第1分科会「高齢社会フォーラム・イン東京」
「明るく温かい地域社会づくりを目指して」
- コーディネーター
- 渡邊 武
(浦安市民生委員・児童委員、浦安市社会福祉協議会評議員他) - パネリスト
- 朝倉 由美子
(福井市シルバー人材センター スーパーバイザー・介護保険事業所長) - 西山 真
(エコー2000代表、さいたま彩講会副代表) - 原野 哲也
(東京都江戸川区福祉部長)
第1分科会のテーマのねらいと背景
渡邊:皆さん、こんにちは。私は、第1分科会のコーディネーターを務めさせていただく渡邊です。私は、浦安市の民生委員・児童委員や社会福祉協議会の活動に携わるとともに、税理士事務所の運営やISOの審査会社の仕事をしております。
最初に、本日のテーマのねらいや背景について、私のほうから、若干お話しします。
- 福祉の活動に携わってきて感じるようになった2つのこと
私は、20年強、福祉に携わってきましたが、その間、2つのことを感じるようになりました。
1つは、福祉が若干高齢者のほうに偏っているのではないかということです。国や地方の予算や社会保障の給付などもそんな傾向があり、人生前半の社会保障は、先進国中で米国に次いで低いと言われます。私ども民生委員は同時に児童委員でもあるのですが、高齢者のことでほぼ頭がいっぱいで、児童委員のほうはやや影が薄いのが実態と感じています。
もう1つは、政策や施策がどうしても目先にとらわれがちなことです。もうすぐ参議院選挙ですが、候補者は、目先の受けがいい公約を掲げ、有権者も、そういう方に投票しがちです。その結果、次の世代は一層の重荷を背負うことになりかねない状況です。もっと将来を見据えた政策・施策を進めることが必要と思います。
今の経済・社会の状況では、若い世代の人たちは、なかなか将来に希望が持てず、子どもを産み育てることに不安が先立っています。その結果、少子化が一層進み、いよいよ医療・年金財政が逼迫する。1000兆円を超える公的債務が更に膨らみ、次の世代につけを回す、こういう悪循環になっています。
辞書を引くと、福祉という言葉には、「みんなの幸せ」という意味があります。未来を支えてくれる若い人にとっても、将来に希望が持てる社会にして、これを継承していく、という観点が必要なのではないかなと感じています。 - これ以上看過できない少子化(人口減少)のもたらす影響
昨年の合計特殊出生率は1.41と報告されています。1組の夫婦に子どもが1.4人生まれています。1世代は大体30~40年ぐらいですが、1世代経過するごとに、人口が0.7になる計算です。日本の人口は、2060年に8,674万人になると推計されており、この傾向がそのまま今後も続く場合、単純に計算しますと、今世紀末には6,000万人ぐらい、来世紀末には2,000万人強ぐらいと、想像を絶する数字になります。
このように幾何級数的に人口が減っていった時には、日本の社会はどうなるでしょうか。消費規模が縮むことから始まり、経済は縮小します。財政はいよいよ苦しくなり、鉄道、上下水道、橋などの地方の社会インフラが維持できなくなります。また、世界の中における日本の存在感は小さくなるばかりです。
少子化対策はもう待ったなしの状況だと思います。若い人たちが、しっかり自立し、希望を持って、子どもを産み育てられる安定的な社会に何とかソフトランディングすることが大変重要ではないかと思っています。 - 国の将来を左右するシニア世代の考え方
続きまして、シニア世代の社会における重みについて考えてみます。65歳以上の方の比率が2013年の25.1%から2060年には39.9%とほぼ4割になると予測されています。
未成年者を除いた有権者の中で考えますと、シニアの方の比率はさらに上がる。投票率の実態を考えますとまたもう一段上がる。ですから、皆さんシニア世代の方々の考え方次第で、この国の社会や将来が決まると言っても過言ではない現状にあると思います。 - 現在の社会をどのように考えているのか
次に現在の社会を皆様がどう考えているかですが、最近の内閣府による世論調査の結果では、「社会への貢献意識」の点では、「社会に役立ちたいと思う」人の割合が、20歳以上の総年齢層で67%、特に40~69歳では72%と、年齢層に関わらず高くなっています。
また、「社会の満足度」の点では、満足していない点のワースト4を挙げますと、まず、「経済的なゆとりと見通しが持てない」と考えている人が20歳以上全体では42%、20~69歳では47%です。次は、「若者が社会での自立を目指し難い」と考えている人が20歳以上全体で40%、20~69歳では44%です。さらに3番目として「家庭が子育てをしにくい」が大体3割、4番目は「働き方を選択しにくい」が続いています。この世論調査の結果は、現在の社会の問題点をくっきりと浮かび上がらせていると思います。 - 本日のテーマのねらい
本日のテーマのねらいは、次世代、次々世代に大変厳しい現実が待つ中で、各世代全体にとって希望のある社会にするため、シニア世代の皆様がどう考え、地域社会で具体的にどんな活動をしたらいいか、そのための仕組みやインフラをどう整えたらいいかを考えることです。
各パネリストからの報告
- 高齢社会における理想の地域社会実現に向けて歩み続ける「江戸川区」
渡邊:それではまず、江戸川区福祉部長の原野さんからお話をお願いします。
原野:江戸川区福祉部長の原野です。私は、今、江戸川区の公務員、区役所の職員です。今日は、江戸川区がどのようなことを行っているかについてご説明したいと思います。
- 江戸川区の特徴
江戸川区は、東京の一番東の端で、東京の三大河川のなかの、荒川と江戸川に挟まれ、南は東京湾の、面積約49km2、人口約67万6,000人、世帯数約32万世帯の地域です。
江戸川区の合計特殊出生率は1.34と、全国平均を下回りますが、東京23区中一番高くなっています。平均年齢も42歳ぐらいと若いほうで、中学生までの子ども数の比率である年少人口率が14.1%で23区中一番高比率です。高齢化率が19.11%で、まだ20%までいっておりません。公園面積は23区中1位で、500か所ぐらい公園があります。
江戸川区の世帯で、まず「お一人暮らし」の世帯は約13万6,000世帯で、全世帯の43%を占めています。一人暮らしの中の65歳以上の方は27%で、年々増えています。夫婦のみの世帯では65歳以上の方の世帯が48%です。 - 江戸川区の熟年者施策とその施策の効果確認
江戸川区では、皆さん、昭和58(1983)年以降、高齢者ではなく、「熟年者」という呼び方をしています。「熟年者」という言葉は、「円熟した人格と熟慮できる知恵、熟達した技量を持った人である」、そして、「永年の努力で今日の日本の繁栄を築いた社会の尊い財産である」と定義されています。30年前から、江戸川区は、年配の方に「お力を社会に還元してください」ということを考えていたのです。
江戸川区は熟年者が元気な街と言われていますが、それを裏づけるデータとして、介護保険の第1号被保険者認定率は14.29%と、23区の中で一番低いこと、75歳以上の後期高齢者医療制度の医療費も年額約86万円で、23区の中で一番低いことが挙げられます。 - 熟年者の生きがい・元気施策の事例
江戸川区の熟年者が健康な理由は、「社会参加」、「健康増進」、「学習」、「就労」の4つのキーワードで表現できます。それぞれのキーワードごとに1つずつ事例をご紹介します。
- くすのきクラブ
まず、「社会参加」の例として、「くすのきクラブ」があります。これは、いわゆる老人クラブであり、区の木が楠ですから、そのように呼んでいます。204クラブあり、加入者数は1万8,500名です。「くすのきクラブ」の4本柱は、ボランティア、教養の向上、レクリェーション、それから健康増進活動です。「くすのきクラブ」のメンバーは各地域で、子どもの見守り、清掃・リサイクル、安全パトロール、体調を崩して外出できなくなった方を訪問するふれあい・友愛訪問など、かなりのボランティア活動を行っております。 - リズム運動
「健康増進」の例は、江戸川区独自で行っている「リズム運動」です。「リズム運動」は、社交ダンスをちょっと熟年者向けにアレンジしたもので、233団体、1万人を超える方々が参加されて、江戸川区の200会場で、年間8,000回以上行われています。 - くすのきカルチャー教室
「学習」の例は、熟年者の皆様がご自分たちの趣味を勉強する「カルチャー教室」です。正規の教室が84教室あり、受講料は無料で、約2,000人の方々が、また、それを卒業して、自主教室をつくった6,000人を超える方々が、学校の空き教室などで勉強しています。 - 江戸川区熟年人材センター
江戸川区は、昭和50(1975)年に、日本で初めて、「江戸川区熟年人材センターの前身である「江戸川区高齢者事業団」をつくりました。この「熟年人材センター」は、いまも11億円に近い年間売上があり、会員は4,000人を超え、就業率は現在56.1%です。
- くすのきクラブ
- 熟年者を中心に区民が主体となっている活動の事例
次に、熟年者を中心に区民が主体となっている活動事例として「江戸川区総合人生大学」と「アダプト活動」の2つをご紹介します。
「江戸川区総合人生大学」は、平成16(2004)年に江戸川区が立ち上げた市民大学です。江戸川区でボランティアなどをやりたい多くの方がこの大学で2年間勉強し、ここを卒業して、自分たちでグループをつくって地域で活動を行っています。2学部4学科があり、まちづくりや国際交流などがテーマで、学費は年間3万円です。もう卒業生は534人いまして、ボランティアの団体も47団体できています。授業は、「地域課題発見のためのまちあるき」など、現場を訪問してグループワークを行うことが概ね主体となっています。
もう1つの「アダプト活動」は、「公園ボランティア」、「緑のボランティア」、「水辺のボランティア」など、公園のお手入れや、清掃活動をしていただくものです。 - 地域が主体となっている活動の事例
最後に、地域が主体となっている活動事例として、「すくすくスクール」があります。
江戸川区には、小中学校合わせて106校あり、そのうちの小学校73校すべてで、平成15(2003)年から地域の皆さんのお力を借りて、放課後の子どもたちに異年齢集団の交流をやってもらおうと、「すくすくスクール」を実施しています。これを支えていただいているのも熟年者の皆さんです。ご自分が昔いろいろやっていたこと、お手玉とか、日本舞踊とか、囲碁・将棋とかを小学生に教えていただいています。
今、熟年者の皆様の活動を中心として江戸川区の活動を紹介しましたが、今日のテーマの「明るく温かい地域社会」の1つの例として、皆様の心に残ればと思います。
- 江戸川区の特徴
- 現役時代に培った知識や経験を生かした、元気なシニアによる生きがい講師団の活動
渡邊:続きまして、西山さんにお願いしたいと思います。
西山:西山真です。出身は、埼玉県志木市という、人口7万2,000人の市ですが、そこで生まれ育ち、現在もそこに在住しています。私は会社を定年退職して13年目に入りますが、現在町内の防犯、防災等自治会活動や、ボランティア活動に関わっています。
- 「生きがい講師団「彩講会」」の結成と講座内容に対するニーズの変化への対応
今日、ご紹介するのは、そうした居住している地域での活動ではなくて、講座の講師を務める仲間たちと一緒に行っている「生きがい講師団「彩講会」」の活動です。
「生きがい講師団「彩講会」」は平成12(2000)年にスタートした、元々は埼玉県の予算による「生きがい・健康づくり活動普及指導員養成講座」の受講者が立ち上げた組織です。この「彩講会」は、企画し、設定した講座に、適材の講師を派遣して欲しいという、埼玉県全域の公民館、社会福祉協議会、あるいは老人会等の団体からの要請に対応しようと、講師グループとして組織した団体です。現在、会員は140名ぐらいです。
公民館等のシニアを中心にした講座が多いのですが、最近、社会の情勢の変化とともに、講座に対するニーズが変わってきました。たとえば、公民館活動では、メインとなる活動が、従来の文化的なものから、最近では、高齢者の健康づくり、生きがいづくりを目指した介護予防事業という方向へと変わりつつあります。講師についても、健康・生きがいづくり、文化的な活動、子どもさんとのモノづくり、体験講座、人権講座、あるいは親子教室というような幅広い分野のニーズに応じて選ぶようになっています。
今後とも、社会の要請、あるいは希望団体の幅広いニーズに応じられるように、また、自分たちの実力を向上させるために、年間を通じて基本的に3つのことを行っています。
1つ目は、在籍する会員自ら講師としての能力を高めるために開催する月例会です。これは、毎月第4水曜日の午後に3時間ぐらいをあてて、プレゼンテーションの訓練というかたちで会員の中の希望者が発表します。
2つ目は、公民館あるいは派遣先の団体の責任者や担当者の皆様にお集まりいただいて、毎年行うプレゼンテーションの発表会です。これは、一度に全会員対象にはできませんので、30~40名の方が、2~3日間かけて、ポイントの発表を行います。
3つ目は、組織強化のための会員公募です。日刊新聞の広告募集欄で、公募しますが、応募者には、レジメのつくり方、話の進め方など講師としてデビューする準備のために3日間、技術的な、知識的な研修を行います。そのうえで、定例総会で承認された人に限り、会員となります。毎年、大体10数名から20名ぐらいの新会員が加わります。 - 地域との関わりを深めることのできる講師活動
このような講師活動から、地域との関わりも生まれます。この活動はまず、講座をとおして、地域の皆様と交流を深めることができ、かつ講師としての務めも果たせ、それが自己実現にもつながっています。さらにその講座の担当者あるいは地域の皆様との連携で、次の講師の選定等、講座担当者の企画・運営にも参画し、協力していくことで、間接的に地域貢献にもつながっていきます。さらにまた、地域の皆様とお知り合いになってから、派遣された先の地域の活動に入っていく会員もいます。
このように、「彩講会」は、講師活動をとおして社会参加でき、そして地域活動に貢献できる、大変ユニークな活動による社会参加の形態ではないかと思っています。
地域活動は、きっかけづくりが大事でして、行政は、きっかけづくりのために、たとえば、団塊の世代が定年後どのような生き方をしたらいいか、といったテーマが求めらている時に、選択肢になる講座を開設することが肝要だと思います。この「彩講会」でも、ゆくゆくは自主的にそのような講座をつくって、受講生を募る、あるいは地域によっては、その受講生を組織化して、さらに地域活動に発展させていくことを議論中です。
- 「生きがい講師団「彩講会」」の結成と講座内容に対するニーズの変化への対応
- 世代間の温かい交流の実現も目指した子育て支援・介護事業等の展開
渡邊:続きまして、朝倉さん、よろしくお願いします。
- 多様な事業を展開する福井市シルバー人材センター
朝倉:福井市シルバー人材センターの朝倉です。昭和55(1980)年、センター設立と同時に採用されて以来30年、会員と力を合わせて多様な事業を立ち上げ、2年前、常務理事・事務局長として定年を迎えました。現在、嘱託職員としてシルバー事務に関わっています。
福井市シルバー人材センターは、平成元(1989)年度から、福祉・家事援助サービス事業を開始し、その後、軽度生活支援事業や、育児支援事業も手がけ、これらサービス分野だけで契約金額の約3割を占めています。公的介護保険がスタートした平成12(2000)年には、全国のシルバー人材センターに先駆けて、介護保険事業に参入し、現在では、訪問介護、居宅介護支援、デイサービス、通所介護、それと障害者の訪問介護、小規模多機能型居宅介護等を実施し、介護タクシーも行っています。
他にも、一般市民や子どもを対象にした各種教室の開催、地産地消がテーマのバイキングレストランの運営、フリーマーケットの常設店の運営、中心市街地の空き店舗を活用した交流機能、便利屋事業など多様な事業を展開しており、また、子どもの見守り隊とか、高齢者施設でのボランティア活動なども行っています。 - 経済的効果、健康、そして生きがいを実現するシルバー人材センターの仕組み
私は、シルバー人材センターが、高齢社会にあって、経済的な効果、健康、そして、生きがいの3つが実現できる大変素晴らしい仕組みだといつも申し上げています。
1つ目の経済的な効果では、会員数2,500人で、契約金は年間約10億円です。私どもの会員は65歳以上が85%、平均年齢は70歳を超えています。シルバー人材センターの仕事の中心は、庭の草むしり、植木など、ちょっとしたお手伝い的な仕事です。以前なら自分で行っていた、あるいは隣近所に頼んでいたところに、市場をつくったのです。そして、10億円の収入は、会員自身の喜びの収入にもつながっています。
2つ目の健康については、以前私どもで、国民健康保険に加入している一般市民と当センター会員の医療費データについて比較調査を行いましたが、60~70歳の場合2分の1、70歳以上は3分の1で済むという結果でした。働くことが随分と健康維持に効果的で、公的負担を軽減している表れですし、1つ目の経済的効果とも大いに関係があると思います。
さて、3つ目の生きがいですが、生きがいは人それぞれだとは思いますが、私はやはり、シルバー事業の活動のように、地域の中で、人とのふれあいの中で、自分の存在が役に立っていると実感することこそが本当の生きがいではないかと思っています。 - シルバー事業を先駆けて開いた泰斗
シルバー人材センターの事業は、先ほどのお話しのとおり、昭和50(1975)年に、江戸川区で始めて発足しました。このシルバー事業を提唱されたのは東京大学総長を務められた大河内一男先生です。先生は、社会政策を専門とする経済学者で、「これからの高齢社会、日本の活力ある経済社会を維持するには、高齢者を活用しなければいけない。高齢者自身、従来の敬老精神だけでは救われないし、満足しない。行政や社会は高齢者に相応しい仕事を提供し、高齢者自身もそれに応えていくことで、高齢者は満足し、社会は成り立つ。<老人福祉法第3条2項>には2つの精神が込められている。1つは、介護等が必要になった高齢者には、きちんとした手厚い福祉を提供することである。もう1つは、高齢者だからといってあがめ、たてまつるのではなく、生活の保障をするのでもなく、高齢者の希望や能力に応じて仕事を提供し、積極的にそれに参加してもらうことである。だからと言って、労働市場を混乱させるような、安上がりの労働力の提供主体になってはならないし、若い者の仕事を奪うようなこともいけない。高齢者ならではの仕事を発掘しよう」と先生はいつもおっしゃいました。先生は東大退官後、全国津々浦々、シルバー事業の必要性を説いて回られたとお聞きしています。私どもも、大河内先生の残された言葉を、根っ子のところでしっかり持ちながら、この事業を進めています。 - 女性の就業の柱として進めた福祉家事援助サービス事業と介護保険事業への参入
当センターは、設立以来、草むしり、植木の剪定、襖の張り替えとかを中心に仕事をしていましたが、平成元年(1989)年度には、福祉家事援助サービス事業を女性の就業の柱にするとの目標を掲げ、スタートさせました。健康な高齢者がこの分野を受け持つことの重要性と、自身の生きがいにもつながることを訴え、研修も行い、事業を進めてきました。
輪が広がってきた頃、平成9(1997)年、介護保険の法律が通過した時に附帯決議が出され、生協、自営、NPOなどの中にシルバー人材センターも加わり、活動できる体制を整えることになりました。平成12(2000)年の介護保険制度開始までの3年間、シルバー人材センターも鋭意体制整備に努め、最終的には、目標に掲げていました有資格のホームヘルパー100名が揃い、ケアマネージャーについては、私自身が資格を取りましたので、介護保険制度のスタートと同時に事業参入しました。 - 女性の社会進出支援先進地域・福井市でのシルバー人材センター活躍の場を求めて
少子化に関わる事業についてですが、福井市は、女性の社会進出支援の施策に力を入れてきました。たとえば、保育園の待機児童は、0歳児を含めてありませんし、延長保育も、全ての園で行っています。また、児童館でも、小学校1~3年生の児童は、ほぼ全員が受け入れ可能になっています。その結果、福井市の共働き率は全国1位で、女性の有職率は、全国2位です。このように、女性が働く環境はかなり整っていましたが、子育て中の女性の声の中には、「支援体制はまだまだ十分じゃないですよ」という意見もあり、私は、そこにシルバー人材センターの活躍の場があると感じました。
シルバー人材センターでは、これまで、子育てに関わる事業として、産前・産後の家事援助、新生児の沐浴、双子出産や二人目出産時の育児支援、保育園・幼稚園・お稽古事等の送迎、子どもが病気や怪我の時の援助、長期休暇中の援助等を行ってきました。 - 社会的祖母力・祖父力も活用した多様な子育て支援事業等の推進・拡大
平成14(2002)年には、シルバー人材センターの拠点として福井市ワークプラザが完成し、土曜日の午前中、小学校3年生を対象に体験教室を行っています。たとえば、地震や戦争の話を聞いたり、草花でお舟をつくったり、そば打ちの体験をしたり、それから、福井市の石「笏谷石(しゃくだにいし)」について習うといった教室ですが、大家族の中で、おじいちゃんやおばあちゃんスタッフと孫たちが集う、本当に温かな事業です。
平成15(2003)年には、福井市が寄付を受けた大きな民家を活用して、お子様をお預りする託児事業(一時預り事業)を開始しました。デイサービスや通所介護事業も、このお家の中で行っています。この一軒家には、蔵や作小屋があって、ここで元気な高齢者が少し弱い高齢者のお世話をして、娘が孫を連れて遊びに来るような、一昔前の大家族の雰囲気で子育てと介護が行われています。
平成17(2005)年からは、0~3歳のベビーと、ママやパパたちが集う場所を提供する「つどいの広場」事業を実施しています。若いママからは、「転勤で福井に来て、こちらには相談相手がいないので、ここに来ると、実家の母に相談するような雰囲気で、安心できる」、一方、会員さんからは、「今日はどんなふうにお母さん方と過ごそうか。1日が有意義で、本当に私の最大の生きがいになっている」という声が聞かれます。
子育てでは、他に「母子家庭等日常生活支援事業」や「宿題教室」があり、「一時預り」事業は、先ほどの民家活用のものに加え、今は駅の東口と西口の計3か所で運営しています。また、昨年から「特別支援教育総合推進事業」という、何らかの発達障害を抱えるお子さんとその親御さんのために、集団生活に馴染む力をつけるよう、主に小学校低学年の児童に対して元教師の方を中心にほぼマンツーマンの指導や支援を行っています。
21世紀を担う子どもたちの豊かな人間性と社会性を育むことができるように手助けをしていくことは、私ども高齢者にとって、次世代への責務だと考えています。子どもと高齢者の世代間交流が広がることを望みつつ、日本の古きよき文化や伝統を継承し、真に豊かな心を持った子どもたちを育てるため、これからも努力していきたいと思っています。
- 多様な事業を展開する福井市シルバー人材センター
会場との質疑応答ならびに意見交換
渡邊:それでは、会場の皆様から、ご質問やご意見をお聞きしたいと思います。
- 地域に戻ってくる団塊の世代をどのようにして地域に引き込むか
- 大事なのは地域活動の大切さと面白さについての理解の促進
会場A:生活者が安心して暮らせる生活環境の整備を目指して活動を行っているNPO法人の者です。これから団塊の世代が地域に戻ってきた時に、どのようにしてその人たちを地域社会に引き込むかについてパネリストの方々にお聞きしたいと思います。
これは私の意見ですが、高学歴で、資格を持ってバリバリ働いてきた団塊の世代が、地域に入った時に、昔の地位や肩書を自慢して地域の方々とうまくいかないことが懸念される話を聞きます。私は、団塊の世代は地域では雑巾がけから始めるべきだと思います。西山:私は、地域に戻ってきた方が、地域や地域の活動に興味を抱き、その実践に足を向けるような働きかけが大事だと思います。「彩講会」に関して言えば、主催する行政や、それに協力する「彩講会」のような講師グループは、受講者の方に地域のグループ活動への参加を喚起し、受講者の方の次の実践展開につながる内容の講座を企画し、たとえば、団塊の世代に、受け皿である地域における活動に目を向けさせ、活動の意味や意義を理解させ、足を活動の実践に向かわせるように努める必要があると思います。
- 地域密着型企業や行政等による高齢者の活躍の場の掘り起し
原野:定年退職した方が、地域に入っていくきっかけとなる例が3つ思い当ります。
1つ目は、今年の2~6月に厚生労働省が「生涯現役社会の実現に向けた就労のあり方に関する検討会」を行い、6月にとりまとめた報告書の中の面白い例です。立川市に本店を置く多摩信用金庫の部長さんがこの検討会のメンバーですが、その方から聞いたお話です。
多摩信用金庫さんは、定年退職して地元の団地に帰ってきた方々を部屋の中に置いておくのは勿体ないので、何とかこの方々の興味の湧くものができないものかと考え、多摩コミュニティビジネスネットワークという組織を信用金庫の中につくり、文化的行事、教室、フィールドワークなどをいろいろ企画し、この高齢者の方々に参加を呼びかけてみたそうです。そうすると、この方々にかなり参加していただけて、1回参加されると、顔見知りになって次の活動にもつながっていったそうです。信用金庫側としても、退職金や年金の振込先の顧客管理にもなるので、こんな一石二鳥のいい話はないとのお話でした。
もう1つきっかけになるのは、先ほどお話した江戸川区総合人生大学です。
さらにもう1つは、「妻力」と言うのか、奥様の力だと思います。奥様のほうが地域やご近所のことをよくご存じですから、ご主人の地域デビューのきっかけをつくれるかもしれません。最初の一歩は、奥様にちょっと頼ってみるのも1つの方法かなと思います。 - シルバー人材センターの仕組みの中における新しい事業創出の道も
朝倉:福井市シルバー人材センターが介護、子育て以外にもいろいろ事業を多様に行っているのは、従来のシルバー事業だけでは、これから入ってこられるだろう潜在会員さんの目にシルバー人材センター事業が魅力的には映らないのではないかと考え、常に会員さんのニーズを意識しながら事業を進める必要があるからです。
ただ、本来ならば、団塊の世代が65歳に到達しているので、会員は増えてこなければならないのに、何故か減少気味です。それは、シルバー人材センターそのものに魅力がないという要素があるかもしれませんし、いろいろな背景もあるのかと思います。
もしシルバー人材センターに行っても自分に向く仕事がないというイメージをお持ちなら、団塊の世代の方は、高学歴ですから、資格とか、能力とかスキルを生かして、自分自身で事業を創出し、あるいは顧客を開拓し、PRにより仕事の確保につなげる、それをシルバー人材センターが支援するという仕組みができたらいいと思っています。渡邊:団塊の世代の方には、会場からご意見にあったように、地道なところから始めてもらって、地域に少し馴染んでから、本来の能力を発揮していただく。そして、朝倉さんがおっしゃったように、自ら仕事や仕組みを創り出す方向に進んでいただくといいと思います。そのためには、社会の実態や社会が求めるニーズ、社会でやらなければならないことを、皆さんが共通認識としてお持ちいただくことが大切と思います。
- 大事なのは地域活動の大切さと面白さについての理解の促進
- 23区内の情報交流について
会場B:新宿区からまいりましたが、本日、江戸川区のご説明をお伺いしていまして、自分の勉強不足は別にしましても、あまりに知らないことが多いのに驚きました。東京23区の各区が施策等の情報をもっと相互に発信・提供し合い、よい政策は取り入れ合うようにすると、各区の政策効果はもっと高まるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
原野:ただ今のご意見は、23区の職員としてはちょっと耳の痛い話ですが、ご存じのとおり、23区と一言で申しましても、区ごとに地域性、地域事情が違いますし、人口や人口構成も異なりますので、ある区の施策を他の区が取り入れた場合に、その施策がそのまま定着するかと言えば、必ずしもそういうものでもありません。自治体ごとの工夫は確かにありますが、今、おっしゃったような情報の発信や提供については、私どもの行政はまだまだ下手でございます。やっとホームページをつくって、クリックを何回かしないとそこの画面にいけないという状況ですが、情報としては、一応出しています。だから、もっと私どもが、大きな視野に立って、「いいことを一緒にやろうよ」と23区に働きかけ合うといいのかもしれないと思いました。
ただ、現在、23区で協力して一番力を入れているのは「若者の就労支援」です。これは、江戸川区がどうだ、新宿区がどうだということではなくて、若い世代の方々が働いてくれませんと、熟年者のこれからの高齢社会は絶対に支えられません。ですから皆で手に手を取って、これを23区で、最優先でやらせていただいています。 - シルバー人材センターの仕組み
会場C:朝倉さんにお伺いします。私は、浦安市の民生委員をしておりまして、これからどんどん増えていく熟年の方たちがシルバー人材センターのほうにお世話になることが多くなると思うのですが、朝倉さんのほうでは、仕事をした会員の方へどういうお支払方法をされていて、時給設定はどのようにされているのかについてお伺いします。
朝倉:私どもは、官庁、企業、団体、ご家庭等お仕事をくださる方を発注者さんと呼んでいますが、発注者さんとシルバー人材センターがお仕事の請負契約を結びます。だから時給という言葉はあまり馴染みません。たとえば、庭の草むしりであれば、大体10~15坪が一人1日手間という目安です。原則として、そのような形で請け負うのがシルバー人材センターの関わり方です。発注者さんから請け負った仕事をシルバー人材センターは会員さんに委任します。仕事が終わりましたら、シルバー人材センターは、会員さんから報告を受け、請負契約の金額を発注者さんに請求します。請求した金額が振り込まれますと、シルバー人材センターは、配分金を会員さんにお支払いする仕組みです。
ただ、シルバー人材センターの会員の方は、60歳過ぎから上は80歳過ぎまでいまして、このことが、市民の利用者(発注者)さんからの「仕事の速い人も遅い人も同じ料金なのか」とか、「植木の仕事だって、手の速い人、丁寧に仕上げる人といろいろである」とかのクレームにつながりかねません。そこは、私どもにとって悩ましい問題です。そこで、きちんとした見積もりや研修強化によって、不信感が出ないように努めています。 - 江戸川区における熟年による熟年の介護など
会場D:江戸川区における介護に関わるボランティア活動、ならびに区内の介護等の施設の状況について教えてください。
原野:そうですね。熟年者の皆さんは、元気でいることが一番ですが、なかには介護サービスをお受けになられている方もいます。熟年者が熟年者をお世話することは、暗に気持ちが分かるので一番いいとおっしゃる方がいます。
私どもには、「熟年介護サポーター」という組織があって、かなり大人数の方に登録をいただいています。それから、いろいろなボランティアの方の中には、施設へ行ってタオル畳み等のボランティア活動をされている方もいます。
江戸川区も65歳以上が13万人をちょっと超える人数なので、熟年者の方々のための施設も必要なものは計画的に進めています。特別養護老人ホームは、今、14か所、1,070名の方が入っておられ、待機者が850名ほどいますが、今年9月と来年1月に120床ずつオープンする予定です。この他、老健施設が10か所あったり、グループホームがあったりと、いくつかの施設があります。介護老人ホームのサービスについても、区内の介護事業者と連携して、在宅介護を支えています。ご多分にもれず、江戸川区も、課題を抱えながら、進めているのが現実です。
パネリストからのまとめのコメント
渡邊:それでは、今日の討論を踏まえて、まとめのお話を頂戴したいと思います。
- 新しい時代に合わせてシルバー人材センターの事業を推進
朝倉:シルバー人材センターを取り巻く環境ですが、65歳までの雇用が義務化され、企業が、年齢に関わりなく働ける環境整備を求められていますが、そのことが、結果として、シルバー人材センターの会員の減少、仕事の減少につながりかねません。そして、公共の財政が大変厳しくて、年々シルバー人材センターにおける公共の仕事が減っているのが現実です。公共の施設管理の仕事は、シルバー人材センターの会員が一番喜ぶところなのですが、これも指定管理への移行で減少しています。
そのような中で、シルバー人材センターが生きていく道は、今後、地域や一般家庭からのお仕事を中心に進めていくことにあると思います。
平成23(2011)年4月に新しい公益社団法人に私どもは移行いたしました。今後も高齢者が仕事を通じて、社会参加し、社会貢献をする場を一つずつ増やしていきたいと思っています。介護や育児や環境など、地域で何が足りないか、そこにスポットを当てた事業を展開してまいりたいと思います。高齢者の一人暮らし、あるいは二人だけの住まいが増えております。「地域力」が弱まっているところを、シルバー人材センターで埋めていくような事業をこれから頑張ってやっていきたいと思っています。
また、私どもは今後、国や自治体でその担い手を求めている、認知症高齢者などの暮らしや財産を守る成年後見制度にも取り組みたいと思っています。福井市シルバー人材センターは独自で2年間30名程度の成年後見の基礎的学習をしてきました。まだまだ事業化には勉強不足ですが、公益社団法人として、成年後見の事業ができたらいいと思っています。
いずれにしましても、私どもは、高齢者が地域の中で生き生きと輝いていけるように、時代の要請に応えつつ、いろいろな事業活動を推進してまいりたいと考えています。 - 高齢者こそ地域を職場に!
西山:社会参加に関して言えば、70歳ぐらいまでは就業にこだわっていいのではないかと思います。70歳までは健康な人は働く、そうでない人はきっぱりとボランティア活動に入っていくような社会システムへと変えていく必要があると思います。
それから、子育て支援に関しては、80歳でも元気な人はいますから、その人たちはソフトの面では子育てのパワーになり得ます。だから、生産年齢人口が減っていく中で、生産能力の高い現役世代の人たちには、現役の仕事を続けてもらう。そして、シニアは、取って代われるところはシニアに任せろという考え方で、就労以外の社会参加をすることが大前提になっていくと思います。
私自身、定年直後は随分悩みましたけれど、「就労」という社会参加はきっぱり諦めて、全てボランティア活動でいいと決め、地域に埋没して、地域そのものが職場だと自分を納得させて今日に至っています。それから13年経って、ようやく地域活動が大事だなということが分かってきました。だから、団塊の世代に、後を追いかけるように「地域活動に入れ」とか「就労を続けよ」と言うこともなかなか難題だと思います。でも、あと2~3年すれば、団塊の世代も私たちの仲間入りをしてくれると思いますので、努力を続けましょう。 - コミュニティの創造こそが重要
原野:行政の仕事の究極は何なのだと言われた時に、私はいつも「コミュニティの創造」だと答えています。全ては、お隣同士、ご近所同士が幸せに生活できるような環境をつくれれば、それが役所の仕事だと思っています。
そのための基本は何かと言えば、その地域にお住いの方々が、元気に、明るく日々楽しく過ごしていただくことです。それなら、元気であるために何が必要かと言うと、それが社会参加です。これがとても大事であると、私も認識をしています。
年配の方とお話をしていますと、「お迎えが来るまで」と言う言葉をよくおっしゃる方がいますが、この「お迎え」がなかなか都合よく来ないのが現実です。右半分だけお迎えが来たり、左半分だけお迎えが来たり、首から上だけお迎えが来たりします。ですから、そういう時に、助ける部分として介護保険制度とかはあるわけですけれど、何と言っても、健康管理が大事です。そして、お隣、近所と仲良くやっていくことが一番だと思います。今日参加させていただいて、改めて隣近所、隣り同士の大切さを実感しました。
まとめ ~今後の方向について~
渡邊:最後に、今後の方向について、若干のまとめをさせていただきたいと思います。
- シニア層の意識と社会参加
最初に、シニア層の皆さんのお立場からはこんなことが言えるかと思います。
まず、シニア層の皆さんには、社会の実態やニーズを客観的にありのまま理解していただくことが大切です。そして、シニア層の比率が、いま約25%で、そのうち4割ぐらいになり、政治のところではもっと発言力が大きくなることによって、社会を方向づける存在になりつつあることを認識してほしいと思います。
そのうえで、まず経済面、健康、介護予防面でシニアの方々自身が自立されることが大切です。考えようによっては、健康でいること自体が社会貢献ともいえます。
そして、自分のできることを一歩前に出てやっていただきたい。自己実現と社会貢献という2つのテーマが一致するのが理想でして、そうなるような社会システムの基盤づくりが大切と考えます。その点で、今日、パネリストの皆さんから多くの良いヒントをいただきました。今日のお話を発展させて、団塊世代の方の特性も考慮して、シニアの方に、これからどんな活動をしてもらうといいか、逆にどういう仕組みでどうアプローチすれば入ってきてもらえるか考えるのもいいかと思います。
次に、将来の社会を支えてくれる若い世代の方々、特に子育て中で奮闘しておられるお母さま方やご家族の方に(将来の社会のために、懸命にやってもらっているのだという気持ちも込めて)、是非とも温かい眼差しを差し上げて欲しいと思います。これだけで社会の雰囲気が随分変わるのではないかなと思っています。
また、あらゆる機会を通じて、世代間交流をお願いしたい。今日もたくさんの事例が紹介されました。シニアの方、お子さん、若い方々が一緒にいろいろなことをやる。その中で、本当にお互いに気持ちが分かってくるのではないでしょうか。江戸川区のいろいろなアプローチは、大変参考になると思います。そして、子どもは「社会の子宝」として見守っていただき、きちんと育つように支援していただければありがたいと思う次第です。
そして、今、申し上げたことは自分達だけではできないので、それらを実現するために必要な基盤づくりを、政治、行政、関連団体に是非訴え、促していただきたいと考えます。
若い世代の意志を政治に反映するために「もう一つの一票の格差」問題を考える一方、若い世代に、平和の大切さ、戦争体験を語り伝えることも大切であると思います。 - 行政、社協、NGO、NPOに求められる役割
続きまして、行政、社協、NGO、NPOなどの団体の立場からお話しします。
最もお願いしたいのは、シニア層の皆さんが参画し、役割を果たす、場づくり、仕組みづくりを早急に行い、シニアの方に参加を促していただきたいことです。別の表現をしますと、これからの社会をよくするために必要な、新たな仕事の場をつくり、──これらの多くは有償にしていただくといいかと思いますが、──シニアの方に担当していただく。これが自己実現と社会貢献の両立につながると大変良いと思います。
今日、福井市シルバー人材センターから紹介された、大変幅広く取り組んでおられる事業活動を参考にして、社協、NGO、NPO等も、社会のニーズを積極的に先取りして、それを満たすような事業を大いに加えていっていただきたいと考えます。
地域活動には、人材の発掘・育成も欠かせません。その意味では、江戸川区の「総合人生大学」とか、埼玉の「彩講会」の取組が参考になります。
元気なシニアの皆さんには、年齢を問わず、地域の仕事や活動に取り組んでいただく。一方、通常の雇用のところでは、若い人にできるだけ就いてもらって、将来の不安を払拭する、あるいは和らげる。このようになるといいなと思いながら、お聞きしました。
今日のお話を参考に、それぞれの地域で、各地域の状況に応じて、また、大局的な観点も忘れることなく、地域の実態にあった仕組みづくりを行っていただきたいと思います。
本日は、パネリストの皆さん、会場の皆さん、本当に長時間ありがとうございました。