目次]  [次へ

第1章 障害者施策の総合的かつ計画的な推進
-新たな障害者基本計画(第4次)の策定-

第1節 第4次基本計画の策定の経緯

1.第4次基本計画の検討開始までの主な取組

障害者施策に関する基本法としての位置付けを有する我が国初の法律として、昭和45(1970)年に心身障害者対策基本法(昭和45年法律第84号)が制定された。同法は、心身障害者対策の総合的推進を図ることを目的として、心身障害者の福祉に関する施策の基本となる事項等を定めており、心身障害があるため長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者を「心身障害者」と位置付けていた。

平成5(1993)年、同法は障害者基本法に改正され、従来の心身障害者に加え、精神障害により長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者についても、新たに「障害者」と位置付けられることとなった。さらに、法の目的も、障害者の自立とあらゆる分野の活動への参加の促進に改められた。

その後、平成16(2004)年の改正では、障害者差別等をしてはならない旨が基本的理念として新たに規定されるとともに、中央障害者施策推進協議会が創設された。さらに、平成23(2011)年の改正では、障害者権利条約の批准に向けた国内法整備の一環として、いわゆる「社会モデル」の考え方や「合理的配慮」の概念が新たに取り入れられるとともに、国内において障害者基本計画の実施状況を監視し、勧告を行う機関として、障害者政策委員会が新たに設置された。

この障害者基本法に基づき、平成25(2013)年9月に「障害者基本計画(第3次)」(以下「第3次基本計画」という。)が閣議決定された。第3次基本計画では、各分野に共通する横断的視点として、「障害者の自己決定の尊重及び意思決定の支援」、「当事者本位の総合的な支援」、「障害特性等に配慮した支援」、「アクセシビリティ(※1)の向上」及び「総合的かつ計画的な取組の推進」の5点が掲げられるとともに、10の分野ごとに基本的考え方や具体的な取組が示されており、障害者政策委員会における実施状況の監視を経ながら、それぞれの分野において、同計画に基づき着実に取組が進められた。

※1:アクセシビリティ
施設・設備、サービス、情報、制度等の利用しやすさのこと。

2.障害者政策委員会における検討

第3次基本計画の計画期間が平成29(2017)年度をもって満了することを踏まえ、障害者政策委員会において、平成28(2016)年10月以降、「障害者基本計画(第4次)」(以下「第4次基本計画」という。)の策定に向けた精力的な調査審議が行われた。

我が国の障害者施策の分野においては、2020年東京パラリンピックの開催決定、障害者権利条約の批准、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)(以下、「障害者差別解消法」という。)の施行等の大きな動きがあり、障害者政策委員会における調査審議においては、こうした動向も踏まえつつ、第4次基本計画が第3次基本計画から質的な深化を遂げたものとなるよう、障害者施策の大きな方向性や取り組むべき政策課題等について、大局的・俯瞰的見地より議論が行われた。

その結果、計11回にわたる審議を経て、平成30(2018)年2月、「障害者基本計画(第4次)の策定に向けた障害者政策委員会意見」が取りまとめられた。

3.第4次基本計画の策定

政府においては、障害者政策委員会の意見に即して第4次基本計画の案を作成し、パブリックコメントを経て、平成30(2018)年3月30日に第4次基本計画を閣議決定した。

第2節 第4次基本計画の位置付け及び構成

1.第4次基本計画の位置付け

第4次基本計画は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第1項の規定に基づき、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定されるものであり、政府が講ずる障害者のための施策の最も基本的な計画として位置付けられている。

2.第4次基本計画の対象期間

第4次基本計画は、平成30(2018)年度からの5年間を対象としている。

3.第4次基本計画の構成

第4次基本計画は、「Ⅰ 障害者基本計画(第4次)について」、「Ⅱ 基本的な考え方」及び「Ⅲ 各分野における障害者施策の基本的な方向」で構成されている。

「Ⅱ 基本的な考え方」では、計画全体の基本理念及び基本原則を示すとともに、各分野に共通する横断的視点や、施策の円滑な推進に向けた考え方を示している。

「Ⅲ 各分野における障害者施策の基本的な方向」では、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を11の分野に整理し、それぞれの分野について、第4次基本計画の対象期間に政府が講ずる施策の基本的な方向を示すとともに、関連する様々な施策を記載している。

第4次基本計画の概要については、図表1-1のとおりである。

図表1-1 第4次障害者基本計画 概要
図表1-1 第4次障害者基本計画 概要(2)
図表1-1 第4次障害者基本計画 概要(3)

第3節 第4次基本計画の基本的方向

1.2020年東京パラリンピックも契機とした社会的障壁の除去の強力な推進

第4次基本計画の計画期間中には、2020年東京オリンピック・パラリンピックが開催される。とりわけ、障害の有無にかかわらず、世界中からあらゆる人が集い、障害のある選手が繰り広げる圧倒的なパフォーマンスを直に目にすることのできるパラリンピック競技大会は、共生社会の実現に向けて社会の在り方を大きく変える絶好の機会となると考えられる。

このため、第4次基本計画では、2020年東京パラリンピックも契機として、障害者にとっての社会のバリア(社会的障壁)の除去に向けた取組を社会全体で強力に推進していくこととした。

具体的には、各分野に共通する横断的視点として「社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティの向上」を掲げ、社会のあらゆる場面でアクセシビリティ向上の視点を取り入れていくこととした。また、社会全体でICTが浸透しつつあることを踏まえ、社会的障壁の除去の観点から、様々な場面でアクセシビリティに配慮したICT等の新技術の積極的な導入を進めていくこととした。

2.障害者権利条約の理念の尊重及び整合性の確保

第4次基本計画は、我が国の障害者権利条約の批准(平成26(2014)年)以降、初めて策定される障害者基本計画であり、同条約の理念を尊重するとともに、整合性を確保することとした。

具体的には、各分野に共通する横断的視点として「条約の理念の尊重及び整合性の確保」を掲げ、障害者を、施策の客体ではなく、必要な支援を受けながら自らの決定に基づき社会に参加する主体として捉えるとともに、障害者施策の検討及び評価に当たり、障害者が意思決定過程に参画し、障害者の視点を施策に反映させることが求められる旨を明記した。その上で、障害者の政策決定過程への参画の促進や、当該政策決定過程において障害特性に応じた適切な情報保障その他の合理的配慮を行うことを盛り込んだ。

3.障害者差別の解消に向けた取組の着実な推進

第4次基本計画は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)(以下、「障害者差別解消法」という。)の施行(平成28(2016)年度)以降、初めて策定される障害者基本計画であり、同法の実効性ある施行を図るため、ハード・ソフトの両面から、各分野で障害者差別の解消に向けた環境の整備を着実に推進することとした。

具体的には、各分野における指針等の策定・改正等を通じて、同法に規定する環境の整備に係る具体的な考え方等を具体化するなど、障害者にも配慮した施設の整備やサービス・情報の提供等の一層の促進を図るとともに、地域において障害者差別の解消を推進するため、障害者差別解消支援地域協議会の設置を促進していくこととした。

4.成果目標の充実等

第4次基本計画を着実かつ効果的に実施していくため、全ての分野において成果目標を設定するとともに、成果目標数を大幅に充実させた(第3次基本計画は計45、第4次基本計画は計112)。主な成果目標は、図表1-2のとおりである。

さらに、各分野に共通する横断的視点として「PDCAサイクル等を通じた実効性のある取組の推進」を掲げ、成果目標も活用しながら、各分野において障害者施策のPDCAサイクルを構築し、着実に実行するとともに、当該サイクル等を通じて施策の不断の見直しを行っていくこととした。

5.障害のある女性、子供、高齢者の複合的な困難等への配慮

障害のある女性を始め、複合的に困難な状況に置かれた障害者に対するきめ細かい配慮が求められていることを踏まえ、各分野に共通する横断的視点として「障害のある女性、子供及び高齢者の複合的困難に配慮したきめ細かい支援」を掲げた。

とりわけ、障害のある女性については、それぞれの障害種別ごとの特性、状態により様々な支援が必要であることに加え、女性であることにより更に複合的に困難な状況に置かれている場合があることから、こうした点も念頭に置いて障害者施策を策定・実施する重要性についても明記した。

6.「命の大切さ」等に関する理解の促進

平成28(2016)年7月に発生した障害者施設における殺傷事件を踏まえ、「命の重さは障害の有無によって少しも変わることはない」という当たり前の価値観を社会全体で共有し、障害のある者と障害のない者が、お互いに、障害の有無にとらわれることなく、支え合いながら社会で共に暮らしていくことが日常となるように、国民の理解促進に努めることとした。

図表1-2 第4次障害者基本計画 主な成果目標

第4節 第4次基本計画の各分野における基本的考え方及び主な施策

各分野で掲げている基本的考え方及び主な関連施策は、それぞれ次のとおりである。

1.安全・安心な生活環境の整備

【基本的考え方】

  • 障害者がそれぞれの地域で安全に安心して暮らしていくことができる生活環境を実現するため、住環境の整備、移動しやすい環境の整備、アクセシビリティに配慮した施設等の普及促進、障害者に配慮したまちづくりの総合的な推進等を通じ、障害者の生活環境における社会的障壁の除去を進め、アクセシビリティの向上を推進する。

【主な具体的施策】

  • 障害者向け公共賃貸住宅の供給の推進、障害者への配慮(優先入居の実施、保証人の免除等)の促進
  • 新たな住宅セーフティネット制度(障害者等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度等)の創設
  • 公共交通機関のバリアフリー化(段差解消、ホームドア等の転落防止設備の導入等)の推進
  • 交通事業者等における教育訓練等の促進
  • 障害者等の安全快適な移動に資する新たなシステム(信号情報活用運転支援システム、安全運転支援システム及び高度道路交通システム)の研究開発、サービス展開
  • 建築物のバリアフリー化の促進
  • 日常生活製品等のユニバーサルデザイン化(※2)に関する標準化の推進
  • 国立・国定公園等におけるビジターセンター、園路等のバリアフリー化
  • パーキングパーミット制度(※3)の普及促進
  • ICTを活用した歩行者移動支援の普及促進(屋内外シームレスな電子地図や屋内測位環境等の空間情報インフラの整備・活用等による民間事業者等が多様なサービスを提供できる環境づくりの推進)
※2:ユニバーサルデザイン化
施設や製品等について、誰にとっても利用しやすいデザインにするという考え方。
※3:パーキングパーミット制度
障害者等用駐車スペースを利用できる対象者の範囲を設定し、条件に該当する希望者に地域の協力施設で共通に利用できる利用証を交付する制度。

2.情報アクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実

【基本的考え方】

  • 障害者が必要な情報に円滑にアクセスできるよう、障害者に配慮した情報通信機器・サービス等の開発・提供等の促進や、障害者が利用しやすい放送・出版の普及等の様々な取組を通じて情報アクセシビリティの向上を推進する。
  • 障害者が円滑に意思表示やコミュニケーションを行うことができるよう、意思疎通支援を担う人材の育成・確保や支援機器の開発等を通じて意思疎通支援の充実を図る。

【主な具体的施策】

  • 障害者に配慮した情報通信機器、サービス等の企画・開発・提供の促進
  • アクセシビリティに関する国際規格に基づいた情報通信機器等の調達の実施
  • 聴覚障害者が電話を一人でかけられるよう支援する電話リレーサービスの実施体制の構築
  • 字幕放送、解説放送、手話放送等の普及の促進
  • アクセシビリティに配慮された電子出版の普及の一層の促進
  • 手話通訳者等の育成・確保等を通じたコミュニケーション支援の充実
  • アクセシビリティに配慮した行政情報の提供(ICT等の新技術も積極的に利活用)

3.防災、防犯等の推進

【基本的考え方】

  • 障害者が地域社会において安全に安心して生活することができるよう、災害に強い地域づくりを推進するとともに、災害発生時に、障害特性に配慮した適切な支援や避難所・応急仮設住宅の確保等を行うことができるよう、防災や復興に向けた取組を推進する。
  • 障害者を犯罪被害や消費者被害から守るため、防犯対策や消費者トラブルの防止を推進する。

【主な具体的施策】

  • 災害発生時における障害特性に配慮した情報伝達の体制整備の促進
  • 避難所、応急仮設住宅のバリアフリー化の推進、福祉避難所(※4)の確保の促進
  • スマートフォン等を活用した音声によらない119番通報システムの導入の推進
  • 被災地における安定的な障害福祉サービスの提供(被災地の障害福祉サービス事業者に対する支援等)
  • ファックスやEメール等による110番通報の利用の促進
  • 関係機関や地域住民等と連携した障害者支援施設等の安全確保体制の構築
  • 障害者を含む性犯罪・性暴力の被害者等に対する支援体制の充実(行政の関与する性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの設置促進・運営の安定化等)
  • 障害特性に配慮した消費生活相談体制の整備(ファックスやEメール等での消費者相談の受付、相談員等の障害者理解のための研修等の促進)
※4:福祉避難所
一般の避難所では生活することが困難な要配慮者のために特別な配慮がなされた避難所。

4.差別の解消、権利擁護の推進及び虐待の防止

【基本的考え方】

  • 社会のあらゆる場面において障害を理由とする差別の解消を進めるため、障害者差別の解消に向けた取組を幅広く実施することにより、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)(以下、「障害者差別解消法」という。)等の実効性ある施行を図る。
  • 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号)の適正な運用を通じて障害者虐待を防止するとともに、障害者の権利侵害の防止や被害の救済を図るため、障害者の権利擁護を着実に推進する。

【主な具体的施策】

  • 相談支援専門員等による障害者虐待の未然防止
  • 障害者に対する差別・権利侵害の防止や被害救済のための相談・紛争解決等の実施体制の充実
  • 障害者差別の解消、合理的配慮の促進に向けたハード・ソフト両面での環境整備の着実な推進(環境整備の具体的な考え方等を指針等において具体化するなど、施策の円滑な実施に配意)
  • 障害者差別解消法に基づく地域協議会の設置の促進
  • ハローワーク等における指導、第三者による調停等の雇用分野における紛争解決援助
  • 書類の記入が必要な手続における記名捺印、代筆による対応等の配慮の促進

5.自立した生活の支援・意思決定支援の推進

【基本的考え方】

  • 自ら意思を決定・表明することが困難な障害者に対し、必要な意思決定支援を行うとともに、障害者が自らの決定に基づき、身近な地域で相談支援を受けることのできる体制を構築する。
  • 障害者の地域移行を一層推進し、障害者が必要なときに必要な場所で、地域の実情に即した適切な支援を受けられるよう取組を進める。
  • 在宅サービスの量的・質的な充実、障害のある子供への支援の充実、障害福祉サービスの質の向上、アクセシビリティ向上に資する機器の研究開発、障害福祉人材の育成・確保等に着実に取り組む。

【主な具体的施策】

  • 自ら意思を決定・表明することが困難な障害者に対する支援等の推進
  • 成年後見制度の適切な利用の促進(必要な経費の助成、成年後見等の業務を適正に行うことができる人材の育成等)
  • 様々な障害種別、年齢、性別、状態等に対応した総合的な相談支援の提供体制の整備
  • 発達障害児者やその家族に対する相談支援、発達障害者支援センターを中心とした地域生活支援体制の充実
  • 高次脳機能障害児者への支援体制の整備
  • ピアサポートを行う人材の育成、ピアサポート(※5)の推進
  • 利用者の障害特性に応じた専門職員による自立訓練(機能訓練、生活訓練)の取組の促進
  • 障害者の一人暮らしを支える新たなサービスである自立生活援助の導入
  • 医療的ケアが必要な障害児に対する地域における包括的な支援(保健・医療・福祉等の関係機関の連携促進)
  • 障害福祉サービス等の提供者に指導を行う者の養成及び配置の促進
  • 良質で安価な福祉用具に関する研究開発の推進
  • 身体障害者補助犬の育成、身体障害者補助犬を使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化
  • 福祉専門職、リハビリテーション等に従事する者、障害特性を理解したホームヘルパーの養成・人材確保、障害福祉サービス従事者の処遇改善や職場環境の改善
※5:ピアサポート
ピア(peer)は「仲間、同輩、対等者」の意。同じ課題や環境を体験する者がその体験から来る感情を共有することにより、専門職による支援では得がたい安心感や自己肯定感を得ることなどを目的とする。

6.保健・医療の推進

【基本的考え方】

  • 精神障害者への医療の提供・支援を可能な限り地域において行う。
  • 入院中の精神障害者の早期退院及び地域移行を推進し、いわゆる社会的入院の解消を進めるとともに、精神障害者の地域への円滑な移行・定着が進むよう、退院後の支援に関する取組を行う。
  • 障害者が身近な地域で必要な医療やリハビリテーションを受けられるよう、地域医療体制等の充実を図る。
  • 優れた基礎研究の成果による革新的な医薬品等の開発を促進するとともに、最新の知見や技術を活用し、疾病等の病因・病態の解明、予防、治療等に関する研究開発を推進する。
  • 質の高い医療サービスに対するニーズに応えるため、革新的な医療機器の開発を推進する。
  • 保健・医療人材の育成・確保や、難病に関する保健・医療施策、障害の原因となる疾病等の予防・治療に関する施策を着実に進める。

【主な具体的施策】

  • 地域における適切な精神医療提供体制の確立、相談機能の向上(専門診療科以外の診療科等と専門診療科との連携の促進、様々な救急ニーズに対応できる精神科救急システムの確立等)
  • 精神障害に対する多職種によるアウトリーチ(訪問支援)の充実
  • 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築(精神科医療機関、その他の医療機関、地域援助事業者、市町村等との重層的な連携による支援体制の構築等)
  • 精神障害者の退院後の地域生活への円滑な移行、定着を進める支援
  • 障害者が身近な地域で必要な医療やリハビリテーションを受けられるようにするための地域医療体制の充実
  • 障害者の健康増進に向けたサービスの提供や情報提供
  • 障害者の生活や自立を支援する機器開発の支援
  • 発達障害の診療・支援ができる医師の養成、巡回支援専門員等の支援者の配置の促進
  • 難病患者が受ける医療水準の向上に向けた難病の研究の推進、難病患者の安定した療養生活の確保、日常生活の相談支援

7.行政等における配慮の充実

【基本的考え方】

  • 障害者が権利を円滑に行使できるよう、司法手続や選挙等において必要な環境の整備や障害特性に応じた合理的配慮の提供を行う。
  • 行政機関の窓口等における障害者への配慮を徹底するとともに、行政情報の提供等に当たっては、ICT等の積極的な導入を行うなど、アクセシビリティへの配慮に努める。
  • いわゆる欠格条項について、各制度の趣旨も踏まえ、技術の進展、社会情勢の変化等の必要に応じた不断の見直しを行う。

【主な具体的施策】

  • 刑事事件の手続の運用における円滑な意思疎通等に向けた適切な配慮
  • 罪を犯した知的障害者等の再犯防止の観点からの社会復帰支援の充実(社会復帰の障害となり得る法的紛争の解決等に必要な支援等)
  • 障害特性に応じた選挙等に関する情報提供の充実(政見放送への手話通訳・字幕の付与等)
  • 投票所のバリアフリー化、代理投票の適切な実施等
  • 行政機関の職員等に対する研修を通じた窓口等における障害者への配慮の徹底
  • アクセシビリティに配慮したウェブサイト等による情報提供(キーボードのみで操作可能な仕様の採用、動画への字幕や音声解説の付与等)

8.雇用・就業、経済的自立の支援

【基本的考え方】

  • 働く意欲のある障害者がその適性に応じて能力を十分に発揮することができるよう、多様な就業機会の確保や、就労支援の担い手の育成等を図る。
  • 一般就労が困難な者に対しては福祉的就労の底上げにより工賃の水準の向上を図るなど、総合的な支援を推進する。
  • 雇用・就業の促進に関する施策と福祉施策との適切な組合せの下、障害者の経済的自立を支援する。

【主な具体的施策】

  • 雇用前の雇入れ支援から雇用後の職場定着支援までの一貫した支援
  • 事業主の障害者雇用への理解の促進(トライアル雇用(※6)の推進等)
  • 就業面及び生活面からの一体的な相談支援の実施(障害者就業・生活支援センターの設置の促進・機能の充実)
  • 障害者職業能力開発校における障害者本人の希望を尊重した職業訓練の実施
  • 就労に伴う生活面の課題に対する支援を行う就労定着支援による職場定着の推進
  • 精神障害者の雇用義務化も踏まえた精神障害者の雇用促進のための取組を充実
  • ICTを活用したテレワークの一層の普及・拡大
  • 農業分野における障害者の就労支援の推進(農業に取り組む障害者就労施設や企業等に対する情報提供や支援)
  • 就労継続支援A型事業所における就労の質の向上(安易な事業参入の抑制、事業所の経営状況の把握等)
※6:トライアル雇用
障害者を短期の試行雇用の形で受け入れることにより、その後の常用雇用への移行の促進を図ることを目的とする。

9.教育の振興

【基本的考え方】

  • 可能な限り共に教育を受けることのできる仕組みの整備を進めるとともに、障害に対する理解を深めるための取組を推進する。
  • 障害学生に対する支援を推進するため、合理的配慮の提供等の一層の充実を図るとともに、適切な支援ができる環境の整備に努める。
  • 障害者が、学校卒業後も含めたその一生を通じて、自らの可能性を追求できる環境を整え、地域の一員として豊かな人生を送ることができるよう、生涯を通じて教育やスポーツ、文化等の様々な機会に親しむための関係施策を横断的かつ総合的に推進する。

【主な具体的施策】

  • 障害の有無にかかわらず可能な限り共に教育を受けられる条件整備の推進、インクルーシブ教育システム(包容する教育制度)の整備の推進
  • 医療的ケアを必要とする子供や長期入院を余儀なくされている子供が教育を受けたり、他の子供と共に学んだりする機会の確保(医療的ケアのための看護師の配置等)
  • 入学試験における配慮の充実(ICTの活用等)
  • 個別の指導計画や個別の教育支援計画の策定・活用も通じた全ての学校における特別支援教育の体制の整備
  • 全ての教職員が障害に対する理解や特別支援教育に係る専門性を深める取組の推進
  • 一人一人の教育的ニーズに応じた教科書、教材、支援機器等の活用の促進(デジタル教科書等の円滑な制作・供給等)
  • 各大学等における障害学生に対する支援体制の整備の推進(相談窓口の統一、支援担当部署の設置、支援人材の養成・配置等)
  • 障害学生の就職の支援(就職・定着支援を行う機関、就職先となる企業・団体等との連携やネットワークづくりの促進)
  • 効果的な学習、支援の在り方等に関する研究や成果の普及等を通じた障害者の各ライフステージにおける学びの支援

10.文化芸術活動・スポーツ等の振興

【基本的考え方】

  • 全ての障害者の芸術文化活動への参加を通じて障害者の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解・認識を深め、障害者の自立と社会参加の促進に寄与する。
  • レクリエーション活動を通じ、障害者の体力の増強や交流、余暇の充実等を図る。
  • 地域における障害者スポーツの一層の普及に努めるとともに、競技性の高い障害者スポーツにおけるアスリートの育成強化を図る。

【主な具体的施策】

  • 特別支援学校における質の高い文化芸術の鑑賞・体験等の機会の提供
  • 障害の有無にかかわらず文化芸術活動を行うことのできる環境の整備(障害者のニーズに応じた文化芸術活動に関する人材の養成、相談体制の整備、関係者のネットワークづくり等)
  • 障害者等が地域社会における様々な活動に参加するための支援等(各種レクリエーション教室や大会・運動会の開催等)
  • 障害者が地域においてスポーツに親しむことができる施設・設備の整備
  • 誰もが障害者スポーツ種目に親しめる機会の提供、国を挙げた障害者スポーツの振興
  • 民間団体等が行う障害者スポーツに関する取組の支援
  • パラリンピック等の競技性の高い障害者スポーツにおけるアスリートの育成強化

11.国際社会での協力・連携の推進

【基本的考え方】

  • 障害者権利委員会による審査等に適切に対応するとともに、障害分野における国際的な取組に積極的に参加する。
  • 開発協力の実施に当たっては、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて取り組む。
  • 文化芸術活動やスポーツ等の分野を含め、障害者の国際交流等を推進する。

【主な具体的施策】

  • 国連や地域の国際機関等の国際的な非政府機関における障害者のための取組への積極的な参加
  • 障害者権利委員会による審査等への適切な対応
  • SDGsの達成に向けた「誰一人取り残さない」取組の推進
  • 障害者を含む社会的弱者に特に焦点を当てた開発協力の実施
  • 文化芸術活動・スポーツ等の分野における障害者の国際的な交流の支援
  • 障害者の文化芸術活動を含む日本の多様な魅力の発信
目次]  [次へ