(PDF形式:132KB)別ウインドウで開きます

障がい者制度改革推進会議(第21回)
議事録

小川議長 定刻になりましたので、これより第21回「障がい者制度改革推進会議」を開催させていただきます。

本日の委員の出欠状況ですが、門川委員、堂本委員、中島委員、中西委員、山崎委員、福島オブザーバーが御欠席。その他の委員は御出席です。会議の公開は、これまでと同様といたします。進行上の時間配分については、後ほど東室長より報告があります。本日の会議は17時までを予定しております。

それでは、これより先の進行については、藤井議長代理、よろしくお願いいたします。

藤井議長代理 それでは、これから先は藤井の方で進めさせていただきます。

最初に、本日の進め方の概略説明を、東室長からお願いいたします。

東さん、どうぞよろしく。

東室長 担当室の東です。こんにちは。

今回は、障害者基本法の改正についてなどをテーマとして取り上げます。事前に総則の条文イメージをお示ししておりますけれども、今回の議論を踏まえて、次回は10月27日になりますけれども、ここにおいても議論をする予定です。

また、モニタリング機関につきましては、今回が地方モニタリング機関についてということで議論をいたしますけれども、次回は中央モニタリング機関について議論することとしております。

今回、意見を表明できないこともあるかと思いますので、次回に向けて意見集約をする予定にしております。

今回も15分の休息を3回として、4つのコーナーに分けることにいたします。第1のコーナーは50分で「障害者基本法改正について<1>」と題して、総則部分の改正に関する条文イメージ素案につきまして、事務局の説明の後議論していただきます。

次に、第2コーナーは50分で「障害者基本法改正について<2>」として、引き続き条文イメージ素案について議論をしていただきます。

第3コーナーにつきましては、45分で「障害者基本法改正について<3>」として、特に地方モニタリング機関について、事前に御提出いただきました意見を基に議論していただきます。

最後の第4コーナーは、35分の予定で「報告事項と質疑」を予定しております。

本日の予定の概要は以上のとおりです。

藤井議長代理 ここで、内閣府の方の担当の異動がございました。統括官に村木厚子さんをお迎えいたしました。ここで村木さんより一言ごあいさつをと思いますので、村木さん、どうぞよろしくお願いします。

村木統括官 御紹介いただきました、9月27日付で新しく共生社会政策の政策統括官に任命をされました村木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

藤井議長代理 それでは、今、ありましたように、13時50分を目途に、第1のコーナー。これは障害者基本法の総則文の、資料1の中の「1.目的」の部分から始まって「3.基本的理念」までで、これをまず第1コーナーとして、今から論議しますけれども、齊藤企画官から御提案をお願いいたします。

では、齊藤企画官、どうぞよろしくお願いします。

齊藤企画官 企画官の齊藤でございます。よろしくお願いいたします。本日は若干説明が長くなるかもしれませんので、着席にて御説明をさせていただきたいと思います。

それでは、資料1に沿いまして御説明申し上げます。

初めに本資料の趣旨、位置づけについて記述しておりますが、この資料は、これまでの会議における議論、とりわけ前々回の第19回の会合の際に御提出をいただきました基本法改正に関する御意見を、事務局の方で条文の形に落とし込んだら、どのような規定になるだろうかという、条文のイメージの形に整理をしてみたものでございます。

他の法律の規定ぶりなどを参考に、極力たたき台となり得るような、現実的な規定ぶりを心がけたつもりではございますけれども、あくまでも部内作業の段階のものでございまして、関係各方面、例えば内閣法制局ですとか、関係省庁などとの調整は行っていない段階のものでございます。

したがいまして、この規定ぶりであれば法案に盛り込めるという程度に詰まったものではございませんで、むしろ、この後御説明いたしますけれども、このような規定ぶりをする上で、今後更に検討・精査すべきポイントが幾つかあると。そういったものをクリアーしていかないと、なかなかこういった規定をつくるのは難しいというのが、私の偽らざる気持ちでございます。

通常、こういった内閣提出法案の検討過程で、このような、いわゆる生煮えの状態のものをお出しするということはやっていないわけですけれども、今回、本会議における議論を実質的、具体的に進めていただく上で、条文のイメージがなければ、なかなか議論が難しいということでございましたので、あえて御提出をさせていただいてございます。

資料ですけれども、既にお目通しかと思いますけれども、項目ごとに条文のイメージと、今後検討・精査を要すると考えている主なポイントを記述してございますので、先ほど御指示がございましたように「3.基本的理念」のところまでを、まず御説明させていただきたいと思います。

まず「1.目的」についてでございます。条文イメージといたしましては、読み上げさせていただきますと「この法律は、障害者が、障害者でない者と等しく、すべての基本的人権の享有主体であることを確認し、かつ、障害の有無にかかわらず、国民が分け隔てられることなく相互に個性と人格を尊重する社会を実現するため、障害者の権利の実質的な確保並びに障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の権利の実質的な確保並びに障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とすること」でございます。

規定の内容といたしましては、まずは障害者が障害者でない者と等しく、人権享有主体であるということを確認すると、本会議で再三御議論いただいた内容でございます。

次に、分離・隔離の否定ですとか、インクルーシブ社会といった考え方を踏まえまして、実現すべき社会の在り方として、そこにありますような規定を盛り込んだらどうかと考えた次第でございます。

併せまして条約上、人権の共有行使という言葉が使われてございますが、それを法文上どう表現するかということで、この案としましては、障害者の権利の実質的な確保という文言を入れてみたところでございます。

併せて、これも多く指摘をいただきましたが、障害者の福祉という現行法上の記述は削除いたしてございます。これが条文のイメージの内容でございます。今後、更に、それぞれ今、使用いたしました文言等が、果たして表現しようとしていることに関して適切かどうかなどについて、検討・精査を要すると考えてございます。

次の2ページでございますけれども、条文のイメージといたしましては「障害の定義を、身体障害、知的障害又は精神障害その他の心身機能の損傷とすること」、次に障害者の定義として「障害があり、かつ社会における様々な障壁との相互作用により、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者とすること」でございます。ここでは社会モデルへの転換ということで、まず、障害を心身機能の損傷、インペアメントということで、幅広くとらえようと。それを基に、障害と社会におけるさまざまな障壁、バリアとの相互作用を盛り込むことによって、障害者を定義しようと試みてございます。

この規定に関しましては、今後更に、例えば、その他の心身機能の損傷という定義の仕方に関してどうか。更には、今、申し上げた障害者の定義の立て方が、社会モデルを表現する上で適当かどうか。更には「障害」「相互作用」「継続的に」「相当な」などの各文言について、その適否を更に精査をしていく必要があると考えてございます。

続きまして「3.基本的理念」でございます。

まず、(1)でございますが「すべて障害者は、障害者でない者と等しく、すべての基本的人権の享有主体として個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有するものとすること」でございます。こちらは先ほどの目的規定における、人権享有主体というものを合わせて盛り込んだ内容でございます。

次に(2)は「すべて障害者は、障害者でない者と等しく、自らの判断により地域において生活する権利を有するとともに、自らの決定に基づき、社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を有するものとすること」でございます。こちらに関しましては、地域において生活をする権利という、これまでの本会議における議論をそのまま書き下して追加をしてみました。今後、具体的な条文化に向けまして、その内容を具体的に、だれに対して何を求める権利なのかといったところを、しっかりと精査をしていかなければならないと考えてございます。

皆様、御承知のとおり、いわゆる新しい人権というものを明文化することは極めてハードルが高くございまして、例えば、この権利が国などに対する請求権ということであれば、個別の内容を具体的に記述していくのかなと考えてはおりますが、いずれにしても、更に精査が必要な部分でございます。

続きまして(3)でございます。「すべて障害者は、手話等の言語その他の障害の種類に応じた意思疎通の手段の確保の重要性にかんがみ、日常生活及び社会生活において、可能な限り容易にそれを使用することができるよう配慮されなければならないこと」の新設でございます。この部分に関しましては、手話等の言語、その他のコミュニケーション手段の規定を新設するという議論をずっとしていただいておりまして、そこに関しては、皆様異論がないところだと思っておりますけれども、特に手話というものを、明示的に言語として、ポジティブに規定をしていく必要性については、どのように説明をしていくのかというところで悩んでおるところでございます。

特に、手話というものが言語全体の中でどのような位置づけになるのかなど、更に精査が必要かと考えてございます。併せて、コミュニケーションの双方向性についての規定ぶりについても、更に検討が必要かと考えているところでございます。

前半部分の御説明は以上でございます。

藤井議長代理 今、12分です。50分まで40分弱あるんですが、議事の進め方なんですが、この後に第2コーナーで、残りは4~11まで8項目あります。その後半の方で、1~11までは漏れているものが多分あると思うんです。自分の意見はこうだとか、これは足りないのではないかと。現にそういう意見もきております。

第2コーナーの終わりの方で、1~11までに入っていないところについては、意見を受け付けようと思っています。そんな見通しを持ちながら、目的から基本理念まで3つの分野について、今、ありましたように、これはあくまでも条文のイメージ素案。このイメージというのがみそだと思うんです。ここはまだずっと進化していくものだと思うんですが、お手元にありますように、検討あるいは精査すべき点は、まだ残っています。

したがって、先ほど東室長からありましたように、次回の議論とセットにして、今日議論をするものと。更に、次回までに意見も求めるということがありますので、そこで更に深めていくということで、今日、全部ここで結論は出しません。意見を出し合って、次回にまたつなぐと考えていますので。

以上、そういう中でこれから論議に入りますので、どうぞ、御意見がある方は手を挙げてください。

では、竹下委員から始めましょう。竹下委員、お願いします。

竹下委員 ありがとうございます。竹下でございます。短く、3点について問題提起させていただきたいと思います。

まず、第1点目ですけれども、常にここでは支援という言葉が用いられていることに対する違和感であります。なぜ支援という言葉にこだわるのか。そうではなくて、現に齊藤さんも指摘したように、請求権ということで物事を明確にするのであれば、ここは支援ではなくて保障という言葉で明確にすべきではないか。すなわち、支援を受けるという、客体としてとらえることはやめようという議論をこの間してきた以上は、権利の主体として障害者をとらえるのであれば、その権利の保障という条文上の立て方でなければ、不完全、不十分だと思います。

2番目です。障害の定義のところで、身体、知的、精神というものを典型的な障害の種類、種別として挙げていることには理解をしたいと思うんですが、その3つを並べて、その他としていることに対する違和感があります。

確かに、従来の法律の体系からいえば、身体障害、知的障害、精神障害が典型的な障害者の体系、類型ではありますけれども、この間の議論を踏まえるならば、この身体障害、知的障害、精神障害という言葉は、基本法においてはあえてこだわるのではなく、やめるべきではないかというのが2点目の指摘であります。

3点目です。手話というものについて、これを明記することに反対はしません。ただ、手話ということを明記するのであれば、少なくとも現時点で、各障害者にとって典型的なコミュニケーション手段として、認識が共通になるものは列記すべきではないか。

例えば、点字やリライトの権利であったり、現時点で少なくとも、障害者にとってのコミュニケーション手段として、明確にされているものについて列記することでないと、この部分は若干不完全になると認識します。

以上です。

藤井議長代理 3点ですね。いずれも全体に係る、各条項の基本に係る問題だと思いますので、更に議論を深めていこうと思うんですが、大谷委員、関口委員の順番でいきます。

大谷委員、どうぞ。

大谷委員 大谷です。ありがとうございます。

全体として目的、定義、基本理念にインクルーシブの理念が希薄であるということに、非常に危機感を持っています。

権利条約の一番の大きな特徴は、インクルーシブを認め、それを実現するための具体的な手だてを権利規定として設けているということだと思います。

目的から定義、基本的理念の中に、本日盛り込んでいただきたいことを、長くなるので書面化しましたので、その要旨だけを述べさせていただきたいと思います。もしよかったら、本日配付なので、申し訳ありませんが点字が間に合っていないと思いますけれども、是非、後日また点字にしていただいて読んでいただきたいと思いますので、これを見ていただきながら、この点は最低限盛り込んでいただきたいものとして、提案させていただきたいと思います。

まず、第一に、目的に、たたき台の中には「障害の有無にかかわらず、国民が分け隔てられることなく」と入れていただいたところは非常に評価したいところなのですけれども、その後に「相互に個性と人格を尊重する社会」としか規定していない。「個性と人格を尊重する社会」というのは、既に個性というのは憲法13条で基本的人権として認められている事項ですから、ここをもし加えるとしたら、差異と多様性が尊重された社会ということで、障害者基本法においては一番重要な、障害を差異、多様性ということで表現した方が、私はリアルで具体的になると思いますし、その後に共生社会を実現するんだということを、目的に明記してもらいたいと思います。

ただし、行政用語としては随分使われていますけれども、共生社会というのは今まで法律用語に入っていなかったので、ここを具体的に定義すべきだと思いましたので、本当にこれもまたイメージで、今後皆さんがいろいろ入れるということを前提にたたいていただきたいのですけれども、私なりの提案をさせていただきました。

共生社会とは、すべての障害者が社会の対等な構成員として位置づけられ、合理的配慮や必要な支援の充足を通じて、障害の有無に関わらず、差異と多様性が尊重されて、地域社会でともに生活することが確保された社会のことをいうのです。本当にまだまだ固まっていない文言ではありますけれども、こんなことを盛り込んでいただいた共生社会の定義は不可欠だと思います。

要旨だけにします。最後は基本理念の中に「地域において生活する権利」を盛り込んでもらいたい。そして、具体的に精査事項として、担当室の方から2点質問が出ています。だれに対して何を求めるのかということと、権利を明文化する必要性を基礎づける事実は何なのかという質問が出ていますので、これに対して、私は答える形で文章を書かせていただきました。本当に昨日の夜書いたもので、今日の朝に配付ということで本当に申し訳ないのですけれども、まだまだ付け加えるべきことがあると思いますけれども、とりあえず今、私が感じていることは、この2点です。

さっと要点だけにしますけれども、だれに対して何を求めるのかというのは、これが人権であるということだとすると、第一義的には国等に対する権利だと思います。その前項に「その尊厳にふさわしい生活を保障される権利」というのが、人権保障として規定されている以上、この第2項に私が入れていただきたい地域で生きる権利というのは、人権として保障されるべき事項であるということになると思います。

今、齊藤さんの方から説明されたように、人権ということであるならば、憲法にないカタログをここに持ち込むということになりますので、新しい人権をここに規定するのかという大きな問題が確かに出てきます。ただし、これに関しては、既に我が国は時代の要請に応じて、新しい人権が生成・発展しているということは、具体的に認めてきている。例えば自己決定権、環境権、肖像権などは、もう我々の法律の分野ではいろいろなところで問題にして、それを求めていろいろな事件も発生しているということでありますから、それと同じく「地域において生活する権利」は共生社会を具体的に実現するための、個人の権利であるということを意識した条文が必要であろうかと思います。

ただし、率直に申し上げて、これを言葉として明記するということは政府、最高裁においても非常にハードルが高い。いろいろ問題になっても、環境権ですら人権ではなかろうかと言われても、いまだに人格権という表現でしか裁判上も表現されていないところもありますので、そこに関しては本当にこれからの問題だと思いますけれども、私は権利条約として批准されたものは、国内法に落とすときには国内法として、その用語を使うべきであると強く思っています。

例えば、自己決定権。これは人権規約上、A規約の方の第1条に自己のことを決する権利だと規定されていながら、自己決定権という言葉がなかなか法律用語として定着しなかったり、例えばマイノリティーの権利である自己の言語を使用する権利、それから、子どもの権利としての意見表明権なども、まだ我が国内法においては、子どもの権利として意見表明権があると、個別的には規定されてはいないのですけれども、既に批准された条約の中でこれらのものがあるということであれば、それを前向きに、きちんと国内法でその言葉を使って、人権カタログとしてでも積極的に使用する必要があると思っています。

その意味で、障害者権利条約に「地域で生活する権利」というものが19条で明記されているわけですから、それを受けた形で基本理念の方に入れて、インクルーシブ社会を実現するための1つの大きな手段、個人が持つべき手段として、そこは明記していただきたいと思います。

ただし、権利条約がまだ批准されていないのだから、既に批准されている条約の中の権利もまだ明記されていない段階において、批准されていない権利条約の中の言葉を法文上明記を要求するのは、もっと難しいのではなかろうかという意見も出てくるかもしれませんけれども、インクルーシブを実現するためには、新たな権利構成というのは絶対必要だと思います。地域で生きるということが、権利として障害者に自覚されない限りはなかなか、例えば社会的入院がずっと放置されていることに関してだって、いろいろ解消し得ないことになると思いますので、その点に関しては、是非意識したことを入れ込んでいただきたいと思います。

以上です。長くなってごめんなさい。よろしくお願いします。

藤井議長代理 長かったんですが、大変大事なことなので。

新しい人権は相当ハードルが高い。しかし、今、言われましたね。余りにも当たり前の権利が奪われているということなんです。新しい人権ではあるんだけれども、余りにも当たり前過ぎることではあるんですが、これをどう、更にきちんと明文化できるかと。随分ハードルが高いんだけれども、日本の状況を見ると、どうしても今の御意見になると思います。

順番としては、関口委員の次に遠藤委員にいきますので、関口委員、どうぞ。

関口委員 全国「精神病」者集団の関口です。権利条約を見て思うのは、前文でうたってあることは非常に大きな意味を持っていると思います。ですから、基本法についても前文のようなものは考えた方がいいのではないかと思います。

もし、法律の中に書き込むことが直接には難しくても、理念として、こういう理念だということに関しては、前文の中できちんと述べるということが必要だと思います。

それから、目的条項なんですけれども「個性と人格を尊重する」というところですけれども、これは大谷さんの意見とも重なりますけれども「個性と人格の差異を尊重する」とした方がいいのではないかと、個人的に思います。

それから「障害者の自立及び社会参加の支援等」の「支援」というのもおかしいのではないかという話が出ましたけれども、ここも自立とは何かということが議論されてきたということにかんがみると、こういうふうに書くのがいいのかどうかというのは、私も問題だと思います。

問題は、この後の「支援等」です。この「等」というのは一体何を指すのかというのがよくわからないので、もしイメージしているものがあったら教えてください。

藤井議長代理 今日は質問というより、むしろ意見を出し合ってと思っていますので。

関口さん、ちょっと一言、前文がという場合に、例えばこういう要素がというイメージはありますか。

関口委員 障害者の権利に関する条約を見てもわかるように、今までの人権条約を劈頭でもって、まず全部挙げているわけです。ですから、障害者の権利あるいは障害者の人権に関わる基本的なことを定めるものであるということを、まず明確にした上で、それはどういう性質のものなのかということを付言するということは必要だと思います。

その中で、大谷さんが言ったようなことで、もし本則に書き込むことができないようなことでも、考え方として挙げられるものはそこに盛り込んでいくという形でもって、本則を補強していくという作業が必要だと思います。

藤井議長代理 おそらく今後、基本法における前文の持つ意味合い、性格づけをもう少し我々も勉強して、なるほど、前文というのは絶対なくてはいけないなということを説得できるような準備もしていく必要はあるかと思うんですが、更にこのことを継続していく必要があると思います。

遠藤オブザーバーにいきますが、その次は新谷委員、御準備していてください。

では、遠藤委員、お願いします。

遠藤オブザーバー ありがとうございます。

冒頭、企画官の方からお話がございましたように、他の法令の規定の仕方、あるいは用令といったものを参照しながら検討すべきであり、まさにそのお考えのとおりであると思います。その立場に立ちまして、1点申し上げたいと思います。

目的の条文イメージでございますが、障害者の権利の確保を目的の中に追加するということについては、何ら異論があるわけではございません。この文言の中にある「実質的な」という言葉についてであります。この「実質的な」という言葉が入ることにより、「実質的でない確保」といった概念を新たに登場させることになりますし、そもそも「実質的な」という規定ぶりが、他の法令の中にあるのでしょうか。

竹下委員が使われましたお言葉を借りますと、私もこの「実質的な」という言葉には大いに違和感を覚えております。

以上でございます。

藤井議長代理 「実質的な」という言葉の他の法令との関係やら、違和感を覚えるということがあり、これも論議が続くと思うんです。

では、次は新谷委員からいきます。その次に久松委員と順番でいきますので、新谷委員、お願いします。

新谷委員 全難聴の新谷です。何点かありますけれども、まず、前文につきましては関口さんの意見と同意見です。前文については構成員の大多数が必要だということを言ったと思いますので、つくるのであれば、だれかが起草するということでもいいかもわかりませんけれども、事務局でも案を出していただければと思います。

それから、目的のところ。「実質的な確保」ということについて遠藤さんから意見が出ましたけれども、全く同意見で、法律用語として「実質的な」ということを書き込んだときに、一体どういうことが起こるのかということを吟味した上で「実質的」という言葉は使うべきだと思います。法律に「実質的」という言葉を使ったことが本当にあるのかどうか、大谷さん辺りから聞きたいと思います。

それから、目的のところで、障害者権利条約の規定の遵守とか、そういうのが前文に入るのか目的に入るのかわかりませんけれども、やはり今回の基本法の改正は、障害者権利条約の趣旨、目的を踏まえるということが非常に大きなポイントだったと思いますので、その点を目的かどこかに明記していただきたいと思います。

それから、障害の定義の中ですけれども、障害で定義するのか障害者で定義するのかわかりませんけれども、権利条約は感覚的な機能障害というのを挙げております。今回、その他ということではなくて、権利条約があえて感覚的な機能障害ということを明記した理由を考えていただいて、先ほどの竹下さんからも御指摘ありましたけれども「その他」に感覚的機能をくくられるのには、抵抗があります。

それから、言語のところですけれども、これはちょっと話せば長くなるので、この短時間では議論は済まされないと思いますけれども、言語とコミュニケーションについて、簡単に言いますと、権利条約は決して、手話は言語であるという書き方はしていません。言語には音声言語、手話その他の非音声言語を含むという書き方をしているわけです。こういう文章を書いたという意味を、もう一度ここできっちり踏まえてほしい。私たちに最も密接な言語というものは、音声言語です。音声を起点とする言語です。特に日本語です。これが私たちのメジャーな言語であって、それ以外のいろいろな言語の問題が出てきて、そこで大きな問題としては、手話という視覚言語の問題が出てきて、それが書き込まれている。これは権利条約の画期的なことなので、言語はこういうものだという文章に直していただきたいと思います。

それから、コミュニケーションについて。この中身は成文化されていないので、この事務局案では手掛かりがないんですけれども、少なくとも障害者権利条約は、手話は言語であるという非常に大切なポイントを押さえて、コミュニケーションの中にはあえて「言語」としか書いていません。手話は入れていません。

これはろうあ連盟の高田さんも政府との意見交換会で御指摘されましたけれども、言語の中に、前は手話という議論があったんですけれども、手話は言語なんだから、あえて手話をコミュニケーションの中に書くのはおかしいという指摘がありました。私はそれに大賛成です。言語、手話なんていう並べ方をすると、手話が言語になった、本当に意味のある取組みをあえて無視する形になりますので、言語の中に手話があるということを当然の認識とした上で、あとはコミュニケーションの中身として手話通訳が必要とか、通訳は手話通訳という言葉があり得ると思いますので、そういうことをコミュニケーションの書きぶりの中では、もっときめ細かく議論をしていただきたいと思います。

差別については、まだ入っていませんでしたでしょうか。そこまでで結構です。

藤井議長代理 いずれも大変大事な論点をおっしゃったんですが、1つ、竹下委員との論議との関係で少し整理しておく必要があるのは、新谷委員に1つ私の方で伺っておきたいのは、竹下委員は身体的、知的、精神的というのは省きましょうという意見だったんですが、権利条約の目的条項の第2段落目では、障害者には長期的な身体的、知的、精神的、感覚的という4つを列挙していますね。新谷委員の御意見は、この4つを挙げた方がいいという意見なのか、竹下委員がおっしゃったように、もうむしろこれは取っ払ってしまおうということなのか、そこのところはいかがですか。

新谷委員 新谷です。

障害者権利条約が従来言われていた身体、知的、精神の次に、感覚的機能障害ということを持ってきた意味を考えていただきたいです。感覚的な障害というのは、非常に大きな機能障害の1つでありながら、全部身体の一部か何かの形でしか議論されてこなかったという長い歴史がありますので、感覚的機能障害ということを持ち出した意味を尊重して、是非4つ目の障害でその他があってややこしくなりますけれども、文章の座りは悪いかもわかりませんけれども、あえて感覚的な機能障害で悩んでいる方をクローズアップさせるという意味で、感覚的機能障害も入れていただければいいかなと思います。

藤井議長代理 これも表記の仕方の問題にとどまらず、深い意味を含めていますので、制度の谷間という問題にも関係しますし、これもまた議論を続けていきましょう。

では、久松委員にいきますが、その次は長瀬委員にいきますので、久松委員、お願いします。

久松委員 ろうあ連盟の久松です。発言の機会をありがとうございます。

ほかの委員の皆さんからも出されていることですので、ダブらないところだけお話ししたいと思います。

1つに「権利の実質的な確保」という言葉の使い方があります。「実質的な」という言葉の使い方について問題があるという意見、それは私も同じですが「権利の確保」という言葉の使い方も、ちょっと違和感があります。

今まで権利の保障という使い方で議論を積み重ねてきて、国民の皆さんにも、権利を保障するという考えへの理解が、かなり浸透してきたと思います。権利を保障するという言葉の使い方の方がなじみがあるので、その方向で言葉の使い方を検討してもいいかと思います。

比較的、何々的という使い方が多いので、この的という使い方をすると非常に、これはどういう意味なのかという議論が、また新しく出てくるのだろうと思いますので、余り何々的という言葉は使わない方がいいのではないかと考えます。

次に新谷委員からも説明がありましたが、今回の基本法の改正で、基本的理念のところに言語とコミュニケーションの2つの言葉が入って、1つの同文のイメージになって出されています。

権利条約では、言語の定義とコミュニケーションの定義、2つ分かれて入っておりますが、今回の定義の中には「障害者の定義」「障害の定義」となっていて、理念の中に言語、また、手話、その他のコミュニケーションに関する文言がまとまって入っています。読んでみて、読みづらいといいますか、そういう感じを受けています。

今、議論が出されているところですが、言語全体の中で手話をどう位置づけるかという議論、考え方の発想がどういう発想なのかという御説明がないと、こちらも話しづらいところもあります。例えば日本人に対して、日本語とは何ですかと聞くことは普通ないですね。これは逆に、私は手話を使っていて、あなたにとって手話は何なのかと聞かれるようなものです。今まで手話は言語的に劣るとか、言語ではないという言い方で、昔からそういった議論が繰り返し出てきています。日本語は言語かと問われても、言語とは何なのかという整理もない状態で話が進んでいると思います。

今、実際に国内の言語学者で、手話は言語であるということに対して否定をする人はだれもいません。言語学に関する本にも、ほとんど手話が載っています。また、世界の言語学者も、手話は言語であるという考え方を否定する方はいません。

今、権利条約の言語の定義の中に、音声言語、手話、非音声言語というように言葉の整理がされています。できるだけ権利条約の定義に沿った内容で表記するべきではないかと思います。

また、誤解があるようですので申し上げたいのですが「双方向のコミュニケーション(意思疎通)」に対し、配慮しなければならないという言葉の使い方はなじまないと思います。なぜならば、配慮するというのは、例えば福祉サービスでいうと受ける客体になります。「双方向のコミュニケーション」という場合、主体としての位置づけになります。例えば聞こえる人も聞こえない人も、手話通訳を介してコミュニケーションをする。コミュニケーションをするのは、聞こえない人だけではなく、聞こえる人も、手話のわからない聞こえる人もコミュニケーションの主体なわけです。その辺のところを間違わないように整理していく必要があると思います。

以上です。

藤井議長代理 長瀬委員、尾上委員、北野委員、佐藤委員の順番にいきますので、長瀬委員、お願いします。

長瀬委員 ありがとうございます。東京大学の長瀬です。

私からは2点申し上げたいと思います。1つは、2ページ目の方の基本的理念の条文イメージの2の、条約ですと19条の地域生活に関連するところで、今の条文イメージのところで、「すべて障害者は、障害者でない者と等しく、自らの判断により地域において生活する権利を有する」というところです。

ここで「自らの判断」というところが、自己決定を過度に強調するということを心配しています。これは例えば、条約交渉の過程で、24条の教育のところで、当初選択という言葉が入ったのですけれども、選択ではやはり弱いとなりました。それはこの条約の第3条、一般的原則のところで、社会への完全かつ効果的な参加及びインクルージョンという一般的原則を掲げています。そこに近づくためには、選択や個人の判断ということに過度に頼らずに、基本的には私たちの社会がこの条約を実現することで、社会への完全かつ効果的な参加及びインクルージョンに近づけるという大目標があると思います。それが富士山の山頂だと思います。

そこに近づくときに、これは12条の法的能力の議論とも関連すると思いますが、過度に「自らの判断により」というところを強調するのは、ちょっと心配があるというのが第一点です。

第二点目は、次の3番のところで、先ほどから議論になっている言語やコミュニケーションに関するところです。先ほどからの議論をお伺いしていてもそうですし、また、ここを読んだときに、これも条約交渉の過程で何度も繰り返された点で、世界ろうあ連盟の代表の方が言語について主張をされて、竹下さんがおっしゃったような点字に関するようなところの話が、世界盲人連合からよく出されて、これはろうの方たちと盲の方たちが本当によく、最終的には非常に合意された点ですけれども、やはり言語としての手話というものと、点字という日本語の表記の1つの形、この2つのものは、根本的に違う役割があります。それぞれ非常に重要な役割があるけれども、根本的によって立つところが違うということがあると思いますので、この3の基本的理念のところで、言語というものとコミュニケーションというのを並べる形で扱うことは、誤解を招く心配があるのではないかと思います。

勿論、手話については、例えば私のように音声言語を使う者が主体となって、手話を話す人たち、そして手話を徹底的に抑圧してきたという過去を忘れることはできません。その意味で、この条約の中、そして、それに従う形での基本法の中で、手話が言語であるということを明記することは、絶対に必要だと思います。

ただ、その扱い方は、ほかの方からも出されていますように、コミュニケーション全般という文脈の中ではなく、手話がきちんとした言語であるということを認めるということと、障害者のコミュニケーションの確保の必要性、それぞれ適切な別の文脈で取り上げた方が適切ではないかと思います。

以上です。ありがとうございます。

藤井議長代理 ちょっと確認なんですが、1点目の大変大事な御意見は「自らの判断により」を取った方がいいという御意見ですか。

長瀬委員 長瀬です。ありがとうございます。

私はやはり、この一般的原則がインクルージョンであるというところから考えて、地域において生活する権利を有するというところで、多分十分ではないかと思います。なぜなら、その後の方で「自らの決定に基づき」というところもあるため、ここで2つ重ねる必要はないのではないかと。もう少し詳しく検討する必要はあるとは思いますが、基本的に、余りに「自ら」、「自ら」というのが入っているために、個人の自己決定のところに過度に傾き過ぎているのではないかという心配をちょっと抱いています。

藤井議長代理 わかりました。

それでは、尾上委員、どうぞ。

尾上委員 ありがとうございます。DPIの尾上です。

3点ございまして、1つは目的、または前文ということになるかもわかりませんが、今回の障害者基本法の抜本改正というのは、この間の障害者制度改革の議論を受けてのものだと思います。

この障害者制度改革というのは何のためかというと、言うまでもなく、障害者権利条約の批准あるいは完全履行ということが目的だと思いますので、障害者権利条約の批准ないし完全履行に向けて云々ということを、前文なり目的に入れるべきではないかというのが1点でございます。

2つ目は定義のところで、何人かの方からも御指摘のあった部分ですけれども、この条文のイメージのところで、ちょっと書きぶりとして何々的を余り増やすとよくないのではないかという御指摘もありましたが、むしろここは何々的というのをもっと増やすべきだとう意見でございます。

権利条約の訳文では、身体的、精神的、知的または感覚的な機能障害により云々というふうに、特に身体的という言葉が入っています。日本ではもう既に実定法で、例えば身体障害者とは何々であると規定をされて、法律用語でいう身体障害というのと、権利条約でいう身体的障害の間には、やはりずれがあるということからしますと、何々的という言葉にこだわるようですけれども、身体的障害、知的障害または精神的障害、それに加えて感覚的障害という、できるだけ権利条約の条文を尊重したというか、引っ張ってくるような形にした方がいいのではないかというのが2点目でございます。

3点目が1の目的、あるいは3の基本理念に関わることになるかと思いますが、先ほどの大谷委員の方から出された共生社会の定義に、基本的に賛同というか、支持する立場で発言をしたいと思いますが。今回の目的の条文の中で「国民が分け隔てられることなく」と今のイメージで書かれているのは、非常に重要なポイントだと思うんですが「分け隔てられることなく」ということに加えて、これは大谷さんの方の資料では、例えば合理的配慮や必要な支援の充足を通じてというところがポイントかと思っています。合理的配慮や必要な支援の充足を通じて、地域社会でともに生活することが確保されるという、共生社会の定義、目指すべき社会の定義ということを、是非とも入れてほしいなと。

なぜならば、共生社会というのがどうしても日本の場合、実質的な中身を余り問われないまま、みんな一緒にという非常に情緒的な感じで共生社会が理解されてきましたが、情緒的な問題ではないんだと。つまり、先ほどの実質的な権利をどう確保していくかという問題だということで、共生社会、その中でとりわけ合理的配慮や必要な支援の充足を通じてという部分を、わかるような書きぶりを何とか条文に入れ込みたいなと思います。

以上です。

藤井議長代理 それでは、北野委員、どうぞ。

北野委員 まず最初に、このような踏み込んだたたき台をつくっていただきました事務局の方の、御苦労を多としたいと思っております。

私の方は定義の部分と、地域で暮らす権利の部分の2つのことで意見を言わせていただきます。1つは「障害の定義」なんですけれども、私は1番の「障害の定義」がそもそも要らないのではないかと思っております。といいますのは、例えばアメリカのADA法でいいますと、現在の心身の機能障害というものだけではなくて、かつてそれがあった場合と、あるいは、そういうふうに見なされている場合も入っておりまして、つまり、社会との関係の中で障害というものを定義しておりますので、現在の心身障害だけで規定するのは、私はよくないと思っています。

ですから、もう2番だけを使って、障害者の定義を「心身機能の障害と社会における様々な障壁との相互作用により」という表現で、もう少しすっきりされたらどうかと思います。

それから、継続的というのはどこまで考えるかとか、いろいろ難しい問題もあるんですけれども、これはまた後で佐藤先生の方から御説明してもらうことにして「相当な制限」という表現にするのか、むしろ制限を受けるために何らかの支援を必要とするということを、障害者の定義にするのかと。この辺は検討していただければと思っております。これが1つ目です。

それから、もう一つは「すべて障害者は、障害者でない者と等しく、自らの判断により地域において生活する権利を有するとともに」という、これは全く長瀬委員がおっしゃるとおりでありまして「自らの判断により」という表現は、私は是非とも削除していただきたいと思っております。といいますのは、アメリカのADA法では、1999年にオルムステッド判決において、自らそれを望まない場合を除いて、地域で暮らす権利を保障するという判決が出てきております。なぜこういう判決が出たかといいますと、これまでさまざまな選択肢や選択権を奪われていた障害を持っている方々に対しては、今までの経験だけでは選択や判断が困難であるという問題が1つあることと、もう一つは、判断することが困難と見なされている障害者が、地域で暮らす権利が奪われないためにも、是非ともこの表現は削除していただきたいと思っております。

あと、最後に「社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を有するものとする」という表現は、機会を有するためにはさまざまな支援が必要になってまいりますので、この活動に参加する機会ではなくて、活動に参加する権利を有するものとするという、権利という表現に変えていただければと思います。

以上です。

藤井議長代理 それでは、佐藤委員、どうぞ。

佐藤委員 日本社会事業大学の佐藤久夫です。2点ほどあります。1つは、今の定義の問題ですけれども、私も竹下委員が言われたように、身体、知的、精神というのを取った方がいいのではないかと思います。

それから、この定義、つまり提案されているものは、障害の定義を機能障害で定義するという考え方ですので、権利条約の障害の考え方と全く違いますので、権利条約を批准するときに、もう一回これを改正しないといけなくなってくるのではないかと思います。

権利条約では、長期にわたる多様な機能障害と、環境の障壁との相互作用の結果、参加が困難になっている状態のことを障害と言うということで、機能障害と障害の区別、インペアメントとディスアビリティーの区別というのを明確にしているので、それと矛盾するような定義というのはまずかろうと思います。

2番目の点は、北野委員が言われたことと同じですけれども「継続的に」と「相当な」という二重の制限は適切ではないので、一時的なものは勿論、支援サービスについては一時的なものは要らないけれども、差別禁止のような場合には一時的なものであっても保護の対象にしなければいけないということもあったりするので「相当な制限」ということだけで「継続的に」という表現は削除するべきではないかと思います。

それと、大谷委員が提案された共生社会とその定義は、私も大変賛成です。しかし、今の日本の社会では、共生社会という言葉は相当広い文脈で政策的に使われていますので、障害の視点、障害者の領域だけから定義をするというのは、ちょっと適切ではないのではないかと。障害者基本法の中だから、それでもいいのかとも思われますけれども、より広い概念として、例えば先ほどの、今日配られた大谷さんのたたき台の中の「すべての障害者が社会の対等な構成員として位置づけられる」という部分は「障害者を含むすべての人が社会の対等な構成員として位置づけられている」というふうに変えるとか、2行目の「障害の有無に関わらず、差異と多様性が尊重されて」という部分は、性、年齢、障害の有無、その他の属性に関わらず、差異と多様性が尊重されてという形で、障害者基本法がほかにも使えるような共生社会の定義を提案すると。そういうリーダーシップを障害者領域が発揮するということで、この方が望ましいのではないかと思いました。

以上です。

藤井議長代理 1つ私の方であえて伺っておきたいのは、恐らく定義に関しては、このメンバーの多く、恐らく全員に近いと思うんですが、制度の谷間を生んではいけないということは、もう一致だと思うんです。しかし、新谷委員から感覚的ということを、ここで言葉が生成された経緯があるんだと、意味があるんだということを、尾上委員からも何々的という言葉を含めて、この場合には幅広くということで、権利条約の使い方を踏襲すべしという意見もありました。

佐藤委員はそういう点でいうと、むしろ制限列挙ではありませんけれども、全部取っ払うという御意見だと思うんですが「感覚的」辺りが入ってきた重みということの経緯に対して、どんな御意見をお持ちですか。

佐藤委員 その経過をちょっとよく知らないので、何ともお答えできないんですけれども、英語圏の文献などですと、身体的、感覚的障害というのは分けて使う習慣が結構あるんだろうと思うんです。physical andとか、physical or sensory disabilityということです。

しかし、日本の場合には、身体障害の中には肢体不自由だけではなくて、目だとか耳の感覚の障害も身体障害という言葉の中に入っているので、余りそれを分けるという習慣がこれまでなかったという、習慣と文化の違いなのかなと思うんですけれども、おっしゃるように、もっときちんとした別の意味があるのかもしれません。よく勉強していないので、その辺はわからないということです。

藤井議長代理 これも継続します。

時間が大分きているんですが、もうお二方が御発言で手が挙がっていますので、一旦これを打ち切って、次に進みます。大濱委員と土本委員で一旦、このコーナーを終わります。

では、大濱委員、どうぞ。

大濱委員 大濱です。ありがとうございます。

目的のところにある、アンダーラインを引いていない現行基本法からの文章の、下から4行目ですね。「基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに」という文章がそのまま基本法案に残っています。この「国及び地方公共団体の責務が明らか」ということになると、国の責務はここまで、地方公共団体の責務はここまででいいだろうという裁量的内容となる。やはりこれはまずいので、大谷委員がおっしゃられたように、これは目的のところもそうですが、前文なりにきちんと、これは国の義務であるということで位置づけてもらわないと、この国の責務を明らかにするというのは、義務に変更していただきたいというのが1点目です。

それと、先ほどの障害者の定義については、私は列挙すべきだとは思っております。

もう一つ、言語の問題が出ましたが、非音声言語という言葉を、やはりここできちんと入れていただいた方がいいのではないかということです。

最後になりますが、地域における生活のことですが、これはインクルーシブということなんですけれども、特定な生活様式を義務づけられないという1項目は、きちんとこの中に入れていただきたい。

以上です。

藤井議長代理 では、土本委員、どうぞ。

土本委員 土本です。今までの意見を聞いてきたんですけれども、やはり説明する支援がないと、基本的に法も含めてなんですけれども、まず、だれの法律なのかということを含めて説明しないと、自分たちの仲間には入ってこられないし、説明する支援が、この法律のことも知らないと、説明はしてこないのではないかということも含めてなんですけれども、いろいろな場面でコミュニケーションも含めて、認知、認識、コミュニケーションに困難を抱えている問題もあるので、そういうところも含めて、言葉と文章にするときにどうやって入れていくのかが、これからの作業と思うんですけれども、なるべくわかりやすいことを含めて、説明できる範囲内でやっていければいいのかなと思います。

以上です。

藤井議長代理 本当に難しい話をしているんですね。今、土本さんの方で、持ち帰って云々ということもあったけれども、こういう場においても、私は半分自己矛盾で、時間の範囲でと言いながら、やはり極力みんながわかり合えるようにという説明を十分にした上で、議論をするということを心がけましょう。ゆっくりというのと、精一杯わかりやすく伝えようという努力をするという辺りは、この場でも共有していきましょう。

では、関口さんはこの時間でなくてはいけないでしょうか。

では、あなたは2回目ですから。

関口委員 済みません。聞いていて思ったんですけれども、障害者基本法ですね。何で障害の定義なのかというのがよくわからなくて、つまり条約では障害者の定義、障害者には何々を含むという形になっていますね。

障害は発展しつつある概念だからとなっていますね。尾上さんが言ったことは私は全面的に賛成なんですけれども、条約はかなり年月をかけてつくられたものですから、そこにはそれなりの意味があるだろうと思うんです。ですから、障害者基本法をこの短い間に検討しようとするならば、なるべく条約に準拠した形でやった方がいいのではないかと思います。

勿論、条約の中には障害に基づく差別ということが出てきます。これはまさに、障害に基づく差別であって、障害者に基づく差別ではないんです。ですから、そこは概念を分けて考える必要がある。何か今、話を聞いていると、その辺がごっちゃになっている気がします。

以上です。

藤井議長代理 それでは、多分まだ発言していない人もいると思うんですが、先ほど東室長からありましたように、事前の意見聴取、更に意見を出してもらうことを含めて、次回にとなりますので、この件は今日はここで一旦終わります。次回にまた文書等を含めて、つなげ合うと。

相当深い論議をまた今後もしていく必要がありますので、お互いにまた考えていきましょう。

今から15分間なので、14時20分まで休憩に入ります。

(休憩)

藤井議長代理 第二コーナーに入る前に、今、第一コーナーの1~3、総則部分の条文イメージ素案ということで議論したんですが、東室長からの発言を求められていますので、第一コーナーに関して東室長、どうぞ。

東室長 担当室長の東です。若干、今、お出しになっていただいた意見につきまして、もう少し内容を深めたいと思いますが、時間がありませんので、ちょっと確認だけ。

今日回答をいただくということよりも、次回の書面の中で答えていただければありがたいと思うんですが、1つはまず、定義のところの障害ですけれども、これは確かに権利条約の前文の1項を見ますと、社会モデル的なことも入っていますけれども、あそこはdisability is・・・(ディスアビリティー・イズ・・・)と書いてあるんです。このdisability (ディスアビリティー)を日本語でいう障害というものと同視していいかどうか。そこを若干、どなたが御意見があれば書いていただきたい。

定義でいうところの障害は、どちらかというと、事務局から出されているインペアメント的な感じに近いと思うんです。それで、そこら辺の関係が整理できる方は整理していただきたいということと、仮にインペアメントを日本語に訳する場合に、ここでは「心身機能の損傷」とありますけれども、この「心身機能の損傷」という言葉でいいかどうかという点も、どなたか御意見があれば伺わせていただきたいと思います。

それと、先ほど北野委員と長瀬委員の御意見の中で「自らの判断により」という部分は削除した方がいいという御意見でしたけれども、それに続けて文案のイメージの案としては、2行目に「自らの決定に基づき」という部分があるわけです。これは残していいかどうかという点は、どうお考えなのか。そこもお考えがあれば聞かせていただきたい。

それと「支援」という言葉について、ほかにもいただいていましたけれども、竹下委員から「支援」という言葉よりも「権利の保障」であるべきとか、「確保」という言葉ではない「権利の保障」みたいな言い方がいいという久松さんの意見もありましたけれども、条約上「確保」という言葉は使われているわけです。「促進・保護・確保」です。「確保」という言葉も使われておりますので、条約との関係でそういう言葉がいいのか悪いのか、御意見があれば伺いたいということです。

以上です。ほかにもあったら、また後で聞きますので、よろしくお願いします。

藤井議長代理 では、少なくとも、それぞれの出す書面の中に、今の3つの点でお答えできる方がいれば、明文化して書面で出してほしいということなので、みんなで協力し合って、考え合っていきましょう。

それでは、第二コーナーに入りますが、時間が10分以上押していますので、15時5分を目途に第二コーナーを進めてまいりますけれども、ここは今から齊藤企画官から「4.差別の禁止」に始まって、最後の「11.障害者基本計画等」までいきますけれども、このコーナーの終わりの方で、以上の1~11までには入っていない、これは入れるべきであるという辺りもあると思うんです。したがって、できれば10分ぐらい余らせてと思っていますので、その辺も含んで、時間の配分等を考えて御発言願えればと思います。

それでは、齊藤企画官、お願いいたします。

齊藤企画官 わかりました。では、できるだけ手短に御説明いたします。

3ページの「4.差別の禁止」からでございます。まずは条文イメージの「(1)何人も、障害を理由とする差別(障害者が、障害者でない者と実質的に平等に活動することを可能とするため、個々の場合に必要となる合理的な変更又は調整が実施されないことを含む。以下同じ。)その他の権利利益を侵害する行為をしてはならないこと」ということで、合理的配慮を実施しないことが差別に含まれるということを規定しようとしているところでございますが、こういった書きぶりで果たしてよいのかどうなのか、更に検討・精査が必要だと思ってございます。

また、併せまして、条約上は「均衡を失した、または過度の負担を課さないもの」という記述がございます。その部分は、現在の条文イメージではまだ十分に表現できていないのではないかと考えてございまして、この部分は施行されれば直ちに作為義務を課すような規定となってございますので、社会的な影響をどのように考えるかについても、更に慎重に検討する必要があると考えてございます。

次の(2)でございます。「国は、障害を理由とする差別の防止に関する普及啓発を図るため、障害を理由とする差別に該当するおそれのある事例の収集、整理、及び提供を行うものとすること」ということで、この部分は事例の収集等の規定を新設するものでございます。その必要性や具体的な内容について、更に詰めていく必要があると考えてございます。

次の「5.国民の理解」及び「6.国際的協調」に関しましては、他の基本法などを参考にいたしまして、規定の整備をしているところでございます。「5.国民の理解」に関しましては、これまで漠然と「国民の理解」と書いていたものをより明確にするため「第三条に定める基本的理念に関する」というものを追加してございます。

「6.国際的協調」に関しましては、新設の条文でございます。男女共同参画社会基本法などに、こういった国際的協調の規定がございますので、それを参考に書いてみたところでございます。

次のページにまいります。「7.国及び地方公共団体の責務」でございます。こちらも支援という言葉を使ってございますけれども、この部分に関しましては、ポイントに書いてありますように「障害者の福祉を増進する」というものを削除したのみでございます。

次の「8.国民の責務」ですが、条文イメージとして「国民は、障害の有無にかかわらず、分け隔てられることなく相互に個性と人格を尊重する社会を実現するため」ということで「1.目的」のところに書きました「実現すべき社会」というものを、わかりやすく、それに合わせて書き換えたところでございます。

続きまして「9.障害者週間」でございますが「国民の間に広く障害者の権利の擁護及び障害者に対する差別の防止についての関心と理解を深める」というふうに、目的の見直しをしてございます。当初は「障害者の福祉」と書いてあったところでございます。

続いて「10.施策の基本方針」の(1)でございます。「障害者に関する施策は、障害者の自立及び社会参加を困難にする社会的な要因を除去する観点から、障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されなければならないこと」ということでございまして、社会モデルの観点を盛り込むために「障害者の自立及び社会参加を困難にする社会的な要因を除去する観点」ということを追加してございます。併せまして、本会議で多数御指摘をいただきました、女性とか生活の実態といったものを追加してございます。

次の5ページ目でございます。(2)では「制度の谷間を生まない支援の明文化」ということでございまして、具体的には条文イメージにありますとおり「障害の種類及び程度による支援の格差が生ずることのないよう配慮がなされるとともに」と追加をいたしてございます。併せて「自らの判断」と、先ほど御議論いただいたところを再度追加してございます。

次に(3)でございます。「障害者に関する施策を講ずるに当たっては、障害者その他の関係者の意見を聴き、当該意見が尊重されなければならないこと」ということでございまして、当事者意見の反映の条項を新設することを書いてございます。

最後に「11.障害者基本計画等」でございます。これはもともと「福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策を総合的かつ計画的に推進する」となっているところの部分を落としてございます。

ペーパーは以上でございますが、このほかに現行基本法の9条に、以下はこの後御議論いただきます推進体制と連動した規定になってございますので、今後検討いたしたいと思ってございます。

それから、検討した時点で、特に改正を要すると思っておりません「法制上の措置等」という条文と「年次報告」という条文は、改正のイメージでございますので、ここには盛り込んでございません。

私の説明は以上でございます。

藤井議長代理 条文イメージの素案ということで、今「4.差別の禁止」から最後の「11.障害者基本計画等」というところで、改正部分ということの条件でお話がありました。極力多くの皆さんに発言してほしいので、発言していない方を優先したいと思ってはいるんですが、まず、時間の関係もあるので、発言をどうしてもここでしたいという方は、挙手をしていただけますか。

11人ですか。どうしてもですね。

それでは、1人3分では多過ぎるので、できれば2分半ぐらいでと思っています。結論から言ってください。

では、新谷委員からいきましょう。

新谷委員 新谷です。まずは「国民の責務」と「国民の理解」のところなんですけれども、内容が非常に重複していて理念的な、言葉だけの条文になっていると思いますけれども、前も提案したかもわかりませんけれども、国連障害者の権利条約の第8条の「意識向上」は、もっともっと具体的な内容を書き込んで、国民は何をしないといけない、マスメディアは何をしないといけないと、具体的に書き込まれています。

もともと、この基本法というのは、基本的に国民に対する、名あて人は国民ではない、国民に義務を課すものではないので、国民に対して訴えるものは、あくまでも「意識向上」。それが漠然としたものにならないように、もう少し具体的なイメージを書くということで、障害者権利条約も非常に工夫したと思います。8条は非常に豊富な内容になっていますので、是非あれを見直して、書けるものは基本法に書き込んでいただきたいということがあります。

それから、現行法の第10条の「法制上の措置」について全然触れられていないんですけれども、これは現行法をそのまま置くという意味合いでしょうか。地方自治体や国の責務のところと関係しますので、第10条の「法制上の措置」をそのままにしておけば、国とか自治体の責務というのは非常にあいまいというか、空文化する恐れがありますので。

前回も発言させていただきましたけれども、基本法というのは行政各部に対する強制力を持つ形の条文に改める。ほかの教育基本法とかのように、必要な法律を制定するとか、財政上の措置をするとか、そういう書き方が必要ではないかと思います。改めての提案です。

それから「調査・統計」のところが非常にあいまいな文章しかないんですけれども、前回議論したところのレベルは、国及び地方自治体は障害者に関する定期的、継続的な実態調査、統計を実施して、障害者に関する施策の策定、実施は、一般国民と比較可能な障害者の生活実態に基づいて行わなければならないという、非常に中身のある内容を議論したと思います。

ですから、単なる調査とか統計で終わらずに、もう少し施策に結び付く具体的な内容を書き込む必要があるのではないかと思います。

ほかにもありますけれども、赤ランプがついていますのでやめます。

藤井議長代理 それでは、今の法制上の措置は、先ほど齊藤企画官の方から現行法でということだったんですが、今のお話の趣旨は、現行法でいった場合に矛盾あるいは不十分さが出てくるのでということもあったので、更にこれもまた、今後に向けて考えていきましょう。

もう一回手を挙げていただけますか。

では、森委員、松井委員、長瀬委員、大濱委員の順番でいきます。森委員、どうぞ。

森委員 日身連の森でございます。どうもありがとうございます。

3点ぐらいだと思うんですけれども、これは出ましたけれども、基本法を改正する根本は、権利条約の精神に則るということなので、これが第一点ですね。

第二点目は、障害者を権利の主体と認めるということです。そこで1つは、権利義務の関係で整理しなくてはいけないのではないかと考えております。

第三点目は、今までの基本法というのは、他の法律との位置づけはよくわかっていないんです。ですから、今回は、日本の障害者関係の法律は基本法が中心になりますというものが出てこないかなということです。

もう一つは、23年に基本法を改正する。次いで24年には総合福祉法。次いで25年に障害者差別禁止法が出ている。このことはわかっておりますが、我々が一番あのときに反対していたのは、差別禁止法というのをどこかに出してくれないかということを言っていたと思うんですが、これはどこかの規定、後ろの方でも結構でございますけれども、政権が替わったとしてもそれは続くんですということを明示しておいてもらいたい。

以上です。

藤井議長代理 それでは、松井委員、お願いします。

松井委員 松井です。ありがとうございます。

2点発言したいと思います。1点目は「4.差別の禁止」の中で、合理的配慮ということの表現を変えて「合理的な変更又は調整」という形になっていますけれども、御承知のように、労働政策審議会障害者雇用分科会ではこの問題について、それこそ何回にもわたって議論しているんです。推進会議では時間がないため、合理的配慮を国内法的にどのように位置づけるのかということについての議論まではできていませんが、少なくとも、合理的配慮というのを「合理的な変更又は調整」というふうに、日本語にすれば同じかはわかりませんけれども、そういう言い換えでいいのかどうか。

少なくとも権利条約では、合理的配慮には、ここで抜けている「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」というのがセットで入っている概念なので、言い換えてしまうと、そこの説明をきちんとしないとなかなか、合理的配慮とイコールであるとはならないのではないかと思います。

2点目は国際的協調です。男女共同参画社会基本法では国際的協調という表現になっているようですけれども、御承知のように、権利条約の第32条では国際協力という表現になっていまして、その中身としては、インクルーシブ協力、つまり障害を配慮した国際協力をすすめる必要があるということが書かれているわけです。国際協力と表現するには、いろいろ難しい問題があるのはわかりますけれども、国際協調ではあくまで国内向けとしか読めない。そういう意味では、インクルーシブ協力という点をどう加味するかということについても、検討する必要があるのではないかと思います。

ありがとうございました。

藤井議長代理 それでは、長瀬委員、どうぞ。

長瀬委員 長瀬です。ありがとうございます。

まず、最初に「4.差別の禁止」が入っているのは非常にうれしく思いますが、内容につきまして、今回社会モデルがベースということを考えますと、いわゆるみなし規定、つまり、障害者と見なされることによって不利益を受けるということも、障害を理由とする差別であるということを、明確に言葉として、この第四のところに盛り込んでいただきたいと思います。それが第一点です。

第二点が、今、松井さんもおっしゃった点ですけれども「6.国際的協調」は私たちが主張して、今回新設されるということで御提案をいただいていることを非常にうれしく思いますけれども、権利条約に則って、国際協力ということを明確に打ち出していただいた方がいいと思います。

国際的協調というのは、どうしても国際的流れとか、そういうふうに引きずられることもあるかと思いますけれども、障害分野の歴史を考えたときに、優生学や優生思想が国際的な主流の流れだった時代があります。手話を禁じて、口話を中心ということが国際的な流れだったことがあります。そういうことを考えますと、この条約の文脈のことを考えたときに、国際的協調ではなくて、国際協力の方が望ましいと考えます。

あと「10.施策の基本方針」のところで、性別が入っているのは非常にうれしく思いますが、性別ないしジェンダーのところをもう少し強調するような形では何かできないのか、もう少し自分でも考えたいと思います。

最後になりますが「11.障害者基本計画等」のところで「福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策」の削除というのは賛成です。

ありがとうございます。

藤井議長代理 大濱委員、どうぞ。

大濱委員 大濱です。この「差別の禁止」のところなんですが、この中でもう少し強調していただきたいのは、現実的に差別がある女性の問題、あとは障害児。これは日本では相当政策的に遅れていると思われます。この部分は、できればこの中に法的な差別を受けている女性問題と、障害児の問題。先ほども優生思想の話もありましたが、障害児の問題を入れ込んでもらいたいということが1点です。

2点目は、先ほどから申し上げているように、7番と8番。「国民の責務」より、むしろ「国及び地方公共団体の責務」とありますが、これはきちんと、国に具体的な施策を義務づけるような形での文言に書き直していただきたい。

以上です。

藤井議長代理 では、川崎委員、どうぞ。

川崎委員 ありがとうございます。精神障害者の家族会の川崎です。

今、大濱委員が言われたように「国及び地方公共団体の責務」のところで、精神障害者の立場で意見を申し上げたいと思います。

実は、制度間の格差というのが大変残っておりまして、精神障害に対しては、今まで制度がなかなか進まなかったこともありますけれども、例えば手帳のサービスにしても、それから、雇用につきましては、雇用率がまだ義務化されていないこととか、特に大きな問題としては、医療法における大きな差別法があります。こういう障害による差別でなく、制度による格差、差別は国、地方自治体の責務として、ないようにすべきということを、私ども精神障害の立場としては、大変強く意見いたしたいと思っております。

以上です。

藤井議長代理 これは大変大事なことです。

川崎さんが今「国及び地方公共団体の責務」の方でおっしゃったけれども「差別の禁止」の中で、そういうことを触れる必要はないんですか。

川崎委員 差別といいますと、どうしても障害の差別ということになると思いますけれども、この制度間の差別ということはここで明記していただきたいということが、私どもの考えです。

文書を付けております。

藤井議長代理 項目10の(2)で少し触れてはいるんですが、これでは不十分というのが今の川崎委員の認識ですか。

川崎委員 はい。そうです。

藤井議長代理 では、更に深めていきましょう。

遠藤オブザーバーまでいって、また後半で手を挙げてもらいます。遠藤オブザーバー、どうぞ。

遠藤オブザーバー ありがとうございます。経団連の遠藤と申します。

1点だけ申し上げさせていただきます。差別禁止の条文イメージの第1項に関わる部分であります。

まず、御指摘もございましたように、今後創設される差別禁止法を始めといたしまして、既存の法律もございますので、その関係を整理しつつ議論を深める必要があるということです。その上で整理ができればという前提に立ち、この括弧書きで何々を含むという形で書いてございますけれども、御承知のとおり、大変影響度合いの大きい、しかも新しい概念であるということを踏まえますと、やはりこれは条項を書き分けて整理する必要があるのではないかと考えております。なぜならば、今後国民の皆様方の理解を得るべく、周知を十分に図っていくということが必要になってくるからです。

以上でございます。

藤井議長代理 やはり書き分けた場合、これは大分意味が変わってくるんですか。

遠藤オブザーバー いえ、効果というよりは、括弧の中の文言が長い場合には飛ばされるという傾向もございますので、これはきちんと書き分けることで明示する方がわかりやすいし、皆さん方にも伝わっていくということが一般的に言えるのではないでしょうか。

藤井議長代理 残りのまだ発言していない方で、ここで手を挙げてほしいんですが、大久保さんと、あと発言したい方は。

では、大久保さん、竹下さん、清原さんの順でいきましょう。大久保さん、どうぞ。

大久保委員 大久保です。まず、3ページの「差別の禁止」のところですけれども、先ほど森さんがおっしゃったように、差別禁止法制を含めて、差別禁止に対する施策を国が講ずる責任、責務があるという形はうたっておいて、一応差別禁止法の道筋の担保だけはとっておいた方がいいのではないかという感じがします。

それと、5ページの条文イメージの(2)ですけれども、これは新しく付け加えたのですね。「障害の種類及び程度による支援の格差が生ずることのないよう配慮がなされるとともに」の意味が非常にわかりづらい。

まず、先ほど「障害の定義」に関する議論がありましたけれども、この障害が何を指すものかということ。恐らくここでは機能障害的なものを指しているのかという感じがします。しかし、支援の格差、つまり支援のニーズで、格差が生じるということはあり得る。当然ニーズによってはということもあると思うのですけれども、つまり、ここの文章の意図がいま一つ見えないということ。

それと、先ほどの休憩前の議論の中でもありましたけれども、気になった言葉として、その3行目の「自らの判断」という言葉です。この判断という文言をなくすとかなくさないとかいうことではなくて、この判断と言ったときに、知的障害の場合はよく判断能力という使われ方がされる。法令上は権利能力とか行為能力、あるいは、権利条約では法的能力とかいろいろな言い方がされていますけれども、判断能力みたいな使い方もされていますので、この判断という言葉は、これを使うことによって、むしろ不利益を生じる場合もあるのかという気がします。

以上です。

藤井議長代理 では、竹下委員、どうぞ。

竹下委員 なるべく短く。

まず、1点目ですけれども、差別禁止規定の中で、松井先生も触れたかと思うんですが、区別という点が不完全だと思うんです。権利条約の2条が大事にしている点は4点あるんですね。要するに、不利益取扱い、合理的配慮義務、区別の禁止、更には効果主義、すなわち、主観主義ではなく、結果として差別になることの禁止。これらについて、もう少し権利法に投影するべきではないかというのが1点目です。

2点目は「国及び地方公共団体の義務」のところで非常に気になるのは、権利の擁護と書かれています。これは決して擁護ではないです。権利の保障でなかったらいけないはずです。あくまでも擁護というのは、議論や説明は避けますが、内容が違うと思います。あくまでも基本法においては、障害者の権利保障であるべきですから、ここは権利保障であって、まさに社会参加の支援ではなくて保障でなければならないし、責務ではなくて義務でなければならないと思います。

最後に当事者の意見の関係ですが、当事者の意見を聞くとか尊重するという規定だけでは極めて現状と変わらないわけでありまして、問題は当事者の意見がどう反映され、尊重されるかという問題でありますから、もっと明確に、当事者の決定段階における参加と、施行段階における参加を制度的に保障する内容にしなければならないということを、この条文上も明確にすべきだと思います。

以上です。

藤井議長代理 それでは、清原委員、どうぞ。

清原委員 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。

まず、事務局におかれましては、私たちが議論しやすいように、新設の条文あるいは項目も含めてたたき台をつくっていただいて、ありがとうございます。

私は1点に絞って意見を申し上げます。「10.施策の基本方針」というところについてです。これは、言わば施策の策定や実施、あるいは推進に関する基本方針と理解いたしますけれども、条文イメージの(1)については、いきなり大変重要な議論の反映として「障害者の自立及び社会参加を困難にする社会的な要因を除去する観点から、障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて」云々と規定されています。

しかし、これは当然配慮すべきことで、この条文があることが私は大事だと思いますが、前提といたしましては一般論として、「障害者に関する施策は本法の目的と理念の実現を図るとともに云々」ということで、当たり前のことですが、施策についての基本方針ですので、全体として、この法の目的と理念に適合的な施策をつくっていくということを、入念な規定にはなりますが、付け加えた方がよいと思います。

また、併せて(1)の重要性と申しますのは、先ほど前半の部分で、共生社会の理解の仕方ということについても議論になりましたが、障害のある方においても性別、年齢において差別があるということ、女性、子ども、あるいは高齢者に対してそのようなことがあるということがございますので、このように明確にされることが重要だと思います。

関連して最後に、10の(3)に、先ほど竹下委員も御指摘されましたけれども「障害者に関する施策を講ずるに当たっては、障害者その他の関係者の意見を聴き、当該意見が尊重されなければならないこと」と、新設の提案がございます。私も基礎自治体として、当然のことながらこういう取組みを障害者施策のみならず、例えばバリアフリーであるとか、その他の政策課題においても市民参加を求めているわけですが、計画あるいは施策の策定のときだけではなくて、実際にはそれを推進したり実現したりするときに、障害のある方の当事者の意見あるいは行動というのが重要になってまいりますので、その辺を補強した(3)にすることが、より実態にも即しますし、意義あるものになると考えます。

以上でございます。ありがとうございます。

藤井議長代理 佐藤委員から大谷委員と、順番にいきます。

佐藤委員、どうぞ。

佐藤委員 ありがとうございます。

今も出たんですけれども「10.施策の基本方針」のところでは、施策の策定と実施となっていますけれども、その評価というのを加えていただきたいと思います。

同じように、今、清原委員が言われた5ページの「(3)障害者に関する施策を講ずるに当たっては」ということに加えて、実施ということを言われましたけれども、更に評価というのも、ここでも加えるとしていただければと思います。

そうした上で、新谷委員が先ほど言われたような実態に基づいての評価ということで、実態調査というのを(4)辺りに入れるとしていただければと思います。

以上です。

藤井議長代理 では、大谷委員、どうぞ。

大谷委員 大谷です。いろいろな意見が重なっておりますので、出ていなかったところだけ順次言わせてください。

「差別の禁止」のところは、竹下委員と全く同旨です。竹下委員の例示の中に、区別を例示するべきだったということに加えて、権利条約は区別及び排除と載っていますので、排除という言葉も是非入れてもらいたい。

それから「国民の理解」のところも、新谷委員の意見と全く同旨です。意識啓発に関する詳細な権利条約の規定があるので、これをもっと具体的に盛り込んだ「国民の理解」の条項をつくるべきだと。

ちなみに、第3条に定める基本的理念となっていますけれども、現行法第3条なので「差別の禁止」も基本理念に入っているんですという趣旨で書いているのだろうと思いますけれども、当然のことながら「差別の禁止」まで含めた基本理念と私は理解したいと思います。そのように理解するべきだと思います。

それから、皆さん大分かぶっていますから、かぶっているところを除いて「国及び地方公共団体の責務」も、他法令と照合しながら、本当に事務局は御苦労なさったとは思うのですけれども、他法令と比較しても非常にあっさりしている。例えば、責務とすれば、男女共同参画社会基本法は「基本理念に則り」ということがまず明記されているんです。そして、ただ責務を有するだけではなくて策定義務、実施義務まで含めて明記されておりますので、もう少し「国及び地方公共団体の責務」というところは、基本理念との絡みで、それを実現するのだということがはっきりした条文に是非してもらいたい。これは「国民の責務」のところも一緒です。「基本理念に則り」というのは、他の法令にもすべて載っておりますので、そこは意識した書きぶりにしていただきたい。

それから、本当に全部かぶっていますが「自らの判断により」というのも大久保委員の意見と同旨で、それを言おうと思っていたところですけれども、私はこれは本当に要らないのではないかと。率直に言って、ここの条文イメージのところの「自らの判断により」というのは、かえって邪魔ではないかと思っています。

それから、(3)の「施策を講ずるに当たって」の意見聴取も、竹下委員の意見と全く同旨ですので、その点も全部踏まえてもらいたいと思います。

それと、もう一つだけ。「事業者等の責任」です。これは合理的配慮義務の義務者が一体だれなのか。これは雇用、教育においては事業者、学校設置者等が入ってきますので、本法においては必ず「事業者等の責任」を入れていただきたい。環境基本法においては「事業者等の責任」は非常に詳細に定められていますので、それも是非参考にしていただきながら書き込んでいただきたい、書き込みたいと思っています。

それから「障害女性に対する配慮」と「障害児の権利」は、障害児支援の具体的な作業部会が立ち上がりますので、それを踏まえて、また意見を出させていただきたいと思います。

以上です。

藤井議長代理 関口委員、どうぞ。

関口委員 「差別の禁止」のところです。これは条文的には、後にできる障害者差別禁止法を担保する条文になると思われます。

そして「障害に基づく差別とは」というのは、条約では5行にわたって書いてあります。これがわずか4行になっているので、そのことによって私が一番恐れるのは、例えば「すべての人権及び基本的自由を認識し、共有し、または行使することを害し、または妨げる目的または効果を有するものをいう」と言うと、精神障害者差別は全部入るんですけれども、ここに書いてある4行では、精神障害者差別は多分抜け落ちる部分があるのではないかと、非常に危惧しています。

ですから、そこのところは最終的に、障害者差別禁止法を担保する条文であるということを踏まえた上で、詳細に書き込んでいただきたいと思います。

以上です。

藤井議長代理 では、北野委員、どうぞ。

北野委員 1つだけですけれども、5ページの(3)の条文イメージのところなんですけれども「障害者に関する施策を講ずるに当たっては、障害者その他の関係者の意見」と書いてあるんですけれども、これまでの委員会で「障害者その他の関係者」以外の委員が入っている委員会というのはないんです。つまり、すべては「障害者その他の関係者」が入っておりますので、これではだれのことか全く理解できないことになりますので、これは「その施策に関係する障害当事者」と明確にされた方が、関係者と言いますと全員入ってしまいますので、少しその辺は当事者性を明確にされた方がいいと思います。

以上です。

藤井議長代理 挙手をしていて、まだ発言していない方はどなたですか。

それでは、残り数分あるので、今、大谷さんも述べられたんですが、全体を通して1~11の条文イメージの素案が述べられて、議論しました。

今、大谷さんが言われたこと以外で、事業者とか女性のこととか以外で、これは欠落している、抜け落ちているという点があったらと思うんですが、これに関する御意見はございますか。いいですか。

勝又委員、何かございますか。

勝又委員 御指名ですが、勝又です。

先ほど幾つか出ていましたけれども、実態調査も出ていたと思います。「実態調査についてやるように」ということも抜けていると思います。

藤井議長代理 それも基礎的な課題の第一次報告の中では入っていましたので、新谷委員、佐藤委員のことを受けながらということですね。

では、東室長から発言を求められていますので。東室長、どうぞ。

東室長 国際協調に関して御意見がありましたけれども、ここは総則で書くべきものとして議論されております。国際協力は各論の議論ですので、それはまた各論で議論があるかと思っております。

藤井議長代理 そういう書き分けを、第一次意見の個別分野の中の国際協力という表記は、また別な部分でということが今、出ていましたので、これは併せて、今後また全体の議論の中でやりましょう。

時間どおり進んでいるんですが、ほかにどうしても。

松井委員、どうぞ。

松井委員 施策の基本方針の部分に入れるべきかどうかはわかりませんけれども、少なくともこの政策を進めるに当たっての財源確保は、きちんと書いておいた方がいいのではないかと思います。

藤井議長代理 基本法の性格から、どこまで書けるかということはあるかもわかりませんが、大事な総則部分に関わってくるということですね。ほかにいかがですか。

北野委員、どうぞ。

北野委員 3ページのところで、新しく(2)で「国は、障害を理由とする差別の防止に関する普及啓発を図るため、障害を理由とする差別に該当するおそれのある事例の収集、整理、及び提供を行うものとすること」は非常にすばらしいと思うんですけれども、できましたら、防止のための総則でありますので「差別に該当する恐れのある事例、及び差別の防止に関する事例」と、支援の方の事例も入れていただければと思います。

藤井議長代理 新谷委員、どうぞ。

新谷委員 一言追加します。差別のところに間接差別、介助者や家族への差別の問題は、実質的差別という表現の中に全部入っていると理解しているんですが、はっきり書いた方がいい。特に間接差別の書き方が難しいかもわかりませんけれども、介助者や家族への差別も差別だというのは、下手をしたら漏れてしまう可能性がありますので、どこかに書き込めるのではないかと思います。

間接差別はどう書くのか、工夫が要るかもわかりませんけれども。

藤井議長代理 権利条約も大分論議のあった部分だと思います。

それでは、一旦、また先ほどのとおり、この第二コーナーも第一コーナー同様に、次回に議論をつなぐということと、書面にて提出をしていただきますけれども、東室長は、特にこの第二コーナーで、これはということはありますか。

東室長 東です。1点だけ。

国の義務という形で書くべきだという御意見がございましたけれども、責務の中には義務も入っているのかとは思うんです。正式な行政上の解釈はわかりませんが。

そうすると、義務以外の部分の、プラスα部分は省いていいという議論になるのかどうか。義務と言えないまでも、こういう方向でするという問題の範囲については切り捨てるということになるのかならないのか。意見を挙げられた方は、御意見を書面で書いていただければと思いますけれども、いかがでしょうか。

新谷委員 書面で書きます。

藤井議長代理 それでは、15時3分なので、15時20分まで休憩に入ります。

(休憩)

藤井議長代理 それでは、第三番目のコーナーに入ります。このコーナーは地方モニタリング機関に関してですが、事前に書面で意見をもらっています。3項目にわたって意見をいただいています。その特徴点をまず東さんから述べていただいてから論議に入りますので、東室長から意見等の特徴意見をお願いいたします。

東室長 担当室長の東です。この部分につきましては今、藤井議長代理から言われましたように、事前に書面がまいっておりますので、特徴等についてかいつまんで御説明申し上げます。

1.地方障害者施策推進協議会(以下「地方協議会」という。)が、障害者基本法第26条第2項に定める事務に加えて、地方の障害者施策の実施状況の監視(モニタリング)事務を担うことの必要性について、どう考えるかという点につきましては、例えば地域間格差を広げないという観点から、地方に監視機関を置くことは必要であるとか、地方への権限の移譲が進んでいることを踏まえ、地方のモニタリング事務が不可欠であるなど、その他同様の御趣旨により15名中12名が地方協議会がモニタリング事務を担う必要性があると回答されております。

ただし、少数意見としては、地方協議会にモニタリングするだけの力量があるのか疑問があるという御意見とか、地方協議会に生活上の困難を抱えている人や障害者が入るべきなどの意見のほかに、自治体には議会や監視委員会などがあって、またはパブリックコメントなど意見反映のための多様な手段がある。したがって、地方の監視機関は慎重な検討が必要であるという御意見も出されておるところであります。

次に、2.地方協議会に新たにモニタリング事務を追加することとした場合には、国が法律により地方公共団体の事務を新たに創設することになるが、このことについて「地域のことは地域に住む住民が責任を持って決める」という地域主権の考え方との関係においてどう考えるかという点ですが、これにつきましては例えば地域主権は地域の独自性を認めるのが趣旨だが、人権擁護の領域では地域によって濃淡は認められず、ナショナルミニマムの確保が必要であるとか、最低限を確保した上でプラスαは地域の実情を生かすべきであるとか、地域主権になれば一層地域住民の主体的参加が必要になり、モニタリングは大きな意味を持つとか、地方協議会の基準を前提に都道府県ごとの推進体制を考えるべきなど、その他もありますが、大体同様の趣旨と思われます。それらにより、14名中11名の委員から国が地方公共団体の事務を新たに創設することと地域主権は矛盾しないという前提で御意見をいただいております。

ただ、この点につきましても地方自治体が自主的にモニタリングを行うべきで、国が出るのは望ましくないとか、地域独自のモニタリング事項の設定は条例に任せるべきといった御意見もありました。

最後に、3.中央委員会(及びモニタリング事務を追加することとした場合の地方協議会)によるモニタリングの具体的なイメージについてどう考えるかという点でありますが、この点につきましてはさまざまな御意見が出ておりますので、少し整理して以下のようにまとめることができるかなと思われます。

第一に実態把握とか情報収集に関する御意見でありますが、その中で行政組織との関係では、関係機関への資料提出要求、報告要求、聞取り調査または省庁の壁を越えた定期的な統計報告や抜き打ちの調査などの方法によって、実態把握とか情報収集をすべきであるといった御意見のほかに、全国的な実態調査、地方協議会を活用した情報収集などの御意見も出されております。

第二に、これらの情報収集と合わせてモニタリングを有効ならしめる方策としては、4点ほど挙がっております。

1つは権利条約の実施に関する実施基準や施行細目の策定。

2つ目は国の長期的計画の策定や地域の障害者基本計画の策定。

3点目はこれらに基づく枠でしょうが、目的の設定と達成度の点検。

4点目として未達成の場合の原因や対応策の検討などが御意見として挙がっています。

次に、モニターの仕組みとして監視機関自体の評価とともに、例えば当事者モニターの養成とか、利用者や障害者団体からの意見の聞取りとか、これは国民一般だと思いますが、広く意見が出せる仕組みとか、パブリックコメントなどの設置が有用であるという御意見があります。

これらを踏まえた国の制度や市町村の制度実施状況に関する勧告などの在り方としては、まず中央レベルに関しましては国連への報告とか、国会への年次報告、行政に対しての実施状況の改善勧告や政策提言、国内法の修正に向けた提言、一定水準以下の市町村への勧告、マスコミへの公表などの在り方が意見として挙がっております。更に地方協議会レベルでは地方協議会による地方自治体の実施状況のモニターであるとか、地域住民への公表などが検討されております。

最後に第五番目ですが、委員会の構成に関してですけれども、障害者や親などを主体とした委員会構成の重要性が指摘されております。

漏れがあるかもしれませんが、委員の主な御意見は以上です。ただ、委員の中には差別とか虐待等の個別救済を目的とする、人権救済機関をイメージした御意見も随分ありました。今日ここで議論していただいているのは、あくまでも監視という点についての御意見ですので、個別救済を目的とした機関とは別個の話だということで考えております。個別救済に関しましては差別禁止法における救済の在り方とか、新たな障害者総合福祉法においても不服申立の在り方などが今後議論されることになると思うんです。勿論この2つの分野だけでは解決できないような個別救済の問題もあろうかと思うんです。ですので、そのことは別個の問題として議論していただくことになるかもしれません。

地方協議会の事務に勧告権を規定すべきか否かという点については、あまり意見がございませんでした。条約としてはモニターということで、その中に勧告ということまで必ずしも含んでいるわけではないわけです。ですから中央レベルでの勧告というのはモニターをより有効に機能させるための1つの在り方だと思いますけれども、そのような点まで地方協議会に入れることが妥当かどうかという論点があろうかと思うわけです。ですので、この点につきましては次回も議論がなされる予定ですので、御意見がございましたら次回にお願いしたいと思っているところです。

以上です。

藤井議長代理 それでは、第三コーナーは地方モニタリング機関というところで、今もありましたけれども、地方協議会についての議論は勧告権を含めて次回、10月の下旬で議論になるんですが、主にここは地方に論点を置いて議論をするということですけれども、資料が15人の方たちから出ています。今もありましたように、大方は一致した方向があるんですが、しかし、少数でも大切な意見も入っていますのでディスカッションをしていきたいんですけれども、御発言いかがでしょうか。清原委員、尾上委員という順番でいきます。

では、清原委員、どうぞ。

清原委員 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。

地方障害者施策推進協議会の必要性、すなわち各自治体において障害者施策の実施状況をモニタリングすることの意義は理解できますし、多くの委員が賛同されているということも、そうではないかなと思います。

ただ、三鷹市という基礎自治体の市長としては、常日ごろ私自身が行政の責任者として事業実施を監視していただく仕組みとしては、同じく選挙で選ばれた議会があります。また監査委員がございまして、三鷹市の場合は2人いらして、1人は公認会計士の方、もう一人は市議会選出の議員でございます。市の職員の退職者はおりませんで、客観的な評価をいただいております。何よりも行政が整理、公表した施策の実施状況については、このような障害者施策の場合は障害のある当事者、関係者の皆さんが内容を確認し、意見を反映していただくことが必要です。そのために計画、策定時においてはパブリックコメントは勿論のこと、審議会等へ市民参加を推進してきております。

具体的には健康福祉審議会あるいは障害者福祉計画検討審議会議、更には障害者施策を推進する上での地域自立支援推進協議会、これらには障害のある当事者の方に入っていただいており、実施状況の検証をしながら次なる計画の策定にも向けられているわけです。そういう中で改めて地方障害者施策推進協議会が実施状況の監視を行う組織として、法律に位置づけられることについては慎重な意見交換が必要です。特に改めて基礎自治体の立場からは、障害の当事者、関係団体の方だけではなくて、その他の自治体関係者にも御意見を聞いていただければありがたいと思っています。

次に申し上げたいことは、地域主権との関係についてでありますが、地域主権と言っても国が国民に対して責務を持っていることについては、国がしっかりと行政施策を推進し、検証していくことが第一義的に重要だと思っています。したがいまして、地域主権だからといって地域ばらばらに障害者に関する施策が任されるということではなく、基本は今回基本法で議論されているように、国がきちんと国家として制定していくべきものですし、施策もそうあるべきと思います。しかしながら今回、国の法律によって地域の監視機関が位置づけられるという場合にも、三鷹市の立場でも条例を制定する必要が生じます。条例を制定するということは市長が提案をすることに、市議会の議決をいただくという手続です。そういう意味では国は議院内閣制ですが、地方自治体は二元代表制でございますので、首長が提案をし、それを議会が議論し制定するということの手続は、地域主権云々より前に現行でもそういうことになっておりますので、そういう手続と国の法律との整合性をどう付けて行くかについても配慮が必要だと考えます。

なお、私は「望ましいということ」と、それを「どのような形にして具体化していくか」ということについては、この案件については特に慎重に御議論いただくことが望ましいと考えております。施策を評価し、よりよいものにしていく。基本法と法律にのっとって的確なものであるための評価、検証の機関の設置というのは勿論必要なのですが、それが監視ですとか強制力を持つものを、各自治体あるいは基礎自治体すべてに置くかどうかについては、本当に慎重な議論を要すると思います。監視や評価の軸がどう決められるのか、どう基準を定めていくのか、まずは中央において、障害者施策を推進するだけではなく、仮に中央委員会と呼ぶならば、そういうところの実態を実証することを先行すべきかなという思いでおります。

このように申しますと誤解を招くかもしれませんが、どんなに望ましいものであっても、それを具体的な自治体の現場に持っていったときに、趣旨と異なる運用になってはいけないわけですから、そういう意味でも私は望ましい、あればよいということと、具体的にどういう形にしていくかというところのギャップがないように、いい意味での慎重な議論をということで意見を述べさせていただきます。

結びに、実態的には三鷹市もそうですが、障害当事者、御家族あるいは関係団体と御一緒に仕事をしておりますので、モニタリングとか監視といったときに行政だけが監視されるのではないんです。介護保険もそうですが、事業者もボランティア団体も評価の対象になっていくわけです。協働し支え合っていく中に誰が権限を持って評価していくのかというところの手続を間違えますと、いわゆる協働、共助、支え合いの現場が壊されることもあるかもしれないということも配慮しながら、よい方向で御議論いただければ幸いでございます。

以上でございます。ありがとうございました。

藤井議長代理 大きく2つ御意見があったんですが、1点目のことに関しての質問をしますが、現行法では地方障害者施策推進協議会は必置で、市町村は義務規定ではないですね。今おっしゃったのは都道府県の必置を含めて慎重とおっしゃったのか、都道府県は現行でも必置だし、更に機能強化ということがあり得るのか、基礎自治体とおっしゃったのは市町村と都道府県を区分けしておっしゃったのか一緒なのか、そこを説明していただけますか。

清原委員 ありがとうございます。私が第一義的に立場として立っておりますのは、市町村、基礎自治体の立場でございますので、そういうところにおいては拙速は避けていただきたいという趣旨です。

今後、都道府県制が維持されるのか、将来的に道州制になるのかは別として、広域自治体として、これまでも広域的な自治体の中で格差なく質の高いさまざまな行政サービスが実施されていくために、このような協議会が設置されているケースがほかにもありますが、そういう広域の場合には今後もあり得るのではないかと思っています。本当は現場なんです。一番の現場なんですが、いい意味でのモニタリングはいいんですけれども、監視的なことになるとただちにはなじまないかなと。より第三者性を持つ機関が望ましいわけでございますので、そのような思いで申し上げました。

藤井議長代理 それでは、尾上委員、どうぞ。

尾上委員 ありがとうございます。尾上です。

結論というか意見を先に述べますと、地方のモニタリング機関は是非とも必要であるという意見でありますし、もう一つは現状の地方施策推進協議会をそのままというよりは、これから中央というか、国レベルでのモニタリング機関が議論されていくと思うんですが、それの権能や構成に準じた構成にするのが望ましいのではないかという意見でございます。

というのも、1つは今、進められている地域主権改革との関係で矛盾するのかしないのかということで言えば、矛盾しないと思います。1つ目の理由がそれです。今の地域主権改革なり地方分権改革の目的というのは、より身近なところで決められれば、地域住民が参加をして決められやすくなるだろうということが、目的なんだろうと思うんです。

単に国から地方へというのが目的化されているような感じがしておりますが、国や地方自治体あるいは省庁間の縄張り争いと言うと言い方が悪いかもわかりませんが、それが目的ではなくて、むしろそのことを通じてより当事者が参画する、市民が参画をして政策が決められていくことが地域主権の目的だとするならば、まさにモニタリングに当事者が参加した形で、しっかりと政策決定に関与できることは、その目的に沿ったものではないかというのが1つです。

2つ目は障害者施策の部分というのは、非常に人権に関連した部分がほとんどを占めると言っていいぐらい大きいと思います。例えば今、国会でこれから議論を更にされていく地域主権改革の法案でも、人権に直結したものは従うべき基準とすると言われております。そういう意味では障害者権利条約に基づく施策を進めていく、人権に直結する施策を進めていくことからすれば、まさに国の法律で担保をしていくことが必要なのではないかと思います。

前回ちょうどこの推進会議のヒアリングで、公営住宅の件で国交省さんからヒアリングをいただきました。その際、私どもが懸念をしております障害者の単身入居に関わる欠格条項が、今もまだ残念ながら相対的欠格という形では残ってはいるんですが、一方で国の方が音頭をとっていただいて、知的や精神の単身入居を拡大してきていただいた経過がございます。ところが、今回の例の一括法案の中で、自治体で条例になる。そのことによって勿論自治体で、例えば清原さんがおられるような自治体では、そもそも相対的欠格も含めて全廃だという自治体も、もしかしたら出てくるかもわからないし、一方でむしろ絶対的欠格といいますか、単身入居の枠で常時介護を必要とする者を除くという、以前の書きぶりも理屈的には可能だとこの前のもので確認されましたので、そういう意味で人権に関わる部分というのは、引き続きモニタリングが要るのではないかということでございます。

3点目でございますが、私どもが進めてきている障害者制度改革というのは、ある意味で戦後ずっと、確かにその中で非常に重要な施策が築かれてきたと思いますけれども、一方でやはり権利条約から見たときに日本の今までの施策というのは入所施設中心、あるいは病院中心の障害者関係の施策だったのではないか。それを地域中心に制度改革していく、転換をしていく転換期にあるんだと思うんです。そう考えたらどの地域においても、どんなに重度の障害があっても、どんな種類の障害があっても必要な支援を得られ、地域で暮らせるようなインクルーシブな地域社会が日本の隅々に広がることが、私どもの制度改革のねらいなんだろうと思うんです。その点から考えたら、まだまだ地域レベルでの基盤整備は非常に遅れていると思います。

そういった地域で暮らすときの必要な支援が得られる基盤整備が進んでいるのかどうか、そういったことを引き続きモニタリングできるような仕組み、あるいは今、以上にその部分は強化していく必要があるのではないか。

以上、3点ほどの背景、理由を述べて、是非とも必要だということで述べさせていただきます。

藤井議長代理 もう少し枠を広げて、また清原委員から反論もあると思いますので、まず関口さん、手が挙がっていますのでどうぞ。

関口委員 全国「精神病者」集団の関口明彦です。私は地方協議会は必要だと思います。

地域主権改革といって主権を移譲するような形になって、あとは自治体の選挙で勝手に決めてくださいみたいな話に聞こえるところもあるんですけれども、それは選挙をしたら障害者は少数ですから勝てるはずがないと思っています。ですから、私は今、武蔵野市と中野区でもって自立支援協議会というものに入っています。自立支援協議会の役割というのは計画や何かに意見を具申することも含まれているわけです。その中には当然当事者も入っていますし、武蔵野市もこの前に当事者部会というのを30人ぐらい集めてつくったばかりです。

武蔵野市では権利擁護部会に私は入っていますけれども、職員向けの研修と一般市民向けの研修をやることになっています。そういう中で事業所と事業所が共同あるいは市と共同することによって進んでいく。その中で当事者の声が議会に勧告という形でもって、私たちはこう思っていますということを伝えることは、別に障害者だから言うことを聞けということではなくて、少数者でもって私たちに対しては理にかなった合理的な接遇が必要なんだからということでもって言うのは、当然のことだと思います。

私が書いたのは、自治体間格差をなくすための担保をある程度、評価項目でもって均等なものをつくってほしいということが1つ願いとしてあります。精神病院が偏在しております。例えば東京都ですと八王子の方にたくさんあります。生活保護の交付金率も九州の方が交付金率が高いということがあります。地方自治体の先ほど言った武蔵野市とか中野区というのは実は精神病院のないところなんです。1床もないんです。みんなほかの区とか市の病院にお世話になっているわけなんです。そういったときに都道府県の果たす役割というのはかなり大きいと思っていて、やはり基礎自治体で病院のないところとはいえ、病人がいないわけではないので、ほかの市町村にお世話になっているわけです。そういう意味で調整をする都道府県の役割は極めて大きい。ついでに言えば、都道府県によってもかなり特性が違います。例えば東京、大阪、名古屋みたいなところと、そうでない青森みたいなところは全然違うわけです。ですから、それはそれとしてその地域独特の調査項目があっていいし、評価項目があっていい。

ただ、先ほど尾上さんも言っておられましたように、人権に関わる部分については比較可能な調査をしてほしい。そして、その地方に対する適切な勧告をする権限を与えてほしい。中央委員会との間は情報交換をする。中央委員会が地方に対して直接に勧告するというのはめったにないというか、ほとんど自治に任せてそういうことは基本的にはしない、地方でやってください。ただ、情報はこういうことがありますので、あなたのところでは少しこういうところを頑張ってくださいということは言っていいと思いますけれども、地方に任せるというのは地方に主権を移譲するということだと思いますので、そこは条例でやっていただいていいと思うんですが、基本になるのは憲法≧条約≧法律≧条例になるわけですから、やはりそれを守った形でやっていただきたい。

以上です。

藤井議長代理 ほかにいかがでしょうか。勝又委員、どうぞ。

勝又委員 勝又です。私は今、話されている中で監視という言葉とモニタリングという言葉が、同意義にとられていることについては注意を要すると思います。

権利条約の33条で言っているモニタリング機関というのは、もう少し広い意味を持っておりまして、権利条約で決められていることがその社会において、国において促進されていくことを注意深く見守っていくということと、見守ることによってそれを促進していくという機能があると思います。この意味で、今、日本にそのようなモニタリング機関というものがあるかを考えますと、各種審議会とか、さまざまな協議会とかがございますけれども、そういう意味で役立っているようなモニタリング機関があるのならば、そのままを法律上も規定して、そういう形でやっていくように国から地方に対して言えば、それが通っていくというような構図があるのかもしれません。しかし、実際的に見て個人的には、そういうふうに機能しているモニタリング機関はないと思います。

そうしますと、この障害者の問題だけでなく、地方自治体においてさまざまな問題がどのようにモニタリングの機能といいますか、ツールによって具体的に問題を解決するとか、状況をよくしていくために利用されるかが、しっかり示されない限り、単にこういうものをつくりなさいと自治体に言ったところで、実際のところ何をやっていいのかわからない状況だとおもいます。今回は地方についての御質問でしたから中央については言いませんでしたが、ある意味で中央におけるモニタリング機関の検討が初めにあって、地方の検討が来るのかなと思っております。

以上です。

藤井議長代理 今、勝又さんからは監視という概念と、モニタリングというのは必ずしも同一用語ではないのではないか。モニタリングという概念は権利条約でもっと幅広く促進、実施まで含まれるという点で、これは今後また議論していこうと思いますが、以上およそこの議論を聞いていますと、あるいは事前の書面を見ても、地域主権改革に関する問題とは地方協議会なるものの機能強化、矛盾はしないだろう。問題は今、言った地方協議会なるものの機能をめぐって、そこまで強める必要はあるのかという点では大分議論が分かれている気がするんですが、まずここで清原委員、いかがでしょうか。

清原委員 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。

今、勝又委員がおっしゃったように、モニタリングということを権利条約にのっとって幅広くとらえますと、私はどうしても基礎自治体の立場でございますので三鷹市の事例から申し上げますと、障害基本計画をつくるだけではだめで、つくるときにいかに障害のある方や関係者に参画していただいたとしても、その計画を実際に推進していく組織が必要だという中から、障害者の皆様の地域自立推進協議会をつくってまさに活動しています。

その活動の中からさまざまな具体的な政策の提案があり、それを反映してきた経験からいたしますと、障害者の権利条約あるいは今後つくられる障害者基本法などを地域の現場で実践していくことを幅広い意味でプロモートする、促進するという意味での組織が置かれることは、私たちもそうしてきましたし、大変実効性のあることだと思います。ただ、そこに先ほど留意がありましたように監視とか、それによる施策に関しての勧告であるとか、そのような強い権限を持つ組織が基礎自治体にできることについて、慎重論を先ほど申し上げさせていただきました。

先ほど申し上げましたように、中央のところでこのような取組みについて何らかの具体的な実践とか方向性がまだない中、いきなり各基礎自治体でこうしたものが同時発生的になされることの懸念を正直に表明した次第です。そして、条例を定めるに当たっては国の法律でも国会で多くの議論がなされますように、各基礎自治体でも議会で大きな議論になると思います。そういう意味でまだまだ強い権限を持った組織というものについて、慎重な議論をしていただきたいと申し上げましたけれども、幅広い意味でモニタリングあるいは推進、促進という観点からの組織が必要であることについては同感でございますし、そういうことを拡充していくことは極めて意義あることだと思います。

以上です。

藤井議長代理 清原さんに一言、おっしゃるとおり政策とか施策を策定し、推進する。そこはどうにか今の機能を生かせば。しかし評価あるいは手直し、監視、勧告まではどうも時期尚早と伺ったんですが、今の状況を見ていると策定とか推進まではどうにかと思うんですけれども、実際問題基礎自治体におられて評価とか、評価した結果不十分な点を手直しするとか、議会なんかで障害者問題という言わばマイノリティなんですが、しかし人権問題、差別に絡んでくる問題で、議会等の運用で可能ということで伺っていいんですか。

清原委員 自治体は文字どおり自治体でございまして、議会も多様でございますし、行政、教育委員会等と議会との関係も実態としては多様でございますので、一概にどうこうということを私が代表して言えません。三鷹の場合であれば、障害者施策について勿論議会から評価、コメントがあって予算委員会、決算委員会が進行していくわけですし、厚生委員会でも障害者の問題は多く議論されますし、監査委員からも関係団体を含めて障害者施策については監査が入ります。私たちとしてはそうした福祉関係機関については第三者評価というのも、私たちが評価するだけではなくて入ってもらっておりますし、政策評価についても内部で厳しくしておりますし、そういう意味では私としては万全ですとは言いにくい立場です。

私は常に監視を受ける立場ですので、個人的にはどのような組織ができても、いい緊張関係を持って行政は向上あるのみと思っています。ただ、すべての基礎自治体でこういう組織をつくることのプロセスの困難と効果を考えますと、まだ時期的にどうなのでしょうかという思いはあります。その辺のニュアンスでございまして、皆様が必要であり、より一層質を高めていく上でも、こういう機能があったら多くの方が言われたように、地域格差なく、自治体格差なく、全国みんな質が上がっていく願いをこういう組織に持っていらっしゃるということは、共有できていると思います。

委員の中ではただ一人かもしれませんが、現実派の立場でコメントをさせていただきました。

藤井議長代理 竹下委員、どうぞ。

竹下委員 ありがとうございます。竹下です。

モニタリング機関の役割について東室長の見解に反対とは言いませんが、若干疑問があるので、まずその点が1点ですけれども、確かに個別救済機能をどうするかというのは差別禁止法の問題だと思うんです。ただ、そのモニタリングを行う監視機関と個別救済を行う機関とが全く分離することに強い懸念を持ちます。なぜならば、現実に監視を行おうとすれば、政策の実施責任と個別事案における救済とがばらばらでは、多分統一的な監視はできないと思うからであります。したがって、今回の議論としてこれに異論を述べているわけではありませんが、今後このモニタリング機関について実施責任をどこが担うのか。できたらモニタリングを行う機関と一体として行うべきだと思っておりますし、併せて個別救済を行う機関との関連性についても、議論しておくことが総論として必要だろうというのが1点目であります。

2点目の問題は中央と地方の関係でありますけれども、先ほどから簡単に言えば地域主権戦略大綱を前提に矛盾しないという意見が出ていることについて、私は非常に疑問を持ちながら発言します。それは地域主権一括法や戦略大綱をどう理解しているかの問題です。誤解覚悟でわかりやすいために非常に端的な言い方をしますと、地域主権が目指しているのは国から物を言われることを極力なくしていこうという考え方です。基準だとか尊重だとかいろんな言い方をしていますけれども、いずれにしても尾上さんが指摘するように、人権に直結する問題と言うが、ではその範囲は何か。

例えば尾上さん自身が指摘するように、公営住宅との関係で言えば、これを地域主権戦略の考え方で言ったら基本的人権に直結する問題と考えるのか考えないのかということについては、多分悩むはずです。したがって、地域主権一括法なんかを見ておりますと、本当にその考え方が人権問題を中心としている障害者施策において、なじむのかということそのものに強い疑問があるというのが1点目です。

2点目は地方における特殊性というのは、これは絶対に否定することはできないです。私の生まれた石川県能登の輪島と今、住んでいる京都では環境が極めて違うわけですから、それを同一に扱おうというのは無理であります。そうであれば地域ごとでの一定の監視や実績の把握は必要ですけれども、地方の特性と国基準の関連性を併せて議論しておかないと、まさに統一性というか、国全体の底上げが極めて難しくなるわけですから、その関係で地方と中央の関係をどう位置づけをするのか、併せて議論すべきだろうと思っています。

以上です。

藤井議長代理 とても大事な2つの意見で、2つ目がまた2つに分かれていたんですが、特に地域主権との関係で言うと、私たちはここで盛り上がっても、確かに一方で地域主権に関する主流というか、言わば本流的な流れがあって解釈では済まされないわけですから、やはり注意深くという御指摘は大変大事な指摘だったと思います。

大濱委員、どうぞ。

大濱委員 今回の地域主権について全く同じような問題がありますが、地域間格差は事実でして、東京都と地方部ではかなりの地域間格差がある。したがって、この地域間格差の解消がきちんとあって、要はナショナルミニマムを確保した前提がない限りは、地域主権については一括で地方へ下ろすのは非常に危険だというのが第一点目です。ここがきちんと前提として押さえておかないとまずいと思っています。

2点目は先ほど清原委員から言われていましたが、権利条約33条を読みますと障害のある人及び障害のある人を代表する団体は、モニタリングの過程に完全に関与し、かつ、参加するという文言があるんですが、実際に関与していろんな政策過程でやっているのかをお聞きしたかった。要するに私たちは地域間格差をなくすという意味合いでは、こういう地方自治体に地方の自立支援協議会を置くということは、全くいいと思っているんですが、現段階では現実的に47都道府県に置けるだけの人材がちゃんといるのか、それだけ人数がいるのか、特に3障害、場合によっては4障害になるかもしれないんですが、そういう人材がいるのかというのは非常に疑問に思っています。したがって、単純に下ろせばいいという問題ではない。この大前提として人材育成とかナショナルミニマムの確保とか、地域間格差をまず国できちんとなくした上で地域主権の中に移行するとか、これら大前提をきちんと踏んだ上で手続をしていただきたい。

以上です。

藤井議長代理 尾上委員、どうぞ。

尾上委員 尾上です。どうもありがとうございます。

先ほどの議論の中で、次回以降、中央のモニタリングの議論ということですので、権利条約33条の保護、促進、監視という機能がどういう形で、どういうあんばいで持たせていくべきなのかという議論ができればと思うんですけれども、先ほど言われた中で特に障害者基本法の総則の議論のところ、今日の第二ラウンドでも議論がありましたが、実態調査や評価ということが言われたと思うんです。

少なくとも評価の部分に関連して、例えば先ほどの障害者施策に関して、たまたま前回ヒアリングで出ましたので、例えば公営住宅の単身入居の欠格条項を、そもそも相対的欠格からなくした自治体もあれば、もしかしたら、あってはならないことですけれども、絶対欠格により強化をしてしまった自治体みたいなことが、少なくとも全国どういうふうになっているのか、その実態がわかり、評価をしたものが公表されて、それを比較考慮した上で私たち当事者が例えばほかの自治体ではこうやっているんだから、こうしてくださいよということで、お互いが言わばいい意味でスパイラルアップしていくためには、最低限評価と公表までができる機関は必要不可欠ではないかということだけ申し上げたいと思います。

言わば障害者施策全国マップみたいなものが毎年できてくれば、それでいい意味での競争が起きるわけですから、そういったものにつながるようなモニタリングが最低限あるべきではないかと思います。評価と公表です。

藤井議長代理 勧告は断念するんですか。

尾上委員 勧告は断念する云々ではなくて、つまり中央か地方かという一般論の中で、地方は要らないという議論になってしまうとすれば、少なくとも評価と公表、更に勧告をどうするかは中央のモニタリングの議論の中で併せてやればいいという意見です。

藤井議長代理 関口さん、森さん、時間が来たので簡単にお願いします。

関口委員 自立支援協議会というのは別に今、法に位置づけられているわけではないんですけれども、かなりの自治体でできていまして、みんな手探りでやっています。私はやっていて思うんですが、障害福祉計画とか障害者計画とかいろいろつくっているわけです。それにまた輪をかけて自立支援協議会で、結局どういうふうにしようかという話は同じような議論になるんです。一つひとつの役割を相談支援という部分が担うということですけれども、いずれにしても地域主権と言ったときに、そうすれば予算が7割で済むんだという話を小沢さんが言っていましたけれども、お金が減った分人権が減らされてしまうのでは困るので、そういうダブっている部分を統合してやっていただきたいというのが1つの願いです。

もう一つは議会とのつながりが、自立支援協議会は何もないと言っていいです。ですから、中野区の場合ですと幾つかのセンターをつくるという計画が、議会あるいは区長で決めて着々と進んでいるわけです。

自立支援協議会でも何でもそうだと思うんですけれども、基礎自治体が上の都道府県と調整する機能がないと、精神障害者は浮かばれません。基礎自治体で片づく問題ではないんですから、国と地方というだけでなく、中間に都道府県があるわけですから、そことの関係をきちんとしていただきたいということをお願いします。

藤井議長代理 森委員、お願いします。

森委員 森です。中央のことは置いておいて、地方の協議会については私もここに書いてきましたけれども、基本的には実施のモニタリング機関は必要だと思うんです。ただし、現行システムで十分対応可能かどうかについて検討した上で決めるべきだろう。というのは、地方協議会につきましては心身障害者対策基本法が45年にできたんです。そのときに実はどういうことがあったかといいますと、機能として関係行政機関相互の連絡調整という機能しかなかったんです。それで実は私は担当していたものですから大変悩んで、これでは何の審議もできないではないかという形で、私も違う部署に行ってしまったんですが、その後、やはりこれではできないので審議権を入れたという経過があります。

そういう審議機能が入ったとすれば、これは実際に監視したり評価するというのが本当はそうだと思うんです。その代わり、先ほど清原委員がおっしゃったとおり、それをカバーするようなものがみんなできてきているんです。そういうものをみんな洗い出して、それで本当にいいかどうかという検討をした方が、私はよろしいのではないかと思います。

以上です。

藤井議長代理 それもまた今後の検討になりますが、東さん、一旦ここでこの議論は今日は終わりますけれども、宿題等特にございますか。

東室長 竹下委員がおっしゃったことはごもっともだと思います。ただ、やはり監視、モニター機関と救済機関というのは委員の構成とか権限の問題など、かなり似ていない、違った組織形態をとらざるを得ない。千葉県の条例を見ても、あれがモニター機関になるわけではないわけで、組織としては違ったものだろうと思いますけれども、竹下委員が言われましたように現実としてどういう問題が起きているのか、どういう解決状況なのか、そういう点は非常に大事な情報になるわけです。だから、そういう情報も含めて調査権限として情報を得て、それをモニターの一環にしていくことは必要であろうと思いますし、その間の連携も必要になるのかなということは、今、御意見を伺いまして思いました。ただ、本体としては違うものだという認識は持っていただければなというところです。

藤井議長代理 中央の委員会で1つの範を示したり、そこがどうなっているのかという相関関係がありますけれども、そこは次回議論する。ただ、このメンバーはわかっているとおり、確かに清原さんがおっしゃったとおり生態系を壊すようなことは誰も望んでいない。ただ、現状が余りにも無権利あるいは不利益な条件に置かれたままということがある。何とか好転させなければいけない、現状のままではいけないという認識もあると思うんです。そのときに何か精神論ではなくて仕組み、仕掛けが要るんだということだと思うんです。これをもう少し更に議論を深めていって、次回の中央委員会のモニタリングシステムの在り方と併せて、現状を好転していく仕組み、仕掛けをもう一歩前に進める点でも、知恵を是非働かせましょう。そういうふうにしておいて、このコーナーはこれで終わりまして、16時25分まで休憩して、最後の第四番目のコーナーに入ってまいります。

(休憩)

藤井議長代理 16時25分になりましたので、最後のコーナーは17時を目途にして進めてまいります。主には報告事項で一部質疑もありますが、3つほどあります。

第一点目はわかりやすい第一次意見をつくる作業チームから、共同座長の土本さんと長瀬さんから順次お願いします。土本さんから御報告をお願いします。

土本委員 土本です。今日午前11時から始まりまして、大体意見が出てきました。表紙をどんな色にするかとか、一応黄色という形でいこうということです。というのは今、イエローカードがあるので、もしイエローカードが出せないときに、わかりやすいもので出していければいいのかなということも話し合いました。

写真を入れていこうということで何枚か撮って、今日も始まる前に何枚かは撮っていたので、それを入れていこうかということで、話し合っている最中に全体の写真がないなということで、構成員の人たちが集まっているときの写真も必要かなと。文章で自分の名前とか長瀬さんの名前が出てもイメージがわからない部分があるので、写真だったら下の方に名前を出しておけば、その人が委員になっているというのが目でわかるのではないかということも話し合っています。そういうことを議長代理と東さんに伝えました。

今日はそんなにそろわれてはいないんですけれども、いつどこで写真を撮れるのかどうかは、これから話し合っていきたいなと思っていますし、イラストとかそういうことも含めて、細かいことも含めて話し合っていきたいと思っています。色は4色ということで表紙の色で使って、まだ中身でどんな色を使うかまではいっていないので、そういうことをお願いします。

藤井議長代理 今、言われていた中で、いつでもイエローカードを持っている気分で、色を黄色にしてしまおう。かばんに入っていて何かあったらイエローカードとして、そういう思いも込めてということだと思います。

2つ目は大事なことで、全体の写真を撮りたいということです。今日は難しいと思いますが、土本さん、次回ぐらいにあった方がいいんですか。

土本委員 そうですね。

藤井議長代理 では写真を撮ってもいいような服装と言うのはあれですが、様式でお願いします。

では長瀬委員、よろしくお願いします。

長瀬委員 ありがとうございます。長瀬です。簡単に補足させていただきます。

今日の出席者は土本さん、育成会の室津さん、事務局の成冨さん、それに私でした。今、土本さんからお話をいただきましたように、最終的なレイアウトや写真の作業に移っています。これから実際の作成作業、最終的には編集作業に入りまして、何とか11月中旬ぐらいには冊子として実際に刊行して、それ以降に地域フォーラム等では活用できるようにしたいと考えております。

以上です。

藤井議長代理 まず今お二方から御報告がありましたけれども、質問ございますか。では引き続き土本さん、長瀬さんよろしくお願いいたします。

続いて前回の推進会議から今日までの間、地域フォーラムが行われております。3か所について簡単に行った方から報告をいただきます。大阪に私と東さんで行きましたが、私の方からいたします。千葉は大谷さんと川崎さん、大谷さんメインで報告を願って、川崎さんに補足をお願いします。富山は東さんに御報告をお願いします。

私の方はお手元に2枚つづりのペーパーを、これは当日に現地で配られたものを準備しました。大阪は10月5日午後の時間帯です。場所は大阪府男女共同参画青少年センターというところで、規模は500人です。結論から言いますと、関心が高い。期待が大きい。この関心と期待がキーワードであったように思います。

内容は東さんの基調的な講演、第一次意見を中心に閣議決定をした部分のことが1時間にわたって説明がありました。これを受けて2つの大きなアピールがありました。1つはまとまってODF(大阪障害フォーラム)を代表して、楠事務局長からお手元にありますように裏表8項目のアピールが述べられました。

更に2つ目のアピールは個別団体で、今日お手元にあります資料の中で9団体入っていますけれども、一番最後の重症心身児者を支える会は省いてください。これは入っていなくて、それまでの8つの団体がアピールを行ったということです。

私の方で全体のコメントを行ったことになりますが、同時に最後に前に出てほしいと言われておもらいしたのが、8団体ではあふれるいろんな思い100通ほどのお手紙やら、個別のアピールやら、これを是非持って帰ってほしいと言うので持って帰ってまいりました。内容は本当にいろんな意見が詰まっていまして、どこかでまた何かの方法でと思っていますが、担当室の方にはお渡ししておきますので、よろしくお願いいたします。

以上、500人規模で更に第二次意見に向かっての意見も学習もしていきたいし、更には来年に向かってまたこういう場が欲しいということも出ていましたので、大阪の地域フォーラムの簡単な御報告であります。

続きまして、同じく10月10日に千葉で行われました。これは大谷委員からお願いします。

大谷委員 大谷です。同じく千葉の総体的な感想とすると、本当に関心と期待が高いの一言に尽きるだろうと思います。10月10日、千葉県障害者スポーツレクリエーションセンターの体育館でやったんですけれども、基調は私は40分でやらせてもらいました。40分で第一次報告をする、第一次意見を報告することは、かなり厳しかったのですけれども、やはり総論しか皆さんに伝えることができなかった。

ただし、その後にシンポジウムを2時間とっていただいたので、この2時間のシンポジストが川崎洋子委員と三橋全国肢体障害者団体連絡協議会会長、内藤千葉県社会就労センター協議会会長ということで、これは期せずしてなのか主催者団体の配慮なのか、精神医療、自立生活支援を三橋さん、内藤さんからは雇用、就労ということで、非常に全体にわたって討議できるシンポジストが用意されたということでありました。

各シンポジストからそれぞれの立場で第一次意見の期待するところ、問題点、注文等々が出され、その後、会場との討議に入った。この会場との討議が非常に熱い討議で、全体として今、数えましたけれども、10からの意見だったんですが、会場と私たちがその場で質問に答え、意見を交わすということをしましたので、時間が足りなくなるぐらいの熱い議論ができました。

分類的に言うと精神医療に関して3人から意見と質問が出て、これに関しては適切に川崎委員が答えていただいた。

雇用に関しては例えばハート購入法についてどうなるのか、いろいろこんなに難しい時代に合理的配慮等と言っているけれども、実際はどうなのかということも含めて質問があったり、就労支援、職業訓練の環境をどのように考えるのかという、かなり個別具体的な質問がありました。これについては内藤さんから具体的に、自分は委員の立場ではないけれども、全体を報告するという立場で説明していただきました。

自立生活支援に絡む質問とすれば、やはり大きかったのは高齢障害者の問題をどうするのか、法律はできても施行令、省令等で骨抜きになってしまうことが結構多いので、そういうことに関してもどうするのか、自立支援法のときの具体的な経験をどう踏まえるのかということも含めて出されたり、非常に有意義だったのが、ろうの方が来られていて、市町村と言うけれども、ろうの人はそもそも人数が少ないのだから、市町村単位で事業をされてしまうとますます少人数になってしまって、自分たちの仲間づくりが難しくなる。だから特に盲ろうに関しては広域団体、都道府県単位での事業を残すようにということで、非常に具体的な要求がありました。

インクルーシブ教育については1人からしか質問がなかったんですけれども、統合への道筋ということで就学形態に関して議論されているようだが、具体的な支援の中身に関してどうなのか。特に統合されればすべての教員が障害のある子の教育に関わるようになるときに、教員養成課程で障害児教育に関してされていないのではないか、それに関して今後具体的にどう取り組むのかというように、皆さんから非常に具体的な質問がその場で出されて、私たちが答える中で勉強になると思いました。

精神に関しては3名の方からそれぞれ質問がありましたから、それについては川崎さんが適切に答えていただきましたので、ちょっと補足していただけたらと思います。

藤井議長代理 では、川崎委員、補足をお願いします。

川崎委員 補足といいますか、ほとんど大谷さんの方ですべて内容を説明していただきましたけれども、精神に関しましては現在の医療法のこととか、精神保健福祉法の保護者制度のこととか、本当にそれをこれからどうするか。今回は参加の方が大変精神関係の方が多く、当事者、家族から熱心といいますか、熱のこもった、これを何とかしなければいけないという声が身にしみて痛切に私は感じられました。

そこでお答えしていますことは現在いろいろと改革をするということで、精神保健福祉法の改革や医療法の改革とか、これを改革して精神保健福祉関係の革命をするような、そのような時に来ているのではないかということで、頑張ってくださいというようなメッセージをいただいて、力をいただいて帰ってきたという感じでございます。

以上でございます。

藤井議長代理 川崎さん、こういう地域フォーラムをやることはいいことですね。

川崎委員 大変いいことです。そして本当になかなか精神の声が小さいと言われておりました中で、皆さん集まって、どこのところでも精神のことが問題、課題として出て、これは何とかしなければいけないということは、大変大きなことだと思っております。

藤井議長代理 それでは、同じく10月10日だったんですが、富山市で行われた方に東さんが出ていますので、東室長からお願いします。

東室長 富山でのフォーラムは「障害者制度改革推進富山フォーラム」という名前で行われました。富山市の富山県総合福祉会館に約180名、富山ではすごい大きな数だと思いますけれども、集まっていただきまして、県会議員の方も複数、県庁からも来られていました。

実は去年8月8日に、JDFの地域フォーラムin富山ということで開催されておりまして、以後、差別事例の収集とか学習会などが継続的に開かれておられたようです。それで障害種別や団体の違いを超えた形で、差別禁止条例の取組みが進んでいるところです。

今回の地域フォーラムは、これらの取組みによって結成された富山県障害者施策推進フォーラム協議会、略称をTDFと言うらしいんですが、そこにより主催していただきました。推進会議からは担当室の私のみの参加でございましたので、第一次意見とそれに基づく閣議決定の説明を約1時間させていただいた後、富山大学名誉教授の鏡森先生が社会の格差、差別をなくすための参加と平等と題して、富山県の皆様に集めていただいた380ほどの差別に当たると思われる事例の解説をしていただきました。条例制定に向けての準備が進んでいるということが、よくわかりました。

その後、意見交換としてフロアから19名の方から御意見をいただきまして、1人3分という枠の中でしたけれども、いろいろな立場からの発見がございました。私一人で対応ということだったので質疑応答は大変だったんですが、何とかやってきました。

御意見の詳細までは御紹介できませんけれども、指摘された問題などをちょっと概略で御紹介しますと、知的障害者のグループホームやケアホームの建設時に住民の反対があってなかなか進まない。これはある意味で昔の非関税障壁みたいな制度による障壁だという御意見。

心臓病を持つ子どもの特別医療扶養手当の減額問題、心臓病患者の年金認定の厳しさとか、医療サービスがないために作業所にもなかなか通うのが困難であるといった問題の指摘。

難病患者の就労問題、てんかん患者の地域での医療保障や就労支援の問題、重度の障害や遷延性意識障害の場合の介助者による医療的ケアがなければ、なかなか地域で生活できないといった問題、家族による常時介護をする場合に医療付きショートステイが不足しているといった問題、後天的な脳損傷によって高次脳機能障害が発生した場合とか、身体障害になった場合の支援が遅れているけれども、特に子どもについての実態の把握が十分になされていないのではないかといった御指摘。

グループホーム、ケアホームの支援体制が不十分である現状においては、本人などの状況に応じて施設を再度利用できるように配慮すべきであるといった御意見、聞こえが困難である子どもに対する、聞こえに対する継続的な支援の問題、盲ろう者の移動や情報コミュニケーションの保障の問題、肝臓病の患者の医療費や通院助成の問題、行政の持つ障害者の情報につきましては、情報保護法ということで相談活動に利用しようとしても、その情報が提供されない。だから地域での相談活動が機能しない状況に陥っているといった問題。

就労支援BだけではなくてA自体に対する賃金助成の必要性等を指摘する御意見とか、最後に、ここへの注文ですけれども、聴覚障害者の立場から見た場合における職場の合理的配慮という問題は、一体どこで議論するのか。差別禁止の部会で議論するのか、総合福祉部会で議論するのかはっきり示してほしいという御意見などなど、いろんな御意見がありました。

総じて推進会議とか総合福祉部会に対する期待の大きさとか責任などを改めて感じるとともに、地域でのさまざまな団体の連携が地域を変える大きな力になりつつあるなということを、実感して帰ってきた次第です。

ちょっと足りない点もあったかもしれませんが、以上です。

藤井議長代理 私は簡単に言ってしまったんですが、これ以上は時間がないのであれですけれども、1つ実感として思ったのが大阪の場合33団体集まって準備した。つまり権利条約も立派な接着剤だったんですが、第一次意見なんかも推進会議の動向も非常に大きなつなぎ役で、前に増して関係性が深まっているなという、団体間のつながりも大きな副産物だという感じが個人的にはいたしました。

高い関心とか強い期待、東さんからは責任もあるということなんで、引き続きここのコーナーでは毎回、前回から次回までの地域フォーラムで交流していければと思っています。特に質問はいいですか。佐藤委員、どうぞ。

佐藤委員 委員の皆さん大変お疲れで、地方の御期待を聞いて戻って来られたと思うんですけれども、富山の差別禁止を中心にした会議でも福祉に関する要望などが結構出ていたり、大阪の方ではもっとそういう福祉分野が多かったように思うんですが、発言された人たちは東室長に訴えたので、訴えた具体的な内容が推進会議や部会で検討されていただけると思っていると思うんです。

そのためには今、報告を聞いていろんな課題があることがわかったわけですけれども、今月から作業チームに分かれての具体的な検討が始まりますので、できたらできるだけ具体的な内容をコンパクトにしたものを、少なくとも作業チームの座長さんレベルの目にはとまるようにできないものかなと。そうでないと、せっかく訴えたのに十分な検討がなされないことになりかねない。

ただ、そういうまとめを東さんにしてもらうのも大変なことだろうし、どうしたものかなと思うんですが、少なくとも事前にレジュメなどで要望などが当日各会場で配付されたものは、コピーを座長さんなどには渡したいなと思うんですけれども、そういうフィードバックの仕方というか、それを御検討いただければと思います。

藤井議長代理 では、これは今お答えというか、検討することでいいですか。大谷委員、どうぞ。

大谷委員 千葉でもそうだったし、大阪でもそうだったのかもしれませんけれども、各会場で推進会議の皆さんに要望したいことというアンケートを回していました。それを当日集約して、後日持参するというか届けると言われていました。

藤井議長代理 大阪もそうですね。100人ぐらいのものが来ると思います。

大谷委員 先ほど参加人数を言い忘れましたけれども、千葉は120人だったんですが、当日会場で発言した人が10人で、それでもまだ言い足りなさそうな人がたくさんいましたから、きっと書面で来るのではないかと思います。

藤井議長代理 では東さんから一言コメントがあったら、お願いします。

東室長 私も何度か一緒に地方フォーラムに行かせていただきましたけれども、その中で個別的な指摘の中で、この問題は例えば総合福祉部会のこういう時期にこういう形で話されているとか、そういう説明をして納得していただいたところもありましたが、話を聞くと非常に重要な問題であるにもかかわらず、推進会議とか総合福祉部会でまだ議論の俎上に乗っていない問題もあるんです。個人的にもこれはどうしようかと、担当室でお話を聞いたりしてもおりますけれども、そういう部分もありますので、できる限り資料を関係のところに提供することはいたしたいと思います。

私は全部行って全部資料を持っているわけではないので、できれば担当室にそういう資料が集められるようなことも考えたいと思いますので、これまで参加された委員の方には御協力をお願いしたいと思います。

藤井議長代理 少し工夫も含めてフィードバックで、今までのところをもう一回さかのぼって、資料等があったら提供。プラス更に工夫がどんなふうにされるか検討いただく。こうしましょう。本件はこれでおしまいにします。

あとは長瀬委員から、先週ジュネーブで行われた国連の障害者の権利委員会に関する報告をされたいということなので、一言お願いします。

長瀬委員 長瀬です。ありがとうございます。障害者の権利条約に基づいて設置をされている、障害者の権利委員会について簡潔に御報告申し上げたいと思います。

先週10月4日から8日まで、スイスの国連ジュネーブ事務所におきまして、障害者の権利に関する委員会の第4会議が開催され、出席してまいりましたので報告させていただきます。

同委員会は障害者の権利条約の国際的なモニタリング監視機関として、同条約によって設置され、現在は視覚障害、肢体不自由、精神障害などのある12名の専門家で構成されております。12名の専門家の出身国を申し上げますとカタール、ヨルダン、チュニジア、バングラデシュ、チリ、ハンガリー、ケニア、オーストラリア、スペイン、エクアドル、スロベニア、中国の12名の専門家から構成されています。日本からのこうした場面での活躍を思い起こしますと、障害者の機会均等化に関する基準規則の専門家パネルに、全日本ろうあ連盟の高田英一さんが専門家として活躍してくださったのを思い出しますけれども、日本の批准が3年先か4年先になるかと思いますが、その時点では日本からも是非障害者である専門家を送り出したいと思いました。

来年からは現在の12名の専門家に加えまして、先月9月の締約国会議で選出されたドイツのテレジア・デグナーなど6名が新たに加わり、18名となります。この委員会は現在年2回、それぞれ1週間ずつ開催されています。担当の事務局はジュネーブの人権高等弁務官事務所が担当しております。

今回の会議では当初はチュニジア、カルタゴがあった国ですけれども、そこの審査を行う予定でしたが、報告書の各国連公用語への翻訳が間に合いませんで、ぎりぎりになったこともあり、来年の第5回会期にて行うこととなりました。今回の会議ではチュニジア政府への質問事項の作成が中心に行われました。既に定期報告書を提出しているのはチュニジア以外では最初の提出国であるスペイン、中国等です。チュニジアの次はスペインの審査を来年秋の第6回会期で行うことが決まっております。会期中の7日には一般的討議という公開討論をアクセシビリティについて開催しました。第2回と第3回の会期では一般討議は第12条の法的能力について開催されております。また、会期中にはNGOである国際障害同盟によるサイドイベントも開催されています。

次回の委員会は来年4月にジュネーブで開催されます。これは条約全体の実施状況ですけれども、日本の私たちの推進会議のように批准前もしくは批准した後を問わず、本当に基本的な法律や総合福祉法、差別禁止法を条約にのっとった形で包括的、抜本的に見直そう、作成しようという動きはジュネーブに限らず、私が個人的に話した範囲では他国に例がありません。そういった意味で批准をいたずらに急ぐ必要はなくて、いかに条約が示している方向に向けての実質的な変化をもたらすかが肝心かなということを、改めて感じた次第です。

委員会についての報告は以上なのですが、もし議長代理の許可が得られれば1分間だけ推進会議とも関連する公開講座について紹介をさせていただきたいと思います。

私が所属しております東京大学の経済と障害のプロジェクトは、障害者の日常経済活動調査等でも、ここにいらっしゃる皆さんの協力を得ていて大変ありがたく思っておりまして、この調査については年末には概要を御報告したいと思っておりますが、今日御紹介したいのは、推進会議でも大きく注目をされている社会モデルを生み出したイギリスの障害学に関する公開講座を、今月30日に本郷で開催することです。

イギリスの障害学を代表するダン・グッドレイと、トム・シェークスピア(今、WHOで世界障害報告に取り組んでおりますけれども)、このイギリスの障害学を代表するお二人を招きまして、社会モデルまたは障害学の研究と実践について公開講演を開きますので、関心のある方は東京大学とイギリスの障害学で検索していただければ、ネットで見ていただけると思いますので、是非御参加をお願いしたいと思います。ありがとうございました。

藤井議長代理 本日予定いたしました案件はこれで終わりますので、マイクを小川議長に渡します。

小川議長 本日は長時間の討議お疲れ様でございました。ここで東室長より今後の予定を含め、報告すべき事項があれば御説明をお願いいたします。

東室長 担当室の東です。本日は御苦労様でした。次回は第22回になります。10月27日水曜日です。月曜日ではありませんので、お気を付けください。議題は引き続きまして障害者基本法の改正等についてです。

今日御発言いただいたものを確認する意味での意見書と、今日発言していない部分の意見書はある程度分けていただけますか。その方がまとめやすいので、是非ともお願いいたします。ちょっと分けるのが難しいかもしれませんけれども、できるだけ今日発言したことについて云々という部分と、その他の部分を分けてお願いしたいと思います。

以上です。

小川議長 ありがとうございました。それでは、これをもちまして本日の会議を終了いたします。この後、この場所で記者会見を行います。本日はお忙しい中お集まりをいただきまして、ありがとうございました。御苦労様でございました。(拍手)

▲ このページの上へ

-