自立的電気供給及び検査機能を兼ね備えた水素燃料電池バスを用いた防災・感染症対策システムの実証実験をスタート
~感染症対策システムを備えた「災害医療用モビリティ」の社会実装を目指して~


令和3年10月28日
国立大学法人筑波大学
内閣府
プレスリリース

 国立大学法人筑波大学は、内閣府戦略的イノベーション創出プログラム(SIP)「国家レジリエンス (防災・減災)の強化」の採択事業「水素燃料電池バスを用いた防災・感染症対策システムの開発」に使用する水素燃料電池大型バスの車両開発を完了し、2021 年10 月より同車両を用いた感染症検査機能の実証実験をスタートしました。この大型バスは、短時間で大人数の検査を可能とするものであり、現在、小型で機動性に優れた水素燃料電池マイクロバスの車両開発も進めています。
 今回の事業では、被災地にいち早く赴き、自立的電源・通信機能とPCR 検査を含む感染症の検査機能、複数の医療機関・保健所と接続する検査システム、その場で迅速に結果を本人に伝えるオンライン受付システムを備えた災害医療用モビリティの開発を行い、産官学公の連携により安心・安全な避難環境の整備に資する災害医療用モビリティの実証を行います。
 具体的には、医療用機器の稼働に影響を与えない電源品質の確保や、適切な検査機器の選定、災害時の混乱した状況下でもミスを誘発しにくい検査導線やレイアウト設計を行い、制約の多い空間で効率的に検査が行えるよう各種検証試験を重ねながら、感染症対策システムの確立を目指します。

<研究者>
研究責任者:筑波大学医学医療系感染症内科学 鈴木 広道 教授
社会実装責任者:筑波大学システム情報系 鈴木 健嗣 教授

<研究の背景>
 今般の新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、感染症に対する社会システムの漸弱性が顕在化しました。グローバル化の進む社会においては、ヒト・モノの国境を越えた移動により感染症が短期間に国境を越えて拡大するリスクは常に存在しており、今後もいつ新たに生物学的な脅威が発生し、国民の生命や経済社会を脅かすのかわかりません。また、そうした状況下で発生する自然災害時の感染対策機能強化は、被災地域の避難所でのパンデミック発生を抑制するために喫緊の課題となっています。
 このような背景の下、災害時にも速やかに感染症検査が可能な「災害医療用モビリティ」の開発と災害時の状況を想定した感染症検査フローの確立が重要であると考えています。

SDGsのマーク目標3、13

<研究開発目標>
今回完成した同車両は、現地に移動して検査を行うことができ、PCR の検査結果は検体採取から約40分でその場にて判明します。一日2,000名以上の検査能力を有し、その場で結果を伝えることが可能です。迅速な検査体制の構築は、被災地の避難所やボランティア活動における二次感染リスクを低減させ、より安全・安心な避難環境の実現に貢献します。また、つくば市のスマートシティの取組とも連携しながら、進めてまいります。

<実証実験スケジュール>

日程 内容
2021年10月~12月 大型バス試験
・車両性能評価・車内における検査検証試験
・施設電源喪失時の想定試験(医療施設・検査センター)
・保健所での検査想定試験
2022年1月~3月 マイクロバス試験
・車両性能評価・車内における検査検証試験
・施設電源喪失時の想定試験(医療施設・検査センター)
・保健所での検査想定試験
2022年2月~3月 大型バス・マイクロバス併用実証実験
・実証実験(避難所・福祉避難所における実地実証)
・学外大規模イベントでの検査実証実験(1月下旬)
・電力供給の活用によるモビリティ稼働範囲の拡大検証実験
・緊急災害発生時における体制検証

※実証実験時に取材会を予定しております。詳細は後日御案内します。

<車両外観・内装図>

車両外観・内装図 検体採取から結果報告までの説明図

<研究資金>

本研究(の一部)は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」(管理法人:国立研究開発法人防災科学技術研究所)によって実施されています。

<共同研究開発機関・協力機関>

株式会社LSI メディエンス
筑波メディカルセンター病院
トヨタ自動車株式会社
関東鉄道株式会社
つくば市

問合せ先

【研究に関すること】

<感染症検査実証試験について>
鈴木 広道(すずき ひろみち)
筑波大学医学医療系感染症内科学教授
TEL: 029-853-7867
Email: hsuzuki[アット]md.tsukuba.ac.jp
筑波大学ホームページ(移動ページ)

<車両開発について>
鈴木 健嗣(すずき けんじ)
筑波大学システム情報系教授
TEL: 029-853-5679
Email: kenji[アット]ieee.org(office[アット]ai.iit.tsukuba.ac.jp)
筑波大学ホームページ(移動ページ)

【取材・報道に関すること】

筑波大学広報室
TEL: 029-853-2040
E-mail: kohositu[アット]un.tsukuba.ac.jp

【SIPに関すること】

内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 長野、濱口、櫻井
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP:エスアイピー)ホームページ
TEL: 03-6257-1331

※メールにて御連絡の際は[アット]を@に変更してください。