高齢社会対策説明「高齢社会フォーラム・イン東京」

原口 剛
内閣府高齢社会対策担当参事官

原口 剛 内閣府高齢社会対策担当参事官の写真

-はじめに

 いまご紹介がありました、内閣府の高齢社会対策担当参事官をしております原口と申します。よろしくお願いいたします。

 お手元にお配りいたしました、先ほど来ご紹介があった「高齢社会白書」の概要を基本として、現在行っている施策等も含めながらご紹介を申し上げたいと思います。

<高齢社会白書 全体構成>

 まずは「高齢社会白書」ですが、今年は6月15日に閣議決定しました。

第1章、第2章という2章立てになっています。第1章が、高齢化の状況についての分析等を掲載しています。第2章が、高齢社会対策の実施の状況です。いろいろな施策を講じていますが、その施策について23年度に講じたもの、24年度に講じるものという形で整理して掲載しています。

 第1章第1節では、23.3%と高齢化率が世界最高になってきていること、第2節では、経済状況や、先ほど樋口先生からご紹介がありましたが、就業、社会参加、健康・福祉、生活環境・住環境がどのようになっているかを取りあげています。第3節では、先ほど来、堀田先生からもご紹介がありましたが、政府として「高齢社会対策大綱」のとりまとめの作業に入っているところで、その報告書について記載しています。第4節では、高齢者が活躍できる環境づくりを紹介しております。高齢者パワーが非常に重要だということもあるので、今年の白書では「高齢者が活躍できる環境づくり」という形で、一つ目が就労、二つ目つがボランティア活動等の社会的な活動、三つ目が昨年3月11日に東日本大震災がありましたが、震災関連では被災地支援として高齢者がどのような活動をしているのかを分析しています。四つ目は、先進的な事例等について取組を全国の皆様にご紹介するという形で掲載しています。

表:高齢社会白書全体構成

第1章 高齢化の状況

第1節 高齢化の状況

<高齢化の現状>

表1-1-1 高齢化の現状

我が国の人口は、昨年2011年10月1日現在で1億2,780万人となっています。65歳以上の高齢者人口は過去最高の2,975万人。前年が2,925万人なので、約50万人増加となりました。総人口に占める高齢化率は、前年の23.0%から0.3ポイント上昇して23.3%となっています。65歳以上の高齢者人口を男女別でみると、男性が1,268万人、女性が1,707万人で、女性100人に対する男性比率は74.3%という状況になっています。

 また、高齢者人口のうち、65~74歳人口は1,504万人で、男性が709万人、女性が795万人。総人口に占める割合は11.8%。75歳以上人口は1,471万人で、男性が559万人、女性が912万人。総人口に占める割合は11.5%です。

<高齢化の推移と将来設計>

図1-1-2(1)高齢化の推移と将来推計

高齢者人口は、いわゆる団塊の世代(1947~1949年に生まれた人)が65歳以上となる2015年には3,395万人となり、団塊の世代が75歳以上となる2025年には3,657万人に達すると見込まれています。その後も高齢者人口は増加を続けて2042年には3,878万人でピークを迎え、その後、減少に転じると推計されています。

 総人口が減少する中で高齢者が増加することにより高齢化率は当然のごとく上昇するわけですが、2013年には高齢化率が25.1%で4人に1人となり、2035年に33.4%で3人に1人となります。2042年以降は高齢者人口が減少に転じても高齢化率は上昇を続け、2060年には39.9%に達して、国民の2.5人に1人が65歳以上の高齢者となる社会が到来すると推計されています。

 総人口に占める75歳以上人口の割合も上昇を続け、いわゆる団塊ジュニア(1971~1974年に生まれた人)が75歳以上となったあと、2060年には26.9%となり、4人に1人が75歳以上の高齢者になると推計されています。

<平均寿命の推移>

図1-1-4 平均寿命の推移と将来推計

続いて、平均寿命の推移です。平均寿命は2010年現在で男性が79.64年、女性が86.39年となっていますが、今後も平均寿命は延伸すると見込まれています。2060年には男性が84.19年、女性が90.93年となり、女性の平均寿命が90年を超えることが見込まれています。

 また、65歳時の平均余命ですが、1955年には男性が11.82年、女性が14.13年でした。2010年には男性が18.86年、女性が23.89年となっており、男性、女性とも高齢期が長くなっている状況にあります。

<高齢化率の国際比較>

図1-1-7 世界の高齢化率の推移

続いて、先進国の高齢化率を比較してみると、我が国は1980年代までは下位、90年代にはほぼ中位でしたが、2005年には最も高い水準となり、世界のどの国もこれまで経験したことのない高齢社会を迎えています。

 また、高齢化の速度ですが、7%を超えてからその倍の14%に達するまでの所要年数は、フランスが115年、スウェーデンが85年、比較的短いドイツが40年、イギリスが47年であるのに対して、我が国は1970年に7%を超え、その24年後の1994年に14%に達しています。世界に例をみないスピードで高齢化が進んでいます。

 アジア諸国でみると、今後、急速に高齢化が進み、特に韓国においては我が国を上回るスピードで高齢化が進行し、2005年に9.3%であったものが2060年には33.6%に達すると見込まれています。地域別に高齢化率の今後の推移をみると、これまで高齢化が進行してきた先進地域はもとより、発展途上国地域においても高齢化が急速に進展すると見込まれています。

第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向

<高齢者の世帯構造>

図1-2-1-1 65歳以上の者のいる世帯数及び構成割合(世帯構造別)と全世帯に占める65歳以上の者がいる世帯の割合

65歳以上の高齢者のいる世帯についてみると、2010年現在、世帯数は2,071万世帯と前年に引き続き2,000万世帯を超えています。全世帯の42.6%を占め、高齢者のいる世帯は増え続けている状況にあります。

<高齢者の暮らし向き>

図1-2-2-1 高齢者の暮らし向き

続いて、高齢者の経済状況です。60歳以上の高齢者の暮らし向きについて調査したところ、「心配ない」「まったく心配ない」「それほど心配ない」の合計数)と感じている人は全体の71.5%であり、年齢階級別にみると80歳以上は約8割と高い水準になっています。

<高齢者の消費>

図1-2-8 優先的にお金を使いたいと考えているもの(3つまでの複数回答)

続いて、高齢者の消費について、どのようなものに優先的に使いたいかという問いです。60歳以上の高齢者の支出に関する意識については、まず1番が42.8%を占めている「健康維持や医療介護のための支出」、2番目が「旅行」で38.2%、3番目が33.4%で「子どもや孫のための支出」となっています。

<高齢者の貯蓄>

図1-2-10 貯蓄現在高階級別世帯分布

高齢者の貯蓄がどのようになっているかという現在の貯蓄高については、世帯主の年齢が65歳以上の世帯と全世帯の平均を比較すると、65歳以上の世帯が2,257万円、全世帯平均が1,664万円で、高齢者が約1.4倍の貯蓄をしている状況にあります。また、貯蓄の現在高階級別の世帯分布をみると、世帯主の年齢が65歳以上の世帯では4,000万円以上の貯蓄を有する世帯が16.1%あり、全世帯の10.2%と比べて高い水準となっています。

 貯蓄の理由は「病気・介護の備え」が62.3%で最も高く、次いで「生活維持」となっています。

<高齢者の健康>

図1-2-17 健康寿命と平均寿命の推移

高齢者の健康の状況についてです。健康寿命と平均寿命の推移ですが、日常生活に制限のない健康寿命は、2010年時点で男性が70.42年、女性が73.62年となっており、2001年と比べて延びています。

 しかし、2001年から2010年までの健康寿命の延びは同期間における平均寿命の延びと比べて小さくなっており、2010年における平均寿命と健康寿命の差は男女とも2001年と比べて広がっていることがわかります。

<健康に関する意識>

図1-2-18 60歳以上の高齢者の健康についての意識(国際比較)

続いて、健康に関する国際比較です。健康についての高齢者の意識を韓国、アメリカ、ドイツ、スウェーデンの4カ国と比較してみると、60歳以上で「健康である」と考えている人の割合は、スウェーデンの68.5%に次いで日本が65.4%と高い結果になっています。以下、アメリカが61.2%、韓国が43.2%、ドイツが33.5%という順番になっています。

<要介護者の推移>

図1-2-20 第1号被保険者(65歳以上)の要介護度別認定者数の推移

介護保険制度における要介護者または要支援者として認定された人は2009年度末で484.6万人となっており、2001年度末から196.9万人増加している状況にあります。そのうち65歳以上の人の数についてみると、2009年度末で469.6万人となっており、2001年度末から181.9万人増加し、第1号被保険者の16.2%を占めている状況にあります。

<学習活動>

図1-2-34 行ってみたい生涯学習の内容(複数回答)

続いて、高齢者の社会参画の中で学習活動の状況です。行ってみたい生涯学習の内容ですが、60~69歳は「健康・スポーツ」、具体的には、健康法、医学、栄養、ジョギング、水泳などで60.9%と最も多くなっています。70歳以上では、音楽、美術、華道、舞踊、書道などの「趣味」が57.2%で最も高くなっている状況です。

<世代間交流>

図1-2-5-6 若い世代との交流の機会の参加意向

次の資料はお手元の資料にありませんが、ご参考までにお知らせします。高齢者の社会参画で、世代間交流に「参加したい」人は6割を占めています。「積極的に参加したい」「できるかぎり参加したい」と回答した高齢者が62.4%です。これは5年に一度、同じ統計を取っているのですが、1993年の調査以来、はじめて6割を超えている状況です。

<生活の力点>

図1-2-6-13 生活を充実させて楽しむことを重視する人の割合

次もお手元の資料にありませんが、高齢者の生活環境です。内閣府の「国民生活に関する世論調査」(2011年)のデータによると、今後の生活で「貯蓄や投資など将来に備えること」よりも「毎日の生活を充実させて楽しむこと」に力を入れたい人の割合が、60~69歳は78.1%、70歳以上は84.8%となっており、59歳以下の層で2002年以降、概ね横ばいまたは減少傾向であるのに対して、60歳以上の各層は増加傾向にあります。豊かな高齢者生活を送ろうとしていることがうかがい知れます。

<近所づきあいの程度>

図1-2-39 近所づきあいの程度

続いて、高齢者の生活環境で近所づきあいの程度です。全体では「親しくつきあっている」が51.0%で最も多く、「あいさつをする程度」は43.9%、「つきあいがほとんどない」は残念なことに5.1%となっている状況にあります。

 性・世帯構成別にみると、一人暮らしの男性は「つきあいがほとんどない」が17.4%と高く、逆に一人暮らしの女性は「親しくつきあっている」が60.9%と高い状況にあります。

<頼れる人がいない人の割合>

図1-2-40 困った時に頼れる人がいない人の割合

次が、頼れる人がいるかどうかということです。病気のときや一人ではできない日常生活に必要な作業(電球の交換や庭の手入れなど)の手伝いについて、「頼れる人がいない」者の割合は全体で2.4%。一人暮らしの男性では20.0%にのぼる状況にあります。

第3節 「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会報告書 ~尊厳ある自立と支え合いを目指して~」について

<高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会報告書>

表:高齢化社会対策の基本的在り方等に関する検討会報告書

「高齢社会対策大綱」を見直すにあたって、その基本的な方向性について有識者の方々にご参集いただいて「報告書」をとりまとめました。

 まず目次です。基本的には、世界に前例のないスピードで高齢化が進み世界最高水準の高齢化率となり、どの国もこれまで経験したことのない超高齢社会を迎えた我が国においては、これまでの「人生65年時代」を前提とした高齢者の捉え方についての意識改革をはじめ、働き方や社会参加、地域におけるコミュニティや生活環境のあり方、高齢期に向けた備え等を、先ほど樋口先生は「人生100年」とおっしゃっていましたが、当方では「人生90年時代」を前提としたものへと転換させ、全世代が参画した豊かな人生を享受できる超高齢社会の実現を目指す必要があるとの認識でとりまとめられたものです。

 この報告書の中身については、時間の制約等もあるので、お読みいただければと思います。中身もしっかり書いたつもりですが、委員の方々からは、なかなか時間のない方もいらっしゃるので「はじめに」「おわりに」を読めば中身がわかるように、との指示があった報告書です。まず「はじめに」を読んでいただいて、お時間が許すかぎり中身のほうをお読みいただければと思っています。

<高齢社会の現状>

表:高齢化社会の現状

<超高齢社会における課題>

表:超高齢化社会における課題

中身ですが、高齢化の現状はいま申し上げたものなので割愛します。

<今後の超高齢社会に向けた基本的な考え方>

表:今後の超高齢化社会に向けた基本的な考え方

先ほど樋口先生、堀田先生からもおっしゃっていただいていますが、基本的な考え方は、健康で活動できる間は自己責任に基づき、身の回りのことは自分で行うという「自己力」を高め、長い人生を活き活きと自立し、誇りを持って社会の支え手や担い手として活躍でき、支えが必要となったときでも尊厳のある生き方ができる社会の実現が重要という形で整理しています。

 すべての高齢者が尊厳のある生き方ができるよう、これまでの「人生65年」を前提とした社会から脱却し、「人生90年時代」に対応した超高齢社会における基本的な考え方を整理するという形で、6項目、整理しています。

 1点目は、「高齢者」の捉え方です。社会保障はいろいろ制度がありますが、65歳以上の者が年齢によって一律に支えられるという形ではなく、捉え方についての国民意識の改革と、それに向けた啓発が必要です。

 2点目は、持続可能な社会保障制度を構築することは重要ですが、それも全世代対応型という形の社会保障の構築が必要です。

 3点目は、本日の課題でもありますが、高齢者パワーとして、社会を支える頼もしい現役シニアという副題をつけています。就業、ボランティアなど社会参加の機会を確保すると同時に、高齢者のニーズを踏まえたサービスや商品開発を促進することによって豊かな生活が送れるように、高齢者消費の活性化や雇用の拡大が必要です。

 4点目は、これまで自助・共助・公助という整理がありますが、震災以降、地域における「互助」が重要視されてきているのではないかということで、地域力の強化と安定的な地域社会の実現という形で「互助」が活きるコミュニティの必要性を説いています。

 顔の見える助け合いによる「互助」の再構築。自助や互助が行われやすくするような、地縁を中心とした「地域力」や今後の超高齢社会において高齢者の活気のある新しいライフスタイルを創造するための地縁や血縁にとらわれない「仲間力」を高めるための環境づくり。社会的に支援を必要とする人々に対してアウトリーチ型の支援による孤立化防止を図るコミュニティ。医療、介護、予防、住まい、生活支援が切れ目なく、有機的かつ一体的に提供される地域包括ケアシステムの確立が大切だということを謳っています。

 5点目は、安心・安全な生活環境の実現という形で、高齢者に優しい社会はみんなに優しいとサブタイトルをつけています。全世代型で多様な人々が安心して暮らせるまちづくり、自立した生活ができる環境づくり。心身の機能が低下した高齢者であっても、安心・安全かつ快適に住み続けられるための日常生活圏域の生活環境の保障。また、最近、問題になっている振り込め詐欺などがありますが、犯罪・消費者トラブルからの保護および成年後見等の充実の必要性です。

 6点目は、人生65年時代から90年時代に延びる中で、若い時期からの備えと世代の循環という形で、ワークライフバランスと次世代へ承継する資産として、一つは、若年期からのワークライフバランスの実践、生涯学習の機会の充実、健康管理等の啓発。もう一つは、高齢者が築いた資産を次世代が適切に承継し、世代を通じて資産価値が循環する、人生90年時代にあった仕組みという形で整理したものです。

 現在、政府としては内閣府を中心として、「高齢社会対策大綱」という形でこの基本的考え方に沿った対策が講じられるよう、各省に施策のとりまとめをやっているところです。

第4節 特集「高齢者が活躍できる環境づくり」

<高齢者の就業率と就労意識>

図1-4-1 年齢階層別就業率

高齢者パワーが大切だということで、今年の「白書」の特集の中でも「高齢者の就労」という形で取り上げました。

 総務省の「労働力調査」(平成23年)によると、55~59歳の就業率は75.2%となっています。60~64歳で57.3%、65~69歳で36.3%と低下しています。一方で、内閣府の「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成20年)で高齢者の退職希望年齢をみると、65歳までに退職したい人は3割に満たず、残りの7割の人は「70歳以降まで」または「働けるうちはいつまでも」と回答しています。就業意欲と実際の雇用の状況が結びついていない現状です。

<仕事を選ぶ際に最も重視すること>

図1-4-4 仕事を選ぶ際に最も重視すること

次に、仕事を選ぶ際にどのようなことを重視するかということです。60歳以上の人が仕事を選ぶ際に最も重視することをみると、男性は「経験が生かせること」が28.3%、女性は「体力的に軽い仕事であること」が23.2%で最も多くなっています。特徴的なのは、5年前の調査と比較すると男女とも収入を重視する人が増加していることで、特に男性は9.9%から20.7%へ増加していることが読み取れる状況にあります。

<地域活動やボランティア活動の参加状況>

表:図1-4-5 過去1年間における地域活動・ボランティア活動の参加状況

次が、就労と並んで高齢者の活躍が期待される地域活動やボランティア活動です。参加状況をみると、60歳以上の高齢者のうち、過去1年間に何らかの活動に参加した人の割合は47.0%で、男性が51.5%、女性が43.0%となっています。

<地域活動やボランティア活動に対する意識と実態>

図1-4-7 地域活動・ボランティア活動の参加状況と参加希望

年齢階層別にどのようになっているかという状況です。「参加したい活動がある」という意欲は若いほど高く、55~59歳、60~64歳では男女とも6割を超えています。これに対して55~59歳、60~64歳で「過去1年間に参加した」割合は、同年代の「参加したい活動がある人」と比べて14~24%低くなっています。特に高齢期に入る前の世代で、地域活動やボランティア活動への参加意欲が必ずしも実際の活動と結びついていない状況にあることが読み取れます。

<地域活動やボランティア活動に参加する条件>

図1-4-8 地域活動、ボランティア活動に参加する条件(複数回答)

次に、高齢者が地域活動やボランティア活動に参加する条件としてどのようなものがあるかという質問です。「時間や期間にあまりしばられないこと」「身近なところで活動できること」をあげる人が多くなっています。

<被災地支援の取組状況>

図1-4-11 東日本大震災被災地支援の取組状況(複数回答)

続いて、東日本大震災の被災地を支援する取組を行った人は、「募金・寄付」「被災地の生産品の積極的購入」「募金集めのための活動」などの選択肢の中で、60歳以上の84.6%にのぼる人が何らかの活動をしています。被災地の3県(岩手県・宮城県・福島県)は除きましたが、各ブロックで8割を超えていて、全国的に支援の輪が広がっています。

 活動の中身としては「募金・寄付」が81.9%と多く、その他、「被災地の生産品の積極的購入」が10.3%、「募金集めのための活動」が6.3%と続いています。

<被災地支援の取組状況>

表1-4-12 東日本大震災被災地支援の年齢階級別取組状況(複数回答)

そのデータを詳細にみたグラフです。「募金・寄付」という行為ではなく、実際に「募金集めのための活動」「被災地支援ボランティア活動」を行った人だけを取り出してみると、60歳以上の人は100人につき8.4人です。約10人に1人が積極的に被災地に関するボランティア活動を行ったということです。

<高齢者の就労を支援している事例>

表:高齢者の就労を促進している事例

まずエイジレスな社会になることがいちばん望ましいのですが、高齢・障害・求職者雇用支援機構という独立行政法人が毎年発行している冊子の中からの事例紹介で、2社、掲げています。

 事例<1>は、70歳まで働ける企業という形で70歳定年制度導入した朝日車輌株式会社と、本人が希望するかぎり働き続けるエイジフリー制度を導入し、自由出勤制度などを定めた株式会社エス・アイ。事例<2>は、東京都のしごとセンターです。

<高齢者の地域活動、ボランティア活動を促進している事例>

表:高齢者の地域活動、ボランティア活動を促進している事例

事例<1>は、厚生労働省が子育て支援の一環として「ファミリー・サポート・センター」を全国の669市町村に設置していますが、その中で有償ボランティアを行う会員が10万人を超え、3人に1人が60歳以上という状況にあります。また、高齢の男性も増えています。2010年6月末時点で、60歳以上の男性が2,200人以上が会員となって子育てに関与している状況にあります。

 事例<2>が、品川区の市民後見人の会の事例です。2006年から成年後見活動の普及および市民後見人の育成を目的とした養成講座を始めて、2008年から共催事業として実施しています。この講座を受講した定年退職者を中心とした100名余りの会員が、被後見人に対して正副2人の担当者がつく形で成年後見活動を行っています。

<高齢者による被災地支援の事例>

高齢者による被災地支援の事例

事例<1>は、兵庫県の赤穂老人クラブ連合会で作成した「元気袋」を宮城県石巻市の避難所などに配った事例です。

 事例<2>は、被災地における東松山市の取組です。パラソル喫茶という形で、市民団体と協同してパラソルのもとでお茶やコーヒーをふるまう取組で、避難住民の方々も参加しやすい取組を行っています。

<コラム>

表:コラム-1

1番目の活動事例は、被災地の連携という形です。東日本大震災の前にも震災がたくさんありますが、1995年の阪神・淡路大震災がありました。その中で仮設住宅等において高齢者の孤立問題が発生しているわけですが、神戸市では高齢者の安否確認と高齢者の見守り活動を進めてきました。安否確認だけではなくて、緊急事態に至る前の「地域から孤立した状況」を回避するためのコミュニティづくりも重視していました。東日本大震災で宮城県はこれらを参考にして、仮設住宅を訪問する支援員等への研修を実施しています。そのような形で、過去に起きた事案に対するノウハウ等がうまく連携して使われています。

 また、1995年はボランティア元年と呼ばれました。神戸市の社会福祉協議会はその際のボランティアの受け入れや避難所での活動経験を生かし、東日本大震災翌日には先遣職員を派遣し、仙台市で避難所の運営支援や災害ボランティアセンターの立ち上げ等を実施しました。

 2番目の活動事例は、シニアのICT(情報通信技術)利用促進の取組です。佐賀県が地域活性化協働プログラムの中で、高齢者のパソコン教室等の講師を養成するセミナー等を実施しています。有効な情報発信手段を持たない自治会や市民団体等の活動を、ICT活用により活性化させるための講座等も開催しています。この講座が交流の場合となって、新しい人々のつながりが発生しているということです。また、被災地に対しても学生や社会人の「復興支援ITボランティア」を派遣して、被災地の情報発信や情報収集を支援しています。ICTは仮設住宅に住む高齢者の孤立化防止や生きがいづくりにも役立っています。

表:コラム-2

3番目が、地域における雪害対策という形です。山形県山形市、尾花沢市において高齢者の自宅の雪かきをするボランティアを中高生がやっていて、そこで世代間の交流が生まれている事例です。

 4番目が、高年齢者と若年者の雇用についてです。生産年齢人口が減少してきている中で、就労を中心に高齢者に積極的な社会参加を進めていきますが、若年者の雇用もやはり重要です。年齢に関わりなく、意欲と能力に基づいて全員で社会を支えることの重要性について書いてあります。

 5番目は、地域包括ケアシステムの推進です。有名なところですが、新潟県長岡市のこぶし園、千葉県柏市の豊四季台団地についての事例を掲げています。

 6番目は、アメリカにおける退職者のコミュニティがどうなっているかということです。アメリカの退職者はゴルフ場に隣接する高齢者住宅に住むのがいちばんの理想のようですが、やはり高齢者同士が集合して生活していると知的な刺激がないということで、アメリカの一部では大学と連携したコミュニティをつくり始めています。そこでこれまで培ってきた能力を高齢者が若い学生たちに提供するという形で、知的刺激を受けながら生活をしていくコミュニティが生じてきているという紹介です。

 7番目は、地域をつなぐ「くるくるバス」という、福島市の無料バスです。地域を無料で移動できるバスの運営を市民団体が行っています。

第2章 高齢社会対策の実施の状況

<平成23年度 高齢社会対策の実施の状況>

表:平成23年度高齢社会対策の実施の状況

最後に、高齢社会対策の実施状況です。

 まず、平成23年度 の実施の状況です。

 1点目は、社会保障改革の推進として、社会保障・税一体改革においては、政府・与党において精力的に議論を進めて2月に「大綱」を閣議決定しましたが、報道等でご承知のとおり、まさに本日から参議院で審議されているところです。そちらについては民主党、自民党、公明党と3党合意等があって若干手直しがありますが、修正の法案を成立させるべく努力しているところです。

 2点目は、希望者全員の65歳までの雇用確保措置です。厚生労働省の労働政策審議会において、雇用と年金が確実に接続できるよう、希望者全員の65歳までの雇用確保措置等について検討が行われて、それができるようにするために「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案」を現通常国会に提出していますが、いまのところまだ審議されていません。ただ、65歳までなるべく雇用・就業できるようにするという、政府の目標として対策を進めているところです。

 3点目は、持続可能で安定的な公的年金制度の確立です。「国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律」が成立し、復興債による収入を活用して基礎年金の2分の1を維持したところです。24年度については、交付国債――は変更になるかもしれませんが――により基礎年金国庫負担の2分の1とするとともに、年金の特例水準を解消することなどを内容としている年金の一部改正法案を提出しているところです。

 4点目は、第177回通常国会において、地域包括ケアシステムの推進という形で「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が成立したところです。

<平成24年度の高齢社会対策>

表:平成24年度の高齢化社会対策

次に、平成24年度の高齢社会対策です。全世代対応型の社会保障制度の構築を目指すとともに、社会保障の安定財源の確保と財政健全化の同時達成への第一歩として、消費税を10%へ段階的に引き上げることなどを内容とする「社会保障・税一体改革大綱」を2月に閣議決定したところです。本通常国会で同大綱に示された工程に従って社会保障改革関連法案や税制改正法案を提出しているところですが、皆様ご承知のとおり、いま難航しているところです。

 同大綱に盛り込まれている高齢者向けの施策として、<1>できるかぎり住み慣れた地域で在宅を基本とした生活の継続を目指す「地域包括ケアシステム」の構築、<2>低年金・無年金問題に対応し、年金制度の最低保証機能の強化を図る観点から行う受給資格期間の短縮や低所得者等への年金額の加算、<3>高齢者雇用対策として、無収入の高齢者世帯が発生しないようにするための継続雇用制度に係る基準に関する法制度の整備を進めていくこととしています。

 簡単ではございますが、説明はこれで終わりにさせていただきたいと思います。

 本日のタイトルにありますが、「高齢者(シニア)の社会参加が世の中を変える」ということで、実際に皆様方のご尽力で一歩は踏み出していると思います。これを機会にこの流れを加速させるべく、皆様方のご活躍とご健康をお祈りいたしまして、最後のご挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。