障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律Q&A集<地方公共団体向け>

【1.法律の趣旨・経緯等】

問1-1 本法を制定する趣旨如何。

(答)
  1. 障害者施策に関しては、平成18年に国連において障害者の権利に関する条約が採択されるなど、近年、障害者の権利保護に向けた取組が国際的に進展してきたところ。
  2. 我が国においても、障害者権利条約の趣旨を踏まえ、平成23年に障害者基本法の改正が行われ、その第4条において、基本原則として「差別の禁止」が規定された。
  3. 本法は、差別の禁止に関するより具体的な規定を示し、それが遵守されるための具体的な措置等を定めることにより、この基本原則を具体化する法律として位置付けられるものであり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的とするものである。

問1-2 自公民の3党で議論し、取りまとめた「障害を理由とする差別の禁止に関する立法措置に係る主な論点と基本的な考え方について」は、本法にどのように反映されているのか。

(答)
  1. 本法は、3党で一定の合意を得た「障害を理由とする差別の禁止に関する立法措置に係る主な論点と基本的な考え方について」を踏まえ作成している。
  2. 内閣府としては、法律そのものに盛り込めなかった事項についても、本法第6条に基づく「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」に趣旨を盛り込む等により、法施行後の運用に反映させていくつもりである。

問1-3 今回の法律と、障害者政策委員会差別禁止部会が平成24年9月に取りまとめた意見との関係如何。部会意見の内容は、本法に反映されているのか。

(答)
  1. 差別禁止部会の意見は、障害当事者や学識経験者等にご参加いただいた議論の成果であり、政府としても十分尊重する必要があると考えている。
  2. 法制化に当たっては、差別禁止部会の意見に示された基本的な考え方について、現段階で反映できるものを最大限盛り込み、本法を作成した。

【2.障害者権利条約との関係】

問2-1 本法と障害者権利条約との関係如何。

(答)
政府としては、障害者権利条約の締結に先立ち、障害者に対する施策の整備に努めてきたところであり、本法はかかる取組の一環として制定されたものである。

問2-2 障害者権利条約の締結に向けた動きの一環として、これまで障害を理由とする差別の禁止に関する法制についての検討が進められてきたが、本法は、障害者権利条約における差別の禁止に十分に対応したものとなっているのか。

(答)
  1. 平成23年改正後の障害者基本法第4条は、障害者権利条約にいう「障害を理由とする差別」(合理的配慮の否定を含む。)の考え方を反映し、全ての国民が障害の有無にかかわらず共生する社会の実現を図るための基本原則として差別が禁止されていることを謳ったものである。平成23年の障害者基本法の改正により、我が国の障害を理由とする差別の考え方が障害者権利条約に対応したものであることは明確になったものと認識している。
  2. 本法は、同条の「差別の禁止」の基本原則を具体化し、障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めること等により、障害を理由とする差別の解消を社会において推進するものであり、障害者基本法と同様に、障害者権利条約の考え方を反映したものである。
  3. これまで政府は、障害者権利条約の締結に向けた必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革として、障害者基本法の改正(平成23年)、障害者総合支援法の制定(平成24年)等に取り組んできたところであり、本法の制定により、横断的な課題については所要の措置を講じたことになるものと認識している。

【3.障害者基本法、障害者基本計画との関係】

問3-1 本法と障害者基本法の関係如何。

(答)
  1. 障害者基本法では、「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものである」という理念の下、基本原則の一つとして「差別の禁止」を掲げるとともに、医療、教育、雇用、公共交通などの分野について、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めている。
  2. その上で、本法は、障害者基本法第4条に規定された「差別の禁止」の基本原則を具体化し、同法に規定する施策の分野も含む広範な分野を対象として、差別の禁止に関するより具体的な規定を示し、それが遵守されるような具体的な措置等を定めるものである。

問3-2 本法に基づく差別の解消のための施策は、障害者基本計画に盛り込まれるのか。また、障害者政策委員会の監視の対象になるのか。

(答)
  1. 本法は障害者基本法第4条の規定を具体化するものであり、本法に基づく障害を理由とする差別の解消のための施策は、障害者基本法に基づく障害者施策の1つとして、障害者基本計画に盛り込むことになる。
  2. また、障害者政策委員会は、障害者基本法第32条第2項第3号の規定により、「障害者基本計画の実施状況を監視」することとされており、障害者基本計画に盛り込まれた差別の解消に向けた施策は、障害者政策委員会による監視の対象となる。

【4.条例との関係】

問4-1 本法の成立により、地方公共団体による障害を理由とする差別に関する条例の制定に何らかの拘束が生じるのか。

(答)
  1. 本法の成立後においても、地方公共団体が地域の実情に即して、いわゆる上乗せ、横出し条例を含む障害を理由とする差別に関する条例を制定することは、当然に可能である。
  2. 本法には、条例を拘束するものではない旨の規定は特段置いていないが、今後、本法の施行までの期間において、地方公共団体にその旨周知することとしたい。

【5.他の制度との関係】

問5-1 本法の制定に伴い、関連する諸制度についても見直しを行うべきではないか。

(答)
  1. 本法は、個別の場面における特定の障害者に対する取扱いを対象とするものであり、他の法律により定められる立法内容そのものを対象とするものではない。また、既存の制度に基づく個々の取扱いについても、正当な理由がある場合には不当な差別的取扱いには当たらないと考えている。したがって、既存の制度に関して、本法によって一律的にその見直しが必要となるものではない。
  2. 既存の制度については、障害者権利条約の締結に向けた国内法の整備として、既に、同条約の趣旨を踏まえた見直しがなされてきているものと認識しており、今後も、障害者施策全体を推進する中で、それぞれの法目的も踏まえ、社会的な情勢の変化等必要に応じた検討がなされるべきであると考える。

【6.法の名称等】

問6-1 本法の名称について、「差別の禁止」ではなく「差別の解消」としている理由如何。

(答)
本法においては、行政機関や事業者等における障害を理由とする差別を禁止するとともに、それを社会において実効的に推進するための基本方針や指針の策定等の措置や、相談・紛争解決の体制整備等の国や地方公共団体における支援措置についても定めており、これらを通じて差別のない社会を目指すものとして、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」としている。

【7.対象分野】

問7-1 本法で差別の解消のための措置の対象としている分野の範囲如何。

(答)
  1. 本法では、教育、公共交通、医療、雇用、役務の提供、刑事手続等の行政機関による活動など、障害者基本法において「障害者の自立及び社会参加の支援等のための基本的施策」として規定されている分野も含めた広範な分野を対象としている。
  2. なお、雇用分野については、本法の対象分野には含まれるものの、今国会で成立した障害者の雇用の促進に関する法律の改正法において、差別の禁止等の具体的な措置が定められることから、本法第3章に規定する差別の解消のための具体的な措置については、障害者雇用促進法の定めるところによることとしている。

問7-2 差別が禁止される分野毎に、場面・事項を具体的に明記するべきではないか。

(答)
  1. 差別が禁止される各分野において、何が差別に当たり得るのか、合理的配慮としてどのような措置が望ましいのか、といった具体的な内容については、国や地方公共団体等が定める対応要領や主務大臣が定める対応指針により、今後明らかにしていくこととしている。
  2. なお、障害を理由とする差別は障害者の自立と社会参加に関わるあらゆる場面で発生する可能性があることから、相談事例や裁判例の蓄積が必ずしも十分とは言えない現段階では、法文上網羅的に具体的な場面や事項を記載することは困難であり、仮に記載しようとした場合、かえって本法の対象が限定される恐れがある。
  3. このため、本法においては対象分野を包括的に規定し、分野毎の具体的な場面・事項を法文上明記することについては、将来的に本法施行後の具体的な相談事例や裁判例の集積等を行った上で、必要に応じて検討することが適切と考えている。

【8.障害者雇用促進法との関係】

問8-1 第13条(事業主による措置に関する特例)の趣旨如何。

(答)
  1. 雇用分野については、労使の紛争解決の蓄積がある都道府県労働局等を活用した紛争解決制度を構築すること等、雇用分野特有の内容を定める必要があることから、今国会で成立した障害者の雇用の促進等に関する法律の改正法により具体的な措置を規定することとしている。
  2. 本法は、障害者の自立と社会参加に関わる広範な分野を対象するものであり、本法と障害者雇用促進法とで重複が生じることを避ける必要があるため、雇用分野における具体的な措置については障害者雇用促進法に委ねる旨の規定を置くこととしたものである。

問8-2 合理的配慮に関して、民間事業者は努力義務となっているが、雇用分野については、民間事業者も含めて義務となっていることとの関係如何。

(答)
  1. 本法は事業分野を特定せず、包括的に事業者に対して障害者に対する合理的配慮を求めるものであるが、障害者と事業者との関係は事業分野ごとに様々であり、求められる配慮も多種多様であることから、自公民の3党における議論において、本法においては、事業者については努力義務としている。
  2. 雇用分野については、障害者の自立や社会参加にとって極めて重要な分野であり、労働者と事業主とは雇用契約における継続的な関係にあることなどを踏まえて、事業主等の合理的配慮の提供を義務としたところである。

問8-3 障害者雇用促進法において一部適用除外とされている国家公務員や地方公務員の雇用関係については、本法においてはどのような扱いになるのか。

(答)
国家公務員や地方公務員の雇用関係における差別の禁止については、障害者雇用促進法の改正法においては、国家公務員法、地方公務員法等の個別法令の規定に拠るとの前提の下、その一部が適用除外とされているところ、第13条の規定により、本法との関係においても同様の整理となる。

【9.法の対象範囲】

問9-1 本法は、事業者でない一般私人の行為や個人の思想や言論も対象としているのか。

(答)
本法においては、事業者でない一般私人の行為や個人の思想、言論については、法により規制することは不適当と考えられることから対象としていない。一般私人については、第15条に規定する国や地方公共団体による啓発活動を通じ、本法の趣旨の周知を図っていくこととする。

問9-2 障害者への誹謗中傷等、ネット上での書き込みは、本法により規制されるのか。

(答)
本法においては、事業者でない一般私人の行為や個人の思想、言論については、法により規制す ることは不適当と考えられることから対象としていない。ただし、国民に対して啓発を行っていくことは非常に重要と考えている。

問9-3 難病の方は、本法の対象になるのか。

(答)
難病のある方についても、難病に起因する心身の機能の障害があり、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受けている状態にある方は、本法の対象となる。

問9-4 本法の障害者には障害児も含まれるのか。

(答)
  1. 本法の障害者の定義は、障害者基本法と同じであり、障害児も当然に含まれる。
  2. なお、第7条第2項、第8条第2項に規定する「社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮」については、障害者の年齢等に応じた配慮を行うべき旨、規定しているところ。

問9-5 障害者の親が子どもの障害を理由として不当な差別的取扱いを受けた場合などは、本法の対象になるのか。

(答)
本法は、あくまで障害者本人を対象とするものであるが、例えば、障害児を持つ親が、当該障害児の付き添いとして当該障害児とともに施設を利用しようとしたときに、当該障害児の障害を理由として障害児同伴での施設の利用について不当な差別的な取り扱いを受けた場合などは、対象となりうるものと考える。

問9-6 本法の対象から国会や裁判所が除外されている理由如何。

(答)
立法府である国会、司法府である裁判所については、国の機関としての一般的な責務の対象から排除されるものではないが、第3章に規定する差別の禁止等に係る具体的な措置については、三権分立の観点からそれぞれ実態に即して自律的に必要な措置を講じることとすることが適当であるため、これらの規定の対象機関には含めていない。

問9-7 「独立行政法人等」を「行政機関等」に含める理由如何。

(答)
  1. 本法においては、国の行政機関や地方公共団体は、率先して差別の解消に取り組むことが要請されることから、合理的配慮の提供について法的義務を課すなど、民間事業者とは異なる扱いをしているところ、独立行政法人等の政府の一部を構成するとみられる法人などの公的主体についても、国の行政機関等と同様に整理したものである。
  2. なお、民間事業者については、障害者と相手方の関係は様々であり、求められる配慮も多種多様であることから、努力義務とした上でガイドラインにより自発的な取組を促すこととしている。

問9-8 具体的にどのような法人が政令で指定されるのか。

(答)
本法における「独立行政法人等」の範囲については、独立行政法人の他に公共的な性格を持つ特殊法人、認可法人等の中でも、政府の一部を構成するとみられる法人としており、具体的には、理事長などを大臣などが任命している法人、又は政府が出資をすることができる法人を原則として対象とすることを想定している。

問9-9 学校法人や社会福祉法人は「独立行政法人等」に含まれるのか。

(答)
学校法人や社会福祉法人は、「法律により直接に設立された法人」、「特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人」、「特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要する法人」のいずれにも該当しないことから、第2条第5号の「独立行政法人等」には含まれず、第2条第7号の「事業者」に含まれる。

問9-10 地方独立行政法人から「地方独立行政法人法第21条第3号に掲げる業務を行うもの」が除外されている理由如何。

(答)
地方独立行政法人法第21条第3号に掲げる業務を行う「公営企業型地方独立行政法人」については、地方独立行政法人法において「常に企業の経済性を発揮する」ことが求められていることや、原則として業に要する経費を事業収入で賄うことが前提とされていることから、本法第2条第7号の「事業者」として扱うことが適当であるため、地方独立行政法人から除いているものである。

問9-11 地方公共団体から「地方公共団体の経営する企業」が除外されている理由如何。

(答)
地方公営企業については、根拠法である地方公営企業法において「常に企業の経済性を発揮する」ことが求められていることや、原則として業に要する経費を事業収入で賄うことが前提とされていることから、本法第2条第7号の「事業者」として扱うことが適当であるため、地方公共団体から除いているものである。

問9-12 国公立の学校や福祉施設については、「行政機関等」に含まれるのか。

(答)
国の独立行政法人や、地方公共団体などがその事務・事業の一環として設置、運営している学校や福祉施設は、基本的には本法における「行政機関等」に含まれる。

問9-13「事業者 商業その他の事業を行う者」の範囲如何。

(答)
個人か団体か、営利目的か非営利目的かを問わず、同種の行為を反復継続して行う者であって、国、第二条第四号に規定する独立行政法人等、地方公共団体及び第二条第五号に規定する地方独立行政法人等を除いたものを指す。

問9-14 事業を行う者の「事業」には、例えば、対価を得ない無報酬の事業や、社会福祉法人や特定非営利活動法人の行う非営利事業も含まれるのか。

(答)
本法における「事業」は、営利目的か非営利目的かを問わず、反復継続して行われる同種の行為であり、対価を得ない無報酬の事業や社会福祉法人や特定非営利活動法人の行う非営利事業も含まれる。

【10.差別の定義・概念】

問10-1 本法で「障害を理由とする差別」の定義規定を置かない理由如何。

(答)
  1. 個別の事案において特定の行為が差別に該当するか否かは、それぞれの事案に応じて個別具体的に判断されるものであり、本法では、「障害を理由とする差別」についてあらかじめ一律に定めることはしていない。
  2. 今後、本法に基づく対応要領や対応指針において具体的事例等を示すとともに、本法の施行後、具体的な相談事例や裁判例を積み上げていく中で、具体的にどのような行為が差別に当たり得るのかについて、国民の間で認識の共有が図られるよう、努めていくこととしている。
  3. 法施行3年後の見直しにおいて差別に関する定義を盛り込むかどうかについては、今後の具体的な相談事例や裁判例の集積を踏まえ、検討することになる。

問10-2 本法で解消を目指す「障害を理由とする差別」は、障害者権利条約における「障害を理由とする差別」と同じものか。

(答)
本法は、障害者基本法第4条の差別の禁止に関する規定を具体化するものである。障害者基本法第4条の「差別の禁止」に関する規定は、障害者権利条約の締結に向けた国内法の整備の一環として改正したものであり、障害者権利条約の趣旨を踏まえて定めているものである。

問10-3 「不当な差別的取扱い」の「不当な」とはどのような意味か。

(答)
  1. 「不当な差別的取扱い」という用語は、例えば、職業安定法等、幅広い分野にわたる多くの法律で用いられているところ。
  2. 「不当な」とは、当該取扱いに正当な理由がある場合には、本法により禁止される不当な差別的取扱いには該当しないという趣旨である。

問10-4 差別禁止部会で議論された差別の4類型と本法で禁止される差別の関係は。また、差別禁止部会意見で示された「間接差別」や「関連差別」が規定されなかった理由如何。

(答)
  1. 差別禁止部会で提起されたのは「直接差別」「間接差別」「関連差別」「合理的配慮の不提供」の4類型であるが、本法においては、「不当な差別的取扱い」及び「合理的配慮の不提供」を差別としている。
  2. 「直接差別」に関しては、基本的には「不当な差別的取扱い」に含まれる。その上で、「間接差別」「関連差別」については、具体的にどのような事例が該当するのか必ずしも定かではなく、現時点で一律に判断することは困難であるため、具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえた上で対応することとしている。

問10-5 「社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮」とは何か。

(答)
  1. 本法第7条、第8条にいう「社会的障壁の除去についての必要かつ合理的な配慮」とは、障害者基本法第4条第2項を具体化するものとして本法に規定しているものであり、障害者が日常生活や社会生活において受ける様々な制限をもたらす原因となる社会的な障壁を取り除くため、その実施に伴う負担が過重でない場合に、特定の障害者に対して個別の状況に応じて講じられるべき措置である。
  2. 典型的な例としては、たとえば、乗り物への乗車に当たっての職員等による手助けや、筆談、読み上げ等の障害の特性に応じたコミュニケーション手段による対応、段差の解消のための渡し板の提供等が考えられる。
  3. 具体的にどのような行為が差別に当たり得るのかについては、今後、本法に基づく対応要領や対応指針において示すこととしている。

問10-6 本法において、「合理的配慮の不提供」(社会的障壁の除去の実施に関する必要かつ合理的な配慮を行わないこと)は「障害を理由とする差別」に当たるのか。

(答)
  1. いわゆる「合理的配慮の不提供」については、既に障害者基本法第4条第2項に規定が置かれており、法文上、社会的障壁の除去の実施に関する「必要かつ合理的な配慮」を行わないことが、一定の条件の下で「障害を理由とする差別」に当たる旨が明確に規定されている。
  2. 本法は、この基本法の規定を具体化するものであり、本法においても、社会的障壁の除去の実施に関する「必要かつ合理的な配慮」を行わないことによって障害者への権利利益侵害をもたらす場合には、障害を理由とする差別に当たる。

問10-7 本法における合理的配慮は、障害者権利条約を踏まえたものになっているのか。

(答)
いわゆる「合理的配慮の不提供」については、既に障害者基本法第4条第2項において、障害者権利条約の趣旨を取り込んだ規定が置かれているところ。本法はこの基本法の規定を具体化するものであり、本法における「合理的配慮の不提供」(社会的障壁の除去の実施に関する必要かつ合理的な配慮を行わないこと)も、障害者権利条約の趣旨を踏まえたものとなっている。

問10-8 「障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて」とあるが、これは、障害者権利条約第6条、第7条の女性や子どもに関する特別な措置に関する規定を踏まえたものか。

(答)
  1. 「障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて必要かつ合理的な配慮をしなければならない」という規定は、障害のある女性や子どもに対する特別な措置について定めた障害者権利条約第6条、第7条の趣旨も踏まえたものである。
  2. この規定を踏まえながら、今後、基本方針、対応要領、対応指針を作成していくに当たり、女性や子どもに対する配慮を図っていきたい。

問10-9 合理的配慮の提供について、行政機関等のみが義務で民間事業者は努力義務としている理由如何。

(答)
障害者と相手方の関係は様々であり、求められる配慮も多種多様であることから、本法においては、合理的配慮について、一律に法的義務とするのではなく、国の行政機関や地方公共団体、独立行政法人等の政府の一部を構成するとみられる法人などの公的主体については法的義務を課し、民間事業者については、努力義務を課した上で対応指針により自発的な取組を促すこととしている。

問10-10 民間事業者の合理的配慮について、努力義務にとどめているが、どのようにして実効性を確保するのか。

(答)
  1. 障害者と相手方の関係は様々であり、求められる配慮も多種多様であることから、本法においては、合理的配慮について、一律に法的義務とするのではなく、国の行政機関や地方公共団体、独立行政法人等の政府の一部を構成するとみられる法人などの公的主体については法的義務を課し、民間事業者については、努力義務を課した上で対応指針により自発的な取組を促すこととしている。
  2. その上で、主務大臣が特に必要があると認めるときは、報告の徴収、助言、指導、勧告といった措置を講ずることができることとしており、これらの権限が適切に行使されることにより、実効性が確保されるものと考える。

問10-11 「現に社会的障壁の除去の実施を必要としている旨の意思の表明」の具体的な意味如何。

(答)
  1. 個別具体的な場面において、社会的障壁の除去の実施に関する配慮を必要としている状況にあることを、言語(手話も含む。)その他の意思疎通のための手段により伝えることを指す。
  2. 「その他の意思疎通のための手段」とは、障害者が他人とコミュニケーションを図るに当たって必要な手段をいい、具体的には、筆談、実物や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達等をいう。

問10-12 障害者からの「意思の表明」があった場合に限定している理由如何。意思の表明がない場合には、「必要かつ合理的な配慮」を行う必要はないのか。

(答)
  1. 「意思の表明があった場合において」としているのは、「合理的配慮」とは、社会的障壁の除去を必要としている障害者が現に存在する場合における個別の対応として求められるものであり、配慮を求められる相手方から見て、当該者が障害者なのか、配慮を必要としているか否かが分からない場合についてまで、具体的に配慮を義務付けることが困難なためである。
  2. 合理的配慮については、障害者権利条約において「特定の場合において必要とされるもの」と定義され、個別具体的な場面で必要とされるものとの趣旨が表されており、これを踏まえた障害者基本法第4条第2条においても「それ(社会的障壁の除去)を必要とする障害者が現に存し」を規定されているところ。
  3. なお、障害者からの意思の表明がない場合にも、法的な義務は発生しないものの、行政機関等や事業者が自主的に適切な配慮を行うことは、本法の趣旨に照らし望ましいことと考えている。

問10-13 「意思の表明」については、障害者本人からの意思の表明に限られるのか。「意思の表明」ができない障害者については、「必要かつ合理的な配慮」はできないことになるのか。

(答)
知的障害等により本人が自ら意思を表明することが困難な場合には、その家族等が本人を補佐して意思の表明をする場合も、解釈上含み得るものと考えている。

問10-14 「家族等」とは具体的に誰なのか。

(答)
障害者の家族等としては、たとえば障害者の家族、支援者等、コミュニケーションを補佐できる者が該当する。

問10-15 「その実施に伴う負担が過重でないとき」かどうかを判断するに当たっては、どのようなことが考慮されるのか。また、その検討過程において、関係者の意見の聴取は行われるのか。

(答)
  1. 「その実施に伴う負担が過重でないとき」の判断に当たっての考慮要素としては、例えば、事業等の規模やその規模からみた負担の程度、財政状況、業務遂行に及ぼす影響といったものが考えられる。
  2. 今後、本法第6条に規定する基本方針において典型的な考慮要素を例示するとともに、対応要領や対応指針において具体的な内容を明らかにすることを想定しており、その検討過程においては、障害者や事業者等の関係者の意見を反映させるための措置を講ずることとしている。

問10-16 中小零細企業などから合理的配慮による負担を懸念する声もあるが、「その実施に伴う負担が過重でないとき」の判断では、事業規模も考慮されるのか。

(答)
  1. 障害者権利条約においては、合理的配慮について、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」とされており、本法では、この趣旨を踏まえて「実施に伴う負担が過重でないとき」と規定しているもの。
  2. 事業者の場合には、事業等の規模やその規模から見た負担の程度といった要素も考慮されるべきであり、こうした考慮を通じ、中小零細企業についても配慮していく必要があると考えている。
  3. いずれにしても、基本的な考え方については、今後、基本方針や対応要領、対応指針において示していく予定である。

【11.環境の整備】

問11-1 第5条(社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備)の趣旨如何。第5条に規定する「環境の整備」と第7条及び第8条に規定する「社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮」とはどのような関係にあるのか。

(答)
第5条は、バリアフリー法に基づく公共交通施設や建築物等のハード面のバリアフリー化等、不特定の障害者を対象に行われる「事前的改善措置」について規定したものである。こうした措置は、第7条及び第8条に規定する「社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮」の実施に向けた環境の整備として位置付けられるものであり、差別の解消に向けた取組として計画的に推進されることが望ましいことから、国の行政機関や民間事業者等において、その実施に努めることとしている。

問11-2 第5条に違反した場合どのような法的効力があるのか。第13条に規定する行政措置の対象となるのか。

(答)
第5条は事業者等の一般的な責務として「環境の整備」に努めなければならない旨を規定したものであり、第13条の行政措置の対象となるものではない。

問11-3 事前的改善措置については、主務大臣による報告の徴収並びに助言、指導及び監督の規定(第12条)は適用されないが、事前的改善措置が不十分である場合、主務大臣は、必要な措置を講ずるよう指導等ができないのか。

(答)
  1. 第5条は、このような環境の整備が行われることが社会において差別の解消を推進していくに当たり重要であることから、本法において合理的配慮の提供が求められている行政機関等及び事業者に対する責務規定として環境の整備に努めるよう求めるものである。
  2. 本法においては、当該規定に係る主務大臣による指導等は規定していないが、例えば、バリアフリー法に基づく公共的施設や交通機関のハード面のバリアフリー化等、既存の法令に基づく取組については、当該法令に基づき所管大臣による指導等が行われることは考えられる。

問11-4 いわゆるバリアフリー法や、放送法第4条第2項など、これまでも不特定多数の障害者を対象とした事前的な措置を規定する法令の規定は存在しているが、これらとの第5条との関係如何。

(答)
既存の法令に基づく不特定多数の障害者に対する「事前的改善措置」については、それぞれの法令の趣旨に照らし義務付け等の対象となっていることに加え、差別の解消の推進の観点から、本法第5条に規定する「社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備」としても位置付けられるものであり、本法及びそれぞれの法令に基づき積極的に推進されることが望ましいと考える。

【12.基本方針】

問12-1 基本方針を作成する理由、必要性如何。

(答)
障害を理由とする差別の解消の推進は、雇用、教育、医療、公共交通等、障害者の自立と社会参加に関わるあらゆる分野に関連し、各府省の所掌に横断的にまたがる施策である。そこで、政府として、施策の総合的かつ一体的な推進を図るとともに、行政機関間や分野間における取組のバラつきを防ぐため、施策の基本的な方向等を示す基本方針を策定することとしている。

問12-2 基本方針に定める事項として、具体的にどのような内容を想定しているのか。

(答)
  1. 「障害を理由とする差別の禁止に関する立法措置に係る主な論点と基本的な考え方について」に盛り込まれた考え方や、各行政機関等が定める対応要領や各主務大臣が事業分野ごとに定める対応指針の基本となる事項等を盛り込むことを想定している。
  2. 具体的には、第1号の「障害を理由と差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向」に関しては、本法の理念や、本法と障害者基本法の関係、施策全般にわたる基本的な考え方などを、第2号、第3号の「行政機関等や事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項」に関しては、対応要領や対応指針に盛り込むべき事項や作成に当たって留意すべき点などを、第4号の「その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する事項」に関しては、環境の整備などの差別の解消の推進に関する取組や相談及び紛争防止等のための体制の整備や啓発活動、情報の収集、地域協議会などの支援措置についての基本的な考え方などについて、記載することを想定している。

問12-3 基本方針等の作成に当たり、障害当事者の意見は聞くのか。関係者の意見を反映させるために具体的にどのような措置を想定しているのか。

(答)
  1. 本法においては、基本方針や対応要領、対応指針の作成に当たり、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない旨規定している。
  2. 具体的には、例えば、障害者や事業者等を構成員に含む会議の開催や障害者団体や経済団体等からのヒアリング等が考えられ、こうした措置を講ずることにより、障害者や事業者等の関係者の意見が実質的に反映されるようにすることが求められる。
  3. 対応要領、対応指針については、「関係者の意見を反映させるために必要な措置」の具体的な内容について、基本方針において一定の考え方を示した上で、各行政機関等において判断することになる。

【13.対応要領、対応指針】

問13-1 対応要領、対応指針を定める趣旨如何。

(答)
  1. 本法においては、国の行政機関、地方公共団体、民間事業者等に対し、障害を理由とする差別に当たる行為を禁止しているが、「障害を理由とする差別」についてあらかじめ一律に定めることはしていない。
  2. 個別の事案において特定の行為が差別に該当するか否かは、それぞれの事案に応じて個別具体的に判断されるものであり、その具体的な内容については、法律であらかじめ一律に定めるという形ではなく、分野等の特性に応じてきめ細かく具体的事例等を示すとともに、今後、社会の情勢の変化や国民の障害者に対する理解の深まりなどに伴って、柔軟に見直し、内容を充実させていくべきものと考えている。
3.このため、本法では、行政機関毎、分野毎の差別の具体的な内容を示すものとして、対応要領や対応指針を定めることとしている。

問13-2 対応要領の具体的内容としてどのようなものを想定しているのか。

(答)
本法第7条に定める事項について当該機関の職員の適切な対応に資するものとして、例えば、基本方針に即した障害を理由とする差別の基本的考え方や当該機関等における障害を理由とする不当な差別的取扱いになり得る行為の具体例、当該機関等における社会的障壁の除去についての必要かつ合理的な配慮として考えられる好事例等が考えられる。

問13-3 対応要領が作成される具体的な分野はどのようなものを想定しているのか。

(答)
対応要領は、行政機関等の事務又は事業を行うに当たって職員が適切に対応するために作成されるものであり、対象となる分野は、行政機関等が行うあらゆる事務又は事業である。

問13-4 地方公共団体による対応要領の作成を努力義務としている理由如何。

(答)
地方公共団体における対応要領の作成については、昨今の地方分権改革の趣旨に鑑み、一律に義務付けることは適当でないことから、努力義務としたものである。政府としては、地方公共団体が対応要領を作成することを期待するところであり、また、地方公共団体が対応要領を作成する場合に国が必要な協力をしなければならない旨規定しているところである。

問13-5 公立学校の職員に対する対応要領は、どこが作るのか。各学校ごとに作成する必要があるのか。

(答)
  1. 本法律案では、対応要領の作成に係る努力義務は、「地方公共団体の機関」に課せられていることから、原則としては、地方公共団体の判断により、地方公共団体全体(長)として又はその執行機関(教育委員会)ごとに作成することとなる。
  2. また、当該地方公共団体において、教育委員会ごとに作成することとなった場合には、各教育委員会は、当該地方公共団体に身分が属する職員に係る要領を作成すると考えられ、都道府県教育委員会にあっては都道府県立学校に属する職員、市町村教育委員会にあっては市町村立学校に属する職員に係る要領を作成することとなる。

問13-6 都道府県の警察職員の対応要領は、どこが作成するのか。

(答)
本法律案における対応要領は、政府の基本方針に即して、個別具体的な場面において、地方公共団体等の個々の職員が障害者と接する場合の対応等について具体的事例や好事例を示すものであり、都道府県警察においては、警視総監若しくは道府県警察本部長及び当該都道府県公安委員会が共同で作成することが想定される。

問13-7 対応指針については「事業者が適切に対応するために必要な指針」とされているのに対し、対応要領については「職員が適切に対応するために必要な要領」とされており、職員個人に責任を負わせているように読めるが、法人格としての国の行政機関や地方公共団体の責任は担保されているのか。

(答)
行政機関等については、第7条において、不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供を含む「障害を理由とする差別」が禁止されており、これにより、事務又は事業を行う主体としての行政機関等が適切に対応するということは、当然に義務付けられている。

問13-8 対応指針の具体的内容としてどのようなものを想定しているのか。

(答)
本法第8条に定める事項について事業者の適切な対応に資するものとして、例えば、基本方針に即した障害を理由とする差別に関する基本的考え方や当該分野における障害を理由とする不当な差別的取扱いになり得る行為の具体例、当該分野における社会的障壁の除去についての必要かつ合理的な配慮として考えられる好事例等が考えられる。

問13-9 対応指針は、事業者との関係で法的拘束力を有するのか。

(答)
  1. 対応指針は、行政機関等の職員や民間事業者の適切な判断に資するよう、「不当な差別的取扱い」の想定例や「社会的障壁の除去の実施に関する必要かつ合理的な配慮」の好事例等を示すものであり、盛り込まれた取組や事例を事業者に強制するという意味で事業者に対する法的な拘束力を持つものではない。
  2. ただし、第12条に定める主務大臣による報告の徴収、助言・指導、勧告を行うに当たっては、対応指針に定められた事項が主務大臣の判断の基準となる。

問13-10 主務大臣が対応指針を定める必要がある事業分野の範囲如何。

(答)
各主務大臣が所管する障害者の自立と社会参加に関わる事業分野すべてである。

問13-11 対応指針は、どのような単位で作成されるのか。事業分野ごとに作成されるのか、主務大臣毎に所管するすべての施策分野を包括する一つの指針が作成されるのか。

(答)
所管事業分野における指針の定め方については、事業の実施における障害者への対応という面で分野ごとに違いが生じるか否か等、事業分野の実態を踏まえ、一義的には、主務大臣の裁量に委ねられる。

問13-12 対応要領、対応指針の形式は具体的にどのようなものを想定しているのか。

(答)
対応要領については、国の行政機関でいえば訓令、地方公共団体の機関では当該機関の長が定める規則などを想定している。また、対応指針については、告示などを想定している。

問13-13 対応要領や対応指針に定める事項や内容について、各府省間でバラつきが生じるのは問題ではないか。どのようにして均一性を確保するのか。内閣府においてフォローアップ等を行うのか。

(答)
  1. 対応指針や対応要領については、第6条に規定する基本方針において、各府省における作成に資するよう、本法における「障害を理由とする差別的取扱い」や「社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮」についての基本的な考え方や対応指針に共通的に定めるべき事項等について示し、一定の均一性を図ることを想定している。
  2. また、併せて、対応指針の運用状況の把握や基本方針の見直し等により、横断的なフォローアップを図っていく予定である。

問13-14 対応要領や対応指針に規定されていない事項については差別ではない、というような誤解を生まないようにすることが必要ではないか。

(答)
  1. 対応要領や対応指針において、本法により禁止される差別となり得る行為を網羅的に記載することは困難なものと考えられ、対応要領や対応指針において差別として位置付けられていない行為の全てが本法において禁止される差別となり得ないと解することは適当ではないものと考えられる。
  2. そのような誤解を生まないよう、例えば、パンフレットやポスター等の作成・配布、説明会やシンポジウムの開催等により、対応要領や対応指針の趣旨・内容も含めた本法の適切な理解に向け、周知徹底を図っていくことを考えている。

問13-15 第6条第4項にある「障害者その他の関係者」とは、具体的にはどのような者が想定されるか。

(答)
障害者、障害者の家族、障害者の支援団体等のいわゆる障害当事者、障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者、本法により差別の解消のための取組が求められる地方公共団体や事業者などを想定している。

問13-16 「あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置」として具体的にどのような措置を想定しているのか。

(答)
例えば、障害者や事業者等を構成員に含む会議の開催や障害者団体や経済団体等からのヒアリング等が考えられる。こうした措置を講ずることにより、関係者の意見が実質的に反映されるようにすることが求められる。具体的にどのような措置を講じるかは、基本方針において一定の考え方を示したうえで、各行政機関等が判断することになる。

【14.法的効力、実効性の確保】

問14-1 本法には私法上の効果が規定されていないが、本法の私法上の効力如何。また、どのようにして本法の実効性を確保するのか。

(答)
  1. 本法においては、損害賠償請求権、契約の無効等の私法上の効果については規定しておらず、本法の私法上の効力については、民法等の一般規定に従い個々の事案に応じて判断されることになる。
  2. 一方、本法においては、主務大臣が特に必要があると認めるときは、報告の徴収、助言、指導、勧告といった措置を講ずることができることとしており、これらの権限が適切に行使されることにより、実効性が確保されるものと考える。

問14-2 民間事業者については報告の徴収等が規定されているが、行政機関等については、特に実効性担保の措置が定められていない。例えば、行政機関等による処分等が問題となる場合や、行政機関等の職員が本法に違反する行為をした場合には、どのようにして是正が図られるのか。

(答)
行政機関等の処分等が問題となるような場合には、例えば、行政不服審査法に基づく不服申立てを行うことが考えられる。また、仮に行政機関等の職員において本法に違反する行為があった場合には、例えば行政機関等の内部における服務規律確保のための仕組みや行政相談等の仕組みにより、是正が図られることになる。

問14-3 服務規律と対応要領の関係はどうなるのか。「対応要領」は「遅滞なく公表しなければならない」とされるが、服務規律のなかに対応要領が位置づけられる場合、服務規律を公表することになるのか。

(答)
  1. 「対応要領」は、行政機関等の職員が守るべき内部的な規範として定められることを想定しており、このような規範は服務規律の体系に位置付けられることが一般的であると考える。
  2. 本法においては、対応要領を公表することを求めており、対応要領が当該行政機関等において、服務規律の一部を構成している場合には、対応要領の部分について服務規律が公表されることになる。

問14-4 第12条にいう「特に必要があると認めるとき」とは、具体的にどのような場合を想定しているのか。

(答)
具体的な場合として主として想定しているのは、例えば、事業者が障害者に対し障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いを行い、その結果障害者の権利利益が侵害される懸念がある場合であって、同一の事業者によるものと考えられる事案が頻発しているなど、事業者による自主的な改善を期待することが困難である場合などである。

問14-5 「特に必要があると認めるとき」の判断が難しい場合があると考えられるが、本規定について、実際にどのように運用していくのか。

(答)
本規定については、各主務大臣が定める対応指針に基づきその適切な運用が図られるものと認識している。また、基本方針において、「特に必要があると認められるとき」として想定される場合等、主務大臣の権限行使の在り方に関する基本的な考え方を示すことが考えられる。

問14-6 第8条第2項は事業者に対して努力義務を課すものであるが、いかなる考え方により努力義務に対して助言、指導、勧告を行うことができるのか。

(答)
本法は事業分野を特定せず、包括的に事業者に対して障害者に対する合理的配慮を求めるものであるが、障害者と事業者との関係は事業分野ごとに様々であり、求められる配慮も多種多様であることから、与党WT及び自公民の3党における議論を踏まえ、本法においては、事業者の合理的配慮については努力義務とした上で、例えば、事業者による自主的な改善を期待することが困難である場合などには、実効性の確保の観点から、事案に応じて、事業者の行為の是正を促すことができることとしている。

問14-7 主務大臣を対応指針の対象となる事業者の事業を所管する大臣とする理由如何。

(答)
  1. 本法に定める差別の禁止等の規定の実効性を確保する観点からは、各事業者の行う事業を所管する大臣又は国家公安委員会が、当該事業の適正な運営を確保する一環として、その事業を行うに当たっての障害を理由とする差別の解消についても責任を有するとすることが、適切である。
  2. このため、本法においては、事業者の事業を所管する大臣を主務大臣とし、各主務大臣が、所管する事業者が適切に対処するための指針を作成するとともに、特に必要があると認める場合には、指針に定める事項について報告の徴収等を行うことができることとしている。
  3. なお、各主務大臣が所管する事業については、各府省の設置法の所掌事務に照らして判断されることになる。

【15.相談、紛争の防止・解決、啓発活動、情報収集】

問15-1 第14条(相談及び紛争の防止等のための体制の整備)の趣旨如何。

(答)
障害を理由とする差別の解消を効果的に推進するためには、障害者本人やその周囲からの相談に対して的確に応じるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止や解決を図ることができるよう、社会全体として体制整備を図ることが重要であることから、国や地方公共団体において、必要な体制の整備に努めることとしている。

問15-2 「必要な体制の整備」とは、具体的に何を意味するのか。新たな機関の設置を想定しているのか。

(答)
  1. 本法においては、障害者からの相談に応じ又は紛争の防止や解決を図るための体制について、行政肥大化防止等の観点から、新たな機関は設置せず、既存の機関等の活用・充実を図ることとしており、本条では、既存の機関が、障害を理由とする差別の解消に関する事項について適切に対応できるような体制の整備について、行政の責務として規定している。
  2. 具体的には、既存の機関において、相談や紛争解決に対応する職員の確保や、窓口等の設置を含めた体制の見直しなどに努めることを想定している。

問15-3 既存の機関における体制の整備は、各府省や地方公共団体ごとに行われるのか。これまで相談や紛争解決の仕組みをもっていないような機関でも、相談窓口を設けることになるのか。

(答)
  1. 本法では、障害を理由とする差別の解消を効果的に推進する観点から、国や地方公共団体において相談及び紛争の防止等のための必要な体制整備に努めると規定している。
  2. この趣旨を踏まえ、政府として定める基本方針の中で体制整備の基本的な考え方を盛り込み、それに即して、各府省等において、相談窓口の整備等も含め、適切な体制整備を図るよう努めていくことになる。

問15-4 行政機関自らによる「不当な差別的取扱い」または「必要かつ合理的配慮の不提供」があった際には、どこに救済の相談にいけばよいのか。

(答)
行政機関において、その職員の対応に問題がある場合などは、まずは、当該行政機関内の窓口に申し出ることが考えられる。そのほか、例えば、総務省の行政相談や、人権に関わる相談であれば法務局や地方法務局などによる対応も考えられる。

問15-5 第15条(啓発活動)の趣旨如何。

(答)
障害を理由とする差別の解消を効果的に推進していくためには、国民各層の関心を高め、その理解を協力の下に推進することが重要であることから、国及び地方公共団体において、必要な啓発活動を行うこととしている。

問15-6 「障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因」について、政府としては具体的にどのようなものを考えているのか。

(答)
障害を理由とする差別については、国民一人一人の障害に対する知識の不足、障害者に対する意識の偏りに起因する面も大きいと考えている。このため、こうした差別のない社会を実現するための妨げとなるような諸要因を解消するためにも、啓発活動が極めて重要であると考えており、今回の法律の施行を通じ、障害に対する正しい知識の普及、障害者に対する国民の意識啓発等に取り組んで参りたいと考えている。

問15-7 啓発活動の具体的な内容や進め方如何。

(答)
  1. 啓発活動の例としては、例えば、本法の趣旨や内容について周知徹底を図るためのパンフレットやポスター等の作成・配布、説明会やシンポジウム等の開催等が考えられる。
  2. 本規定を踏まえた啓発活動の具体的な内容については、第6条に基づく基本方針に基本的な事項を盛り込むとともに、実施に当たっては、関係省庁や地方公共団体とも連携して取り組んでまいりたい。

問15-8 障害者支援施設やグループホーム・ケアホームなどの立地をめぐる反対運動については、本法との関係でどのような措置が講じられるのか。

(答)
障害者支援施設やグループホーム・ケアホームなどの立地をめぐる反対運動については、障害者に対する理解が十分でないことに拠るところもあると考えられることから、行政において、住民に対する啓発を行うとともに、本法の趣旨を踏まえ、障害者支援施設の認可等に際して住民の同意を求める等の他の施設の認可にはない特別な措置を行わないようにすることが適切と考える。

問15-9 第16条(情報の収集、整理及び提供)の趣旨如何。

(答)
障害を理由とする差別の解消に向け本法を効果的に運用していくためには、差別の解消に関する国際的な動向や海外の類似の法制度の運用実績、国内における差別に関する具体的な事例等の情報を収集し、それを法の運用に活かすとともに、その成果を国民に公表し、理解と関心を高めることが必要であることから、国において、必要な情報の収集、整理及び公表を行うこととしている。

問15-10 収集・整理した情報については、毎年公表すべきではないか。

(答)
障害を理由とする差別の解消に関する情報の提供の在り方については、本法の施行の状況を踏まえながら検討する必要があるが、障害者白書の活用なども含め積極的に情報の収集、整理及び公表を行ってまいりたいと考えている。

【16.障害者差別解消支援地域協議会】

問16-1 「障害者差別解消支援地域協議会」を組織できることとする趣旨如何。

(答)
  1. 障害を理由とする差別の解消を効果的に推進するためには、国レベルでの施策に加え、障害者にとって身近な地域において、それぞれの地域の特性を踏まえた主体的な取組が推進されることが必要である。
  2. そこで、本法においては、地域において障害者差別に関する相談や紛争の防止・解決を推進するためのネットワークを構築する観点から、国や地方公共団体の機関が地域協議会を組織することができることとしている。
  3. このような協議会が組織されることにより、いわゆる「制度の谷間」や「たらいまわし」が生じることなく、地域全体として障害を理由とする差別の解消に向けた取組が行われることになることを期待している。

問16-2 地域協議会の具体的な役割として、具体的に、どのような場合にどのような情報交換や取組を行うことを想定しているか。

(答)
  1. 地域協議会の事務としては、障害者からある構成機関等に障害を理由とする差別についての相談があり、かつ、当該構成機関等のみでは対応しきれないような場合に、協議会の構成機関等の間でこのような事案の情報を共有するとともに、それぞれの機関等における経験や専門知識を持ち寄り、障害者からの相談への対応や、当該事案を踏まえた具体的な差別の解消策等について協議することを想定している。
  2. 更に、このような協議の結果に基づき、各構成機関等がそれぞれ自らの役割に応じ、差別の解消に向けた取組を実施することを想定している。

問16-3 地域協議会が自ら障害者等からの相談を受けることは、可能か。

(答)
地域協議会の1つの在り方として、協議会自体が障害者や事業者等からの相談を受けるようなものも、可能であると考える。

問16-4 地域協議会が調停等の紛争解決を行うことは可能か。地域協議会は、地域における問題解決にどのように寄与するのか。

(答)
  1. 地域協議会においては、地域において障害者差別に関する相談や紛争の防止・解決を推進するためのネットワークを構築し、協議会の構成機関等の間で障害を理由とする差別に関する事案の情報を共有するとともに、それぞれの機関等における経験や専門知識を持ち寄り、障害者からの相談への対応等について協議することを想定している。
  2. 協議会が自ら調停を行うことは想定していないが、行政措置の権限を有する行政機関等に橋渡しをしたり、調停やあっせん等の機能を有する既存の紛争解決機関へ結びつけていく、という形で問題の解決を後押ししていくことが、重要であると考えている。
  3. このように、協議会が適切な機関へ事案をつなぐ役割を担うことや、情報やノウハウの共有を通じた既存の相談・紛争解決機関の機能の向上により、地域全体として障害を理由とする差別に関する相談・紛争解決機能の向上が図られることが期待される。

問16-5 地域協議会における協議の結果に基づき、行政機関が事業者に対して指導等を行うことは、可能か。

(答)
協議の結果を踏まえ、地域協議会から、本法第12条による主務大臣の権限行使など行政措置の権限を有する行政機関に橋渡しを行うことは、可能であると考える。

問16-6 国の出先機関は、協議会を組織する関係機関として想定されているのか。

(答)
  1. 国の出先機関は、協議会を組織する「関係機関」として含まれる。
  2. 地域協議会が、協議の結果を踏まえて行政措置の権限を有する主務大臣への橋渡しを行うことは、問題解決の1つの形として重要であり、出先機関が含まれる場合、この橋渡しがスムーズになることが期待されることから、出先機関を含むことは有効であると考える。

問16-7 地域協議会で取り上げられた相談事例を基にして主務大臣が第12条の権限行使を行う場合、第19条の秘密保持義務との関係はどうなるのか。

(答)
地域協議会が、地域協議会で取り上げられた相談事例について主務大臣に対し情報提供を行う場合、
<1>主務大臣は、法律に基づき、事業者に対して報告の徴収、助言、指導、勧告を行う権限を有しており、かかる権限を持つ者に対して地域協議会がその権限の発動を求めて事案の情報提供を行うことは正当な行為であると考えられること
<2>主務大臣には国家公務員法上の秘密保持義務が課せられていること
から、このような情報提供は差別解消法第19条にいう「秘密を漏ら」す行為には当たらないものと考えられる。

問16-8 庶務を地方公共団体が行うとされている趣旨如何。

(答)
  1. 地域協議会においては、地域において障害者差別に関する相談や紛争の防止・解決を推進するためのネットワークを構築し、協議会の構成機関等の間で障害を理由とする差別に関する事案の情報を共有するとともに、それぞれの機関等における経験や専門知識を持ち寄り、障害者からの相談への対応等について協議することを想定している。
  2. このような協議会の趣旨から、当該地域における障害者施策の推進を担い、既存の関係機関等のネットワークの要となり得る地方公共団体の部局等に、庶務を担っていただくことが適切と考えている。

問16-9 政府として、地域協議会の設置を促進するため、どのような支援を考えているのか。

(答)
  1. 内閣府としては、例えば、地方における先進的な取組の事例を収集し提供することや、設置状況を把握し公表すること等の支援を積極的に行い、地域協議会ができるだけ多くの地域において組織されるよう、後押ししてまいりたい。
  2. なお、地域協議会が組織されることに伴い、地方公共団体にどの程度の業務量が発生し、人的配置がどの程度必要になるか、今後、地方公共団体をはじめ関係者の意見も聴きながら、検討していく必要があると考えている。その上で、関係省庁とも連携し、必要な財政支援の在り方についても、検討してまいりたい。

問16-10 「その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野」とはどのようなものが想定されているのか。

(答)
障害者の自立と社会参加に関連する分野については、例えば、福祉、雇用、人権擁護、まちづくりなど、地域における障害者の自立と社会参加に関する行政分野が幅広く含まれる。

問16-11 障害者雇用促進法の定めるところによるとされている雇用分野についても、地域協議会が扱う分野に含まれるのか。

(答)
  1. 本法においては、雇用分野については、本法の対象分野には含まれるものの、今国会で成立した障害者の雇用の促進に関する法律の改正法において、差別の禁止等の具体的な措置が定められることから、本法第3章に規定する差別の解消のための具体的な措置については、障害者雇用促進法の定めるところによることとしている。
  2. 一方、第4章に規定している地域協議会については、これらの具体的な措置を社会全体として推進するための国や地方公共団体による「支援措置」の1つとして位置付けられるものであり、対象分野には、雇用分野も含まれる。

問16-12 地域協議会の構成員として加えることができる「その他必要があると認める者」としてどのような者を想定しているのか。

(答)
協議会の構成員としてどのような者を含めるかについては、条文上挙げられている特定非営利活動法人、有識者の他、各地域において障害を理由とする差別の解消に関わる者がそれぞれ果たしている役割等、地域の実情を踏まえ、それぞれの協議会の関係機関において判断されるものである。

問16-13 「当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組」とは具体的に、誰がどのように取組を行うことを想定しているのか。

(答)
地域協議会において、障害者等からの相談事案について情報共有が行われた際に、当該事例を踏まえた協議の結果に基づき、各構成機関等が、それぞれ自らの役割に応じて、当該事案の解決のための取組や類似事案の発生の防止のための取組等を行うことを想定している。

【17.施行までのスケジュール等】

問17-1 施行期日の考え方如何。

(答)
基本方針については、本法に基づく差別の解消に当たる取組が円滑に行われるためには、あらかじめ、関係者の意見を十分に踏まえた上で基本方針や指針等を適切に定めるとともに、国民に対し、本法の趣旨や基本方針、指針等の内容を十分に周知しておくことが不可欠である。このため、基本方針等の作成および国民への周知期間を適切に確保するため、約3年の準備期間を設け、平成28年4月1日を施行日とした。

問17-2 基本方針や対応要領、対応指針の作成等、施行までの具体的なスケジュール如何。

(答)
平成28年4月1日の施行までのスケジュールについては、内閣府としては、
<1>まず、基本方針について、本法の成立後速やかに作成に着手し、障害者政策委員会における意見聴取、関係者からの御意見の反映など、必要な手続を経た上で、遅くとも今年度内にとりまとめ、
<2>その後遅くとも1年以内に各行政機関や各主務大臣において対応要領及び対応指針を作成する方向で考えている。
<3>さらに、その後施行までの少なくとも1年程度をかけて、本法の趣旨・内容及び基本方針、対応要領、対応指針の内容について、国民への周知徹底を図ることを想定している。

問17-3 本法の施行までに、具体的にどのようにして本法の周知を行っていくのか。

(答)
  1. 本法の円滑な施行に向けては、規制の対象となる事業者も含めた国民全般の理解と関心を得ることが、非常に重要と認識していている。
  2. 本法の施行までの間において、できる限り十分な時間を確保し、パンフレットやポスター等の作成・配布、説明会やシンポジウム等の開催等を通じて、本法及び本法に基づき今後作成する基本方針や対応要領、対応指針の趣旨・内容について周知徹底を図っていくことを考えている。

【18.施行3年後の見直し等】

問18-1 法の施行状況についての検討に要する期間を3年と定めた理由如何。

(答)
本法を施行した後、その施行状況の検討に当たっては具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえる必要があることから、そのような事例等の集積に最低限必要な期間として3年としているもの。

問18-2 今後の本法の見直しに当たっては、差別禁止部会の意見を踏まえた方向性で検討が行われるのか。

(答)
  1. 差別禁止部会の意見は、障害当事者や学識経験者等から構成される部会における全25回、延べ100時間にも及ぶ議論の成果をまとめたものであり、政府としても十分尊重する必要があると考えている。
  2. 施行後3年の見直しに当たっては、差別禁止部会をはじめとする様々な意見や、具体的な相談事例・裁判例の集積などを踏まえ、幅広く検討することが必要であると認識している。

問18-3 3年後の見直しに当たっては、民間事業者の合理的配慮の義務付けの在り方も検討の対象になるのか。

(答)
本法の附則第7条では、政府は、本法の施行後3年を経過した場合において、本法第8条第2項に規定する社会的障壁の除去についての必要かつ合理的な配慮の在り方その他この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行う旨規定している。

※第8条第2項:事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。

問18-4 本法の施行状況については、どのようにしてモニタリングをしていくのか。障害者政策委員会の監視の対象となるのか。

(答)
  1. 本法の施行後は、内閣府において、各主務大臣における対応要領や対応指針の運用状況、国や地方公共団体による支援措置の実施状況等を府省横断的に把握するとともに、差別に関する具体的な相談事例や裁判例等の集積を図り、その結果を踏まえ、附則第7条に規定する施行3年後の法の見直しの検討に活かすことを想定している。
  2. また、法の見直しの前後に関わらず、対応指針等の運用状況や相談事例等の集積を踏まえ、必要に応じ、基本方針等の見直しやそれを踏まえた各府省における対応要領、対応指針の見直しを行い、本法の効果的な運用を図っていくことが重要と考えている。
  3. なお、障害者基本計画に盛り込まれた施策に関しては、同基本計画のフォローアップ等の対象になるとともに、障害者政策委員会の監視の対象にもなる。

問18-5 本法に基づく基本方針や対応要領、対応指針については、事例の集積等を踏まえ、内容を改善していく、いわゆるPDCAサイクルにより見直しを図っていくことが必要ではないか。

(答)
  1. 基本方針、対応要領、対応指針は、社会の情勢の変化や国民の障害者に対する理解の深まりなどに伴って、内容を充実させていくべきものと考える。
  2. このため、本法においては、国において、差別の解消に関する国際的な動向や海外の類似の法制度の運用実績、国内における差別に関する具体的な事例等、国内外の情報を収集することとしており、その結果も踏まえつつ、適宜、必要な見直しを行っていくこととしている。

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