高齢社会に関する行政施策の説明「高齢社会フォーラム・イン神戸」
「高齢者がいきいきと元気に暮らせるまちをめざして」
三木 孝
神戸市保健福祉局長
神戸市の三木でございます。
本日は「高齢社会フォーラムin神戸」ということで、内閣府の方でやっていただきまして、先ほど堀田先生の御講演がありましたように、これからの高齢化社会というのは今までと違う枠組みで構築しなければいけないということでございまして、今日はそのためのフォーラムです。
神戸市でも非常に危機感を持っております。20年前、震災があったこともありまして、他とは違う課題もあります。震災を経験した、あるいは震災を契機にボランティア活動をやっていただいている皆さん方も登場していただきましたし、もう既に午前中、表章を受けていただいた方々についても、一つは震災っていうのがきっかけになっている例が多いと思います。
私自身は、去年の12月に保健福祉局に戻りまして、震災の時と震災の後、平成10年までは保健福祉局で経理係長をやっていましたので、震災の時のいろんなお話は、一応、当時の民生局の事務責任者として経験しております。それから16年は他の仕事をしておりましたので、ちょうどその間に、今日のテーマの一つである「介護保険制度」が施行されました。私は戻ってから、介護保険の浦島太郎ということでお話させていただいていますが、介護保険の様々な問題、特に私が帰ってきた時びっくりしたのは、地域包括ケアという概念が出たり、あるいは、要支援者について給付事業から地域支援事業に移したりする問題はありますけれど、これはまた別の機会にお話させていただこうと思いまして、今日はテーマを「高齢者が生き生きと元気に暮らせるまちをめざして」ということでお話をさせていただいて、あと具体的な活動方法ないしは解決策については、後のパネルディスカッションで小田先生にまとめていただけると思いますので、私自身も参加をしてお話をお聞きしたいなと思ってございます。
○神戸市の高齢者の現状
ということで、今日は高齢者を取り巻く現況、神戸市の状況と、あと施策の三つお話をさせていただきたいと思います。
まず現況でございますけれども、もう既に堀田先生等からお話がありましたように、神戸の場合は、震災前から高齢化の人口も全国平均とほぼ一緒。私は前の仕事で神戸市の紹介をするときに、「日本の1%都市」という表現をよくしていました。大体人口あるいはその経済活動も含めて1%でございます。高齢化率も今現在25%ということで、国と一緒であると。課題はということになりますと、高齢者といいましても65歳までの方って本当にお元気ですから、75歳以上の方がどれくらい増えるかということですけども、これを見ていただいたらおわかりのようにまさに平成27年から平成37年の間に約4割増えるわけです。75歳以上の方の人口が65歳から75歳までの人口を追い抜いちゃうという事態になってまいります。75歳以上の方全部が支援を必要とする社会は成り立ちません。そこのところをどうすればいいか、今日は皆さんと一緒に考えさせていただきたいと思っています。
人口ピラミッドの場合はここにあります団塊の世代の方々の動向ですね、今65歳から69歳にいらっしゃるわけですけど、この世代の方々が75歳を迎えられるとき、支えるのは団塊世代のジュニアの方しかいらっしゃらないわけです。そしたら地域に誰が残るのだという話になると思うのです。もう一つ、高齢者が問題ではなく、いかに健康に暮らし続けられるかということです。やっと国の方が健康寿命をきっちりとるようになりました。
今までの健康寿命は、入院期間だけを注目していました。ところが最近発表されました健康寿命は、要介護期間もきっちり入れています。また、指定都市とか都道府県ランキングも発表するようになりました。
例えば浜松や、静岡は非常にデータがいいわけです。これからの高齢社会を考える時、健康の問題は外せないということを問題提起しますのと、神戸市の場合でもこの健康寿命をちょっとでも延ばすっていうのが非常に大事になってくるというふうに思います。
○一人暮らし高齢者の見守り
その中で、神戸の一つの特徴は、先ほど期せずして堀田先生の方から御紹介いただいたのですけれども、高齢者、特に一人暮らし高齢者についての見守りのお話です。表にありますように、平成7年、これは震災前の国勢調査がベースですけども、単身の高齢者っていうのは、全体の高齢者の2割弱。これが震災を契機にどんどん増えてくるのですけれども、ここを御覧いただきたいと思います。震災で旧市街地は被害が大きかったわけですから、そこの方が被災者になられて、高齢者が多いのですが、当初は避難所それから仮設住宅、その後、復興住宅へ行かれました。
仮設住宅の入居者の3割が高齢者であったという問題が発生したわけです。そのうち単身高齢者の割合が3割とこういう状況がありまして、非常に問題が起きました。当時の災害救助法の欠点ですけども、覚えておられると思うのですけれど抽選ですよ。ですから、お隣の人と一緒に仮設住宅へ行きたいというとだめです。またこれ復興住宅は我々、一生懸命建てたわけで、復興住宅に入ってもらいました。復興住宅が仮設住宅と違うのは、仮設住宅は「隣は何をする人ぞ」ではだめなのです。隣の物音が聞こえます。
ですから仮設ではそれなりのコミュニティというのがあったのですが、復興住宅は一般の住宅ですから、状況が分かりにくくなったわけですね。復興住宅高齢化率は仮設より高い、40~50%です。二つの問題があり、単身高齢者そのものが増加する、あるいは高齢者同士の世帯が増加するという問題と、その人方が従来のコミュニティから離れる、どこに誰がいるかわからない、あの人どこの人だろうという、困った状態が起きるわけです。それで孤独死の問題が出てきた。そうしたら行政に対して見守り活動は、震災前は民生委員の方あるいは友愛訪問グループの方々にやっていただいたわけですけれど、これが行政の仕事、こういう言い方になったわけでございまして、その中で見守りの体制の構築というのがこういう形で公的な施策で対応を迫られたという歴史があります。
こういう形で神戸の場合は見守り推進員、先ほど御紹介がありましたので、お話ししますけれども本来、見守りって言うのは地域ですべき、あるいは地域は当然持っている機能でしたけれども、やはり本来の状況に戻していかなければならないという課題がございます。
神戸の場合は復興住宅もどんどん高齢化が進みますし、一般も高齢化が進むわけですね。その中で介護保険ができたこともあって、平成12年に中学校区に「あんしんすこやかセンター」をつくり、見守り推進員という独自の職員を配置しました。それと、平成18年、特に高齢化率の高い公営住宅については、さらに高齢世帯の支援員というのを配置させていただきました。「あんしんすこやかルーム」と言っておりますが、さらにそれだけでなく、いろんな事業者の方に参加していただいた見守りシステム、あるいはガスメーターを利用したシステムというのもつくりまして、重層的な体制をつくってきたと思います。それに加えまして、区の社会福祉協議会がそれをサポートする。これはボランティアセンターも区の社会福祉協議会でやっていますので、それもやらせていただいたということです。
平成13年から高齢者の見守り調査を行い、見守り台帳を作っています。高齢者の単身の方と75歳以上高齢者の方の調査を民生委員さん中心に行い、それを見守り推進員さんと一緒にやっている。これは神戸市の特徴です。ただ残念ながら、復興事業は東日本大震災があったこともあって財源の期限が限られているということで、赤で書いた事業については、一応今年度までと、国の方から言われております。
そういうこともあって、我々は「高齢者見守りのあり方検討会」というのを昨年から開きました。行政の気持ちとしては、もともと地域でやっていただいたものなのですけれども、地域の方は高齢者だけじゃなしに、先ほど堀田先生も言われました子育て、これも支援が必要です。障害の方もどんどん増えています。という形で、ニーズが非常に増えていますので、体制を強化していく必要があるということと、先ほど言われたように、見守りっていうことで安否確認ということになりますと、すごく大層ですけども、気づきっていうか緩やかに見守る、あの人はどうしているのだろう、あれ今日は会わないな、こういうことから入っていただくことが非常に大事になっています。
見守り推進員は幸いにも今回の介護保険制度の改正で生活支援コーディネーターという形で、引き続き支援が受けられるだろうということもありますので、これを一つのきっかけ、起因にしまして我々は地域の支え合い活動というのを進めさせていただきたいと思っています。
○介護予防事業の取組
もう一つ、介護予防の話を簡単に申し上げます。介護の要因になった疾病をここに挙げましたけれども、脳血管の疾患、生活習慣病ですね、それと関節疾患、認知症、この辺が原因になるわけですけれども、「元気!いきいき!!チェックリスト」という、将来的に介護が必要になるリスクを自己チェックするシートがあります。それで見て、ハイリスクな人と、元気な高齢者って明らかに違いがあります。健康づくりへの関心の高い人、低い人によって差が出てきてしまうのです。これについては全市でも差があるのですが、WHOの神戸センターも支援していました日本老年学的評価研究機構と一緒にいろんな社会参加の項目、あるいは社会的な地位の差も含めて神戸市内で調査をしました。神戸市内で大体、1万人ぐらいの高齢者の調査をしたので、中学校区でいきますと100人ぐらいのデータがあり、かなり正確なデータですけれども、中学校区ごとの違いを見ていきました。
代表的な事例だけ御紹介しますと、過去1年間で転んだことのある人の割合が高い地域があるということです。神戸の場合は六甲山がありますので坂が多いところで転ぶ人が多いと思う方が普通ですけど、平たんなところで転んだ人が多いのです。これは何故かということも、考えていただきたいと思います。もう一つ、外出頻度が週1回未満の人の割合、これは公共交通機関との関係があるかもしれません。
それと喫煙。生活習慣病もがんもハイリスクですけれど、ニュータウンで喫煙率が低く、古い街で高いのかなぁという結果が出ています。ただこれは、2011年と2013年だけしか調査をやっておりませんので、今後続けてやっていかなければならない調査だろうと思っています。
○高齢者の生きがいづくり
こういう問題提起をさせていただいて、今介護予防事業は平成26年度から新しいいろんな事業をやりました。その一部を後ほど御紹介します。元気な高齢者の方は特に多様な趣味がありますので、介護予防事業と高齢者のニーズがなかなか合致しないので、参加者が集まりにくいのかなと思っています。それとハイリスクの高齢者の参加人数が少ないですね。
生きがいづくりは、貴重な財産になりますのは「神戸市シルバーカレッジ」です。先ほど「ほほえみ」も言われたのですが、あれは市民福祉大学が中心になっているのですが、震災前、非常に神戸市の財源状況のいい時に、こういう高齢者の生きがい活動の拠点をつくってあります。嬉しいことに、震災の時にすぐ大学生でボランティアグループをつくっていただいて今も、後で理事長に登場していただきますけれども「わ」というグループで、3分の1の方がボランティア活動、いろんな活動に参加していただいています。
今年度から我々国のモデル事業で、生活・介護支援サポーターの養成や、シルバー人材センターと連携した高齢者の介護人材、就労支援というのをやっています。介護保険浦島太郎の私から言いますと、実は前にやっていた事業です。その間16年ほど間があいたのですけども、再びやってみるとこういうことで、緩やかな見守りをまず地域の方にやっていただく。で、高齢者方にはまず御自身の介護予防に参加していただく。生きがいを持ってやっていただかなければいけないので、生きがいづくりも地域の中でやっていただきたい。
そうなりますと、あとは我々の方でプラットホームっていうのをいかにつくっていくかということでございます。そういうサポーターや、地域活動のプラットホームをつくることにより、支え合える地域社会をつくっていく、これが我々の課題だと認識しています。
私からは以上でございます。ありがとうございました。