第四分科会「高齢社会フォーラム・イン東京」
「高齢者が孤立しない、させない地域社会」
藤井 衞
(社福)ぐりーんろーど
高齢者人口の増加に伴い、孤独死に象徴されるような社会問題が、かつてのニュータウンでも発生するようになり、このような地域の問題は、地域住民の力で解決しようとの取り組みが始まっています。誰もが気軽に立ち寄れるカフェやサロンなどの高齢者の居場所づくり、また、安否確認などの事例を通して、地域のセイフティーネットについて一緒に学びましょう。
〔パネリスト〕- 浅野玲子 (高根台たすけあいの会代表)
- 石井五十鈴 (高根台たすけあいの会事務局長)
- 来栖明美 (府中西部地区生活会議会長)
- 島津艶子 ((N)ふらっとステーション・ドリーム代表)
〔記録者〕
- 加藤千春((N)精神保健福祉を推進する神奈川区の会)
【コーディネーター】
コーディネーターを務めさせていただきます藤井 衛です。本日のパネリストには、内閣府がエイジレス・ライフと社会参加活動と併せて毎年80事例を表章されています。この中から2団体を選ばせていただきました。千葉県船橋市高根台たすけあいの会と府中にございます西原町で活動されている府中西部地区生活会議の2団体です。そして、午前中にご紹介がありました横浜市戸塚区の「ふらっとステーション・ドリーム」です。それぞれの団体が何故そのような助け合いを行ったのか?或いは、高齢者の見守りの会を行ったのか?サロンを開いたのか?その経緯を最初にお話しいただき、現在行っている活動内容をお話頂きます。
それでは最初に、千葉県船橋市の「高根台たすけあいの会」事務局の石井様と会長の浅野様をご紹介いたします。
■各パネリストからの報告
【浅野 玲子】
団地ができた当時の民生委員は14名でした。団地は4,650世帯で、大変細長い団地です。町会も1丁目~7丁目まであります。現在、団地だけで高齢者が1,400人です。民生委員の中から「何かやったらいいんじゃないの?」という意見が出ました。丁度その頃、PTA活動の役割を終えて民生委員になられた方が多かったのです。自分一人でやるよりも、組織を作って運営していったらどうかと意見が出ました。お手伝いする対象者は何人くらいいるのか把握することが必要でした。今から18年前で高齢者が900人位です。中には息子さんが東京へ行き、娘さんが嫁いだりして、やはりどなたかお手伝いしてくださる方はいないかということから我々の会は始まりました。
高齢者が900人という数字が余りにも多いので小委員会を作りました。既に町内会という自治会組織ができ上がった後に入居しておりますから、自治会も賛成して下さり、自治会にお願いして小委員会を作りました。その時、アンケートの調査を実施しました。①どの位の人が手伝っていただけるか、②どういうことをやってもらえるか、③大体何曜日がいいのか、④時間はどれ位かということで調査しました。4,650戸配布して、返事が返ってきたのは220戸です。今すぐ協力できる方が1/3、勤めを辞めたら協力できる方が1/3、寄付とか配布物とか諸々のお手伝いしますという方が1/3揃いました。
最初、民生委員が気が付いたから実施すればよいと言うことで、大学ノートに連絡事項を書いて次の民生委員に回すようにしました。しかし、言葉として伝えるのと字に書いて伝えるのとは意味の違いも起こります。やはり専従がいた方がいいであろうと専従を設けました。専従者は始めから現在まで民生委員さんであり、協力会員でもあります。民生委員は大体250戸から400戸の家庭を担当しています。やはり電話が必要です。拠点も必要です。それからお金も必要です。民生委員が献品を集めてバザーを実施しました。その収益金で、電話を引こうとしたら、電話は家庭用の電話なら引けるけれど、会の電話はだめです、前例がないのでと断られました。急遽、自治会にお願いし、自治会の片隅をお借りして始めました。自治会の片隅を借りて始めたものの、名称を考えなければいけない、内容は大体わかったけれど、ボランティアしてくださる方々に勉強してもらわなければならないということで、急遽、2~3日位かけて「ボランティアとは何か」ということから始まり、勉強して頂き、その結果、現在があるのです。
介護保険制度が平成12年から始まりました。これまでに私たちが提供していたサービスが介護保険導入後、介護サービスにほとんど移行していきましたが、介護保険サービスのない時、措置という形で民生委員・役所との関係でサービスを提供していた時に、「たすけあいの会」も1,800件近い数が一年間でありました。それが介護保険に移行しましたら、半分に減りましたが、「たすけあいの会」のサービスが良いということで今でも行っています。「たすけあいの会」という名称ですが、地域の皆さんに聞き、花の名前も出ましたが、一番身近に感じられるのが「高根台たすけあいの会」と決めました。皆で同じ立場で話し合った一年間が「たすけあいの会」でした。
最後にこの「たすけあいの会」には、会長・副会長・会計を決めようということで、民生委員生活が長い浅野に会長をお願いしようと現在に至っております。運営に関して口出しはしますが、ほとんど事務的なことは石井がやっています。石井の方からお話をしてもらおうと思います。
【石井 五十鈴】
私共は、任意団体なので大きなお金を動かすことができないし、お金もありません。最初からお金の話をしますが、高根台団地というのは大きな団地で、そこには自治会は一つです。団地の自治会から色々と教えていただきながら、民生委員はまず何から手を出そうかということでした。近くにある日吉団地、善行団地に勉強に行きました。そして、「ボランティアの会」ということを勉強しながら、また、自治会の教えを乞いながら歩んできました。「高根台たすけあいの会」の活動する会員数ですが、会長以下全部会員です。ですから、民生委員でも手が足りない時には、動いてもらいます。今の会員は69名で、男性はなんと8名です。この男性の方々は重要な存在です。男性は現役時代に培った知識や技術を活かすことができます。例えば、水道の配管工事を専門にされた方は、水道のこと下水道のこと、電気工事を専門にされた方は電気を取り換える等、高い所、重い荷物、専門知識と技術を必要とすることは男性にお願いしています。
「たすけあいの会」事務局は、①何時から何時まで、②何曜から何曜まで、③誰と誰が、をチャートにして事務局の専従のコーディネーターが電話で対応できるようにしています。主に民生委員が地域内でこまめに動いて下さるので、困ったことは民生委員を通して上がってきます。19年経ったので、「たすけあいの会」があることは浸透し、個人で困っていると相談電話があります。高齢者が電話してきてくださると電話時間が長いので、2台の電話を使っています。相談事でかかってくる専用電話とコーディネーターが協力会員に連絡する専用電話と2台です。
相談内容から当事者を中心にして、どういう協力ができるか、どのような支援をしたらいいのかということは、そのお宅に伺い、「たすけあいの会」と個々の地域の民生委員、地域包括支援センター専門員、かかりつけ医の意見も聞きます。それから介護保険サービス提供事業所の方にも参加していただき、ご家族も参加できれば家族も含めて、ご本人を囲んで、皆さんでどのような支援をしたらいいか、どういう支援をして欲しいか、まず当事者の意見を聞きながら個別支援計画を立てます。この支援計画は事務局が持ち帰り、協力会員であるボランティアさんに、こういう方に対してどのような協力会員を派遣したらいいかと検討しながら電話をしています。
最初伺う時は、初めてですから不安であり、当事者も不安です。そこで、民生委員が同行するか事務局の私共が同行して協力会員と一緒に伺い、安心していただいてから活動を始めるようにしています。私共は1時間500円負担して頂くことにしています。1時間500円の意味は、無料とも考えましたが、主に頂き物とか何か差し上げなきゃ悪いという気持ちが先走って、何かを買いに行ったりする方もいらっしゃいます。ここは割り切ろうと、500円負担して頂くことにしました。活動資金はバザーで賄っています。自治会が大きいのでお祭りも何回かあります。色々な行事もあります。そこで品物を地域の皆さんから無料で頂いて、それらの物品を売らせていただき、運営費に回しております。
私共の活動は、年に2回の食事会を70歳以上の方に招待状を出して、出欠を確認して実施しています。東西に細長い団地なので、西で1回、東で1回と実施します。大体1回にボランティアさんを入れて100人位になります。これは公民館の講堂をお借りして費用も払います。茶話会は今年度から月1回(去年まで月2回)実施しております。どなたが見えてもいいんです。お喋りしながら、お茶を飲みながら、ちょっと軽い体操を先生にお願いして、指の体操、頭の体操をしましょうと自由に出入りしてもよいように実施しています。茶話会は50円、食事会は300円を頂きます。この食事会と茶話会には、船橋市の助成金で運営しています。
【藤井 衞(コーディネーター)】
高根台団地は昭和36年から工事が始まり、平成8年に建て替え工事がありました。建て替え工事の際に、地域住民の方々が立ち上がり、集会所を設けることを大切にする基本コンセプトで進められました。サロンは第一、第三金曜日と、第二第、四木曜日に開かれます。木曜日と金曜日をひっくり返して「きんもくせい」という名前がついています。この集会所は団地の一階にあり、フラットで高齢者に配慮した集会所です。また、上履きに履き替えないで下履きのまま出入りすることができ、子育て中の若いお母さんも自由に出入りできるようになっています。この事業は、「たすけあいの会」と高根台地区社会福祉協議会、この2団体で運営されています。
事業の内容は、一つはミニデイサービス、ふれあいいきいきサロン、バザーを中心とした地域福祉祭り、ボランティアの育成、これには大変力を入れているようです。そして広報誌の発行、皆さんのお手元に届いていると思います。「たすけあいの会」では、相談事業・相談活動を中心に行われております。そのほか、介護保険では適用されないサービスの提供に心掛けておられます。その他、子育てサロン、地区社協を中心とした宅配給食、実は宅配給食は必要であろうということで地域の方々が集会所を作る時に、「是非厨房を広くして下さい」という要望が叶って、使い易い厨房となっています。その他、高根台公民館と共催した様々な事業が行われており、年間を通して意義のある活動を地区社協と共に行っておられるということを付け加えておきます。
では次に、府中西部地区生活会議に長く携わって来られ来栖明美さんをご紹介します。
【来栖 明美】
府中市の西部地区生活会議といいまして、丁度、国立市と府中市の境にある一戸建て住宅のある地域です。大きな団地はなく戸建住宅の集まりということになります。西原町は昔から一自治会が管理しています。ですから色んな事業をするという時に全員で協力していただけるという、ちょっと特殊な事情あります。
まちづくり活動の「あしたの日本を創る協会」に属しており、昭和54年から生活会議という団体ができています。まちづくりに関する問題点を掘り起こし解決する事業と取り組んで30年以上続けてきました。阪神淡路大震災で助かった人と助からなかった人との境はどこにあったかという勉強会をしました。皆で普段から絶えず見守りをすること、お互いに普段からの協力関係が大事であることが分かりました。その為に地域の高齢者の生活を支え合っていこうということになりました。地域の民生委員、自治会、老人会代表が集まり、組織を作り、今日の高齢者問題に取り組んでいます。
現在40人位の委員さんを募り、地域を6つに分けて、見守り活動をしています。さりげなく見守りましょうと、「あの家は雨戸が今日も開いてないね」とか、「この家の新聞は昨日は取り入れていたのに、今日は取り入れていないよ」というように見守りをしています。生活会議は、毎週一回木曜日自治会館で10時から16時まで活動しています。そこへ40人の委員さん達が、自分の関係している地域の「どこどこのお家がちょっと元気がないみたい」とか、「誰か見に行った方がいいんじゃないの」と毎週一回の集まりで情報が入ってきます。西原町には泉苑地域包括センターの介護支援専門員さんが毎週定期的に協力しくださいます。その専門員さんを介して、重大な問題が起きていると困るので一緒に訪問します。問題点があった場合は、専門員さんと一緒に協力して解決する活動をしいます。40人位の委員さんが毎週一回の昼食会を開き、さりげない見守り活動をしています。
「サロンに参加して欲しいけれど参加してくれない人はどうするのか」という質問も聞きました。その場合、お互いお隣同志が「あの人この頃お一人になられたからちょっと呼んでみましょう」と、それぞれその地域の委員さんが一声掛けて、「今日はお食事会があるんですけれど行きませんか?」と声掛けを大切にしています。毎月一回の自治会ニュースに、毎週木曜の活動内容とかをニュースに載せて、どなたでも参加できますよと呼びかけています。自治会ニュースは全世帯に配布していますからニュースを見て参加してみようと思って来て下さるということが一つ。自治会が一つであるということと、自治会館を無料で毎週一回開放してもらっています。費用もいらない訳です。その代わり自治会員ですから誰でも参加してくださいと呼びかけています。お互いに助け合いましょうを中心に活動しています。皆がボランティア精神で、毎月継続して15年位続いていること、段々にお年寄りの人が「ここへ来てよかったわ、楽しいね」と言って下さることが一番の私達の救いです。毎年、若いお母さん達がクッションを作ります。それを75歳以上の方にクリスマスにプレゼントするんです。それを持って「如何です?この頃」と声掛けを大切にしています。普段から仲良くみんなで協力していくことを大切にしています。
【藤井 衞(コーディネーター)】
地域の自治を、当たり前に、当たり前の如く、介護保険制度の中で地域の中枢的な働きをする地域包括支援センターとの連携を密に取りながら色々な団体と連携をとっておたれるの特徴かなと思います。では次に、横浜市からお越しいただきました、地域全体でサロンだとか気軽に立ち寄れる居場所が作れないだろうかと立ち上がられた「ふらっとステーション・ドリーム」の島津 禮子さんです。
【島津 艶子】
横浜市戸塚区は、横浜市のはずれ、藤沢市との境に位置します。昔ドリームランドという遊園地の跡地に、1972~3年の間に建ちました。約2,300世帯の分譲の集合住宅です。入居当時は陸の孤島と言われた交通の便の悪いところでした。店舗もなければ、医療施設もない、福祉施設もないというような所で、通勤・通学・子育て、何をするにしても不便なところでした。
「ふらっとステーション・ドリーム」という居場所について説明をさせていただきます。建物以外環境が整わない未完成の郊外型の集合住宅でした。私達住民としては足りないものを自分達で補っていかなければならなかった訳です。この(パワーポイントの資料)ですが、真ん中に円グラフがあります。この円グラフは、私達が入居してから5年毎にアンケートをとって住民の意識調査、或いは人口状態を調べているものです。4年位前の資料だと思って下さい。右の円グラフに丸がしてあります。独居の人が18.2%ですから現在20%を超えていると思います。高齢者夫婦が約35%となっています。これらの数字から見えてくるのは、地域には色々な課題があるということです。
まず、住まいの問題です。分譲住宅ですから一人になっても住み替えをしない。自分が一人になっても、どんな状態になっても住み替えをしない頑張り屋さんが多いのです。次に、食の問題です。「ドリーム地域給食の会」があります。20年前から配食・給食を実施しています。活動を始めた当初は「高齢者の為」にというスローガンで始めたのです。50代で始めた方は70代、60代で活動を始められた方は80近い。その方達が変わることなく活動をして下さっています。自分達が活動していることによって自分の介護予防になっているんだということです。これで私達が給食の会で活動をしていなければ、もっともっと人の世話になっていたかもしれないということを、協力して下さっているボランティアさんの達はしみじみ仰っています。続けて活動する意味は、自分の為であり人の為でもある。これは、ふれあい型の給食ですから、一週間に火曜日と木曜日と土曜日という形で提供しています。まず最初に、食が大切なことです。高齢者夫婦二人になると、子ども達は皆よそに住むようになります。「40年も一生懸命食事を作ったんだけれども、一度も『美味しいよ』とか『ありがとう』とか言ってもらったためしがない。だからこれから夫の為に食事を作るなんて嫌よ」というのが高齢者夫婦です。おひとり様になるとどうなるかというと、やっぱり自分の為に一生懸命食事なんか作らないですよ。そこで、この給食サービスは地域で非常に喜ばれている活動です。
「ふれあいドリーム」というのは、地域の支え合い活動から始まったものです。私達は、56,7年頃から続けております。介護保険事業も始まり、介護支援事業所もあり、福祉サービス提供事業所もあり、制度を基本としたサービスが行われています。それと同時に、制度になじまない活動としてふれあい活動が始まっています。「ふれあいドリーム」というのは、ヘルパーさんが相手の家に行く、協力会員が相手の家に行く、それで足りないサービスとか相手の方が出来ないことをさせていただく出前サービスです。逆に、向こうから出向いていただくところで始まったのが、「いこいの家 夢みん」です。ミニデイサービスをやったり高齢者が集まって歌ったり、とにかく出て来て下さることがメインなのです。こういう3団体の高齢者に対する福祉サービスが、長い間行われていました。
次に、もう5、6年になりますか、全国的に市町村で福祉計画を作らなければならない時代がありました。今、大体一期が終わって二期が始まっています。私も委員に選ばれ、戸塚区内十数か所のケアプラザを対象に、地域で何が必要かと意見を聞きました。その中でやっぱり一番必要だと思われたのは居場所でした。「ふらっと行かれる居場所が地域に欲しい」「喫茶店もいいんだけれど、喫茶店は傍にない」「居酒屋はあるけれども、ご婦人達が集まれる処ではない」。「昔はどうでしたか」とお聞きすると、「若い頃はお友達同士で行き来してご飯を食べたり、お茶の時間に呼んだりしていました。今は、亭主が家に居るから、亭主が家に居ると人を呼べないのよ」。だから、地域で居場所的なものが欲しい、それが一番の希望でした。
その次に、「区役所まで行かなくても最近の情報が欲しい、区役所がどんなことをやっているかどんな政策が行われているか、その情報が地域で欲しい」「不安な時、心配事があった時、誰か傍で相談できる人が欲しい」。これが区民のニーズだと思います。第一期の福祉計画が終わった後、私達の傍の薬局が閉店しました。それで、「ドリーム地域給食の会」と「ふれあいドリーム」、「いこいの家、夢みん」の福祉3団体が一緒になってそこで何かしょうと意見が出て、大家さんと交渉しました。大家さんは、「どこの馬の骨かわからない福祉団体に貸して家賃が入るんだろうか?」。大家さんは福祉団体になんか貸せません、本当に家賃を払ってもらえるかわからないからと。私も、実際のところ家賃が払えるかわかりませんでした。わかってないけれども、皆の意見だからやってみましょうと「ふれあいドリーム」の理事会にかけました。男性の理事さん達は全員反対でした。何故反対かというと、「そんな新しい事業を始めるのに、2,3日考えて始めるなんてそんな無謀なことは許せない、やっぱりメリット・デメリットを考えて、そして一年位かけて新しい事業を始めるものだ」と言われました。これはやっぱり株式会社の考え方です。会社はそういうことを一年位考えて新しい事業を始めるのでしょう。ところが女性達はそうじゃないのです。女性達はやろうと思ったらやってしまうのです。
それでお金がないということで、有志の人に「もし余っているお金がありましたら貸していただけませんか」と声を掛けました。そしたら、お金は650万円集まりました。有志の人達が立ち上がって作ったのが、「ふらっとステーション・ドリーム」という居場所です。家賃は月18万円もします。家賃をどうして回収して払えるかということです。お金になることは一生懸命考えました。もちろんコーヒーやお茶とかケーキは出す積りでした。「壁があるわね、壁をギャラリーにして貸しちゃおうよ」とか。「それからボックスを作って皆様にお貸しして、手芸用品等を売っていただいて一割いただこう」とか、色々考えてやってきました。それだけではまだ足りない。お茶だけにしようと思っていましが、ランチを出すことにしました。最初は10食位のつもりで作ったんですが、今は40~50食作っています。ランチがすごく好評で毎日いらっしゃる男性の方もいらっしゃいます。とにかく独居になったらどこかで食事をしなければいけない訳だから、特に男性の方は毎日いらっしゃる。その独居の方がいらっしゃることによって、その方達の精神衛生面が非常に高くなる。要するに、家の中で引きこもっていたけれど、ランチを召し上がりにいらっしゃることによって、色んな方達のお喋りだとか会話が頭の上を飛び交う訳です。それを聞きながら、ニコニコしながらランチを召し上がってらっしゃる。そういう方達が大体4,50人いらっしゃいます。一応「ふらっとステーション」の運営面ではプラスになりました。今のところ「ふらっとステーション」だけですが、収支は大体1千万円位です。それで1千万円のうち700万円位を自前で稼いでいます。300万円を助成金ないしは色々な寄付で賄っています。「ふらっとステーション」を支えて下さっているボランティアさんが、初めは無償でした。今は1時間250円しかお支払していません。NPO法人化して「ふらっとステーション」を事業化しようと思いました。優秀な方だけをピックアップして事業化しようと思ったけれども、40人弱のボランティアさんは、「今の250円のままでいい、私達も楽しいのよ」ということでそのまま続けています。
「ふらっとステーション」が立ち上がった後、次の年に横浜市との協働事業になりました。協働事業になったことが一つのメリットでありまして、もちろん461万円のお金を頂いて運営を助けていただいた。その代わり、毎月毎月横浜市の職員、戸塚区の職員、私達が運営委員会を開く訳です。今でいう理事会です。そして、運営委員会の中で、市の意向、市がどう考えてるか、区がどう考えてるか、私達がどういう運営をしていきたいかということをとことん話し合う訳です。話し合った中で、横浜市がダメっていうこともあります。例えば、日曜日に健康麻雀をしようと。今デイサービスでも麻雀をしています。だから健康麻雀をしようとの意見に対して、横浜市の職員に「そんな不健康なことをここでするの?」と言われました。麻雀は、お金をかけて、お酒を飲みながら煙草をふかしながらというイメージがあったんです。「テストケースでやらせて下さい」と言って今やっています。ずーっと続いています。いらっしゃる方はどんな方かというと麻雀パイをいじったことのない女性の方です。麻雀を年中やっていた男性の方ではないのです。
「参加者の意識・居場所で知り合った仲間たち」では、「ふらっとステーション」で顔見知りになった人達が88.7%いらっしゃいます。居場所で知り合って、道で会ったら挨拶をするようになった方が86%いらっしゃいます。会えば立ち話をするような間柄の友人が増えたよという方が80.4%いらっしゃいます。ここで知り合った人達が待ち合わせをしてお喋りをする仲間、友人が増えた方が51%いらっしゃいます。お互いに誘い合って地域活動や趣味の活動をする仲間が増えた方は49%いらっしゃいます。個人的な話をする仲の友人・知人が増えた方が47.7%いらっしゃいます。ということは、居場所というのは、毎日顔を合わせていると家族のような間柄になって悩みも打ち明けられるようになる、というような場所になってきた訳です。私達もここでサロンだけではなくて、先程お話しした情報部会も作って、これは定年退職された男性の方が一生懸命やって下さいますが、統計をとるとか情報をまとめて冊子にするとか男性は得意です。 それから、相談日を設けています。障害者のこと、体のこと、制度のことの相談日を設けています。スタッフの人達と話し合う中で、自分の不安がここに話しに来たお陰で解消した、だから小さな困ったこと、困った時、この居場所に来たお陰で解決したという事例が多いのです。
「ふらっとステーション」が横浜市の協働事業になりました。協働事業はお互いに対等な立場で仕事をするということが協働事業です。でも話し合っていくうちにそれだけじゃダメ、エリアマネジメントという考え方でエリアのマネジメントは自分達でするもの、行政はそれを後押しするということを、横浜市も考え私達も考えた訳です。それで、ドリームハイツ地域運営協議会というのができました。協働事業から一歩進んだ市民主体の地域活動です。これは縦割りでない支援、例えば行政は全部縦割りになっていますが、段々横串になってきつつあります。例えば幼稚園と保育園とは担当課が違うとか、私達市民の感覚で言えば幼稚園も保育園も同じ幼児教育じゃないのと思いますが、文科省と厚労省と違うとかいうのです。縦割りでないことを私達市民全体でやっていこうというのがドリームハイツ地域運営協議会です。この後、地域運営協議会では見守り部隊というのができて、ここの地域運営協議会の事務局機能として見守りのセンターを作りました。見守りのセンターをどこに作ったかというと、小学校の空き教室です。この空き教室を借りるのも、2年位かかりました。教育委員会を説得するのは行政のあなた方の役割でしょうと言ったならば、一生懸命やって下さって借りることができたのです。今ここで見守り部隊として、見守りネットセンターの活動をしております。これから始めるのは、見守りというのは対面の見守りもあるし、先程府中の方がおっしゃったように本当にさりげなく見守るということもあります。でも、ハード面、要するにセンサーとか色んなハードで見守っていこうというのもあると思うので、私達は今、東京電力の方と中央研究所の方と相談しながら、何かあった時に、例えば電力の使い方で留守にしてることがわかるとか、緊急時にはボタンを押すと見守りセンターに連絡が来て急を告げるとか、そういうことをこれからやり始めようとしています。段々に居場所を中心に、少しずつ少しずつ協働事業から地域運営協議会に発展し、行政と顔見知りの関係を大切にして、地域をこれから安心、安全なまちにしていきたいというのが、「ふらっとステーション」を中心とした私達の活動の動きです。
【藤井 衞(コーディネーター)】
事例をお聞きになって、自分の地域でもやってみようという時には、必ず今お三方がお話しなられましたが、どこかに事務局をきちっと整える必要があると思います。この事務局の機能がしっかりしないとちょっとうまくいかないんです。それではここで休憩をいただきまして、10分間程休憩させていただきます。ご苦労様でした。
■質疑応答
【藤井 衞(コーディネーター)】
後半の方に移っていきたいと思います。それぞれの地域で、もう一度地域の自治というものを見直そうと、しかもそれは自分達で自主的にというところが共通していると思います。地域福祉の見直しと言って過言ではないと思います。自分もいきいきし、高齢者の方々もいきいきする、そして感謝の言葉が返ってくる。そういったところが居場所としていいところではないかなとお話でございましたね。後半は、居場所と絆だとか、皆さん方の事例があったり、あるいは質問したいことがありましたら、質問をまとめてお受けし、パネリストの皆様方にお答えいただければと思います。
【女性】
若干、重複するところもあるかもしれませんが、東京都の地域包括支援センターの職員でして、自治体の職員・保健師なんですが、特に島津さんにお伺いできればと思っております。情報部会、主に男性の方がご活躍されていると伺いまして、これから地域の現場では、やはり定年退職後の男性の方のお力を是非、これまでの経験やスキルを活かしてご活躍いただけたらなと思っています。どのようにして情報を発信されているのか事例を通して聴けたらと思います。
【女性】
高齢社会をよくする女性の会の稲葉と申します。午前中、堀田先生の基調講演の中で、今後の介護保険の在り方として、所謂在宅を施設化ということで、巡回型の短期間サービスを中心に介護保険の今後の在り方として一つ道筋を示していただきました。今までやっていた生活支援的なものが、今後しっかり支えていけるのかどうか、その辺りのところを、お考えをお聞かせいただければと存じます。
【藤井 衞(コーディネーター)】
まず、今日はどうして女性ばかりを選んだのか。偶然でございます。特に意図はありません。男性に期待する役割について、また、男性への呼びかけについて事例がありましたらお答えください。
【島津 艶子】
「ふらっとステーション・ドリーム」の方からお答いたします。先程申し上げましたように、情報部会がありまして、例えば、内科医がこの近所にどういうところにあって、どういう先生が、どのような診察をして、何曜日に開いてるというようなデータをインターネットから入手したり、また伺って話をお聞きしたりしながら、一つひとつをファイルにまとめています。それを見て驚いたのが、歯医者さんがいかに多いかということです。内科よりか歯医者さんが多いのです。そういうことを男性にはやっていただいております。それと同時に9番に「ボランティアバンク・えん」というのがあります。ボランティアバンクは、本当にボランティアの登録をしていただいた方に会員制ではなく、例えば粗大ゴミの持ち出しだとか、電気の球の取り替えだとか、どなたにでもできるようなことをボランティアバンク・えんの方々にしていただいています。男性が60名位いらっしゃいます。それと、もう一つ「ふれあいドリーム」のふれあい活動を説明したけれども、「ふれあいドリーム」というのは有償ボランティアの会員同士の支え合いです。しかも、介護保険でできないサービス、例えば、車いすを押して散歩に行くとか、そういうことはなかなか車いすの操作ができないと、お隣の方にお願いと言ってもできないです、危険が伴いますので、そういうスキルがあるところ、またスキルがなくても男性というのは球の取り替えがすぐできるので、ボランティアの活動の種類によって分けています。これが男性の活動の場としての違いです。
後継者の問題というのは、2世代3世代後の後継者の問題は深刻な問題です。「見守りネットセンター」がありますが、事務局機能を担っているところです。「見守りネットセンター」に毎日詰めて電話を受けたりする当番を、学校の余裕教室ですからPTAのお母さん方にお願いしています。小学校のPTAですからまだ若いです。その方々に少しずつ入ってきていただきながら、世代を交代したいと、そういう繋がりをこれからもどんどん作っていきたいと思っています。
稲葉さんからいただいた介護保険の在り方ですね。巡回型っていうのは私、横浜に住んでいますけれど、巡回型はサービス協会の方がやっていたんです。それが段々なくなっていって、やってくださるところがなくなった。だからこれからは、巡回型が非常に必要になってきます。もう一つはこの介護保険の問題について、私共のような分譲住宅というのは個人です。住宅を引っ越すとか住を換えるということはできない。神奈川県でも、特養は2万4、5千のベットの中で待機者が22,000~23,000人います。それでどうにもしょうがなくなって、特養に待って入るという訳にいかない。行政・厚労省なんかが在宅在宅と勧めていますが、やはり介護保険の中では生きていけない。それをどうするかというところで、時代の変化はともかくとして、地域包括支援センターに介護保険の分野を集中させ、医療と看護と介護を全部連携させると看取りまでできる。ただその間に色んな作業がありまして、ドクターとナースとヘルパーと私達で看取った経験があります。だから看取りは決して怖いものではないのです。要するに家族がいない、親戚も傍にいないというような方の看取りというのは、地域で看取らないといけない。私は、「この独居の人達はどこで死んだらいいの?」と言います。病院で亡くなる方は80%いますので、病院で亡くなる方はそれなりにいいんですが、でも病気じゃなくて老衰になり緊急時の医療が済んだ方達というのは在宅に戻ってきます。そこで看取らなければならないとなったならば、介護保険のほかに、ここに「足りないサービスの創出」って書かせていただきました。ここは多くの人達が、地域の人達の為に自分の時間を割いて色んな見守りをしていかないと、特におひとり様はどこで死んだらいいかわからない。そこで地域では、課題を見つけては、一つ一つ色んなものを作っていっている訳で、これからも作っていかなければいけないし、こういうことを行政や厚労省・お国に支援していただくということがこれから非常に必要になってきます。だから生活支援でも、介護保険でできる生活支援ではなくボランティアができる生活支援というのがあります。自宅で安心して余生を送ることができるという社会を作っていけば、老人はお金を使ってくれるんですよ。今、お金を使わないのは、将来が不安だからですね。そう思って地域で色んなサービスを作るように努力をしております。
【来栖 明美】
私共の地域では、男性女性という風に分けないで男の人にお願いしようとしています。住んでいる人達全員が何らかの形で貢献しようという風にしていますので、例えば高齢者のお宅の庭樹が伸びてしまってどうしようかという相談、すると、誰誰さんにお願いして頼みましょうと会員さんがやって下さいます。男性だから、会員が少ないとか多いとかいうことは問題にしていません。毎週サロンを開いておりますが、毎週いらっしゃる方は、囲碁をやったり将棋をやったりして集まってきております。集まっている中で、ちょっと「これこれこういうことで明日病院に行って欲しい人がいるんだけれども」とか、「車を出してもらえる人はいますか?」等と調整しています。会員の中の何%が男の人ですよという統計はとったことがないんです。色んな形で参加してもらっていると思います。子供達の登下校の安全ということで、街角に立って交通整理をして下さるのは男の人です。
高齢者問題というのは、もっと若い人にドンドン代わっていただかないとこの事業もうまくいかないと思います。最近、子供会のお母さんが色んなことで協力してくれます。公園の花壇も管理していますが、夏休みに親子で公園をきれいにしようとか、お絵かきをしてあそこに看板を貼りましょうと、子供会のお母さん達と一緒に仕事をしています。後継者をどんどん育てたいなというのは私の希望でもあります。
【浅野 玲子】
私達は、介護保険と私共の「たすけあいの会」とのちょうど挟間にある部分をサービスの中でやっております。介護保険は、介護認定を受けていればいいんですが、問題が出てから介護保険の申請をすると、一か月半から二か月かかります。その間は介護保険が使えない。介護保険以外に、お買い物とか家事一般ですね、それを私達の会でやりましょうと決めています。近所にある介護保険事業所と「たすけあいの会」とは密に連絡を取り合い、助け合い、こちらも助けてもらっています。
【石井 五十鈴】
男性のシニアの役割とは、男性ができることでも女性ができないことは一杯あります。高いところの網戸、大きな窓の網戸の掃除は女性ではできません。草取りもそうです。男性のところへ行って男性がお話しすることもこれも、高齢者のところへ高齢者が行ってお話しするっていうのは話が合います。これも一つの支援だと思っています。
船橋市では地区社協というのがありまして、私共の事務所と一緒にボランティア室で私共も地区社協も活動しております。地区社協では男性の方が多く活動しております。
後継者の質問ですが、皆さんと同じ悩みです。始めたのが私達も50代ですけど、もう20年経って70過ぎました。本当に心配です。気にしても仕方がないんで、私共が地域にいいことをきちっとしていれば、きっと誰かが継いでくれます。これは、確信を持ってやろうと思っております。これは積極的にやるのではなくても、ほんわかと活動をしている中できっと見つけてやってくれると思っております。それがボランティアの団体かなと思っております。
地域包括支援センターの方への質問にお答えができないんですけれども、四番目の在宅での介護保険の在り方、生活支援ができるのはどんなことかということで、私共、船橋市では福祉公社があります。365日24時間体制をとっています。お宅の鍵を預かり、10分間位ですかね、おむつの交換とかやっております。それで、普段の私共の活動は家族に代わってやるというのが主ですが、24時間という訳にはいかないので、緊急の電話が民生委員に入れば、「たすけあいの会」の会員さんに訪問して、ちょっと覗いてみることをしています。最初の頃は何が何だかわからない有様でお葬式のお手伝いもさせていただきました。そういうことを積み重ねて、少しずつ少しずつ大きくなった団体です。
【藤井 衞(コーディネーター)】
居場所づくりに色々と貢献されています、さわやか福祉財団の鶴山さんから事例を通して何かお考えになることがあったり、或いは皆様方に情報を提供してくださることがありましたらよろしくお願いいたします。
【さわやか福祉財団の鶴山さん】
さわやか福祉財団でふれあいの居場所を担当しております鶴山と申します。今日は色々、新しい情報を勉強させていただいてありがとうございます。居場所づくり・男性の参加という話がありまして、一つ例をご紹介させていただきたいと思います。いつ行ってもいいし、誰が行ってもいいし、そこで自由に過ごせるようなそういったふれあいの場を作ろうと、目的は地域の人が知り合って、そこで触れ合って、そして助け合える場をそういった関係を地域に広げていきたいから繋がりをつくるそういった為の居場所をつくりたいと、そういうのをつくってみませんかということで、ガイドブックを作らせてもらったり、色んなところでの勉強会などをさせてもらっています。やっぱり男性の参加というのが難しいという話をよくお聞きする中で、島津さんのお話にもありましたけれども、色んな方法がありますが、そのうちの一つとして、最近少し流行り出しているのがですね、夜の茶の間とか夜の居場所というような感じです。これは別に、年齢も関係なく、お酒ということだけではなくてフリードリンクでもOKということで、例えば新潟で、もう店も広がっている「地域の茶の間」というのをやっている河田珪子さんは、毎日型の地域の茶の間を「うちの実家」というのを新潟市で行っていますけれども、そこでも、毎月第二金曜日にですね、「夜の茶の間」というのをやっていると福祉関係の方、行政の方、それからサラリーマンの方、おばさん達、子連れの方色んな方が参加してそこで知り合ってまた色んな活動に活かされているというお話があります。金沢の方でも、「居酒屋」という、月に一回NPOの事務所を開放して一品持ち寄り、後はもう何もルールはないというような居場所もあります。そうすると、世代を超えて男性も気楽に参加しやすいということで色んな人が繋がって、そこから新たな活動の展開をしていくというような動きもあります。それで、私一つ質問させていただいてよろしいでしょうか?今日は高齢者が孤立しない、させない社会ということで、これだけ多くの方がそういうことに関心を持っておられるというのを改めて実感しましたし、実際に居場所の推進をしていてもそこのところは本当に大事な問題になってきているなと思っています。
確かに実践者の方のお話を聞くと、居場所によって今の繋がりができて孤立を防ぐ防止というところでは、大変有効な方法だと思います。居場所は他にも色んな効果はありますけれども。そういった中で、既に孤立してしまっているといいますか、おひとりになってしまってなかなか社会と繋がりにくくなって心を閉ざした方を引っ張り出すような工夫をしていらっしゃるかどうか、その辺りを教えていただきたいと思います。
【来栖 明美】
独り暮らしの老人とかそういう人をできるだけみんなのサロンとか集まりに参加して頂くのにはどうしたらいいか?だと思いますが、特にこれって言うほどのことをやっていません。毎週木曜日に、必ず朝、地域の委員さん達に、誰誰さんのお家に寄って来てねって頼むんです。そうすると、その人が行って、「今日お食事会があるんだけどどう?」って一言言ってくれる。無理やり引っ張り出すんじゃないんですけれど、「朝、必ず寄りましょう」ということは、みんなの一つの合言葉にしいます。「いついつこういうことがありますよ」ということは地域の委員さんが必ず一言言うと。その人は一緒の場所に住んでいる人達ですので、あらためてこういう人が来たというと向こうも構えてとられるという感じがありますのでね、私共はそういう風に地域の人にさりげなく行ってもらおうという形をとっています。
【浅野 玲子】
私共もふれあい的なものが、きんもくせいという花の名前をとりましてコーヒー喫茶を地区社協と一緒にやっております。そこに、奥さまを亡くしてなかなかお出でにならなかった方に、「いらっしゃい」と言って何度かお誘いしました。そしたらお出でになって、お話を私とか、他の方ともされ、男同士で囲碁等をやるチャンスができ、その方は元気になりました。お酒が好きな方もいらっしゃって、飲む時に一緒に飲んだりします。いらっしゃらない方を無理にお誘いするのではなく、奥さまが「デイサービスに行かないからどうしたらいいでしょう」とお困りになっていて、「決めるだけ決めといたらどうですか?」とボランティアの方にお願いし、デイサービスに行ったらご本人もとても気にいったようで、行くようになられ、大変喜ばれたということもあります。
きんもくせいでお茶を飲みながら、きまって来る方もいらっしゃいますし、その中で施設に入りたいとかデイサービスに行きたいんだけれど今あるかしらというご質問も出てきます。早く言えば、ちょっとした高齢者の社交の場になっております。きんもくせいは、私共と地区社協で一緒にやっておりまして、皆さんに喜ばれております。
【藤井 衞(コーディネーター)】
もしよろしかったらこんなことをして成功しましたよという事例がありましたら皆さん方の方で発表して下さいますか?
【男性】
川崎市多摩区の方から来ました。私の質問は、午前中に講演がありましたように高齢者独り暮らしの男性のお話がありましたけれども、その人達にどのように呼びかけるかに苦労しています。地区の状況で、農家の方もいますので、芋掘りをするとか梨狩りをするとか。農家にからむ問題でしたら農家の生産物を手伝うというか、或いはやらせてもらって融和を図ると。その他に、たまたま先月でしたが、若い時の或いは直近でもいいんですが、写真を持って来てもらってグループトーキングの中で自分の写真を思い出しながら話をしてもらう、そういう活動をやっております。男性の独り住まいの最後の問題ですとか、段々引きこもりが強くなってしまうとか、一番心配の度合が強かったんですね。どなたかそういったことに対応する活動をしていらっしゃったら教えていただきたかったというのが私の質問です。
【男性】
実は、囲碁の普及活動をやっているきっかけが団地老人の孤独死がきっかけで、その繋がりの一つの手段として囲碁をやっているんですが、何人かの方が碁の話が出ましたので。実は私ミクシィでもブログを書いていますけれど、囲碁そのものは教え方を誤ると碁嫌いになります。しかも碁そのものは3歳の子供から100歳を超える方まで碁ができるんです。先日新聞に出ていましたけれど、101歳のお婆様がプロと打ってる記事の説明の中に、始めたのが93歳ということもあります。皆さん、特にサロンの中で碁をやっている人は限られた碁を知っている人同士が碁をやっているということですから、全然やったことのない人もできる方法がありますので、一つその点もご関心をもっていただきたいと思います。インターネットで、ふれあいのネットワークを引きますと出ておりますのでそれだけご紹介させていただきます。ちなみにですね、ミクシィでの私のニックネームがてんとう虫ということで書いておりますのでお覗きいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【藤井 衞(コーディネーター)】
ありがとうございます。何かに長けた才能をお持ちの方は素晴らしいリーダーシップを発揮されると思います。居場所というのは何か自分の才能を発揮する場所でもある訳でしょうね。ありがとうございます。
【女性】
こんにちは。山形県天童市から参りました。加藤と申します。私は、助け合いの活動を始めまして、生活支援、移動サービス等々様々な活動をニーズに答えてやって参りました。そこで、私達が、週に2回、3回と活動している中で、訪問してみると孤独死をされていたという経験がありまた。居場所の必要性を感じて居場所を開きました。昨日一昨日まで元気だったのに、亡くなる近くまで元気でお過ごしであったのに、独りで亡くなられた悲しみの現実を見せ付けられたこともありました。
それから私達のところで男性がとても頑張って活動しているのに、移動サービスあります。女性も男性もやっていますが、移動サービスには34名の参加者がいて、特に男性が活発に動いているところをちょっとご紹介させていただきます。年齢は65歳で、ずっとNTTの職員として仕事をされておりまた。奥さんが看護師さんで私達の活動に参加をして、移動サービスがとても忙しくなりましたので、その奥さんが「ちょっと混じって」と参加して欲しいと申しました。でも最初は本当に嫌々という風な感じで、「参加しない参加しない」という風に言っていましたが、講習会に行っていただいて参加することになりましたら、利用者さんから本当にありがとうございますと。生活を様々な面で支えることができるということと、買い物にも付添うこともできる、病院にも付き添うことができる、色んなことができるということに自信を持って取り組んでおられます。途中腎臓がんを患ってレベル4という状態だったんですが、また復帰して一生懸命活動に参加されています。手術をして3年になるんですが、今はがんがゼロというところまで回復して、前向きに生きることが病気を克服するんだなとおもいます。
それから天童市は将棋の町ですので、どこの小学校に行っても、上手下手はあっても子供達は将棋ができるんです。でも、私達の天童市というのは色々なところから移り住んでくる方が結構いらっしゃって、将棋も知らない人が沢山いらっしゃいます。居場所に来て、小学生から将棋の駒の動かし方を習っている等ということもあって、居場所が世代間交流ができる場に、また道具になっているなと思います。
【藤井 衞(コーディネーター)】
山形県からお越しいただきました。もう一方、私の方から声を掛けさせていただきます。名古屋から起こしの上村さんいらっしゃいますか?状況報告等ございましたら皆さんにご報告していただけたらと思います。
【女性】
名古屋市役所の職員でございます。こっそり来ていたつもりだったんですけれども。今日は、私は役所のこういう担当者会議等にもよく出席しますが、質疑応答と言っても、大抵何も手が挙がらないことが多くてこんな風にあちこちから手が挙がる会というのは初めて拝見いたしまして、非常に素晴らしいなと思って拝見させていただきました。名古屋市の方はですね、今年1月、高齢者の夫婦世帯の孤立死というのがありまして、旦那様が奥様を介護されていて、恐らく旦那様の方が先に亡くなられて奥様が助けも呼べなくて亡くなられてしまって、結局発見されたのが3週間位後だったという例がありました。それまでも名古屋市は独り暮らしの高齢者の方は民生委員さんを中心にして訪問活動を行ってきたんですけれども、高齢者夫婦世帯はその頃から非常に視野に入れて活動をしなくてはならないということを、行政としても非常に認識が高まったということで、色んな訪問活動もそうですし、緊急通報、或いは孤立死防止ということで地域支援ネットワークというのを進めているんですけれども、そういった高齢者独り暮らしを対象としていた各種事業を、高齢者夫婦世帯を対象にするということでようやく動き始めたところです。恐らく、ここにいる地域の皆さんの方がずっと進んでいるんだと思いますけれども、ようやく名古屋市としても、高齢者のひとり暮らしの方に加えて高齢者の世帯を視野に入れて色々な活動を始めたというのが、名古屋市の状況です。
【藤井 衞(コーディネーター)】
最後にパネリストの方々からお一人ずつ今日の感想とこれからの将来についてお話し願いたいと思います。
【島津 艶子】
私、居場所をずっと一生懸命やってますが、そこに来て、独居の男性の方が非常に沢山いらっしゃるんですが、その独居の男性の方に色々お話を聞きますと、例えばお友達に誘われて来た、一番最初はそうだった。でもみんなが気遣ってくれる。その気遣う心、その心がその方に伝わると非常に嬉しいと言って泣いて下さった方もいらっしゃるんです。そんなに気遣ってくれてたのかと。それで、その方は毎回毎日のように訪問して下さるんですね。だから、「私達が隣は何をする人ぞ」ではなくてお隣のこと、またその隣の隣のことを気遣う心というのがこれからはもっともっと深く持たなきゃいけないかなと思います。それと同時に昔、高齢者は賢者として敬ってきました。それが、今はどうも薄れてきている。高齢者を敬う心が薄れてきたというのは、やはり生活が高齢者と一緒に生活をしてないから。高齢者はどういうことを考えてどういうことを私達に教えてくれたかということを教えてもらってないから高齢者に対して尊敬の念だとか敬う心がなくなってきたなと。それには、やっぱり学校教育もあるし家庭教育もある。そういうところから気づきを見つけて、そしてどういうことがこれからこの地域では必要かということを一人一人が考えていかなければならない時代に来ているのかなと思っております。
【来栖 明美】
今日この会場に入りまして、本当のことを言うと、男性の人が沢山いらっしゃることにちょっとびっくりしたんです。私共の地域で何かこういう福祉関係のこととか、高齢者問題の何かをしようというと、ほとんどが女性です。私達のやっている活動がどこか違っているのかなと、間違ってないかな、呼びかけにしても何にしても、もう少し男の人を呼び掛けることをこれから考えなくちゃならないなという大きな反省点として、私は今日持って帰りたいなと思います。敢えてこれから先、何年やっていけるのかと思いますけど、男性も女性も一緒にやらなきゃだめなんだとつくづく感じさせられる会合でした。
【浅野 玲子】
私は今日つくづく思いましたのは、ボランティアというのは、その地域にあったようにすることです。やっぱり私共が「たすけあいの会」で動いて、高齢者の方から一人一人違いますが、色々なことを教えてもらいました。またこちらからもお返しいたしました。そういうことが積み重なってその地域に合ったボランティアをすれば、肩も張らずに長く続けていかれると思います。ですから、後継者づくりを頑張ります。
【石井 五十鈴】
会長と同じ気持ちですけれども、本当に地域地域が全く違うと思います。私共の団地から一緒に参加した方は、ご実家が和歌山県の方の山深い所です。こういう所で、ういう風な形というのは決まりが全くありませんから、その地域にあった、小さくてもコツコツと皆さんのお手伝いをできるというような会を作っていただけたらと思っております。
【藤井 衞(コーディネーター)】
非常に地域福祉について考えさせられる分科会じゃなかったかなと思います。地域福祉を住居福祉に置き換えて、また継続してこのような問題に取り組んで参りたいと思います。