不利益を防止する特別な措置の維持、均等待遇の確保に有利な規定を加盟国が設けることを容認しております。合理的配慮が個々人が行使できる具体的権利であるのに対して、ポジティブ・アクションは集団に対する差別是正措置であり、その代表例は割り当て雇用制度だと考えられております。
そのほか雇用均等枠組み指令は権利の擁護、救済として、均等待遇の権利が侵害されたと考えるすべての人が、加盟国において行政、司法的な手続をとれる権利や、その場合の立証責任と分配などを規定しています。
次に加盟国のEU指令の国内法化とその履行に焦点を当てて、各国のEU指令の置き換えにおける多様性と、一方で、EU域内で一定の共通基準が形成されてきていることを述べたいと思います。EUの第二次法の1つである指令は、加盟国にその形式や方法は委ねるものの、達成されるべき結果がEU指令を満たさなければいけないという位置づけを持っています。このため指令が採択されますと、加盟国は一定期間内に指令を満たす国内法の制定や改正を、各自の方法で行わなければなりません。雇用均等枠組み指令の国内法化の期限は2003年12月2日でした。障害と年齢の事由については、加盟国が申し出てこれが認められれば、2006年12月2日までの3年間の延長が許されました。こうしたEU指令の性質から、EU指令を満たす障害と均等待遇に関わる国内法化、つまり置き換えについては資料4が示すように多様性が見られます。
また、多様性についてですが、EUの加盟各国では障害を事由とする差別禁止法の改正が近年もかなり行われており、資料の体系も時間を経て変化しております。表には2006年時点の状況が載っております。
いずれにしても、置き換え期限が過ぎた現在、資料5が示すように、EUの全27加盟国は既にEU指令を満たすべき何らかの雇用・就労に関わる障害を事由とする均等法、あるいは差別禁止法を有しています。こうしたEU加盟国における多様性もさることながら、EUでは次に述べる少なくとも4つの点から、障害を事由とする差別禁止法の履行において域内共通の最低基準が形成されつつあります。
第1点ですが、EUでは加盟国の障害差別禁止法の内容が実際にEU指令を満たしているかを精査して、これを満たしていない場合には加盟国に対応を求める違反手続があります。実際に欧州委員会は多くの加盟国に対して、指令の一定の内容の実施が不適切であるという理由を付した意見、あるいは正式な通知を送付しています。例えば合理的配慮規定が重度障害者に偏っているとか、差別の定義が指令と乖離しているなどがあります。違反手続の対象となった国々は一定の期限内に回答を示せなければいけないことになっています。この指令を履行するためのEU共通の最低基準の確保する試みは、現在も続けられております。こうした取組みにより、EU域内の障害を事由とする差別禁止分野の法政策は一定の基準に収斂していくこととなります。
第2点目は、EU指令の事項における共通基準の形成が、欧州司法裁判所を通じて起こっていくことです。その例は、2008年に判決が出ました英国のコールマン事件です。既に述べましたように、EU雇用均等枠組み指令は均等待遇が侵害されたと考えるすべての人に、司法的または行政的手続をとる権利を認めています。また、欧州司法裁判所は加盟国の裁判所の申請に応じて、EU法の解釈や妥当性について先決的な裁定を下し、その裁定は加盟国に対して最終的かつ優位な法的拘束力を有します。
コールマン事件ですが、英国の法律事務所で秘書を務めていたシャロン・コールマンは障害のあるオリバーを出産後に元の職務に戻ることも、同じく子どもを育てる同僚に許されていた柔軟な労働時間や休暇なども拒否され、結局職を去ることを余儀なくされました。余談ですが、コールマンはオリバーを出産後に配偶者と別れて暮らすことになり、彼女にとって働き続けることは生活のためにも重要でした。コールマン事件は息子の障害を理由とする雇用上の差別とハラスメントが、英国の障害差別禁止法、Disability Discrimination Act の対象になるかを提起しました。英国の当時のDDAは、EU指令を置き換えるために2003年に改正されていました。このため英国の国内裁判所は欧州司法裁判所に、EU指令における障害による差別の禁止は、障害のある人の家族などの関係者への差別にも及ぶのかについて先決裁定を求めました。EU指令上の文言では、指令は「障害」を事由とする差別を禁止しており、「障害者」への差別を禁止するとは書かれていません。このため、この「障害」の事由に、障害のある人の家族などの関係者も入るか否かが問われたのです。結果、欧州司法裁判所はこの事件がEU指令における障害による差別に当たるとの判決を下しています。
この判決により、英国ではEU法を置き換えたDDAの施行日である2004年10月以降の同様の事件については、これらを障害による差別と扱うことになりました。この先決裁定は英国は勿論のこと、EU全加盟国で障害のある人の家族や関係者への差別に対する具体的権利の付与を意味する結果となりました。また、介護者や育児者の働き方に関わる議論を喚起するものとなっております。
以上のように加盟国間の指令における解釈や国内法の置き換え上の相違の一部は、欧州司法裁判所に提起され、その判決が実際の権利保障とEU内の共通基準を形成することがあります。
3点目です。これはすでに述べたことに関連しますが、EUの共通基準の形成はEU指令と加盟国内法、国連の権利条約の内容との相互関係性からも構築されていくと考えられます。資料1の図の下の四角の中になりますが、具体的権利の享受に関する対比項目、例えば障害の概念と定義、合理的配慮の否定と差別の関係性などとその方向性をご覧下さい。
4点目は、EU加盟国間の法政策の比較やその検討からも、EU域内において一定の基準を導く収斂が起こっていることです。合理的配慮規定を1つの例に見ていきたいと思います。資料6をご覧下さい。合理的配慮規定は、加盟国内法では同じく「合理的配慮」、あるいは「適切な措置」、「合理的調整」、「合理的手段」、「障害のある人のニーズに対する調整」などとさまざまな専門用語で規定されております。しかしながら、EU域内における解釈について、例えば資料6の上段にあるように、これはポジティブ・アクションとは明確に分けてとらえられることがEU域内で明確になっております。更には合理的配慮の合理性をいかに解釈するか。こういったことについても、加盟国の法を比較した上で、合理性が適正と効果性により判断され、これが同時に過度な負担と混同して判断されないようにという見解などが出され始めています。
以上のように、EU加盟国は目的に向けてお互いの取組みを高めるEUシステムをつくり、そこで議論を積み重ね、その結論はEU域内の共通基準の発展的な形成に寄与しております。そして、EU内のこうした議論は、常に、障害のある人に障害のない人が既に有している権利と等しい権利を確保するという理念を軸に、いかに多くの開かれた機会を提供していくかに方向づけられていると考えられます。
こうしたEUの障害を事由とする差別禁止に関わる取組みへのEU市民の評価として、レジュメでは4つほどの市民に対する調査結果が記されております。
それでは、全体のまとめです。EUでは個々人の社会参画の機会拡大につながる具体的権利の形成が、人権の保障、格差社会の是正、社会保障給付などとの関係から試みられています。
均等・非差別法政策は少子高齢社会にあるEUにおいて、活力と持続可能な欧州を創造するひとつのかなめと位置づけられています。
既存の権利、労働や教育、自立生活などを社会的に不利な立場にある人々、例えば、障害のある方々が実質的に享受できるような均等法制の実施を目指しております。
日本は均等法を既に導入したEU諸国などの議論を踏まえ、これを国内のよりよい法整備に役立てることができます。日本の現法制や福祉制度には、例えば割り当て雇用制度や就労支援サービス、所得保障制度などにおいて、欧州の国々との共通点が多くございます。EUの福祉と均等アプローチの両立への模索には参考になることがあると思われます。
以上で報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○棟居部会長 引馬さん、どうもありがとうございました。
それでは、ここで15分間の休憩をいただきたいと思います。再開は50分過ぎぐらいになるんですが、手元の予定表では13時55分とさせていただきますとなっておりますが、どうしましょうか。勿論質疑の時間はたっぷり時間があるんです。ただ、その前に休憩を入れるか、それとも連続かということです。
こういうふうにさせていただいてよろしいでしょうか。つまり質問をどんどん出してください。それである程度は引馬さんにお答えいただくけれども、詳細については多分関連質問とかダブってくるところがいろいろあるでしょうから、途中で休憩を入れます。今から休憩までの恐らく15分か20分の間はどんどん質問項目、あるいは確認的な御質問を入れていただく。引馬さんからの御回答は比較的簡単に、つまり先ほど早くてノートが追いつかなかったというような、私は半分ぐらいしかノートがとれていないと思うんですけれども、こういうものを補うようなおさらい的なことをさせていただいて、その後の質疑というのは休憩を挟んでという流れでよろしいですか。そのようにさせていただきます。
それでは、まず各論点について、先ほどの御報告の順番にここがよくわからなかったとか、これはこういう理解でいいのかとか、一問一答的なやり方でお願いします。どなたからでもどうぞ。
竹下副部会長からどうぞ。
○竹下副部会長 現状が非常に把握できる報告ありがとうございました。その報告に関連して、内容を深めるために3点ほど短く質問させてもらいます。
第1点目は、障害者の範囲の問題です。報告によればEU域内5億人のうち6人に1人、すなわち約16%、8,000万人が障害者として報告されているわけですが、この場合の障害者の定義なり障害の概念についておわかりであれば教えていただきたい。これが1点目です。
2点目ですが、法政策の3の柱として、差別禁止とメインストリーム化、アクセシビリティーを挙げておられるわけですけれども、ここでいうメインストリーム化というのはイギリスでいうインテグレーション、北欧でいうノーマライゼーションとどういうふうに概念づけ上違うのかということについてわかれば教えていただきたい。これが2点目です。
○棟居部会長 ごめんなさい。ゆっくりお願いします。質問者に対しても聞いておりますので、よろしくお願いします。
○竹下副部会長 済みません。
3点目は、まさにEUにおける障害者差別禁止の柱としての雇用、就労の関係が出てきているわけですけれども、その場合、雇用均等一般枠組み指令というものがあるようですが、ここにおける平等処遇というか、均等化の内容として何が意識されているのか。とりわけ割り当て雇用を指摘されているわけですが、単純にいえば賃金などにおいて、ポジティブ・アクションとして割り当て雇用によって採用された障害を持つ労働者に対する処遇均等化というのはどういうふうに位置づけられているのかについて、おわかりであれば教えていただきたいと思います。
以上です。
○棟居部会長 引馬さん、ごく簡単にお願いします。
○引馬専門協力員 EUの8,000万人で約6人に1人という数ですが、これは数からもわかると思いますが、障害をかなり広くとらえております。ちなみについ最近までの資料ですと、5,000万人から多いもので6,000万人という数が出されておりました。8,000万人はこの秋に出された新しい資料で、その後の資料は全部その数になっています。いわゆる狭い意味の医学モデルに基づく障害、あるいは、社会保障給付を例にみるように、個々の法律が特定の目的のために定義する障害の範囲は限定されることが多々あります。一方、ここでは非常に広く障害をとらえていると言えるかと思います。
2つ目のメインストリーム化です。これはEUではよく使われる言葉です。メインストリーム化は、社会には障害のある人も障害のない人もいるという前提で、通常の労働や教育、交通など、生活全般にわたる各法政策を策定し、これを実施することを指します。例えば職業訓練プログラムをつくるときに、社会には必ず障害のある人もない人もいるだろうことを意識して策定します。スポーツプログラムをつくるときも同様です。このような視点で通常の政策において、障害のある人への取組みを当たり前に行っていきます。更に、障害は多様性に富んでいるので、特定の障害に対応して必要なことがあれば、そこについてはきちんと特化した法施策を行う考え方です。ノーマライゼーションやインテグレーションを実現するという意味でもたいへん関係性が深いですが、メインストリーム化自体の考え方は、今、御説明したようなものです。
雇用・就労に関する御質問ですが、集団的なポジティブ・アクションである割り当て雇用制度というよりは、むしろ指令を通じて個々人が実際に享受できる、均等待遇のための諸手段を実行していこうとしています。従来からの割り当て雇用制度には一定の意義があるけれども、限界もあるだろうとした議論が、むしろこの指令をつくり出した1つの理由と言えるかと思います。例えば就職活動をして、就労の機会を得ようとするときにも、雇用主に対する措置である割り当て雇用制度では、特定の障害のある個人が雇われるか、雇われないかという個別的状況には必ずしも直結しない場合があります。すなわち、雇用率は障害者の就労を全体としてとらえ、そこに個別的な視点はなかなかみえてきません。合理的配慮の視点を組み込みますと、特定の個人が自分の個性とともに個別的に対応した合理的配慮を場合によって活用しつつ、職に就くことが可能となります。ひとりひとりの就労に焦点をあてる考え方になるかと思います。就労上の均等待遇、先ほど賃金の話が出ていましたが、こうしたところも、今、お話したような流れの延長線にあると言えます。
きちんとお答えできたかどうかわかりませんが、以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
先ほど申しましたように、今は一問一答的に確認的なお答えをいただいたということで、これでとりあえず次の御質問者に移らせていただきます。順番ということですけれども、全員にしていると非常に時間がタイトになるので、御質問は短く、主に確認的なことに重点を今は置いていただけますでしょうか。
浅倉委員、お願いします。
○浅倉委員 浅倉むつ子です。
1点だけ質問があります。資料6の表の意味なのですが、例として「合理的配慮とポジティブ・アクション」とあり、その右に「方向性」、「各国の状況」があります。「各国の状況」の欄に、国の名前の前に×、△、○とありますが、これはどういう意味なのでしょうか。
○引馬専門協力員 ×、○、△について、御説明を全くしませんで、申し訳ありません。この表はEUの資料をもとに作成いたしました。表をつくるときに、国の前に×、○、△と書くのはよくないのではないか等といろいろと考えながら、小さくまとめたかったので結局このように書きました。
例えば、ベルギーでは合理的配慮とポジティブ・アクションの関係性が混同されて理解され、国内法ができ上がっていました。しかしながら、EU内の10年来の議論の結果、合理的配慮とポジティブ・アクションは違うものなのだという考え方に到達しています。ベルギーの法律の関連条項は、改正する必要があるという見解が欧州委員会などからも出ていまして、この項目については×をしました。2007年頃の状況ですので、ベルギーもその後変わっているかもしれませんが。
ドイツの法については、表のもとになる報告書が書かれた時点では、両者の関係が規定上あいまいであったということで、△でした。
これに対してフィンランド、オランダ、スペインは、この点についてはきちんとなっていました。
下段の合理的配慮の「合理的」の解釈も同様な○、×でして、イギリスなどは「適切な措置」に関しては長い歴史をEUの中では持っているけれども、合理性の解釈においては少し課題があるのではないかと言われています。
そのような○、×、△です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
続きまして、池原委員お願いします。
○池原委員 2つほどあるんですけれども、1つは雇用均等一般枠組み指令が2000年に採択されて、それよりも前と後で雇用情勢が変化しているのか、それとも思ったほど変わっていないのかということを1つ伺いたい。というのは、ADAができて二十数年になりますけれども、雇用の分野で必ずしも絶大な効果を上げたとは言えないのではないかという話も聞いたりするので、もしドラスティックな変化がないとすると、どんなところに問題があるとお考えか。変化があれば勿論それでいいんですけれども、それが1点です。
もう一つは、ちょっと検討外れの質問かもしれませんけれども、90年代ぐらいからアクティベーションとかワークフェアという、言わば福祉を比較的抑制していって、なるべく一般就労へのモチベーションを高めていくという全般的な政策が欧米で行われていると思うんですが、これと差別禁止、特にこういう雇用分野での関連性というのはあるのか、ないのかということです。
それと少し関係しますが、3番目です。結局、現段階では福祉モデルと人権市民モデルが両立しているということなんですけれども、具体的にいうと例えば割り当て雇用と差別禁止アプローチがどんなふうに拮抗したり、切り分けられたりしているのか。あるいは所得保障と雇用機会の均等による一般就労がどんなふうに関係しているのかということは、欧州でも国によって勿論違うと思うんですけれども、もし例があれば教えていただきたいと思います。
○引馬専門協力員 1つ目は障害に関わる雇用情勢の変化です。EU内でも指令の効果が全くないわけではないけれども、障害者の雇用における均等の実現は難しい面が多々あるようです。特に福祉的就労から一般就労へという試みが掲げられていますが、全体としてなかなか難しいという結果も公表されております。幾つかの加盟国が一定の成果を出しているように見受けられ、また、少し変化が見られる国もあると報告されています。全体的に劇的な変化があったかというと、ないと言った方が多分いいのではないでしょうか。しかしながら、指令が2006年を最終期限として国内法化されたという前提もあり、また近年、合理的配慮を含めた均等待遇に実効性を持たせるためのいろいろな取組みが試みられつつあります。いっきに状況を変えることは難しいですが、これらを軸に、いろいろな成果が期待されていると言えます。
例えば、EU内での合理的配慮の実施を見てみても、これまでの諸制度の積み重ねの延長としての合理的配慮を、今、変革しているところです。多くの合理的配慮は思ったほどのコストがかからないというデータがアメリカなどでも出ていて、こうしたところは差別禁止の枠組みにとどまらず、社会全体の理解を得て進めていこうとEUも考えていると思います。
御存じのように、EU全体も景気は必ずしもよくありませんので、雇用情勢全体が厳しい状況にあります。この間、金融危機への対応をEUは行っているわけですが、その中でも、障害者に対する対策をきちんとやっていかなければということは言及されていました。
福祉の抑制のご質問についてです。先ほどから何度か触れております合理的配慮も、実際に中身を見てみると、効果的な合理的配慮のためにはさまざまな社会的支援を行う必要があることがわかります。社会的支援があって初めて障害者が均等な社会参画への機会を持つことが多々あり、これは社会的な支援、言い方を変えると広い意味での福祉的支援をどのように行っていかなければいけないかという問いに行き着くのです。福祉的支援の視点や実施方法がシフトしつつあるのではないかという感覚を、私としてはEUの資料を読んでいて持っております。当然厳しい面もあるかもしれませんが、そこをきちんとやらなければ差別禁止の法をつくった意味がないということだと理解しております。
もう1点くらいご質問があったかもしれませんが、済みません。
○池原委員 ちょっと伺ったのは、例がなければいいんですが、例えば一般就労と所得保障みたいな関係とか、言わば一般就労ができないから所得で補足的に保障するとか、あるいは一般就労が困難だから保護的雇用で何かを行うという辺りの拮抗というか、どういうふうに組み合わさっているかというような具体的な制度の例みたいなものが、もし簡単なサンプルがあれば教えていただきたいと思います。
○引馬専門協力員 福祉的就労と一般雇用のつながりですね。
○池原委員 はい。
○引馬専門協力員 日本の福祉的就労と類似概念である欧州の保護雇用について、そのコスト高や閉鎖性に対する批判があり、その存在意義と一般雇用へ向けた議論がなされてきました。結果、EU域内では保護雇用の必要性があるという判断が現時点ではなされています。しかし、保護雇用自体が開かれたもので、一般就労との間で行き来ができるものでなければいけない、どちらも障害のある人たちの生活保障をきちんと行わなければいけないと考えられています。このためには労働と社会保障を一体的に捉える必要があるとされ、その試みも進んでおります。閣僚理事会の最新の社会保障・社会保護・社会的包摂に関する合同報告書では、<1>開かれたインクルーシブな労働市場、<2>社会サービスの質、<3>適切な最低所得、の3つの確保を柱として、その辺りの諸措置を行っていくと記しています。
EU全体でも、例えば一般就労にあたって、EU競争政策の中で障害のある人を始めとする不利な立場にある人たちに一定範囲で賃金補てん等を行うことは、EU域内の自由な競争をゆがめないと定めています。裏返せば、EU全体で一定の条件と範囲内であれば賃金補てん等を促進しているという意味です。このような政策を実施しております。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。これは非常に複雑なお話を一度にされておりまして、徐々に何回にも分けて少しずつ理解を深めさせていただければと思います。そういう意味でも、引馬さんには是非風邪を早く治していただいてとお願いします。
私個人の質問というのではないんですが、最初に大きな柱をお出しになったと思いましたのは、人間というのは多様なんだ。障害というのもその多様性あるいは属性の1つであるということで、性別とか年齢とか、我々は障害と同じような属性の1つとは考えないものと並べて障害というものもとらえていくという流れの中で、障害者を福祉ということで囲い込む、保護するというのではなくて、むしろ彼らの参加を促して自由に、つまり同じ人間、多様な人間の在り方として受け入れていく。それが結局は社会全体の活力にもつながる。これは大きな障害者対策についての哲学の変化があって、それをEUはいろんな国ごとのずれとか早い、遅いはあるけれども、上手に成長につなげている、あるいはつなげようとしている。そこを日本はくみ取れるのではないかという御示唆をちょうだいしているのではないかと総論的には受け取りました。これも間違っておるかもしれないですけれどもね。
お待たせしまして、ごめんなさい。大谷委員、お願いします。
○大谷委員 教育に関しては後で質疑のところで聞きたいと思うんですが、大きな枠組みの確認だけです。12月に確認という形だけれども批准したということなんですが、これは選択議定書の部分も批准したんでしょうか。要するに個人通報のところです。
○引馬専門協力員 選択議定書は批准しておりません。しかし、これについても議論がEU内ではあります。
○大谷委員 そうすると、また一般の理解なんですけれども、こちらに総論的なところでEU指令と障害者権利条約との比較があり、なし、であるんですけれども、個別的に、私の知っている限りではEU指令の方が水準が少し高い分野もあるように思っています。そうだとすると、EU指令の方がミニマムラインになって、そして、欧州裁判所が救済するというシステムが批准後も生きているということでよろしいですね。
○引馬専門協力員 EU内での今おっしゃられたようなことについては、国連の権利条約との関係性の中にあったとしても、EU内で解決されるものだと思います。ただ、国連条約にあって、今、EUの法的な枠組みには規定がないものがあるので、その辺りは相互の影響があるだろうと思います。
○大谷委員 もう一つだけなんですけれども、置き換えという表現をされているんですが、一般にヨーロッパでは条約批准後も国内法がない限りは直ちに法的効果が発生しない。ですから、国内法がなければならないという、いわゆる置き換え法になるのかもしれないんですけれども、我が国では国内法はなくても条約の批准と同時に国内法効果は持つと言われています。ヨーロッパにおいては、置き換えがなければ条約そのものの法的効果が発生しない。だから、この置き換えというのが行われていると理解したんですが、違うのかどうかを確認させていただきたいと思います。
それと一部留保ということで、条約批准に留保している国があるんです。各国では一部留保しているんですけれども、EU全体として批准したということになると、その辺の効果はどうなるんでしょうか。
○引馬専門協力員 私がこの報告で用いた置き換えは、あくまでもEU指令を置き換えるという意味で使っております。EU指令は加盟国で置き換えなければいけない。指令を国内法化する作業を、置き換えとここで表現しております。先ほど出てきたEU規則は、文言がそのまま加盟国で適用されるとEU法が定めています。国連条約との関係における加盟各国の置換えは、個別の状況に応じて実施されると考えられます。
○大谷委員 国連条約もEU条約も条約ですから、条約は国内で置き換え法がないと直ちに法的効果が発生しないんですね。
○引馬専門協力員 EUの一次法であるEU条約は、加盟国の批准により発効し、それ自体が原則として加盟国内法より優位性をもっています。EUの二次法である、EU指令を置き換えるということです。EU指令の目的や内容を加盟国が既に満たしていれば勿論置換えは不要ですが、そうでない場合には加盟国それぞれの方法で置き換え、その目的と内容を満たさなければいけないという制度になっています。
先ほどの条約の留保の話ですが、国連の条約のEUの正式確認、批准に関してEUが唯一出した条件は、雇用における軍隊の適用除外です。これはEUが特段この点について非差別をしないと決めたわけではありません。既に、雇用均等枠組み指令が軍隊に関わる雇用上の非差別については加盟国に権限があると規定していたために、EUにはこれについて権限がありません。国連の権利条約のEUの批准に関して、権利条約の27条の労働の部分、労働のあらゆる形態の非差別に対して条件を付けています。それ以外の条件は一切付いていません。
そうなると、加盟国との関係性は非常に複雑で、これからどうなっていくかが注目されます。ただEUでは、加盟国とEUの間できちんとした権限の配分が寄託前にかなり検討され、合意に至っています。それが共有権限、排他的権限と言われるものです。現実として、かなりの部分がEUと加盟国の共有権限に入ってきております。共有権限に入る事項に関しては、EU域内で基準や取り組みに収斂が起こってくるだろうし、それをむしろ想定しているのではないかと考えられます。
○棟居部会長 よろしいですか。
次はどちら様ですか。ごめんなさい。ちょっとお名前からお願いできますか。
○松井委員 松井です。
○棟居部会長 松井委員、お願いします。
○松井委員 4つあります。
1つは既に竹下委員から質問がありましたけれども、障害の定義です。御承知のように、EUは国連の権利条約の交渉のときに基本的には障害の定義についてはしない。そういう意味ではEU指令でも障害の定義はないですけれども、EUとして何らかの基準を付けて調査をやっているのかという点が1つです。
もう一つ、アメリカのADAの場合は、ADAが適用されるのは有資格と限定されています。EUの場合の合理的配慮の対象となる障害を持った人たちについては、有資格といった限定はないのかどうかということ。
3点目は、EU指令に関する国内モニタリング機関ですが、国連の条約を批准した場合については国連の条約に基づいた国内モニタリング機関をつくらなければいけませんけれども、EUの場合にそういうことがあるのかどうかということです。
最後の4点目は、雇用に関する権利というか、例えばEU指令を根拠にあるいはそれにかわる何らかの根拠に障害を持った人たちが、仕事につくことについて権利として求めることができるのか。例えば雇用率制度はそういう形にはなっていません。雇用率を根拠に仕事を求めることはできない。
EUでは2020年には(労働年齢人口の)就業率75%ということが目標になっているわけですけれども、それには当然障害を持った人たちも含まれるわけですね。現実にはその就業率は障害のない人と大きな格差があるわけですけれども、その格差を是正する方法は非常に難しいのではないかと思います。
以上です。
○引馬専門協力員 8,000万人という数に関わる、EUの障害の定義あるいは統計がどのようにとられているかということですが、これは申し訳ないですけれども、私自身は把握しておりません。調べてみたいと思っております。わかりましたら、また御報告したいと思います。
2つ目は有資格の話です。職務に適格であることがEUでも言われておりますが、均等指令の中にそれがどのような形で書かれているか、ここに資料がありますので、きちんと確認してお答えしたいと思います。
国連条約が求めているモニタリング制度がEUで明瞭な形で確立しているとまではまだ言い切れないと思いますが、加盟国同士あるいはEU加盟国がどのような状況になっているかを、EU全体で把握するいろいろなシステムが既にあります。先ほどの違反手続もその1つですし、加盟国の状況を把握するさまざまな報告や検討のためのシステムがあります。例えば、障害者権利条約に関して「ハイレベルグループ」という加盟国政府やフォーカルポイントの担当者などが集まる組織が、EUの批准を見据えて2007年に既に立ち上げられています。ハイレベルグループは情報交換をしながらお互いの状況を把握し、各国やEUの障害者権利条約への取組みをまとめた報告書を毎年出しています。
また、権利条約のモニタリングに関して、特に共有権限事項について、どのように加盟国とEUが協力していくかが、既に「行動規範」において合意されています。例えば、EUに権限がある事項については、加盟国の権限を損なわない範囲で、国連条約の履行やモニタリングに関して、欧州委員会がフォーカルポイントとなります。欧州委員会と加盟国、場合によってEU諸機関は、モニタリング、報告や投票に関して緊密に協力しながら適切なあり方を協議していくこととなります。批准書の寄託が行われたばかりですので、これから「行動規範」などを軸に国連条約を満たす対応が具体的に見えてくると思います。
職がない障害のある方がこの指令によって何らかの職を持てるようなことになるか、権利があるかというご質問についてです。合理的配慮は個人の具体的権利として位置付けられており、合理的配慮を得て職務を遂行できれば、障害のない人と同じ土俵で職に就く可能性が広がります。少なくとも、この点や、非差別を法的に保障する枠組みにおいて、職を得る権利の保障が一歩進むと考えられます。割り当て雇用制度は個人の状況を勘案するものでは必ずしもありませんでしたので、個人が行使できる手段、職を得る手段というのがEU均等指令、それを置き換えた加盟国の法にはあると理解しております。
先ほどの、有資格については、EU指令全体としては「障害」を事由とする差別を禁止するとして有資格の有無を規定していません。しかし、合理的配慮義務については、指令の5条に「障害者」を特に対象にすると規定し、さらに、指令の前文17で職務に適格な障害者と定めています。
○棟居部会長 ありがとうございました。疑問点を更に深めていく時間はございますので、とりあえず課題を整理させていただいているという理解で進めさせていただきたいと思います。
松井委員、どうもありがとうございました。
お次はどなたでしょうか。御質問ございますか。ごめんなさい。お名前からお願いします。太田委員ですね。
○太田委員 太田と申します。ありがとうございました。大変勉強になりました。
3点ほど質問があります。
お話の中で英国の例をとり、差別禁止違反の例を挙げられました。もう少し具体的に救済の規定についてお話をいただけると幸いです。
もう一点につきましては、資料の中で福祉モデルと人権市民モデルの両立ということが考え方として挙げられていますが、福祉モデルとはどういう考え方だったのか、人権市民モデルとはどういう考え方だったのかということをお尋ねしたいと思います。
3点目は、雇用以外の交通や住宅、教育といった差別に関する取組みについて、EUはどういう展望を持っているのかということです。
以上3点です。
○引馬専門協力員 コールマン事件について、もう少し説明をということですね。
○太田委員 救済の在り方、システムについて教えてください。
○引馬専門協力員 コールマン事件が差別とハラスメントに当たるという判決が出たことで、申し上げたように、EU内では今後同様のケースについても同じような扱いをしていくことになりました。彼女は復職していません。その他、例えば金銭的な救済があったのかなどについては私自身は把握しておりません。また確認してみたいと思います。
○太田委員 コールマン事件そのものではなくて、一般的にコールマンさん以外で差別を受けた場合、どこに訴えたらいいのか。裁判所なのか、裁判所以外に救済機関があるのかどうかです。
○東室長 太田さん、それはEUとしての救済機関ということですか。EU加盟の各国の救済機関まで聞いているんですか。
○太田委員 両方です。
○引馬専門協力員 コールマン事件では、原告は最初に英国の労働審判所に訴えを起こしました。英国の労働審判所が、欧州司法裁判所にEU指令との関係で先行伺いをしました。コールマン事件に関して、今ちょっと正式名称が思い出せず申し訳ないですが、英国の人権関係の機関が当初から協力して、この一連の取組みを行っていました。
○棟居部会長 先ほどの太田委員の御質問は、障害者の家族が障害者の家族がいることを理由に職場で差別されたときに、コールマン事件での先決裁定、EUの機関は障害者の家族にも職場における障害者保護、差別禁止、これを家族にも拡大した。だったら、それは障害者本人が差別されたときと同じ労働審判の機関といった同じ機関がやるんですか、それとも人権委員会というような別の機関に回されて、そちらで救済されるんですかという非常に技術的な御質問ということでよろしかったですか。今、引馬さんはそういうふうにお答えになったと思います。
○太田委員 国によって違うのであれば、国によって違うとお答えください。国によって違うんでしょうか。
○引馬専門協力員 国によって、例えば申し立てを出す機関というのは違ってくるかと思います。しかし、EU指令に関わる部分について先行伺いをEUに立てるところは、EU加盟国であれば同じ道筋をたどることになります。
○棟居部会長 2点目の福祉モデルと市民権モデルの定義についてお願いします。
○引馬専門協力員 大変大きな質問で私などでお答えできないと思いますが、福祉モデルでは、戦後ずっとナショナルミニマムですとか、生存権保障、生活保障を国の責任において行ってきました。その中で、権利保障は社会サービスなどへも拡大していきました。当然、福祉を受けることに対する権利もあると思いますが、反射的受益権の域に留まる場合も非常に多く、その点でいわゆる市民権モデルとひと味違うところがあります。
例えば何らかの社会サービスを受ける権利の内容は、そのときの国の状況であるとか、人々の考え方であるとか、経済状況で変わってくる面がある。しかしながら、市民権モデルでは人であれば当然にして持っている権利を、当事者が主体となって享受することができる、これを強調しているモデルだと思います。ここに先生方が大勢いらっしゃるので、私はこれぐらいで、むしろ先生方にお答えいただいた方がいいと思っております。そのようなところで、両モデルの積み上げをいかして両立を模索していきたいということがEUの考え方でした。
雇用以外の分野の取組みですが、まずは、EU法のレベルでは散在的に取組みが積み重ねられてきています。また、EU内ではアクションプログラムとして、生活全般にわたるさまざまな分野で取組みが行われています。EUが直接行うプログラムもあれば、加盟国から企画、提案を受けてEUが補助するという形で加盟国で行うものもあります。EUレベルの利益団体が集まるようなグループもできておりまして、各分野での施策もかなり共通して行われています。特に陸続きの国々ですので、交通への対応などを含め、共通して行われる必然性もあるかと思います。
○棟居部会長 論点を出していただき、一応の御回答、宿題も含めていただいたということでよろしいでしょうか。
先ほど申しましたように、中休み的な休憩を予定しております。だから黙ってくださいというわけではないんですけれども、山崎委員、どうぞ。
○山崎委員 お疲れのところ済みませんが、簡単に2点教えてください。
EUの障害者政策、施策について、組織としては、先ほどの御報告で障害対策室というのが設置されて、そこが主導していると伺ったんですが、これがまずどういう組織なのか。国際組織の中のどういう機関の下に位置づけられているかということと、おわかりになれば何人ぐらいスタッフがいるか。その中に障害を持っていらっしゃる方をどの程度含んでいるのか。もしわかれば教えてください。
と申しますのは、先ほど部会長もおっしゃっていましたとおり、障害を含むさまざまな多様性のあるインクルーシブ社会、共生社会をEUは目指している。それは世界史的にも大変すごいことだと思うんですが、EUという国際組織がそういう当事者の意見をどういう形で受け止めようとしているかに私は非常に関心があるので、第1点目の質問になったわけです。
2つ目は大谷さんが御質問になったことに関連するのですが、レジュメでいいますと、資料1の読み方です。EUが国際組織として条約を批准した。法的に縛られることになった。そのことの本質的な意味は何かということです。EUは勿論主権国家からなっている国際組織ですから、それぞれの国が条約に入るということで条約は国家に受け止められるわけです。それとは別に中二階的に国際組織としてのEUが条約に入るということは一体どういうことか。
私の推測では、具体的にはEUの主要な機関である理事会とかあるいは委員会が法的に拘束されることになるのではないかと思うのですが、そういう理解で正しいか。あるいはそれプラスαの法的な意味合いがあるかを教えていただきたいと思います。
加えて、先ほども大谷さんがちょっとおっしゃっていましたが、選択議定書にEUが入ることになりますと、個人通報についてEUが受け止めるということで、抽象的には非常にわかるんですが、国家でない国際組織が個人通報制度にコミットすることが具体的にどういう意味合いを持つのかちょっと想像しにくいので、EUの中でどういう議論がなされているのかについても御紹介いただければありがたいと思います。
以上です。
○引馬委員 EUの障害対策室の話です。当時のEUの障害対策室は、欧州委員会の雇用労使関係・社会問題・教育総局の中にありました。欧州委員会はEUの行政組織であり、法的な提案権を持つ組織です。その後、対策室は引き継がれ、現在、雇用社会問題均等総局に障害部、ユニットが置かれています。12月に権利条約を批准した後に、EUの障害に関するホームページは司法総局に移ることになりました。組織改革が行われているようです。障害ユニットだけではなく、実際には例えば司法や競争政策など、多様な部署にまたがり障害に関わる取組みが行われています。
このため、実際に障害のあるスタッフが何人いるかについては、正確には把握しておりません。私が訪問した時には、一見障害がある方にはお会いしませんでした。しかしながら、欧州委員会を含むEU諸機関においても、障害のある人に対する均等対応をどのように実行するかについて、既に試みがあります。1998年には「障害のある人々の雇用のためのよりよい実践規約」がEU諸機関内の障害者雇用を促進する目的で策定されています。これは2003年に改訂されていますが、その内容の書きぶりは合理的配慮規定の導入を含めて相当変わっています。EU機関自身も、障害者の均等法政策をやる以上、その取組みを行わなければいけない意識は持っていると感じます。
それから、EUという地域的な統合機関が国連の条約を批准することの意味について申しますと、人権分野の批准は前例がなく、いろいろ教えていただきたいし、勉強したいというのが最初の答えです。先生がおっしゃるように、国連の条約はEU機関に対して拘束力を持つと理解しております。しかしこれには、権利条約の履行について合意された範囲でEU諸機関が責任を果たすという意味を含んでいると理解しています。EUはその枠組みの中で基本条約や、更にその下でEU指令などを持っています。EU指令は雇用均等枠組み指令が示すように、多くの場合に加盟国にとっての最低基準になっています。このようにEUが法的に関わっている事項に関しては、EUと加盟国が国連条約に対して共有権限を持つことになります。共有権限事項については、加盟国とEUの双方が混合した権限のもとに一貫した方法で国連条約の義務を果たし権利を行使します。障害者権利条約に関係があるEU法規は相当数あり、結果として、共有権限事項は多岐にわたります。
一方、例えば、EU機関がEUのスタッフとして障害のある方を雇用することは、EUの排他的権限であると整理されています。排他的権限は加盟国には権限がない事項です。障害者権利条約に対する共有及び排他的権限について、どれが関係するEU法規かは、寄託にあたりリスト化され明確に示されています。まず、これらの権限の範囲において、国連条約との法的関わりがどのようになっていくかがあると思います。
もう一つ、EUの文書を見ていると、EUが批准したことを1つの足がかりにして、EU全体で障害のある人たちに対する均等待遇保障をしていく政策的な動向があります。新しい"欧州障害戦略2010-2020"が、その例です。同戦略は国連条約をよりどころに、欧州社会が国連条約を履行する具体的な試みを行うとして、その内容や数値目標を定めています。こうした中で、EUが未批准の加盟国の批准を支援するのみではなく、国連条約のよりよい履行をお互いに支援していくシステムが生まれています。成功事例を交換したり、お互いの情報交換を行うなどもその例です。法的な意味のみではなく、EUが批准する意味が多面的にあると考えられます。
○山崎委員 山崎です。
選択議定書についての内部の議論を教えていただきたいと思います。
○引馬専門協力員 選択議定書に関しても内部の議論がありますが、じっくり読み込んでおりませんので、課題にしたいと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
私の素人考えというか素朴な感想でいうと、EU加盟国が個別に国連の人権条約を批准して、そちらに従うのだといってEU指令逃れをやるようなことがあるとEUにとっては非常に具合が悪のいで、EUが丸ごと入った。ただ、その解釈は自分らが独占するということは、戦略的にも自然なことだと思いましたけれども、それも誤りを徐々に訂正させていただきたいと思います。
山本委員、どうぞ。結構ですか。ありがとうございます。ありがとうございますというのは変な言い方ですけれども、恐れ入ります。
残りはいかがですか。よろしいですね。
大変長時間にわたり御報告者の方には的確にお答えいただき、また課題が浮き彫りになってきたということで、休憩をとらせていただきます。先ほど申しましたように、実は引馬さんはここでお役ごめんではありません。今、私の時計で2時26分ですので、あと15分というか14分でちょうど2時40分です。2時40分めどということで再開をし、その後、先ほど報告を受けた宿題等が明らかになりましたので、我々として何をくみ取るかといった議論をできればと思います。そして、3時5分ぐらいを後半のスタートの時刻に充てたいということなのですけれども、そういうタイミングで進行できればと思っております。
とりあえず今から15分の休憩に入らせていただきます。それでは、またよろしくお願いします。

(休憩)

○棟居部会長 それでは、再開させていただきます。
先ほど大変多く、また場合によっては詳細な論点にわたる質疑応答を既にしていただいております。残りの20分ほどを前半の報告に用意をしておるんですけれども、20分ほどを使わせていただきまして、先ほどの続きといいますか、続きは続きなんですけれども、もう少し大ぐくりで、我々がEUからどういうところを特に学ぶか。障害の定義について議論が成熟しておれば、EUで一定の議論がまとまっておれば、それをこちらは下敷きにしつつ検討をしていくといったことも可能だとは思うんですけれども、先ほど障害あるいは障害者の定義については正確なものはないのではないかといったお答えがあったりして、障害の定義についてEUを参考にどうしましょう、どういう議論をしましょうかとは触れないところなんですけれども、救済方法についてもEUということですから、結局は各国別に国内の置き換えをしていくというところで、EUという法システムに乗せる上での複雑さが当然ございますけれども、そうした障害の定義とかあるいは救済の方法、あるいは福祉ではなくて人権、市民権モデルという、先ほど太田委員がそれはどういう意味なんだという非常に重要な御質問をされたと思いますけれども、そこら辺りを私としてはEUを学ぶ上での1つの手がかりにできればと思っています。そうしたキーワードの関連で、この20分を有効に、次回以降の議論につないでいけるような形での御質問、御発声等をいただけませんでしょうか。何かこういうことを言うと、非常に敷居を上げておるような感じですけれども、詳細な事実というよりは、言わば理念としてどう受け止め、どう返していくか。そこのところでフリートークをしてみたいということなんですが、そういう進め方でよろしいですか。あるいは引馬さんから、先ほど来の御質問で、要するに自分の言いたいことはこうだったというようなことをくくっていただいてもいいと思いますし、いかがでしょうか。
川島さん、御発声ありますか。川島委員、お願いします。
○川島委員 ありがとうございます。
フリートークということですので、EUから学べるところで2点ございます。
引馬さんの資料6のところなんですけれども、1つは合理的配慮とポジティブ・アクションを区別しなさいというところだと思います。EUの2000年の指令の中では、合理的配慮をしないことは差別であるとは明示していないと思います。しかし、後の各国の実行とか障害者権利条約の規定を見て、合理的配慮とポジティブ・アクションは区別されるものなんだということが徐々に諸国で広く受け入れられるようになったと思うんですけれども、ここは特にEUから日本が学ぶべきところではないかと思います。ただ、難しいのは、どういうふうに区別できるのかというところは、合理的配慮もポジティブ・アクションの1つではないのかという議論も理論的に成り立つので、ここら辺をEUの方でどのように整理されているのかというところを具体的に見ていきたい。ポジティブ・アクションの割り当て雇用というのは明らかにポジティブ・アクションでいいと思うんですけれども、もうちょっと緩やかなタイプのポジティブ・アクションになると、合理的配慮と似ているのではないかという議論があると思います。
2つ目は同じ資料6の2つ目の例のところなんですけれども、合理的配慮という用語の合理的の解釈です。合理的配慮という言葉を我々がここで使っている場合、その意味というものが実はすごくあいまいです。EUの方で合理的というのは、単に過重な負担を伴わないような配慮だけではなくて、その内容が適切であるものでないといけないという議論がなされていると方向性のところで書かれておりますけれども、こういうような合理的配慮の意味自体、各国でどのようになっているのかというのは今後整理しなくてはいけないのではないか。EU自体がこの言葉を用いて、概念が混乱しているのではないかという印象を持ちました。
以上です。ありがとうございます。
○棟居部会長 お願いします。お名前をお願いします。
○松井委員 松井です。
いわゆるポジティブ・アクション、特に割り当て雇用制度の考え方ですが、障害を持つ人たちは経済的にコストがかかる。つまり社会的に負担になるという考え方なわけです。だから、企業間の負担を調整するために納付金というお金を徴収するという見方がベースにあると思います。それに対して、機会均等は基本的に合理的配慮をすれば対等の立場で競争できる。そういう環境整備をすることによって、障害を持った人たちが能力をフルに発揮して、対等な立場で参加していく。そういう意味で合理的配慮に象徴される機会均等の理念と、いわゆるポジティブ・アクションの背景にある理念というのはかなり違う。そこはある意味では相反する理念であるにもかかわらず、そこをどう調整し得るのか。そこが非常に大きな問題ではないかと思います。
○棟居部会長 今、松井委員がおっしゃった理念が違うというのは、1つは従来型のポジティブ・アクションの背後には先ほど引馬さんが紹介された福祉モデルという考えがあり、他方で合理的配慮という考えは同じ土俵に乗せる、対等性を確保するということなんだから、むしろ人権、市民権モデルの方が背景にあるんだ。結局福祉モデルと人権、市民権モデルという2つの区別に今のお話は対応していると考えてよろしいでしょうか。
竹下副部会長、どうぞ。
○竹下副部会長 竹下です。
あえてきつい言い方ですけれども、それを短絡的に決めつけることに疑問ありです。この後で永野さんからフランスの報告があると思うけれども、例えばフランスは2005年法、2008年法も含めてどんどんEUにならって、言わばEUの合理的配慮も取り入れながら機会均等化を図ろうとしている。もう片方で割り当て雇用制度を残して、かつ日本でいうところの雇用納付金も使って援助も続けているわけです。イギリスはDDAをつくったときに、割り当て雇用制度を廃止しているわけです。その2つがEUの国なわけです。だから、単純に決めつけるのではなくて、なぜそうなっているかという実態を我々はもう少し調査して、その結果としてどういう矛盾が起こっているか、どういう前進面が見られるかというところまで分析する方が大事なのではないでしょうか。私はそう思います。
○棟居部会長 一方を残して他方を排除するということではなくて、均衡点をどこに見つけるか。しかも、それはいろいろな国の事情などによって違うのではないか。それをもっと冷静に分析すべきだ。これは今まさに竹下副部会長が御指摘になったとおりだと私個人は受け止めました。
ただ、教科書的にいいますと、福祉モデルというのが一方にあり、他方では人権、市民権モデルというのがある。この2つの理念のせめぎ合いなんだというのは、大きな頭の整理としては非常に有用だ。ただ、有用過ぎる危険も承知しつつ、今後の議論でも多分生かされていく話ではないかと個人的には思っております。
○引馬専門協力員 今のことで、EU内の議論で障害に関わる均等の状況について申しますと、例えば、EUでは男女均等の分野の方が先行した積み上げがあります。男女均等分野のポジティブ・アクションに関しては、逆差別の議論がかなりあります。一方、男女に比べて、障害については、障害のある人とない人の間の不平等が更に大きいという共通認識があります。その意味では、ある程度の平等が達成されつつある状況までは、障害の分野において割り当て雇用などのポジティブ・アクションを続けることを否定しない議論や考え方があります。
○棟居部会長 ありがとうございました。
私が議論を切ってしまったかもしれないんですけれども、先ほどの松井委員の御質問の勝手に便乗したつもりなんですが、川島委員がもう一つおっしゃった点についてはいかがですか。合理的配慮の意味ということについて、引馬さんはその点もう少しフォローしていただけますでしょうか。合理的配慮の意味ということです。
○引馬専門協力員 合理的配慮ですね。
○棟居部会長 内容の適切さというところに重点が置かれつつあるんだ。過剰な負担まではしなくていいという、言わば企業側にとってもある程度その事情を斟酌したような合理的配慮という、そういう当初の理解から内容の適切さという方に移っているという御指摘でした。それについてもう少しフォロー、あるいは今のことが間違っていればその御指摘を賜りたいということです。
○引馬委員 合理的配慮を提供するかしないか、合理的配慮が過度な負担となり提供できないと認められるかどうかについてです。最初に考えるべきことは、障害がある人にとって配慮が必要であるか、ないかであるとされています。過度な負担を検討する前に合理的配慮が必要か、必要でないか、更に想定される配慮が適切であるか、適切でないかを考えるという方針です。合理的配慮の実施の判断過程は2段階ステップになっており、配慮が必要である、適切であるとなったときに、初めて次にそれが過度な負担かどうかを考えます。更にEU指令に基づきますと、過度な負担が当然社会的支援を含めた上で、実際に配慮を提供する事業者、これはサービス事業者や使用者を指しますが、事業者にとって過度な負担なのか否かを考えなければなりません。これはなぜかといえば、合理的配慮義務の目的が、障害がある人たちに対する機会をより多くしていくことにあるからです。
○棟居部会長 ありがとうございました。
資料6の合理的配慮という用語の合理的の解釈というところで、各国の状況でフランスに○が付いております。フランスはこの方向性に合った議論をしておる、あるいはそういう制度をとってきておる。○の意味はそういう理解でよろしいですか。今のフランス云々については、後の報告でまた期待をしておるところです。ごめんなさい。
浅倉委員、お願いします。
○浅倉委員 浅倉です。
ちょうど合理的配慮の議論が出ましたので、少しEUの考え方を教えていただきたいと思います。イギリスに×が付いていますので。私はイギリス法が専門なのですが、障害の問題には詳しくありません。しかし他の方の論文を読んだことがありまして、そこでは、イギリスでは「調整義務」すなわち他の国でいうところの「合理的配慮」に関わって、その義務は仕事に関連することに限られるという議論があるようなのです。使用者、事業主が行わなければいけない義務の範囲というのはどこまでなのだろうか、と考えますと、イギリスでは、仕事に関連することに限られるようなので、かなり範囲が狭いのではないかと疑問に思うのです。たとえば「トイレの介助」というものを合理的配慮に委ねるのは行き過ぎなのだという議論があるようです。そういう意味であれば、イギリスは、少し他の国と合理的配慮の中身の解釈が違うのかもしれないとも思います。
EUではそういうことについては何かガイドラインといいますか、指針のようなものを出しているのでしょうか。伺いたいと思います。
○引馬委員 EUでは合理的配慮に関して、EU各国の状況を把握し始めています。今から3年前に合理的配慮に関わる内容や事例などを検討した厚い報告書が出ています。トイレ介助のような詳細な名称では記載されていませんが、EU内で合理的配慮が具体的にどのように分類されるかも含まれています。合理的配慮への非財政的及び財政的な公的支援についても触れ、財政的な支援は、EU内で82ほどあったとまとめています。この報告書などを見ますと、合理的配慮の実施状況がもう少し具体的になると思います。
報告書の印象ですが、EU内でも従来の制度と新しい規定である合理的配慮を、今、すり合わせており、こうした把握の上で今後の検討が更に進むと思われます。先ほどの"欧州障害戦略2010―2020"の中には、EU域内で合理的配慮自体の理解を深める資料の作成や施策を行っていくことが盛り込まれています。川島委員が話されていた、加盟各国でその解釈がいかに行われ、EU全体で整合性や方向性が実際にどのように導かれていくのかなどが、今後、取組みの進展とともに明らかになっていくと思います。
つけ加えて、障害の定義に関わりEUではかなり詳細な報告書が出されています。加盟国の障害の定義を比較していくと、ある程度のEUの中の障害の概念や程度の幅が見えると思います。報告書では、加盟国内の定義は多様だけれども、例えば時間的概念、機能障害の程度に関わる視点等が入るなど、共通の幾つかの骨子が挙げられていました。
○棟居部会長 引馬さんにかなりまとめていただいた格好になりましたが、大体大きな論点がぽんぽんと出て、特に最後は合理的配慮、これも今後各国別にいろいろ勉強させていただく中でも比較検討のキーワードになってこようと思います。
ここらで引馬さんの報告及び質疑応答について終わりたいと思いますが、どうぞ。
○伊東副部会長 大変参考になるお話、どうもありがとうございます。国の違い、歴史、経過、国際的な立場・関係などいろいろなことがありますので、一概に国比較ができないですね。先ほどお話があったEUとしては障害の定義をしないということですが、このことは重要な課題だと思います。法律には一般的に前文において、その法の精神、理念、目的などがよくうたわれますが、できれば各国の障害者差別禁止法において前文でどのようなことが書かれているか、できましたら要点でも結構でございますので、幾つか比較的にご紹介いただければ参考になると思います。それと併せて合理的配慮に関する国によっての理念、考え方もお願いできればありがたいと思います。
もう一点、3ページの障害の定義と概念のところ、表の中に、EU均等指令なしとなっていますが、欧州司法裁判所の判例あり、このコメントに関心があります。一体どういう判例があるのか。これも機会がありましたら、御紹介いただければありがたいです。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
ということで、本日だけではまだまだ時間が足りないんですけれども、EUの中の各国についても、これからすぐフランスについてお話をいただくということで、コンディションの余りよろしくない中、引馬さんにはまた振ることがあるかもしれません。しかし、ともあれ今この時点で一応引馬報告及び質疑応答については切らせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
それでは、スケジュールではここで休憩ということだったんですが、これはよろしいですね。
○東室長 はい。
○棟居部会長 2番目のレクチャーに移らせていただきます。上智大学法学部准教授で差別禁止部会の専門協力員でもある永野仁美さんから、フランスの障害者差別禁止法制についてお願いいたします。永野さん、どうぞ。
○永野専門協力員 永野と申します。
それでは、私からフランスの差別禁止法制について報告させていただきたいと思います。
まず沿革から見ていきたいと思います。フランスの差別禁止法制は障害を理由とする差別のみを独立で禁止する制度にはなっておりません。例えば人種であるとか性別であるとか宗教等がありますが、そうしたさまざまな理由に基づく差別を禁止している規定がありまして、その中で障害を理由とする差別も禁止されていることになっております。したがいまして、他の事由によります差別禁止法制の発展、展開によって差別禁止規定の改正が行われ、その恩恵を障害を理由とする差別の禁止が受けるということも多々ありました。
しかし、ここでは障害に焦点を当てて、その発展史、展開を見てみますと、障害を理由とする差別に関しましては、1990年の障害・健康状態を理由とする差別を禁止する法律と2005年に制定されました障害者の権利と機会の平等、参加、市民権に関する法律、この2つが非常に重要であると言うことができます。
まず1990年の法律から見ていきたいと思いますが、余り知られてはおりませんが、フランスでは実は1990年、ADAと同じ年に障害、健康状態を理由とする差別禁止原則が確立されております。このときにどのような形で障害を理由とする差別が禁止されることとなったのかですけれども、フランス法ではこの当時既に刑法典・労働法典におきまして、人種や性別、宗教等々を理由とします差別を禁止する規定が存在しておりました。1990年の法律はどのようにして障害を理由とする差別を禁止したのかといいますと、既に存在しておりました差別禁止規定の差別が禁止される事由のところに障害、健康状態も加えるという形で差別を禁止することとなりました。この結果といたしまして、刑法典におきましては、障害を理由とする差別が差別罪に当たることになり、刑事制裁の対象とされることとなりました。また、労働法典におきましては、障害を理由とする解雇であるとか懲戒等々が無効とされることになりました。
しかし、フランスでは障害を理由とする差別禁止原則は、アメリカにおけるADAほどのインパクトを持つことはできませんでした。その理由は2つあるとされております。
1つ目は差別禁止が刑法典の中で定められたことにあります。差別禁止が刑法典の中に定められましたので、差別の被害者は差別を訴えようとする場合、刑事告訴をしなければならないことになります。一般の刑事訴訟では無罪の推定というものが働きますし、立証責任も検事の側にあることになります。そのため刑法典違反を差別被害者が救済手段として利用するのは非常に難しいことであったということがあります。
もう一つの理由ですけれども、それはとりわけ雇用に関係するところです。労働法典におきましても、1990年の法律で障害を理由とする差別禁止が導入されましたけれども、フランスでは障害者の雇用の推進は、むしろ雇用義務制度を通じて行っていくべきであるという考え方が中心的でした。1990年の少し前の1987年には、雇用率を6%とします雇用義務制度の整備も行われておりました。このようにフランスでは障害者の雇用の推進は、雇用義務制度、雇用率制度を中心に行っていこうという考え方が中心でしたので、差別禁止が90年に制定されましたけれども、余り関心を集めることはありませんでした。したがいまして、差別禁止原則に基づいて何らかの訴訟を提起するといったことは、ほとんど行われておりませんでした。
しかし、2000年以降は、フランスでも障害を理由とする差別禁止に対する関心が大きく高まることとなりました。その背景に何があったのかといいますと、先ほど引馬先生から御報告がありましたが、EUにおける差別禁止に関するさまざまな規定の発展があります。とりわけ障害を理由とする差別に関しましては、先ほど引馬先生の御報告にありました2000年のEC指令の影響が非常に大きかったということがあります。フランスはEUの加盟国ですので、2006年12月2日までに2000年のEC指令を国内法化しなければならないという義務づけがなされておりました。そうした状況の中でフランスにおいても2000年のEC指令に即した形での障害を理由とする差別禁止原則を導入しなければならないということで、法改正をしなければならないこととなったわけですが、その当時、ちょうど障害者関連政策全般についての法改正がなされることとなっておりましたので、その中でEC指令を国内法化する法改正も行われることになりました。それが2005年の障害者の権利と機会の平等、参加、市民権に関する法律による法改正です。
この法律は非常に多様な分野、教育に関する部分であるとか、雇用に関する部分であるとか、福祉サービスに関する部分等非常に多様な領域についての法改正を定めたものでしたが、とりわけ差別禁止との関係でどこが重要かといいますと、障害を理由とする雇用差別禁止原則にいわゆる合理的配慮概念を導入したところにあります。フランス法では合理的配慮という言葉を使用しませんで、適切な措置という言葉を使うこととなっておりますが、2005年の法改正により雇用の分野において適切な措置という合理的配慮概念が導入されることとなった。この点が非常に重要であると言うことができます。
以上1990年の法律と2005年の法律とを確認いたしましたが、フランスの障害を理由とする差別禁止に関しましては、とりわけこの2つの法律が重要であると言うことができます。
次にフランスにおける障害を理由とする差別禁止法制の全体像を確認していきたいと思います。フランスでは障害を理由とする差別禁止に特化しました体系的な法律は存在しておりません。障害を理由とする差別禁止の規定は、各法典、各法に散在しております。ですので、フランスの障害を理由とする差別禁止法制というのは非常にわかりにくい構造となっております。
それでは、どのような法律に規定が散在しているのかといいますと、レジュメに挙げましたような法典、法に散在しております。例えば先ほどから出てきています刑法典、労働法典におきまして、障害を理由とする差別禁止規定が置かれておりますし、また公務員各法におきましても、労働法典類似の差別禁止規定が設けられております。また、ちょっと飛びますけれども、賃貸借関係に関しましては、特に1989年の法律で障害を理由とする差別が禁止されることになっております。
他方、教育法典、建築・住宅法典では、明示に差別を禁止する規定は存在しておりません。しかし、教育法典ではすべての者の教育を受ける権利であるとか、教育分野における機会の平等といったものを保障しておりまして、障害者にも教育を受ける権利、機会の平等が保障されることになっております。また、建築・住宅法的におきましては、アクセシビリティーの保障が規定されております。こうした保障を通じまして、結果的に障害者に対する差別が防止されるという構造になっております。
フランスでは体系的な障害を理由とする差別禁止法は存在しておりませんので、その影響もあって、特に差別が禁止される障害とは何かに関する定義規定は存在しておりません。しかし、障害に関する一般的な定義が社会福祉、家族法典の中でなされておりまして、それによりますと、障害は以下のものであるとされております。ここはちょっと変換ミスがありますが、読み上げていきたいと思います。フランスでは、障害とは身体、感覚器官、知能、認知、精神の機能の1つもしくは複数の実質的、永続的、決定的悪化、重複障害または障害を生じさせる健康上のトラブルを理由として、その人がその環境の中で被る活動の制限または社会生活への参加の制約を言う。このように障害が定義されております。ですので、差別禁止の分野での障害の定義というのは存在していませんけれども、この障害の定義がフランスでは参照されることになっております。
それから、直接差別・間接差別に関する定義もフランスではずっと存在しておりませんでした。しかし、2008年までに出ておりましたEU指令、EC指令を国内法化するための法律というのが制定されまして、この中で差別禁止、直接・間接差別の定義、上の方に戻りますが、証言者の保護であるとか供述者の保護といったものも規定されることになりました。2008年の法律をどのように位置づけるのかは非常に難しいのですが、フランスでは体系的な障害を理由とする差別禁止法は存在しておりませんので、そこまでに構築されてきた法制度の中には、EC指令の要請を完全に満たせない部分が存在しておりました。EC指令の要請を満たしていない部分について2008年の法律でさまざまな規定が盛り込まれて、EC指令の国内法化をしたということになっております。
2008年の法律において直接差別・間接差別の定義がなされておりますので、それについても読み上げていきたいと思いますが、まず直接差別につきましては、次のように定義されております。特定の民族もしくは人種への実際もしくは想像上の帰属もしくは非帰属(属さないということです。)宗教、信条、年齢、障害、性的指向または性別に基づいて、ある者が比肩し得る状況の他の者が受けている、受けていた、または受けるであろう処遇よりも不利な処遇を受けるとき、それは直接差別に当たると定義しております。
次に間接差別ですが、間接差別につきましては、次のように規定しております。見かけは中立的な規定、規準、または慣行が第I項に記載の理由の1つのために、I項というのが直接差別のところですけれども、I項記載の理由の1つのために特定の者に他の者より特別な不利益をもたらす可能性がある場合、この規定、基準または慣行は正当な目的によって客観的に正当化され、かつこの目的に到達する方法が必要かつ適切である場合を除き、間接差別に当たると定義されております。
これらの定義は、2008年法がEU法を国内法化するための法律であったことからもわかりますように、EUにおける直接差別・間接差別の定義をなぞったものとなっております。
以上が全体的なお話です。
次に個別の法律を見ていきたいと思います。
まず刑法典から見ていきたいと思いますが、刑法典では障害等を理由とします、障害等というのは同じ条文で人種であるとか宗教であるとか、そういった者の差別も禁止されているので等と書いていますが、障害等を理由とする以下の行為を差別罪に当たるとして禁止しております。禁止されているものは何かといいますと、財またはサービスの支給拒否、何らかの経済的活動の正常な遂行の妨害、採用拒否、懲戒、解雇、財またはサービスの支給に条件を付けること、募集、研修申請、企業内の職業訓練の期間について条件を付けること、社会保障法典が定めている研修への受け入れを拒否すること、こうしたことを障害を理由として行いました場合には、自然人の場合には最高で3年の拘禁刑及び4万5,000ユーロの罰金刑を課されることになっております。ただ、差別罪につきましては、これが成立するのは故意犯のみとされておりまして、犯罪の成立には差別の意思が必要であると言うことになっております。また、医学的に確認されました労働不能に基づく採用拒否であるとか解雇は差別罪には該当しないことになっています。ですから、障害が医学的に労働不能を引き起こしているような場合には、採用拒否であるとか解雇を行ったとしても、差別罪には該当しないことになってまいります。
次に労働法典ではどのようなことが規定されているのかですけれども、労働法典では障害等を理由とします以下の行為が禁止されております。募集手続や企業での研修・職業訓練からの排除、懲戒、解雇、労働条件における直接的・間接的な差別的取扱い、これが労働法典で禁止されております。これに違反する措置、行為というのはすべて無効ということになります。ただし、労働法典は次の例外規定も定めております。すなわち、以下の場合には差別には当たらないという規定を置いております。
まず1つ目は本質的かつ決定的な職業上の要請に基づく取扱いの差異で、目的が正当であり、その要請も均衡のとれたものである取扱いの差異については、差別に該当しないとされております。これは障害以外の差別事由についても言える一般的な例外規定です。
他方、<2>と<3>に挙げております例外的な取扱いは、障害に特有の例外規定です。まず労働医が認定しました労働不適性に基づく取扱いの差異は、差別に該当しないことになっています。
それから、平等取扱いを促進するために障害者に対してなされる適切な措置というのも差別には当たらないとされております。EC指令ではここまでは明示されていないのですが、フランス法では適切な措置の拒否は、むしろ差別に該当するということが規定されております。
ただし、これにも例外がありまして、使用者に過度の負担が生じるような場合につきましては、この限りではないとされております。問題は使用者に過度な負担が生じているか否かの判断ですけれども、フランス法ではこの点につきましては、使用者に対してなされるさまざまな助成を考慮して判断することになっています。そして、使用者に対する助成につきましてですが、フランスでは充実した助成が使用者に対してなされるということになっております。どの機関が使用者への助成を行うのかといいますと、雇用義務制度から発生します納付金の管理、運営を行っておりますAGEFIPHという機関から多様な助成が提供されることになっております。フランスでは雇用義務の未達成の企業から納付金の徴収が行われることになっておりますが、これが財源となりまして、企業が適切な措置を行うに当たって負担しなければならなくなるコストの助成を行っていくことになっております。この点におきまして、フランスでは差別禁止原則と雇用義務制度とが連接していると言うことができまして、また両者はお互い補う合う関係にあるように性格づけることも可能となっております。
最後に適切な措置の内容としては、どのようなことが考えられているのかですけれども、適切な措置とは何かについての定義規定はフランス法の中には設けられておりません。適切な措置はどのようなものと考えられているのかといいますと、個別具体的なケースに応じてケースごとに決定されるものであると考えられております。内容としては、どのようなものがあるのかといいますと、労働環境を障害に合うように適応させることであるとか、労働時間を調整すること、こうしたことが適切な措置の具体的な内容として挙げられております。なお、2番目の労働時間の調整につきましては、障害者の介護等々を行う家族、近親者に対しても認められることになっております。
以上が労働法典において定められている障害を理由とする差別禁止規定の概要です。
次に公務員各法について見ていきたいと思いますが、公務員につきましても、労働法典類似の差別禁止規定が導入されております。類似ですので、内容は省略させていただきたいと思いますが、1点、障害者に関しましては、特別な採用ルートが存在することになっております。どのような採用ルートかといいますと、嘱託で障害者をまず採用して、その後、嘱託期間の後に公務員として本採用するという制度が設けられております。
次に教育法典について見ていきたいと思いますが、先ほども申し上げましたが、フランスでは教育分野における障害を理由とする差別を明示には禁止しておりません。そうした差別禁止規定というものは存在しておりません。しかし、障害者にも教育を受ける権利は保障されておりますし、また教育分野における機会の平等というものも規定されておりますので、障害者のこうした権利を侵害する行為であるとか機会の平等を侵害する行為は、障害者に対する差別に該当すると考えられることになっております。
教育の分野では、現在どのようなことが重要視されているのかといいますと、インクルーシブな教育環境を創出していくことが非常に重要であると考えられております。こうした考え方を反映しまして、先ほどから出てきています2005年の法改正のときには、障害を持つ児童も原則として自宅から最も近い学校に登録されるという内容の制度が導入されることになりました。勿論一定の場合につきましては、本人のニーズと適合した措置を提供することのできるほかの学校に登録することも可能となっていますけれども、原則として自宅から最も近い学校へ登録するという制度が導入された点は、フランスの障害児教育の在り方に大きな変化をもたらしたと言われております。
ただし、フランスにおきましては、特別学級の存在は否定されておりません。しかしながら、障害児に対しては普通学級との頻繁な行き来が保障されております。こうした普通学級との行き来の保障によってインクルーシブな教育環境を創出していこうということが目指されることになっております。
次に建築・住宅法典ですが、こちらにおきましては、アクセシビリティーの保障が規定されております。アクセシビリティーの保障によって障害者がある一定の場所から排除されることを予防するということが行われています。アクセシビリティーの保障につきましては、アクセシビリティーの確保に関する規定への違反には罰則が課されることにもなっておりまして、非常に強く保障されているものであると言うことができます。
しかし、例えば既存の建物を改修したり改築したりする場合、建築物が重要な歴史的な遺産に当たるような場合につきましては、アクセシビリティーの確保に関する規定は適用除外ということになっていますし、実際に改築工事等々によって得られる改善とそれに係るコストが非常に大きい場合、つまり得られる改善とコストの間に明らかに不均衡が生じる場合につきましても、適用除外が認められることになっております。この点におきまして限界はありますけれども、建築・住宅法典ではアクセシビリティーの保障が規定されておりまして、障害者がある一定の場所から排除されることを予防するということが行われております。
賃貸借に関しましては、1989年の法律で障害を理由とする差別の禁止が規定されております。障害を理由とする差別の禁止は、2002年の法改正時に導入されることになりました。なぜこのタイミングで賃貸借に関して差別禁止規定が導入されたのかにつきましては、申し訳ありませんけれども、私は賃貸借に関しましては余り知識を持っておりませんので、分かりません。背景等々はこれから調べることとなりますが、現在の法制度がどのようになっているかというと、賃貸借に関してはここで差別が禁止されているということになっております。
最後に差別に対する救済の方法を確認していきたいと思います。
まず刑法典違反ですけれども、刑法典違反につきましては、刑事訴訟による救済というのが可能になっております。具体的には差別の被害者は検事等に対して告訴を行うことができるということになっております。しかし、この場合の立証責任は検事の側にありますし、また刑事訴訟の一般ルール、無罪の推定等々が適用されることになっております。したがいまして、障害を理由とする差別を刑事訴訟で争うということは非常にまれということになっております。
次に民事訴訟ですけれども、刑法典違反以外のものにつきましては、例えば損害賠償請求等々を求めて民事訴訟を提起することが可能になっております。
労働法典違反につきましては、使用者が行った措置であるとか決定について無効を訴えることも可能となっております。
相手方が公的セクターの使用者であるような場合につきましては、訴訟形態としては行政訴訟ということになってまいりますが、民事訴訟、行政訴訟を提起することが可能ということになっております。
民事訴訟におきましては、差別被害者の側の立証責任の軽減が規定されております。すなわち原告側、差別被害者の側は直接差別または間接差別の存在を推認させる事実を提示すればよいということになっておりまして、被告側が当該措置は差別とは関係のない客観的な事実によって正当化されるんだということを立証しなければならないという取扱いになっております。
それから、レジュメには書いておりませんが、フランスでは被害者本人だけではなく、その分野で活動しているいわゆるNGO、非営利組織も訴権を行使することが可能となっております。NGOがこうした訴権を行使できるという点は、フランスの特徴として挙げることができるのではないかと思います。
最後の行政上の救済ですが、フランスでは2004年に創設されました高等差別禁止平等対策機関、略してHALDEと呼ばれていますが、HALDEに対する申し立ても可能となっております。HALDEは2004年12月30日の法律によって創設されました独立行政機関で、例えば調停の斡旋であるとか和解案の提示、勧告を行う権限を有しております。HALDEへの申し立ては、毎年増大してきておりまして、HALDEという機関が差別禁止の分野で担う役割は非常に大きいものとなってきております。HALDEが扱う案件の中で最も多いのは、出自を理由とするものですけれども、その次に多いのが障害、健康状態を理由とする差別ということになっております。HALDEが扱う案件の約20%が障害、健康状態を理由とする差別ということになっておりますので、HALDEにおける障害、健康状態を理由とする差別に対する関心も非常に高いものとなっております。
非常に雑駁ではありましたが、以上がフランスにおける障害を理由とする差別禁止法制です。
障害を理由とする差別禁止規定が各法典、各法に散在していて、制度がモザイク状態になっている点が大きな特徴として挙げられます。
また、フランスの差別禁止法制は、とりわけ2000年以降EC指令を国内法化していったこともありまして、基本的にEUの政策にならったものとなっていると言うことができます。
それでは、フランス法から一体何を得ることができるのかですけれども、これに関しましては、とりわけ障害を理由とする雇用差別の禁止と障害者雇用率制度との関係をどのようにとらえるのかという点において、フランスの事例は1つ参考になるのではないかと考えております。フランスでは雇用義務から発生します納付金を原資としまして、使用者に対してさまざまな助成がなされることとなっており、その助成が使用者が負担する適切な措置に係る費用を助けることになっているわけですが、こうした仕組みは非常に参考になるのではないかと考えております。
雑駁でしたが、以上で報告を終わらせていただきたいと思います。(拍手)
○棟居部会長 永野さん、どうもありがとうございました。
フランスは総論がなくて各論だけというか、各法の中でということでしたが、実際には現実的なというか、分野に応じたきめの細かい、かゆいところに手が届くような、我々もこれならまねができるのではないかと少し期待を持たせてくれるような魅力的な各論でした。勿論それぞれに批判が当然あるとは思いますけれども、総じて手が届くような印象を私は持ちました。
また、最後のおまとめの中でおっしゃいました、言わば雇用義務を課すことによって成績の悪いところからお金を集めて、それを助成金に回していく。これは排出権取引などと似た発想ですね。つまり義務と言うけれども、言わばお金での調整を可能にしているという面もあるわけで、これも産業界にとっては受け入れやすい。それがいいか悪いかはともかくですけれども、国庫をひたすら圧迫するわけではないという意味で非常にかしこい方法をとっていると個人的には思いました。
今、時間配分に頭を悩ましておるところなんですけれども、ここで休憩というのは皆さん全く必要とされていないんですね。そういう理解で、お疲れだと思いますけれども、永野さんには引き続きまさに各論的なというか、あらゆるところからいろんな質問が飛んでくると思います。今度は逆回りでということで、山本委員から順番でということで、お願いします。
○山本委員 山本です。詳細な御報告をいただきまして、ありがとうございました。
民事法に関わる点について、3点質問をさせていただければと思います。
まず、レジュメの3ページの3.6に、賃貸借関係の改善を目指す1989年7月6日の法律が書いてあります。これに関しては、ここに1条3項を挙げていただいていますが、これに違反した場合の民事上の効果がどうなるのかということをお聞かせいただければと思います。損害賠償を認めているのかどうか。あるいは締約強制に当たるようなものまで考えているのかどうかという点についてお聞かせいただければと思います。これが第1点です。
第2点は、下の4.2の民事訴訟と書いてある部分の立証責任の軽減の部分です。ここには、原告は、直接差別または間接差別の存在を推認させる事実を提示すれば足り、被告側は、当該措置は差別とは関係のない客観的な事実により正当化されることを立証する責任を負うということを書いています。このようなことを定めた条文があるのか、ないのかということをお聞かせいただければと思います。どこにどのような形でこのようなことが定められているのかという質問です。
もう少しだけ補足しますと、レジュメの1ページの下から2ページにかけて、直接差別・間接差別の定義を挙げていただいています。そこには、まず、2008年法の1条1項で直接差別の定義が挙がっています。これによりますと、障害に基づいてある者が比肩し得る状況の他の者が受けている、受けていた、または受けるであろう処遇よりも不利な処遇を受けているときは、直接差別に当たるとあります。そうしますと、原告は一体何を立証すればいいかということなのですが、比肩し得る状況の他の者が受けている、受けていた、または受けているであろう処遇よりも不利な処遇を受けているということを言えばそれで足りて、あとはそれが障害に基づくのではないということを相手方が立証すると考えているのかどうか。
それから、1条2項が下にあって、これは間接差別だとありますが、見かけは中立的な規定等が、第1項に記載の理由の1つのために、特定の者に他の者より特別な不利益をもたらす可能性がある場合、それが正当な目的によって客観的に正当化され、かつこの目的に到達する方法が必要かつ適切である場合を除き、間接差別に当たると書いてあります。これは、定義が既に立証責任の分配をしているような感じでして、要するに規定等が特定の者に他の者より特別な不利益をもたらす可能性があるということを主張、立証すれば原告側は足りて、あとは正当な理由があることなどを相手方が主張・立証する必要がある。そういうように考えているのかというのが2点目の質問です。
3点目の質問は、3ページ目の先ほどの民事訴訟のところで、レジュメにないことをつけ加えられた点です。NGOも訴権を行使することが可能だというのがフランス法の特徴だとおっしゃいました。それはすごく興味深いことなのですが、NGOも訴権を行使するこということが、どの法律のどこにどう書かれているのかということをお教えいただければと思います。
以上です。
○永野専門協力員 まず1点目の賃貸借関係の改善を目指す法律において規定されていることですが、この点につきましては、私自身が賃貸借関係について専門に研究しておりませんので、この効果がどのようになるのかについて明確なお答えをすることはできません。一般的にいえば契約を強制するということはできませんので(労働法典におきましても、採用の強制はできないことになっておりますので)、恐らくということになってきますけれども、損害賠償請求になるのではないかと思っております。ただ、これは私の推測で、根拠となる記述をどこかで見たという話ではありません。
2番目の立証責任の軽減についてですが、立証責任の軽減は2008年の法律の4条が根拠規定になっており、労働事件につきましては、労働法典においても立証責任の軽減が規定されております。労働法典の方の根拠規定をすぐに示すことはできませんけれども、労働法典の中にも規定があります。ですので、労働事件については労働法典が根拠条文になりますが、労働事件以外のものにつきましては、2008年法の4条が根拠規定となります。立証責任の在り方についてですが、私自身は先ほど山本委員がおっしゃったようなことで良いのではないかと思っております。
NGOにつきましてですが、NGOが訴権を行使できるということも法律上根拠が定められておりまして、刑法典違反につきましては、刑法典の中で差別禁止分野で活動するNGOはこの訴権を行使できるという規定があります。これも根拠条文をすぐに示せませんが、刑法典の中で規定されております。
また、労働法の分野におきましては、労働法典の中で同じように障害を理由とする差別等々の分野で活動しているNGOについては、訴権を行使できるということが定められております。
○永野専門協力員 まず1点目の賃貸借関係の改善を目指す法律において規定されていることですが、この点につきましては、私自身が賃貸借関係について専門に研究しておりませんので、この効果がどのようなるのかについて明確なお答えをすることはできません。一般的にいえば契約を強制するということはできませんので(労働法典におきましても、採用の強制はできないことになっておりますので)、恐らくということになってきますけれども、損害賠償請求になるのではないかと思っております。ただ、これは私の推測で、根拠となる記述をどこかで見たという話ではありません。
2番目の立証責任の軽減についてですが、立証責任の軽減は2008年の法律の4条が根拠規定になっており、労働事件につきましては、労働法典においても立証責任の軽減が規定されております。労働法典の方の根拠規定をすぐに示すことはできませんけれども、労働法典の中にも規定があります。ですので、労働事件については労働法典が根拠条文になりますが、労働事件以外のものにつきましては、2008年法の4条が根拠規定となります。立証責任の在り方についてですが、私自身は先ほど山本委員がおっしゃったようなことで良いのではないかと思っております。
NGOにつきましてですが、NGOが訴権を行使できるということも法律上根拠が定められておりまして、刑法典違反につきましては、刑法典の中で差別禁止分野で活動するNGOはこの訴権を行使できるという規定があります。これも根拠条文をすぐに示せませんが、刑法典の中で規定されております。
また、労働法の分野におきましては、労働法典の中で同じように障害を理由とする差別等々の分野で活動しているNGOについては、訴権を行使できるということが定められております。
○山本委員 どのような訴えを提起するのでしょうか。差し止めを求めるのか、損害賠償を求めるのか、この種の団体訴権についてはそのような問題が一般的にあるのですけれども、そこまでもしおわかりならばお教えいただければと思います。
○永野専門協力員 本人に変わって訴権を行使して損害賠償請求をしたり、あるいは労働法であれば解雇の無効を訴えたりということもありますし、これは行政訴訟になりますが、例えば公務員になるための規定の中にいわゆる欠格条項のようなものがあった場合につきましては、当該欠格条項については差別禁止規定に違反するということで、その訴訟を提起することができるということになっております。
事件は、大抵本人とNGOの両方ともが訴訟を起こすという形になっていることが多いと思われます。
○棟居部会長 非常に面白い、しかし、かなり専門的な深いやりとりをされていると思うんですけれども、刑法で差別罪があるという場合、例えば民事で違法だと確認でもされて、それはわざとやっているということになると、刑法違反になる可能性もあるとすると、実質的にはそこでかなり決着するような感じです。
先ほどの損害賠償かそれとも契約強制までいくのかという賃貸借について、これは全然違うと思うんですけれども、お金で追い払うことを認めてしまうのか、それとも契約強制までいくという契約自由の原則の本質のところを踏み越えるようなところまでいくのか、これは私個人としては非常に興味深いです。あえていえば、山本委員の御研究と私とはそこだけに接点があるような、細い長いつながりが20年ぐらい前からあるんです。
それはさておき、フランスの場合、刑法典の差別罪の存在というのは案外大きいというか、サッカーでいうとアシストというか、あるいはフェイントというか、これがあることが民事の方は結構動いているのではないかと個人的には思いますけれども、それも含めてまた教えていただければと思います。
山本委員、よろしいでしょうか。ありがとうございました。
逆順ということで、山崎委員、お願いします。
○山崎委員 ありがとうございます。
今のお二方の委員の細いつながりの中に割って入る話かもしれないんですが、第1点目は差別に対する救済について教えていただきたいと思います。フランスの場合、障害を持っている方についての差別禁止を個別法で形成しているという点は大変興味深いと思います。ただ、それに応じて救済自体も個別法典体系になっている。それはそれでよろしいんですが、差別を受けた当事者の側から何か救済を受けるときの使い勝手という点で考えると、ワンストップサービスになっている方がわかりやすいという気もします。これは制度の違いなんですが、そういう点でお尋ねなんですが、先ほどの山本委員の御質問ともちょっと関わるかもしれないんですが、例えば雇用上採用拒否とか解雇されたということについて、民事上の訴訟を当事者が提起する。その際、非常に腹が立って我慢できないので、検察官に起訴してほしいと思うことも恐らくあると思います。その場合、例えば附帯私訴みたいなものがあれば可能かもしれませんが、そういうシステムがあるか、ないか。多分ないという前提だと思うんですが、その場合、当事者が検察官に対して刑事手続を始めるように求めるルートというのがあるのか、ないのかを知りたいと思います。これが第1点です。
○永野専門協力員 ちょっと記憶力に限界がありますので、1回お答えしてからでいいですか。済みません。
○山崎委員 お願いします。
○永野専門協力員 まず当事者の使い勝手が確かによくないというのはありまして、ただ、現在はHALDEという救済機関がありますので、そこが非常に重要な役割を担っているということがあります。
刑事訴訟における附帯私訴ですけれども、実は附帯私訴のシステムがフランスではあります。ですので、刑法違反で告訴したと同時に、その人が持っている私法上の訴権も附帯私訴で一緒に訴えることができることになっております。
それから、刑法典に定めのある差別については、基本的には告訴するわけですけれども、刑事が起訴してくれない場合につきましては、私訴原告人といたしまして、予審判事に対して予審を開始するよう請求することができるといったシステムも用意されております。ですので、仮に検事が起訴してくれなければ、起訴してくださいという訴えができるということになっております。ただ、制度はありますが、ほとんど利用されていないというのが現状ではあります。
○山崎委員 ありがとうございます。
今の点について追加的ですが、ほとんど利用されていない背景というのは、かなり敷居が高いんですか。私人の方が刑事手続を始めてほしいというのを予審判事さんに求めたとしても、なかなか聞き届けられないという実態があるのか、そこまでもいっていないというのか、どちらなんでしょうか。
○永野専門協力員 恐らくですけれども、以前にHALDEという機関でヒアリング調査をしたときには、刑事訴訟の場合には無罪の推定というものが最初に働くので、立証が難しいということが第1点としてあるということを言われました。
それから、差別禁止に対する関心そのものがフランス社会において非常に低いものであった。とりわけ障害を理由とする差別については、関心が高まってきたのは2000年以降ということがありまして、使い勝手が悪いということと関心の低さ等が相まって余り利用されていなかったのではないかと思います。
○山崎委員 もう一点、簡単に御質問します。先ほども既にお触れになっていますが、HALDE、行政高等差別禁止平等対策機関の実態なんですが、基本的には行政機関ですね。
○永野専門協力員 独立行政機関です。
○山崎委員 これは大統領が任命する形になるわけですか。
○永野専門協力員 そうです。HALDEは正確な人数を忘れましたけれども、何人かの評議員で構成されておりまして、大統領が任命する方、上院の議長が任命する方、国民議会の議長が任命する方、何人か様々な任命する人がいまして、任命する方に任命された人が評議員のメンバーになるということになっております。
○山崎委員 任命の仕方としては、例えば韓国国家人権委員会のタイプに近いと思います。
それはさておきまして、HALDEという機関の実質的な独立性、ファンクショナルな機能、役割、仕事の面で、政府と相対的な独立性をどの程度示せているのかが私は非常に関心があります。例えばNGOがその点をどういうふうに評価されているかということと、あと1つ、これは山本委員が御質問になったことと同じなんですが、NGOは訴権が行使できるんだという制度のようですが、その場合、例えば具体的に被害を受けた方が望まなくてもNGOがやった方がいいと言えば動き出すのかどうかも教えていただきたいと思います。
○永野専門協力員 まず1点目のHALDEの独立性に関しましては、私ではお答えすることが難しく、申し訳ございませんということです。
2点目のNGOが本人の合意を得て訴権を行使するか否かですが、ちょっと確認してもいいですか。
刑法典違反につきましては、被害者の合意がある場合となっております。
労働法典違反につきましても、合意があることが必要です。しかし、実は労働法典違反につきましては、組合も訴権を行使することもできるのですが、組合については、特に反対されていなければ訴権を行使できるということになっております。
○山崎委員 ありがとうございました。
○棟居部会長 私の聞きかじりでは、フランスでは公序という、客観的な秩序の中にも人権という価値も入ってくる。プライバシーですら公序の一部であるということになると、それをだれが言わば代行するというのか、これはNGOでも構わぬという思考回路もありだと思って、今、聞いておりました。山崎先生ありがとうございました。
太田委員、御発言ありますでしょうか。お願いします。
○太田委員 太田です。2点質問があります。
3ページ、4.2民事訴訟という項目で立証責任の軽減とあります。原告(差別被害者)は直接差別または間接差別の存在を推認させる云々とありますが、権利条約では合理的配慮の欠如、いわゆるフランスの法典でいう適切な措置の欠如も差別であると考えてよろしいんでしょうか。適切な措置の欠如は差別に入らないのでしょうか。
もう一点あるのですが、私たち日本障害フォーラムは耳の聞こえない人や目の見えない人がいます。情報コミュニケーション保障が必要とされています。情報コミュニケーション保障は適切な措置に含まれているものと考えてよろしいかどうか。あるいは手話のような非音声言語も言語としてフランスでは認められているのかどうか、もしおわかりでしたら教えていただければと思います。
○永野専門協力員 まず1点目は、適切な措置をしないことが差別に該当するか否かという質問でしょうか。今のでよろしいですか。
○太田委員 はい。
○永野専門協力員 フランス法では適切な措置をしないことは、差別に該当するということになっております。EC指令ではそこまでは明示されておりませんが、フランス法では合理的な配慮を提供しないことは差別に該当すると規定されております。
○棟居部会長 ごめんなさい。今のは多分フランスで適切な措置という要件が入っている。独自にそういう要件を持っているんだということを太田委員が御指摘になって、立証責任の展開という話と今の適切な措置という独自の要件とはどう関係するのかという、多分そういう質問だと思います。
○太田委員 今のお答えで大丈夫です。
○棟居部会長 大丈夫ですか。今の御回答で満足されましたね。わかりました。よけいなことを言って済みません。
○永野専門協力員 次にコミュニケーション補助ですけれども、適切な措置の一環として、例えば手話通訳をつけたり、そうしたことも適切な措置の内容とされてはおります。ただ、どこがお金を負担するかというところは、若干調整がなされることとなっておりまして、フランスでは例えば手話通訳であるとかそういったサービスについては、社会保障給付の方で障害補償給付というのが給付されることになっています。そちらの社会保障給付の方から、そうしたサービスの利用に係る費用が保障されることもありますので、今、正確なことを申し上げられなくて申し訳ございませんけれども、適切な措置として手話サービス等が提供されることもあれば、社会福祉サービスの利用の一環として手話通訳等が付くこともあるということになっております。
○太田委員 法的なサービスに情報コミュニケーション保障も、場合によっては適切な措置であろうと思いますが、いかがでしょうか。
○永野専門協力員 適切な措置の具体的な内容の1つとして、一覧の中の例示ですけれども、コミュニケーション補助というものもされております。
手話が言語として認められているかどうかですけれども、これにつきましては、私は情報を持っておりませんので、また確認させていただきたいと思います。
○太田委員 ありがとうございました。
○棟居部会長 太田委員、どうもありがとうございました。
松井委員、お願いします。
○松井委員 松井です。
幾つか質問したいんですけれども、2ページの「3.2 労働法典」の「(2)例外規定」の2番目は労働医が認定した労働不適正に基づく取扱いの差異となっていますけれども、これはまさに医学モデルというか、労働医としてどこまで労働の不適正ということが認定できるのか。医学的な側面からはあるかもわかりませんけれども、それ以外の要素も当然あると思います。そこは一体どうなっているかということが1点です。
2点目、労働に関する合理的配慮については、納付金から充当するということになっていますけれども、合理的配慮はものによっては恒久的にしなければいけないということがあると思います。日本の場合1.8%ということで、国としては2020年までに1.8%はクリアーすると言っていますけれども、フランスの6%については、仮に今後10年間でクリアーするとなると、納付金はなくなりますね。だから、そういうものをあてにして合理的配慮の提供ということが果たして妥当なのかどうか。
もう一点、教育については合理的配慮ということが触れられていませんけれども、教育面では合理的配慮が権利として認められているのかどうか。もしそうであれば、そこの財源、教育における合理的配慮のお金はどこからくるのかということについてお聞きしたいと思います。
○永野専門協力員 だんだん記憶力が限界になってきていますけれども、まず労働医が認定した労働不適性に基づく取扱いの差異ですが、私は具体的な実務の部分まではわかりませんので、明確なことは言えませんが、労働の分野におきましては、障害労働者とは何かという定義がありまして、障害労働者は何らかの機能障害を原因として現実に雇用を得る機会が減退している人であるとか、雇用を維持することが難しくなっている人と定義されていますので、そうした定義も考慮してなされるのではないかとは思います。ただ、障害労働者認定をする機関としては、別に障害者権利自立委員会という委員会があり、これが障害労働者認定をするということになっていますので、労働医がこの認定をするわけではないのですが、多少定義の影響はあるのではないかと思います。実務的なことはわからないというお答えで申し訳ございません。
次に6%という高い数値ですけれども、フランスの雇用義務制度は直接雇用のみで6%を達成することを予定しておりません。直接雇用といわゆる保護セクターと呼ばれる福祉的就労の場所への仕事の発注であるとか、研修生として障害者を雇った場合にもそれによって雇用義務を果たすことができるとなっています。将来的に6%を達成しようとは考えていないとは思うのですが、それでも確かに直接雇用と発注もしっかりして、研修生も雇って6%を達成するところが増えますと、納付金の財源はなくなってきてしまいます。日本と同じ問題はフランスも抱えております。
ただ、2005年の法律では納付金額を引き上げるとか、納付金の対象となる事業主の計算方法を変えまして、対象を拡大するといったことが行われまして、それによって財源を確保しているという部分はあり、実際に調査に行った方に聞きますと、今は納付金の負担を上げ過ぎて、むしろ余剰が出ていて、余っているお金をどういうふうに配れば良いのかというような問題も発生しているということらしいです。これは伝聞情報ですが、そういった状況も起きているそうです。
最後の教育の分野ですけれども、教育の分野につきましても、直接的に適切な措置と書かれています。機会の平等を促進するために個人がそれぞれ適性であるとかニーズに応じて、自分に合った水準の学校教育にアクセスできるように、適切な措置を講じられるものとするというような規定があります。例えば大学入試のときには、障害に配慮した形での試験を受けることができるようにという規定が教育法典の中で定められております。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。よろしいですか。
順番ということで、西村委員、お願いします。
○西村委員 西村です。
私からも3点程度あります。一問一答の方がいいですか。
○永野専門協力員 一問一答でお願いします。
○西村委員 1点目ですけれど、各個別法を根拠としたさまざまな状況があるかと思いますが、刑事訴訟であれ民事であれHALDEであれ、そういった分野でどういった問題が出され、どういった対応がされたのか。事例などがあれば情報提供をお願いしたいと思っています。
また、その関連ですけれども、先ほどの御説明の中で公務員採用試験などで設定されている欠格条項のようなものがあるので、そういったものの改善という御回答があったと思います。日本の公務員試験などでは、活字印刷物に対応できる人とか、自力通勤、介助者なしで職務遂行ができる人とか、口頭面接に対応できる人とか、実質的に点字試験をやらない手話通訳を置かない、介助が必要な障害者は排除しますという受け止め方を私どもはしているんですが、フランスにおきまして、具体的に、こういった採用要件で問題とされたもの、改善したものがあるのかどうかをまず伺いたいと思います。
○永野専門協力員 まず具体的な例としましては、聴覚障害を持っている方がいわゆる体育の先生になるための試験を受けようとしたときに、体育の先生になるためには潜水ができる何らかの資格、プール等々で指導しなければいけないこともありますので、潜水ができる水難救助資格といったようなものが必要であるという要件があったのですが、聴覚障害がある方で水難救助の資格を取ることができなかったゆえに、体育の先生になるための教員試験から排除されていたという事件がありました。
この事件につきましては、体育の授業だけほかの教員が担当すればよかったり、あるいは体育の授業だけ助手を付ければその方は体育の授業をすることができるのであるから、そういった助手を付けるとか、体育の水泳の授業だけ別の先生にお願いするといったことは適切な措置の1つであるといったことをいいまして、聴覚障害のある方を体育の先生の教員試験から排除していた規定につきまして、これは差別禁止原則に反するといったHALDEの決定もあります。
○西村委員 ありがとうございます。それ以外にもたくさんあると思いますので、そういった事例を資料として後日提供していただけたら大変ありがたいと思います。
○永野専門協力員 資料としては、2009年の障害者の社会参加推進等に関する国際比較という資料が恐らく最初の日に配られているかと思います。
○西村委員 厚いものですね。
○永野専門協力員 この中にフランスもありますし、ドイツ、イギリス等々の具体的な事例が入っていますので、こちらを参照していただければいいと思っております。
○西村委員 ありがとうございます。
これも先ほど御回答の中であったと記憶をしているんですが、具体的な差別の意思がなければ問題がないという御回答があったと思います。今の関係も出てきますし、先ほどの間接差別の例からも出てくると思いますが、明らかに差別の意思を持ってやっていない差別行為が日本も含めて大変多いと思います。差別の意思の有無あるいは間接差別の定義といいますか、そういったところの考え方をどのように整理をしているのか教えていただきたいと思います。
○永野専門協力員 差別の意思が必要なのは刑法典違反のみですけれども、実は差別の意思立証することが難しいですので、記憶がたしかではないですが、差別テストというような差別の意思を推認させるようなテストを実施しまして、使用者の側は差別を行っているんだという立証をすることが可能なシステムも導入されています。差別テストというのは、使用者の側には隠して何らかの属性を持った人が採用にいったところ、全く採用してもらえないとか、昇進させてもらえないとか、そういったことの実験というか証明のためのテストです。そういったシステムも導入されることになっております。
○西村委員 最後の質問です。私が聞き漏らしているかもしれませんが、先ほど来障害を理由とする差別禁止に特化した体系的な法律は存在しないというお話でしたが、沿革で示されている2005年の障害者の権利と機会の平等、参加、市民権に関する法律は、そういう法律にならないんでしょうか。
○永野専門協力員 この法律は差別禁止だけを定めている法律ではありません。さまざまな障害分野の施策を改正するための法律です。ですので、この法律の内容は多岐にわたっておりまして、先ほど出てきました教育の分野におきましては、障害児については自分の自宅の近くの学校に登録する権利を有するんだということが定められましたし、福祉の分野におきましては、障害者が福祉サービスを利用するときにそのサービスに係る費用というのをどのように保障していくかということも定められましたし、雇用の分野におきましては、合理的配慮概念の導入であるとか雇用義務の強化等が定められました。非常に多様な内容のものがここに含まれております。ですから、これが差別禁止に関する体系的な法律と位置づけることは難しいということになっております。
○西村委員 そうすると、この法律は権利条約に準じた法律なのではないかと思ってしまいます。
○永野専門協力員 フランス法は法典化をしている国ですので、日本の法改正と法律の改正の仕方が若干異なっていまして、2005年の法律というのは例えば労働法典で既にある規定がありますから、労働法典の何とかという条文をこういうふうに改正するというような内容の条文がずらずらと並んでいる法律です。しかも、それが差別禁止の分野だけではなくて、さまざまな分野について定められていて、その中の1つとして2000年のEC指令への適応というものがなされた。そういった位置づけになっております。
○西村委員 わかりました。
以上で結構です。ありがとうございました。
○棟居部会長 ありがとうございました。
続きまして、川島委員、どうぞ。
○川島委員 ありがとうございます。
障害の定義について2点質問させていただきますが、障害と健康状態の違いというのがありましたら、それを教えていただきたいのが1点です。
もう一つは、例えば機能制約を伴わない顔のあざとか、そういった心身の特徴がありますね。それも障害の方に含まれるのか、健康状態に入るのかちょっとよくわからないんですけれども、その2点について教えてください。
○永野専門協力員 障害と健康状態につきましては、障害の方は社会福祉、家族法典で定義がありますが、健康状態の方につきましては定義がありませんので、明確にお答えすることはできないということで、申し訳ございませんということになります。
あざにつきましては、差別を禁止している規定の中に外見に基づく差別というものがありまして、恐らくそちらの外見に基づく差別と位置づけることにもなるのではないかと思いますが、実際にどちらで争うのかについては、私にはわかりません。済みません。
○川島委員 ありがとうございます。
○棟居部会長 ありがとうございました。
続きまして、川内委員、お願いします。
○川内委員 幾つかありますが、1つはレジュメの3ページのアクセシビリティーの保障のところで、アクセシビリティーの確保に関する規定の違反には罰則ありということで、御説明では、得られるであろう改善とそれに係るコストは、バランスによってはこれに従わなくてもいい、除外されるというのがありましたが、これはだれが判断するのかということと、判断する基準みたいなものがあるのかということを教えていただきたいと思います。
○永野専門協力員 実は建築の分野につきましても、私は普段専門に研究しておりませんので、申し訳ないですけれども、明確な答えを私自身が持っておりません。
○川内委員 ただ、そういうものを制度的にやっているのはたしかなんですか。
○永野専門協力員 そうです。フランスでは法律の下にデクレという政令がありますが、政令で非常に細かく要件等々が定められていることがあります。しかし、額が幾らであれば不均衡な負担であるという具体的な額までは定められてはいないとは思いますけれども、法律より1つ下のレベルの政令で要件等々がより詳しく書かれていることはあります。
○川内委員 私が最も知りたいのは、そういう尺度よりも、むしろ体制なんです。どういう組織、つまり法律か何かの中にこういう組織がこの仕事をやるんですとか、そういう機関が定められているのかどうかなんです。
○永野専門協力員 アクセシビリティーの分野につきましても、大変申し訳ないですけれども、わかりません。今後の課題ということでお願いいたします。
○川内委員 同様の質問ですが、2ページの労働法典の例外規定の下に*があって、その下に過度の負担か否かは使用者に対する助成等を考慮して判断されるというのがありますね。これもだれが判断するのか。そういう機関があるんですか。
○永野専門協力員 これを判断する機関は具体的にはありませんけれども、実際に争いになりましたら、もしHALDEへの申し立てでHALDEで争われることになりましたら、HALDEが判断しますし、訴訟になりましたら裁判所が判断するということになってまいります。
○川内委員 日本では裁判自体がかなり重いということで、障害のある当事者が何か困ったことにぶつかったときに、どこに持っていけばいいのか。つまり裁判までいって複雑な判断をしなくてはいけない事例ばかりではなくて、割と簡単なガイドラインがあれば判断できるような事例というのが結構たくさんあって、そういうものをどこに持っていけばいいのかというのがないんです。ないというか、少なくとも障害の当事者たちは知らないし、簡単に使えるようなシステムにはなっていないと思っていまして、それがこれから日本の中でどういうふうに取り組めばいいかというのがとても関心があります。
○永野専門協力員 そういった意味でお答えしますと、雇用の分野におきましては、ここに挙げてありますAGEFIPHという機関が非常に重要な判断を下してくれるのではないかと思っております。この機関が具体的に使用者の側がどういった支援を必要としているのかということを使用者の側からも聞きますし、雇われている障害者の側からもいろんな相談等々を受けます。それで使用者の側に助成をしたり、あるいは障害者本人に助成をしたりということを行いますので、労働の分野においてはAGEFIPHが今おっしゃったような機能に近い仕事をしているのではないかと思います。
○川内委員 ありがとうございます。
○棟居部会長 時間がないんですけれども、今の川内委員の御指摘は非常に重要な御指摘で、行政救済機関のようなものをつくるというと、また日本の今までの裁判所中心の救済の仕組みと違うのではないか。しかし、裁判中心だと敷居が高いんだというときに悩ましいんですけれども、日本の仕組みにどこまで合うかわかりませんけれども、先ほどのフランスのNGOが訴権を持つというやり方だと、恐らく裁判すらできるんだから、その前に交渉も事実上は可能なはずです。そうすると、まずNGOに話を持ち込む。そこが動いてくれれば、かなり簡単に定型的なものは収まるかもしれない。だから、行政委員会とか行政救済機関の制度が日本ではちょっとハードルが高いのであれば、これも別な意味でハードルが高いんですけれども、裁判を起こせるのを当事者以外に広げていくことによって、中間的な団体を機能するようにする。そういうこともフランスからいただけるヒントの1つだと私なりに思いました。
○川内委員 済みません。それに関しては、交渉できるNGOの資格というか、規定はどうなんだ、例えばNPO法人なら何でもいいのかとか、いろいろ附随してくるものがあると思いますけれども、そういうことも考えなければいけないと思います。
○棟居部会長 そうですね。クオリティーをどう確保するか。下手に代弁されて、かえって不利な結果にならぬとも限らない。その意味でもまさに悩ましさは尽きないわけです。
あと、川内委員が最初におっしゃったアクセシビリティーのところも、例えば建築基準法の建築確認のところで障害者のアクセスを保障していないような建築物はだめだと言えば、従来の建築確認の仕組み、行政手続に乗ってくるわけです。そこでそういう要件を入れていくとなると、これは制度をいじくらなくても制度設計としては割と簡単に収拾できるんだろうと思います。それこそ業者さんの方はすごいことになるということでしょうけれども、それぐらいの実効性を個人的には考えたい、望ましいと思う次第です。
川内委員、どうもありがとうございました。
○川内委員 ただ、現在の日本の建築確認ではコストという意識はありません。法規定に適合するかは見ていますが、それに1,000万かかろうが1億かかろうが、それは建築確認の関心の外にありますから、それを入れると役所に対しては相当な重荷になると思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
順番ということでお待たせしましたが、いかがでしょうか。順番でいうと、小島委員いかがでしょうか。御発言されますか。
実は今日は一応5時少し前をめどにしておるんですけれども、別にフランスのテーマだけで残り時間をということでは必ずしもなくて、今後どういうふうに話を進めるかについて御意見をいただきたいと思っています。今日方向づけをするとかではなくて、今後の展開のフリートークというのも私個人はあってもいいと思ったりもしておるものですから、フランスについてかなり出てきましたので、大変失礼ながら、お一言ずつぐらいで御勘弁願えればと思ったりします。
○小島委員 1つだけです。雇用における差別禁止については、厚労省の障害者雇用分科会でも議論していて、中間報告まで出ています。その中でも救済機関の在り方については、今の都道府県労働局にある調停委員会の活用という指摘もされております。現在、労働審判制度も日本ではありますので、労働関係についてはそこを使うか調停委員会を使うかということも今後検討されると思います。そこにどういう権限を与えるかということになるかと思いますが、フランスも多分労働審判という制度があったと思います。また、救済機関としてはAGEFIPHというのがありますけれども、ここは日本の制度との比較から見ると、どんな状況ですか。わかる範囲で結構です。
○永野専門協力員 今、私は、自分の役割が終わったと思ってほっとしていました。もう一度お願いしてよろしいですか。済みません。
○小島委員 差別についての救済機関としては、日本の都道府県にある労働局の調停委員会の活用というのが1つ考えられる。それと、簡易な裁判、訴訟については、現在、日本にある労働審判があります。その2つを活用するというのが1つ方法としてはあるのではないかと思います。フランスの場合、日本のこの2つの制度との関係からすると、どういう状況にあるのか。ドイツでは労働裁判という制度があります。フランスも似たような制度があるのではないかと思います。その救済機関についてはどんな状況なんでしょうか。
○永野専門協力員 フランスでは、日本のような労働審判制度はないと言って良いと思います。労働裁判所が、労働専門の裁判所になっていますけれども、いわゆる審判制度というのは存在していないと思っています。ただし、労働裁判所が、労働審判所と訳されていることもありますし、また、労働裁判所の仕組みの中で、労働審判類似のことが行われております。フランスの労働裁判所では、調停前置主義がとられ、判定部における判定の前に必ず調停部、これは、労使各1名と2名の判事で構成されますが、必ず調停部における調停手続きを経なければならないこととなっております。また、手続きは、迅速性と簡易性を特徴としています。
○棟居部会長 ありがとうございました。
せかすようで恐縮ですけれども、大谷委員、お願いします。
○大谷委員 大谷です。
済みません。1点だけごめんなさい。私たち日弁連としてはフランスを視察させていただいたので、内容を了解しているつもりなので、教育の点だけ補足説明していただければと思います。地域の学校への登録制度は、まさに我々が主張している学籍一元化ということと非常によく似ていると思っているんですけれども、特別学級への支援のときの保護者の同意がどうなっているのか。ここはたしか私たちが視察したときにもかなり突っ込んで聞いたら、個別支援計画として特別支援学級への学級支援だということで、保護者の同意は原則であって、保護者が同意しないときに個別支援計画をすることもないし、特別支援をすることもないと聞いてきたと思うんですけれども、その理解でよろしいかどうかだけの確認です。
○永野専門協力員 先ほどから謝ってばかりですけれども、教育分野につきましても、私は普段研究しておりませんので、細かいところまで明確にお答えすることができません。その点に関しましては、次の会の課題とさせていただいてもよろしいでしょうか。
○大谷委員 私たち日弁連としても視察報告書を出していますので、それも含めて次回までにもしわかったら資料として共有させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○棟居部会長 逆に調査に行かれたということでお聞きしたいけれども、普通学級に組み込むんだ、登録なんだということですね。
○大谷委員 普通学級に原則全部登録してしまうんです。特別支援学級に行っても登録は外さないで、いつでも戻ってこられるんです。
○棟居部会長 だから、むしろ特別支援学級というのは例外なわけですね。
○大谷委員 そうです。だから、同意をした上でということです。
○棟居部会長 例外だから同意が要るという流れで理解してよろしいですか。
○大谷委員 そういうことです。ただ、ヨーロッパですから、保護者の権限が一般的にかなり強いのでということもありました。
○棟居部会長 ありがとうございました。
多分複数のところで、特に日弁連さんなどが既に十分に調査もされている。これは生かさなければいかぬと思いながら聞かせてもらいました。
別に皆さんに強制というわけではないんだと東室長から注意されましたので、その点もお含みおきの上でお願いします。
○池原委員 池原です。
聞き落としたのかもしれないので確認と1点の質問なんですけれども、1つは1ページの2008年法の1条、直接差別・間接差別の定義ですが、これは要するに個別法で差別についての規定があるものの差別の解釈規定という意味なのか、それ以外の特別個別法がなくてもある一定の現象が起これば、これは抽象的な規定の仕方なので、差別に当たる、例えば不法行為の成立要件として取り込めるとか、そういう要素を持っているのかどうかを教えてください。もしかしたらお話になったのかもしれませんけれども、教えてください。
もう一つは、立証責任の問題ですけれども、適切な措置と過度の負担との関係でいうと、これも分配がされているんでしょうか。つまり適切な措置は原告側が立証するけれども、過重な負担は抗弁事由になるとか、あるいは適切性まで原告が主張しなければいけないのか。適切な措置についての立証分配があるのかどうかについて教えてください。
○永野専門協力員 まず差別の定義ですけれども、個別の法律で差別とは何かというような規定はありませんので、包括的に差別とは何かという定義を考えるときには、やはり2008年の法律を参照することになってまいります。
○池原委員 そうすると、具体的な例はともかくとして、不法行為法などで、つまり個別法がない分野でも損害賠償請求を起こすときの1つの解釈根拠にはなるという理解でいいわけですね。
○永野専門協力員 そうなります。
それから、適切な措置に関してどちらが立証責任を負うかですけれども、これに関しましては、具体的な事例等々が挙がってきていますと、具体的に示すことができるのかもしれませんが、具体的な事例として挙がってきておりませんので、何とも言えないというところでございます。
○棟居部会長 どうぞ。
○浅倉委員 済みません。簡単にします。浅倉です。
1つ教えていただきたいのは、3.2の労働法典の書き方なのですが、障害(等)を理由とする以下の行為を禁止。これに違反する措置・行為は無効、とあって、<1>~<4>があって、それぞれに直接的・間接的な差別的取扱いというのがかかるんでしょうか。
○永野専門協力員 ここのかかり方は、差別的な取扱いにのみかかっています。
○浅倉委員 この直接的・間接的というのは、<4>の労働条件のみにかかっているんですか。
○永野専門協力員 そうです。
○浅倉委員 そうすると、解雇については、直接的・間接的差別というのはかからないんですか。
○永野専門協力員 条文の構造からいいますと、かかっていないということになります。フランス語だと懲戒を受けないであるとか、解雇されないというところは全部動詞になっていまして、最後に差別的な措置の対象とされないというところで、差別的な措置というのが名詞できていて、その名詞に対してアンディレクト(indirect)というのがかかっていますので、条文の構造としてはかかっていないということです。
○浅倉委員 ありがとうございます。もう一つ、採用差別というものも入っていませんね。
○永野専門協力員 採用は入っておりません。採用の部分に関しましては、障害を理由として募集手続から排除するとそれは差別に該当するとされていますが、採用そのものについては使用者の側に採用強制することはできないという事情も恐らくあるのだと思うのですが、入っておりません。
○浅倉委員 わかりました。採用強制までいかなくても、損害賠償ができると考えれば、なぜここに採用拒否というのが入らないのかというのはフランス特有でしょうか。
○永野専門協力員 確かにそうですね。
○浅倉委員 しかも、一方で雇用義務は課しているわけですので、そこら辺の考え方が、フランスについてはよくわからないのですが。
○永野専門協力員 これは障害のみを理由とする差別禁止を定めている条文ではなく、ほかの事由によるところもありますので、雇用義務との関係をどういうふうにとらえるかというのは難しい問題にはなってきますけれども、障害に関してのみ言えば、最初差別禁止規定が導入されるに当たって、障害については採用の部分は雇用義務制度でみるのだという議論がなされてはおりました。
○浅倉委員 ありがとうございます。
○佐藤オブザーバー 永野専門協力員に二点、雇用のところでお尋ねします。一つは、お話があったかもしれないのですが、適切な措置というのは、お話の中の合理的配慮と同じ意味ということでよろしいのでしょうか。
もう一つは、納付金のお話についてです。雇用率が達成できない場合には納付金がありますが、逆に雇用率を超えて雇用があった場合、何か雇用主に対するインセンティブに当たるような制度があれば教えていただけないでしょうか。
○永野専門協力員 まず適切な措置ですけれども、明確に定義をすると違うと言われる可能性もありますが、一般的に使うときにはアメリカ法にいう合理的配慮と同じような形でこの言葉を使っております。
次に6%以上を雇用した企業に対するいわゆる報奨金のようなものですが、特に6%を超えて雇用しているから、御褒美としてこういったものをあげるという助成金は存在しておりません。しかし、非常に多様な助成金が使用者に対しては提供されることになっております。
例えば障害者の雇用まで考慮に入れた人事管理をしていれば、そういった人事管理をしていることに対する助成金が支給されますし、障害者に対して職業訓練を提供していれば、職業訓練をしていることに対する助成金が提供されます。そうした形の助成金がたくさん存在していることになっております。
○棟居部会長 長時間にわたり、永野さん、本当にありがとうございました。懇切丁寧に答えていただいたので、随分様子がわかってきたように思います。今後も御協力をよろしくお願いしたいと思います。
それでは、永野さんのレクチャー及びそれに基づく討議は以上で終了とさせていただきます。永野さん、本当にありがとうございました。(拍手)
それでは、内容に関する本日の議事は終了ということでございます。
東室長から今後の予定などの御連絡をお願いし、私が先ほどフライング気味に申し上げましたが、どう進めていくかというかなり根幹的な問題について、本当はいろいろな御意見を賜れればよかったのかもしれませんが、今日は時間もないですね。ということで、東室長お願いします。
○東室長 どうも御苦労様でした。
次回は第3回になりますけれども、3月14日月曜日を予定しております。
今日お二人の方でこのぐらいの時間がかかりますので、今日御欠席の先生を含めて4人を1回でというのはなかなか難しいということで、ヒアリングにつきましては、4月以降にも延びる可能性が出てきたと思っています。
4月の日程なんですが、一旦は第4回の差別禁止部会を4月4日月曜日に開催する方向で調整していたわけですが、現時点での出欠状況等を考え併せまして、できれば4月も原則として第2金曜日にやるという方向で調整しております。4月の場合は4月8日になりますので、そこで何とか調整できれば、その方向でいきたいと思っております。
時間がないんですが、4月以降どういう形で何を議論していくか。そこのスケジュールについて、事務局的にはいろいろ検討しておりますけれども、皆様方の御意見もいただければ、事前に意見書みたいな形でも結構ですし、メールでも結構ですので、いただければと思っております。ただ、それは公開して議論するような資料にはなりませんので、一応事務局に対する御意見ということで、事務局サイドで扱わせていただきます。
これまで専門委員の方々にもお集まり願いまして、棟居先生にも来ていただいて議論したところでは、例えば日本の中で条例が幾つか制定されておりますけれども、その条例の内容とか実施状況について把握する必要があるだろう。
それとか、これまで判例においても、そんなに多くはないけれども、差別という観点からの判例があるのか。あるか、ないかも含めて、そこは一定の把握をする必要があるのではないか。
それとか、差別の実態としてどういうものがあるのか。これにつきましては、条例制定を求める各地の動きなどもありますし、千葉県条例のときの募集もありますので、差別の実態としてどこの分野にどういうものがあるのか、そういうものも把握する必要があるということです。
そういうものをベースにして、法制度としての骨格みたいなものを、例えば障害の定義をどうするかに始まって、そういうものを検討していくことも必要だということをいろんな形で議論しておりますが、まだ具体的に何月何日に何をやるというところまでは考えておりませんので、できれば皆さん方の御意見もいただければと思っているところです。
○棟居部会長 どうぞ。
○浅倉委員 済みません。浅倉です。
私はどうも差別禁止部会というものとほかの部会との関わりがよくわかっていないと思います。先ほどもお話に出ましたけれども、雇用差別の方については別の部会があるとか、この間の親委員会の意見がとりまとめられたとか聞いています。すると、この差別禁止部会での議論のときには、そういうことを理解した上で議論ができないといけないと思うのですが、そこを是非、一度レクチャーしていただきたいと思います。
○東室長 障がい者制度改革推進本部の下にあるのは、障がい者制度改革推進会議というものです。去年1月からやっております会議体があります。その中で差別の分野については、ここの部会で議論してくれということで、推進会議の下にあるものとしてここが位置づけられています。先ほど言われました雇用差別の問題は、推進本部の下にあるものではなくて、厚生労働省の中の雇用対策課の中にある労政審の中での検討のお話だと思います。ですので、ここの中での議論ではなくて、外の議論ということになりますけれども、最終的にはそことのすり合わせみたいなことも問題になることがあると思いますので、そこでどういう議論がなされているのか。それについてはここで担当の部署の方に来てもらってヒアリングをするということもあり得ると思っております。関連としては、そのぐらいのことだと思います。
○大谷委員 厚労省にある委員会、審議会と親部会でどういう議論をしているかどうかというのは、今、特に親部会の方で障害者基本法の制定に向けて意見書を出し、障害者基本法の中で大きな枠組みを決めた上で差別禁止法に何とか持ち込もうとしているので、制度改革推進会議の方でどういう認識で障害者基本法をつくってもらいたいと思ったかということは、是非ここの差別禁止部会でも共有してもらいたいんです。そのことだろうと思います。
○東室長 わかりました。いろいろありますので、混乱しておりました。
推進会議につきましては、基本法の改正というテーマで、基本法の中に差別禁止をどう位置づけるかという議論をしております。それにつきましては、第二次意見の中に書いてありますので、資料がなければ後で提供しますので、言っていただければと思います。
○浅倉委員 浅倉です。
資料は読ませていただきました。
厚労省の部会とは違うとおっしゃる意味はわかるのですが、そうやって行政が縦割りになっていると検討の場も異なる、というようなことでは、どこで調整がなされるのか不安になります。先ほども雇用差別の禁止と雇用率の問題をどういうふうに仕組んでいくのかという議論が、フランスについても話題になりました。日本でも、やはりどこかで、そのような問題については最終的に決定がされるわけですね。そういう意味で、いつか是非、相互に調整する議論をお願いしたいと思います。
○東室長 わかりました。ここの場で議論すべきことなのかどうかというのは、よくわからないところもありますけれども、そういうことも含めて、今後どういったプロセスが必要なのか皆さんの意見をいただきたいと思っています。
○棟居部会長 ありがとうございました。
今、最後に出ましたいろんな御意見は、私も個人的には気になっておるところなんですが、要するに何か結果につなげたいという思いがあって、しかし、地図がないというのか、どういう山に登っているのかわからない。ここにあるはずなんだけれども、我々がここで議論しておる最中ではなかなか見えてこないということかもしれません。これは議論していくうちにひょっとすると、追々山の頂が雲の上から姿を現してくれるのではないかと、ちょっと後ろにおられる方にも聞こえるように、我々の議論がどういうふうに残っていくのか、つまり残せるほどの形を出してしまえば、これは逆にどこかで使っていただける。あるいは我々の何か考えておったものが形をとってくるということかと思います。
いずれにしましても、いろんな分野の方が集まっているので、議論の質を深めていく、あるいは論点を出し尽くす。これはどこかでやっておけば無駄にはならない。学者の研究会ですと、かなり無駄玉を打っているような感じのところもありますけれども、こういう納税者からお金をある程度出してもらって説明責任のある場でやっておるわけですから、何かにつながると信じて続けていければと思っております。私は勿論そういうつもりでおります。皆さんの御協力もどうぞよろしくお願いします。
ということで、本日の差別禁止部会の概要につきましては、この後、記者会見をさせていただきます。私と東室長から説明をさせていただきます。
あとはよろしいでしょうか。
よろしければ、本日は大変お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございました。閉会とさせていただきます。

▲ このページの上へ