平成30年北海道胆振東部地震への戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「レジリエントな防災・減災機能の強化」の研究開発技術活用実績について(報告)


平成30年10月5日
政策統括官(科学技術・イノベーション担当)
プレスリリース

平成30年北海道胆振東部地震による災害において、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP※)レジリエントな防災・減災機能の強化(以下「SIP防災」という。)で研究開発している技術を災害対応等に活用したため、その概要を報告する。

【活用した研究開発技術】

  • 1.防災情報共有システム(SIP(エスアイピー)4(フォー)D(ディー))
  • 2.災害時保健医療活動支援システム
  • 3.リアルタイム被害推定システム
  • 4.衛星利用被害抽出技術
  • 5.エリアメール多言語提供システム 
  • 6.SNS情報要約システム(D(ディー)-SUMM(サム))
  • 7.液状化危険度評価技術 

※SIPとは、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクト。(H26~H30の5年間)

【具体的な活用状況】

1.防災情報共有システム(SIP4D) 【研究開発機関:防災科学技術研究所・(株)日立製作所】 (参考資料 p1)

SIP4Dは、災害関連情報をデジタル地図に収集・集約・提供するシステムである。発災当日より、道庁災害対策本部等にて、震度分布、リアルタイム被害推定情報、道路通行情報、断水状況、避難所の状況、支援物資、給水拠点、通信障害状況、医療機関の状況、入浴施設の位置情報等を電子地図上に取りまとめ、被災地の保健医療活動や避難所へのプッシュ型物資支援活動に活用。 具体的には、北海道庁及び市町村の物資集積拠点情報に、道路通行情報を重ね合わせ、主に緊急物資調達・輸送チームにおいて、物資輸送の戦略立案等プッシュ型物資支援に活用。さらに、通信状況に、市区町村役場位置と避難所情報を重ね合わせ、主に通信事業者において、通信エリア復旧の戦略立案等に活用された。

2.災害時保健医療活動支援システム 【研究開発機関:芝浦工業大学、東京工業大学】 (参考資料 p3)

災害時保健医療活動支援システムは、SIP4Dで配信される情報を活用し、重症者の搬入予測に基づき災害派遣医療チーム(DMAT(ディーマット))等の最適配置を行うためのシステムである。災害発生時には、同システム上で、リアルタイム被害推定情報、医療機関の状況及び道路通行情報等を重ね合わせ、これにより日赤チーム、DMAT及び災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT(ディーヒート))を最適配置し、迅速な医療活動支援が行われた。また、同システムからSIP4Dに医療機関の状況を提供した。 

3.リアルタイム被害推定システム 【研究開発機関:防災科学技術研究所】 (参考資料 p5)

リアルタイム被害推定システムは、震度情報、建物分布情報、地盤情報等を基に被害シミュレーションを行い、発災後10分程度で建物被害、人的被害等を防災関係機関に提供するシステムである。北海道胆振東部地震では、発災後約12分で被害推定を完了し、SIP4Dを介し、北海道庁、自衛隊、DMAT等に伝達され、現地対応体制など初動に必要な判断に活用された。さらに、NPO法人リアルタイム地震・防災情報利用協議会(REIC)が運営するハザード・リスク実験コンソーシアムを通じて、事前に登録した鉄道会社、保険会社、建設会社等73社の民間企業に伝達され、それぞれの災害対応に活用された。 

4.衛星利用被害抽出技術【研究開発機関:宇宙航空研究開発機構】 (参考資料 p7)

衛星利用被害抽出技術は、陸域観測技術衛星2号『だいち2号』(ALOS(エーロス)-(・)2(ツー))による合成開口レーダ(SAR(サー))データを処理し土砂崩落・堆積や浸水域を抽出するものである。北海道胆振東部地震では、厚真町付近をALOS-2で緊急観測し、土砂崩落や土砂流入と推定される土砂堆積を面的に解析し、その結果をSIP4Dに提供することにより、関係機関の初動対応等に活用された。

5.エリアメール多言語提供システム 【研究開発機関:(株)NTTドコモ】(参考資料 p8)

エリアメール多言語提供システムは、緊急地震速報や避難勧告などの自治体情報など、エリアメールを多言語で自動送信するシステムである。発災当日に、被災地域自治体(江別(えべつ)市、苫小牧(とまこまい)市、士別(しべつ)市、枝幸町(えだゆきまち)他7自治体)から避難準備、高齢者等避難開始情報がエリアメールによって被災地域住民に配信され、125件のメールが受信者の簡易な操作によってドコモのサーバにより翻訳された。

6.SNS情報要約システム(D-SUMM) 【研究開発機関:情報通信研究機構】(参考資料 p9)

D-SUMMは、ツイッター上の災害関連情報を自動で抽出・要約し、かつデマの判断材料である矛盾情報検出結果を作成して提示するシステムであり、消防庁及び警視庁に対し、1分毎の全国47都道府県の集計結果に基づき、異常を検知するとメールを送信するものである。発災当日の9月6日には、北海道の異常を検知して、日本で交わされるツイッター(1日約800万ツイート)の中から850回の災害関連情報が自動で抽出・要約され、救命活動を行う機関等において活用された。

7.液状化危険度評価技術 【研究開発機関:消防庁消防研究センター】(参考資料 p11)

液状化危険度評価技術は、震度分布と微地形分類から液状化発生率を予測・評価するものである。 この技術を消防研究センターが開発した石油コンビナート地震時被害推定システムに組み込み、発災直後に評価結果のメールを消防庁及び管轄の消防本部に自動配信し、石油コンビナートの液状化損傷の可能性は低い旨を伝達、初動に必要な判断等に活用された。

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