パネルディスカッション「高齢社会フォーラム・イン神戸」
「社会参加を加速させるプラットホームづくり」
- コーディネーター
- 小田 利勝
(神戸大学 名誉教授) - パネリスト
- 堺 汎
(特定非営利活動法人 社会還元センター グループ わ 理事長) - 塚谷 睆子
(特定非営利活動法人 エイジコンサーン・ジャパン 理事長) - 中村 順子
(認定NPO法人 コミュニティ・サポートセンター神戸 理事長) - 溝田 弘美
(社会福祉法人弘陵福祉会 特別養護老人ホーム六甲の館 施設長) - 三木 孝
(神戸市保健福祉局長)
小田 もうこれまで貴重なお話、参考になるお話をされた方が多く、頭の中いっぱいになっているのではないのかなと思いますけれども、ここで改めてシンポジウムというかパネルディスカッション、「社会参加を加速させるプラットホームづくり」というものをやっていきたいと思います。
パネリストの皆さんを御紹介する前に、このパネルディスカッションの目的や課題を、簡単に説明させていただきます。
高齢者の新しい生活の仕方というか、社会への貢献ということが、今日のテーマになっています。そうしたことをどのようにしてやっていったらいいのかということで、プラットホームという話もありましたけれども、活動をする場所とかあるいはそういう組織というもの、どのようにつくり上げていくかということを考えていきたいと思います。
私も高齢者です。ここに並んでいる方の中にも高齢者らしき人もいますし、そうでない人もいますけども、おそらくそれぞれ多様な生き方をしていると思いますし、多様な生き方を楽しんでいるということが言えると思います。
そういう意味では、参加の仕方、あるいはプラットホームづくりの仕方、様々な面で方法や、道があると思います。今日、パネリストとしてここに並んでいる方々、皆さんそれぞれ独特の方法、あるいは考えで立派なお仕事をされている方ばかりです。お一人お一人は1時間でも2時間でもお話できる方たちなので時間が短くて恐縮ですが、この方々の活動の内容といいますか、そうしたものを今日は1人7分という、非常に厳しい中でお話いただき、その後、今日の課題を取り上げて、会場の皆さんの中からこれはどうだ、私はこういうことも知っているぞというような話を出していただいて、それを題材にして議論していきたいと考えています。
では、パネリストの方を御紹介します。
認定NPO法人 コミュニティ・サポートセンター神戸の理事長であられます、中村順子さんです。
そのお隣、特定非営利活動法人 エイジコンサーン・ジャパン 理事長の、塚谷睆子さん。
社会福祉法人弘陵福祉会 特別養護老人ホーム六甲の館 施設長、溝田弘美さん。
そのお隣、特定非営利活動法人 社会還元センター グループ わ 理事長、堺汎さんです。
先ほど御講演いただきました、神戸市保健福祉局長、三木孝さんです。
小田 以上6人で、パネルディスカッションを進めていきたいと思いますけれども、最初に中村さんから活動内容について御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いします。
パネリスト 中村順子氏のお話
中村 御紹介にあずかりましたコミュニティ・サポートセンター神戸、中村と申します。人の役に立っていい社会をつくる、これは堀田さんからのメッセージでした。そして新しい生き方をしてみようじゃないかということ。
私たちは活動の実践者として、そのような市民をいかにたくさんつくっていくかだと思います。中でも今日のテーマである高齢者、シニアの方の中でも特に男性というのは、大きなテーマになっていくと思います。
○新しい生き方の仕組みづくり、基盤づくり
しかしそう言っても、自発的になかなか活動が進みませんので、そのための仕組みづくり、基盤づくり、これがプラットホームだと思います。私は、コミュニティ・サポートセンター神戸、NPOを応援する、サポートをする組織として、震災以降、特にNPO法人を多くつくるというところに特化をしながら、一つの市民が主体的に市民活動に参加できるというステージ、一つのプラットホームをつくっております。現在神戸市では、1,000弱ほどのNPO法人が立ち上がって活動や、参加をしているというところです。
○私有財産を公共財産へ
まず私が着目しているのは、ピラミッド図ですけれども、神戸市の人口が155万、高齢化率が今25、これ13年度統計で24.3なのですが、要介護、要支援の方々が随分おられるわけですけれども、私たちが着目しているのは、非該当の元気な方です。元気な高齢者、自立をされている方という言い方も言えるでしょうか。この方々が神戸では25万人おられます。どの町でも大体調べてみると、高齢者の大体7割前後の方は元気なのです。何歳になっても元気な方々が実は非常に優秀な市民であるということには三つの要素がある。
まずは、非常に豊かだということ。時間的に豊かですね。24時間、365日、自分でタイムマネジメントをするという時間が豊かである。蓄積されたスキルだとかノウハウ、これは人生経験が長いので、当然その蓄積力がある。そして元気ですので、健康であると。この三つの大きな資源を持っておられます。こういう、自分の中に蓄えられた私有財産を、いかに公共財にしていくかということの転換を図るのがプラットホームの役割ではないかと思っています。
介護保険が改正になるということで、来年度から大きく介護予防の要支援の1、2の方のデイ、ホームヘルプの層の方々が介護保険の予防給付の枠ではなく、市町村事業つまり三木局長の責任と指揮のもとに利用料金が決められ、どういうふうな担い手をつくっていくのか。市民が欲しいサービスを市民がつくるというステージができてまいります。
これが介護保険の今回の大きな特徴で、そこにいかに元気な高齢者が参加をしていくのかということではないかと思います。
○介護予防、総合事業、地域支援事業の仕組みづくり
この図は、ちょっと複雑になっておりますけれども、私たちは研究会を構成していてこういう提案を神戸市にもしましたが、先ほどの元気な25万人の方々がいろいろ研修を受けたり、地域の資源のリストを調べたりして、自分の活動に見合ったところに行く、無ければ団体を設立したり、新たな地域支援事業として高齢者が生き生きと社会参加ができるようなステージをつくっていく、こういったことをプラットホームごとに連ねていく、連動させていくということを提案しております。そのうちの一つに、来年から始まります生活支援サポーターの話も出ましたけれども、いよいよこの11月から養成講座が始まるということで、70名のところが今日の段階でもういっぱいになってしまっています。
というふうな養成講座から始まって、いろいろ展開があるわけですけれども、こういった仕組みが公的なものと民間に分かれてしまっているところに、非常に問題があるのではないかという意識を持っております。
○市民の力による地域活動
次にお見せしますのは、新たな地域支援事業という市民が必要とするサービスを、市民がつくっていくのだということが、これから求められているわけですけれども、神戸市内ではもう既に幾つもの団体、組織が地域活動をしている。午前中の「グループ わ」に関連するシルバー人材センターもそうですし、NPOも頑張っているわけですね。その新たな地域支援事業ということを写真に示しているわけですけれども、観光ボランティアであったり、防災ボランティアであったり、それから居場所であったり、それから男の調理教室であるとか、それから介護施設を利用した集まりの場、喫茶やカフェのような集まりの場、こういったものはみんな震災以降に市民が自分たちの必要なサービスとしてつくり出してきたものです。ただこれは何も公的な支援もないままに市民が市民の力で行っているというふうな実態があります。
さらに引き続いて、北区でされています移送も、日中空いている介護施設の車両を活用しながら、地域の高齢者の交通手段にしていくというような、非常にユニークな手法でやられていたり、それから草抜をされていたり、それから調理を含めて介護保険でできにくいような活動を有償活動でしていくような生活支援サービス、こういったものは古くから神戸には根づいております。また、多くの外国人、8万人がおられ、その方々の言語の指導だとか、生活支援だとか、それから子供の学習支援、こういったグループも結構多い。ごみ拾いだとか、駐輪場の整理だとか、あらゆるところで高齢者、市民が活動しているという事態が見受けられます。こういった方々の共通項、午前中の御報告を聞いて共通しているなと思ったのは、自分が明快な活動の軸、やりたいことを持っていること。プラス、それが社会貢献のトッピングで、ちょっとした別の付加価値を持っていると。その付加価値の部分が、いつも人からありがとうと言われ、感謝をされているということ。これが最大共通項ではないだろうかと思います。ここが、元気のもとになっているのかなということを朝から感じておりました。
○官民でつくる新しい生き方、文化の創造
これからそういった活動を支え、仕組みとして、もっと官と民が一緒になって、大きな新しい生き方、つまり文化にしていくということが求められていくわけですけれども、今までお見せしていたように人生変わったという人が、もう神戸市にもいっぱいいるわけで、人生を変えるようなプラットホームというものが形成されていかないといけないと思います。
ちょうど今7分になってしまいまして、どうやってプラットホームをつくるのかというのを、今から申し上げたいと思ったのですが、とりあえず私はそのプラットホーム同士がつながっていないことが、今のプラットホームの問題ではないか。そして、民がつくっているプラットホームに、全く公の支援がない中で、これから介護予防にどう繋げていくのかと、そのあたりを後段のディスカッションの中で取り上げていただければと思います。以上、御報告でございます。
小田 ありがとうございます。見事ですね。 引き続きまして塚谷さん、よろしくお願いします。
パネリスト 塚谷睆子氏のお話
塚谷 塚谷睆子と申しまして、NPO法人エイジコンサーン・ジャパンの理事長です。私は、前身、英国総領事館の建設環境まちづくり商務官フィクサーとして、大型プロジェクトをずっと追いかけてきました。37年に渡ってこの仕事をやってきました。神戸でも震災後の復旧のため、英国からいろいろなサポート、または手助けをさせていただきました。北野の異人館のシュウエケ邸の漆喰工事の仕事とか、舞子浜の移情閣のタイルの修復、あと六甲アイランドにイギリスからロシアの輸送機エアロフロートを使って1,000戸の仮設住宅を持ってきました。大丸百貨店の前にあります時計塔とかガス灯とか風見鶏、これもイギリスから持ってきました。そういうことで、神戸とは関係が深いのでございます。そういった英国総領事館時代にイギリスを行ったり来たりしておりまして、英国の街づくり、それとか建設、環境、そして福祉の分野をかなり勉強させていただきました。
○エイジコンサーン・ジャパンの成り立ち
2001年、私が英国福祉住環境施設ツアーを組みまして、28名の日本の施設のオーナーとか、設計家とか、ゼネコンさんを連れて、英国に1週間のツアーをしました。
その中で、英国貿易産業省、DTIと言うのですが、そこで行われた高齢者福祉の分野で活躍する団体または企業のプレゼンテーションがあったのです。その時に、「エイジコンサーン・イングランド」のプレゼンを聞いて、度肝を抜かれました。こんなでっかいチャリティー団体、NPOが存在するのかと思いました。驚いたのは、もう約73年前、1940年に設立したのですけれども、チャールズ皇太子がロイヤル・パトロン。そして1,600の支部を英国中に持っておりまして、6,000名の従業員と25万人のボランティアが下支えをしております。
何をしているか、これも詳しく言うと時間が足りませんので割愛させていただいて、目的は高齢者、おおむね50歳以上フルタイムの活動から解放された方々が、人生の後半生活をいかに楽しく幸せに生きがいを持って過ごすことができるか。それに対していろいろの支援を包括的、ワンストップサービスとしてやっております。その活動も割愛させていただきますけれども、私自身も、すごく感動しまして、その年間収入が700億円もあります。従業員が6,000名、1,600の支部がある。こんな大きな箱はどうなっているのだ、自分が年をとったらこういうふうな福祉、または奉仕のできるチャリティー団体、NPO、NGOをつくりたいというのは、もうその時頭にありました。
帰ってきてからいろいろ考えて、私は2004年4月に定年退職しまして、その後、2004年の11月2日にNPOを設立いたしました。退職する3年ほど前から、ずっと「エイジコンサーン・イングランド」にアプローチしまして、「エイジコンサーン・ジャパン」と名乗らせてほしいということを言いました。はじめNPOの名前を考えました。NPOたんぽぽとかいろいろあったのですが、やはりこれはNPOエイジコンサーンがいいということで、3回ほど英国に行きまして、なぜ「エイジコンサーン・ジャパン」が必要なのかということを、二か国語で説明して、2006年の9月にイギリスに行った時にやっと認められまして、「エイジコンサーン・ジャパン」と名乗ることができました。
その後、「エイジコンサーン・イングランド」は2009年4月に「ヘルプ・ジ・エイジド」という2番手のチャリティー団体と合体いたしまして、今は、「エイジUK」という名前で活躍しております。この「エイジUK」、「エイジコンサーン・イングランド」は世界で2大チャリティー団体なんですけど、アメリカの「AARP」と同じように、非常に大きなNPO、NGO、またはチャリティー団体として知られております。私たち「エイジコンサーン・ジャパン」の活動のことですけども、今日お話しさせていただきますのは日本版第三世代大学U3Aの取組についてです。
○第三世代大学への取組
一つが今言っておりますU3A。もう一つは評価機関、これはグループホームとか小規模多機能とか、そして老健とか、デイ・ケアセンター、そして最近の社会的養護施設などの評価の仕事をしております。これにたくさんの高齢者を使っております。それと今、介護のトレーニング教本づくりをしております。イギリスの「エイジコンサーン・イングランド」は、今「エイジUK」なんですけれども、英国で最大の介護のトレーニングスクールを218持っておりまして、そこの入門書と、初級の高齢者の介護の教本のコピーライトをいただきまして、バイリンガルの教科書を今作っております。
元に戻ります。一番大きなことはU3Aです。日本の中高年の方々は概ね50歳以上の方々が人生の後半生活を、今まで会社勤めをしたり、趣味でいろいろとプロまがいの、知識、経験、技術をずっと積み立ててきたりした方が、突如定年になって、何もすることがない。それはとっても無駄なことであって、古老の知恵もたくさんあるわけですから、知識、技術、経験をもっと社会に出して、そして若い人たちとともにインター・ジェネレーショナルという、世代間交流が言われているのですけれども、高齢者は高齢者、若い人は若い人というのじゃなしに、高齢者も社会の中に入っていく。社会に入って、常に行く場所がある、交流する場所があるというのがとても必要ですね。そこでいろいろな方とまじり合う、そしてネットワークができる。U3Aは、ネットワークができるシステムです。
神戸のシルバーカレッジなんかとってもすばらしいです。そういう民間とか、地方自治体が、たくさん生涯学習をつくっております。でも、みんな名前も違いますし、なかなかネットワークをしにくいのですね。U3Aと言いますのは「ユニバーシティ・オブ・ザ・サードエイジ」、第三世代大学。第一世代というのは、生まれてから勉学に励んでいる時、第二世代は、一生懸命働いて家族を支えている時ですね。第三世代というのは、60歳以上、65歳以上、70または80前半くらいまででしょうか。まだ比較的元気があって、エネルギーがあって、自分の後半の人生を設計できる段階です。そういう方々が、もう何もすることがないのはとっても残念なことで、自分の健康も害します。U3Aをすることによって、参加することによって、健康にも自信がでてくるし、精神的にも生きがいを持つことができます。
U3Aというのは、何でもいいわけです。どんな講座でもいい、大学の座学でもいいし、文化吸収でもいい、好きなことは何でもいいです。そういうわけで、今U3Aを全国的に広める運動をしております。今現在、四つU3Aを持っております。一つは垂水の老人ホームの中にあります。それで東京、大阪に二つ、一番でっかいのがATCのITM棟の11階にありますU3A大阪です。高齢者もどんどん自主自立、社会参加していただきたい。社会参加をする一つの方法としてU3Aをみんなで立ち上げていただきたい。どんな小さなU3Aでもいいのです。それをネットワークすることによって、点を面に変えて、力を持っていって、みんなを幸せにできる、社会に貢献できると思います。
それが一つのプラットホームです。
小田 ありがとうございます。それでは溝田さん、よろしくお願いします。
パネリスト 溝田弘美氏のお話
溝田 社会福祉法人弘陵福祉会 特別養護老人ホーム六甲の館の溝田弘美です。よろしくお願いいたします。
私は、高齢者が元気になるものは笑顔が一番だと思っております。画面に映っておりますこれですが、笑顔をつくるためにこのかわいらしいアザラシのロボットがあって、六甲の館には3台あります。という六甲の館の紹介ですが、今日はアメリカのNPOのエネルギーを、プラットホームづくりの考え方に、参考にしていただければと思います。
○阪神淡路大震災と911同時多発テロ
では、なぜ特養の施設長がアメリカのNPOって思われた方いらっしゃると思いますが、実は二つの転機がありました。1995年の阪神淡路大震災をきっかけにアメリカのNPOを学びたいと思い、アメリカに渡り、その後住んだニューヨークで、実はこのテロに遭いました。ニューヨーク市に住んでおりましたので。その時びっくりしたのですが、ニューヨークで何を見たかといいますと、ばらばらだった日本人のコミュニティが動き出したのです。市民活動をして、若い人たちが動き出して、今やこのNPOの代表は、市長から表彰をもらうぐらいになっております。
それ以上の年配の方たちは私も含めて、領事館ですとか、日系人会、専門職市民が一緒になって、ニューヨークで当時認知症ですとか疾病で路頭に迷う日本人高齢女性がいらっしゃったので、そういう人たちを救済するニューヨーク高齢者問題協議会というのを立ち上げたりしました。日本だとすぐにこうはいかなかったと思うのですが、なぜかアメリカだと、するっとこういう活動ができてしまった。そこが私の気になっていたところなのですが、アメリカのNPO、それを知ることでちょっと探ってみたいと思います。
○問題の根本原因根絶を目指すアメリカのNPO
じゃあなぜ、アメリカのNPOなのって言いますと、ピーター・ドラッカーという、経営の神様って言われているアメリカの方が「非営利組織のNPOの経営」っていう本を出してらして、アメリカ社会はアメリカの非営利組織を理解することなしには理解できない。アメリカの成人の大半にとって、それは真のコミュニティを構築するもの、それほど根強いNPOって一体何だろうということですが、230万団体、NPOがあります。もう、毎日毎日、NPOが生まれているような状態なのです。
今のアメリカのNPOのトレンドと言いますと2012年に「世界を変える偉大なNPOの条件」という本が出されていますので是非それをお読みいただきたいのですが、抜粋しますと「NPOのリーダーたちは、飢餓、貧困、教育の崩壊、気候変動など人類を苦しめる最大の問題の解決を望んでいる。彼らは、幅広い社会変革を成し遂げずにはいられない。傷ついた社会に絆創膏を貼るのではなく、問題の根本原因を根絶したいのだ」、ということです。
○NPOの政策アドボカシー
根本原因を解決しなければ、一生懸命NPOでサービスしても、結果何もならないのではないか。では、それを政府まで政策提言をして、やっていこうというのが政策アドボカシーと言われるもので、これをアメリカのNPOは多くしています。
実はこれの研究がしたくて私はアメリカに行ったわけですが、アメリカのNPOの皆さんも、市民への直接サービスの提供として開始されました。ところが、ある時点で制度そのものを変化させるには、政治のプロセスに影響を与えなければならないことを学習し、アドボカシー活動はいつでも始められるので、政策活動を始めた、政策提言を始めたということです。
例えば、手短に言いますと、企業が工場から有毒ガスや有毒物を出しています。川が汚染されました。健康被害が起こっています。そのおかげでホームレスになった人もいます。今までNPOですと、環境保全しましょう、病人を救済しましょう、ホームレスを救済しましょう、のサービスでした。もうちょっといってフェイスブックで呼びかけて、会社の座り込み、デモをしましょう、不買運動をしましょう、その会社の製品を買わないでおきましょうということだったのですが、それはもしかしたら時間とエネルギーの無駄かもと思い始めた人がいます。
なぜなら会社は、騒ぎが収まった後に、またちょっと場所を変えて、有毒ガスを出しちゃうのですね。それで原因の根絶をしないとだめだということで、今のNPOは政府議会へ環境規制に向けて、先にもうその会社が出せないように政策を変えちゃうっていうことですね。と同時に、その企業とパートナーシップを組んで、エコ教育のキャンペーンをしたりします。もちろん費用は企業持ちにさせます。させなくてもいいのですが、そういうような活動をします。で、組み合わせですね。政策提言をする、政策アドボカシーと、地域でサービス・プログラムをします。それは地域の問題をいつもチェックしているからです。
次に、このサービス・プログラムと政策アドボカシーを行っている高齢者団体、AARPを紹介します。
会員数は3,700万人で、サービス収入は年間1,400億円くらいありまして、政府から勝ちとった政策です。高齢者施策は高齢者医療保険ですとか、年齢による雇用差別撤廃法などがあります。2週間ほど前のニュースですが、高齢者の年齢が撤廃され、このおばあちゃん、ニューヨークのブルックリンで、100歳で算数の教師をされています。この人、やめたくないと言っているので、何歳まで先生を続けるか、わからないっていうような状態です。
○高齢者団体AARPの活動
私はAARPに直接談判して、50歳以下でしたが働かせてほしいっていうことで行かせてもらったのですが、すぐ連れていかれたのがニューヨーク市だったのです。たくさんの政策をニューヨーク市に申し立てていらっしゃいました。もちろん国内のみならず、国連、世界でも影響力を持たれていました。AARPのビルにヒラリー・クリントンさんが国会議員になってから、オフィスを引っ越してきて、一番初めに挨拶に行ったのが、AARPでしたから、やはりすごく強力だなと思いました。これが2002年にマドリッドで開かれた国連の国際化に関する世界会議です。そして映っているのが、AARPの会長さんです。同時にNGO連絡協議会、堀田さんと樋口恵子さんが代表になられている協議会の方もいらっしゃいましたので、一緒に参加させていただきました。堀田さんはAARPで誰か紹介してほしいと言われたので、すぐにフォーラムを一緒にさせていただきました。その時、内閣府の方も来られていました。
○高齢者の教育レベル
そのように強力なNPOですが、世界にはAARP以外にも、「HelpAge International」というような大きなNGOがあり、先月「Global Age Watch Index」という高齢者がどれだけ恵まれているかの、国別ランキングを出しています。日本は9位で、アメリカは8位になっていました。医療、日本第1位です。すばらしいです。アメリカ第25位。この数字を覚えておいていただきたいのですが、ちょっと悲しいのは教育レベルですね。アメリカは、中等・高等教育を受けた率が95.6%、日本は64.1%。それに比例するように、貧困率はアメリカの14.6%に対し、日本は19.4%になっています。
これがなぜ重要かというと、高齢者の教育レベルというのは貧困率の低下につながっている、貧困になることを防いでくれるということですね。それを直面する課題、例えば震災が起こったり、リーマンショックが起こったりしたらどう対応するかその判断能力を、高等教育などで培っているのではないかということ、それから政府が大きな政策を出した時、それがいいのか悪いのか、どういうふうに改訂すればいいのかというのも、教育によって得られる。教育レベルがとにかく高いことが、今後の高齢者の生活に大きく影響しているっていうことですね。
2002年に日経新聞の方が取材に来られたのですが、「高齢者を守るアメリカの巨大NPO、自立促し社会に貢献」とあります。この自立を促すということが、AARPを知る上で、大きなキーワードになると思います。
○日本の介護保険の必要性
アメリカ人から見た疑問、その1。日本をアメリカから見た気持ちになって考えたいと思います。介護保険は本当にすばらしいのか。よく皆さんに「日本にはこんなすばらしい保険がある」と言っていたのですが、そこで疑問がありました。
自立を促す介護政策、理念と規模、とってもすばらしいのですが、しかしなぜ、世界一ヘルシーな和食の国で、世界一医療費が整った日本で、日本ナンバーワンです、アメリカ25位です、8.9兆円も使って介護保険が必要になる人をすでに何百万人も日本で生み出してしまったのか、これがアメリカ人にとって大きなクエスチョンです。
○孤独死に対する見解の相違
アメリカ人から見た疑問、その2。一人暮らしの高齢者が自宅で亡くなりますと、日本では哀れな孤独死、一人で生きる力がなくて、自立心もないという。ところが、アメリカで亡くなりますと、名誉の自立死と言われる。一人で自立して生きることに誇りを持ったアメリカ人、これぐらい違いができています。医療制度が低い分、こんなに違ってくるのかなということもあるのですが、これはまた後の議論で、皆さんにもしていただきたいと思います。
○教育と根本原因の根絶
ここで少し提言です。皆さんも言っておられると思いますが、世代間を超えた教育ですね。絆創膏を貼る政策、サービス増加は保険料とか税金増加につながってしまいます。それに終わっていないか、政策の理解と判断を是非、アクティブシニアの方にはしていただきたいと思います。
もちろん、一番必要なのは、子供の時から問題の根本原因となる予防教育ですね。それは健康だけではないと思います。環境も汚しちゃいけない。なぜ汚しちゃいけないのか、なぜ貧困になってしまうのか。そういう予防教育を、子供の時からしていかないといけない。一に教育、二に教育。それは社会変革へ向けたことですが、ネット社会でありますのでフェイスブックもあります。そういうものを活用して、阪神大震災20年後の私たち神戸から、ここにいる皆さん、アクティブシニアの方々が、原因の根絶である予防教育を発信していただければと思います。以上です。
小田 ありがとうございます。引き続きまして、堺様、お願いします。
パネリスト 堺汎氏のお話
堺 堺汎でございます。
私のボランティア活動参加のきっかけは、神戸市シルバーカレッジに入学しまして、そこを卒業した後、「グループ わ」というNPO団体に参加しました。集まったメンバーが自主的に物事へあたり、あるいは問題を解決しようとする意欲を持った人々の集まりであったところに、魅力がございました。
原点は、神戸市のシルバーカレッジにありました。入学するや、私は何の経験もない合唱団に入部しまして、介護施設などの訪問演奏会に参加するうちに7年が過ぎました。この間、先輩から多くのことを学びました。間もなく20年になる阪神淡路大震災の時の仮設住宅での助け合いや、あるいは神戸市北区にあります「しあわせの村」で温泉施設が開放されて、毎日のように数千人の方が詰めかけられた。こういったところにボランティア参加をしていた私どもの先輩が、皆さんから口々に「ありがとう」と声をかけられたと。先輩の中に、生活での心配事や困ったことを親身になって聞いてくれるというボランティアが生まれてきたというふうに聞いております。今はやりがい、使命感、生きがい、そして認知症防止などの言葉で、私たちにこの精神を引き継がれてやっております。
○神戸からの東北支援
今年7月2日から5日間、宮城県の名取市、あるいは女川町を男女合わせて10名ほどで訪問しまして、名目的には東北支援と言うのですが、平均年齢70歳の活動の一端をピックアップしました。元気老人に編集していただきお持ちしましたので、東北支援での活動ぶりを映像で御覧いただきながら、感動を共有していただきたいと思います。それでは映像スタート。
平成7年に阪神淡路大震災があり、神戸の私たちは内外の多くの方々に御支援を受けました。4年前の23年3月、東北大震災が発生、その直後から私たちも「グループ わ」として義援金や救援物資を集め、その7月には第1次の救援チームを南三陸などに派遣しました。以後、今年7月第5次支援チームを派遣、支援して、交流活動を続けております。宮城県の名取市あるいは女川町も、今は復興工事で町中が工事現場になっております。山を崩して、復興住宅を建て、その土砂で町全体を堤防で盛土するというふうな計画でございますが、名取は6メートル、女川は高いところで10メートルも土盛りするそうです。
神戸からお手伝いに来ましたと言っただけで、「ありがとう、私は震災の時こうやって逃げて助かった」、悲しい話がつながってきます。顔見知りになった子供たちが元気で交流を待っていてくれることが一番のお返しでございました。
最近は神戸から提案するイベントに住民参加を組み入れ、あらかじめ先方との相談が不可欠になってまいりました。来年1月には、女川の須田町長を神戸に招きまして、復興にかけるお話をお聞きする予定になっております。心の交流と言う意味では映像にございますように、今踊っている方も、飛び入りの方でございます。本当に喜んでいただいております。7月に訪問して感謝をされた宮城県の女川町での心のきずな交流を御覧いただいております。会場は2日間とも満員で100人くらいあふれまして、1日目の料理教室、関西風味の餃子、たこ焼き、おにぎりを皆で作りまして、昼食をともにし、踊り、ゲームを楽しみ、心の癒しを行いました。2日目のスポーツは、子供からお年寄りまで誰でも楽しめるディスコンというゲーム、これはカーリングのように板円盤を床に滑らせて近さを競うスポーツですが、これを楽しみまして、最後は1位に勝ち上がりました女川チームと神戸から行きましたチームとの決勝戦になり、一投ごとに全員がわき上がりました。非常に盛り上がり、最後には、また来てね、また来るよ、の大感激で終わりました。
○高齢者の3K意識とボランティア
かつて私は、シルバーカレッジに在校中、新入生の前で話をさせていただく機会がございました。老人は3K意識を持ってほしいということを訴えました。まず1番目に健康でございます。2番目に心でございます。3番目には金というふうなことでこの3Kを取り上げました。いずれも生活の中に溶け込んでいるために、特別な思い込みにはなっておりませんが、それぞれに意味がございます。健康は社会との向かい合い。心は自分と周囲への配慮。金は生活の継続。オレオレ詐欺に負けないぞというふうなことも大切なことでございます。そういったことも自分に言い聞かせながらやっております。
社会貢献への取組は、御存じのとおり老人の長寿に伴いまして、65歳以上で健康な人が増加しております。ボランティアグループをこれからの活動として、地域住民との交流連携を進めまして、地域への貢献、そして浸透を、これができるように人を育てること、社会ニーズを取り込むこと、最後に無理な活動はしない、こういったところから老人の再活躍の場は、身の周りにあるんじゃないかと訴えております。
これからも人材の活用と地域NPOとしてできる役割を最大限に生かしていきたいというふうに考えております。
ちょうど、画面も終わりに近づきました。本当にこういった工事現場のようなところで毎日生活している方がたくさんいらっしゃいます。これからも御支援をよろしくお願いいたします。
ご清聴ありがとうございました。
小田 ありがとうございました。三木さん、お願いいたします。
パネリスト 三木 考氏のお話
○介護予防カフェの実施
三木 私の方からは、問題提起という形でやらせていただきますけれども、我々の方でやっています介護予防カフェ、実はこれ昨年の10月、私がまだ来る前だったのですけども、神戸を代表する外資系企業のネスレ日本の方から「是非私どもの介護予防事業を、一緒にやりたい」というお話があったので、介護予防カフェだけではなく、こういう介護予防プログラム、あるいは教室、啓発活動、これを一緒にやっていこうということで、これをPPIというのですけども、協定を企業と一緒に締結いたしました。
中身については、実は本当にシンプルなものでございます。ネスレ日本というのはそこに書いていますように、バリスタというコーヒーマシンを一つのツールにして、高齢者、特に元気な高齢者の方の集いの場をつくりたいと。それと合わせて、ネスレは世界的な、いわゆるそのヘルスケアの企業ですので、健康情報の発信をさせてもらいたいというのが向こうのお話で、我々にとってはこういうお話っていうの、本当に願ったりかなったりの話なので、是非やってくださいということで、今始めているわけでございます。
介護予防カフェについては、基本的には5名以上のグループの方に受けていただくわけですけども、自主性によって運営してくださいということになって、代表者はカフェマネジャーと名づけて、いろんな企画もやってくださいと。ただ、それについてのお手伝いは、バリスタを提供するだけではなしに、例えば介護予防に関する情報提供、あるいはネスレ日本の方で依頼があったら、ちゃんとその栄養等の講師も派遣しましょう、あるいはそれで不足する場合は、神戸市の方で講師とか情報の提供もさせていただきましょうと。こういう形でやらせていただいている新しい仕組みでございます。
既に7月から8月にかけて、説明会を6回やりましたがかなり好評で、今のところ122組の方に聞きにきていただいて、29か所で実施するというふうな形になっています。私どもの方では、震災から「ふれあい喫茶」というのを大体地域福祉センターとか復興住宅でやっていますが、これは被災高齢者とかあるいは地域の方のコミュニティの場合なのですが、介護予防カフェは介護予防に絞ってやらせていただいている。来られる方は非常に楽しそうにいらしています。
○介護予防プログラム「元気!いきいき!!プロジェクト」
このプロジェクトの役割分担は何があるかっていうことですけども、ネスレの方もヘルスケアビジネスですからオリジナルプログラム、特にウォーキング中心にいろんなプログラムを組みたいと言っています。で、私どもの方はこれを一つの契機に「元気!いきいき!!プロジェクト」という形で、集って、生きがいを持っていろんな活動をするだけじゃなしに、いろんな健康づくりの仕組みもやりたいということで、それに合わせて、筑波大学の山田先生にお願いして、下肢の筋力をアップさせる目的の簡単な体操を考慮していただいています。ウォーキングをいきなりやりますと、幾つかの方にとって非常にリスクも高いということで、誰でも参加できる、かつ介護予防の効果があるような運動っていうのをやっていただいて、ある程度効果を見ようと。こういうことから始めたいと思っていますけども、これは一つのきっかけづくりだろうと思いますので、実際にこれをどうやって運営していただくかというのは、皆さんにお任せしていますので、是非、今日の場でもこういうことも一つの議論のきっかけにしていただけたらということで、紹介させていただきました。以上でございます。
ディスカッション
小田 ありがとうございます。5人の方の活動内容や考え方が紹介されました。
中村さんから元気高齢者で、時間は豊かと言いますか、そういう方が多いというお話がありました。それから堺さんの中に出てきました、「健康、心、金」ですか。これは、活動の条件なのでしょうか。
堺 この三つは心構えとして、必要なことと。老人としてやっていくために、皆若い人は老人を見ているよと。だから、こういったところを注意してほしいという意味を兼ねて、お話させていただきました。
小田 中村さんも同じですか。高齢者、元気、時間が豊か。
中村 この辺の高齢者分析は、全く同じだと思います、現状。
小田 現状同じ。偶然のように同じになりましたね。
中村 これは事実がそうだからだと思います。
小田 何歳って言ったらおかしいけれども、ずっと老人で元気で、というわけには、なかなかいかないと思うのですけれども、期待されるのはどれくらいまで。
中村 自然、自分の暦年齢ですね、いわゆる自然年齢は、もう一切忘れるということだと思います。60歳過ぎると非常に個人差が出てまいります。その中でも、特によく外出の機会がある人、多くの人と会っている人、人に会うだけではなくてそれがその人、あるいはその地域の活動とかに関連していて、人から感謝される立場、こういった条件を整える人は、本当に元気で長生きされているのですね。さっきの堀田さんも80超えておられるわけですよ。というふうに、周りからいっぱい見られることで、先ほど出ました健康寿命ということを、これから60歳過ぎたら自分の年齢にしませんか、みたいなことを始めてもいいなと思います。
小田 それは先ほど出てきましたサードエイジ大学ですよね、塚谷さんがおっしゃっていた。私の理解では、このサードエイジっていうのも、特に何歳からっていうのがない捉え方ですよね。
○サードエイジの定義
塚谷 ないですね。イギリスとか、アメリカもそうだと思うのですけれど、50歳以上で、もうフルタイムの活動から解放された方々、その方々が社会参加していくということで、私もロンドンのU3Aを見学させてもらったのですが、一番高齢の方で、103歳の方が毎日、月火水木金と授業に出てきていらっしゃるのですね。U3Aで参加している方々も、50代から100歳までいるのですが、参加している人たちを見て、自分が60代であったら、70代だってこういうふうな状態になるのかとか、70代だったらこういうことを勉強できるとか、自分はこれから歳を重ねるに連れていろいろな問題が出てくるけれども、そういう人たちを見ていると、やっぱり80代が元気にしておられるとか、100歳でもこんなに元気にしているということで、自分たちもすごく元気になってくるし、いろいろな人生勉強をさせていただく機会をもらえます。
U3Aという第三世代大学のネットワーク化は日本のみならず世界各国で広がっておりますので、37か国3,000ぐらいのU3Aがあります。その中でも2016年の10月に大阪でアジア太平洋地区U3A連盟の国際会議をしますので、それまでに私たちは10か所ぐらいU3Aを立ち上げていきたいと思っておりますので、どなたでも結構なので、小さくてもいいのですが、そういうネットワークづくりに是非協力していただきたい。みんながきっと元気になりますし、介護保険も要らない、本当に精神的、肉体的に、健康になる、社会に自分の生きる場所を持っていると。期間も関係ない、何歳になってもいいわけですし、試験も何もない、ただ楽しく学ぶことができたり教えたりできる、そういうU3Aのネットワークを、日本全国のみならず、世界各国で結びつけたい、そういう壮大な計画を持っているんです。ここに参加しておられる方でも、数名、3名ぐらいで立ち上げることができるわけです。神戸のシニアカレッジみたいな大きなところではなく、もう数名から始めて各地区にもそういうところができれば、日本全国もつながっていきますし、世界各国もつながるのです。名前が同じということで非常にネットワークしやすいシステムですので、是非参加してほしい、社会に自分の場所をつくってほしい。家にじっといるだけでは絶対にだめです。今まで培ってきた「知識、経験、技術」を、社会のために生かしてください。自分が住みたい国、地方、地域、そういうのを自分たちが自主、自立で参加していくことは、これから大切だと思います。
最後になりますが、エマーソンさんのボランティアリズムというのは、他人を助けようとすれば、自分をも助けることになる。これは人生で最も美しい報酬の一つである。ボランティアは誰でもできるわけです。他人を助けるということは、自分を助けるということになるものですから、ボランティアとして体力もあるうちに、社会のために尽くしてください。参加してください。それが私のメッセージです。
○高齢者の政治的有効性感覚
小田 今いろいろ、社会貢献と言われた。アメリカのAARPをはじめとして、アメリカの高齢者の参加の仕方といいますか、特に社会変革という話がありましたけども、日本の高齢者はどうなのでしょう。
実は私、高齢者の政治的有効性感覚というので、神戸市とか兵庫県を対象にして調査をしました。政治的な有効性感覚というのは、政策とか制度を変える力が自分にはあるというふうな感覚です。高齢者の方の投票率はものすごく高いのですが、持っている政治的有効性感覚っていうのは、そのアメリカの調査と比較しても、日本はかなり低いです。「何で投票に行くのかな」と不思議なのですが若い人は投票に行かない。お年寄りは投票に行く。だけど有効性感覚は、若い人も年寄りもあまり変わらない、その辺アメリカはどうなのでしょう。社会変革、NPOの活動がそれに目指すと言いますか、そういう根本的なものがないと表面上では解決しない。これはそういう政治的有効性感覚が高いということでしょうか。
溝田 これも教育に大きく関係していると思いますが、NPOのマネジメントを勉強しにアメリカの大学院に入りました時に、リーダーシップ教育ばっかりだったのです。で、リーダーとなってどういうふうにNPOでしていけばいいのかということを。小学校の教育を見ましても、「リーダーになるためには」ばかりで、そのためなにかというとやはり政治を抜きにしては考えられないっていう、それが根強く、社会にあると思いました。
小田 なるほどね。中村さん、その辺どうですか。
中村 これは物すごく関心ある課題で、もっと身近な活動に引き寄せて考えますと、今日のプラットホームでも、あるいはいろんな事例が出ましたけれども、多くの10人、20人、30人、50人というグループには、必ずリーダーがいますよね。だけどもどういう研修をしても、じゃあリーダーになってあなたが団体を立ち上げてくれますかと言った途端に、物すごく低くなります。私の感覚で1,000人に1人ぐらいしかいないのではないかと。
小田 1,000人に1人?
中村 リーダーの人はね。
小田 ほとんどゼロですね。
中村 誰かがやると言えばついていく人いっぱいいますけども。つまりそれは、団体の運営というリスクを負うわけですよ。
小田 ということは、逆に言うと、誰かが間違った方向へ進むと、その人についてってしまう可能性があるということですか。
中村 違います。それが投票行動と同じで、投票することによって、「もう政治家に任せた」と。「もう政治のことはあんたしてね」と。けれどこれからの高齢社会は、それはだめですよと。私たち自身が、高齢者の当事者として参加して、責任と担い手の両方のことをやっていかなければいけません。そこで随分変わると思いますけども、今まではなかなかね、会社組織も役割分担はあるけど責任が全員に及ぶような組織形態にもなっていないので、あまりトップのリーダーが育ちにくい環境にありました。だからこれは地域社会にもろに反映しています。これからは、変わっていかざるを得ないし、変えたいというふうに思います。
小田 なるほど。その辺行政の代表として、三木局長はどうですか?
○固定化されない高齢者像
三木 皆さんが高齢者の議論をする時、私もだんだん、高齢者の仲間入りに近くなってきたので、つくづく思うのですけども、やっぱり高齢者像っていうのが固定してないっていうことですね。
私はずっと団塊の世代に指導されて、市役所に入って34年間、生活してきましたから。団塊の世代っていうのは、日本のリーダーシップを握っている世代なのですよ。ですので、ただ今言われたように、アメリカのNPOとか、リーダーシップ論っていうのは、ほとんどの日本人の方ってなかなか違和感を覚え、これは震災のときのボランティアの行動でも同じです。
ですので、日本的なリーダーシップで、これからの高齢者のあるべき生きがい活動というのが出てきて、団塊の世代の方一番人口が多いですから、発言力も強いわけです。それは、個人的に私はもう自立できるのではないかという期待をしています。
小田 会場に団塊の世代の方いらっしゃいますか?大体、昭和22年から24年生まれの方。いませんか?いたいた、私もそうですからね。こう見えて、まだ若いんです。老けて見えると、いつも70過ぎですかなんて言われてしまうのですけれども、まだまだ66歳です。
それで、団塊の世代が塊になるから社会の問題だと、日本の高度経済成長を支えてきて、一生懸命走ってきた貧しい層が一生懸命勉強して、安い学費で大学に学ぶことができた、そういう世代ですよね。だけどそれが塊になっちゃって、扶養するのが大変だとかですね。
そうかと思えば、今日内閣府の参事官が言っていましたが、団塊の世代に出てきてもらわないと困る。本当に出ていったら、当時の学生運動のことを知らないな。恐ろしいことになるぞ、なんて言わなかったですけれども。
○サードエイジ大学の在り方
そういう意味では、塊がどう動くかっていうのは、これからすごく大きな課題になるでしょうし、その塊のリーダーになっていくのは誰かと。その塊を支えていくのは、どういう人たちかということで、サードエイジ大学がありましたし、AARP、それからプラットホームの中村さんの話がありましたし、行政の期待までありました。それからシルバーカレッジ、あるいは兵庫県の場合はシニアカレッジと、名前は少し分けているのですね。一緒になればいいと思うのですが、やはり予算の違いとか、どっちの補助金が多いとか、俺たちの方が敷地を持っているとか、いろいろそういうのがあるのではないかと思うのですけども、そういうところで学んだ方が、これからこうなっていくと。
日本のシルバーカレッジにしろ、シニアカレッジにしろ、真面目ですね、受講の方が。私はカナダへ行きまして、そういうものを見てきたら、真剣に何をやっているかといったら、お金を賭けているカードゲームなのですよ。それを毎週集まってやっているかと思えば、お弁当を作って1人暮らしの方をボランティアで回っていくとかです。他はダンスを踊ったり、サードエイジ大学も、イギリスのサリー大学へ行った時には、同じように人気があるものは何かといったら、美術。歴史探訪とか言って、遊びばかりなのです。
日本人の、日本の高齢者はすごく真面目ですよね。皆様こうやってずっと座っているでしょ。多分、外国でこれやったら、すぐに「うるさい」とか、手を挙げて「違うだろう」という話が出てくるかもしれないです。ところが日本人はすごくおとなしい、真面目。もっと不良になっていいのではないかなと、私は思います。日本の高齢者は期待され続けている。美しくあれとかですね。汚くたっていいと思うのですが、きれいにしようといったって無理ですからね。どうですか堺さん?
堺 私も髪の毛、随分減って……。それはそれとしまして。今おっしゃったように、私どものシルバーカレッジの中でも、散歩会は非常に人気があります。今月はどこそこの山へ行く、お寺へ行く。黒田官兵衛のどこかへ行くだとか。これはカルチャーセンターの延長かと思うような講座もやっております。
同じ人が片方でそういったことをやりながら、片方では学習支援へ行き、信号機のところへ立ち学童の見守りをしている。二面性、三面性を持ちながら好きなことをやっているというところが、不可思議なところですね。
小田 アメリカで勉強されて、長くアメリカの高齢者を眺めてきたっていう観点から言うとどうですか、今の堺さんのお話と比較して。
○アメリカの高齢者とボランティア
溝田 先ほどの話に戻りますが、AARPに入れるのは、初めは65歳位だったみたいですけれど、どんどん年齢が下がってきて50歳以上になったらAARPという感じで、クリントンさんも、ヒラリーさんも、オバマさんも、みんな50歳になると、メディアがこぞってAARPの会員になりましたってそれぐらいイベント的に、ブームになっている感じですが、団塊の世代の方もうまくそういうセッティングをすれば、心が動いて頑張ってくれるのではないかという感じがします。
アメリカはしかけが多く、いろんな楽しいイベントが毎日あり、高齢者がうまくおだてられて、ボランティア活動をする、というようなところがありますので、是非団塊の世代を動かす、何か大きな神戸発信モデルをやっていただければなと思います。
小田 なるほど。私も48歳になったときに、このAARPに嘘ついて、50歳っていうことで入ったのです。アメリカは外国人だろうとどこに住んでいようと、いろんなメールとかニュースが送られてくるので、そういうところが何かすごい。
もう一つは、1,400億円ですか?予算を考えてみれば、日本の高齢者を4,000万として、1人、1,000円出したら、すごい額ですね。政治家の20人や30人は、平気で国会へ送り込める。
けれどそういう発想というのはあんまりないのですが、AARPはそこにまず選挙に行ってお願いすることが票集めの大きないわば圧力団体みたいになっているってことですから、日本の高齢者の団体では、あんまりそういうことを聞かないです。今日も、助け合いとありましたが、非常に近くでの発想なのですかね。どうですか、中村さん。その辺活動されていて。
○学びのプラットホーム・シルバーカレッジ
中村 政治とカネは今話題になっておりますけれども、政治と活動ということについては私もよくわからないので、その辺は距離をおきたいというふうにも思っているのですが。
ちょっと話題を変えまして、先ほど塊の世代、もっとちょい悪になれというふうな話がありました。シルバーカレッジの話も出ましたが、シルバーカレッジも結構遊びのグループがいっぱいあって、それが遊び過ぎているのですよ。私から見ると、遊び過ぎていて3年間も遊びますよ。4年目になったら卒業ですけれども、もう今さら地域活動と言われてもしんどいなとかね、割とそういうふうな気分というものは蔓延しているように思います。
小田 そうしたら何かシルバーカレッジの。
中村 いやいや、今日提案したいのですけども、今日はプラットホームづくりということで、シルカレは神戸最大のシルバーの学びのプラットホームですよね。あそこの校是は、「再び学んで他のために」という立派なものを持っているのですけれども、「再び学んで仲間のために」とはならないように、それをどう地域還元するのか。今その地域活動団体との線路が何もないのです。それぞれ9区ぐらいから来られていて、一番多いのは北区、西区ですけども、シルバーカレッジを修了すれば、それぞれの区に活動者登録をする。それだけでも私たちは助かります。そこに新たな人的な資源が見えますので。そういうこともないままなので、ついつい仲間化してしまう。仲間の活動に終わって、広く不特定多数の社会活動に向かっていかないというような問題があるのではないかと思うのですよね。どう思われます、堺さん。
堺 一部、当たっているかと思います。このシルバーカレッジ、私も卒業生として一言弁護しますと、シルバーカレッジっていうのは老人に仲間入りする団塊の世代の方々や地域にとっては貴重な存在です。これはなぜかといいますと、豊富な知識経験は当然あるのですが、やはり定年退職者、あるいは子育てから解放された方々にとって、老人性の頑固だとか、あるいは思い上がりだとか、悪い言葉になりますがそういったところから脱却する、すばらしい再教育の場だというふうに、私は思っています。
小田 矯正教育ですね。
堺 はい。それで目が覚めて、ボランティアに向かおうという勇気が湧いてくる。これは非常に良いきっかけになっています。21年前に考えられたこの関係者の方にこの場をかりまして、改めて敬意を表したいと思っています。
小田 三木さん、一言ありますよね、それに応えられるということで。
三木 中村さんがおっしゃったようにシルバーカレッジの方は遊んでいるのではないか。確かに、コースでみますと趣味のコースがあります、音楽とか、陶芸とか。それは、物すごい人気です。
それで我々がやってほしい福祉、環境、定員割れなのです。これは当たり前で、第三世代っていうことで、自分のために勉強する。今さら働くためのスキルを勉強する人ってやはり少ないわけで、豊かに生きようとするスキルがある。私は男性ですから、しかも役人ですけど、役に漬かっていますから、やはり仲間が役所の人しかいないわけですよね。そういう男性が次、例えばシルバーカレッジに入って、堺さんみたいに楽しく合唱クラブに入られて、これは仲間づくりで地域活動をやられるという例は、僕はかなり多いのではないかなと。そういう意味でいったら、社会参加の一つの手段にはなっていて、かなりニーズがあるのかなと。いつも市会から、もっと地域活動と環境を増やせ増やせと言われているのですが、いくら増やしたって集まらないのです。そこのところの需要と供給をよく考えたいなと思っています。
小田 年とったら結構正直になるのですかね、そういう意味では。自分のやりたいことをせっかくだからやろうということになるのでしょうけれども、何か一言ありますか。
中村 シルバーカレッジの続きなのですが、確かにこの頃、本当に社会活動に参加されるグループが増えてきました。それは中に実習教育を入れておられる成果が少しずつ見えてきたと思います。ただ卒業されて、いろんなグループができて、地域に帰ってくるのですが、ここでちょい悪になれないもう一つのバリアがある。公的な施設では、1本飲めない、アルコールがつかないのです。男性を呼び込もうと思ったら、絶対に1本つけないと来ない。最後反省会とかをして、よしじゃあちょっと飲もうかという場面に飢えているのです。サラリーマンをやめると飲み友達が近所にいませんから、そういうものも公民館だとか公的な施設の中で、「ちょっとくらいだったらいいじゃないか」と、何のために乾杯条例が作られるのかわかりません。公的な施設でそういうふうな、少し和むようなことも、これからの新しい社会づくりの中には、エッセンスとして入れていく必要があるのではないでしょうか。
小田 それは言えるかもしれない。それは新しい制度ですよね。今までの足かせになっていたもの。それ、行政の役割大きいですね。一杯飲ませるか、飲ませないかで随分変わってくるという。
堺 随分世の中変わってくる。
小田 三木さんどうぞ。
三木 今、コーヒーまでですけども、おっしゃるように火曜日に乾杯条例ができました、議員提案で。ただ、僕もアメリカへよく前の仕事で行っていたのですが、やっぱりアメリカですと会議をやった後、すぐ軽く飲みますよね。日本人の悪いのは、「飲んでしまう」わけです。やっぱりそこは、女性には違和感があると思います。その辺は、皆さん、特に団塊の世代から、変えていただけたらと思うのですが。
小田 日本人のそのアルコールの摂取の様式というか、マナーを変えないといかんという話らしいですね。
○団塊世代に期待されるコーディネーターとしての役割
塚谷 それと、団塊の世代というのは、今まで、時代の転換期で常に波を起こしてきました。新しいワークスタイルも歳をとってくると頑固になってきますけれど、団塊の世代の人は、まだ頭がやわらかいというか、そういう方々は、まだ新たなことに挑戦するエネルギーも残っておりますよね。そのためそういう人たちが、何回もU3A、第三世代大学のことを言うのですが、イギリスでは、この講座の中に地域の問題を討論する講座もあります。そういう場合、地域の問題、例えば高齢者がカップラーメンしか食べていないという場合、地域の方々または他のNPOさんと一緒に、農家からふぞろいの野菜を買ってみんな一緒に2種類ぐらいのランチメニューを作り、歩けない人に関してはミールズ・オン・ウィールズと言うのですが、運んでいくことで、コミュニティビジネス、CBとよく言いますけれども、団塊世代の人は特にリーダーとなって、先駆けてやるトリガー、仕掛け人、コーディネーターって言うのですが、イギリスでもそういう人がなかなか少ないのですが、団塊の世代の人たちは、まだそういうエネルギーもあるし、何かしようかという意欲もあるので、地域の問題を事業にして、コミュニティビジネスとしてやれば、ちょっとお金も入ってくるし、やりがいもあって、もっと積極的に社会参加してもらえるようになるのではないかと思っております。
小田 それでは、どなたでも構わないので、御意見、質問、ありましたらどうぞ御自由に発言してください。要するに、これこそ参加なのです。いま参加しないとできないです、いつ参加しますか、今でしょう。どなたか、お願いします。
(会場A) 私、シルバーカレッジのOBなので、大変興味深くお話をうかがっておりました。結論から申しますと、中村順子さんがおっしゃったとおり、遊び過ぎじゃないけれど、仲間意識が強すぎるんじゃないかと。私もそうでした。ただ、いきなり実務から地域社会貢献へ、いきなり頭を切りかえるのとても難しいので、シルバーカレッジで勉強して、遊んで、他のためにという、それを3年くらいかけてマスターして、地域社会に貢献するという意味では、すばらしいカレッジです。
私も70歳になり目覚めまして、資格をとって、ヘルパーをやってみようと思ったのですが、残念ながら社会がなかなか受け入れてくれなくて。70歳という年齢と、男性であるという理由で6か所断わられ、7か所目でやっとヘルパーの仕事につくことができました。やってみたらモテモテで、お年寄りの方に。年齢が接近しているというのと、年いった方々は、若い男性好きですから。私はその中で若かったので、とても楽しく、多少貢献できたといいますか、時給800円ぐらいもらいましたが、すばらしい体験をしました。
小田 いや、すごいですね、拍手ですね。
○健康寿命の試算方法
(会場A) ありがとうございます。もう一つ、先ほど中村順子さんが、健康寿命を自分の年齢にしたらいいということで、すばらしいと思ったのですが、健康寿命を自分でどうやって知ることができるのでしょうかというので、神戸市の場合、健康寿命が78点何歳で、日本で一番健康寿命が長いのが愛知県か静岡県か72歳とかなんかですね。神戸市ってこんなにすごいのかと思ったけど、なんか、算定基準が全然違うらしく、そういう意味で、自分の健康寿命というは将来どうやって知ったらいいのかなというのを、御質問させていただきます。
小田 ありがとうございます。中村さん、何か語れますか。
中村 私も最後に提案をしようと思っておりました。神戸医療産業都市で、三木局長は随分辣腕を振るわれたわけですけれども、そういうお金持ち相手の医療もいいのですけれども、一般市民向けに神戸市における健康年齢測定値のような割り出し方ですよね、チェックリストなんかもあると思うのですけれども、そういうものを医療産業都市のすばらしい知識をお持ちの方々のネットワークでつくっていただいて、当てはめて神戸で高齢になって仕事が要るときは、その基準で履歴書を書くようにすればいいですよね。どうですかその考え、可能性を聞いていいですかね。
三木 前職のことを言われてしまってドキドキしているのですけれども、おっしゃるように神戸の場合、最先端の医学者がおり、この方は治療だけでなく、予防にも興味があります。認知症でもリハビリに興味がある方もいます。
我々が、介護予防カフェを何でやっているのかと、厚生労働省の方で介護予防を科学的にやっているような気配があまりないですので、今言われたように健康寿命も、例えば土地によって大分尺度が違うのではないかと、こういう問題点は惹起されています。
ですので、2年前ぐらいのデータと、私が今日出しましたデータは全く違います。介護の期間を入れてなかったというのがあるわけで、この辺は、神戸からも提案したいなと思っています。特に健康チェックリストは、65歳以上の介護保険の1号被保険者にとっては非常にお邪魔なものらしいのですが、それでも物すごく回答率は高いです。認知症に関して言うと先端医療の研究機関で、そのチェックリストだけで、論文が一つ書けたみたいですから、一生懸命考えていきたいです。また、市民病院にもいい先生がいらっしゃるので、神戸大学の先生と、市民病院の先生と一緒にやっていきたいなと思っています。
小田 活動能力の指標とか、健康寿命の指標とかいろんな指標づくりというのは大変で、指標によって随分結果が変わってくるっていうのもあるので、いろんなものを参考にしていかなくてはならないと思います。まだいらっしゃいますか。もう一方、二方。
堺 今の話に関連しまして、私ども「グループ わ」では、大阪大学さんと連携しまして、老人の心の病、あるいは心の変化、歳とともにどういった精神状態になっていくのかということを、追跡調査されている集団でございます。これは任意でここ数年続いておりまして、今のようなお話で、精神面から見た老人の動向というのですかね、そういったものを研究されているチームがございます。認知症もさることながら、各分野でこれから取り組まれるのではないかと思います。
○全員参加型の高齢社会に向けて
小田 ありがとうございます。結局は、その本人、あるいは家族が健康で、元気で、できるだけ長くというのが一つの基本でしょうし、そうしたものがなければ、社会参加ということを考える気力も、実際の活動する体力もないわけですから、それをまず支える条件は何だろうかということも、社会参加を促進していく上では非常に重要で、そういう意味ではこれからのプラットホームは、元気で、経済的にもゆとりのある方たちだけで形成されていくというわけではなくて、そうでない層も取り込めるというか、あるいは関与できるようなものも求められてくるという感じがします。
それではもう一度パネリストの方にここに残したいというところを出していただきたいのですけども、三木さんからお願いします。
三木 今日は触れなかったのですが、私どもは介護保険の要支援の仕組みが変わるというところで、今日お話のあった、高齢者の方のサービスをする側としての参加、これが鍵だと思ってございます。うちは子育ても一生懸命やっており、若い方が必要以上に高齢者のサービスに手をとられるという、都市としても難しい話なので、高齢者の方で支え合う、地域の中で支え合うというのが一つの基本だと思いますので、是非そういう仕組みを皆さん方御提案いただいて、我々も応援させていただこうと思ってございます。以上です。
小田 ありがとうございます。続いて、堺さんお願いします。
堺 私も参加型の高齢者という意味で、例えばマンションの管理組合だとか、あるいは自治会、それから老人会、婦人会、いろんな形で従来からの会が地域でございます。お祭りの推進の会だとかございまして、最近やってやろうという方が極端に減っております。PTAもしかりです。そういったことを、ここで団塊の世代の方に奮い立っていただいて、やるぞという形で盛り上げていただきたいなというふうに思っています。どうか皆さん、足を引っ張らないようにしていただいて、応援しているという形でお願いしたいなと思います。
小田 ありがとうございます。続いて、溝田さん、お願いします。
溝田 私、ニューヨークにいました時に、老人ホームを随分調査いたしました。その時、特養って言われるナーシングホームでは、1泊5万円するような、大理石張りのすばらしいホームがありました。1泊5万円ということは、ひと月で150万円ですね。当然払えないので、皆さんそういうところに入らなくていいように頑張っているという。何もないから頑張れるっていうところもあるので、是非毎日の生活に不満を言わずに、自分で何ができるのだろう、何が自立につながるのだろうということを考えながら、笑顔で頑張っていっていただきたいと思います。
小田 ありがとうございます。
塚谷 何回も言うのですけども、やはり例えばU3Aという学びと教えの場、こういう団体だけじゃなしに、シルバーカレッジさんがたくさんありますから、外に出ていく機会を作っていくことと、家にあまり閉じこもらないで、あんまり悩まないで、みんな社会に自分の場所を持って、交流をして、そして元気に生きていっていただきたい、それが精神的、肉体的にも健康になることですから、頭を使って遊びながらでもいいですから、もっと社会に出てほしい。家に閉じこもらないでいろいろな人と交流を図っていただきたい。私たちU3Aはそういうシステムですので、是非参加していただいて、元気で健康寿命を長くしていきたいと思います。
小田 ありがとうございます。
中村 新しい生き方をするというふうなことで、テーマが進んだと思います。プラットホームということ。私は市民の方と、それから行政の方に二つお願いがあります。
一つは市民の方、今25万人の元気な高齢者がいらっしゃるのですが、1割の方も活動をしておられないと思います。私は、当面1割の方が社会活動に継続的に参加していただけるような柔軟なプラットホームをつくっていきたい。個人の市民は、私有財産を公共財に変えていくという中での取組が必要かなと。
行政の方は、まさにプラットホームの整備というのは非常に格差があるわけですね。従来、伝統的な団体、あるいは事業の出し方にしても、福祉は社協さんとか、地域がらみは地域福祉センターだとか、決まりきったところに出していた。でも、今回の介護改編は違いましたね。あらゆる団体に等しく情報を出されて、だからたくさん手を挙げたし、「よーし、やっていこう」というところが、もう順次参画をしてきていると思います。そういう意味において、行政は公平、公平とよく言われるけれども、もっとこのあたりで公平に見てほしいというふうに思います。
そういう中で、お互いができないことを行政、市民が協力をし合いながら、本当に20年前にね、あの時は無自覚に助け合ったわけですよ。これを意識的に仕組み的に助け合うような神戸市になったらいいなというふうに思います。
小田 ありがとうございます。そうですね、神戸市がそういう意味での最先端都市ですかね、医療先端もそうですけども、そういう意味での先端ということですね。
いろいろお話が出てきました。少子高齢化っていうのは、避けることができない現象だと思います。私自身は、いろいろ分析してきた結果から、社会が豊かになったこと、これが人類積年の願望であった長生きと、それから豊かな生活を実現させたので、生活が豊かになればなるほど、人口は高齢化していくという、これが事実ですね。ですからもう避けようがない。もし高齢化をあるいは高齢者問題を避けようとしたら、高齢者の寿命を決めなきゃならない。何歳になったらもう終わり。これできないです。じゃあ、貧しさを選ぶかと。これもできない。
国の統計の予測で、1,500年後に日本の人口は1人になるのですね。どんなにあがいても、1,500年しかもたないと、今の状態で行ったらっていうことですね。その過程でまだ、1,500年あるのだから、何とかしなくちゃいけない。でも高齢者の数も割合も増えていくとなれば、もう高齢者が社会の中で何かするしかないっていうことになるわけですね。今までは扶養される、支えられる側だったけれど、今度はそれだけじゃなくて、自分たちが生産年齢人口と言われる若い人たちのパートナーにならざるを得ない。パートナーになるにはどうしたら、何ができるかということが、今日いろいろ出てきたと思います。年金の年齢を上げる、では、労働力として働けというのも、一つの流れとしては先進国であります。けれどそれだけの高齢者を、労働市場が受け入れてくれるかというとそうでもない。そうすると、働かなくても食べるだけの条件を与えて、後は他の貢献の仕方があるだろうっていうことを、考えていかなくちゃいけない。もうそれが、今日ここで言っている全員参加という意味ではないかなと思うのです。
それぞれの得手不得手があるはずですから、みんな同じことをやるわけにはいかないので、不得手なものを無理してやるということは、高齢期にはしんどいことです。得手なものを選んで、自分がそれを伸ばしていく、それを伸ばしていけるような条件を周りがつくるという、こういうことがこれから必要になってくるのではないのかなと思います。
社会参加というのは、私から見れば一つの流行になっていますけども、一種の強迫観念のように、何か参加しないといけないみたいだぞと、家の中で私みたいに今でも一生懸命データを分析したり、難しい本を読んだり、たまにはネットで将棋をやったりしているのですが、閉じこもりはいかんなんて言われたら、ちょっと生きる術がなくなるので、そういう生き方もあると。それも許せるような社会はどういう社会なのかっていうことも、みんなで考えていかないと。さあみんな手をとって外に行きましょうって、みんなが外行っちゃったら、どんな社会になるのだろう。俺も社会参加するから、仕事したいから職をよこせって本気になって、みんなが大声を上げて、そういう運動したら社会はそれを受け入れてくれるだろうかって、そういうことまで考えないと、簡単に全員参加ということも言ってにこにこして終わるわけにはいかないのではないかという気がします。
ということで、皆さんに私は拍手をしたいと思います。拍手をどうぞ。どうもありがとうございました。