日本の未来を担う研究者の皆さまへ
今、日本は、激動の転換期にいます。これまで経験したことがない新型コロナウイルス感染症の拡大やそれに伴うデジタル化などの生活の変化に加え、世界に目を転じると米中をはじめとした国家間の覇権争いの激化や気候変動などの地球規模の課題に直面しています。
このような中、日本が社会変革を先導し、持続的に成長していくためには、新しい知に基づく価値を次々に産み出していくことが不可欠であり、研究者、とりわけ若い方が、既成概念を打ち破り、自らの自由な発想に基づき、腰を据えて研究に没頭する環境を作ることが何よりも重要です。
しかしながら、博士課程学生や若手研究者を取り巻く環境は厳しく、特に、優秀な学生が、経済的側面やキャリアパスへの不安などの理由から博士後期課程への進学を断念する状況は、大変深刻です。
こうした状況を打破し、大学の研究環境を抜本的に強化するため、政府は、
●学術研究・基礎研究の分野に、これまでにない手法により「人材」、「研究開発を行う大学の共用施設やデータ連携基盤の整備」などへの大胆な投資を実行するために、10兆円規模の大学ファンドを創設すること
●大学ファンドによる支援に先駆ける形での15,000人規模の博士学生への経済支援を実現するための支援を行うこと
を決定しました。
加えて、競争的研究費の各種事務手続きの簡素化・デジタル化など事務負担を軽減させる取組を本年度内に推進し、来年度以降に実施する事業から適用できるようにすることで、研究者の皆さまの研究時間をより多く確保いたします。
これらの取組を通じて、より多くの学生が博士課程への進学に挑戦するとともに、若手研究者が腰を据えて自由な発想に基づく研究に打ち込むことができる環境の構築に向け、引き続き尽力してまいります。
日本の科学技術・イノベーションの源は、若手を含む研究者の皆さまです。新たな知を産み出す研究者の活躍がなければ日本の未来はありません。未来を担う皆さまが、研究の道に飛び込み、存分に研究活動を行っていただくことを願って止みません。
令和2年12月15日
内閣府特命担当大臣(科学技術政策) 井上 信治