障害者差別解消法に基づく対応要領改定案及び対応指針改定案に関する合同ヒアリング 議事概要(5月10日)
厚生労働省

  1. 日時 令和5年5月10日(水)14:10~15:10
  2. 場所 中央合同庁舎8号館1階講堂(WEB会議にて開催)
  3. 概要
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    開会
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    厚生労働省所管の障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領、対応指針の改正案について改正内容の説明
    • 大臣官房人事課より厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領について、配布資料に基づき改正内容の説明が行われた。
    • 障害保健福祉部企画課より福祉事業者向けガイドラインの改正案について、配布資料に基づき改正内容の説明が行われた。
    (3)
    質疑応答・意見交換

    出席団体から厚生労働省所管の対応要領案及び対応指針案について、以下のような意見交換が行われた。

    • ○特定非営利法人DPI日本会議
      • 厚生労働省の対応指針は、福祉事業者向け、衛生事業者向け、医療従事者向け、社会保険労務士向けの4分野に分かれており、障害特性ごとの具体的な対応例等が記載されているのが特徴的だが、具体的にどういう例が差別に当たるのかという、具体的な差別事例が欲しい。
      • 今回の法改正に伴う対応指針のバージョンアップについて、次の4点についてお願いしたい。 1点目に、差別の具体的事例の掲載。 2点目に、新設されたこども家庭庁のガイドラインには明記されている、合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例について、厚労省の4分野のガイドラインも同様の追記をしてほしい。その際に、相談窓口に電話リレーサービスの制度の対応をすること、抽選申込の講座への参加で、介助者や支援者が必要な障害者が当選した場合、介助者や支援者の同行を認めないのは義務違反に該当することも追記してほしい。 3点目に、対応要領に関して、正当な理由があり、不当な差別的取扱に該当しないと考えられる事例について、実習を伴う講座において、具体的な危険な発生が見られる障害特性のある障害者に対して、当該実習とは別の実習を設定する、という項目がある。しかし、主催者が危険だと思っても、当事者は危険ではないと考える場合もある。本人との建設的対話の上で当該実習と別の実習をするということを追記してほしい。 4点目に、対応要領、対応指針ともに、相談啓発研修について、次の項目を入れていただきたい。1つ目に、雇用主、役員管理職を含むすべての職員について、複合差別の課題、環境整備について研修啓発のプログラムに入れること。2つ目に、相談者の性別に配慮した相談窓口を設けること。具体的には女性の相談員は必ず配置していただくこと。3つ目に、障害のある女性の相談支援業務の参画確保。4つ目に、情報保障を行うこと、または相談窓口において電話リレーサービスを行うこと、本人の意思を尊重し、建設的対話を行い、問題の解決を行うこと。最後に、相談事例の蓄積と公表を行うこと。こちらを対応要領、対応指針に入れていただきたい。
      • 今年から障害者基本法の差別解消、権利擁護の推進及び虐待の防止という項目について、障害福祉サービス提供に当たっては、利用者の意向を踏まえ、本人の意思に反した異性介助を行わないよう取り組みを進めるとあるので、ガイドライン改定の際にも対策を講じてほしい。後日、資料としてDPIでも募集した差別事例をお送りするため、具体的事例としてあげてほしい。また、募集した事例の中には、雇用や職場の関係も多くある。これについては法律的には差別解消法というより障害者雇用促進法の関係もあるが、職場の問題もかなり多くあり、こちらも資料を送るので、何らかの形で触れていただきたい。
      • 障害者総合支援法の関係でも、直接障害者差別解消法には影響しないかもしれないが、市町村にはローカルルールが増えている。こちらも事例をお送りする。障害者差別解消法の観点からも、市町村のローカルルールにおいては、サービスの横出し、上乗せはいいが、社会的障壁となっているケースは問題だと思うので、検討いただければと思う。
    • ○難病疾病団体協議会
      • 難病の場合は、それぞれの疾病によって、障害特性が非常に多様である。また外見から抱えている症状は分からず、理解しにくい。たとえば、厚労省における対応要領に「研修・啓発」があるが、難病も残念ながらまだ社会の中で大変差別が多い状況であり、研修の機会などでもぜひ患者から直接体験を聞いてもらう等、具体的に患者や障害者の姿が見える研修にしていただきたい。数多くこのような機会を得ることで、合理的配慮や他人ごとではなく、自分の事として捉えた対応ができるように、患者の困難が具体的にどのようなものであるか、想像力を働かせることが障害特性の理解につながると考える。
      • 次に、合理的配慮について、建設的対話について書かれているが、「障害者本人が社会的障壁の除去のため、普段講じている対策」とあるが、これらから学ぶことは非常に大きい。難病の患者の多くは、病状の悪化を防ぐために、予防が必要であり、多くの制限の中で生活している。日光過敏により紫外線にあたれず、日光の中、長時間並ぶこともできない。また寒さ対策が必要な患者もいて、研修の場でも配慮が必要。これらは生命に関わることなので、今出ている障害、症状だけでなく、様々な病気による制限や配慮について、理解をいただきたい。これらが明確に分かるように記載をお願いしたい。
      • 対応指針について、非常に詳しく細かな部分まで触れていただいているのはありがたい。難病についての記載では、比較的、共通する主なところを挙げてもらっている。例えば疲れやすさと症状の変動について書かれているが、薬の効き具合による日内変化といわれる短時間に変動する状態もあるので、これらも特に注意が必要である。個々によって必要な制限や予防に対する配慮、病状が悪化しない予防に対する配慮もこちらに記載をお願いしたい。
    • ○全日本ろうあ連盟
      • 全面的な考え方に関することだが、まず、合理的配慮の提供の環境整備の考え方について、障害者本人が合理的配慮を申し立てるとき、過重に負担を感じることがある。聞こえない、聞こえにくい者の場合、動画や映像等に手話通訳、字幕などを付けることで、初めて情報を得ることが可能となる。会議等に関しても、手話通訳又はノートテイク等、それらの情報提供の保障があれば会議に参加ができる。そのような配慮は初めから、そのような環境をつくるという考え方になるかと思われる。
      • 手話通訳に関しても、予算等の理由で情報保障をしないということがあり、情報保障を奪われないような配慮をお願いしたい。また、研修等に関して、障害者、当事者を呼んで、生の声を聞く環境で、研修を受けていただくような配慮をお願いしたい。
      • 合理的配慮の考え方では、障害に応じた、社会的障壁の除去、という話があった。視覚障害の場合の特性があり、また聴覚障害には聴覚障害の特性がある、という話が出たが、その障害者を一括りにして、「特性がある」と捉えないでいただきたい。聞こえない者については手話通訳が必要である、また手話通訳が無ければ筆談が必要である、と、障害の程度によって、それぞれの合理的配慮が違うということを理解いただき、その点を含めていただきたい。
      • 今回、合理的配慮の義務に関して、事業者に関しては、努力義務が法的義務に変わる、とあった。障害者雇用促進法にも関わることだが、会社からの内定後に、研修を受けることがある。その時に手話通訳者、または要約筆記者の環境を事業者側が準備することをお願いしたい。地域によって格差があるので、一律に平等に、事業者の負担として手話通訳者、要約筆記者の用意をするよう記載をお願いしたい。
    • ○全国手をつなぐ育成会連合会
      • 特に福祉事業の分野、とりわけ、障害福祉サービス従事者向けのお願いだが、障害福祉サービスは言うまでもなく、障害のある人の支援特性をアセスメントし、それに基づく、いわば合理的配慮を支援の基軸として運営されているものと理解している。したがって、障害福祉サービスの事業所で差別的取扱いや合理的配慮の不提供の残念な事例がおこる可能性が低い。それ故にお役目として、障害特性、合理的配慮のポイントといったプロならではの視点の助言や啓発、これを地域に広めていく役割を、ぜひ対応指針に1歩踏み込んで、記載してほしい。
      • 医療従事者向け対応指針について、これは良い事例の報告だが、知的・発達障害者が院内の環境になじめず、病院内に入ることができないとき、院外に医師、看護師が出てきて、車内でできる範囲内で診察したというという話がある。また、白衣に強く反応して、診察を拒否するといった状況のとき、通常の服に着替えて対応したという報告もある。このような配慮は、ぜひ医療機関の対応指針の中、具体例として盛り込んでほしい。
      • 衛生事業分野について、衛生事業は旅館、ホテル、理美容、公衆浴場、映画館、劇場まで守備範囲に入る。幅が広いが故に一般的な内容になっている。対応指針には可能な限り、接客シーンを具体的にイメージできる例を盛り込んでほしい。接客シーンはそれぞれ異なるので、そのシーンごとに具体例を示したほうがわかりやすいと思うので、検討をお願いする。
    • ○日本発達ネットワーク
      • 対応要領について、これは内閣府の対応要領が下敷きになっているので、どうしても同様になっており、独自性がないようである。たとえば、対応要領の相談体制整備について、今までの具体的相談や、それをどのように解決したか、その合理的配慮の内容を書いていただくと、それぞれの省庁の固有性や、リアリティが出て、同様でないところがいくつかあれば、それぞれの省庁が配慮していることが分かるため、いろいろな人にヒアリングし、具体的事例を盛り込むと良いと思う。
      • 事業者向けのガイドラインについて、合理的配慮の提供に当たっては、「個別支援計画やサービス・ケアプランに位置づけるなど取り組むことが望まれる」とあるが、もう少し強調して、「なお合理的配慮の提供にあたっては、個々の障害者の合理的配慮の内容をアセスメントし、計画的に実行する個別支援計画(サービス利用計画)に位置づける」とすると、なお重要性や具体的にこうすればいいと分かる。
      • 発達障害に関して、注意欠陥多動性障害の主な特性について、「いろいろなことに関心を持ったりエネルギッシュに仕事に取り組まれる方もいる」とありますが、「いる」というのは動物的な表現であり、物に対する表現のようなので、ここはエネルギッシュに取り組まれる場合もあるとするなど、物のように扱わないでほしい。
    • ○全国精神保健福祉連合会
      • 指針で新たに設けられた事業者への研修啓発についてでは、精神障害についても言及いただきたい。なかなか事例としては、精神障害のことを指し示すことがデフォルトとして難しいこともあり、類例などが示せない中で、事例を通じ、それを精神障害に展開できるように、研修や啓発の時に留意していただきたい。
      • 医療従事者のガイドラインでは、精神科病院従事者の人に対しては、特段の配慮、手当を必要とするところがあるのかもしれないが、ぜひ、ガイドラインが精神科病院等にも、定着していけるような展開をぜひあわせてしていただくことも必要と感じている。
    • ○日身連
      • 肢体不自由者というところで、車いす使用と、それから18ページには、「杖等を使用している場合」とありますが、何人かの方々に上肢の障害、上肢がうまく使えない人の場合についてはどうなのか、と聞かれることがあります。ただ、杖などを使用されている場合の下に、上肢障害があるなら、片手や筋力が落ちた状態で作業ができる配慮とあり、これはもっともですが、上肢障害の方への配慮というのが、片手だけでは蓋を開けることができないとか、タオルを絞ることができないとか、いろいろな工夫があれば、できることでもあります。衣服の着脱でもあります。上肢の障がいの方への項目を起こしていただけるか、検討していただきたいと思います。
    • ○全国盲ろう者協会
      • 障害特性に応じた対応について、それぞれの障害特性について、対応を分けて考えてしまわないように、というのを何かしら最初に明記できたらと考える。それぞれの対応のやり方では、細かく書くことによって縛りが出てこないか、という懸念もある。
        盲ろう者の中には、車椅子を利用するもの、肢体不自由や精神障害のものなど、いろいろな障害を併せ持つ場合もある。それぞれの障害が複数ある場合に関しても、何かしら柔軟性を持って対応する、それぞれの個々に応じて、さらに柔軟に、障害当事者本人と、協議や建設的対話を行い、何かしら1つのラベルでその人を見てしまったり対応したりしないような注意事項のようなものが書き加えてあれば有り難い。
    • ○日本視覚障害者団体連合
      • 厚生労働省の対応要領の中の、別紙の中に合理的配慮にあたりうる、意思疎通の配慮の例ということで、いくつかの例があり、その中に「書類記入の依頼時に」という文章がある。厚生労働省の対応要領だと本人の依頼があれば代読、代筆を行うというのがある。これについて、患者として視覚障害者が来院することが想定される機関には対応要領の中にこの例を挙げていただきたい。すべての対応要領を今示すことはできないが、例えば国立がん研究センターの同様の箇所を見ると、代読・代筆の部分が入っていない。対応要領に記載されているのは具体例であり、この例に限られることではない、というのは充分承知しているが、同意書の記載のところで、常に視覚障害者は障壁にあたるので、厚労省に記載していただいている例を、記載していただければ大変有り難いと思う。
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    閉会