第2分科会「高齢社会フォーラム・イン東京」

「広域的ボランティア活動の考察と参加」

成年後見・市民後見人、傾聴ボランティア等高齢者支援活動を展開している実践活動者を演者に、普遍的長寿社会で求められているボランタリー活動とその参加について語り合う分科会。

コーディネーター
河合 和
(シニアルネサンス財団事務局長・高連協理事)
■パネリスト
和久井 良一
(さわやか福祉財団理事・品川市民後見人の会代表)
山田 豊吉
(ホールファミリーケア協会事務局長)

河合氏の写真 和久井氏、山田氏の写真

河合:第2分科会ではプログラムにある通り、「広域的ボランティア活動の考察と参加」というテーマについて話し合います。本日御参加いただいたパネラーの両名は、積極的にボランティア活動を実践されています。まさに今回のテーマにふさわしい方たちです。

 和久井さんは、成年後見制度の普及に関わる活動を続けています。ほとんどゼロからの出発といっていい状態から、市民の手で制度を普及させるのだという信念のもと、がんばっていらっしゃいます。80歳を迎えてもまったく衰えることなく活動しています。

 山田さんは団塊の世代で、傾聴ボランティアなどの活動を全国的に展開しています。本日は、こうした実践者の方々のお話をじっくりお聞きして、みなさんの活動の参考にしていただくとともに、長寿社会で求められるボランティア活動のあり方を探っていきたいと考えております。

 まず前半ではお二人の活動の現状を語っていただき、後半は参加者のみなさんと質疑応答を行います。

 それでは最初に、お二人に自己紹介をしていただきます。

パネリスト 和久井良一氏の自己紹介

和久井:和久井です。現役時代は全国的なメーカーの営業責任者をやっておりまして、典型的な会社人間でした。まあ、家庭は大事にしましたけれど……。我々の世代には多いタイプといえます。

 そんな私がなぜボランティアの世界に入ったのか。定年になる前に、たまたま堀田力さんの講演を聞く機会がありました。堀田さんはロッキード検事をやった人でしたが、法務省をやめてボランティアの世界に身を投じていました。

 堀田さんは講演の中で「人間の持っている温かい心で、地域の中でお互いに支え合いましょう」といった話をされました。私は栃木の農家の生まれなのですが、「これは私が育った農村の良さのことを言っているのだ」と思ったのです。講演を聞いた瞬間、子供の頃農村でかわいがられて育ったことが頭に浮かびました。そこでボランティアの世界に飛び込むことにしたのです。私は企業時代にマーケティングや費用対コストといったスキルをもっていました。しかし、ボランティア活動をはじめて心の世界というものを知ることができました。それが私にすごく合っていたように感じています。

 その頃から、社会を変えたい、良くしたいと思うようになりました。そこで「自治体プロジェクト」というものを立ち上げ、高知の橋本知事や三重の北川知事にお会いして様々な提言を行ってきました。

 私の中には高齢者だけではなく、子供や孫の時代のために日本をもう一度よくしておきたいという強い気持ちがあります。先ほど紹介いただいたとおり、80歳になりましたが、活動をしているおかげで、活き活きと過ごすことができています。

河合:ありがとございました。続いて山田さん自己紹介をお願いします。

パネリスト 山田豊吉氏の自己紹介

山田:ホールファミリーケア協会の事務局長をやっている山田です。現在、傾聴ボランティアの普及をめざして、一生懸命全国を駆け回っています。本日は資料を作成してきましたので、それを元に話をすすめます。前半で概要を説明して、その後で具体的な事例について詳しくお話しようと考えています。

 みなさんは傾聴ボランティアという言葉を聞いたことがありますか? 実はこの傾聴ボランティアという言葉を全国的に普及させたのは我々の団体だという自負があります。12年前にこの活動を始めたときには、傾聴ボランティアという言葉はまったく知られていませんでした。昔はよく「なんでお葬式にボランティアが要るのか」と言われたりもしました。慶弔ボランティアと間違われていたのです。最近は私たちの果敢な広報活動のおかげか、全国的に知られるようになり、各地にボランティアのグループが生まれています。

 それでは資料の概要を説明します。

<1>傾聴ボランティアとは何か? それは傾聴的に話を聴くボランティアのことです。では傾聴的とはどういうことか? そのことについては後で詳しくお話します。私たちの世界には、話し好きだからということで入ってこられる方もいますが、それだけでは務まりません。

<2>何のためにするのか? これは最終的には自立支援に結びついてくるのですが、そういう難しいことだけではありません。傾聴的に話を聴けば相手に喜んでもらうことができます。その様子を見て私たちも嬉しくなる、双方向の活動です。私には楽しくなければボランティアではないという考えがあります。

<3>傾聴的に聴くとはどういうことか? これは相手の話を否定しないで、ありのままに受け止めて聴くということです。言葉にしてしまえば簡単なことですが、「言うは易く行なうは難し」です。みなさんは家庭の中や仕事の現場で、このことができていると思いますか。恐らくできていないというのが誠実な答えだと思います。できてないから練習が必要なのです。

<4>傾聴的に聴くことはどのようにして身につけるのか? ということですが、私たちは全国で養成講座を開いて傾聴的に聴くための技術を広めています。

<5>傾聴ボランティアの始め方ですが、まずグループを作ってもらい、地域の社会福祉協議会などと連携して活動することをお薦めしています。

<6>傾聴ボランティア活動は誰にでもできるのか? ということですが、誰でも参加可能です。但し、傾聴できるかどうかは別問題です。最初から傾聴的に聴くことのできる人は100人に一人もいらっしゃいません。しかし私たちのトレーニングを受けていただければ、100人のうち95人ぐらいはできるようになります。

 以上が傾聴ボランティアのごくごくさわりです。

河合:ありがとうございました。今、1年にどれぐらい活動されているのですか?

山田:私と理事長の二人で全国を回って、年間470日ほど養成講座や講演を行っています。

河合:次は和久井さんに具体的な活動についてお話いただきます。

パネリスト 和久井良一氏のお話

○高齢者の社会参画が世の中を変える

 和久井:私は成年後見制度を中心に幅広い活動を行っています。本日は資料を基に高齢者ができる社会参画はどのようなものかということをお話しします。

○広域的ボランティア活動

 1999年に高連協が「すべての世代が幸せに暮らせる社会をめざす」という高齢者憲章を発表しました。社会の問題は高齢者だけの問題ではありません。子や孫の世代を含めたすべての世代のために高齢者も働こうではないかということです。高齢者が安心安全な地域社会に暮らすことができれば、若い人たちもより安心して自分たちの活動ができます。高齢者憲章は高齢者だけのものではなく、すべての世代のものなのです。私にも孫がいますが、その子たちが生きる時代のためにも安心できる地域社会を残していきたいと思っています。

 昨年、東日本大震災がありました。このとき災害そのものも大きな脅威でしたが、社会の脆弱性も問題となりました。それは地域の中の支え合いがないということです。私自身は神戸、中越の震災時に現場に入りました。そこで重要だと感じたのは地域の支え合い、顔の見える関係がいかに大事かということです。地震は東日本だけではなく、いつどこにきてもおかしくありません。みなさんのところにもくるかもしれないのです。そのとき、どうやって地域で支え合っていくのか? そうしたつながりを日頃から自分たちの手で作っておいて欲しいのです。国や自治体も口では「つながりを作ろうと」言っていますが、実際の施策にはあまり反映されていません。堤防を作るといった土木工事には予算がつきますが、人のつながりをつくるソフトの部分にはなかなか予算をつけないのです。そこで行政が及ばない部分は、地域にいる自分たちの手でやろう、ということです。地震が来たときに大切なのは最初の2~3日です。日頃から顔の見える関係を築いておけば、「あの人はどうしただろう」ということで、お互い助けにいくことができます。今の日本では顔の見える関係、支え合う関係というものが失われつつあります。そうしたつながりを知っている高齢者が活動することが、地域コミュニティの再生につながるのだと思います。

 まちづくりに関しては、東日本大震災の後に、堀田力さんや樋口恵子さんが提案した「地域包括ケアのまちづくり」というものがあります。これはその概念をイラスト化したものです。

地域包括ケアの町イメージ図

震災後、従前のまま復旧しただけでは、それは真の復興とはいえません。地域の中に介護福祉・医療があるまちをつくりましょうということです。

 図の中心には高齢者住宅があり、その周辺に医療や福祉の施設があり、出前のようにそのサービスを受けられます。

 またNPOが、朝から夜まで開いている居場所を提供します。居場所をつくるということは、地域にとって大変重要です。居場所を作り、そこに世代を超えた人たちが集まれば、自然と顔の見える関係ができます。要するにコミュニティが発生するのです。まちの中にこうしたコミュニティがいくつかできれば、まち全体に自然とつながりが生まれます。もう一つ大事なのが雇用です。介護福祉や子育ては、地域に密着した雇用ですから、地元経済の活性化にもつながります。若い人たちが自分の生まれ育ったまちで仕事がもてるということが大事なのです。

 以上のようなまちづくりで中心となるのは地域の住民です。私たちは黒子としてアイデアを提供し、コミュニティづくりを側面から支援できればと考えています。

○内閣府2012年「高齢社会対策大綱」

 本日午前中の話し合いに「支え合い」というキーワードが多数出てきました。まさに山田さんがされている傾聴ボランティアなどもそのひとつです。

 現在は平均寿命が伸びて人生90年時代になりました。現役として働く期間が約40年として、定年後に約20~25年の時間があることになります。40年企業で生活した人が、あと20年どうやって生きるのか? 麻雀をやって余生を過ごすという時代ではありません。自分たちの満足ばかり求めていてもあまり充実した人生は送れません。傾聴ボランティアなどもそうですが、人と関わりながら活動することが、その人にとっての生きがいになります。私もさまざまな活動をしていますが、お金をもらえる機会というのはあまりありません。しかし、「ありがとう」と言われると、心の中が燃え上がってきて、嬉しいなという気になります。

樋口恵子さんが「居場所と出番」ということを言われます。どこに自分の居場所があるのか、自分の家庭に居場所はあるのか? 自分たちの活動する場所はあるのか? 自分は何ができるのか? 高齢者が地域活動に参加するためには、居場所と出番を認識しておくことが大切なのです。このとき注意しておかなければならないのは、現役時代の地位を鼻にかけないことです。「私はどこどこの部長だから」などと言うと地域から外されてしまいます。現役時代の地位は、全然関係ありません。地域のために団体のために、何ができてどういう役割を果たせるのかということです。

 どうかみなさんもボランティア活動に参加して生きがいを見つけてください。

○市民後見人に挑戦しよう

 最近、私(和久井)が主に取り組んでいるのが成年後見・市民後見人の普及活動です。

 みなさんは成年後見制度をご存じでしょうか。これは「認知症や障害で判断力が不十分になった人が、日常生活の中で契約や福祉サービスの手続きをするときに、本人の意志を尊重し、本人の希望にそって後見人が行います」という制度です。要するに判断力を無くしたり低下した人の意志を後見人がサポートするというもので、一人暮らしの認知症の方などを消費者被害から守ったりもできます。

 法務省はこの成年後見法を作りましたが、普及させるための施策をあまり行ってきませんでした。現在、成年後見制度の対象となりうる認知症や障害者が500万人近くいると言われています。しかし制度の利用者は20万人にすぎません。法務省は後見人に弁護士や司法書士といった専門家を念頭においていましたが、それだけですべての人を後見することはできません。そこででてきたのが、一般市民に後見の担い手になってもらおうという考え方です。

 後見人の役割は、その人の意思に沿って、その人のためにお金を使うことです。弁護士や司法書士は、法律の専門家ですから財産の取扱いや相続などのややこしいトラブルでは強さを発揮しますが、必ずしも身上監護の専門家というわけではありません。その人に寄り添って、その人の支援を行うことができるのは市民後見人なのです。もちろん専門家を否定しているわけではありません。後見するためには、介護士や司法関係者、税理士といったあらゆる人たちの支援が不可欠なのです。成年後見NPOが法人として市民後見人となり、専門家がバックアップするという体制がよいのではないでしょうか。高連協では地域包括支援センターごとに成年後見NPO法人をつくろうと考えています。

私自身は品川でNPO法人を立ち上げ、実際に後見活動を行っています。実際に活動することが大事だと思います。提言と実践を組み合わせることで社会を動かすのです。私たちはNPO法人市民後見活動の実証を積み重ねました。学識経験者による「介護と連動する市民後見研究会」で市民後見人の提言が行われました。厚生労働省は、老人福祉法第32条2項に、自治体は市民後見人の養成・指導・監督をしなければならないと明記されました。私たちの活動が国の制度を動かしました。

○成年後見制度を担うNPO法人市民後見全国サミット

 今年の3月10日にさわやか福祉財団が、市民後見人の全国サミットを開きました。そこで堀田力理事長は「市民後見人がいなければ、認知症の大多数の人間性が守れない」「誰でも市民後見人はやれる、自身の生きがいになる」「市民後見人は100万人必要」ということでした。

 今のところ市民後見人は約千人程度しかいません。まだまだ差はありますが、少しでもこのギャップを埋めていかなければ、多くの人の人間性を守ることができなくなります。成年後見の先進国ドイツでは人口8千万人に対して、制度の利用者が120万人もいます。日本は利用者が20万人ですからドイツに追いつくのは大変ですが、100万人は必要だと思っています。

 私がNPO法人で活動をしている中で一番大事にしているのが信頼です。今の日本においては、NPOだから信用できるというものではありません。現に年寄りの財布を狙うような人たちもいます。そんな中で市民でもできるというのを示すのは大変なことです。とにかく実践することで信用を積み上げていくしかありません。もちろん収益はありませんが、安心安全な社会のためにということでやっています。

○NPO法人市民後見人の会 品川区

 最後に具体的にどのような活動を行っているのかということをお話しします。

 私たちが運営している市民後見人の会は、東京・品川区を中心に活動しているNPO 法人です。基本理念は、地域住民がボランティア精神を発揮して認知症高齢者等、後見を必要とする人の生活支援・身上監護・財産管理などを行い、被後見人の「個人の尊厳」「自己決定」に対する認識を高め、それを支援する「市民後見人」の育成を推進するというものです。この基本理念というのは、毎年のように確認しなおすことが大切です。活動を続ける中で、少しずつずれが出てきます。企業で活躍していた人は、収益をあげる方向に走りがちです。ですから常に理念を確認し、それに沿って活動するようにしています。

 私たちは2008 年1 月に東京都からNPO 法人として認証され、後見人受任を目指して本格的な活動に入りました。品川区社会福祉協議会品川成年後見センターと関係を築くことによって、同年8 月には、女性高齢者を成年被後見人として、市民後見人の会を成年後見人、品川区社会福祉協議会を成年後見監督人とする決定が東京家庭裁判所でなされました。

 現在では法定後見を14件、任意後見を3件手がけています。これは市民後見人を手がけるNPOとしては多い方だと思います。最初の東京家庭裁判所のヒアリングで、なぜ市民がNPOで成年後見を担うのかということを問われたことがあります。そこで私は「すべての人の尊厳ある暮らしを最後まで支えるための共助の活動である。安心安全の地域社会づくりを市民参加で築くために、シニアの市民参加で取組む市民活動である」と答えました。

 私たちは後見活動を行うとき、個人ではなくNPO法人として受託します。そのうえで主・副2名の担当者をつけて後見を行います。これは金銭などのトラブルを回避するためと、なんらかの都合でどちらかが、活動できなくなってもスムーズに後見を続けられるようにするためです。

 私たちの会には、主婦、民生委員、企業・看護師・会計士・行政OBなどが70数名所属していて、それぞれのキャリアを活かして活動しています。もちろん会員だけではなく専門家や品川の社協とも連携をとりながら後見をすすめています。こうした活動を通して得た結論は、「市民後見人でも後見活動ができる」ということです。

河合:ありがとうございました。続いて山田さんにお話いただきます。

パネリスト 山田豊吉氏のお話

○傾聴ボランティアについて

 山田:今、和久井さんの話をお聞きして、安心、支え合いという考え方は、私たちの活動にも通じていると感じました。それでは先ほど概要を説明した傾聴ボランティアについて詳しく解説していきたいと思います。

<1>傾聴ボランティアとは何か

 傾聴ボランティアの基本は、共感的理解で聴く、受容的態度で聴く、傾聴モードで聴くということです。それぞれの用語については、後で詳しく説明しますが、まずはこうしたポイントがあることを頭に入れておいてください。

 日本における傾聴ボランティアは、私たちが広めてきたと自負しておりますが、その理念はアメリカのシニア・ピア・カウンセリングから来ています。アメリカでは40年ほど前から行われていて、カウンセリングの基礎技術を学んだ方々が全米各地で活躍されています。スキルをもったシニアが、心に問題を抱えた人のお話を聴くというボランティア活動をしているのです。

 この活動から私たちが取り入れたのは、「高齢者が高齢者に関わって助けていこう」という理念です。高齢者は単にケアされるだけの存在ではなく、能動的に活動するものでもあるということです。

 アメリカの場合、その名称が示す通りカウンセリングルームで行われるカウンセリングです。しかし日本ではまだカウンセリングという言葉は敷居が高いようで、高齢者施設などでカウンセリングですというと、「うちは結構です」と断られることがあります。

 ですからカウンセリングということではなく、日本的な社会運動のひとつとして、お話を聴いて欲しいと思っている人、お話をする機会が少ない人たちに、広く関わっていこうと考えました。それが傾聴ボランティアというスタイルです。

 傾聴は自分の考えを押しつけず、相手の存在を認めることから始まります。ただ耳を相手に向けて突き出すだけでは傾聴になりません。みなさんは「なんだこの野郎、なんだこいつ」と相手を下に見ているときに、相手の話をありのまま受け止めることができますか?難しいですよね。傾聴というのは、相手のことを一人の人間として認め、人間同士の関わりを持つことです。もちろん傾聴にはいくつかのスキルがあります。しかし、そういった技術的なことを身につける前に、相手を認めるという姿勢を持つことが大事なのです。

 傾聴ボランティア活動にはいくつかのメリットがあります。一生懸命お話を聴かせていただくと、多くの場合、話を聴いてもらった側は「ありがとう」などと言って喜んでくださいます。私たちはその喜ぶ顔を見るとハッピーな気持ちになり、それが活動へのエネルギーになります。一方的なものではなく、相互扶助といいますか、ウィンウィンの関係といえます。

 相手を認めながら人と関わることができれば、新しい世界、真の意味での共生というものが見えてきます。共生というのは心豊かで生きやすい世界です。一度足を踏み入れれば、こんな素晴らしい世界があったのかということを実感できると思います。みなさんはふだん競争や自己主張の中で社会生活を送っています。しかし相手を認めることができれば、温かい気持ちで過ごすことができるようになるはずです。これもまたメリットではないでしょうか。

 傾聴ボランティアは、シニアの人に向いていると思います。なぜか? それはシニアの人はさまざまな人生経験があるため、共感的に話を聴くことができるからです。

 但し、人生経験があればよいというわけではありません。現役時代辣腕をふるってきた男性にとっては乗り越えなければならない壁があります。それは話を聴きながら答えを出す必要がないということです。企業活動やミーティングにおいては、解決方法を出さない、目標を出さない、などということはありえません。ところが傾聴では答えなど出す必要がないのです。話し手は必ずしも答えを求めているわけではありません。現役時代に敏腕だった人は、ただ、耳を傾けることが支援につながるということに気づきにくいのです。

 各地にたくさんのグループがありますが、そのメンバーの9割は女性です。今、男性の参加が待たれています。男性メンバーは行動力があって、社会的な見識が豊富な人が多く、非常に頼もしい戦力になります。但し、相手の話を聴きながら説教をしなければということです。しかし、この説教癖がしみついているのが、私たち男性なのです。自分がやってきたことに自信のある人ほど、「俺の考えが唯一正しいんだ」となってしまいます。和久井さんのお話にも信頼感という言葉が出てきましたが、みなさんは信頼感はどのようなことから生まれると思いますか? 信頼感の源は相手に対する好意です。ではその好意はどこから生まれるのか? 自分の話を長く聴いてくれる人から好意は生まれます。余計なことは言わずに相手の言うことを聴いてあげる。ビジネスの世界で修羅場をくぐってきた方たちには「聴いてあげるだけでよい」というのは、一種のカルチャーショックかもしれません。しかし、それを乗り越えることができれば、経験はありますから素晴らしい傾聴ボランティアになられると思います。

 また傾聴ボランティアには、この年になっても新しい仲間ができるというメリットもあります。活動を始めたことで人生が変わったという方もたくさんいます。定年退職後に何をしようかなと考えていたときに、私たちの活動を知って、講座を受けられて、仲間が増えたので驚いたという方もいました。川崎市には13のグループがあって、そこで多数のメンバーが活動しています。心から話し合える、そういう仲間ができる、新しい出会いがあるというのも、大きなメリットだと思います。

<2>何のためにするのか(目的)?

 相手のことを認めるということは、「人と人とのつながりの復権」になるのではないでしょうか。現代は、隣の人が誰かも分からない人間関係の希薄な時代です。地域社会の崩壊などとも言われていますが、傾聴ボランティアはそうしたことに対しても有効だと考えています。傾聴は物ではなく、心をより大切にします。相手が何を考えているのか耳を傾けて、受け止めるということから得られるのは心の喜びです。こうした傾聴的な活動が広がっていけば、心豊かな、お互いを支え合う、地域の復活につながるのではないでしょうか。

 また、先ほど言ったこととも重なりますが、相手の生きてきた軌跡を認めれば、相手は大きな喜びを感じると同時に、自己肯定感、自己有用感を覚え、自尊感情を高めることができます。それが生きる勇気、元気、自信にもなります。

 高齢者の中には、次のようなことを言う人をよく見かけます。「自分は子育てをがんばってきたけど、今は誰も寄りつかないし、体もあちこち痛い。こんなに人の世話になるばかりじゃ生きていてもしょうがない。死にたい、死にたい」。みなさんの周りにもいるのではないでしょうか。そんな人には「戦後の食糧難の時代に子供を育ててきた、それだけで立派なことではないですか」と言います。そうやって相手を認めてあげれば、相手は「生きていて良かった」と自己肯定感を持てるようになります。そしてその肯定感が明日を生きる勇気につながっていきます。

 また、傾聴では多様な価値観を認めることも大切です。その人にはその人なりに生きてきた軌跡があって、自分なりの人生観をもって生きています。みなさんも自分の人生を一生懸命生きていると思っているでしょう。ならば目の前の人もそう思っていると、認めてあげること、そういうことが大事なのです。当たり前のことのようですが、簡単にできることではありません。失礼な言い方になるかもしれませんが、企業でバリバリ働いてきた方は、腰の曲がったおばあちゃんを前にすると、「この人の人生は意味があったのかな」などと考えがちです。しかし会社をやめたらバリバリの成功者もただの人です。生きるということにおいてはみんな等価値なのです。まずは認め合うこと。それが新しい世界への第一歩となります。

<3>傾聴的に聴くとはどういうことか?(傾聴の基本)

 最初に傾聴の基本は、傾聴モードで聴く、共感的理解で聴く、受容的態度で聴くと言いました。それぞれについてもう少し詳しく説明します。

 傾聴モードで聴くというのは、5分でも10分でもいいので、その間はこの人の話を一生懸命聴くぞと自分に言い聞かせることです。私たちは相手の話を聴くとき「それなに?」「それ違うんじゃない」などと、すぐに口を挟んでしまいます。できれば最初の3分間ぐらいは余計なことを言わずに、この人が何を言いたいのか、何を伝えたいのか、真剣に聴くことです。この傾聴モードで聴くということができるようになれば、傾聴的に聴くということの65点ぐらいには達しているでしょう。

 次に共感的理解についてです。みなさんも相手の立場に立って話を聴くことが大事であることは理解していると思います。しかし相手と同じ経験をしたことがない場合、相手の気持ちをきちんと受け止めて聴くことは、難しくなってきます。

 例えば交通事故で自分の子どもを亡くした方がおられたとします。その方の話をみなさんが傾聴ボランティアとして聴くことになったとします。その場合、相手の気持ちになって話を聴くことができそうですか? 相手の方は日々、つらさ、怒りを抱えて苦しんでいます。ですから話を聴こうとしてもこのように言うでしょう。「あなたは自分の子供を交通事故で亡くしたことがあるのか」と。「ありません」と答えると「子どもを交通事故で亡くしたことのないあなたになんで私の気持ちが分かるのか」と怒ります。このような状態でもみなさんにはできることがあります。「確かに私は子どもを亡くした経験はありません。しかし、あなたの辛さ、悲しみ、怒りを一生懸命聴かせてもらいます。よかったら話してください」と言うのです。そして一生懸命聴く、あるいは理解する努力をする、そのことが相手に伝わることが大切です。中には「同じ経験をしていない人間には、本当の理解なんてできるわけがない!」という人もいます。もし、その人のいうことが正しいとすれば、私たちは誰の話も聴けないことになります。なぜなら他人とまったく同じ人生を送ってきた人などいないからです。ですからたとえ同じ経験がなかったとしても、自分の経験をフルに動員して、相手の気持ちに思いを馳せながら話を聴く。それが共感的理解で聴くということです。

 次に「受容的態度で聴く」について、例をあげて説明したいと思います。

例1)主人に先立たれ、子どももよりつかず、一人で寂しい寂しいというおばあさんがいました。どんな地域の中にも必ずいるであろう人です。そして「主人が早く迎えにこないかな」などと言います。このとき傾聴を学んでない方は、「そんな寂しいなんて言わないで、楽しい話をしましょうよ」と話しかけてしまいます。これは受容的態度ではありません。相手に寂しいと言われたら、寂しいと思っているのだなと受け止めながら、「どんなときに寂しいと思っているのですか」と聴くのです。「死にたい」と思い詰める人には、その悲しみの奥底に何があるのかを聴いてあげることが大切です。したり顔で「ああしろ、こうしろ」と言うのではなく、その人のあるがままの気持ちを受け入れてあげる。それが相手を認めることになり、自己肯定感や生きる勇気につながっていくのです。

例2)あるグループホームに認知症の高齢者がいました。ボランティアが訪ねたところ、高齢者が部屋の内側からロープをかけて、ドアが開かないようにしていました。職員に頼んで中に入ると、「あんた何しにきたの!私は一人にして欲しいんだよ、ベッドに座って天井でもボーっと見ていたいんだよ」と言われました。するとその傾聴ボランティアさんは、あまり慣れていなかったのでしょう。「部屋に一人でいて楽しいの?天井見て何かになるの?」と言ってしまったのです。この対応は傾聴的ではありません。こういうときは「誰にも邪魔されずにボーっとしたいときってあるよね、天井を眺めたい気分のときもあるよね」と寄り添うことが大事なのです。

 しかし一般的なコミュニケーションの流れからいくと「そんなことしてどうするの?」と問い詰めがちです。そうではなく隣に座って「天井の模様っていろんなものに見えるよね、子どもの頃、天井の模様が人の顔に見えたことがあったよね」と共感を示すのが、傾聴的態度なのです。認知症の方々は一般的に最近のことは忘れやすくなりますが、長期記憶は残っています。ですから昔のことに触れながら傾聴的に聴いていくと、あるときせきを切ったように話し出すことがあります。

例3)東日本大震災から今日でちょうど1年4カ月になります。被災者の中には新しい生活に向けて動き出している人もいれば、なかなか踏み出せない人もいます。そんなとき踏み出せない人を見て「だめじゃない、○○さんはがんばっているのに」などと言ってはいけません。「そうだよね、やろうと思っても力が出せないことってあるよね」といって現状を認めてあげるのが受容的態度です。人は受容されると大きな毛布で包まれたような気持ちになります。

<4>傾聴的に聴くことはどのようにして身につけるのか?

 傾聴的なスキルや心構えは傾聴ボランティア養成講座で身につけることができます。配布したパンフレットの中に講座の案内や書籍の紹介をしています。話を聴いて興味をもたれた方は見ておいてください。

 ではなぜ講座で学んでいただく必要があるのか。傾聴ボランティアを行うためには、相手の気持ちになって、受容的態度、共感的理解で聴かなければなりません。しかし、こうした傾聴のやり方というのは、私たちが慣れ親しんできたコミュニケーションの方法とは少し異なります。ですから練習が必要なのです。

<5>傾聴ボランティア活動の始め方

 興味をもってボランティアを始めたいと思った方は、是非グループを作って活動してください。ボランティアを実践したら、同じ体験をしたグループの中で自分の活動を聴いてもらい、そのことについて互いに確認作業をしていくのです。これはピアサポートといって、非常に大切なことです。もし一人で活動して、毎回うまくいったと思う人がいるとすれば、それは独善と我流です。みんなで話し合いながら進めていけば、良いところ悪いところが見えてきます。

 また、各地の社会福祉協議会、包括支援センターとの連携も不可欠です。できればそうした公的な機関から派遣されるという形態をとったほうがいいでしょう。個人の資格で個人を訪ねても相手にはしてもらえません。飛び込みで見ず知らずの家に行って「傾聴ボランティアですと」言っても「それなんだべ、訪問販売か」といって追い返されるだけです。

 社協などに名札を作ってもらい、身分を保証してもらったほうが活動はスムーズにいきます。

<6>傾聴ボランティア活動は誰にでもできるのか?

 傾聴ボランティアは誰でも参加可能です。但し、傾聴的に聴くことができればということです。繰り返しになりますが、傾聴的に聴くというのは誰にでもできるわけではありません。それなりに練習をしていただく必要があります。

 以上、傾聴ボランティア活動の一端をお話ししました。ご静聴ありがとうございました。

質疑応答

河合:後半の質疑応答に移りたいと思います。

質問者:福島県いわき市役所から来ました。成年後見についておうかがいしたいのですが、話の中で「ありがとう」と言われることが報酬だという言葉がありました。市民後見人の場合、認知症の方が対象ということが多く、なかなか「ありがとう」という言葉を聞くことができません。しかも期限が見えない先の長い活動です。こうした市民後見人は何をインセンティブにして活動を続けていけばいいのでしょう?

和久井:まず安心・安全な町作りをしたい、権利を侵害されている人をなんとか守りたいという気持ちが基本にあります。

 後見人にも報酬は出ます。ただ、後見人の報酬というのは、後見人が決めるわけではなく、家庭裁判所が一件、一件決めていきます。報酬額はケースバイケースですが、だいたいにおいて金銭的に満足できるようなものではありません。ですから金銭を得ようと思ってできる活動ではないということです。感謝の念が伝わってこない、金銭的にも満足できない、ということであれば何を支えにすればよいのか。結局は人間愛とか地域をよくしようということが基本になると思います。

 以前、我々のNPOで八王子の施設にいる年配の女性をサポートしていたことがあります。その方は1年半ほど前に亡くなられたのですが、葬儀に集まったのは6人でした。うち5人がうちの会員です。今の日本は本当に孤独死というものが増えています。成年後見というのは、死をもって終了します。本来、葬儀は関係ないのですが、他にいなかったので我々で葬儀場の手配をしてお送りしました。人生の最後に誰も見送る人がいない。そんな悲しいことがあるでしょうか。ご縁があった人に対して、人間としてできることをしたいと思い花を供えたのです。市民後見人のやることではないかもしれませんが、そうした役割を得ることができて、ありがたいなと感じました。これは一つの例ですが、案件によってさまざまな喜びや、やりがいがあます。実践する中で、そうしたものを見つけていけばよいのではないでしょうか。

 実際、報酬のためではなく人間愛や地域愛に基づいて、活動している市民や区民がいるのです。行政にもそうした人たちの価値を認めて、なにができるのか考えて欲しいと思います。

山田:お話を聞いていて、市民後見人はその人がその人らしく生きることを支援することなのだなと感じました。人と人が関わることで、相手が喜び笑顔になる。傾聴ボランティアと根底ではつながるものがあると思いました。

質問者:和久井さんのお話の中で、法律の問題にも対応するとあったのですが、法律の問題は専門家でもややこしいことがあります。そのあたりをもう少し詳しくお聞かせください。

和久井:私たちのNPOでは、法律や介護に関する中程度の問題であれば、品川区の社会福祉協議会に相談します。品川社協の場合には、そうした問題にきちんと対応できる態勢があります。それからうちの会の仕組みとして、業務指導委員会というものを別途作ってあります。そこには我々の活動に協力してくれている弁護士さんや、司法書士、介護福祉士などの専門家がいます。ですから難問にぶつかった場合には、そうした人たちに相談できるようになっています。

 私は自分でなんでもやらなければとは考えてはいません。必要な人脈をつくっておいて、そこに相談すればいいのです。法律は奥が深く、さまざまな分野があります。いわゆる素人の判断でそういうところに踏み込むのは間違いです。分からなければ社協や専門家に聞くべきでしょう。ただし、社協に関していえば、全国すべての社協が成年後見に詳しいわけではありません。相談に行かれるときはそのことを頭に入れておいてください。

質問者:千葉のほうで「市民後見人の会」というものを1年ほど前につくりました。会を運営していくためには、いろいろな費用がかかります。お二人はそのあたりをどのようにしているのでしょうか? 工夫やヒントをご教授いただければと思います。

山田:私たちに関して言えば、養成講座の受講料、出張して講座や講演を行ったときにいただく費用、それが収入のすべてです。月刊誌も出していますが、これは赤字です。私たちは私たちの稼ぎで事務所を構えて運営しています。

和久井:市民後見人に限らずNPOの運営というのは大変で、どこも苦労しています。うちのNPOは5年になりますけど、まだ赤字は出していません。

 事務所についてですが、立ち上がったときは前の理事長がもっていた古いアパートを無料で借りていました。ところがアパートの立ち退きにあいまして、10カ月ぐらい事務所のない時代がありました。その頃、品川区は区内にある廃校に「ふれあいプラザ」という、交流スペースを作っていました。その一部をNPO向けに貸し出しており、そこに入ることができました。月の家賃は水道・光熱費込みで1万円です。学校の教室を仕切ってできた部屋ですが、なかなかいいところです。今、各地で廃校になった校舎の再利用がすすんでいます。事務所を探している人には参考になるのではないでしょうか。

 NPOの収入としては、会員の年会費が3千円、寄付、品川社協、後見人の報酬などがあります。ビデオ上映会など区との協働事業では、行政から費用がでることもあります。そうした中で我々理事は無報酬でやって、赤字を出さないようにしています。

質問者:いただいた資料に関する質問です。ホールファミリーケア協会という名前と、親子の絵のシンボルマークが、傾聴ボランティアと結びつかないのですが、これにはどういった意味があるのでしょう。

山田:私たちの団体はホールファミリーケア協会というのですが、みなさん意味はお分かりでしょうか。この質問をすると「穴」「大ホールなどの会場」のことですかなどと言う人もいますが、そうではありません。ホールトマトのホールで、全体のという意味です。現実には傾聴ボランティアが主ですが、協会では家族全体をケアするということを目標にかかげています。そういったわけでこのような名称とシンボルマークを使っています。

 傾聴ボランティアに関しては、勘違いされている方がいるのですが、対象は高齢者に限ったものではありません。どんな人の話でも聴くというのが傾聴ボランティアです。実態としては高齢者が多いのですが、若者や引きこもりの人、子育て中のママ、精神障害の人の話を聴くという活動もしています。

 理想をいえばもっと活動の領域を広げたいのですが、傾聴ボランティアを通して各世代の方に関わっていくのが精一杯というのが実情です。

質問者:昨年までケアマネジャーをやっていました。体調を崩して介護から引退していたところ、社協から声がかかりまして、今は権利擁護事業の支援員をしています。先月、社協の研修に参加したところ、市民後見人の養成は地域によって取組みが大きく違うということを知りました。そうした中で、和久井さんのほうから養成講座というお話がでました。こういうことは定期的におやりになっているのでしょうか? また養成のためのバックアップをしている地域はあるのでしょうか?

和久井:まず厚生労働省が市民後見人を養成しようという方針を出したので、平成23年度は37の市町が手を挙げています。予算も増えていますから、この先全国的に大きく広がっていくでしょう。ただ、どこが手を挙げるかは自治体の判断ですから分かりません。つい先日、熱海の方から養成講座を受けたいという相談をいただきました。そこで同じ県内にある沼津市でもやっているので、そちらで受けたらどうですかと答えると、「沼津市民以外はお断り」と言われたそうです。力を入れている自治体でもそういうことはあります。

 また、お金はかかりますが、東京大学も養成講座を開いています。品川でも10月に開きますので、ホームページのほうを確認してみてください。これからは行政を含めていろいろとやるところは増えていくと思います。

河合:私から一つ質問させていただきます。傾聴ボランティアの活動は民生委員とのつながりはないのですか?

山田:私たちは、民生委員さんの研修に呼ばれることがあります。傾聴的に聴くということは、民生委員のみなさんにとって非常に大事なものだと思っています。誤解を恐れずに言うと、民生委員さんの中には、困った人のために何かをしてあげている、救済してあげているという意識をもった人がいるように思います。民生委員の活動の第一義はその方の自立支援です。自立支援というのは物を給付するだけでなく、その人の話を聴き意思を確認することです。最初は迷っている人も、話をしていくうちに、自分が何をしたいのかに気づいていきます。そういうプロセスを共有することが大切だと思っています。ですから民生委員さんには、是非、傾聴スキルを身につけてほしいのです。

河合:ありがとうございました。これで質疑応答を終わります。パネラーのみなさん、最後にまとめと感想をお願いします。

和久井:最後になりますが、さわやか福祉財団で私のパートナーとして活動している野島さんに、一言挨拶していただきます。

野島:高連協の堀田力さんが、市民後見人は誰でも参加できるが、重要な資質が必要であると言っています。その資質とは「あくまで徹底的に本人の立場でものを考える、感じることができる」というものです。さらに「その適格性を判断できるのは、その人の配偶者、奥様です、もし配偶者に不適格と言われたら市民後見人のことは忘れてください」とも言っています。配偶者に聞けば、あなたが人の立場に立ってものを考えることができる人かどうかが分かるというわけです。

 本日の話を聞いていて、堀田さんのこの言葉を思い出したので、ご披露させていただきました。

和久井:本当に今日はありがとうございました。こういう話は一方通行ではつまりませんから、非常に良かったと思います。

 最後に一言。みなさん自分たちの住んでいる地域を安全・安心な町にしましょう。孫の時代の日本が少しでも良くなるように、自分ができることで関わっていってください。

山田:先ほど野島さんが、奥さんに不適格と言われた人はあきらめたほうがいいというお話がありましたが、傾聴ボランティアはそこまでは言いません。もしそのような人でも、相手の方から「ありがとう」とお礼を言われると世界は変わります。最初は演技の傾聴だったとしても変わっていくのです。みなさんも是非、傾聴ボランティアに挑戦してみてください。

河合:ありがとうございました。以上で第2分科会を終了します。