第2章 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けた動き 3

目次]  [前へ]  [次へ

3.ユニバーサルデザインの加速に向けた取組状況

この行動計画をもとに、関係省庁等が共生社会の実現に向けた諸施策を推進する中、「ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議」を2020年度末までに4回開催し、レガシーとしての共生社会の実現に向け、施策の更なる進展を図ること、取組を加速化することの確認等を行った。また、障害のある人の視点を施策に反映させる枠組みとして、構成員の過半を障害当事者又はその支援団体が占める「ユニバーサルデザイン2020評価会議」(以下「評価会議」という。)を設置・開催した。

  • 第3回関係閣僚会議

  • ユニバーサルデザイン2020評価会議(第1回)

評価会議は2020年度末までに計4回実施されており、構成員の意見等を踏まえ、以下のとおり改善が図られている。

(1)共生社会ホストタウンのレガシー化

<共生社会ホストタウンの拡大>

・共生社会実現に向けた取組を実施する共生社会ホストタウンは、102件、その中でも他のモデルとなる先導的共生社会ホストタウンは、15件に拡大。(2021年4月末時点)

<バリアフリー法改正>

・共生社会ホストタウンの取組が東京大会のレガシーになるよう、バリアフリー法に基づくマスタープラン・基本構想制度における心のバリアフリーの取組を強化するとともに、ハード対策に加え、心のバリアフリーの観点からのソフト対策を強化するため、2020年5月にバリアフリー法を改正し、2021年4月から全面施行。

(2)心のバリアフリーの拡大・向上

<教育分野における取組>

・2020年度から小学校、2021年度から中学校で、新学習指導要領を踏まえた授業を全面実施。

<理解促進>

・事業者による合理的配慮の提供について現行の努力義務から義務へと改めること等を内容とする「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律」が2021年通常国会において成立した。

・高齢者障害者等用便房(バリアフリートイレ)について、「多機能トイレ」、「多目的トイレ」等ではなく、機能分散を推進し、その効果が現れるような表記等による周知、広報啓発の充実等の取組方針をとりまとめ、適正な利用を推進。

<観光施設における心のバリアフリー認定制度の創設>

・2020年12月、バリアフリー対応や情報発信に積極的に取り組む姿勢のある観光施設を対象とした「観光施設における心のバリアフリー認定制度」を開始。

<学校設備のバリアフリー化>

・障害のある児童生徒が情報端末機器を効果的に活用できるよう、一人一人に応じた音声文字変換システムや視線入力装置等の入出力支援装置の整備を支援。

<利便性向上>

・2019年7月、民間事業者が障害者手帳アプリをリリースし、2020年6月にマイナポータルとのシステム間連携を開始。情報の信頼性が向上し、連携前と比べ導入事業者数が2倍以上(3月末で約1,000者)に拡大。

・2020年6月、「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」(令和2年法律第53号)に基づき、電話リレーサービスを公共インフラ化する制度を導入。緊急通報対応や24時間対応も可能となり、2021年7月からサービス開始予定。

(3)公共交通のバリアフリー化

<バリアフリー普及に向けた基準等の策定・改定>

・2021年度からの5年間を目標期間とする新しいバリアフリー整備目標を策定。これにより、地方部を含めたハード・ソフト両面でのバリアフリー化をより一層推進。

・2020年3月、山手線内を中心に単独乗降しやすい駅を路線図上でわかりやすく示したバリアフリーマップを公表。

<新幹線の車椅子スペースの設置義務化>

・新幹線における車椅子用フリースペースの設置を2021年7月から義務化(東海道新幹線では6名の車椅子使用者が同時に利用可能に)。

<公共交通事業者向け接遇ガイドラインの策定>

・2021年2月、公共交通事業者向け「知的・発達障害者等に対する公共交通機関の利用体験実施マニュアル(案)」を策定、「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン(認知症の人編)」を公表。

(4)建築物のバリアフリー化

<バリアフリー普及に向けた基準等の策定・改定>

・2021年3月、高齢者、障害者等の円滑な移動に配慮した建築設計標準を改正。小規模店舗内部において、入口の段差解消、扉幅の確保、可動席の設置等のバリアフリー整備を進めるための考え方等を追加。

<ピクトグラムの追加>

・2020年5月、日本産業規格(JIS)を改定し、男女共用お手洗、介助用ベッド、授乳室(男女共用)など近年の社会情勢の変化を踏まえた9つのピクトグラムを追加。

<学校施設のバリアフリー化>

・2020年12月、学校施設バリアフリー化推進指針を改訂するとともに、公立小中学校等施設のバリアフリー化に関する2025年度末までの整備目標を設定。

(5)新型コロナウイルス感染症対策に資する取組等

<東京大会の開催に向けた準備>

・東京大会における新型コロナウイルス感染症対策のため、国、東京都、大会組織委員会等からなるコロナ対策調整会議を2020年9月に設置し、日本パラリンピック委員会(JPC)も参画。

・2020年12月、同会議の中間整理において、パラアスリートの感染防止策を取りまとめるとともに、介助者等のスタッフ等による感染防止の支援の際のガイドラインを策定する等の対策を整理。

<社会参画機会の拡大>

・オンラインによるパラアスリート派遣やパラアスリートのメッセージ動画の配信等、新しい生活様式に対応したオリパラ教育を実施。

・共生社会ホストタウンでは、直接の交流が難しい中、オンラインを活用し、相手国・地域との交流を継続。

・テレワークを活用することで障害者の就業機会拡大を図るため、「都市部と地方をつなぐ 障害者テレワーク事例集」を作成し周知。

第2章 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けた動き/
/内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局
TOPICS
共生社会ホストタウンについて

東京パラリンピック競技大会を契機に、レガシーとして共生社会を実現することが重要である。このため、政府レベルの取組としては、2017年2月に「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を策定し、障害のある人の視点を施策に反映させる枠組みとして「ユニバーサルデザイン2020評価会議」を設置して更なる施策の改善に取り組んでいる。

この行動計画に基づく取組とあわせて、ユニバーサルデザインへの自立的なきめ細かい取組を促すため、パラリンピアンの受入れを契機に、全国各地における共生社会の実現に向けた取組を加速し、大会以降につなげていく「共生社会ホストタウン」制度を2017年11月に創設した。2021年4月末現在102件(106自治体)が登録されている。

※共生社会ホストタウン登録済み自治体(2021年6月末現在)

北海道札幌市、北海道釧路市、北海道滝川市、北海道登別市、北海道江差町、青森県弘前市、青森県三沢市、岩手県遠野市、岩手県陸前高田市、岩手県一戸町、宮城県仙台市、宮城県登米市、宮城県加美町、秋田県能代市、秋田県大館市、秋田県仙北市、山形県鶴岡市、山形県酒田市、山形県村山市、山形県東根市、福島県福島市、福島県猪苗代町、茨城県潮来市、栃木県那須塩原市、群馬県渋川市、群馬県富岡市、群馬県みどり市、群馬県邑楽町、埼玉県本庄市、埼玉県北本市、埼玉県富士見市、埼玉県三芳町、千葉県成田市、千葉県柏市、千葉県浦安市、東京都世田谷区、東京都練馬区、東京都足立区、東京都江戸川区、東京都武蔵野市、東京都三鷹市、東京都町田市、東京都国分寺市、東京都西東京市、神奈川県横浜市、神奈川県川崎市、神奈川県平塚市・神奈川県、神奈川県藤沢市・神奈川県、神奈川県小田原市・神奈川県、神奈川県厚木市、神奈川県大磯町・神奈川県、神奈川県箱根町・神奈川県、新潟県長岡市、石川県金沢市、石川県小松市、石川県志賀町、福井県福井市、山梨県山梨市、山梨県富士河口湖町、岐阜県岐阜市・岐阜県、岐阜県岐阜市、静岡県静岡市、静岡県浜松市、静岡県焼津市、静岡県伊豆の国市、愛知県名古屋市、愛知県豊橋市、三重県伊勢市、三重県鈴鹿市、三重県志摩市、滋賀県守山市、滋賀県甲賀市、大阪府池田市、大阪府守口市、大阪府大東市、兵庫県神戸市、兵庫県明石市、兵庫県加古川市、兵庫県三木市、奈良県大和郡山市、奈良県田原本町、鳥取県鳥取市・鳥取県、島根県益田市、島根県邑南町、岡山県岡山市、岡山県真庭市、山口県宇部市、徳島県鳴門市・徳島県、香川県高松市、愛媛県松山市・愛媛県、福岡県北九州市、福岡県飯塚市、福岡県田川市、福岡県大川市、福岡県築上町、長崎県島原市、大分県大分市、大分県別府市、大分県中津市、大分県佐伯市、宮崎県宮崎市、鹿児島県龍郷町(102件・106自治体)

共生社会ホストタウンの取組は、以下の二つの柱から構成される。

○共生社会の実現に向けた取組

障害のある海外の選手たちを迎えることをきっかけに、ユニバーサルデザインの街づくり及び心のバリアフリーに向けた、自治体ならではの特色ある総合的な取組を実施。大会のレガシーにもつなげていく。

○パラリンピアンとの交流

東京パラリンピック競技大会直後の交流も含め、幅広い形でのパラリンピアンとの交流を通じ、パラリンピックに向けた機運を醸成すると共に、住民がパラアスリートたちと直に接することで、住民の意識を変えていく。

また、共生社会ホストタウンのうち、他の共生社会ホストタウンのモデルとなる自治体を「先導的共生社会ホストタウン」として認定する制度を2019年5月に新たに創設し、パラリンピアンとの交流やホテル・公共交通機関のバリアフリー改修支援などについて国が重点的に支援することとした。

※先導的共生社会ホストタウン(2021年4月末現在)

青森県三沢市、岩手県遠野市、秋田県大館市、福島県福島市、東京都世田谷区、東京都江戸川区、神奈川県川崎市、静岡県浜松市、三重県伊勢市、兵庫県神戸市、兵庫県明石市、山口県宇部市、福岡県飯塚市、福岡県田川市、大分県大分市(15件・15自治体)

<取組例>

○バリアフリー推進パートナーと共にまち歩き点検を実施し、あわせてバリアフリーマップを作成。障害当事者と福島市街地と3温泉地域を点検し、日常の利用範囲のみならず、観光地のバリアフリー化も推進する。(福島県福島市)

○共生社会ホストタウンの連携強化と取組の共有・発信のため、「共生社会ホストタウンサミットIn多摩川」をオンラインで開催。共生社会ホストタウンの取組に参加する市民の取組発表等を実施。(東京都世田谷区・神奈川県川崎市)

○国際パラリンピック委員会が開発した教材(I'mPOSSIBLE)を活用した授業を市立小・中・高・特別支援学校全43校で実施するなど、パラリンピック教育を通じた心のバリアフリーを推進。(兵庫県明石市)

○総合体育館のトイレ、シャワー、観覧スペース、自動ドア等のバリアフリー化、またトレーラーハウスを活用した車いす対応型の合宿所15棟(台)を整備し、ハード面のユニバーサルデザインの街づくりを推進。(福岡県田川市)

  • バリアフリー推進パートナーや当事者によるまち歩き点検
    (福島市)

  • 共生社会ホストタウンサミットIn多摩川
    (世田谷区・川崎市)

  • I'mPOSSIBLE教材を活用した授業
    (明石市)

  • トレーラーハウスを活用した車いす対応型の合宿所
    (田川市)

共生社会ホストタウンでは、コロナ禍により直接の交流が難しい中でも、オンライン等を活用した相手国・地域との交流や、共生社会の実現に向けた取組を継続している。

共生社会ホストタウンは、今後とも関係省庁等とも連携し、共生社会ホストタウンの取組を大会のレガシーとして継続していけるよう取り組んでいく。

/経済産業省
第2章 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けた動き
TOPICS
案内用図記号(ピクトグラム)のJIS改正について

「案内用図記号(JIS Z8210)」はピクトグラムとも呼ばれ、言語ではなく目で見ただけで案内が可能となることから、多くの公共交通機関や公共施設等で広く使われている。本規格は、2002年に開催されたサッカー日韓ワールドカップを契機に、日本人だけでなく外国人観光客の円滑な移動誘導を目的とし、理解度・視認性テスト等を経て経済産業省が制定した。

また、2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会では、より多くの外国人観光客の来日が見込まれることから、あらゆる人にとってより分かりやすい案内用図記号とするため、JIS Z8210原案作成委員会において、関係省庁、観光業界、障害者団体等の幅広い関係者を含め検討を重ね、2017年7月20日にJIS Z8210を改正した。具体的な改正内容は、既存の図記号についてISO規格との整合化を図るとともに、ヘルプマークなど新たに図記号を追加した。

  • 国際規格(ISO)への整合(例)

  • 新しい図記号の追加(例)

【ヘルプマークを身に着ける以外の活用例】

公共交通機関などの優先席などに掲示し周囲の配慮を求める事例(右図参照)
目次]  [前へ]  [次へ