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障がい者制度改革推進会議 差別禁止部会(第4回)
議事録

○棟居部会長 定刻になりましたので、これより第4回「障がい者制度改革推進会議差別禁止部会」を開催させていただきます。
差別禁止部会は、一般傍聴者の方にも公開いたします。
また、会議の模様は、インターネットを通じても幅広く情報提供いたします。
なお、御発言に際してのお願いとして、発言を求めるときは、まず挙手いただき、指名を受けた後、御自身のお名前を述べられてから、可能な限りゆっくりと御発言いただくようお願いします。
本日の会議は、18時までを予定しております。
それでは、東室長から、委員、オブザーバー及び専門協力員の出席状況と資料説明をお願いします。
○東室長 どうも御苦労さまでございます。担当室の東です。
本日は、川島委員、野沢委員、相澤専門協力員、永野専門協力員が御欠席でございます。
大谷委員が16時ごろ御到着の予定です。
また、松本オブザーバーは、16時ごろ御退席という御予定でございます。
その他の委員、オブザーバー、専門協力員は御出席いただいております。
本日の議事は、差別禁止に関する諸外国の法制度についてのヒアリングとして、2名の研究者の方からヒアリングを行います。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。
お手元に議事次第、座席表に続きまして、資料1が「イギリスの障害者差別禁止法制」、長谷川先生に提出していただいたものです。資料2が「韓国の障害者差別禁止法制」、崔先生に提出していただいたものです。
以上、お手元にございますでしょうか。
また、4号館、ここの部屋ですけれども、確保している日程表がペラ1枚であるかと思います。
資料としては以上でございます。
○棟居部会長 それでは、議事に入らせていただきます。
本日は、2名の研究者からのヒアリングを通じて、イギリスと韓国の差別禁止法制についての共通理解を深めていきたいと思います。
最初に、中央学院大学法学部准教授の長谷川聡さんからイギリスの障害者差別禁止法制について御報告をお願いします。よろしくお願いします。
○長谷川准教授 ただいま御紹介にあずかりました、中央学院大学の長谷川聡と申します。専門は労働法でありまして、本日の御報告、障害者の問題は、さまざまな領域に関わる問題ではありますが、私のそうした専門領域との関係上、雇用の問題に限定してお話をさせていただくという形になるかと思います。
また、過日の研究会におきまして、私の報告予定が入っておりましたが、体調不良のため欠席させていただきまして、大変失礼いたしました。本日、体調にあわせて柔軟に調整の措置をとっていただいたことにありがたく感謝をしております。
そうしましたら、早速報告の方に入らせていただきたいと思います。
お手元に私の「イギリス障者差別禁止法の構造と限界」というレジュメがあるかと思います。
まず初めに「一 本報告の対象と目的」に関して確認をさせていただきたいと思います。
本報告は、イギリスの障害差別禁止法、2010年平等法という法があるんですが、この中に障害者差別禁止法の制度が入っております。もっぱらイギリスの障害者差別禁止法制は、この法律によって規制をされております。したがいまして、私の御報告は、この法制度の中身を、その概要を御紹介するという形になろうかと思います。
また、冒頭でお断りさせていただきましたように、私の専門領域との関係上、基本的に雇用、労働の分野を中心的な報告の対象とさせていただくという形になると思います。
先取り的に全体像を御紹介すれば、次の二の項目で2010年平等法の成立過程、歴史、経緯のお話、続く三のところで平等法の差別禁止の概要のお話、全体的に御報告をしようと思いますが、やや調整義務の点に分量を割きたいと考えております。
最後に四としましてまとめという形にさせていただきたいと思います。
おおむね45分程度で御報告をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
そうしましたら、早速ではありますが、「二 2010年平等法の仕組みと立法経緯」という点から御報告をさせていただきたいと思います。
まず、この法律の仕組みでありますが、いわゆる差別禁止法でございます。一体どのような差別理由を禁止しているかといいますと、実は、本報告で御紹介する障害以外にも、年齢であったり、そして性転換であったり、ごらんいただきますようなさまざまな差別事由を規制対象としている差別禁止法であります。
イギリスでは、契約自由の原則というものがありまして、基本的に、個人は、その意思に基づいて自由な契約を締結することができるというものが原則なんですが、ただ、ここに書いてあるような理由に基づく差別、こうしたものが含まれるようなものについては禁止をしていこうではないかという法制度であります。
2つ目の、では、一体どういうようなものを適用対象範囲としているかですが、ごらんいただきますように、サービスの提供であったり、あるいは不動産であったり、そして、本報告で中心とさせていただきます雇用であったり、そういった形で、いわば包括的にさまざまな領域を差別禁止の対象としている法律です。
では、この2010年の平等法が一体どういう経緯でできてきたか。やや古いお話ではありますが、1944年のお話からさせていただきたいと思います。
レジュメの2、まず、1つ目の○でありますが、イギリスの雇用における障害差別の問題を御紹介するに当たっては、大体1944年の障害者雇用法という法律を紹介するのが通例です。
この法律はどういった法律かといいますと、差別禁止法ではありませんで、割当雇用制度、いわばこういった仕事の場合は一定の割合で障害者を採用しようということを義務付けているという法制度でありました。
これがしばらく機能していたわけなのですが、ただ、実はこの制度が必ずしもイギリス国内で十分に機能しなかった。一番見やすい指標としましては雇用率の達成状況でありますが、統計上では、1961年の段階では61%であったものが、1993年の段階では19%という形で、むしろ低下をしてきているという現象が見られました。
こうした経緯から、1944年法の実効性に疑問が提起されるようになりまして、別の枠組みを障害者の雇用の問題については利用する必要があろうという議論が、研究者の方からも、また、障害者の団体からも声が上がってくるようになります。
そうした声を受けましてできたのが、その次の○、1995年障害差別禁止法という法律です。この法律はどういう法律であるかといいますと、雇用、教育、先ほどごらんいただきました2010年平等法と同じように、多様な領域において障害を理由とする差別を禁止する、いわば包括的な障害者差別禁止法であります。
この法律をつくった際に、イギリスは割当雇用制度、先ほどの1944年法を廃止いたしました。この点は、イギリスの1つの特徴かなと思いますが、割当雇用制度による雇用保障から、障害者差別禁止法による雇用保障へとイギリスはその軸足を移すということになります。
そして、この障害者差別禁止法でありますが、この枠組みがこれから御紹介していく2010年の平等法の枠組みの中に、これから御紹介しますように取り込まれるような形になりまして、この時点で今日のイギリスの障害差別禁止の基本的な枠組みは、大まか、おおよそでき上がっているということになります。
この法律をイギリスはしばらく運用してまいりましたが、この法律が次に2010年平等法という法律の中に吸収される形でなくなります。と申しますのは、イギリスには実は障害差別禁止の差別禁止法以外にも性差別を禁止する法律であったり、あるいは人種差別を禁止する法であったり、差別事由ごとにさまざまな法律がイギリスには当時存在していました。この状況が非常にイギリスにとっては差別の形をわかりにくくしている。どの条文を見てどういうふうな解決をするのか、あるいは、この法律で行われている解釈がほかの法律でも果たして使えるのか、そういった点が非常に複雑化しておりまして、これを整序するという形で、性差別や人種差別、そしてこれから御紹介する障害差別の問題を1つの立法としようという形で2010年の平等法ができました。
以上のような経緯でできておりますので、2010年平等法の障害差別の枠組みは、先ほど御紹介した1995年法の枠組みをおおよそ引き継いでおります。
以下、2010年の平等法を御紹介していこうかと思いますが、ほかに、皆様にごらんいただかなければいけない、法律ではないのですが、法の解釈や運用に影響を与えているルールというものが幾つかあります。それが、「3 関連ルール」に記載しております手引き(guidance)と行為準則、Cord of Practice と呼ばれるものです。
前者、手引きの方でありますが、平等人権委員会、後ほど御紹介いたしますが、イギリスで平等や人権の問題を取り扱う行政機関があるのですが、そういった機関や障害問題担当局と呼ばれるような政府内部の機関、こういったところが雇い主や労働者なり、そういった対象ごとにこの法の解釈は具体的にはこういうことだよと示すものです。例えば調整措置の具体例というものはこういうものだよという形で、2010年平等法の内容をいわば具体例を挙げる形でわかりやすく紹介するという文書をつくっております。
また、行為準則と呼ばれるものもありまして、こちらは、平等人権委員会というものが先ほども出てまいりましたが、これがつくっておりまして、こちらの方がやや書き方としては専門的かなと。平等法の解説、あるいは解釈例の提示などのようなことをやっております。
これらのルールは、法解釈の根拠に直接なるものではありませんが、ここに書いてある事柄が、裁判、あるいは審判におきます判断の中身に強い影響を与えるという意味で、実務上も、恐らく裁判所や審判所においても尊重されているものです。
そうしましたら、ページをめくらせていただきまして、早速ではありますが、2010年平等法の概要についてお話をさせていただきたいと思います。
まず、この平等法の中身でありますが、障害者の定義を御紹介いたします。
どのような定義かと申しますと、身体的又は精神的な機能障害を有するものであり、機能障害によって通常の日常生活を行う能力に、実質的かつ長期間にわたり悪影響を受けている者である。また、過去にそうした障害を有していた人も含みます。
障害者に該当するか否かということは、あらかじめ行政機関などによって認定されるわけではありませんで、問題が起こった事件ごとに審判所や裁判所において判断されるという仕組みになっております。
続きまして、2の「禁止される差別・不利益取扱い」でありますが、幾つかの差別類型があります。
1つ目に御紹介するのは、直接差別と呼ばれるものです。こちらはどのようなものかというと、障害というものを理由としまして、AがBをその他の者を取り扱う、あるいは取り扱うであろう場合よりも不利益に取り扱ったような場合であります。
具体例としましては、その下の例のところに書きましたが、例えば、コンピュータを使う業務に応募した視覚障害者の女性が、使用者が視覚障害者はコンピュータを使えないであろうと誤って推測しまして、各個人の状況を考慮せずに採用候補者に加えられなかったケースというものが、先ほど御紹介した文書の中にも紹介されているところです。
つまり、この女性が持っている障害ということを理由に、実際にその女性がこうした仕事をできるかということを全く問題にすることなく不利益な取扱いをするという例が代表例であります。
また、この差別禁止、直接差別でありますが、障害者を非障害者より有利に扱うことは許容するという点で、ほかの差別禁止法と異なる点がございます。性差別禁止などの枠組みでは、男性に対する差別、女性に対する差別というものも禁止をされております。これは、ほかの差別禁止法にも見られるものでありますが、障害差別禁止に関しては、いわば障害者を有利に扱うということは禁止をされていないという仕組みがとられております。
また、先ほど申し上げましたとおり、レジュメの下の1つ目の黒丸になりますが、この差別禁止は、個人の能力を問題にせずに差別をするというものでありますので、いわば本人の能力に無関係に、障害者に対する偏見を理由に行われた差別、こうしたものを禁止していこうという差別の概念であります。
少し飛ばしまして、(2)間接差別の方に入らせていただきたいと思います。間接差別、どういった概念かと申し上げますと、次のようなものです。
AがBに、Bの障害に関して差別的な規定、基準又は慣行を適用した場合。そして、これが正当なものであるということ、均衡の取れた方法であることを証明することができないという場合です。
文章、途中を飛ばしましたが、では、一体、先ほど申し上げた差別的な規定、基準又は慣行というものがどういう場合に差別的なものであるかと判断されるかというと、※印のところになります。
Bの障害に関して差別的な規定、基準又は慣行が、Aが、Bが有していない障害を有する者にこれらを適用する、又は適用するであろう場合であって、これらが、Bと同じ障害を有していない者と比較して、Bと同じ障害を有する者を不利な立場に置く、又は置くであろう場合であって、Bをその不利な立場に置く、また、同様にそうであろう場合であって、Aが、これらが適法な目的を達成する均衡の取れた方法であることを証明することができないというケースです。
やや条文のつくりは複雑でありますが、例をごらんいただければわかりやすいかと思います。一番下の例でありますが、例えばこんなケースです。
採用において筆記試験を実施するというケースが代表例として挙げられるかと思います。と申しますのは、筆記試験というものは、恐らく手を使う、あるいは視覚を使うということがございますので、手に障害をお持ちの方、あるいは視覚に障害をお持ちの方にとってみると、一見この例は障害ということは一切含まれておりませんが、こうした人たちには実質的に不利に機能するという採用の条件ではないかと思われます。こうした点をとらえまして、もしこのような試験を課すことについて適切な、先ほど申し上げました目的、適法な目的、そしてこれがそうした目的を達成するための適切な方法である、均衡の取れた方法であるということが証明することができなければ、差別が成立するというものです。
続きまして、(3)に入ります。障害に起因する差別というものがございます。この差別概念は、イギリスでは、障害を理由とする差別にしか存在しないものです。
では、一体どういうものか。まず、法律上の定義を御紹介させていただきます。
障害者Bの障害が原因で生じたある事柄を理由にAがBを不利益に取り扱った場合で、当該取扱いが適法な目的を達成するための均衡の取れた方法であることをAが証明することができなかった場合、この差別が成立するという仕組みになっております。
具体例として紹介するならば、障害により病気休暇を取得した障害者に対し、病気休暇を取得したことを理由として解雇を行った場合。これが代表例として挙げられるのではないかと思います。
つまり、ここでの病気休暇というものは障害者の障害に基づいて発生したことであるからです。こうした差別も禁止していこうと。ただ、こうした取扱いをすることが、先ほどの間接差別に似ておりますが、適法な目的を達成するための均衡の取れた方法であった場合については正当化を認めていきましょうといった差別概念であります。
では、もう一枚めくっていただきまして、3ページに入ります。「(4)調整義務の不履行を理由とする差別」という差別概念がございます。この点に関しましては、後ほど詳細に御報告させていただきますので、ここでは具体例のみを御紹介させていただくという形にしたいと思います。
具体例としましては、レジュメにありますように、筆記試験による採用において、手が不自由な障害者に、筆記補助者や代わりの口頭試験を用意しないケース、これが代表例として挙げられるかと思います。
続きまして、(5)ハラスメント及び(6)報復的取扱い、そして(7)違法行為の指示等、これらに関しては概括的な御紹介のみにとどめさせていただいております。
まず、ハラスメントに関しましては、Aが障害に関連する望まれない行為を行い、当該行為がBの損害を侵害する。又は、Bに対して脅迫的な、敵意のある、品位を傷つける、さまざまなことが書いてありますが、こういった目的又は効果を持つ場合というようなケースです。そして、こうした効果が発生するかどうかは、ハラスメントを被った人の認識及びその人々、あるいはその行為を取り巻く状況、そしてまた、そういった効果が出るだろうということが合理的に想定できる、こんな点を考慮しまして判断されます。
続きまして、「報復的取扱い」にまいります。
これは、条文の定義がありますが、一言で申し上げれば、2010年平等法に定められている、さまざまな障害者を守るための法制度を利用する、あるいは利用するような人を助ける、こうしたことを理由とする差別を禁止しようといったものです。
7つ目、違法行為の指示、これは、保護される特性とレジュメには書いてございますが、これは今回の件に関しましては障害と読み替えてください。障害を理由に上述した差別等の行為を行うようにある者に指示したり、あるいは不法な行為を行おうとする他の者を助けるよう指示する、いわば差別を助長するような行為、こうしたことも禁止をするというような条文がございます。
イギリスの2010年平等法に存在する差別の禁止、あるいは不利益取扱いの仕組みというものは、おおよそ以上の法制度を使いまして構築されているということになります。
続きまして、先ほど御紹介しました差別以外の中でも恐らく注目されているだろう調整義務の不履行を理由とする差別の点について、少し時間を割きまして御紹介をさせていただきたいと思います。
「3 調整義務の内容」にまいりますが、先ほど御紹介したもの、イギリスでは、ある条件がそろいますと、使用者は調整義務を負うという条文がございます。
それでは、一体どういうような条件がそろったら調整義務を負うのか。条文上では、以下の<1>、<2>、<3>のようなケースがあります。
1つは、ある規定、基準又は慣行、いわゆる取り決めのようなものが、障害者を、障害者でない者と比較して、ある事項に関して事実的に不利な立場に置くようなケースです。
2つめは物理的特徴、具体的には※印の1つ目に書きましたが、例えば建物の構造であったり、通路、出入り口、あるいは家具であったりとか、そうしたものが障害者を障害者でない者と比較して当該事項に関して質的に不利な立場に置くようなケース。例えば、スロープの付いていない階段のみの通路のようなケースはこういったケースに該当するのではないかと思います。
3つ目に、障害者が補助的支援の提供がなければ、障害者でない者と比較して当該事項に関して実質的に不利な立場に置かれる場合。補助的支援に関しましては、※印の2つ目のところに御紹介しておりますが、障害者に対してさまざまな支援や援助を提供するようなこと。例えば、障害者の障害の状況に適したキーボードであったり、あるいは文書の読み上げソフト、こういったものの提供がなかったとすると、障害者でない者と比較して不利な立場に置かれるようなケース、こうしたことを<3>のケースは定めているわけです。
では、ページを1枚めくっていただきます。4ページにまいります。
以上のような3つの条件がそろった場合に、使用者はこれから御紹介するようなさまざまな調整措置を講じる義務を負うのですが、1点、制限といいますか、条件がございまして、それが4ページの一番上に入っております※印、使用者は、障害者が応募者であることを知っている、又は知っていることを期待される場合に限り調整義務を負う、あるいは、既に雇用している被用者との関係、労働者との関係では、その被用者が障害者であることを知っていることが通常期待されるようなケースに限って調整義務を負うという仕組みになっております。つまり、調整措置を講じる使用者が、障害者がいるということを認識しているということが必要とされているという特徴があります。
それでは、以上のような条件を満たした場合、使用者は一体どのような措置を講じる必要があるのか。(2)調整措置の具体例というところにまいります。
ごらんいただいております調整措置、(a)から(i)まで、施設に調整を行うこと、障害者の職務の一部を他の従業員に配分すること、空きポストに障害者を異動すること、さまざまなものが書いてありますが、これらはあくまでも例示です。これらに限定されるわけではありませんで、その事案ごとに、一体どのような措置が必要なのか、これが裁判官などによって中身が確定されていくわけです。
それでは、「(3)調整措置を義務付けられる範囲」に入ってまいりたいと思います。
先ほど申し上げました調整措置の具体例。ものによっては、それを講じることについてさまざまな負担が使用者にかかることがあります。例えば、(a)の施設に調整を行うこと。先ほど御紹介したような階段のみの事業所でスロープがないような場合、スロープを設置するにしても、一定程度の費用がかかることは確かです。また、障害者を雇用しているケースに介助者を付ける。こうしたケースについてもある程度の負担が生じることは確かです。そうした場合に、一体、では、どのような負担まで使用者は負わなければならないのか。逆に言えば、どの範囲まで使用者は措置を講じる必要があるのか。この点については、レジュメのところに書いてありますとおり、合理的に考えて実施可能な範囲、経済的負担や調整措置の効果などを踏まえて総合判断をする。非常にあいまいなものではありますが、いわば総合判断という形でこの範囲が決定されているというのがイギリスの行い方です。
では、一体どういった点に着目して合理性というものを判断していくのかといいますと、例えば、問題となっている不利な効果を防ぐ程度とか、あるいは、使用者が当該措置を実施可能な程度、あるいは措置の実施が使用者に与える財政の問題、使用者の財源がどの程度あるか、こういったものに着目して判断をされていくわけです。
ですので、例えば比較的経済的に余力のある大きな企業の場合、財源はある程度あると一般的には考えられますので、求められていく調整措置の内容も、そうした財源が比較的少ない企業よりは大きなものが求められていくということになろうかと思います。
あるいは、余りお金がかからないような調整措置、中でも非常に効果の高いもの、こうしたものについては、非常にその実施が要請されるということになってこようかと思います。
また、イギリスで特徴的でありますのは、下の黒丸のところに書きましたが、調整措置の範囲は、その労働者が締結している契約の範囲には限られないということです。例えば、具体例としまして、道路清掃員という形で雇用されていた人を、それ以外の事務作業、つまり、全く契約の中身とは違う、ただ、その事業所内では存在している職場、こういったところで働かせるといったことも要請されることになっております。いわば契約で定められている事柄に限られず、使用者は可能な調整措置を講じるということを求められているということになろうかと思います。
先ほど申し上げましたとおり、こうした合理性の範囲というものに大きな影響を与えるものの1つは財源であります。先ほども使用者の規模のところでお話ししましたが、この点についてですが、(4)、実はそれほど大きな財政規模を持っていない事業主でも調整を行うことができるように、調整措置を講じる際の財政的支援を行う制度が設けられております。仕事へのアクセス支援と訳しましたが、こうした制度を通じた支援です。
どういった支援を行うかといいますと、例えば例に書きましたが、採用面接時のコミュニケーションを支援する人の設置する費用、あるいは、障害者の労働に必要な備品にかかる費用、先ほどの調整措置を講じるときにかかるさまざまなもの、こういったものに対して、事業主の規模、あるいは労働者の勤続期間などに応じて一定の額が支給されるというような仕組みになっております。
雇い主は、この措置を使って一定の財政的な支援を受けるということはいわば前提となっておりまして、たとえ小規模事業主で、うちは非常にお金が少ない。だから調整措置を行うことはできないよと言ったとしても、こういった措置を使うことができて、調整措置を行うことができるのであれば、それは当然調整措置を行わなければならないという形になっております。
それでは、最後になりますが、5ページに移らせていただきたいと思います。
以上がイギリスの障害差別禁止法制の大枠であります。
では、こういったものの救済が実際にはどのように行われるのか、あるいは裁判という形式にならなかったとしても、事業所あるいは行政機関との相談などによって、その法律の中身が一体どのように実施されるのか、この点について御紹介をしたいと思います。
「4 差別の救済にかかわる諸機関」と書きました。
まず、御紹介しなければならないのは、(1)裁判所や審判所。いわゆる司法的な判断を行う、司法的な救済を行う場です。こういった裁判所に事件が持ち込まれる。持ち込まれることによって、裁判官によって、先ほど御紹介したような差別が存在しているか、不利益取扱いが存在しているかどうか、こういったことが判断される。そして、もし差別に該当すると判断された場合につきましては、黒丸1つ目のように、差別と認定された問題となった契約の定めなどは、法的な拘束力は持たなくなります。
そして、黒丸のその2、差別の存在が証明された場合、その労働者が、その人は差別を受けたのであるといった宣言なり、あるいはその差別を受けたことに対する補償金、あるいはその差別を是正するために、使用者に対してこうした行為をせよというような形で勧告をするといった救済が講じられるということがございます。
こうした裁判所や審判所の救済が雇用の場では行われます。
また、特に雇用の領域におきましては、審判所というものがございます。レジュメには書いてありませんが、雇用審判所として、そこでの訴えが不満がある場合、さらに1つ上に上って、雇用控訴審判所、あるいは雇用上訴審判所と呼ばれる審判所が設けられております。ここでは、公労使の三者構成によりまして、裁判官と労働者側の方、使用者側の方という3人の方が判断に参加しまして裁判を行う、審判を行うという形になります。
そして、もしその審判所の判断、雇用控訴審判所の判断に不服があった場合については、先ほど御紹介したような裁判所、代表的には控訴院と呼ばれますが、そういったところ、そして、そこで不服がありましたら、最高裁判所という形で通常の司法の審級の中に組み込まれていくという形になります。
また、(2)に入りますが、助言斡旋仲裁局というものがございます。これは、ごらんいただきますように、紛争の発生や本格化を予防し、良好な労使関係を構築することを主たる目的とした機関です。
恐らく日本の感覚では、まず、裁判所というのが一般的かなと思いますが、実は、先ほど御紹介した裁判所や審判所に事件がかかる前に、通常は助言斡旋仲裁局におきまして斡旋が試みられるのが通常です。審判所に申立てが行われたとしましても、審判所の方からこの機関に対して、こうした事件を起こされている、斡旋を試みてはどうかと連絡し、もしそうしたことが可能であれば、そうしたことを行うのが通例です。当事者が参加することによりまして、労使関係をなるべく訴訟の場ではなく、斡旋という形で救済をしていこうというものです。
こうした、いわば当事者が対立をする、出てきてぶつかるというような形で救済する機関が2つございます。本報告は、障害に関する差別とありますので、では、これらの文脈で障害というものがどう関与していくのか。
裁判所は、助言斡旋仲裁局のレベルでは、例えば、審判、裁判官が絶対障害者でなければならなかったりとか、あるいは、審判員の1人が障害者でなければならないといったことは必ずしも必要的とはされておりません。その意味では、通常の雇用の紛争解決システムにのっかって、その中でその特殊性が判断されていくという形になろうかと思います。
続きまして、3つ目、平等人権委員会というものがございます。これは、当事者が申立てをして紛争を解決してもらうというタイプの機関ではなく、平等人権委員会という、行政機関が平等法の遵守状況について事業主に対して調査を行ったりする、あるいは質問を行ったりする、あるいは、その結果不当なものが認められたとすれば、それを改善していくよう指示をする。こういった形で行政機関が中心となりまして平等法の内容を実現していこうという機関です。
実際、こうした機関に対して相談をする、あるいは当然こうした機関の人が出てきて相談を受ける、こういった形で事案が、先ほど御紹介した(1)裁判所や(2)助言斡旋仲裁局にかかる前に、未然に防がれていくことを目指そうという機関です。
この機関は、実は障害問題以外にも、性別や人種、こういった問題についてもその管轄に含めているものです。ですから、障害者専用の機関ではございません。
ただし、この平等人権委員会の中におきまして、障害者の方たちを中心に構成される委員会が設けられております。この委員会の中で障害者の方たちの意見を参考に、具体的に平等人権委員会がどのように行動をしていくのか、こういったことを決定していくということが行われております。ですので、この機関自体はさまざまな事柄を対象とするものではありますけれども、障害者の行為を反映するシステムがその中に含まれているということを指摘することができようかと思います。
以上、イギリスの障害者差別禁止法制の概要を御紹介してまいりました。
最後に「四 まとめ」としまして、若干の指摘をさせていただこうかと思います。
まず1つ目でありますが、示唆です。示唆に関しましては、例えばこんなことがこれから障害者差別禁止法をつくっていかなければならない日本にとって参考になろうかと思います。
1つ目は、片面的差別禁止、あるいは調整義務を用いた障害差別禁止の特徴の評価という点です。
先ほど御報告の途中で申し上げましたが、イギリスの障害差別禁止法というものは、そのほかの性差別禁止法、あるいは人種差別に関するもの、こういったものとはやや異なる特徴を持っております。代表的には、先ほど御紹介した片面的な差別禁止、つまり、障害者に対する差別は禁止するけれども、非障害者に対する差別は禁止をしない、こういった特徴であったり、あるいは調整措置、あるいは調整義務といったもの、つまり、障害者に対して優遇を認める。先ほどの片面性とも関連しておりますが、こういった差別禁止の特徴を持っております。
日本には既に雇用の分野に関しましては、男女雇用機会均等法と呼ばれる性差別の禁止を定める法が存在しますが、例えば、こういった法と見比べながら、一体どういうような特徴を障害者差別禁止法の中に認めていくべきか、こうした点は注目していかなければならない点かと思います。
もう一点、調整措置を講じる際の行政の支援と差別禁止の連携という点を指摘させていただきました。障害差別禁止の枠組みというものは、いろいろなところで障害者に対する優遇を認めるという点に特徴があろうかと思います。これは、一部では特に調整措置の点で御紹介をしましたとおり、使用者に対して一定の負担を求めるというものです。この点を使用者のみに負担させるという1つの立法政策でありますが、ただ、行政がこれを支援するという仕組みを設けるのも1つの選択肢ではあろうかと思います。いわば障害者を雇用するということの責任といいましょうか、差別禁止をだれが実現するか。事業主なのか、あるいは国全体なのか、どう位置付けていくのか、こういった点もイギリスの仕組みは検討を求めているのではないかと思います。
ただ、今まで御紹介していたイギリスの仕組みは、完璧なものではございません。さまざまな課題を抱えております。レジュメの方では3点ほど御紹介をさせていただきたいと思います。
1点、私が考えましたのは、差別されないために障害者にどの程度の能力を要求するのでしょうかといった点です。
雇用の場というのは、どうしても労働能力、働くということを求める場です。としますと、やはりそこの場に含まれるのであれば、一定の能力が求められざるを得ません。反面、障害という言葉は、何かしらの形で障害、つまり、何かができないという点が含まれてしまう言葉でもあります。としますと、一体どの範囲まで調整措置を認めて、その能力、実は障害によって失われている部分を補完していくのか。このどの程度までを決定するのがなかなか難しい問題として、イギリスでも残っているのではないかと思います。
2つ目に、障害者の障害について、事業主が知る必要がある反面、開示しがたい障害もあるのではないかということです。
調整措置を講じるため、特にその調整措置を効率的に行うためには、調整措置を行おうとしている人が、調整措置を受ける障害者の障害の状態を知っていることが必要です。いわば障害者の状態を知れば知るほど、それに合った適切な調整措置を講じることができると言うことができるかもしれません。
ただ、障害の中には、それを明らかにしたくない。例えば、個人的にしたくない。周りの人に知られたくない。あるいは社会的に偏見があるというものもあろうかと思います。こういった障害に対する調整。その労働者に対して開示を求めると、場合によったら酷なことがあるかもしれません。こういったケースではイギリスではどうとらえているんだろうか。先ほど申し上げたとおり、イギリスは、特に雇用の場面に関しては、障害者の障害の事実を知っていなければ措置を講じなくてよいという態度をとっていますが、果たしてこれはいいのか。こういった点も1つ論点でありましょう。
そして、最後に、採用に向けたインセンティブを確保する必要性もあろうかと思います。
いろいろ申し上げてきましたが、イギリスでも差別禁止法はありますけれども、ただ、一体どのような人を採用するかという点に関しましては、障害を理由とする差別は禁止されるとはいっても、基本的に使用者の自由であるという点は、日本と余り変わらないところがあります。そうしますと、障害者の雇用をより充実させていくためには、ここに御紹介した差別禁止法だけでよいのだろうかという点も1つ問題点として挙げることができるのではないかと思います。こうした差別禁止法以外にも何かしらの障害者の雇用の特徴をバックアップするような制度を設けることも、この法制度の趣旨に反しない限り、当然許されているのではないかと考えます。
以上、1ページから5ページまで、イギリスの障害差別禁止法の概要について御紹介させていただきました。
雇用の分野に限定した、やや領域の狭いお話で、御出席の方々にはやや物足りない点もあったかもしれませんが、もし不足の点がありましたら、私のわかる範囲で回答をさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)
○棟居部会長 長谷川さん、どうもありがとうございました。いろいろまとめていただきまして、これからの議論に有効に活かせていただけると思います。
それでは、長谷川さんの報告に関する討議に移りたいと思います。討議の時間は約45分を予定しております。切り口はどちらからでもよろしいかと思います。
松井さん、どうぞ。
○松井委員 松井です。ありがとうございます。
包括的な差別禁止法がございますけれども、イギリスは、個別法の中でこういう規定はないんでしょうか。例えば、日本では最低賃金法があって、障害者だけではないですけれども、障害を持った人たちについては、場合によっては最賃除外ということができますけれども、そういうことはイギリスにおいては問題にならないのかどうかということと、それから、もう一つは、先ほど課題として挙げられた調整措置を講じる場合に、職場の中にそういう調整措置をする仕組みがあるのか。さっきおっしゃったように、外部の方は特定の障害を持った方の適正な措置が判断できるかどうかということがあると思うんですね。そういう意味で、職場の中でそういう調整機能的なものがまず機能しているのかどうか。どうしても機能しないということであれば、それは外部に持ち出すということがあると思いますけれども、その辺、どういうふうになっているか、教えていただきたいと思います。
○長谷川准教授 御質問ありがとうございました。
まず、第1点目の各個別的な立法の中で、こうした障害に関する特別な定めというのがあるのかという点でございますが、正確にすべて網羅しているというわけではありませんが、恐らく存在するのではないかと思います。この点、不明確で正確にお答えできないのですが、あるいは、2010年平等法の中でそういった事柄もある程度個別立法とすべき事柄がフォローされているという態度をとっているのかもしれません。この点、私のまさに勉強不足でお答えできない点なのですが、あいまいでありますが、1つ目の点についてはそういった回答をさせていただければと思います。
第2点目でありますが、調整措置を講じる際の職場の中でのどういったものを調整措置を講じるかという決定する仕組みですね。こういった点に関しましては、恐らくその職場に存在している、基本は紛争も、イギリスも職場の中で、例えば労働組合の方がどういった調整が必要であったりとかということに参加して、こういう措置を講じるということが行われるのが見られるところではありますし、また、職場の従業員の代表の方などがこういった障害者の方たちの声を取りまとめて、あるいは中に立って障害者との間の調整を行うというケースがあるということは、私の耳にした範囲ではありますが、あると伺っております。
○棟居部会長 ほかにいかがでしょうか。浅倉委員、お願いします。
○浅倉委員 どうもありがとうございました。3つあるんですけれども、1つずつお願いしたいと思います。
第1点ですが、間接差別の禁止規定と、調整義務の不履行の問題ですね。長谷川先生が出された例では、この両者はほぼ重複しているというか、例に出されている、筆記試験を実施する場合というのが両方にかかっています。この関係はどうなのかということを、まず最初にお伺いしたいと思います。
○長谷川准教授 間接差別と調整義務の不履行の差別の関連性でありますが、EUの指令などにも見られるように、両者は非常に関連性の高いものであると、まず第1に申し上げることができようかと思います。個人的には、実際の機能もかなり似通っているとは考えるんですが、幾つかの点で違うところもあろうかと思います。
例えば間接差別の方では、差別的意図の証明が必要でない、つまり、障害者がいるか、いないかというのを認識している、いないにかかわらず、もしそういったことが実際に発生してしまったとすると、使用者は責任を負うという点が1つの違いとして挙げられることができようかと思います。ですので、先ほど私、最後の論点のところで、障害者であることを知らないと調整義務が発生しないとは申しましたが、間接差別という仕組みを使って救済が行われる可能性は残されているのではないかと思います。
また、調整義務の方から申し上げれば、こちらの方は、間接差別のケースよりもより作為を問題にしているという点が違いとしてあろうかと思います。特に、基本的に個人を対象としましてこういった措置を講じるといった特徴がございます。間接差別の方は、先ほど申し上げたとおり、広くさまざまな集団を見て差別的効果の有無を判断するという点がございます。ですので、間接差別の中で何かの措置を問題にするときの視点というのは、どちらかというと障害者、例えば視覚障害者一般で見るといった視点から差別の有無が判定されるのに対して、調整義務の方は、むしろ障害者個人を見て差別の有無が判断されるんだといった点にも違いがあるのではないかと思っています。
○浅倉委員 どうもありがとうございます。よくわかります。
それから、2番目ですが、たしか2010年平等法にはコンバインド・ディスクリミネーションという複合差別の規定が入ったと思います。日本でも現在、女性差別と障害者差別、それは複合差別として禁止すべきだという議論があると思うんですけれども、その効果について、もしおわかりの部分があれば教えていただきたいと思います。
○長谷川准教授 まず、複合差別という点ですが、御指摘のとおり、イギリス国内で障害と性別であったり、障害と人種であったりという形で、2つの特性といいましょうか、差別理由といいましょうか、そういったものが複合することによって、これらの特性を両方とも持っていないような方より不利に扱われたケースについて差別が成立するというケースであろうかと思います。
これにつきましては、当然、日本でもできるのであれば、こういった制度を私も設けるべきかと考えております。イギリスですと2つということになっておりますが、これがもっと多くてもいいのかなと思います。差別というのは非常にさまざまな理由が絡み合って出るものですので、障害だけという形で視点を限定しますと、ひょっとしたら何か見えてこないものがあるのではないかということは個人的には危惧をしております。
その効果でありますが、この点については、まだ私、十分に検討されていないところなので、具体的にこういったケースをフォローすることができるのではないかということは申し上げることは現時点ではできないので、この点の回答は控えさせていただければと思います。申しわけありません。
○浅倉委員 どうもありがとうございます。
最後の質問です。採用に向けたインセンティブの確保について、何かご意見はありますか。例えば、割当制をイギリスは廃止をしたわけですけれども、一方で、割当制と差別禁止というものが両立可能な仕組みではありますね。その両者の関係について、もし御意見があればお願いしたいと思います。
○長谷川准教授 ありがとうございます。御指摘のとおり、まとめの最後の黒丸の点は、雇用の割当制度を一部で念頭に置いた問題提起です。よくイギリスといいますと、雇用の割当制度から障害者差別禁止法へと障害者雇用の保障の仕組みを転換した。いわば雇用の割当制度は余りよくなくて、差別禁止法に乗り換えたようなニュアンスにとらえられるかと思います。ただ、個人的にはそれはちょっと誤解があるのではないかと考えております。
先ほどレジュメの1ページ目のところで御紹介した1944年の障害者雇用法でありますが、この法律、なぜ十分に機能しなかったのかという点、御報告では時間の都合上省かせていただきましたが、いろいろな理由が指摘されておりまして、白丸の下、割当雇用制度の隣、雇用率3%と書きましたが、まず、雇用率の割当制度が努力義務規定だったという点がこの制度がうまくいかなかった理由の一つであろうということが研究者によって指摘されているところです。
また、そのとなりに雇用率未達成の事業主が非障害者を新規採用したときの罰則が書いてありますが、実際にこの罰則はあったのではありますが、ただ、この罰則が実際に機能する例が実は非常にまれであった。罰則はあるのであるが、実際にそれが運用されなかったという点が十分に機能しなかった理由として指摘されるところです。
また、割当雇用制度の範囲でありますが、非常に業種が限定されているといった特徴もございました。つまり、あらゆる製造業なり小売業なり、すべての業種というわけではなくて、ほんの2つぐらいだったと思いますが、非常に限定された仕事にしか割当制度が使われていなかった。
また、さらにこの制度は、障害者を登録するという制度をとっておりました。障害者の方の中には、自分に障害者であるというレッテルを張られたり、あるいは社会的にそうした目で見られることを嫌がって、この登録を嫌がった、忌避したという方もかなりいらっしゃったといわれております。ですので、この1944年の割当雇用制度はうまく機能しなかった。その結果、1995年の障害差別禁止法ができたという経緯も実はあるわけです。
確かに、イギリスの方針転換というのは議論があった。実際に1995年法をつくるときにも、むしろ割当雇用制度をそのままつくろうという主張もあったようなのですが、ただ、この制度自体が当時既にほとんど機能しなくなっていたという実態がありましたので、政治的な判断として、95年法の差別禁止法は残ったという経緯もございます。
また、95年法及び2010年平等法の法律の枠組み、先ほど申し上げましたとおり、障害者を優遇することを認める仕組みになっています。ですので、優遇をする、いわば障害者のみに対して雇用割当制度を設けるというのも、全く2010年法から見ても問題はないと考えられます。ですので、採用に向けたインセンティブをどう確保するか。1つの方策としては、雇用割当制度によって障害者をまず雇用の場に載せていく。その雇用の場に載せて、かつ、入った後の話の方を差別禁止法を使ってフォローしていく、こういった仕組みも可能ではないかなというように私個人としては考えております。
以上です。
○棟居部会長 長谷川さん、どうもありがとうございました。
では、浅倉委員からの御質問と御回答は以上ということで、お待たせしました、2番目に、先ほど手が挙がりました太田さん、よろしいですか。お願いします。
○太田委員 JDFの太田修平と申します。ありがとうございます。
3点ほど質問があります。1点目は、障害者の定義でございます。お話では、機能障害を持っていて、長期間の日常生活の制限を受けている人たちという定義ですが、そこには体が大きいとか、体が小さいとか、容姿に差別を受けている人たち、そういった身体的な個性というか、特徴の人たちが入るか。あるいは、長期的と書いてありますが、難病とか精神障害の人たちが入るんでしょうか。それが1点目です。
続いて、2点目にいってもいいでしょうか。
○棟居部会長 では、1つずつお願いします。今のお答えをお願いします。
○長谷川准教授 障害、あるいは障害者の定義のお話でありましたが、御指摘いただいたような、例えば体の大小であったり、機能的な何かが失われているといったものにつきましても、結論から申し上げれば、障害者の定義の中に含まれる可能性は十分にあろうかと思います。
2ページの冒頭の部分に挙げさせていただきました定義、究極的には、ここに含まれれば障害者として認定される。身体的又は精神的な機能障害を有する者であって、通常の日常生活を行う能力に実質的かつ長期にわたり悪影響を受けている者。つまり、そういった身体的な何かしらの特徴によって、こうした日常生活を行うことに何かしらの問題を来していたようなケース、こういったケースについては、恐らく障害者として認定されるということがあろうかと思います。
また、当然、御指摘いただいたような精神的な問題であったりとか、身体的な問題に限らず、精神的な障害、また、知的な障害、問題に関しましても、この定義に該当すれば、当然、2010年平等法の保護の範囲に含まれていくという形になっております。よろしいでしょうか。
○太田委員 ただ体が太っているとか、小さいとか、やせている、顔にあざがあるというのは機能障害でしょうか。
○長谷川准教授 果たしてそういった醜貌、外見とか、あるいは体の大小の問題が、ここで言う機能障害に該当するかという点でありますが、究極的には裁判所がそれを判断することではあろうかと思いますが、個人的には、事案としては十分に見たことはないのですが、ごらんいただいた、論理的に考えていけば、解釈によっては入りうるのかなと。ただし、そうしたことについて、例えば私が専門にしている雇用の場で、何かしらの能力の発揮であったり、日常生活の能力の発揮にマイナスの影響が出ているということの証明が大変になる可能性は、事案によりますけれども、あるような気はいたします。
ただ、正確なお答えがこの点についても裏が取れていないので、以上、私が思ったような感想のような形になってしまって大変申しわけないのですが、もしよろしければ、今後の私の検討課題とさせていただければと思います。
○太田委員 ありがとうございます。
○棟居部会長 済みません、今の、横から一言。今までの過去何回かの議論の中で、医学的なモデルと、社会的なつまり社会の側が障害というものをいわばつくっていくんだと。どっちなんだという恐らく問いを太田さんは多分、こういう限界事例ですよね。体が大きいけれども、医学的には何の問題もないと。しかし、社会の側が排除すると。これは障害、あるいは障害者なのか、そうじゃないのか。つまり、医学モデルを前提にしているのか、それとも社会モデルなんですかという、そういう問いかけの一種の限界事例を挙げられた、見ようによっては、ある種の意地悪質問的な教室事例というか、授業でよく学生さんの理解を試すようなときに出てくる、1つのリトマス試験紙的な事例ですね。これは両方の見方が多分あって、ある意味で、単に体が大きいけれども、別にどこも悪くないという人、しかし、非常にいろいろ実際には困っているんだという方が、ここで言う機能障害に入るとすると、これは社会の側が障害をつくっているという考えにかなり結び付いてくると、私はそう受けとめましたけれども、そこはよろしいですか。
○太田委員 そうですね。私は、日本においては社会モデルを基本に据えてつくるべきだという立場に立っています。
2点目に入っていいでしょうか。
○棟居部会長 では、2つ目、お願いします。
○太田委員 2つ目。障害者を有利に集めることが差別に当たらないということに少し引っ掛かりを持ったんですが、例えば、事業主が障害者を有利に扱うという名目で、そういう人だけ個室を与えて、一般職員と活動を別に隔離をするということもあり得ると思うんですが、有利、不利は一体だれが判断するんでしょうか。
○長谷川准教授 御質問の趣旨は、イギリスでは、差別禁止に関して、障害者を有利に扱うことが許容されている。ただ、この許容されていることによって、かえって障害者にとって特定の仕事に配置をされたりとか、あるいはそういった形でむしろ差別的な状況が発生しているということがあるのではないかという御質問でよろしいですか。
○太田委員 そういう可能性をつくる素地がこういうシステムに内包されているのではないかということです。
○長谷川准教授 わかりました。差別禁止というのは、基本的に差別理由を無視して2つのものを平等に扱うという発想が基本です。日本でも性差別の文脈などで、以前、例えば一方のみの片面的な差別禁止だった時代がありましたが、このときにもそうしたことによって有利に扱われている。でも、実際には女性が特定の仕事に追いやられている。むしろ不利な状態も出てくるのではないかという議論がありました。
恐らくイギリスでそうした議論が障害者の文脈であるというのは、私の見た限りではまだないのですが、ただ、御指摘の点、そして、今ありました日本でのそうした経験を踏まえて考えるのであれば、御指摘したような懸念も全くないと言うことは恐らくできないと言えるのではないか。
ただ、障害という差別理由の特性を考えたときに、そうした差別禁止法ではイレギュラーではあるけれども、片面的な一方だけの差別禁止というのをとる必要があるのではないかとイギリスが考えたのではないかと私は思っております。
○太田委員 私の見解は、非常に微妙だなという、微妙なデリケートな問題だなという受けとめをさせていただいています。
3点目に移っていいでしょうか。
○棟居部会長 どうぞ。
○太田委員 今の関連ですが、裁判所・審判所等への訴えが出た場合、差別した、していないを日常的に挙証責任は、まず第1に、障害者にあるのでしょうか、事業主にあるのでしょうか、どちらでしょうか。
○長谷川准教授 差別の証明における挙証責任のお話でありますが、結論から申し上げるならば、差別があったということを主張する側、つまり、この場合、恐らく障害を持たれた方、障害者差別を訴える側になろうかと思います。
○棟居部会長 竹下委員、どうぞ。
○竹下委員 長谷川先生、多分今の太田君の質問との関係ですが、審判所での手続はよくわかりませんが、裁判との関係で言えば、立証の問題は少し誤解があるように思うんです。多分、不利益を受けたことの立証は障害者がしなければならないことは間違いないんです。したがって、裁判において不利益を受けたことの主張がされた場合に、それが障害に基づくものか、そうでないのかということが争点になるはずなんです。その場合に、障害を理由とする差別だという立証をしなければならないということは、きわめて困難な場合が出てくるんです。それに対して、その不利益取扱いが何に基づくのかということについて、例えば労働の場で言えば、雇用主に不利益取扱いの理由についての立証責任があるのかということが問題になるのではないかと思うので、その点についての何か情報があれば教えてください。要するに、挙証責任の分配がどうなっているか、わかれば教えていただきたいんです。
○長谷川准教授 そうしたら、私の方で御質問の取り違えがあったのかもしれませんが、確かにイギリスにおきましても、ある不利益な取扱いというものが、ある差別理由に関連しているか否かということを証明するかどうかが差別の証明の1つのかぎになってくるという点は間違いございません。この点の証明でありますが、原則的な方法としましては、例えば障害者の方と、そうでない方で、障害以外の状態が似ている方を2つ比較をしまして、その2つの方の間に取扱いの違いがあれば、違いがあるということを労働者側が証明すればよいということになっております。ただ、御指摘のとおり、これは非常に難しいというケースもございます。
ただ、差別類型の中では、これが比較的容易ではないかと思われる差別類型もございます。例えば、恐らく容易だろうなと思われるのが、2ページの一番下、三の2の(3)でありますが、障害に起因する差別、これの労働者側の証明というのは比較的容易になっているのではないか。と申しますのは、これは、障害者側が、ある取扱いが、障害者の障害が原因で生じたある事柄を理由に、事業主がその障害者を不利に取扱ったことということを労働者側が証明をすればよいわけです。
これは、例のケースで言うと、障害者の方が障害によって発生した病気休暇で、病気休暇を理由に雇い主が解雇した、この点のみを言えばいいという形になっておりますので、これは、少なくとも御指摘のあったような障害を直接的な理由としていないケース。いわば障害に起因して、関連して出てくるようなものとの関連性を証明すればよいという形で、結び付きの証明を容易にしているということはあるのではないかなと考えております。
回答になったかわかりませんが、以上です。
○棟居部会長 それでは、太田委員からの御質問と回答を終わらせていただきます。
続いて、先ほどお手が挙がっていました山本委員、お願いします。
○山本委員 山本です。質問が1つと、全体についての要望が1つあります。まず、質問から始めたいと思います。
調整義務についてですが、4ページの一番上に※印があります。使用者は、障害者が応募者であることを知っている、又は知っていることを合理的に期待される場合に限り調整義務を負う。既に雇用している被用者については、被用者が障害者であって、実質的な不利な立場に置かれていることを知っている、又は知っていることを合理的に期待される場合に限り、調整義務を負うとあります。
問題は、これらの要件はどのような場面で問題になるのかということです。これから調整措置を取ってくれと求める場合は、求めているわけですから、もう障害者であるということがわかっているはずです。そうすると、調整措置を取らなかったことによって被った損害の賠償などを請求する場面でこれらの要件は問題になるのでしょうか。
5ページを見ますと、4の(1)の2つ目のポツですが、差別等の存在が証明された場合に、権利の宣言、そして申立人に対する補償金の支払いといった救済が講じられるとされています。調整義務の違反の場合も、補償金の支払いが認められるということなのでしょうか。そして、その場合にこれらの要件は問題になると理解してよいのでしょうか。それとも別の意味があるのかということをお聞かせいただければと思います。
以上です。
○長谷川准教授 御質問ありがとうございました。
4ページの一番上の※印が機能する場面でございますが、確かに御指摘のように、障害者が何か調整措置を要求するという形で使われるケースについては、恐らく問題にならないだろうと思います。
では、どういう形で問題になるのかと申し上げると、具体的にこういうケースというのは、なかなか考えてぱっと言えなかったのですが、外見上、障害者であるかどうかというのがよくわからないような労働者がいた場合で、その労働者の方に対して、どうも働きぶりがよくないということで、何かしらの不利益な取扱いが行われたと。ただ、労働者側にしてみれば、実はこの労働者の方は、外見からは見えにくい障害を負っていて、実はその障害が原因で不利益の原因となった、例えば労働能力の低下なんかが行われていたとする。こういうケースで障害者の方が不利益取扱いをいざ裁判所などで争うときに、実は私は障害者で、本当はこうした調整措置が必要だったのにやっていないだろうというところで問題になるかもしれないと思いました。
もし外見上わかりにくい障害の状態について、雇い主が、あるいは何かしらの日常の作業のどこかでわかるようなことがあったらば、その場合については合理的にわかる、判別することが期待される場合に関しては調整措置を講じる義務を負ってくるというケースがあるのではないかと思いました。
○山本委員 質問は、効果としては補償金の支払いを請求するという場面で問題になるのでしょうかという質問だったのですが、今の答えではどう答えられたことになったのでしょうか。
○長谷川准教授 失礼いたしました。補償金の支払いに関しましては、これは調整措置のケースもたしか除外対象にはなっていないと思いますので、補償金の支払い対象にはなりうるのではないかと思います。失礼いたしました。
○棟居部会長 今の御質問というのは、要するに、単なる差別というのがあったことで補償金という話になるのか、それとも、差別をしているということに気がつきながら調整措置を講じないというところ、調整義務違反という、そこで補償金という問題になるのかという観点は、山本さんはそこは入れておられるんですか。
○山本委員 質問の趣旨は、まさに※印で書かれている要件が意味を持つとすれば、それは補償請求ができるような場面が典型的ではないか、そうすると、調整義務違反を理由に補償の請求を認めているのがイギリスの法律の立場なのかということを確認したかったということです。それがよいかどうか、どのような要件をさらに認めるべきかということは、その次の問題だと思います。
○棟居部会長 権利宣言と補償金の支払いというのは微妙に要件にずれがあるとか、そういうのは興味深いですけれども、余りそこばかり伺っていると時間が苦しくなる。権利宣言と補償金の支払いというのは合致してお考えなのか、それとも、補償金の支払いというのは※印のような場面の話なのかという、そこはお答えになれますか。
○長谷川准教授 いずれを取るかという点については、どれか一つでなければいけないというわけでは勿論なくて、並行してということもございますので、その点は併存して両方のスタイルがあってよろしいかと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
では、御要望ということで伺います。
○山本委員 これは長谷川さんにではなく、全体についての要望です。
今日の御報告では、雇用を中心にイギリス法の状況について詳細な御説明をしていただきましたが、1ページ目を拝見しますと、2010年の平等法には、そのほかにも、不動産を初めとして、私人間で問題になる可能性のある多様な領域が含まれているようです。確かに雇用は非常に重要な領域なのですが、包括的な差別禁止法を検討するのであれば、雇用以外の問題についても、ほかの国でどのような規制が行われているのかということを調べて参考にすべきだと思います。勿論、時間も専門家も限られているのはわかっているわけですけれども、責任を持って検討するにはそのあたりが必要だと思います。
○棟居部会長 今の点は我々も認識していまして、室長の方から簡単に。後でも今後の予定ということでお話しいただくんですけれども。
○東室長 その点は、私ども、重々、どうしたらいいのかということで考えておりました。現実的にいろいろ論文を見てみましても、基本的に労働絡みの論文が多うございまして、ほかのことについて正面から書いてあるものが日本では少ないという中で、どうしたらいいのかということで、その点は今後どうやって補充していくかということを検討してまいりたいと思っております。ありがとうございます。
○棟居部会長 もう少し具体的にいろいろ考えています。また後でお話があるかもしれません。山本さん、どうもありがとうございました。
では、お待たせいたしました。西村委員、お願いします。
○西村委員 西村です。私からは、差別、不利益、有利、そして調整という分野に関する具体的な日本の現状から、イギリスの法制度での考え方及び事例の中でどういった対応がされているのかということと救済関係につきまして伺いたいと思います。
まず1点目として、差別、救済、調整等々ですが、能力的に同等の障害者という規定がありますが、日本の場合は、労働に関する職務評価の中では敏速性とか正確性とか目標設定に対する達成率とか、あるいはノルマといった項目があります。また、その評価内容が給与に反映されたりすることがありますが、先ほども長谷川先生もおっしゃっていましたが、現時点の能力に同等というところの具体的な判断基準や評価基準が、どういった内容なのか伺いたいと思います。
それから、間接差別ですが、採用試験を受けるための受験資格として、日本では活字印刷物に対応できる者とか、口頭面接に対応できる者といった間接差別的な規定がたくさんありますが、そうした要件自体が職務能力として必要なものであると説明されることがあります。これは、もう一つの調整とも絡んでくるのかもしれませんが、とらえ方につきまして、御確認をしたいと思います。
それから、障害に起因する差別ということで、先ほどの病休関係のお話がありました。実際の労働現場の中の事例としては、人工透析を受けている方については、病気休暇の取得により、手当等に影響が出ています。また、障害そのものの状態によっては、職務遂行能力がないと判断された場合は、自治体では、分限として認める条例や規則が総務省の通達に基づいて、設けています。こうした規定に関する見解を伺いたいと思っています。
それから、調整義務の中の補助的支援ですが、御説明のあった補助的支援というのは、どちらかというと自力で職務を遂行する上での補助的支援ということですが、若干お話にもありました介助ですが、これも多くの自治体の採用試験では、介助者なしで職務遂行をすることができる者という要件があります。介助については、日常生活の介助と、職務遂行に当たっての介助があると思いますが、補助的支援をどこまでの範囲で、とらえているのか質問したいと思います。
あと2つほどあるんですが、続けてよろしいですか。
○棟居部会長 一応切っていただいた方が。済みません。
○長谷川准教授 御質問ありがとうございました。もし抜けているところがありましたら御指摘ください。
まず第1点目、障害者の能力の問題で、特に私の報告の中では、直接差別の文脈などで、能力といいますか、あるいは調整措置の範囲を形成するところで労働者の能力という言葉が出てきたかなと思います。このときに、例えば講じるべき調整措置の範囲を決定したりとか、あるいは直接差別に該当するケースは、基本的に障害者の方と比較される方との職業能力が大体同じぐらいでないと比較が成立しませんので、そういった形で能力が問題となるわけですが、この際の能力というものについては、確かにイギリスには詳細な職務評価制度のようなものもありますけれども、ここで出てきている能力というのは、あくまで直接差別のところでは比較することができるような方かどうかというところがポイントとなってこようかと思います。
つまり、もうちょっと具体的に申し上げれば、2人の方がいらっしゃって、1人の方には障害がある、1人の方はない。そのときに、障害の方ともう一人の方が能力的にはほぼ同じであるにもかかわらず、障害の方の方が不利に扱われているというケースだと、恐らく障害が原因であろうということが推測されるかと思うんです。そのような形で使われる能力のものでして、恐らく細かい職務がどうとかなんとかという点については考えないで、差別の証明に足りる程度の能力の比較と申しましょうか、この程度の能力比較、能力の判断をされる。つまり、裁判所も多分細かい評価基準みたいなのは設定していないのではないかと思います。
もう一点が、間接差別の文脈で出てきました視覚障害者のケースで、職務能力との関連性。筆記試験自体が職務能力の評価と関連しているようなケースという御質問であったかと思うんですが、調整措置の問題であれ、間接差別の問題であれ、その試験が適切な能力をはかるものであったとしても、こうした差別の俎上には乗ります。ただ、間接差別の文脈で言えば、そういった試験がまさにその仕事をするために特に必要で、そういった試験を課して評価を行うということが、そこに御指摘したような、適法な目的を達成するための均衡の取れた方法というケースに該当する場合には正当化される。御指摘いただいたような職務評価制度の中身の問題というのは、こうした正当性の抗弁の中でかなり反映されてくるのではないかと思います。
あと、3つ目に御指摘のあった、例えば透析を受けていた労働者の方がいて、それには仕事を休まざるを得なくて、それを理由に解雇されたりというようなケースでありますが、このケースもまさにイギリスの文脈で言えば、(3)の障害に起因する差別の俎上に上ってくるのではないかと思います。ある障害があって、それでお休みをしなければならないということになります。
ただ、勿論留保しなければいけないのは、その日休んだことによって、例えば首を切るということが、また先ほどと同じになってしまいますが、適法な目的を達成するための均衡な方法であるか、ここを改めて裁判所で審査をしていくということになるかと思います。
最後に、補助的な支援の話。例えば本人が基本的に仕事をやって、それをサポートするような介助者の方のケースとか、あるいは、本人はなかなか体も動かなくて、介助者が代わりに作業するようなケースもあるかと思うんですが、そういったケースについても調整義務が入ってくるかどうかという問題ですが、論理的には入ってくるだろうと思います。そういった点の限定は、条文上には入っていなかったのではないか。
ただし、やはりその仕事の分ができていないという範囲が多いのは確かではありますので、そのような措置まで使用者が講じる必要があるのか、合理的なのかどうかというレベルの部分でかなり争いにはなると思います。いかがでしょうか。
○棟居部会長 では、先ほど、あと2点とおっしゃった方に移って。
○西村委員 あと2点のうちの1点目が支援に関する財源と期限ですが、御承知のとおり、日本では、雇用率の未達成企業が納める納付金を財源として、障害者を雇用する企業に対して支援を行っています。イギリスはこうした雇用率制度をなくしたということですが、就労に関わる障害者への支援に関する財源を、どのように確保されているのか、また、日本ではジョブコーチや職場介助者といった人的支援等々につきましては一定の年限が設けられています。しかし、障害は、その定義にもあるように永続する状態であることを考慮すれば、人的支援が必要なくなるというものではありません。そういう現状から、イギリスではどういった仕組みになっているのかを、教えてください。
それから、差別の救済に係る諸機関につきまして、助言斡旋仲裁局とか、平等人権委員会とかいうお話がありましたが、差別救済機関の設置運営者がどこなのか、そこで働くスタッフはどういう人たちなのか、平等人権委員会であれば行政機関ということでしたが、国なのか地方なのか、差別の救済に関わる諸機関の実効性、中立性、現場の把握するために特に講じられているものがあれば、教えていただきたいと思っています。
以上です。
○長谷川准教授 了解いたしました。
まず、第1点目の財政的な問題という点でありますが、イギリスも政府がこうした障害者の施策に関して一定の金銭を使っていることは確かでありまして、代表的には、先ほど御紹介したような仕事へのアクセス制度、これが該当するかと思います。これは、雇用年金省というイギリスの省庁の下にある組織でして、ここでやっている。数字が幾つかございまして、どのくらいお金を使っているかという点ですが、1997年度につきましては、1.46億ポンド、これがだんだん大きくなりまして、2009年度におきましては9.53億ポンドという形で増やしている。全体的に見ても、障害者、あくまでも私が持ってきたのは仕事へのアクセスの限りではありますが、国がそういったものに対して金銭を出すというのはやや拡大する傾向に、少なくとも現時点まででは、これからこのままいくかわかりませんけれども、あるのかなと思います。
また、年限の問題についてですけれども、この点についても、少なくとも私が今回御用意をしたアクセス支援の話に限れば、特にこの期間のみに限ってという形ではやられていないようです。その点を付け加えさせていただきたいと思います。いわば長期的にできる仕組みとはなっているのかなと思います。
もう一つ、御指摘いただいた行政機関の実効性と申しましょうか、つくり方と申しましょうか、位置付けと申しましょうか、その点でありますけれども、先ほど御紹介した救済機関のうち、下の2つに関しましては、行政機関は独立的な行政機関です。助言斡旋仲裁局に関しましては、雇用の問題に特化したシステムとありますので、今回の障害の問題について、雇用全般の問題ではなく、障害の問題については、むしろ(3)の平等人権委員会の方が強い役割を持っております。こちらの方は、そこにありますとおり、調査なり、質問なり、勧告なりといった機能を持っております。
詳細につきましては、手元に資料がなくて、こういった機能というのを今、具体的に申し上げることができなくて大変恐縮なのですが、もっぱら(3)の機関が中心になって障害者問題の状況を確認する。例えば、勤めている障害者以外の被用者も含めて、被用者の方からこういった事例があるよということがありましたら調査を行う、必要なことがあったら相談を受けるという形で救済を行っているところであります。
各委員の組織関係につきましても、大変お恥ずかしながら、十分な資料と検討を今日は用意しておりませんで、この点について後日検討課題とさせていただきたいと考えております。
中途半端でございますが、以上です。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。予定の時間をほぼ尽きております。東室長から御発言ないし御質問をいただいて……。
済みません、では、山崎さん、お願いします。
○山崎委員 山崎でございます。ごく短く。一番最後にお答えになった救済機関の関連性を教えていただきたいと思います。例えば、障害を持っている方が職場で昇任・昇格等で思わしくない環境にぶつかった場合、平等人権委員会に相談せずに、いきなり雇用審判所に行くことは可能かどうか。あるいは、それもさらに飛び越えて、いきなり司法裁判所に訴えることは可能かどうかというのが1点と、あと1点は、レジュメの5ページの4の(1)で2つポチがあるわけですが、これが裁判所と審判所ができることとして、中ポツでくくっていらっしゃるんですが、この2つについて、審判所もこういう判断を示すことができるかというのが2つ目の質問です。
以上です。
○長谷川准教授 そうしましたら、まず1点目、争われ方の流れについて御回答したいと思います。
まず、3つの機関ですが、3の機関、平等人権委員会に対する相談と勧告等は、司法的な救済の場面では基本的にできません。ただ、現実問題としては、これをまず使って解決を試みて、だめだったら司法へ行くというケースは多いです。
それでどうなるかといいますと、基本的に斡旋が前置されまして、(2)の助言斡旋仲裁局からスタートするケースが非常に多いです。初めに審判所から行かず、審判所に行ったとしても、助言斡旋救済局の方で斡旋を試みられるというケースが多いです。もし斡旋が不十分、不成立ということになりますと、そのまま審判所、そして裁判所という形になろうかと思います。
雇用の場面の訴訟に関しては、おおむね雇用審判所で争われる。恐らく事案の枠組みによっては裁判所の方で行かなければいけないケースがあるようにも思いますが、ほとんどのケースについては雇用審判所、雇用控訴審判所の方で争われると思います。
2点目の裁判所と審判所の中で行われる救済が違うのかという点ですが、御質問は、審判所でもこうしたことができるのかということでしたので、その点については、できるとお答えをしたいと思います。ただ、訴訟の形式によりましては、裁判所でなければというものもございます。ただ、ここには書いていない、また別のものです。
○山崎委員 1点だけ確認させてください。
今、斡旋調停前置というふうにおっしゃいましたが、それは事実上前置されているということなのか、あるいは法律上前置しないと審判所以降に進めないということなのか、その点を教えてください。
○長谷川准教授 これは、たしか法律上前置であるというふうに思います。
○山崎委員 ありがとうございました。
○東室長 担当室からですけれども、一番基本的な点について1点だけ伺います。
差別の類型について幾つかあるということで、ここに7個ほど書いてありますけれども、その中で、障害に起因する差別という3番目の類型は、私の勉強不足かもしれませんけれども、ほかの法制を見てみてもなかなか出てこない類型だと思うんですが、実は3番目の類型は、もともと直接差別の中の類型として位置付けられてきたものを取り出して別個につくったという感じがするんですね。その結果、これは1とは違う類型とすることによって、範囲が拡大するのか、それとも縮小するのか、そこら辺の違いを教えていただきたいなと思います。
1番目の直接差別については、普通、英語的に言うと、オン・ザ・ベーシズ・オブ・ディスアビリティという、「障害に基づいて」という訳の方が適切かなと思いますけれども、2010年法ではビコーズ・オブ・ディスアビリティと、たしかなっていたかなと。かなり直接差別を限定した結果、3番目の類型を新しくつくったのか、そこら辺も含めて教えていただけませんでしょうか。
○長谷川准教授 ありがとうございました。
まず、今、御指摘がありました直接差別と障害に起因する差別との関連性でありますが、法制度の流れから申し上げると、実は、初めにあったのが(3)の方でして、まず、1995年のDDA、障害者差別禁止法の段階では、これと、あと、後ろの(4)の調整義務の規定がございました。その後、直接差別が加えられたという流れになっております。これは、EU法の影響を受けて、こうした定めのつくり方をしたということです。
では、直接差別と障害に起因する差別。障害に起因する差別が直接差別の範囲に対してどういう関係にあるかという点ですが、適法範囲を端的に比較すれば、一般的には障害に起因する差別の方が適法範囲は広がる、拡大するであろうと思います。と申しますのは、「起因する」という言葉が挟まることによりまして、いわば障害との結び付きが1段階薄くなっても大丈夫であるというつくりになっているからです。ただし、その分、直接差別の部分ではなかったような、レジュメで言いますとBの後半部分、適法な目的を達成するための均衡の取れた方法であることということをまた別に雇い主が言うことができるという形になってございます。いかがでしょうか。
○東室長 ありがとうございました。
○棟居部会長 それでは、以上、予定の時間を過ぎておりますので、大変長時間にわたりまして、長谷川先生には御報告いただき、また引き続き詳しく御回答いただきました。どうもありがとうございました。(拍手)
以上でイギリスの障害者差別禁止法制についてのヒアリングを終了します。
ここで15分間の休憩をとります。再開は、4時5分ということにさせていただきます。

(休憩)
○棟居部会長 それでは、再開させていただきます。
続いて、本日2つ目のヒアリングに移ります。
DPI日本会議事務局員の崔栄繁さんから、韓国の障害者差別禁止法制についての御報告をお願いします。どうぞよろしくお願いします。
○崔氏 皆さん、こんにちは。今、御紹介にあずかりました崔と申します。私は研究者ではございませんで、NGOの職員として障害の分野にずっと関わってきたということと、法律のことを少し、昔勉強した関係で、権利条約ですとか、そういったことに関わってきたということで、韓国の差別禁止法についてもずっと追っかけてきたという経緯がございます。今日、報告をさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございますという感謝の言葉を述べたいと思います。
私のレジュメなんですけれども、3種類ございます。1つはレジュメ。もう一つは、韓国の差別禁止法の日本語訳、仮訳です。私が訳したものです。これは8ページ目からですね。28ページ目からは、韓国の差別禁止法の施行例を私が訳したものを付けております。ですので、訳を見ながら御説明しようかなと思っていますが、何ページを見てくださいというふうになってしまうかもしれません。ちょっと御不便かもしれませんけれども、そうした形で進めさせていただければと思います。
入る前に1点、おわびを兼ねて訂正なんですが、レジュメなんですけれども、番号の付け方が途中からおかしくなっています。4ページの3の施行令というのが4になります。済みませんでした。正しくなっていましたね。ということで、急いで進めていきたいと思います。ありがとうございます、事務局の方。
韓国の場合は、障害に関しては差別禁止法という法律があるんですが、それ以外にも重要な法律がいくつかございます。1つは、国家人権委員会という人権委員会に関する、設置法に当たるんですかね、国家人権委員会法という法律。また後で御説明しますけれども、国家人権委員会は差別禁止法における救済の手続機関にもなっています。
もう一点は、説明しますけれども、各個別の分野の法律において、また差別等を禁止しているような場合がございますので、あっちこっちいろいろな法律が出てくるかもしれませんけれども、我慢して聞いていただければと思います。
まず、1ページ目からレジュメをごらんになっていただきたいと思います。
目的は、韓国の差別禁止法制度を差別禁止法と国家人権委員会を中心に見ていくということです。
まず、本題に入る前に簡単に、韓国の障害者の今どういった概要ですとか、関係法制度をちょっと見ていただきたいと思います。
韓国の全人口が今4,800万ぐらいですかね。そのうち240万人から250万人が障害者として登録されています。このうち重度障害者というのは100万人ぐらいいる。これは、日本の手帳制度に似ているわけですけれども、障害者福祉法という法律によって登録されている人たち、ここには15の種別がございます。ここには顔面障害も入っていたりとか、多少広い枠の取り方になっているということですね。
<2>にいきまして、包括的なものとしては、障害差別禁止法と国家人権委員会法があるわけですけれども、個別分野には、障害者に関してはほかに7つくらい特化した法律がございます。
例えば、差別等に関して言えば、ポツの1番目、障害者等に対する特殊教育法。これはもともと特殊教育振興法という法律だったんですけれども、2007年に改正されたものです。これも後で御説明します。いろいろなところに権利規定だとか差別禁止規定が盛り込まれているというのが韓国の障害に関する差別禁止法体系の特徴かなと思います。
次に、3番、差別禁止法に移っていきますが、内容に入る前に、この法律のでき方について、ここで皆さんと共有をさせていただきたいと思います。
これは、この法律というのが非常に障害者の声とか、関係者の大きな運動によってできたということを是非押さえていただきたい。本格的に法制定運動というのが始まるわけですね。これは2000年ぐらいから始まっていくわけです。ここでも、こちらにいらっしゃる池原さんがADAの10周年のワシントンの会議に行かれました。アメリカの差別禁止法ですね。あのとき、そこに韓国の人も参加して、本格的な法制定運動につながったということがございます。
それで、細かいことははしょりますけれども、2ページの一番上、(イ)というのが書いてあります。この団体、障害者差別禁止法制定推進連帯というのが非常に大きな役割を果たしました。この団体は、ネットワークは、障害者団体、あるいは関係者の団体の集まりです。最初は58団体ということでしたけれども、最後、差別禁止法ができたときには200団体ぐらいに膨れ上がっていたということで、この団体が政府と時には対立し、時には一緒になって差別禁止法をつくってきた。ここには専門家、障害当事者、あるいは法律家、専門家もたくさん入って、自分たちの法案を作成して、それを政府にぶつけてきたという経緯があります。そういった背景からこの法律を見ますと、ああ、なるほどなということが多少見えてくるのではないかと思います。
(ウ)法案づくりの時期というのがございます。ここで大切なのは、まず、○の2つ目、障推連の草案づくりということが書かれております。細かいことは抜きますけれども、2003年ぐらいから大規模な全国的にいろいろな集会や集まりをしました。ソウルで1泊2日の討論会ですとか、地方巡回の講演会も何回も行うわけです。それで、障推連が2004年の11月に自分たちの案をつくった。これが実は大きなベースになってきたということなんです。細かい内容についてはここでは省きますけれども、障推連が掲げた大切な要求事項、ここにa、b、c、dの4つ挙げております。
1つは、国家人権委員会から独立した障害差別禁止委員会の設置。2つ目は、実効的な権利救済手段としての是正命令を入れろと。3つ目は、立証責任、挙証責任の転換。4つ目が懲罰的賠償制度の導入。これは死守しよう、これは必ず入れ込もうということでこの人たちは運動したわけですね。これが一体どういうふうな結果になったかというのは、おいおい説明させていただきます。これは後でも御説明しますけれども、今後の日本において差別禁止法をつくっていく上でかなり参考になる事例だと私は思っております。
それで、なんやかんや言いながら、(オ)、2006から2007年は法律案がいっぱいできまして、いろいろな動きが出てくるわけです。ここで一番大切なのが(オ)の一番上のポチです。障害者差別禁止法民官共同企画団です。これは、大統領府、青瓦台と言いますけれども、大統領府直属の差別是正小委員会の下につくられた政府と民間団体の対話の場なんですね。政府の関係12省庁と障推連のメンバーで構成されました。これは、障推連の案が出されたのですが、政府も障推連と一緒に障推連の案を土台に検討しようという場です。企画団会議が7回、小委員会が5回開催されて、法案がつくられた。採択は2007年の3月6日に韓国国会で採択されたということです。ちなみに、韓国は一院制。国会は1つしかないということですね。
2007年の3月から1年たった2008年4月11日から施行されました。後で指摘申し上げますけれども、合理的配慮の適用範囲等については段階的に適用するということで施行令等で定められているということになっています。
こういう背景があるということをまず頭に入れていただいて、内容の方に移っていきたいと思います。急げと言われておりますので、急ぎます。
まず、大まかな構成ですね。資料の9ページ、10ページをごらんください。
6つの章と50の条文からなっています。総則、あと、第2章、第3章というのが各則部分になります。第4章が救済規定。第5章が損害賠償、罰則規定という構成になっています。
総則から見ていきたいと思います。
まず、レジュメの2ページからなんですけれども、差別禁止法で言いますと、資料の11ページです。
第2条、差別禁止法の対象者がまず規定されています。障害と障害者となっています。
この規定は、ほかの国家人権委員会法にも同様の規定がされているということで、バクッとした規定になっていますけれども、見方によってはかなり医学モデル的だなと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
もう一つ、適用範囲に重要なことがあります。13ページの第6条ですね。ここで障害とか障害の範囲についてでは触れていないんですが、この法律では、何人も障害又は過去の障害経歴又は障害があると推測されていることを理由に差別してはならない。ここで実質的に障害者、この法律の適用対象を広げているわけですね。立法技術的に広げたと言っていましたが、こういった方法を韓国はとったということですね。定義の中に入れ込むのが難しかったというか、ちょっと無理があったという言い方をしていました。韓国では第6条に個別の条項を設けて適用範囲を広げたというふうにしております。
レジュメの3ページに移ってもらいまして、今度は差別行為です。差別行為というのは、第4条に規定されている。これは要するに差別の定義の話です。
一応韓国の差別禁止法では4つの類型について定義をしています。1つは直接差別。2つ目は間接差別。3つ目は合理的配慮の拒否。韓国の法律では、合理的配慮という言葉は使いません。正当な便宜というのが合理的配慮の名前になっています。これも後で。
そして、広告における差別の禁止ということ、表示や広告について、不当な表示をした場合は、差別禁止法での障害に基づく、障害を事由とした差別に当たるというふうにして、この4つを類型としているということです。
第4条を見ていただきますと、いろいろなことが書いてあるわけですけれども、もう一つ、<3>で正当な便宜というもの書いてございます。第2項ですね。13ページの<2>と書いてあります。正当な便宜とは、障害者が障害のない人と同等に、同じ活動に参与、参画することができるように、障害者の性別や種別、程度、特性等を考慮した便宜施設・設備・道具・サービス等、人的・物的な諸般の手段と措置をいう。要するに、韓国の差別禁止法の正当な便宜は合理的配慮の事です。
そして、13ページ、第4条の<3>を見ていただきますと、適用除外の規定があります。こういった事情があった場合は差別に当たらないということです。これが1つは、過度な負担ということがまず1つ目にある。もう一つは、特定の職務や事業の遂行の性質上、不可避な場合ということになっております。
そして、<4>、第4条の4項を見ますと、アファーマティブ・アクション、積極的差別是正措置は差別ではないという規定がされている。これが差別の定義の部分に当たるものです。
そのほか、複合差別については、第5条、差別判断のところで、差別の原因が2種類以上あるとき、その主たる原因が障害であると認めた場合は、その行為が障害に基づく差別、障害を事由とした差別だという定義がされている。あとは自己決定権とかが規定されています。
あとは、14ページ、第8条を見ますと、国や自治体の義務というのがあります。差別是正については、積極的な措置というのがありますけれども、2項目に、正当な便宜が供与されるように、必要な技術的・行政的・財政的支援をしなければならないという規定が一応されているというふうになっております。
この法律で決めていること以外で障害に基づく差別等の問題が出た場合は、国家人権委員会法に基づくという形になっています。
次に、各則の部分を見ていきます。韓国法の場合、いろいろな分野にわたって差別禁止規定を行っておりますので、多少薄まってしまうかもしれませんけれども、広く薄く御説明をさせていただきたい。
雇用については14ページから、10条、11条、12条が雇用についての差別禁止規定です。第10条では差別禁止規定を行っているわけです。採用・募集、包括的な差別禁止規定。第11条で合理的配慮義務を定めている。第12条では医学的検査の禁止ですとか、そういったことの扱いの禁止を行っているということです。
次に、教育。第13条、14条です。これは15ページになります。ここは細かく見ていきたいと思います。
障害者権利条約は、原則インクルーシブ教育というものを定めている。原則として地域の学校、普通の一般の学校でということを一応定めているわけですね。後でよくごらんになってくると、この差別禁止規定ではどうもよくわからない。実は、第2項。第1項の規定による教育機関の長は「障害者等に対する特殊教育法」第17条の規定を遵守しなければならない。ここが実はインクルーシブ規定なんですね。訳していないので、読み上げてみたいと思います。
特殊教育法の第17条2項ですね。教育長又は教育機関が、教頭、教育委員会の委員長は、第1項に伴い、特殊教育対象者を配置するときには、特殊教育の対象者の障害程度、能力、保護者の意見等を総合的に判断して、居住地から一番近いところに配置しなければならないということがまずあって、実はこの法律には、統合教育の定義もされている。それも読み上げてみたいと思います。
これは第2条の6項なんですけれども、統合教育とは、特殊教育の対象者が一般学校で障害の種別、程度によって差別を受けずに、同じ世代の仲間とともに個々人の教育的要求に適合した教育を受けることをいうというのが定義されている。ですから、この17条、差別禁止法では直接言っていないんですけれども、特殊教育法に基づいてインクルーシブな規定がされていると解釈できると思います。
ただ、勿論、特別支援教育、特殊教育を否定している、分離された環境での教育を否定しているものではございません。
それで、第14条、教育の場合は、正当な便宜供与義務と書いてあります。これは合理的配慮義務なんですけれども、かなり細かく書いてある。書きぶりがちょっとほかのところと違うなというのが私の印象なんですけれども、かなり、してはならないですとか、いろいろな書きぶりがほかのところとちょっと違うのかなという感じもします。教育についてはかなり力を入れているというふうに見えます。
細かいことは、時間の関係もあるのではしょります。
それから、いろいろパーッとごらんになっていただくと、いろいろな分野があります。財と用役の提供。第3節は、土地や建物の売買、金融商品やサービス、施設物、建物へのアクセスや利用、あと、第19条へいきますと、移動や交通手段ですね。第20条では情報アクセス、第21条は情報通信等々の差別禁止規定が必要な場合は、そこに合理的配慮の提供義務の規定、正当な便宜の規定がされているという形になっています。
細かいところは省いていきます。
ただ、1点だけ、この法律に非常に特徴的な部分。まずは、レジュメに戻ると大変なので、第28条、29条ですね。第28条では、母性権、父性権や性、性差別に関して書いてあります。これは、韓国は女性運動ですとか女性障害者の運動が非常に活発だということのあかしでもあり、また、韓国はほかに、今、名前ははっきりしないんですけれども、性差別の禁止の法律もございます。ということで、そういったことをいろいろ組み合わせながらつくられた条文だと思いますけれども、今の差別禁止部会の中で少し参考になるのは第3項です。第28条第3項は、保育施設などで、親が障害者の場合、その子どもを差別してはならないとか、そういった規定がなされているということがございます。
先ほど触れるのを忘れましたけれども、韓国の障害者の差別禁止法は、障害者だけではなくて、障害者に関係を有する者についての差別も禁止している。ちょっと言い忘れてしまいましたけれども、それは非常に大切な部分なんですけれども、必ずございますので、後で見つけて御報告します。
要するに、障害者当事者だけではなくて、例えば介助者、保護者等への差別も禁止している。その1つの例として第28条の3項、親が障害者の場合、子どもを例えば幼稚園に入れないとか、保育園に入れないとかということはいけませんよとわざわざ言っているわけですね。
もう一つ、この法律でおもしろいというか、かなり重要な部分なんですけれども、第6節、第30条です。21ページになります。第30条は、家族・家庭・福祉施設等における差別禁止。これがいろいろな問題の中でどこまで実効性があるかどうかについてはあれなんですけれども、これは、家族・家庭及び福祉施設等の構成員は、障害者の意思に反して過重な役割を強要し、又は障害を理由に、正当な事由なく意思決定過程において障害者を排除してはならないと、まず第1項であるわけですね。家族や家庭においてもいろいろな制限を加えている。
先ほどの関係者のところは、第4条の<1>の5番目ですね。済みません、東さん、ありがとうございます。13ページの上の方の5というところに書いてあります。後でごらんになっていただきたいと思いますけれども、「障害者に関係を有する者」、これは韓国語の直訳ですと「障害者関連者」という1つの単語になっています。いい訳があったら教えていただきたいんですけれども、私は「障害者と関係を有する者」と訳してございます。
第30条に戻りますけれども、これは、例えば福祉施設なども全部入るわけですね。細かいことは申し上げませんけれども、実はこれによって、つい最近ですけれども、1つの判例といいますか、裁判事例が出てきたということで、申し上げますと、昔は生活施設と言いましたけれども、入所施設にいた方が施設を出て地域で暮らしたいということで裁判を起こしたらしいです。細かい裁判の事例はないんですけれども、そこで、管轄、自分が住もうとしている家のある地域の自治体に、施設で受けていたものと同じ介助サービス、福祉サービスを欲しいと申請をしたら、それはだめだと断られたところで裁判を起こしたと。細かいことはわからないんですけれども、先月4月、裁判でその方が一応勝訴したと。ここには3つくらいの法律が関わっているわけですけれども、その1つに障害者差別禁止法が入っている。障害者差別禁止法のどこの条項を根拠にしたのかというのはよくわからないんですけれども、機会がございましたら、また皆様に事例を御提示したいと思います。
実に30条というのが障害者運動といいますか、関係者の運動から出てきたもの、非常に特徴的なものでないかなと私としては思っております。
ちょっと急ぎますけれども、各則の部分はまた後でごらんになってください。
この法律の重要なところということで、救済の仕組みになります。救済の仕組みについては、先ほども申し上げましたけれども、国家人権委員会という人権委員会がそこの担当に第一義的な部局になるわけですね。この法律で言いますと24ページ、第38条以下にその規定がございます。まず、第38条で、被害を受けた人は、国家人権委員会に申立てすることができるというふうになっていて、第39条では、申立てがない場合も、国家人権委員会が相当の根拠があって重大であると認められる、差別行為だと認められる場合には、職権で調査に入ることができるということが書いてあります。
あとは、第41条には国家人権委員会法の準用規定があります。
少しレジュメに戻って説明をさせていただきます。
レジュメの4ページ、施行令は後にします。まず、4ページの5番、(1)からですね。国家人権委員会とは何かという話ですね。国家人権委員会法を設置根拠法とする、いわゆるパリ原則に基づいて設置された人権救済機関。これは2001年から運用されているということです。首都のソウルに委員会本部が置かれていて、釜山と光州と大邱の3か所に出先機関として人権事務所が置かれています。韓国は、面積としましては大体北海道と同じぐらいで、面積的にはそれほど大きな国ではなく、こういった形になっています。
そして、レジュメの5ページを見ます。立法、行政、司法の三権から独立した国家機関であるということになっています。権利の侵害や差別からの救済が主な役割。ほかにも人権の啓発ですとか、国際人権に関する研究等も行っている機関ですね。委員長と常任委員とを含め、11人の人権委員でなっています。
総職員の数は、今、164名。160~170名程度です。ちょっと前までは200名以上いたわけですけれども、いろいろ政権が変わりまして、少しダウンサイジングをされているということで、かなり運営には支障を来しているという話を聞いております。
日本には余りピンと来ないと思うんですけれども、三権から独立した国家機関ということなので、一応職員は全部国家公務員。税金で給料をもらう人たちです。ここには、ほかの省庁から来た方もいらっしゃいましたし、研究者等で自分がなりたいといってなっている方もいらっしゃいました。障害に関する差別については、直接的には調査局の障害者差別調査課というのが担当するわけですね。申し立てされてきた案件について、ここが判断したりするわけです。
国家人権委員会法というのは、ふわっとした差別禁止規定をしているわけですね。第2条の平等権侵害の差別行為というところで18の類型を列挙して、そのうち、性別や障害、年齢、それから、先ほどちょっと話題に出まして、質問を封じる意味ではないんですけれども、ここに容貌ですとか、いろいろなものが入っているわけですね。容貌や身体的な条件といったものも入っている。ここでは離婚とか、向こうは軍隊がありますので、軍隊に行ってきたか、行ってこないかとか、そういったことについて差別をするなと包括的に定めているのがこの条項なんですね。
そこで、例えば1つの分野においては雇用というのがありまして、雇用においては、募集、採用、教育、配置などに関連して、特定の人を優待、排除、区別並びに不利に取り扱う行為を差別行為だとここでも規定しているわけですね。
ちょっとこれは訳し切れなかったわけですけれども、救済機関と権限ということで、第38条から50条まで。
調査については、いろいろあるわけですけれども、例えば国家人権委員会法で、調停の権限というのは、裁判所の和解と同等の効力を持つとか、いろいろなことが国家人権委員会法の中に書いてある。だから、韓国の差別禁止法の救済の規定を見るときは、国家人権委員会法をきちんと見なければいけないということになります。
救済措置としてさまざまなことがあるわけですけれども、基本的に人権委員会は勧告までですね。是正命令権はないということですね。
先ほど、障推連という障害者団体が4つの獲得目標を出したと申し上げました。そのうちの1つが是正命令だったと思います。覚えていらっしゃるどうか知りませんけれども。とにかく国家人権委員会には、当初から是正命令権はないので、障害者団体は、ほかの委員会をつくれという要求をしたわけです。
ただし、勧告はできる。勧告においても公表ですとか、いろいろな手段は講じているわけですね。あとは、勧告の中でも合意勧告、あるいは調停委員会の調停、調停委員会の決定ができるわけですね。(イ)差別行為の中止ですとか原状回復。差別行為が余りにも重大であったりと、いろいろな要件は付くわけですけれども、中止ですとか原状回復ですとか、再発の防止のための必要な措置というのをとれるようになっている。
あとは救済措置の勧告。勧告にもいろいろな種類があるわけですね。というような一応いろいろなバージョンは持っている。こんなので本当に法律を守られるんですかと思う方も多いと思います。
それで、5ページの(2)に移っていくわけですけれども、まず、申立て。差別禁止法ができた後と前の障害分野の申立件数を比較したものをここで挙げております。ちょっとわかりづらいかなとは思うんですが、月別の申立件数は、障害者差別禁止法ができる前と後では8倍の差がある。差別禁止法ができてから8倍の申立件数になったというふうにごらんください。
分野別においては、雇用分野が2.5倍、教育が3.0倍、あとはサービスに関連とか、参政権については10倍、その他60倍というふうになっています。
細かい2009年度の分野別の申立件数の内訳については、6ページをごらんくださればいいと思います。
やはりサービス関係が多いですけれども、いじめ等というのもかなりある。実は韓国の差別禁止法は、先ほどははしょりましたけれども、いじめ等についての禁止条項も持っているということで、見ようによっては差別禁止法の枠を少し超えているようなところもあるかもしれませんし、ハラスメントをどうとらえるかによって、新しい差別の概念に包括されるのかという議論の余地を残してくれる部分かなと思います。
いじめに関しては、条文だけ、32条に出ておりますので、後でごらんください。
申立件数の中の国家人権委員会の中でどうやって処理されたかというのが6ページの<2>です。この中で、上から4つ目の棄却までは、一応最後までこの案件の答えが出なかったということになりますけれども、例えば、その次の調査中に解決して案件自体が取り消されるとか、実は棄却の中にもそうした例がたくさんあると聞いています。要するに、国家機関が調査に入ったということで、勧告が出る前にかなり自主的に、簡単なものであればどんどん直していくということが行われているのが現場の現状のようです。
合意終結というのもございます。勧告が出される前に、当事者間で合意、要するに、合意でその案件が終結したということ。合意にならなかったものについては勧告というのが出る。勧告というのは10件出されているということです。
では、勧告というのは、勧告が出されたら、果たしてそれはちゃんと履行されているのかということも気になります。それは<3>になるわけですけれども、2008年の1月1日から2009年の12月31日まで、勧告件数は30件。そのうち障害者差別禁止法に基づいたのは17件。国家人権委員会法に基づいたのが13件です。これは障害分野ですね。分野別の内容としては、雇用が3件、教育、こういう形になっています。
その次に勧告の受容状況。公共部門、政府・自治体・公企業では88.9%。民間部門は実に100%。教育部門、これはやはり課題が多いのか66.7%。3分の1が勧告を履行しないというふうになっています。これは国公立、私立も混じっています。
先ほどの、じゃ、こういった救済、これで勧告を聞かなかった人はどうするんですかということで、障害者団体が心配していた是正命令についてなんですけれども、一応法律では是正命令も準備しております。43条、24ページになります。
国家人権委員会では是正命令権がないんですね。障害者の運動によって差別禁止法をつくったからといって、国家人権委員会法を変えて、是正命令権をそこに付与するということはできなかったわけですね。そのかわりに、和解、勧告が出た案件については、法務大臣の下に置かれた審議委員会に移すという仕組みを準備したわけです。そこで、法務大臣がそこの議論を踏まえて法務大臣が判断した場合に是正命令が行われるという形を韓国の差別禁止法はとりました。是正命令に至るまでは要件がある。4つの要件が出ています。
43条の<1>、第1項ですけれども、被害者が多数であり、個別行為に対する勧告不履行、反復的差別行為に対する勧告不履行、被害者に不利益を与えるための故意による不履行、その他に是正命令が必要な場合という、このどれか1つに該当する場合であって、被害の程度が深刻な場合は是正命令を出すことができるとなっています。
是正命令の内容としては、<2>に出ています。第2項に出ています。24ページから25ページになっていますけれども、実際に是正命令というのが行われたという例を1つ挙げております。
6ページから7ページに事例を挙げております。これは雇用に関する事例です。雇用に関する事例というのは、雇用を挙げたというのではなくて、これしかまだないということなんですけれども、解雇、障害、中途障害ですね。脳溢血の中途障害によって解雇された方が人権委員会に申立てをしたと。人権委員会は、それは差別であるということで勧告を出したわけですけれども、当該の機関は聞かなかったということで、法務審議委員会の中で議論されて、法務大臣が是正命令を出して、命令が受け入れられたという事例です。後で見ておいてください。
ということで、あと、レジュメには書いていないんですが、26ページ、第6章では罰則の規定を設けております。26ページ、第49条では、差別行為を行い、悪意のものと認められる場合、罰金と3年以下の懲役に処することができるとなっております。これは要するに命令を聞かなかったりした場合だと思うんですけれども、幸いなことに、まだここまでいった事例はないということです。
それから、少し戻ります。レジュメではなく、25ページ、損害賠償立証責任。ここも大切なので、簡単に触れておきます。
先ほど、障害者団体の障推連が4つのターゲット、獲得目標のうちの1つが懲罰的賠償制度の導入だったですね。懲罰的賠償制度というのは、この前、ADAの報告を長谷川珠子先生がされたときにチラッと報告されていましたけれども、実損害の賠償額の何倍かの懲罰的な賠償を課して、再びそうしたものが起こることがないようにする制度。アメリカ等で行われている制度です。それを韓国も導入したいということで、障害者団体は一生懸命運動したわけですけれども、そういうわけにいかなかったわけですね。ただし、少しそれに配慮したいろいろな決まりがなされている。
まずは第46条の第1項では、ここで、一応差別行為の故意又は過失の証明については、加害者が行わなければならないという立証責任の転換が1つされている。挙証責任の転換がまず1つされている。
第2項では、実損害以上のものをきちんと認めてあげたいということで、被害者が自分の被害の額を証明できない場合は、差別行為をした者がそれにより得た財産上の利益を、被害者の財産の損害と推定することができるというものをつくって、3項では、そうしたことが立証するのに困難な場合は、弁論全体の趣旨と証拠調査の結果に基づいて相当の賠償額を認定することができると規定しました。韓国は、民事訴訟で言いますと、損害賠償の額というのがかなり低く抑えられているのかなという印象を受けています。そうしたことで懲罰的賠償とまではいかなかったわけですけれども、少し分厚い配慮をこの法律では行っている。
もう一つは、第47条で立証責任の配分、挙証責任の配分ということで、差別があったか、なかったかという証明の問題ですね。これは、立証責任の配分ということで、これも実は妥協したわけですけれども、ただ、これも第2項で、差別行為が加害者の側がなかったと証明をされないといけないというふうになっているわけですね。第1項の差別行為があったという証明はどこまですればいいのかと、私はいろいろな方に聞いたわけですけれども、これは、事実がこういうことがあったよと。例えば、何月何日こういうことを言われたとか、そういう記録があるとか、その程度の話でいいはずであると聞いております。まだ判例とかきちんとしたものが手に入っていないので、これも今後、判例の蓄積等で大分変わってくるかもしれませんけれども、今申し上げられることはそこまでかなと思います。
大体内容については以上です。レジュメの7ページ、まとめを簡単に私なりにまとめてみました。6番です。
意義としましては、社会規範としての差別禁止法です。行為の物差しになるということはよく言われているわけですけれども、ここで韓国の人たちがよく言っていたのは、私たちは差別した人を罰したいのではない。差別をなくしたいんだということなんですね。ですから、4つのターゲットが結局いろいろな形で落ちついたわけですけれども、そうした柔軟な姿勢を持ちながら、差別禁止法を今後育てていくという感じで、今、皆さん動いている。
2番は、大陸法系の国での差別禁止法。以前は、大陸法系の国というのは、なかなか作為命令ができるような差別禁止法は難しいのではないかということが言われていましたので、一応韓国は日本の法体系と似ているということもあり、大陸法系ということもあって、一応そういう意義があるのではないかと思います。
それから、制定過程の意義と効果なんですけれども、当事者や関係者が深く関わったということで、今後の運用にもつながっていく。
あるいは、これは私は障害者団体にいるので、これは特に申し上げたいのは、障害者当事者ですから、関係者がいろいろなことを考えたりするようになるわけです。物事を判断するとき材料ですとか、一体差別とは何かとか、自分はこういうことを主張していいのかとか、私たちはよくエンパワーメントとか、エンパワーという言葉を使います。力をつけることなんですけれども、そうした効果が非常に大きいのではないか。
ちょっと変な例になってしまいますけれども、10年ぐらい前に会った人が、韓国の障害者の当事者なんですけれども、諸外国の差別禁止などを全く知らなかった人が、差別禁止法ができて会うと、変な意味、知識も豊富ですし、いろいろなことを考えるようになっている。非常に私はそれを見て感慨深いものがあったんですね。こういった効果もこの国の差別禁止法においては意義として認められるのではないか。
あとは他のマイノリティへの普及ということで、例えば合理的配慮とか正当な便宜供与義務というのが、これは障害者だけの問題なんですかという、いろいろなヒントを与えてくれるわけですね。女性であったりとか、いろいろな分野の方々がいると思います。あとは、法制化したということで、今は正当な便宜、合理的配慮というのは1つの例ですけれども、いろいろな分野に波及していく可能性があるのではないか。
あとは、2番、実効性についての評価と課題ということで、この法律はいろいろな限界があるわけですね。人権委員会の判断にいろいろなものがかなり任されているということです。というので、いろいろなぶれが出てくるような問題もあります。
あとは、正当な便宜、合理的配慮、これからどういうふうに実際に適用されていくのか。実は細かいところでは、事例の中では一番多いのは、正当な便宜についての勧告だったり申立てなんですね。例えば、点字の資料を付けるとか、点字でのテスト、試験用紙をつくるというようなことは、かなりこれで解決されているんですね。あとは、教育の分野においては、例えば、学校にエレベーターを付けていくとか、そういったことがどういうふうに解決されていくのかということが非常に興味深いところですね。
正当な便宜については、今日は時間がないのであれですけれども、28ページからの施行令で、まず段階適用、1年後、3年後、5年後といったような適用がされているところがあります。例えば36ページ、非常に簡単な、別表1となっておりますけれども、これは雇用関係ですね。常時300人以上の労働者を使用する事業所や国家や自治体は2009年4月11日から、100~300人未満は2011年、今年から適用。常時30人以上100人未満は2013年から、こういった形で段階適用をしている。
細かい内容については、まず、題目については、先ほどの差別禁止法の中に、例えば雇用ですと11条あたりに書いてある。教育では第15条、16条あたりに漠とした合理的な配慮の範囲について書いてあるということですね。細かい適用については、国家人権委員会の中で判断していくという形になるのかなと思います。
この正当な便宜、合理的配慮がどこまでできるかということと、さっき申し上げた国や自治体の正当な便宜への財政的措置というのがどこまでされていくかというのが私の今後の調査というか研究の課題になっていくのかなと思います。
あとは適用除外規定の問題ですね。先ほど長谷川先生のイギリスの御報告で、非常に示唆に富むといいますか、非常に参考になった直接差別についての御報告がありました。韓国も直接差別についても適用除外規定がかかっているということで、これはどういうことなのかなと思っていたんですけれども、長谷川先生の先ほどの質疑応答で、障害に起因するのも含まれているとおっしゃいました。それから、直接差別が出てきたという整理の仕方をすると、韓国もそういうふうに見れるのかなと。これは、是非、今後向こうの人権委員会ですとか、弁護士さんたちともいろいろ話をしていきたい部分です。
あとは、国家人権委員会の役割。職員の数が減らされたり、今、非常に大変な時期らしいです。これが今後どういうふうになっていくのかというのが課題でしょうか。私がまとめとした意義と今後の課題について、簡単にまとめてみました。
ちょっと忙しくなってしまいましたけれども、一応これで報告を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
○棟居部会長 崔さん、どうもありがとうございました。急かしてしまいまして済みませんでした。
それでは、ここで2回目の休憩をとらせていただきたいと思います。ただ、ちょっと時間が押しておりますので、15分まではちょっと無理でありまして、17時5分から10分の間ぐらい。ですから、今から10分ちょいぐらいで開始いたしますので、よろしくお願いします。

(休憩)
○棟居部会長 それでは、先ほど予告しました休憩時間より1、2分早いかとは思いますけれども、お戻りになっておるようでございますので、再開させていただきます。
それでは、先ほどの御報告に対する質問等、崔さんの御報告に対する討議に移らせていただきます。どうぞ松井先生。
○松井委員 ありがとうございます。簡単な質問なんですけれども、韓国では、日本と同じように雇用率制度および納付金制度を持っているわけですけれども、正当な便宜供与についての費用は、納付金とリンクしているんですか。あるいは別に一般会計から出るということでしょうか。
○崔氏 正確にはわからないんですけれども、一応形ではリンクはしていないんですが、使えるようにしなければならないんじゃないかという議論はされているみたいです。ただ、御存じのとおり、韓国も納付金がどんどん減っていっている状態なので、今後どうなるかはわかりません。一応分離して考えているようなことを言っていますけれども、今はそんなに大したお金はかかっていないようなので、今後見ていきたいなと思っています。
○松井委員 先ほど西村さんからもイギリスについて質問があったように、正当な便宜にはそれこそ短期でやれるものと、かなり長期にわたってかかるものがありますね。イギリスの場合は、アクセスにも手当というか、かなり予算を上乗せしてきているようですけれども、韓国は予算措置をしているんでしょうか。
○崔氏 崔ですけれども、差別禁止法についての履行するための予算はついていないみたいです。私が去年行ったときの調査ではそうでした。
○棟居部会長 では、松井委員からの御質問については一応切らせていただきまして、手が挙がっていました大谷委員、どうぞ。
○大谷委員 大谷です。ありがとうございました。
2年前だったかしら、私も韓国に行って、当事者たちの熱い運動を見てきました。本当にすばらしい運動があって、これだけのものができたんだろうなということが実感できました。
それで、ちょっと確認させていただきたいんですけれども、個別法の整備がざらっと見せていただいて2000年代、特に2005年、2007年に整備されていると。これを受けて2007年に差別禁止法が同時につくられるというのかしら、その辺は同時進行で個別分野の整備と、それを全体としてまたぐ差別禁止法がつくられたと理解していいのかどうかということなんですけれども、特に教育においては、特殊教育振興法という障害者固有の教育に関する法律と、それ以外にも初中等教育法とか、年代別にばらばらの法律があるようなんですけれども、いわゆる一般法の方の整備は全くされなかったのかどうかということを伺いたい。
それと併せて関連なんですけれども、合理的配慮、韓国で言うと正当な便宜供与ですか。これの段階的施行ということなんですけれども、特に教育は、36ページをみると、2年ごとに施行していくということですね。まずは特殊教育学校から始まって、2009年からは特殊学級が設置された学校、2011年、今年の4月からは、全学校に合理的配慮、正当な便宜供与の履行義務というか、これが段階的な施行に入っているようなんですけれども、この辺の実際例などは御存じかどうかということも併せて教えていただけたらなと思います。教育は2013年に全部が終わることになっているようなんですけれども、あらゆる分野における合理的配慮、これは教育が大体こんなものなのかな。すべて2007年から2013年にわたって全部一応終わらせるという形で段階的施行にしているようなんですけれども、2013年にはほぼ全体として終わると考えてよろしいんでしょうか。
以上です。
○崔氏 御質問ありがとうございます。まず、1点目の、ほかの法律との関係と差別禁止法の関係。これは、2005年から2007年にいっぱいできているというのは、多分そのときの政権のいろいろなスタンス、政策とも大きく関係してきているのかなと私は思います。
あと、障害の分野で言えば、2002年から本格的に権利条約の議論が始まって、韓国も民も官も積極的に参加したわけですね。そういった相互作用と言ったら変ですけれども、そういうのはあると思います。例えば、特殊教育法、これを進めていたのも1つ団体があるんですね。ネットワークがあるんですけれども、そことは障推連は運動を一緒にやっていたということもありますし、例えば、2005年の交通弱者の移動便宜増進法についても、差別禁止法の運動をやっている人が同時に交通のアクセス法をつくれということをやっていたとか、そういったいろいろな相互作用があって、1つの基準なりとして権利条約があったり、ほかの国の差別禁止法があったりとかというのはあったと思います。それに関連して、例えば、初中等教育法というのも、実は2008年に一部改正がされたとか、それに併せていろいろ変わってきている。
ただ、実は韓国はものすごくスピード感があるので、差別禁止法も一回改正されているんですね。2007年の差別禁止法も一回大きく改正されているということもありますので、そういったスピードはすごく早いんですけれども、2000年から2007年、2008年までというのは、1つ大きな権利条約の議論とも相まって、非常に盛り上がりを見せたと言ったら変ですけれども、時期であるのかなと思います。関連しているかどうかと言われれば、私は関連してこうやって進んできたのではないかと思っています。
それと、あともう一つは、正当な便宜なんですけれども、1つだけ体育活動に必要なということで、39ページは2015年までというのもありますけれども、それは置いておいて、大体早いスピードで解決しようとしているわけで、さっきのような勧告を受容しない例とかが出てきているのかもしれません。教育機関では、国家人権委員会の勧告について、3分の1がまだ受容していない。あとは態度を決めていないという状況なんです。ですから、やらなければいけないんだけれども、できること、できないことをいろいろ悩みながらやっているのかなとは思います。法律の枠としては大体2011年、2013年で1つの法体系としてでき上がると。
あとは、何が合理的配慮か、正当な便宜かというのは、国家人権委員会やその人との個別、個別の状況によって、国家人権委員会なりが判断していくというふうになっていくと思います。
それで、教育の分野ですと、例えば勧告の内容などを見ますと、障害を理由にした入学の拒否なども起こっているわけですね。そういったことについては、勧告が出て、例えば2008年12月22日の勧告については、当該の機関が受容したと。要するにそれは差別的な取扱いを撤廃して、入学を拒否したとか、そういったことは出ています。
あと、勧告は、統合教育といっても、特殊学級を普通学校の中につくるわけですね。なるべく自分の住んでいる所に近い学校に行くという体系がとられている。特殊学級が必要だ。なのに、例えば別の班とか、別の空間をつくれないというような、つくるべきだという訴えも出ているし、逆に、一般の教室にいて、特殊学校なり特殊学級に行けと言われているのは差別だと言って、それを申し立てている場合もあるというのが教育の現状です。
大体、あとは、入学試験時に点字用紙を入れるとか、そういったことはかなり起きていて、そういったことはかなり受容は進んでいると見ていいと思います。
以上です。
○棟居部会長 太田委員、お願いします。
○太田委員 JDFの太田です。ありがとうございます。
多岐にわたったお話だったので、聞き逃した点を再度聞いてしまうかもしれませんが、3点ほどございます。
1点目は、国家人権委員会が重要な役割であるということでしたが、国家人権委員会に障害者の委員は何人ぐらいで、スタッフにどれぐらい障害者がいるのでしょうか。これが1点目です。
○棟居部会長 1つずつ。
○崔氏 国家人権委員会は、先ほど言ったように、委員という人は11名います。その中に1人障害者はいます。大体1人ぐらい。委員というのは結構偉い人なんですね。局長レベルと言っていますけれども、そこの中に必ず障害を持っている方はいらっしゃって、今は、元国会議員で障害当事者、車椅子に乗っている方のチャン・ヒャンスクさんという方が今、人権委員になっている。その前は、団体から入っていった方がなっている。委員にはまず1人います。職員に何人いるかは私はわかりません。私が見た障害差別課とかには特にいなかったような気がします。
○太田委員 2点目は、是正勧告のところで、国家人権法による是正勧告と差別禁止法による是正勧告という2種類が書いてあったように思いますが、どういうふうに仕分けているのでしょうか。
○崔氏 崔です。
勧告の効力というか、勧告自体は国家人権委員会法を準用しています。例えば勧告の内容の根拠になる法律が差別禁止法か国家人権委員会法かぐらいの話なんです。勧告については、勧告という形で出るわけですね。その中には、例えば是正、それを直しなさいという勧告も出たりとか、さっき申し上げましたけれども、いろいろな種類の勧告があって、勧告文の中にそういったものが含まれるという形は、国家人権委員会法の勧告も差別禁止法の勧告も同じ形です。根拠法が違うだけの話なんです。手続は全部国家人権委員会法なんです。
○太田委員 問題ごとによってどの法律を使うということなんでしょうか。
○崔氏 そうなんです。だから、差別禁止法が使えそうにもない場合は国家人権委員会法を使って、さっき言ったように、勧告というか、件数のうちの17件は差別禁止法で、13件は国家人権委員会法でという数字を出した記憶があるんですけれども、差別禁止法ではちょっとエリアが違うんじゃないかというのは国家人権委員会法で使えるものは使う。ただ、勧告の形は国家人権委員会がやるわけで、同じなわけです。この案件について、例えば差別禁止法と国家人権委員会法を根拠に、これは是正すべきという勧告をするという、中身の文書は違ってきますけれども、効力としては同じです。
○太田委員 最後に、これは資料にもしかしたら書いてあるのかもしれませんが、国家人権委員会の障害者差別是正委員会との関係はどういう関係でしょうか。
○崔氏 障害者差別是正委員会というのは、国家人権委員会の中に設置されている委員会です。その委員会で審議をして、人権委員という常任委員会で、例えば最終的に勧告を出すとかというふうに決めるわけです。差別調査課で調べて、それを差別是正委員会に持っていって、その後、人権委員という常任委員会に持っていくという形をとっている。
○太田委員 差別是正委員会は、障害者が多く入っているんでしょうか。
○崔氏 ちょっと調べてみます。昔はいたんですけれども、今はわかりませんので、今度調べて、個別的かどうかわかりませんけれども、お答えします。
○太田委員 ありがとうございました。
○棟居部会長 それでは、お待たせしました。山本委員、お願いします。
○山本委員 山本です。
韓国は、これ以外の領域でも先端的な立法を大胆に行う国でして、以前から敬意を表していたところです。お聞きしたいことは本当にたくさんあるのですけれども、私は専門は民法ですので、民法の観点から見て興味深い点だけをお聞きしたいと思います。それは46条で、25ページです。損害賠償に関する規定です。質問は2つあります。順番にいきます。
1つ目です。46条1項では、この法律の規定に違反し、他人に損害を加えたときは損害賠償責任を負う。ただし書きで、故意・過失の立証責任を転換しています。これは非常に大胆な規定だと思います。日本では、故意・過失についての立証責任の転換を認めているのは、例えば自動車損害賠償責任法です。こういう危険なものに関して立証責任の転換を認めたり、無過失責任を認めるというのが、日本の立法の基本的な立場だと思います。差別について、故意・過失の立証責任の転換を認めるとしますと、その理由をどこに求めるかということが避けて通れない問題になると思います。差別はしてはいけないというのは当然なのですが、それだけでは立証責任の転換を基礎付けるのは難しいと思います。
といいますのは、例えば生命・身体を害することもしてはいけないことですが、現在の民法では、加害者に故意・過失があることは、被害者が立証しなければならないということになっています。差別の場合は、なぜ立証責任の転換が認められるか、理論武装が不可欠だと思います。韓国でも恐らく議論があったところだと思います。それは参考になりますので、是非教えていただきたいですし、もしまだ十分に調査が及んでいないということであれば、いずれかの機会に是非お教えいただければと思います。それが1点目です。
○棟居部会長 では、1つずつお願いします。
○崔氏 細かい調査というのはできてはおりません。ただ、先ほども申し上げましたけれども、差別があったか、ないかとか、それが故意か過失かというのは、被害者、障害者だけではないと思うんですけれども、非常に現場からすると、障害者が何か訴えて、いろいろな資源を使って証明してというのは、現実的に非常に厳しいというのは現場の人たちにはあるわけですね。それで、運動としては、それでは法律ができても意味がない。今までの既存の体系では意味がないんだ、使えないものなんだという認識は昔からあったんです。これだけは今申し上げることができます。どういった中身の細かい議論があったか、私も実は、人権委員会の人とか弁護士の人とかいろいろな人と話はしてきているんですけれども、ある意味、結構すっと、当然じゃないかみたいな話で、これができなければちょっとねというようなニュアンスもあったものですから、きちんとした議論は追っかけていないので、今、御指摘をいただきましたので、是非それを課題として今後資料なりをまとめていきたいと思います。
○山本委員 山本です。どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
2点目は、46条の2項についてです。先ほどの御説明では、懲罰的損害賠償の導入を求める声に対して、それは導入できないけれども、一定の対応をしたという御説明だったと思います。2項で、損害について差別行為をした者が得た利益を被害者の損害額とみなしています。これは、現在の日本法では知的財産、例えば他人の特許を無断で使用して、利益を上げたという場合について規定されています。そういう場合に、ライセンス料相当額ではなくて、特許を使って勝手に製品を作って売った利益を損害としてみなすと規定されています。
ただ、差別の場合に、これに類する事態がどのような場合に問題になるのかということが、私はすぐにはわかりません。それをお教えいただければと思いますし、もし適当な例がそれほど多くなければ、このような規定を置くことに一体どういう意味があるのかという問題にもなると思います。
以上が2点目の質問です。
○崔氏 御質問どうもありがとうございました。
46条2項、3項が懲罰的賠償への着地点だったということなんですけれども、だから、日本と若干状況が違うのかもしれませんけれども、韓国はかなり実損害額相当の賠償額というのはかなり厳格なのかなという気がしているんです。例えば、よく挙げられている例なんですけれども、教育権というのは憲法でも保障されて、いろいろな法律で韓国でも保障されているんですが、重複を持っていたりとか、地方にいたりとかという人が学校に行けないことが現実にあるわけですね。それについて何年も前から裁判を起こしてきたと。でも、そこで一応何年もかかって行った裁判で勝訴はしたんですけれども、そこで得た賠償額というのが、250万ウォンですか、日本円で言うと20万円から25万円ぐらいですか。そうすると、これは弁護費用にもならないというような、多分そういった事情があるのかなと。いつも説明を受けるのは、その事例の説明を聞くわけです。ですから、さっき東さんとも、日本はどうなのと聞いたんですけれども、どうも韓国はそこら辺の融通が余り効いていないのかなと、賠償額の算定において、かなり厳しいのかなという印象を持っています。これは私の印象なので、課題として持ち帰らせていただきますけれども。
○棟居部会長 追加の御質問でしょうか。山本委員、お願いします。
○山本委員 山本です。一言だけのコメントですが、今の例でも、教育機関が差別をしたことによって得た利益はないはずなので、それでは問題の解決にならないのではないかというだけのことです。
以上です。
○棟居部会長 これは私のよけいな感想ですが、正当な便宜供与をしなかったということで、何がしか、例えばスロープを設けなかったとか、そういうことをここで言う損害とか言っているおるわけではないんですか。利益ですか。利益に関係ない。
○崔氏 これは正当な便宜、もしかしたら含まれるかもしれませんけれども、今の事例の時点では、要するに、訴えた側が全部裁判費用とか、年月とかもかけて、いろいろな負担をしなければいけない。実質的に、例えば生活の一部分を負担しなければいけない。訴えられた側は、そういうことについての負担がなされていなかったとか、もしかしたらそういうことがあるかもしれないですね。教育を受けられないというのは、基本的人権という憲法が保障する人権に違反しているんだということで、そういう事例を持ってきているのかもしれませんし、例えば教育以外にも、身体拘束という、居住の自由に関係してくると、例えば施設内にいて実質的に施設から出れない人とか、病院から出れない人というのも韓国にもいっぱいいるわけですけれども、こういう人は、差別だけの問題というよりは、実は差別禁止法で禁止している、いろいろな不利益取扱い禁止というのに引っかかってくるわけですけれども、そういったことも射程に入れて、もしかしたらかなり差別というものを広く重くとらえたものなのかなと。
○棟居部会長 宿題をいろいろ持って帰っていただいて、また、崔さんはこちらによくお顔を出しておられるので、場合によってはペーパーで御回答いただけるということもあるかもしれません。先ほど私はたまたま目撃しましたが、自由に携帯電話であちらのアドバイザーから回答を得るということがどうもおできになるらしいので、今の点も是非お願いしたいなと。
ついでに私は、先ほど山本委員が1点目として御指摘になりました、生命、身体ですら、それとのバランスはどうなんだということですけれども、47条1項を見ると、差別行為があったという事実は、差別行為を受けたと主張するものが立証というのがスタートラインとしてはありまして、それで46条1項の方にただし書きで、差別行為を行った者が故意又は過失がないことを証明という、これは日本法で言うと、名誉棄損とかの免責と似ていると考えられたら、そんなにバランスを失していないのかなという素人考えで恐縮ですけれども、教えていただければ。ついでに済みません。
○竹下副部会長 よろしいですか、座長、その関係で。
○棟居部会長 どうぞ。済みません、どうも私が進行を妨害してしまって申しわけありません。どうぞ。
○竹下副部会長 竹下ですけれども、今の山本委員の質問は、僕も非常に興味があって、日弁連でこのことをずっと議論してきたことであるので、1点だけ私が言いたいのは、結論的には、僕は無過失責任に近付けていると思うんです。それはなぜかというと、障害者権利条約の2条が参考になると思うんです。障害者権利条約の2条では、差別の定義をしているんですけれども、その中で、効果説といいますか、結果的に差別となった場合には、差別の要件に当てはまるという規定、文言を今すぐ思い出せないんですけれども、そういう2条の規定があるんです。すなわち、差別を目的としたことを要件としていない。結果的に差別となった場合も救済の対象にするということを条約自身が規定していることが1つそこに大きな要因としてあると思うんですね。それでは、先生がおっしゃるように、なぜその規定を設けざるを得なかったかという背景までとなると、研究したわけではないのでわかりませんけれども、そういう流れが1つにある理由は、当然、さっき崔君が言っているように、立証の困難性を救済するということが、特に差別の場合に、心の問題という、いわば立証しがたい問題を主題にせざるを得なかったところも含めてあるのかなと理解はしています。
○棟居部会長 どうも私は要らないことを言いました。山本委員は、包括的にすべて山本委員に多分立証責任というか、つまり、強い側の挙証責任があるだろうと思うので。
○東室長 1点だけ。その議論の前提として、故意・過失の対象になる行為は何かと。普通、差別行為という場合、差別する意図とは別個に、違う取扱いをしたり、中立な基準を適用するという行為自体の認識についてはあるんですよ。それがないという場合はほとんどないと思うんですね。あるんだけれども、それを差別だと思っていないという主観的な意図的な部分はいろいろあると思いますけれども、行為自体に対する認識というのは大体あるんではないかというのが1つの議論の出発点じゃないかなと僕は思うんですね。だから、故意・過失がないことを相手方に挙証責任を転換しても、そんなに実務的に違いが出てくるのかなという感じも持っておりますけれども、そこも含めて、先生、考えていただければと思います。
○棟居部会長 山本委員、済みません、お願いします。手短にお願いします。
○山本委員 手短には答えられないぐらいの大変な問題なのですが、今、いろいろ出ていましたように、立証責任を転換するときには、いろいろな形での理由付けの仕方があると思います。転換とまで言うかどうかは別として、一定の行為があれば、過失があると事実上推定するということを判例でも現実に行ったりしていますし、そして、棟居部会長がおっしゃられました名誉侵害の場合は特に、名誉侵害があれば、それで損害賠償請求はできて、あとは正当な理由があること、ないしは正当な理由があると思ったことに相当の理由があるという過失に相当するものの立証責任が転換されていることもあります。
そのような意味で、いろいろな場合がありうるわけでして、どのような理由があれば立証責任の転換を認められるかということについて少し整理をして、そしてこの差別禁止の場合に同じことが認められるとするならば、そのどれと対応しているのかという検討をしていく必要があるのではないかというのが一応申し上げたかったことです。その意味で、これは今後の検討課題だろうと思います。
○棟居部会長 どうもありがとうございます。いずれにしましても、立証責任の転換というのは、その言葉自体の持つ非常に大きなインパクトといいますか、シンボリックな意味合いも含めて、まだ判例が蓄積するほど韓国でも時間はたっていないと思いますけれども、ひょっとすると、今、室長がおっしゃったように、実務的にはそんなに大きな意味はない、言葉のインパクトという政治的なニュアンスの方が大きいのかもしれないし、しかし、これはあくまで、まさに法の世界にこうした大胆な構想を取り組んだ以上、山本委員がおっしゃるように、これはバランスを欠いているんじゃないかとか、果たしてうまく実務的に進めていけるんだろうかと。それと関連して、竹下先生もおっしゃいましたように、そもそも心の中の問題に対して立証責任をどういうふうにとらえていくのか。これは恐らく今後もずっと繰り返し出てくるテーマではないかと。ということで、山本先生にも是非宿題というか、課題としてお持ち帰りいただいて、またいずれお話しいただければと思います。
どうも時間の進行を私自身壊してしまうようなことで申しわけございません。
ほかに御質問いかがでしょうか。浅倉委員、お願いします。
○浅倉委員 浅倉です。1点だけ教えていただきたいと思います。この制度全般の中において、裁判所の役割というか、司法救済との関わりについて、です。最後の罰則の適用のところについては、裁判所が命ずるらしいということは49条でわかるんですが、48条にも裁判所が出てきます。これらは一体どういう仕組みになっているのかという質問です。
○崔氏 崔です。御質問ありがとうございます。
裁判所という役割については、きちんとした整理はできていないんですけれども、まず1つは、差別禁止法については、別に国家人権委員会を経なくても訴訟を起こすことはできるんですね。ですから、国家人権委員会と行政救済と司法救済、一応準備されているということは、差別禁止法の中では言えます。
それで、差別禁止法の中での役割としては、48条になると思います。私もその程度しかわからないんですけれども、あとは、罰則の49条の規定は、なかなかここまでは、現実的にはこの事例というのはなかなか起きないんじゃないかというのは、韓国の方々はみんなおっしゃっているんですけれども、課題をもう少しいただければ、ちゃんと調べてまいります。
○棟居部会長 それでは、実は本日は今後のスケジュールについて室長からお話しいただく時間を不断より余分に取っておきたいと思っております。進行がその意味でも押しております。もしあと、簡単な御質問がお一人あれば取り上げられるかなという、その程度しか時間がございません。どうぞ、伊東先生。
○伊東副部会長 では、簡単に申し上げます。
今日は、崔さんから大変貴重な御報告、ありがとうございました。
禁止法が施行されて3年たちますね。3年間にその後、何か顕著な変化、社会的、経済的な顕著な変化がもしあれば、具体的に幾つか事例を教えていただければありがたいです。
以上です。
○崔氏 御質問ありがとうございました。社会的といいますと、韓国社会全部という感じのことですよね
○伊東副部会長 雇用が。
○崔氏 ああ、なるほど。今、雇用と出ましたので、雇用については、細かな、例えば合理的配慮の欠如といった案件については、かなり企業の中にも進み出しているということなんですが、韓国の場合、例えば社会的企業とか、さっき割当雇用とか、いろいろな制度と組み合わせて障害者の雇用政策を行っていますので、どこまでが差別禁止法の成果か、インパクトかと言われると、厳密には言いかねますけれども、とにかく当事者や関係者に対しては、いろいろな力を与えたのは間違いないことで、あとは、韓国は政治の動きも非常に早い国だと思うんですね。ですから、政権がしょっちゅう交代して、法律もしょっちゅう変わる国なので、そういった波にもまれながらも必死に自分たちがつくった法律で何とかしてやろうみたいなイメージなんです。だから、差別禁止法ができて何かインパクトというのは、まだちょっと言い切れないかなと思います。また今後、裁判なり、合理的配慮のいろいろな施行令、事実が積み上がっていって、あと2、3年して1つ何かコメントできるのかなと思いますけれども。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
それでは、以上で韓国の障害者差別禁止法制についてのヒアリングを終了します。崔さん、どうもありがとうございました。(拍手)
それでは、これをもちまして本日のヒアリングは終了しました。ヒアリングに御協力いただいた長谷川さんと崔さん、本当にありがとうございました。(拍手)
それでは、先ほど申しましたように、最後に東室長から差別禁止部会の今後の大まかなスケジュールについて報告をお願いします。
○東室長 どうも御苦労さまでした。一番最初に資料の説明をした中で抜けておりましたけれども、参考資料がお手元にあるかと思います。差別禁止部会の今後の大まかなスケジュール(案)という標題でございます。
これまで、外国法制を中心にヒアリングを続けてきましたけれども、その中で、基本的にどういう点を議論すべきかということがある程度見えてきたかなと思いましたので、基本的論点として5つぐらいの切り口で書いております。
まず、一番最初に障害の定義、もしくは障害者の定義というものが問題になるかなと。特に、その範囲につきましては、機能障害が現在進行形である人の場合の規定の仕方、かつまた、それを前提として、過去にあった場合とか将来に発生する恐れがある場合とか、もしくは、機能障害とは必ずしも言えない外貌の問題とか、「見做し」と書いておりますのは、いろいろ理由はあるかもしれませんけれども、機能障害は全くないにもかかわらず、あるというふうに外部が認識して、その認識に基づいて違った差別をするような場合、こういう場合をどのような形で取り込むか、外すかという議論がまず要るかなと思います。
それとともに、障害の概念、医学モデル、社会モデルとの関連性をどう入れ込むかということが問題になるかなと思っています。
それとの関連で、次に適用対象ということでありますけれども、障害者であれば全部入るのかどうかということで、特に雇用分野につきましては、特にアメリカ法制を中心として、有資格のという形での限定があります。ADAも有資格という規定は、雇用と第2編の公共サービスにあるぐらいで、ほか全部あるわけではないわけです。しかし、有資格という制限がある。ところが、例えば今日の2010年法にしても、有資格という形での限定はないわけですね。そこら辺をどう考えるかという問題があります。
それとともに、2010年法でも必ずしも保護の対象は障害者だけではない。関連する人たち、先ほど、韓国の差別禁止法でも同じように一定の関連性を有する人たちを適用対象としているということがあります。そこをどう考えるかという問題が出てくると思います。
次に、差別の定義として通常言われている3類型があるわけですけれども、例えば2010年法で言うと、直接差別の中をもう少し分けているようなところもあります。それとか、間接差別と合理的配慮の関係性の問題とか、そこら辺の議論が必要になると思います。
そして、これは今、類型というのは原則形態なんですが、特に実務的に問題になるのは、それぞれの例外をどういうふうに考えるのか。考えた場合に、大体挙証責任との関連で諸外国の法制を書かれている部分があるんですね。ですから、例外の書き方とか、挙証責任などの関係が定義のところでは問題になるかなと思います。
それらが大体総論として議論すべきところなんですが、次に、各論としてどういう分野をピックアップすべきかというのが問題になります。例えば、ADAでは4編ありまして、雇用が最初にきておりますけれども、例えば教育という分野は個別的には書いていない。公的なサービスの中に入り込んでいる。むしろ全障害児教育法とか、それ以降、名前は変わっておりますけれども、そういう個別の法で対応している部分もアメリカではあるわけですね。ところが、日本は個別的な差別禁止法みたいなものは余りないので、やはり韓国の差別禁止法みたいに網羅的に書くかどうか。書く場合にどういう分野が必要なんだという議論が最初にくるのかなと思います。
その上で、例えば雇用で考えると、範囲をどこまで考えるのか。一番大きな問題は、募集とか採用を入れるかどうか。雇用の分野の中で特定の差別禁止の対象となる部分をどこまでするのかという議論が次にくるのではなかろうかと思っています。
それと、特に総論の定義との関係で言うと、分野ごとに必要とされる合理的配慮の内容が少しずつ違うのかなという点もありますので、その分野に特化したものを設ける場合の書き方をどうするかということが議論すべき課題だと思います。
そういうところまでが一応実体的な規定だと思いますけれども、救済手続の在り方がその次にくると思います。救済手続の在り方としては、3つの分野があるかなと。1つは、特に継続的な関係にある間での差別問題については、その中での自主的な解決手続みたいなものが最初にあるかなと。次に、そこで解決できない場合は、外に出て、まず、行政救済機関的な解決の仕組み。そこでさらにできなければ、司法救済という形になります。こういう救済手続の在り方についての議論が必要でありますが、これは、今日、昨日の新聞にも出ていましたけれども、人権救済法案の動きが今出てきておりますので、そこでの大枠が決まれば、それを念頭に置いた議論が必要になるかなというところです。ですので、全くゼロから議論すべきなのか、一応そういうものを前提にして議論すべきなのかはちょっと流動的であります。
基本的な論点としては、以上の5点ぐらいが必要不可欠かなと思っています。
目標としては、最終目標は2013年に法案が提出されることですけれども、そのためには、2012年の夏をめどに一定のまとめをつくるということになりまして、今の基本的な論点を割り振ると、次のページに単純に割り振ってみただけの話で、これは一番最初にも出したような表なんですが、次回6月には、ここに書いてあるのは、差別の具体的な事例とか、裁判とか行政手続での事例で、日本的な相場はどうなっているのかというあたりをヒアリングするということで書いております。
その上で、7月、8月に、障害の定義とか差別の定義に関する議論を行って、9月以降は個別分野ごとの検討を行い、また2012年の3月からは救済手続、そして6月、7月は一応まとめという形で考えておるというところです。
しかし、これまで続けてずっとヒアリングをやってきたこともありまして、6月もまたヒアリングかと、あるいは皆さん、意見を述べたいというお気持ちもあろうかと思いますので、例えば、一般的な議論を半分して、残りの半分は具体的事例を出すとか、裁判についての事例を出してもらうという形にしてもいいかなとは思っておりますし、先ほど山本委員から御指摘がありました、雇用以外の分野についてのところをどうするんだということにつきましては、例えば教育に関しては、今、内閣府の方で調査をやっておりまして、その報告書がもうそろそろでき上がるのかなと思っているところなんですけれども、そういうものができれば、例えば教育の議論をする場合に、ここでその結果を適切な人に報告していただくということもあり得るだろうし、外国法制についての、例えば一定の分野についての法制度はこうなっているというのを事務局の方で調べて、それを事前に提出して参考にしてもらうとかということも考えているところです。
それとか、結構幅広い分野で研究されている学者さんも、僕は知らなかったんですけれども、いらっしゃるようなので、そういう方にもちょうどいいタイミングを見計らってヒアリングするということもあり得るかなということを考えております。
大体私の方からの報告としては以上ですので、皆さんから御意見があればいただきたいと思っています。
○棟居部会長 どうも東室長ありがとうございました。ちょっと私から。先ほど言えばよかったのかもしれませんが、先ほどの韓国の法律は、これは所管というか、保健福祉省になっておりますよね。これはしかし、内容は教育あり、あるいは移動手段ありですね。日本だと、これはどの省だというようなことで多分大変、そこら辺で結構厄介な問題もあるかもしれないところ。韓国の場合、これは障害者権益増進課という、いわば横切り的に、障害者というくくりで教育とか移動とか全部とりあえず管轄だと、こういうことでよろしいんでしょうか。
○崔氏 御質問ありがとうございます。そのとおりなんですね。ここが保健福祉省の障害権益増進、また名前が変わったんですね。そこが差別禁止法の所管省庁でもあり、権利条約における33条のフォーカルポイント、連絡先にもなっている。そのために新しく改変された課になります。
○棟居部会長 ありがとうございます。我々としてはですから、余りそういうことは気にせずに、障害者権益増進課ですか、韓国におけるこういう位置付けのように、いわば横切り的に、横断的にいろいろなテーマについて、今後、これまで必ずしも十分に議論が出てこなかったものも重点的に取り上げていきたいと。
進め方については、先ほど東室長おっしゃったように、1本ヒアリングを入れて、あと1本は、それと関連づけた方がいいと思いますけれども、一般的な議論を相互にしていく。決してヒアリングで呼んだ方を後半、長時間ずっと責め続けるということでは勿論ないわけなので、むしろ従来、これまで、今日も含めまして、随分発言量を抑制させていただいております。これを相互にフリートークを入れていくことで、論点を夏ぐらいまでにはある程度我々自身の宿題をはっきりさせていかないと、これは追いつかないんじゃないかと思っています。ある意味、救済機関について、先ほど御紹介があったような別の法律の動き、そっちに乗らざるを得ないということになりますと、逆に障害の定義とかで時間が最後また取れるかもしれないんですけれども、場合によっては、すべて自己完結せざるを得ないとすると、本当に時間がないなと思っております。
ということで、先ほどの東室長の今後の進め方に何か御意見等ございますでしょうか。もう時間はほとんどございませんが。山本委員、どうぞ。
○山本委員 山本です。確認とお願いが1つだけあります。
基本論点の中の5の救済手続の在り方で、最後に司法手続とありますが、これは狭い意味での民事手続だけではなくて、救済の手続というよりは、内容の問題も含められるのではないかと思います。つまり、損害賠償、あるいは差止め、あるいは積極的な措置をとれという請求、これは契約締結の強制にまで及ぶものかもしれませんが、そういった問題もあるということも、ここ、ないしはほかのところにも含まれているということを確認し、そして、それについても検討していただければというのがお願いです。
○棟居部会長 すると、場合によっては順番は我々で行政委員会的なものをあれこれ言って、しかし、別の法律に吸収されたよりは、今のまさに民事訴訟の実体権的なところを議論していくのは、もう少し早い段階でやってもいいかもしれません。これはまた詰めさせていただきます。
どうもありがとうございました。
それでは、以上で本日の予定はすべて終了いたします。
最後に、次回以降の日程について、東室長から連絡をお願いします。
○東室長 今日はどうも御苦労さまでございました。
次回は、6月10日金曜日、14時から18時の予定です。
それ以降は、毎月第2金曜日の開催を基本にしております。このことを踏まえて、現在、220号会議室を確保している日程につきましては、皆さん、お手元に一枚ものの資料があると思います。見ていただくとわかりますように、6月は10日、7月は8日で、8月、9月は、複数日入れております。実は8月は12日が第2金曜日なんですが、お盆ということもありまして、ほかに取っているのが月曜日が8日と22日なので、どうするかということを含みを持って考えております。
9月についても同じような状況があるんですが、金曜日が30日しか取れていませんので、もう少し前の12日とか26日にできればと思っています。
10月、11月、12月は、ここに書いてある日程になるかなと思っております。
1月以降はまだ未定というところです。
ですので、できれば手帳に今日の段階での日程を空けておいていただければというところです。
以上でございます。
○棟居部会長 ありがとうございました。今出てきました日程しかこの部屋は押さえていないということで、それ以外の日程が今後出てくるということは基本的にはないと考えてよろしいということですね。ということでよろしくお願いします。
では、どうもありがとうございました。
○東室長 時間は2時から6時までということでお願いします。
○棟居部会長 どうも失礼しました。
それではありがとうございました。
本日の差別禁止部会の概要につきまして、この後、記者会見において、私と東室長から説明させていただきます。本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございました。

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