パネルディスカッション第1部「高齢社会フォーラム・イン仙台」
〔コーディネーター〕
樋口 恵子(高齢社会NGO連携協議会代表、(N)高齢社会をよくする女性の会理事長)
〔パネリスト〕
- 「高齢社会対策の現状と課題」:小林 洋子 (内閣府高齢社会対策担当参事官)
- 「シニアの元気はまちの財産」:奥山 恵美子 (仙台市長)
コーディネーター 樋口 恵子
樋口:それでは午後の部、体操で体がほぐれたところで、頭もほぐれたと思っております。これからたまたま登壇者が何と、内閣府の参事官と仙台市長とコーディネーターの私と全員女性でございます。これもまた時代の変化ですよ。ですから男だけであなた、この世の中回すなんて思っている高齢者の男性がいらっしゃいましたら、今日の光景を見てどうぞ、潔く諦めていただきたい。それもまた新しい時代認識の1つと思いますが、どうぞご安心くださいませ。後半のパネルディスカッション第2部は、登場人物もコーディネーターも全員男性でございます。
まあなんだか、よくはっきり分けられたなと思うんですけど、このとおり、男女共同参画でやってまいりたいと思いますので、パネリストをご紹介いたします。1人は内閣府高齢者担当の参事官である小林洋子さんでございます(拍手)。今日、皆様のお手元にありますエイジレス・ライフの表章者の小冊子、といっても結構分厚い小冊子でございますけれど、その小冊子の「発刊にあたって」ということを書いていらっしゃるのが小林洋子さんでございます。なかなか名文と存じます。
そして皆様ご存じの仙台市長奥山恵美子さんでございます(拍手)。
昨年、市長として初当選なさいまして、今、行政官というのはどうしても八方美人になると。市長としてはもう少し政策をしっかりと出していく、明確にしていく必要もあるのではないかなどというご感想をもらされていらっしゃいました。これからの市長の正念場、2年目からだと思います。でも概して評判いいようですね、皆様ね。
ではまず20分ぐらいずつ、まず国の政策、皆様のお手元に平成21年度高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況、要するに約めていえば、高齢社会白書概要というのが、今日ここにご参集くださいました方には全員もれなく配布してございます。国も予算っていうのがありまして、これはなかなか配布できないんですよ。こういう会にいらした方には特別にお配りいたしておりますから、これにのっとってまず参事官のほうから、国のこの直近の高齢社会対策というものをご説明いただきたいと思います。そのあとで市長さんから、仙台市における取り組みをお話しいただきたいと思います。
では小林参事官、どうぞ。
内閣府 参事官 小林洋子「高齢社会対策の現状と課題」
小林:皆さん、こんにちは。ただいまご紹介いただきました内閣府で高齢社会対策を担当しております参事官の小林と申します。よろしくお願いします。今日、この会合の始まる前に活動紹介コーナー、1階上がったところの活動コーナーを見させていただいて、皆様のパワーをたっぷり感じまして、今日はちょっとそのパワーに負けないように頑張りたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。それでは冊子は短く高齢社会白書といってございますけど、これに基づいてご説明を申し上げます。今年の白書のテーマは、NHKの番組でも『無縁社会』というのが取り上げられておりまして、今日今晩、明日の晩も恐らくNHKで第2弾ということで、テーマになるというふうに聞いておりますけれども、高齢の方の行方不明問題とかもございましたし、そのような社会状況の中で、今年の白書のテーマは「孤立からつながり、支え合い」というところで、テーマで今年の白書はつくっているところでございます。
まず最初に数字の話をさせていただいて、それから特に孤立からつながり、支え合いへとつなげるための政策的な、基本的な方向性はどんなものかということを、ご説明をさせていただきたいと思います。
まず2ページをごらんください。皆さん、よく聞いていらっしゃると思うんですけれども、高齢化が非常に進んでいるということで、下の表の2ページの表(表1-1-1)のところで、総人口というのは去年と比べまして減ってきているというか、もう日本は人口減少社会に入っているんですけれども。65歳以上の方というのは増え続けておりまして、過去最高の、2段目のところですけれども、2,901万人ということで増え続けているということでございます。
そのもうちょっと下に、一番左側の総数の下のほうを見ていただきますと、そのすべての人口の中で65歳以上の方が何%いらっしゃるかという数字が出ていますけれども、これが一番新しい数字で22.7%ということで、一般的に高齢化率といわれています。
これが22.7%なんですけど、これもずっと増え続けております。
これは3ページ目の上の図(図1-1-4)をご覧いただきますと、高齢化率っていうのがちょっと見にくいんですけど、三角の緑色の数字が、全人口中の65歳以上の方が何%かという数字なんですけれども。これは真ん中で線で区切られていまして、左が実際の数で、右が推計でございます。
ずっと高齢化率というのは上昇してございまして、総人口はもう減り出しています。
2042年には65歳以上の方の人口自体も減ってきます。
総人口がまず減り出して、2042年には65歳以上の方の人口も減るんですけれども、それでも高齢化率というのはずっと増え続けていくということで、この推計、一番おしまいが2055年なんですが、2055年には高齢化率は40.5%ということで、2.5人に1人の方が65歳以上ということでございます。
これはちょっと下の表(表1-1-6)をご覧いただきたいんですけれども。
これは15歳から64歳層の方を支え手と考えて、それで65歳以上を何人で支えるかと。必ずしも別に65歳以上の方がみんな支えられる側だと思わないんですが、仮に15から64歳層が支え手で、65歳以上の方が支えられるほうに回ったと考えた場合に、何人で支えるのかというのが、この左側の(A)の数字が年が変わるごとにどうなっていくかというのが並んでございます。2009年ですと2.8人の支え手、2.8人で1人を支えていたという状況が、1.3人で1人を支えるというふうな状況になるということが、ここの表で書いていることでございます。
4ページ(図1-1-7)をご覧ください。
これは今申し上げた高齢化率の話とセットの話でございますけれども。平均寿命、大変これはよいことなんですけれども、ずっと平均寿命は伸びてございまして、現在は男性が79.29年、女性が86.05年で、さっき申し上げた将来推計の一番後ろの2055年には、女性は何と90歳を超えるということで、本当に大変めでたいことだなとは思いますけれども、女性は90年時代。男性も83.67ということでございますので、いずれは90年時代を迎えるのかなというふうに思っております。
右側の5ページ(図1-1-13)でございますけど、これは諸外国比較でございます。
諸外国で上がヨーロッパやアメリカと比べたとき、下がアジアの国と比べたときでございますけれども。もう21世紀初頭、2000年を超えたあたりでもう日本の高齢化率っていうのは、諸外国と比べて、一番上に出てきまして、そのトップの状態がずっと2050年まで続いているというふうな推計が出ています。諸外国も高齢化率増えていますけれども、日本はそれでも群を抜いておりまして、参考にできるような国がなくて、先行して、経験したことのない高齢社会に、これから入っていくというふうな状況でございます。
これは数字の話ですが、身近な生活の環境の取り巻く高齢者の方の生活とか、取り巻く環境がどんなふうになっているかというのが、その6ページ(図1-2-1-1)のほうになります。これは高齢者の家族、世帯がどんなふうになっているかということでございます。
これも多分よく聞かれることかと思いますけれども、この棒グラフで3世代同居というのが青紫の点の棒グラフでございます。これは3世代の世帯がどうなっているかということですけど、ちょっと棒グラフの幅が小さくなっていって、減少傾向でございまして、下の黄色の単独世帯、これは目に見えて増えているというのがお分かりいただけると思います。あとは夫婦のみの世帯。単独世帯と夫婦のみの世帯というのが、非常に増えているなというふうな感じがいたします。
下のグラフ(図1-2-1-10)は1人暮らしの高齢者の動向ということでございますけれども。ピンクが女性、男性が水色ですが、1人暮らしの高齢の方は男女ともに非常に増えています。特に女性が大きく増えています。
男性もその増え方が顕著であるということで、私も市役所に出向していたときに、地域の男性とお話することもあったんですけど、何となくもう「それは奥さんに面倒見てもらうからいいや」というふうにおっしゃっている男性の方多かったんです。男性の1人暮らしの方増えていきますので、必ずしも奥様がずっと死ぬまでそばにいてくださるようなものではないということは、ちょっとお心に留めていただければというふうに思います。
1人暮らしのご高齢の方で、ほかの世帯と比べて「心配ごととか悩みごとがあるか」というふうなことを聞いたものが下の図(図1-2-1-11)になります。これは単身世帯、世帯別に心配ごとや悩みごとありますかと聞いたときに、まあまあ予想されることなんですけど、やっぱり単身世帯の方のほうが「心配ごとがあるね」とおっしゃる方の割合が高くて、特に健康のこととか、それから生活費など、経済的なこととが「心配ごと」というふうに思っていらっしゃる方がほかの世帯より、単身世帯の方のほうが多いというふうな状況にございます。
高齢の方の経済状況なんですけれども、次のページでございます(表1-2-2-2)。
高齢の方のいらっしゃる世帯の世帯人員、1人あたり、世帯のお1人あたりの年間の所得なんですけれども。これは表の左側で298.9万円。
1人あたりは、高齢の世帯の方はその右側のところで、上の192.4万円。これが高齢のいらっしゃる方の世帯の1人あたりの年間所得なんですけれども。全世帯の平均の年間所得は207.1万円です。
下の円グラフ(図1-2-2-3)をご覧いただきますと、金額にはそんなに大きく差はないんですけど、高齢者世帯で公的年金とか、それから恩給で所得が100%だと。だから所得は年金と恩給だけというふうな世帯が6割というふうな状況にあるということが、この円グラフでおわかりいただけるかと思います。
それから右側の貯蓄(図1-2-2-7)ですね。どれくらい貯蓄を持っていらっしゃるかということでございますけれども。
これはグラフで全世帯がピンクで、世帯主の年齢が65歳以上の世帯は、この水色のほうでございます。全世帯平均の貯蓄額は1,680万円。65歳以上の世帯主の方の世帯の平均は2,329万ということで1.4倍、全世帯平均の1.4倍ということでございまして、特にちょっと右側で、4千万円以上のところの世帯が、かなり全世帯平均よりも高いというふうな状況がございます。ただ、高齢の方は健康のこととかいろいろ心配もおありで、貯めていらっしゃる部分もあるのかなと思うんですけれども。
11ページ(表1-2-3-11)にご高齢の方の健康と福祉ということで、これは介護の関係の数字でございます。
65歳以上の方がどれくらいの数、要介護の認定を受けているかということでございまして、これは見ていただくとわかるんですけれども、介護保険法施行になって以降、途中で改正もありましたが、ずっと増えておりまして、75歳以上の方だと2割を超える方、5人に1人が何らかの要介護の認定を受けているという状況でございます。
12ページ(図1-2-3-15)は、その介護をしている人は誰なのかということなんですけれども、やはり同居の親族の方が6割でございます。
その内訳で一番多いのはやはり配偶者、その次がお子さん、子さんの配偶者というふうに続きまして、介護者の性別はやはり女性が圧倒的に多く7割で、男性3割というふうな数字になっております。
それで下のグラフ(図1-2-3-16)ですけれども、NHKの無縁社会の番組でも、親御さんの介護でご兄弟がいらっしゃらなくて、会社を辞めて、今度、親御さんが亡くなったあと、再就職しようと思ったらなかなか難しいというふうな方が何人か出てこられました。
やはり家族の介護とか看護を理由として、離転職された方というのは増加をしているということがおわかりいただけるかと思います。
18年10月からの1年間の人数というのは、かなり前の年よりも増えているという感じがしております。
右側の次のページは高齢者の方の就業とか社会参加の数字でございますけれども。13ページの下は労働力人口(図1-2-4-8)。
これは実際に働いている方とお仕事を探している方と合わせたものを労働力人口といいますけれども。
その全体の労働力人口の中で、65歳以上の方がどれくらいいるかという比率は、この折れ線グラフでございまして、働いていらっしゃる方の割合というのは高まってきているという状況でございます。
14ページ(図1-2-5-1)のほうは社会参加活動の実際の状況ですが、ご近所の方との交流が減ってきているというのが上のグラフでわかります。
ピンク色の親しくつき合っているっていう方の割合が減っていて、あいさつする程度という方が増えているということでございます。
ただ、その下のグラフ(図1-2-5-2)を見ていただくと、近所の人たちの交流は薄まっていますが、グループ活動の参加状況というのは高くなっています。下の左側のグラフ(図1-2-5-2)をごらんください。グループ活動の参加状況を平成10年と20年で比べた数字ですが、参加したものがあるというのが、平成10年で43.7%だったのが、平成20年には59.2%ということで、今日のお集まりの皆さんもいろいろと活動をされていて、グループで活動されていらっしゃる方もいらっしゃるかと思いますけど、皆さんのような方が10年前と比べると急増しているというふうなことでございます。
参加意向を聞いたグラフ(図1-2-5-5)ですが、参加意向を見てもやはり参加したいという方が非常に増えているという状況がございます。
16ページは、今年の白書のテーマのメインのところでございますけれども、社会的孤立に陥りやすい高齢者の特徴は何かということを分析しました。下のグラフ(図1-3-2)は、「困ったときに頼れる人がいない人」の割合というのを、例えば性別で見たり、婚姻状況別に見たものですが、世帯構成別に見るとやはり1人暮らしの方が困ったときに頼れる人がいないとする人の割合が高かったり、未婚の方とか、あとは暮らし向きがとっても苦しい方がやはり困ったときに頼れる人がいないと思っていらっしゃるということがわかります。
これはお友達との付き合いについても、やはり下のグラフ(図1-3-3)ですけど、1人暮らしの方や未婚の方、暮らし向きが大変苦しい方というのは、お友達の付き合いをあまりしていない状況がわかります。お友達との付き合いもあまりしていないこともあり、困ったときに頼る人もいないというふうな状況にあります。
18ページにいっていただいて、恐らく生活が便利になったんで、元気な間は特に地域の方と交流しなくても、また家族が離れて暮らしても、家族の人ともそんな交流しなくても生活が成り立つんだと思うんですけれども。いざ健康上の理由で何かあったときなどいざなったときに頼れる人がいないというふうな事態が、昔よりは生じやすくなっているのかなという感じがいたします。社会的孤立が生み出す問題なんですけれども、これはまず生きがいが、やはり孤立感のある人は生きがいが低くなっているということがあると思います。これはご高齢の方は全体では8割の人、下のグラフ(図1-3-7)ですけれども、「生きがいを感じていますか」とか聞いたときに「十分感じている」「多少感じている」人を合わせると、8割の人が、高齢者の方全体では生きがいがある、感じているっていっているんですけれども。
その真ん中辺で、近所づきあいのところの下に真ん中辺で、近所づきあいほとんどないっていう方になりますと、22.0、35.1足して、ほとんど6割の方が生きがいを感じていますが、やっぱりさっきの8割の方に比べると、ご近所つきあいがない人が生きがいを感じている割合は6割に下がりますし、親しいお友達がいない方になりますと、その一番下ですけれども、12.3と30.5を足しますと、これは4割の方しか生きがいは感じられないというふうなことでございます。
19ページの下の左側のグラフ(図1-3-9)です。東京23区内で自宅で死亡した65歳以上の1人暮らしの方の数ということで、これは増加傾向にあります。孤立死という定義はないんですけれども、孤立死というのも増加をしているんじゃないかなと、このグラフから推測をされます。
それで21ページをご覧ください(図1-3-14)。
ここからは対策というか、今後こういうふうな方向に社会が行けばいいなあという取り組みの基本的方向なんでございます。まずご高齢の方に、困っている世帯に手助けしたいですかと聞くと、右側を見ていただくと、手助けしたいと思っている方が8割です。ただ、実際に手助けしている方というのは3割で、5割の方がしたいけど、していないという。ここを、手助けしたいけど、していない方を実際の活動に引き出すために、引き出す役割を担う地域のまとめ役を発掘していくことが大事だろうということで、コラムでさわやか福祉財団さんのインストラクターの養成事業というのをご紹介をしています。またコラムのところで、あとでお読みいただきたいんですが、例えば元気な高齢者の方が、援助の必要な高齢者の方に生活支援を行ったときに、地域で使える通貨を出します。地域の商品券として発行するという取り組みをしている地域通貨の取り組みをコラムで紹介をさせていただいております。
それから2つ目で、人とのつながりを持てる機会づくりということで、1つ目の丸は元気な高齢者が、支えのいる高齢者の方を助けるということですけれども。下の、その2つ目の丸は、これはやっぱり居場所づくり、支え合いをする端緒となるようなことで、接点を持つような機会をつくり出すということで、コラムで居場所づくりをやっていらっしゃるNPO法人の方のお取り組みとか、見守り活動をやっていらっしゃる東京都の日野市さんのご紹介をさせていただいています。
これは今年の6月18日に、聞いたことあるかと思いますけど、新成長戦略というのが出されてございまして、日本がどうやってこれから成長していくかということなんですけれども。その成長戦略の中に新たな公共、新しい公共というふうな概念が出されておりまして、これは従来の行政機関だけではなくて、地域の住民の方が教育とか子育てとか、まちづくりとか、共助の精神で参加をする、公共的な活動をしていただくことを、国としても応援していくというふうな考え方が非常に大きく打ち出されてございまして、最後に示させていただいているのは、住民とかボランティアとかNPOなど民間の団体と、地方公共団体、国も含めて行政機関ですね、行政機関と良好なネットワークづくり、お互いに助け合える仕組みを、関係を築いていこうということで、方向性としては示させていただいております。
内閣府のほうも来年度の予算要求で、NPO法人の皆様方とか、地方公共団体でもそうなんですけど。見守りの活動をしている事例を集めたりとか、あとは今申し上げた、元気なご高齢の方が、支えのいるご高齢の方を支援しているような取り組み、それを後押しするような活動をされているNPOの方とか、公共団体の方とかの取り組み事例を調査したいと思っていまして、これ予算要求をしております。予算が通るかどうかはちょっとまだわからないんですけど、予算が通れば、ぜひ調査をして、事例集みたいなものをつくって、こういう取り組みだと進むよというようなものを、自治体の皆様方とか、団体の皆様方にお配りしたいと思っております。私からの説明は以上でございます。
樋口:はい、ありがとうございました。これで国の直近の政策、特に人と人とのきずなづくりというあたり、そしてまた高齢化の波が日本はもう世界のトップを行くんで、私たちが何か新しい発明をしていかなければならないところに今いる、ということがよくおわかりいただけたのではないかと思います。それではお待たせいたしました。仙台市の市長さんから今、この問題に関する仙台市の取り組みについてご報告いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
奥山恵美子 仙台市長「シニアの元気はまちの財産」
奥山:ご紹介をいただきました仙台市の奥山でございます。今日は大勢の皆様にご参加をいただいて、本当に嬉しゅうございます。
私からは、主に、とても元気なシニア皆さんが、この仙台のまちの元気を支えているということで、「元気元気」の事例をいくつか発表させていただきたいと思います。
そして今日は樋口さんに仙台においでいただいています。私が35年前に仙台市役所に入りましてから、5、6年経ったころですね、仙台の女性団体のお一つが、樋口さんのお話を聞きたいと。どうやら東京のほうに「これからは女性の社会。高齢化の問題、特に介護の問題なんかは男性じゃ絶対わからないわよ、だって直面していないんだから。直面している女の人が声を出さなきゃだめよ」っていうとても元気のいい人がいて、バリバリやっているらしい。ぜひ仙台にも来てもらって、お話をお聞きして、バリバリの「バ」ぐらいは、頑張っていかなきゃ!と考えたグループがありまして、あのときはたしか戦災復興記念館だったかと思うんですけれど、お呼びして、お話をいただいて、「なるほど、樋口さんっていう方はすごい方だなあ」と思いました。あれから既に30年になりましょうか。
まさにあのときですね、私は忘れもしません。「老婆は1日にしてならず」ということをおっしゃられて、老婆というのはこれだけ年数をかけてなっているんだから、亀の甲以上の年の功があって、しかも亀には口がないけど、我々には口という素晴らしい武器があるから、この武器を使えば、できないことは何もない。女が3人集まればかしましいぐらいの口の力を発揮するんだと、大変な元気をいただきました。おかげ様で私も口だけが達者になりまして、先生のご薫陶を受けて、市長選にまで出るようになってしまいましたので、ありがたいことでございます。
さて、本題に入らせていただきます。今日は全国からおいでの方もおありかと思いますので、まず杜の都仙台のPRのページでございます。牛タン、ずんだもち、そして冷やし中華、たくさんのおいしいものが仙台にございますので、ぜひこの味覚の秋を楽しんでいただければと思います。また、仙台ではイベントもいろいろ盛んなんですけれども、そうしたものを市民の方々の活動の力で支えていただいています。前頁に広瀬川の灯篭流しや光のページェントなどがあります。
また先ほども「杜の都のオトク体操」をやっていただきましたけれども、地域でこういった体操を行うなど介護予防の取組みもあります。地域レベル、全市レベルの様々な活動が仙台の魅力をつくってきたと思っております。
先ほど、国全体のお話がございましたけれども、仙台も確実に高齢社会に向かって、高齢人口は増えています。仙台は幸いなことに、「学都=学問のまち」とずっと呼びならわせていただいておりますけれど、大学が多いものですから、まちには若い方が大変多い。東北の中では一番若い方が多いまちで、それでも年少人口に限ってみれば、仙台の小学生、中学生までの年少人口のピークは、もう昭和60年に過ぎておりまして、とっくに子どもたちの減少社会に入っています。これからは、総人口は減少、高齢者の人口は増加となり、これはやや後追いながら、全国の傾向を追いかけているということになります。
ではそうしたことが起こると、まちはどうなるか、ということも大きな課題です。この図は仙台のまちを、人口が増えているところは黄色と赤、減っているところは薄緑と緑で塗り分けたものです。丸のところは人口が増えている地域ですが、これは鉄道と地下鉄の沿線に集中しておりまして、今若い方がお住まいになるのは、地下鉄もしくは鉄道の沿線であるということがとてもはっきりしております。それ以外のところは緑や薄緑になっていますが、同じ仙台の100万の人口の中でも、若い方がとても多く、保育所が足りなくて待機児童がたくさんいるという地域と、一方で、郊外団地が古い団地になってきて高齢化率が高くなり、そしてお店も1軒2軒と閉店していって、日常の買い物にも困るというような地域が、ある意味では背中合わせになっているのが、今の仙台でございます。
従って、私が市長として対応していくにあたっても、片一方で小学校をつくり、保育所をつくり、片一方ではグループケアのホームが足りないというように、まち全体で人口が増えていくという時代とは違った状況が行政課題になってきています。人口の増減傾向が異なる、まちとしての「まだら化」の現象が起きていると思っているところでございます。
私はこれを「まちの骨粗鬆症化」と言っておりまして、それだけまち自体が、ある意味脆弱になってきていて、何かありますとポキッと骨折しかねない。まちを骨折させないで、片方で人口が増え、片一方で人口が減っていく、このバランスを取りながら、全体として元気な骨太の仙台をいかにつくっていくか、そこが私の市長としての腕のふるいどころでもあり、また何よりも市民の皆さんにいろいろな形でご活躍いただき、またご支援をいただくことによって、そういう元気なまちづくりができるものと思っております。
郊外団地で高齢化が進んでいると申し上げましたが、のちほどのパネルディスカッションでもご発表があるかと思いますけれども、例えば仙台市が開発をしました鶴ヶ谷団地という団地がございます。そこは全市の平均に比べて、やはり高齢の方の割合が非常に多い。鶴ヶ谷団地だけでなく、昭和40年代30年代につくられた団地について、やはり全市平均よりも高齢化率が進んでいる状況が目立ってきています。
さてここからいくつか、仙台のシニアの方々の活動を紹介させていただきたいと思います。全市的には今申し上げたまちの骨粗鬆症化や団地の成熟に伴います商店街の閉鎖など、いろいろ難しい課題がございますが、一方で、お一人おひとりのシニアの皆様は、このまちで大変元気に暮らしていただいているところでございます。
遡りますと平成7年、今から15年ほど前になりますけれども、「シニアが元気なまち仙台」をまちぐるみでつくっていこうという動きのもとになりました『夕陽は沈まない』という河北新報の連載キャンペーン連載がございました。皆様にもご記憶があるかと思います。人の一生を太陽の動きに例えれば、高齢者は真紅に輝く夕陽の世代であって、決して暗い暗闇だけの中にいるわけではない。さらにいかに輝くかという、そういう発想の転換を訴えながら、シニア世代の意見や考えをまちづくりに生かしていこうと、そういう連載がございました。そうしたシニアの方々が、「シニアネットワーク仙台」というような市民団体をおつくりになりまして、例えば高齢者の方々のパソコン教室ですとか、あと先ほど内閣府からのご説明もございました井戸端会議のたまり場の居場所の創設ですとか、いろいろな活動がこの連載をさきがけにスタートしたということを、私も思い出すところでございます。
今、仙台でいろいろな市民活動があります中で、全市的に広い意味でシニアの方にご協力をいただいている取り組みの一つとして、「クリーン仙台推進員」というのがございまして、全市で3,500人ぐらいの方にご活動いただいています。仙台市では2年前からごみの有料化ということが取り組んでいますが、移行の際、有料化にすると、不法投棄が心配だという声がたくさんございましたし、これについては「行政で取り締まれ!」という声も随分ありました。もちろん私どももパトロールは強化しますけれども、しかし一つ一つの地域については、やはりその地域の方々の目・手・足でお守りいただくしかないということで、クリーン仙台推進員の方々にそのご協力をお願いしましたところ、各地で素晴らしい活動を展開していただきました。これは全国に誇るべきモデル事業といっていいのではないかと思います。
なぜこれが素晴らしいか。ごみを不法に捨てる「悪い人」を探す、いわゆる犯人探しをやっているわけではないということです。悪い人捕まえて、「あなた!何でこんな悪いことをやっているんだ!」と責めていったら、逆に地域が疑心暗鬼になって、地域の和は生まれない。そうではなくて、こういうあなたの行為がこんなに私たちを残念がらせていますよ、もうちょっとあなたも私たちと同じように、この地域を愛する気持ちに立ってくださいねという想いで、不法投棄されているごみの写真をデジカメで撮って、汚れている様子を回覧板に載せて皆さんの家に1軒1軒お回ししたり、あるいは影ながら集積所をきれいにして、きれいになった後ときれいになる前の様子を掲示板に貼ったりする。つまり、よりよい方向に向かってみんなで努力していこう、そしてそれがうまくいって成功したら、それを事例として共有して全市に広めようという取り組みなのです。
先ほども内閣府から、これから元気なシニアの事例を集めて、その共有化の作業に入るというお話がございました。やはりこれからは、誰が悪い、これが悪いということを言うのではなく、まずできることをやってみよう、やって良かったらみんなで誉め合って、喜び合って、それをもっともっと広げよう、そういう取り組みが大切であり、必要だと思います。クリーン仙台推進員の皆さんは、ごみの活動を通してそれを実践してくださっているということで、私は全国どこに行っても、この活動は仙台市が誇る活動ですとお話をさせていただいております。
また「杜の都仙台」ですので、緑が本当に自慢です。「市長さん、仙台はきれいなまちですね」「東京から来ましたが、本当にこういうところに転勤できて嬉しいです」などと何人もの方から言っていただきます。その背景には先ほどのごみをきれいにするという取り組みのほか、きれいな緑をきちんと手入れをして、地域の方々に公園を楽しんでいただいたり、また仙台にはたくさんまだ雑木林のようなものも残っておりますので、そこの下草刈りをして、皆さんがその雑木林の中で、秋には散策するとか、雑木林の中でのアートフェスティバルというようなのも行われたりしておりまして、いかにも杜の都らしい活動だなあという、こんなこともしていただいております。
そしてまたこれもどこの地域にもあるかもしれませんが、「せんだい豊齢学園」といいまして、多くの方々が学習をしたり、交流をしたり、そして素晴らしいのはやはり学習した成果を地域でいろいろな形で還元していただいていまして、地域の歴史の掘り起こしをしたり、また地域のイベントにお出ましをいただいたり、いろんなことをしていただいているということがございます。またこちらの写真のほうは「シニアいきいきまつり」ということで、スポーツを通した介護予防、元気な方の健康保持・増進の活動の様子です。
先ほどの内閣府のお話にもございましたとおり、人と人とが支え合うことが大事であるということについては、皆さん何もご異論はないわけですが、急に、「さあ、これからは支え合いの時代です、支え合ってください」と言われても、すぐにはできないわけです。普段からあいさつをする、あいさつをしていたのが立ち話をする、それが何かの会合で一緒になるというように、やはり人間の関係の深まりには自ずとステップがあるわけです。私も昔、男女共同参画などの仕事をしておりますと、「女の人っていうのは本当に茶飲み話が好きで、お茶ばっかり飲んでいるんだおんねえ」って時々言われました。
今、私は自信を持って申し上げるんですが、茶飲みこそが支え合いの第一歩でして、お茶を飲まずに支え合うということはなかなか難しい。お酒を飲むノミュニケーションも大事だと思いますけれども、茶飲みということを軽んじては、高齢化社会はやっていけないのではないかと思っておりまして、私は今まず茶飲みから始めるということを、もっと自信をもってやっていいのでないかとお話をさせていただいております。
こうした元気なお年寄りのたくさんいる仙台でございますけれども、ご承知のとおり、再来年2012年には、ねんりんピック宮城仙台大会がいよいよやってまいります。これは高齢者の方の国体と言われるものでございまして、今年は石川県、去年は北海道でございました。2年後はここ仙台・宮城でございますので、皆様方にはいろいろな形でお世話になると思います。全国の皆さんの元気なご様子を拝見して、我々もさらに元気をいただこうという大会でございますので、私としてもおおいに期待をしているところでございます。
また老人福祉センターというのがございますけれども、そこではこうした演芸の発表でありますとか、いろいろな形で、ボランティア活動としてやっていただいたりというようなこともございます。
そして先ほどは「杜の都のオトク体操」という、元気を維持して、介護のお世話にならないための体操を皆さんにやっていただきましたけれども、今、仙台では介護予防の「SKY大作戦」という作戦を展開しているところでございます。仙台(SENDAI)の「S」、介護(KAIGO)の「K」、予防(YOBOU)の「Y」、というこの頭文字を3つ取って、「SKY大作戦」と言わせていただいております。いろいろな場面で健康に気をつけ、そしてまた専門の方のアドバイスを受けながら、皆さんで楽しく体を動かしたり、そして何よりもお話をし合ったり、頭も動かして、そして元気になろうという取り組みでございます。
また今年はシニアの劇団ということで、ここに「まんざら(満座楽)」と劇団名が書いてございますけれども、このシニア劇団が立ち上がり、皆さんが今練習をなさっているところです。来年の1月には公演が行なわれるということでございますので、どんな筋書きになりますものか、私も楽しみにして、拝見をさせていただきたいなと思っているところでございます。
スポーツ、それから音楽、こういった文化活動、様々な面で元気な方が輪をつくる、そしてその輪のどこかに新しい人が入って来ます。私はぜひ皆さんには“とりもち”になっていただきたいと思うんです。ご存じかと思いますけど、“とりもち”というのは巨大な接着剤のようなものでございまして、ピタッと誰かにくっついたり、服にくっついたりするとなかなか取れない。人間には"とりもち力"の強い人と、弱い人がいるわけで、例えば樋口さんなんかはもう非常にとりもち力の強い方で、樋口さんに一言ピタッと目を見られて、「あなた、よろしくお願いしますね」って言われれば、「わかりました」って頷いてしまうという、本当に人間とりもち力の達人のような樋口先生でいらっしゃいます。例えば目で見ただけというのは難しくても、ぽんぽんと肩を叩いて、「じゃちょっと今度ご一緒にあの会合行ってみません?」っていうと、それまで家に引きこもっていた方も、「何かあの人に言われたら、普段もお世話になっているから、ちょっと行ってみなきゃならないかなあ」と行ってみる。そうするとそこから何かが開けてきます。
やはり、最初の一歩というものを引っ張り出す、押し上げる、そうしたことが、地域の中で、それと知られずに行われているということが、とても強い力なのだろうなあと思っております。私はぜひ仙台でも、また日本全国でも、この「人とくっつく」力、砂のようにさらさらっと分かれていく関係ではなくて、1回ギュッと握ったらご飯粒のようにぎっちり固まりつく、そういう力をまちとして持つ、そんなまちに仙台をしていきたいなと思っているわけでございます。
次に、シニア活動支援センターについて紹介をさせていただきます。これからのセカンドライフをどういうふうにお過ごしになりたいですかというようなことも含めて、シニア世代の方々により活動的に過ごしていくために、平成19年7月に、シニア活動支援センターが、市民活動サポートセンターの中にオープンしました。今日のパネルディスカッションの中でものちほど、このシニア活動支援センターを利用されたご体験を持つ方もおいでになられると思います。こういったシニア世代を対象にコンサルティングして、何かと何かをくっつける、そうしたシニア世代の仲人さん役みたいなことも、センターではいろいろやっています。
このように仙台では元気なシニア世代の方に活躍いただいて、まちもその元気に支えられています。こうした中、今仙台では新しい総合計画の策定を進めてございます。「ひとが輝く杜の都」というのがその大きなメインテーマでございまして、「学びの都」、支え合う「健やかな共生の都」、自然と緑が美しい「潤いの都」、そして経済の元気な「活力の都」という4つの都市像を掲げてプランづくりをしているところでございます。
お一人おひとりの皆さんがいきいきと暮らしていただき、そしてそのいきいきとした皆さんが集まって豊かな地域、そして元気のある仙台につながっていくというふうに思います。シニアの皆さんは仙台の元気の素、仙台の大切な宝として、ぜひこれからも元気にお過ごしいただければと思います。ご静聴、本当にありがとうございました(拍手)。
樋口: ありがとうございました。奥山市長のご講演のタイトルは「シニアの元気はまちの財産」というお話でございまして、まさにシニアを財産としながら、仙台市政を進めていくというお話でございました。ここから先は政府担当高官と大仙台市長との間で少しやり取りをしていただきたいですけれど、まず小林参事官、今あえていえば仙台市という巨大な好事例のご報告だったと思うんですけれど。国の担当官として、今の仙台市のご報告を聞いてのご感想をお願いいたします。
小林: 感想は一言で言って、やっぱり素晴らしいなと思いまして、私ども最後に申し上げたように、来年度、調査をやっていこうと思っているんですね。ぜひ仙台市さんがやっていらっしゃるような取り組みも上げていただいて、仙台市さんだけで持っていらっしゃるのはもったいない話でございますので、それを地域によってできることとできないことって違うと思うんですけれども。こういうふうな状況にあるような地域であれば、こういうやり方があるよっていうことをぜひ伝えていきたいと思っていますので、本当に大変参考になるようなお話でございました。
あと待機児童がある、要はお子さんがたくさんいらっしゃる場所もあれば、ご高齢の方が増えていて、人口が減っている地域と増えている地域があるっていうふうなお話ございましたけど、日本全体の縮図みたいな話がございますので、またその観点からも何かこういう取り組みをやると、このまだら状況に対応できたっていうふうなことをご示唆いただけるようなのがあれば、国にまたお寄せいただければというふうに考えております。
樋口: ありがとうございました。こういうものをまとめて、国としてやっぱり国全体の鳥瞰図というものをぜひ書いていただきたいと思っておりますけれど、奥山市長さん、どうでしょう。いやあ、仙台市、今伺っていて、本当に地下鉄の駅のあるところには若い人が集まっていて、背中合わせで何だかシャッター通りができていっているって、これ大都市、恐らく東京にも共通する「まだら現象」「骨粗鬆症」下手すると骨折する、何だか高齢女性にとっては聞き捨てならないような、大変な問題でございますけれど、本当に転倒骨折しないように、そうした市政を支えていくというのはとっても大変な、市長さんとしても、舵取りの難しいところだと思いますけれど。
仙台市ほどの大きな政令市になれば、独自の取り組みというか、自己完結にやれることもあるとは思うんですけれど、とは言いながらやっぱり国として、こういうところに着目してほしいとか、こういう政策には力を注いでほしい、あえていえば予算を出してほしいというと、みんないうことなんですけれど、国へのご要望をこの機会でございますから、どうぞご遠慮なくおっしゃっていただきたい。
奥山: はい、ありがとうございます。
一つは、先ほど一人暮らしの高齢者の方が増えているというお話がございましたけれども、「高齢者の方と住まい」という問題ですね。これは難しいなあと思っているところでございます。
自分の家で最期まで過ごしたいということを希望されている方は多いですが、例えば借家の場合、ある程度身体機能が落ちてくると、家主さんから「ちょっと心配だから、子どもさんのところに移れませんか」というお話があったりします。もちろん特別養護老人ホームですとか、グループホームですとか、いろいろな形のいわゆる施設もつくられていますし、仙台も整備しています。しかし、お一人であって、高齢であって、施設で完全なケアを受けるほどにはダメージは強くなくて、若干の地域の支えなどがあれば、生活はできる状況のときに、アパートなり、借家なりといったものの中では、なかなか住まいを見つけにくいという状況が仙台ではあるわけです。
そういう中で、高齢者の方の住宅環境に対して、国として、今までのような「施設か、自宅か」というその中間領域に関する、何かしらの政策的な誘導みたいなものがあれば、多少ハンディがあっても地域で暮らしていけるという方がもっとこれから増えるのかなと、そんなことを思いました。国全体としてはどのようなことをお考えか教えていただければと思います。
樋口: 本当に今、小林参事官のほうから今日ご提供いただいた高齢者白書の中で、人の絆、絆の再構築というようなことが最大のテーマであったように思い、それはまさに何ていうか、予感が的中したというか、先見の明があるというか、これ出してから今年の夏、まさに超高齢者の所在不明問題、地域と家族との絆の希薄化ということが大きな問題となって、これは非常にいいテーマだったと思います。
と同時に今、奥山市長からご指摘のように、実は今、高齢者政策の中で1つ重要な課題が、高齢者の住まい安定法も、新しい高齢者住まい法も改正されましたけれど、今、実は高齢者のついの住み家というと、特養は足らない、有料老人ホーム、それから高専賃、高円賃、高何とか賃、何とかってずっと高齢者の住まいの世界は今やある種、高齢者にとっては目まぐるしくて、戦国時代で、一体どこでついの住み家、安心の住み家が見つけられるのだろうか。
厚労省と国交省とがやっと手を結んでここ数年、新しい住まいへ乗り出してきたことは結構ですけれど、何か高齢者の願いと必ずしもうまくドッキングできていないんじゃないかというような気も、私はいたしております。
もしかしたら高齢者が、1人暮らしの人が望んでいるのは、住まいというより、実は介護というサービスなので、その分が少しずれているんじゃないのかなと思ったりもいたしますけれど、また小林参事官、全部責任持って答えろなんて言っても、これは国交省もからんでまいりますから、お差し支えない範囲で、住まいの問題、今ちょうど奥山市長からもご提言、ご質問がございましたので、触れていただければと思います。
小林: 樋口先生もおっしゃっていたように、厚生労働省と国土交通省のほうで手を結んで、そういう介護的なものも勘案したようなそういう住まい、高齢者向けの住まいというのを広めていこうということで、これはまだちょっと、多分普及といいますか、具体的にどうやるかも含めてまだ検討途上だと思うんですね。これからどんどん広めていこうという話なので、そこは本当にこれからやっていこうという中でございますけれども。
あとは高専賃っていうのもかなり力を入れておるんですけど。これは何かやっぱり問題、なかなか使うほうにとっても、これから伸びていく分野だと思うんですけれども。何か使い勝手が悪そうなところもありますんですかね。
奥山: これからの工夫次第ということでしょうか。
小林: これからの工夫次第かなということで、あとよく聞きますのが、私も不安で調べたんですけれども。やっぱり賃貸物件を借りるときに、保証人がいないと、なかなか保証人が見つからないので借りられないというようなこともございますけれども。これは多分国土交通省さんでやっていらっしゃる施策だと思うんですけど、その保証人がなくても、ご高齢の方も借りやすいような住宅を登録したりしているような制度もありますので、ただ、それが供給量が十分なのかどうかよくわからないんですけれども、そういう住宅ですと、保証人がなくてもいいというような、そういう制度もあります。私自身もネットで探したりしないとわからなかったものですから、まだまだPRが不足しているのかなと思っております。今ある制度をいかに使っていただくかということと、介護というか、福祉を加味したような、少しそういう視点を入れて、高齢者の方向けの住宅を普及していくことと、それから量的なものが不十分なので、それをもう少し増やしていくということ、その辺をセットで考えていかなきゃいけないと今日お話を聞いて思いました。
奥山: ありがとうございます。
樋口: あと5分しかないのですけれど、せっかく内閣府から参事官、そして仙台市長がいらっしゃっていますので、今日ここにお集まりの皆様からお1人ずつ、1人ずつですけど、ぜひこの場でご要望しておきたいことがあるという方がいらっしゃったら、手を挙げてください。
また私ども高連協として申しますと、これは堀田力代表がやっていらっしゃることでございますけれど、保証人とまではいきませんけれど、保証人もやるのかもしれませんが、市民後見人、成年後見人という運動をどんどん進めてまいりまして、高齢者自身がまた高齢者を支えるような専門性を持って活動するというようなことも、私ども高連協でも進めてまいりますので、どうぞ皆様ご一緒にご活用いただきたいと思います。どなたか小林洋子参事官に要望ないし質問したい方、どうぞ手を挙げてください。
渡辺: 本日、表章いただいた笑学校校長渡辺と申します。
小林参事官にお願いいたします。今日はいろんなデータのご説明をいただきましたが、できればデータ説明はほどほどにしていただき、あまり数多くやらないほうがいいと思います。その代わりに高齢者がわかりやすいキーワードで説明してほしいんですよ。例えば樋口さんのように、「第二の義務教育」とか、「人生100年の船に乗ったんですよ。我々が初代ですよ」とか、大変わかりやすいわけですよ。ですから国はあんまり言葉、きれいな言葉並べないで、市民がわかるような、国民がわかるようなキーワードで説明してくれるようにお願いします。
樋口: ありがとうございました。どうぞこれはご要望として持ち帰りいただきたいと思います。では仙台市長に申し述べたいことはありませんか。
安海: せっかくの機会ですので、ぜひ市長さんにお願いしたいことは、私、「男の台所」というのをやっているんですけど、男性の目線でいろんなことを考えているんですね。特に最近、子育て支援というのがやっぱり非常に大事になってきていると思うんですけど。特に男性の一人親ですね。父子家庭の問題っていうのが、ちょっと抜けているような気がするんですね。この辺を1つてこ入れしていただいて、もう一段変わった目線で、子育てに膨らましていただければありがたいなと思います。
樋口: ありがとうございました。シングルマザーのことは、いろいろいわれていますが、シングルファーザーのほうがより深刻な問題も抱えていると思います。私はつくづく思いますが、高齢者の政策とか高齢者の活動というのは、今高齢者に対する福祉や様々なことを要求するだけでなく、それはどんどん要求していいんです。私たち初代ですから。だけど、同時にやっぱり日本は今、人生100年ということはどういうことかというと、0歳代もいれば、10歳代、20、30、40、飛ばして90、今10年ごとの年代差で増加率が一番目覚しいのは90代です。90代、そして100。つまり私たちは世界の中でも、0歳から人生100年まで、非常に多様性の豊かな国にいるということでございます。
0歳代の人と、90歳代の人が同じ空気を呼吸して、一緒に暮らせている社会というのは、世界の中でもまだ珍しい。多様性の時代でありますから、私たちは横の多様性は人間から他の生物まで、そして女と男という違いを含め、国際性へと広がりますし、縦の多様性、この年代別の違いを生かしながら、多様性、違いを生かして力にしていくというところに、一番今近いところにいるのが、我ら日本人でございますから、ぜひ私たち高齢者も次の世代、子育て支援をしていくことをやはり視野に入れながら、高齢者の活動をするべきではあるまいかと。
私は、高連協の代表であると同時に、堀田力代表も私も日本子育て応援団の4人いる団長の1人でございます。あと2人は若い世代で勝間和代さんという人と、安藤哲也さんという人、この4人が子育て応援団にも関わっています。そしてそのことを通してこそ、人生100年、終わりよければすべてよしといわれる高齢者の幸せを展開できるんじゃないかと思っております。私がしゃべらないと言って結構しゃべっちゃいましたが。
このようなことも含めまして、最後のご質問も含めて、これからの地域社会をどのように建設していくか。特に子育て、小林参事官は子育てのことも担当の中に入っていらっしゃると思いますので、日本のこの多様な世代、高齢者と子育てということも入れながら、一言ずつご感想と豊富をいただいて、今日は終わりたいと思います。それではまず仙台市長からお願いいたします。
奥山: はい、ありがとうございます。シングルファーザーについてですが、この活動も仙台にいらっしゃる方が全国に対してする働きかけのきっかけになられた活動でございますよね。シングルファーザーの皆さんの大変なお力で、児童手当については、シングルファーザーもシングルマザーと同じようにもらえるというように制度が変わりました。ただし、仕事を持つときの訓練をシングルマザーは受けられるけれども、シングルファーザーは受けられないとか、若干まだアンバランスなところが残っていますし、それらについては私ども自治体が国とも連携しながら、頑張っていければと思います。
また、お話をいただきましたように、国の法律では65歳以上を高齢者といって、高齢化率も例えば仙台であれば、18.7%と出てくるわけなんですけど、実体として私が感じている高齢化率というものは、全然違った数字でございます。私の頭の中では独断で、「75歳以上でなければ仙台市では高齢者とはいわないのではないか」と思っておりまして、「仙台の高齢化率はまだ15%以下であるから、若いまちとして頑張りましょう」ということを普段申し上げているところでございます。統計にとらわれることなく、意欲があって、元気であれば、今が青春という時代です。ご一緒にまちづくりに取り組んでいければと思っております。よろしくお願いいたします(拍手)。
樋口: では小林参事官、お願いします。
小林: 少子化の問題と高齢化の問題というのはセットの話だとは思うんです。今、仙台市長からもお話があったように、年齢は関係なく、また世代間で対立することはなく、元気で能力のある方はご活躍いただいて、しかし困ったときはちゃんと助けられるような、国や地方自治体の制度、それから社会全体で支える仕組みをつくっていけるように頑張っていきたいと思います。
樋口:
国の政策も仙台市の政策も、そして皆様方がその主役としてますます進むことを期待いたしまして、シンポジウム第1部を終わりたいと思います。皆様、ご協力ありがとうございました(拍手)。
小林参事官、仙台市長、本当にどうもありがとうございました。