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第31回障がい者制度改革推進会議(2011年4月18日)
議事要録


議事 障害者基本法の改正について


1 総則について

  • (齊藤企画官より総則についての報告)第1条 目的 現行の「障害者の福祉の増進」から、「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため」と法の目的を改正した。すべての国民が障害の有無にかかわらず等しく基本的人権を享有する個人として尊重されるとし、権利の保障の趣旨を盛り込んだ。
    第2条 定義 社会モデルの考え方を踏まえ、障害者の定義は「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」とした。社会的障壁の定義は障害のある者が日常生活及び社会生活において受ける制限をもたらす原因となる社会における障壁とし、物理的な障壁や制度、慣行のみならず、偏見なども含む観念を明記している。
    第3条 地域社会における共生等 3条、4条、5条を合わせて基本原則としており、国、地方公共団体だけでなく国民一般まで含めて、これに基づき共生社会の実現に協力することが求められる。基本原則は普遍的な原則であり、漸進的な実施目標ではない。各号は権利と言う文言では規定していないが、柱書きで「全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ」と書いて権利性を最大限表現した。「可能な限り」という文言については、選択の機会の確保や地域社会における共生が例外なく可能ではないという懸念があり、削除は難しい。第3号で言語に手話が含まれるとしているのは入念的に明示したということで、障害者権利条約で想定しているその他の非音声言語が言語から除かれるという意味ではない。
    第4条 差別の禁止 「差別の禁止」という条を独立させ、その第2項で権利条約における合理的配慮の内容を規定した。
    第6条 国及び地方公共団体の責務 改正案では法の目的を、障害の有無に関わらず全ての国民が共生する社会を実現することと改め、現行法の「障害者の福祉の増進」を包含するより高次の目的にすることから、この文言を削除した。現行法の「障害者の権利の擁護及び障害者に対する差別の防止」も基本原則として新たに規定したので、この文言は削除した。
    第7条 国民の理解 第8条 国民の責務 「国民が障害者について正しい理解を深める」「障害者の福祉の増進に協力する」という障害者を保護の客体ととらえたような記述は削除した。「社会連帯の理念」という文言は、共生社会の実現という法の目的に包含されるので削除した。
    第10条 施策の基本方針 施策の策定、実施に当たっては障害者の性別、年齢、障害の状態、生活の実態に応じてきめ細かく行うこと、有機的連携の下で総合的に行うこと、当事者その他の関係者の意見を踏まえて行うことを掲げた。社会モデルを示す文言はないが、法の構造上、その考え方は担保されている。障害のある女性が二重の困難にさらされているという議論については各則の医療、介護、雇用、教育、相談などで性別について明記したが、これらに吸収されない独自の施策が現段階では特定できないため、条文を独立させられなかった。そのため、施策の基本方針で性別に応じてきめ細かく対応する旨を明記した。
  • (発言)前文がないこと、基本原則で地域生活の権利規定がされず可能な限りの選択の自由という限定的な文言が入っていること、差別や合理的配慮の定義が明記されていないこと、精神障害者の社会的入院の解消や医療の問題について規定がないこと、教育や労働に関する条項の内容など、多くの問題がある。一方、手話の言語性が確認されたこと、国際関係の条項、司法手続における配慮、勧告や応答義務を盛り込んだ推進体制の規定などは、評価できる。
  • (発言)3条2項に「全て障害者は、可能な限り、どこでだれと生活するかについての・・」とあるが、日本国憲法22条で保障されている、どこでだれと住むかということを制約するのではないか。「他の者と平等に」あるいは「公共の福祉に反しない限り」とするべき。
  • (発言)障害を持つ女性の複合差別について入らなかったことは残念だが、10条に性別が入った意味を確認したい。障害のある女性が、他の者と平等な権利を獲得するためには、自ら家族を持ち育児や介護をする役割への支援が重要である。性別という言葉が入ったことで政策に反映されていくことを強く期待している。
  • (発言)2条の障害者の定義は障害者権利条約の社会モデルの考え方を取り入れたものか。また、発達障害、高次脳機能障害、難病といった方々も含まれるのか。3条2項の「可能な限り」については、障害者だけ特別な制限が課せられるという誤解がないよう、「障害のない人と平等に選択の機会がある」とするべき。
  • (発言)4条2項に、合理的配慮が権利条約の文脈と違う形で入っている。合理的配慮がないことが差別であると規定した方がよい。今の書き方では、社会的障壁の除去と合理的配慮を混ぜた新しい差別の禁止の定義であり、権利委員会によるモニタリングでの説明が難しい。
  • (発言)障害のある女性が地域で当たり前に暮らせるように、障害のある女性のニーズに合わせたサービス、生活につながる概念が打ち出されておらず残念である。「合理的な配慮」は権利条約で言われている合理的配慮か。
  • (発言)3条2項の「どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され」に基づき、介護や医療の提供があれば地域で暮らすことができる人が施設や精神科病院から出ていけるようになるのか、それとも基本法は基本方向を示すものでこれを理由に権利は主張できないのか。2条の障害の定義は、インペアメントと環境の障壁が相互作用を起こしてディスアビリティ、障害を発生させるという権利条約の障害の概念と違うので、当面は「身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する)」の括弧内を削除すべき。また、「継続的に」ではなく「継続的または断続的」とするとどんな問題が起こるのか。社会的障壁だけではなく、自然環境も含め障壁の概念を広げるべきではないか。
  • (発言)3条3項は情報についての条文だが、聴覚や視覚に障害がある者にとって情報を提供してもらうことは当然のことなので「可能な限り」という制約は付けてほしくない。「言語(手話を含む)」の手話に加えて「非音声言語等」を入れて欲しい。難しければ、「手話等」として欲しい。第二次意見にある「障害のある女性」「障害のある子ども」が削除されたのは何故か。
  • (発言)3条2項の「可能な限り」は誰が「可能な限り」と判断するのかが問題になるので削除するべき。また前回は「地域社会において他の人々と共生することができること」だったのを「・・・共生することを妨げられないこと」と変えた理由は何か。10条で「障害者その他の関係者の意見を聴き」を「障害当事者の意見を聞き尊重しなければならない」と変えるべき。
  • (藤井議長代理)障害者基本法改正案は3月11日に推進本部で承認されているので修正はできない。今日は解釈の確認が目的なので、そのことに主眼を置いて議事を進行する。
  • (発言)3条2項で地域における生活の選択権が、3項で意思疎通の選択権がそれぞれ認められているのか。4条2項の「必要かつ合理的な配慮」と権利条約の合理的配慮はどこが違うのか。
  • (発言)各則に「可能な限り」と書くのは財源の制約等があるので理解できるが、総則ですべてに関わるような「可能な限り」という書き方をされると、すべての権利は「可能な限り」となる。国会審議の中でこの文言をどうするか検討いただきたい。
  • (齊藤企画官)3条から5条は基本原則で国、地方公共団体だけでなく個人や事業主を含む国民すべてにかかる。これらの主体がそれぞれの立場で共生社会実現のために行動する際に旨とすべき内容を規定したもので、これを基に選択権等の権利を主張することは想定していない。
    「可能な限り」について、3条2項では設備が整った施設での医療ケアを受けながらの生活を余儀なくされるケース等選択の機会の確保に関して、そもそも選択肢のない状況があるのではとの懸念から、また3項では一個人まで含めてすべての国民を考えると意思疎通の手段の選択の機会の確保について対応できない場合もあるのではないかとの懸念から、これを必要と判断した。
    障害のある女性については「性別」という形で盛り込んでおり、今後政策委員会等で二重の差別の状況や必要な施策について議論し政策的な対応を求めていく規定と考えている。子どもに関しても同様で、「年齢」という形で視点は総則に盛り込んだ。
    合理的配慮を新たに法に位置付けるにはその内容を確定する必要があるが、それはこれからの作業なので現時点では明記できない。しかし、条約における定義の立て方、差別に合理的配慮の否定を含むという規定を参照し、差別の禁止また社会的障壁の除去を怠ると差別に当たるという立て方で条約と同じ内容を盛り込んだ。
    障害の定義で、障害と社会的障壁の相互作用により制限を受けるとした場合、障害と社会的障壁がそろわないと適用できなくなり谷間の問題が生じるので、両者を「及び」でつなぐことで障害のみの場合にも障害者に位置づけられるように配慮した。また、発達障害、難病その他もすべて含んでいる。
    社会的障壁の範囲に関して、自然災害や自然環境はこれを除去するわけにはいかないので、社会的障壁にはそのすべては入らないだろう。他方、自然に起因するものでも人的に除去でき、かつ除去が必要な障害者にとって日常生活、社会生活を営む上で障壁となり、除去すべき主体がいる場合には含み得る。
    3条2項で「共生することができる」を「共生することを妨げられない」に変更したことについては、基本原則は政策的に実現すべき漸進的なゴールではなく普遍的な価値として規定したので、共生できる、できないではなく、当然共生をするが、他者からそれを妨げることがあってはならないという意味で変更した。
    「障害者その他の関係者」というのは、障害者を含み他にもいろいろな方の意見を聞くということで、障害者が弱められているという趣旨ではない。
    障害者基本法で新たに言語の定義をすることは基本法の枠を超えるため、今回の改正案では難しい。言語に手話が含まれると入念的に明示したが、その他の非音声言語が排除されるという趣旨ではない。権利条約における言語を不足なく位置づけた。
  • (発言)基本原則がすべての国民にかかるという説明だが、3条2項の主語は障害者であり、国民ではない。障害者には地域でどこに暮らすかの選択権がないのは憲法22条違反ではないか。
  • (発言)憲法22条違反ではないのかどうか、なぜ違反ではないのか説明してほしい。
  • (齊藤企画官)3条2項の主語は障害者であり、地域社会で共生することを妨げられないと書いている。そして、そのことを旨として共生社会の実現を図るというのが第3条の内容であり、その主体が国民一般まで広く含まれるということだ。3条の柱書きで「全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ」としており、憲法の権利へ一般の制約が係る以上には制限していない。
  • (発言)権利条約の批准にあたり、すべての障害者に権利条約19条の地域で生活する権利を提供することが根本なので、高度な医療が必要な方の場合は地域生活ができないとなると、法律改正をする意味がない。
  • (発言)「可能な限り・・・選択の機会が確保され」と書くことで、医療的ケアが必要な重度の障害児・者が地域で暮らすことが制約されないよう確認答弁を求めてきたが、先ほどの説明では不安になる。医療的ケアが必要なために地域生活ができない人がいるということではなく、その場合でも他の者と平等に地域での生活を選択できるという趣旨にするべきだ。
  • (発言)東日本大震災に関する情報提供に手話や字幕が付くようになったこと等踏まえ、情報保障は当然のことなので3条の3項の「可能な限り」は取っていただきたい。「言語(手話を含む)」と書くと、言語イコール手話と読めるので、「手話等」としていただきたい。
  • (齊藤企画官)政府で法案を議論する中で示された懸念等を踏まえて説明したので、医療的ケアの必要な人に関してこういうふうに説明してほしいとの指摘はもっともだが、この場で決めるのは難しい。3項について、東日本大震災の被災地で意思疎通の手段の確保は広がっているが、すべての現場で必要な意思疎通の手段の選択の機会を確保するのは難しいという状況を想定して、「可能な限り」が必要と考えた。「言語(手話を含む)」は手話を入念的に明示したもので、この表現により言語が手話だけということにはならない。
  • (東室長)災害を含む緊急時の障害者の問題について、権利条約は第11条「危険な状況及び人道上の緊急事態」を設けている。推進会議での議論では災害時、緊急時の情報保障に焦点を合わせてきたが、改めて災害時等の障害者の問題を議論すべきだ。推進会議での議論が不足しているので、今回の基本法に盛り込むのは難しい。今後、推進会議で議論した上で反映させるのが筋と考えている。被害の実態並びに障害者がどういう困難を負うのかが明らかになった上で、必要な対策について議論したい。
  • (発言)障害者権利条約第11条「危険な状況及び人道上の緊急事態」に基づき、障害者基本法で<1>障害者の被害の実態の検証、<2>障害者が必要とする支援体制の確立、<3>復興に当たり障害当事者の参画の下でインクルーシブ社会の新生を図ること等、緊急事態における障害者の保護と安全の確保に関することについて、国会でも審議を求める。また、現在、政府が進めている復興構想会議のメンバーには障害当事者は勿論、障害福祉に造詣の深い関係者等がいない。このメンバーに障害当事者を参加させるべきだ。
  • (発言)聴覚障害関係の団体で救援中央本部を立ち上げ、岩手、福島、宮城の支援に取り組んでいる。また、JDFが災害支援中央本部を立ち上げ、障害の枠をこえて団体間で情報の共有が図られた。今後、お互いに困っていることや必要な支援についての情報を共有し、効果的な支援体制をつくることが大事である。聴覚障害者の中にも中途失聴者や難聴者等、個別のニーズがあるのでそれぞれに即した支援体制が必要だ。国は、こうした障害毎の支援体制をつなぎ、総合的なネットワークの構築を支援するべきだ。安否確認や個別支援のために行政に障害者についての情報を求めても、個人情報保護法が壁になり情報を入手できなかった。災害時には個人情報に関しても特例的な扱いができないか。震災後、官邸の記者会見で初めて生放送では手話通訳が付いたが、ニュースでは手話通訳が見えず、字幕もなかった。後日字幕は付いたが、手話通訳は映らなかった。手話と字幕は、今後はすべてに付けていただきたい。
  • (発言)公的避難所はバリアが多く、そこから自主避難をすると今度は支援物資が届かないという問題がある。災害時要援護者のリストアップと福祉避難所の契約は進んでいない。重度の障害者であるほど必要な支援が得られる避難場所や支援体制が要る。仮設住宅のバリアフリー化を進めるべき。また、仮設住宅をつくる際には共同スペースを設置する等、孤立した生活にならない配慮をお願いしたい。在宅でサービスを使っていない方の安否確認が取れないので、何よりも生命や権利を守るための配慮をお願いしたい。復興構想会議に推進会議のメンバーを入れる、あるいはヒアリングの機会を持っていただきたい。普段から必要な支援を受け、地域で社会関係を持っていれば、何かあったときにも支援が得られる。災害に強い街とは必要な支援を得つつ地域で暮らせるインクルーシブな社会だということを復興構想の一番に掲げてほしい。
  • (発言)基本法案については関係者の努力に感謝する。これを出発として更に進む必要があるが、精神障害についての記述が入らなかったのは残念だ。日本が国際人権委員会から「日本がどんなに経済発展しても、精神障害者が今の形で人権が侵害されている国は決して先進国でも文明国でもない」などと指摘され四半世紀経つが、今回の基本法改正でも非自発的入院、身体拘束を伴う医療、退院して地域で生活できないなどの構造的問題を解決するための方向性を書き込み、障害者全体を底上げするという姿勢を示すことができなかった。東日本大震災から復興し、障害者が住みやすいまちづくりをするためには、精神障害の人たちもきちんと位置づけていく姿勢を国として示していくべきだ。
  • (発言)精神障害者は在宅の人が多く、社会資源につながっていない方が多い。孤立している精神障害者を何とかしようと心のケアチームが動いているが、個人情報保護の問題があり、どこにだれがいるかわからない。行政では自立支援医療の利用者がわかるので、災害時特例として、特定の支援チームには必要な個人情報を開示していただきたい。また、避難所で精神障害者の状態が悪くなり大きな声を上げると、「避難所から出ていけ」と言われる等の差別が行われている。福祉避難所等、障害者が特性を持ちながら避難できる施策をお願いしたい。
  • (発言)被災地のある役所で話を聞くと、災害の登録をしていた方は安否確認したが、自立支援医療の利用者は把握していないとのことだった。これから当事者への相談活動等の活動を強めるので、誰がどこにいるかという情報を出していただきたい。緊急事態だから保護入院も簡単な手続でできるようにして、病院へ押し込んでいる。被災3県は精神病院が満杯となり、他の病院にも流れてきている。こうした実態の調査に行政の力をかしていただきたい。
  • (発言)首相官邸の記者会見に手話通訳を付いたが字幕はついていない。聴覚障害者には手話を読み取れない人が多いが字幕は読めるので、手話と字幕の優先順位をきちんとつけた政策判断をしていただきたい。NHKに字幕が付いていないという抗議の文書を送ったが、人員の制約から今の努力が精一杯という回答がきた。多くは記者会見の情報を誰かに聞いて一緒に避難したと思われるが、身近に情報についてサポートしてくれる人がいないと、聴覚障害者は避難できない。
  • (発言)緊急避難的に名簿を出し、被災した障害者の安否確認ができるシステムをつくってほしい。避難所でリハビリがされないために健康状態が悪くなっており医者が現地に行こうとしているが、どこに連絡を取ればよいのか分からない。情報整理や集約する場所を整理してほしい。

2 基本的施策について

  • (齊藤企画官)第14条 医療、介護等 5項を新設し、「人権に十分に配慮」だったのを「人権を十分に尊重」と変更した。また、精神障害者の強制措置入院の適正手続の保障や社会的入院の解消などについては、基本法の構造上、個別の障害種別に特化した事項を定めることは難しいので、5項で主として精神障害者の問題を念頭に置き、人権尊重規定を盛り込んだ。
    第16条 教育 現行法の「年齢、能力、障害の状態に応じ」という医学モデル的な視点を社会モデル的視点へ転換させるのに伴い「障害の特性」という用語を用いた。これは障害の状態だけでなく、学習する上での障害ゆえの困難や必要な支援まで含めた概念として創設した。第1項は、可能な限り障害者である児童及び生徒が、障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、必要な施策を講じなければならないという内容である。第2項は、本人または保護者が特別支援教育を望む場合でも、交流や共同学習を通じて相互理解を促進するとしている。1項と2項を合わせてインクルーシブ教育システムを規定している。第3項では、第1項と第2項を実施する上で必要となるインフラとして、調査研究や、人材の確保、資質向上、施設整備その他の環境の整備(教材などのソフト面など)と書いている。
    第17条 療育 障害のある子どもに関して「医療、介護等」「教育」と内容が重複しない新しい概念として「療育」を新設した。この規定は障害のある子どもが施策対象なので保護者についての記述は削除したが、「これに関連する支援」として保護者への支援まで含むこととした。
    第18条 職業相談等 第1項の「障害者の多様な就業の機会を確保する」は前回提案では「職業選択の自由」の例示として書いていたが、国及び地方公共団体が施策を講じて対応すべき内容であるという考え方から位置を移動した。第2項について現行法では「障害者に適した職種及び職域に関する調査及び研究を促進」とあるが、そうではなく障害者の多様な就業の機会の確保を図るための施策に関する調査研究という形で整理しなおした。本条第1項の「個々の障害者の特性」は、社会モデルへ転換したことに伴い、障害の状態のみならず障害ゆえに職業生活上どのような困難を有し、どのような支援が必要となるのかまで配慮をするようにという趣旨である。
    第19条 雇用の促進等 第1項で「国及び地方公共団体並びに事業者における」を加え障害者の雇用促進の対象が官民全体ということを明確にした。前回はあった「特性を踏まえつつ」という表記を削除したが、総則から社会モデルは反映されている。「特性を踏まえ」と明記している箇所はその具体的内容が想定されるが、ここは明記するだけの具体的内容に乏しいため削除した。「優先雇用その他の施策」には国及び地方公共団体が障害者雇用の促進のために講ずるものはすべて含む。障害者施策と福祉施策の一体的展開という議論があったが、法律の構造上、重複することを複数の条に規定できない。労働施策と福祉施策が規定され、10条で「有機的連携の下で総合的に、策定され、及び実施されなければならない」とあるので、一体的展開の趣旨は担保されている。具体的なことは、障害者政策委員会等の場で必要な施策を議論、推進される。
    第21条 公共的施設のバリアフリー化 現行2項の「社会連帯の理念に基づき」は共生社会の実現という、これを包含するより高次の法目的に変えたことから、削除した。地域間格差是正の観点から合理的配慮の必要性を盛り込むべきとの議論については、総則で合理的配慮が基本原則になり、国は当該基本原則に則り共生社会の実現を図るという仕組みになっている。どのような合理的配慮が必要かについては、差別禁止部会で議論していただく。
    第22条 情報の利用におけるバリアフリー化等 情報アクセスの重要性の議論を表現するため情報の取得を明記し、条見出しも「・・バリアフリー化等」と「等」を加えた。
    第23条 相談等 「障害者及びその家族による相談」を盛り込むべきとの議論は、現段階で国及び地方公共団体にピアカウンセリングを義務化することが困難との判断から、反映できなかった。ピアカウンセリングの有効性、重要性は認識しており、各地の取組みや今後政策的に方向性を拡充していくことを否定する趣旨ではない。
    第26条 選挙等における配慮 被選挙権についても記述するべきとの議論に関して、三権分立という観点から被選挙権を政府提案で具体的に提案させていただくのは難しい。
    第27条 司法手続における配慮等 刑事手続のみならず民事事件等の当事者になった場合にも対象とすべきとの議論を受け、条文を広げた。刑事施設等における処遇の問題は、本条ではなく4条の合理的配慮、差別の禁止に関わってご議論いただきたい。
  • (発言)岩手、仙台、福島を回って、津波の被害を受けたところも見てきた。いっぱい言われても何を伝えていいのかわからないところもあるので、情報を整理して何を伝えるのかはっきりした方がいい。仲間たちがどうやって元気を取り戻してやっているのかということも含めて、新聞、テレビなどで受けたことより、実際に行って被害を見てよかったので、見てもらいたい。
    わかりやすい第二次意見ができ上がった。わかりやすいチームはこれで終わりたい。多くの人たちに関わってもらい、本当にありがとう。どんどん使っていただきたい。
  • (発言)避難所や被災地の事業所を訪問して、障害者手帳の名簿があれば安否確認には有効だというのは痛感するが、権利条約22条のプライバシーの尊重、個人情報保護との兼ね合いもある。震災時、官邸での記者会見に字幕がないため情報が得られなかった人の不安は想像できない。手話が付いたことは合理的配慮の実施という観点で評価しつつ、手話も字幕も整備することがインクルーシブな社会の実現へ近い。
  • (発言)被災地の状況から、障害児が地元の小学校で学籍を有している、即ち地域に登録されていることの大切さを痛感する。教育について、16条は1項で共に学ぶことを原則とし、2項で分離された場合も交流教育を保障すると読んでよいのか。1項の「配慮」は「合理的な配慮」を踏まえた文言か。「特性」はニーズ保障に近い概念か。二次意見の障害児支援が「療育」という狭い概念になってしまった。障害児に固有ではない支援は現在検討されている子ども・子育て新システムで保障されるから、基本法では障害児に固有の支援を「療育」として整理したということか。児童福祉法では一般施策に障害児支援が入っていると理解してよいのか。子どもの意見表明権は児童福祉法にも明記されていないが、子ども施策一般の方で検討しているのか。(発言)被災地の状況から、障害児が地元の小学校で学籍を有している、即ち地域に登録されていることの大切さを痛感する。教育について、16条は1項で共に学ぶことを原則とし、2項で分離された場合も交流教育を保障すると読んでよいのか。1項の「配慮」は「合理的な配慮」を踏まえた文言か。「特性」はニーズ保障に近い概念か。二次意見の障害児支援が「療育」という狭い概念になってしまった。障害児に固有ではない支援は現在検討されている子ども・子育て新システムで保障されるから、基本法では障害児に固有の支援を「療育」として整理したということか。児童福祉法では一般施策に障害児支援が入っていると理解してよいのか。子どもの意見表明権は児童福祉法にも明記されていないが、子ども施策一般の方で検討しているのか。
  • (発言)精神障害に特化したことは条文に書けないと説明があったが、ずっと取り残されてきた精神障害者が今再び取り残されてはいけない。国会での審議に対しても働きかけが必要だが、併せて精神障害者に関する部会を立ち上げ、新たな制度化につなげる議論をするべきだ。
  • (発言)「障害の状態に応じ」は医学モデルで、これを「障害者の特性」という社会モデル的な考え方に改めたという説明は、共通理解になりにくい。「障害者の特性」は希望や要求、生活実態、生活環境、能力、機能障害を含む総合的な概念として使っているのか。
  • (発言)精神障害に関して第二次意見に書かれた社会的入院の解消と人権保障の担保や、権利条約にある自由なインフォームド・コンセントは、この基本法案のどこから読み取れるのか。23条について、第二次意見には「障害者自身又は家族による相談やそれ以外の者による相談等、相談を行う者に対する必要な研修等を行い、制度に位置づけること。」とあるが、基本法案では「障害者及びその家族その他の関係者に対する相談」となっており、第二次意見を無視している。27条は前回の提案では入っていた拘禁下における処遇が欠落し司法手続きのみになっているが、処遇に関しては他の法令等で担保されるのか。
  • (発言)23条に「障害者及びその家族その他の関係者による相談」が盛り込まれなかったことについて、我が国の障害者の施策全体の方向性を示すべき基本法に対して、市町村がピアカウンセリングを全国展開しにくいからという現状の追認のような説明をされるのは悲しい。せめて「障害者及びその家族その他関係者の相談」にすると、どちらとも解釈できる。
  • (発言)14条5項、16条1項、17条で医療、教育、療育について「可能な限り・・受けられるよう」とあるが、可能ではないことの説明義務は国にあるということか。21条2項の交通アクセスの規定で、障害者には施設の改善や合理的配慮を求める権利はあるのか。22条1項の情報アクセスの条文は、国及び地方公共団体が障害者の情報アクセスについて合理的配慮義務に基づいて施策を行うという内容か。26条の選挙に関する規定は評価したい。基本法が成立した場合には、現行選挙法の障害者に対する制限的な規定の検討が開始されるのか。
  • (発言)20条の「障害者のための住宅」という表現では障害者が住む場所を選ぶ権利が見えてこない。22条の「電子計算機」とはどういう意味か。
  • (発言)18条、19条で福祉施策と労働施策を一体的に展開すると読み取れるのか。福祉的就労の場で働く障害者に労働法が適用されない実態を是正できないかと議論してきたが、この書き方では不十分だ。推進会議の中に労働及び雇用に関する部会等をつくり、そこには議論が有効にフォローされるよう労使の団体を入れるべきだ。
  • (発言)28条「国際協力」の新設をうれしく思う。条文中の「その他必要な施策」にはODA(政府開発援助)が含まれることを確認したい。
  • (発言)28条「国際協力」の「必要な施策」に国際支援や開発支援という意味合いは入っているのか。
  • (齊藤企画官)16条「教育」について、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるように配慮するというのが1項である。なお、合理的配慮は基本原則として国が施策を講ずる上で前提となっている。2項では、当事者の選択等によって共に学ばない場合でも、交流や共同学習により相互理解を促進しなければならないとしている。全体としてインクルーシブ教育システムという位置づけだ。「特性」は、障害の種別や状態等医学モデル的なものだけではなく、個々の障害を有する児童、生徒の困難や必要とする支援、能力を伸ばすための手立て等全部含めるように整理した。他分野の用例等を参考に、幅広い視点を含む概念の創設を検討した結果、「特性」が最もいろいろな内容を読み込める表現だと考えた。
    17条「療育」は「教育」「医療」に含みきれない障害を有する子どもの発達支援のための施策という意味で規定している。他の条文で規定されている内容を同じ法律で重複して書けないので、障害児支援全体がこの条文に書かれているわけではない。
    14条「医療、介護等」5項の「人権を十分に尊重」は精神障害者に関する推進会議の議論を踏まえて規定した。法律の構造上、精神障害者に関する個別の規定は難しい。
    23条「相談等」で条文上、ピアカウンセリングが入っていないのは、施策の方向性として国、地方公共団体がピアカウンセリングをしなければならないというところまで現段階で見極めがつかなかったためで、その有効性を否定するものではない。今後、どういった施策が必要なのか提案していただきたい。
    27条「司法手続きにおける配慮等」は刑事手続きに限定して処遇まで含むか、手続き対象を広げ全体に共通する部分を規定するのか検討し、後者とした。処遇については合理的配慮の具体的内容として、個々に必要な配慮の内容を議論すれば担保できる。
    14条「医療、介護等」、16条「教育」、17条「療育」は国及び地方公共団体に対して権利として主張することを想定しているのではなく、施策の方向性を示したものだ。「可能な限り」は、この方向性に配慮しつつ施策を講じなければならないとの規定について書いた。
    26条「選挙等における配慮」について、新設されたこの条文の内容をどのように実現するのかは所管する省庁が検討するが、障害者政策委員会は個々の条文がどのように具体化されるかを監視することになる。
    20条「住宅の確保」の「障害者のための住宅を確保」は、地域社会で安定した生活を営むために、国及び地方公共団体に住宅の確保を義務付ける意味で、一般的な概念として書いている。具体的にどのような住宅を確保するかという施策は、担当する省庁が検討することになる。
    22条「情報の利用におけるバリアフリー化等」の「電子計算機」はコンピュータのことであり、法体系上、統一された用語である。
    18条「職業相談等」、19条「雇用の促進等」で福祉施策と労働施策を一体的に展開すると読めるのかについて、特定の分野について連携して施策を講ずると条文を立てるのは、法律の構造上バランスが悪いので、施策の基本方針で有機的に連携して総合的に展開することを国に課している。一体的運用のあるべき姿は、法律の運用や政策委員会の議論の中で今後深めることになる。
    28条「国際協力」について、ODAの障害者関連の施策や共生社会実現のための施策や、それに関連するような施策は、すべて含みうる条文にしている。
  • (東室長)司法へのアクセス(27条)が刑事だけではなく民事まで広がったのは前進だ。処遇における配慮について、権利条約は13条で手続上の配慮を規定し14条でその結果として自由を奪われた場合には合理的配慮を提供すると整理されているので、改正案は権利条約に沿っている。課題として、処遇の問題は合理的配慮に関わるということが法文上または解釈上明確ではない点が残る。労働や精神分野の検討のために部会を設置すべきとの意見については、推進会議本体でやる方がいいのではないか。推進会議のメンバーだけで議論が足りない場合にはヒアリングをする方法もある。
  • (発言)個別の条項で「可能な限り」と書くなら、総則からは「可能な限り」を外した方がよいのではないか。26条「選挙等における配慮」にはハード面だけ書いており、ソフト面のバリアフリーは書かれていない。
  • (齊藤企画官)総則の3条「地域社会における共生等」3項で「意思疎通のための手段」の確保に「可能な限り」と書いたのは、一人ひとりの個人まで想定すると難しい場合もあるからだ。各則で「可能な限り」と書いたのは、その部分について可能ではない場合があり得るという懸念が政府部内で払拭し切れなかったためで、総則にあることと矛盾していない。26条「選挙等における配慮」の「投票所の施設又は設備の整備その他必要な施策」はハード面だけではなくソフト面のバリアフリーも含めて規定した。

3 推進体制について

  • (齊藤企画官)30条「障害者政策委員会の設置」の政策委員会の所掌事務の範囲が狭いとの議論について、同条2項2号で、障害者基本計画に関して諮問の有無に関わらず調査審議をして意見を述べるとしている。これは障害者基本計画に書かれている事項はもちろん、共生社会実現のための施策であれば、基本計画に書かれていないことも含めて議論できるということだ。3号の「監視」について、監視の対象を「計画の実施状況」としているが、これで対象を狭くしたのではない。ただ、監視やそれに基づく勧告はその前提として参照すべき計画が必要なので、まずは調査審議をして意見を述べ、それを踏まえて政府が計画を策定、改定し、それに基づいて監視するというプロセスを経る必要がある。
    政策委員会は過半数を当事者にするとの規定が必要という議論は、10条「施策の基本方針」で「国及び地方公共団体は、・・・施策を講ずるに当たっては、障害者その他関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努め・・」と規定し、31条2項で「・・・政策委員会が様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた調査審議を行うことができることとなるよう、配慮されなければならない」と規定していることで担保されている。具体的な構成は、委員の任命権者の総理大臣の判断に委ねることが適当である。過半数を何々にするという立法例はなく条文を置くことは難しい。
  • (発言)障害者政策委員会が勧告できるようになった点等は評価するが、調査審議できるようになったことで具体的にどのような効力があるのか。基本計画に含まれていない事項も調査審議できる根拠は法文のどこから読みとれるのか。
  • (発言)30条の2項の審議内容について、障害者雇用促進法の改正問題等は厚労省の労働政策審議会の障害者雇用分科会が議論して、政策委員会または推進会議はそれを聞いて問題点を質問し勧告する機能しかないのか、それとも実質的に雇用促進法の改正内容に踏み込んだ議論をできるのか。
  • (発言)政策委員会の過半数を当事者で構成するということを前例がないために条文に書くことができないなら、国会での審議などで確認してほしい。権利条約の私たち抜きに私たちのことを決めないという趣旨を踏まえ、当事者等が過半数の政策委員会を設置したと発信してほしい。
  • (齊藤企画官)30条2項1号の「障害者基本計画に関し」は計画の策定または改正に関して意見を聞くという事務に関する規定で、現行計画に関連し必要なことは何でも審議するということである。法令上の監視に関し所掌事務を狭めて読むという解釈上のルールもなく、この法の目的である共生社会の実現に関連するならば、政策委員会が独自に判断し調査審議できる。調査審議とは、推進会議がしているように必要な議題に応じて説明を求め、議論し、意見をまとめるプロセスを想定しており、政策委員会が権能を十全に発揮するために、ヒアリングや現地調査等必要なやり方で調査審議をすることになる。他の審議会等との関係について、国の組織なので、それぞれ所掌事務があり、労働関係の法律であれば厚生労働省に設置されている審議会で審議する。障害者政策委員会は内閣府に置かれる八条機関として、運営方法は政策委員会で検討する。早い段階から他の審議会等と公式、非公式に意見を交換していく等いろいろなやり方ができる。共生社会実現のための施策、または基本計画に関する施策について、基本計画で方向性が定まっているものの実施状況を監視する機能もある。
  • (藤井議長代理)他の関連審議会と政策委員会は、上位、下位の関係ではないということか。
  • (齊藤企画官)上位や下位という整理ではない。それぞれ担当する分野があり、個別の制度について当該審議会の意見を聞いて改正する制度もある。政策委員会は障害者基本法に基づいて、障害者施策または共生社会実現のための施策に関する調査審議、意見具申をする場である。

議事 報告等


1 障害児支援作業チームより報告

  • (発言)内閣府に子ども子育て新システム検討作業グループがあり、今年5月か6月には成案を得る予定だが、障害児支援合同作業チームの意見も参照していただきたい。障害児支援合同作業チームでは、障害児支援は子育て一般施策の中でも実施され、そのための財源保障等も検討されるべきという趣旨で意見をとりまとめた。

2 地域フォーラムについての報告

  • (発言)福井は300人ぐらいの方が集まって、第二次意見を中心に説明をさせていただいた。

3 障害者の権利委員会についての報告

  • (発言)4月11日から15日まで、スイスのジュネーブで障害者の権利条約の国際的モニタリング機関である障害者の権利委員会の第5回会議が開催された。締約国からの定期報告書の審査が開始され、対象国は北チュニジアだった。障害者の定義、合理的配慮、法的効力と成年後見、地域生活と入所施設、教育、手話、精神障害者、女性障害者などについて、質問があった。委員18名のうち15名が障害者で、女性は8名、男性は10名である。今回からパソコンの文字通訳がスクリーンで投影された。現在、条約の締約国、地域組織数が99ある。私からは震災について、被災現場からの声を伝えるとともに、災害という観点からも条約実施の重要性を訴えた。委員長始め各国の委員、NGOの仲間からお見舞いの言葉を預かった。

[以上]

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