第2分科会「高齢社会フォーラム・イン東京」
「多世代からみたシニアの意識改革」
- コーディネーター
- 松田 智生
(三菱総合研究所 プラチナ社会研究センター 主席研究員・チーフプロデューサー) - パネリスト
- 菊池 一弘
(東北を緩やかに長期的に応援する会 代表) - 髙平 ゆかり
(マイスター60 取締役 シニアビジネス事業部 部長) - 中嶋 美年子
(三菱地所 開発推進部 エコッツェリア担当)
松田 みなさん、こんにちは。第2分科会のコーディネーターを務めます三菱総合研究所の松田でございます。本日はよろしくお願いします。
この分科会は新しい試みを考えています。それは、今日ここにいるパネリスト、高齢社会フォーラムといいながら65歳以上の人は1人もいません。テーマは「多世代からみたシニアの意識改革」ということで、この分科会を進めたいと思います。若者、女性、私みたいなミドルから見たシニアへの期待、あるいは、こういったことをこれから一緒にやりたいということを中心にお話をしたいと思います。
コーディネーター 松田 智生氏のお話
お手元の資料と画面を見ていただければと思います。自分の紹介ですけれども、今、三菱総研で超高齢社会における地域活性化を専門として仕事を進めています。年は、今年48の年男です。世代でいうと、ドラマの「半沢直樹」ってありましたよね。あの世代です。バブル世代でございます。会社でいうと、困った役員と、すぐめげちゃう若者、困ったお客さんに挟まれて、いつか倍返ししたいと思っているようなミドル世代だということです。今、国の委員をやったりですとか、『シニアが輝く日本の未来』といったような本を書いて、アクティブシニアについて研究をしております。
○シルバーからプラチナの社会へ
今日の狙いですけれども、「多世代からみたシニアへの期待と課題の明確化」ということです。僕は高齢社会の誤解があると思っています。それは何か。高齢社会というのが、高齢者のためだけの社会だという誤解です。高齢社会というのは高齢者の会ではない。高齢社会というのは、実は子供や若年層や僕みたいなミドル世代、あるいは多世代、子育て世代、若者、ミドル世代を含めた多世代のための成熟した社会、これを高齢社会という。今、僕たちは三菱総研の中でプラチナ社会と言っています。シルバー社会はシルバーシートのイメージですよね。お年寄り、施しを受ける。でも、シルバーはさびる。シルバーよりも上質なものはゴールド、ゴールドよりも上質なものはプラチナ。さびない、輝きを失わない、上質な社会を目指すべき高齢社会、プラチナ社会、それはシニアだけじゃなくて、多世代のための成熟した社会だということです。
今日、シニアの地域デビューということを考えています。その中で成功するシニアもいれば、失敗するシニアもいる。シニアが失敗しないためのデビューとは何かということと、世代間でシニアの貴重な経験を分かち合い、あるいは多世代の経験もシニアと分かち合いましょうという趣旨です。そして、理想の高齢社会を実現しましょうということでございます。
皆さんにお願いしたいことは、こちらの2点です。一つは担い手視点。今日来ていて、このフォーラムが終わって、自分の地域社会に戻ったとき、自分はどうしたいかという担い手視点。あるいは、今日ここに来ていないけれども、自分の友人やお隣さんをどうさせたいか。あるいは、若い人もいます。若い人であれば、自分のお父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんにどうなってほしいのかという担い手視点が一つ。
もう一つは、キーワードはモチベーションです。高齢社会で大事なものはモチベーション。皆さんもあるでしょう。モチベーションが高まる瞬間。いわゆる「何とか冥利に尽きる」でしょうか。どうですか。どういったときにモチベーションが高まりますか。
(男性) 自分のやったことが評価されたときとかですね。
松田 認められるというときですよね。いかがですか。どういうときにモチベーションが高まりますか。
(男性) こういう有意義なセミナーを、よかったよと聞いてくれる人たちがたくさんいることです。
松田 うれしいですね。いかがですか。どういうときにモチベーションが高まりますか。
(男性) 単純に褒められたときですね。
松田 うれしいですよね。そういう承認されるということ。いかがですか。どういうときに自分のモチベーションが高まりますか。
(男性) やっぱり自分がわかってもらえたときでしょうね。
松田 そうですよね、理解してもらうとき。そういう感覚、モチベーションが大事なんですね。ここで話す私のモチベーションも大事なんです。皆さんがしらっと聞いていると、私のモチベーションも高まらないんですね。目をつぶって腕とか組んじゃっていると、もう全然モチベーションが上がらない。今日、私が話す中で、そうだな、あるいはパネリストが話す中で、そうだなと思うときは、お願いがあります。大きくうなずいてください。本当にそうだなと思うときは、2回大きくうなずいてください。そうすると、我々のモチベーションも高まります。
○高齢化する日本
では、こちらを見てください。これは「エコノミスト」で数年前に出た表紙、「Japan’s burden」と。「burden」というのは「重荷」ということです。子供が日の丸を抱えてつぶれそうだと。これは何を意味しているか。日本の高齢社会です。高齢化率が25%を超えて、もう日本はあかん、海外はこう見ているわけです。でも、そうでしょうか。高齢化は果たしてピンチなんでしょうか。私はこれをチャンスに変える視点が大事だと。悔しいじゃないですか。海外から日本はだめだと思われている。そこが重要なポイント。
そして、今日考えるキーワードを幾つか。25%、これは何の数字かわかりますか。どうですか、25%。あるところで聞いたら、体脂肪だという人がいてびっくりしましたけれども、どうですか。
(女性) 65歳以上。
松田 そのとおり。高齢化率。
60歳、これは何の数字かわかりますか。どうですか、隣の方。
(女性) わかりません。
松田 どうですか。いかがですか。60歳というのは何のキーワードだと思いますか。
(男性) 還暦。
(男性) 定年。
松田 定年が今、60から65になろうと。でも、実はこれは、ある年の日本の平均寿命。いつだと思いますか。1950年の平均寿命が60歳ですよ。人は1950年は60で死んでいた。と考えると、今日、ここを見渡すと、既に60を超えた方が多々おられる。今、2014年になると、80を超える世の中になっている。660万人、これは団塊の世代の数です。1947年から49年生まれのベビーブーマー。今、子供というのは年間103万とか104万しか生まれません。でも、この世代というのは年間二百数十万人も生まれていた。その方々が次々とこれから地域社会にデビューしていくわけです。だから、子供の公園デビューよりも、シニアの地域デビューのほうがよっぽど大事だと。
38兆、これは何の数字だかわかりますか。どうですか。38兆円、いかがですか。
(男性) 医療費。
松田 医療費、いいですね。さすがですね。パッと出てきて。国の医療費ですよ。では、税収はどのくらいあるか。どう思いますか、税収は。
(男性) 50兆ぐらい。
松田 いやいや、税収は40兆。アベノミクスで45兆円になりましたけれども、お手元に38/45、38/40と書いてください。これを平たく言うと、日本というのは、月収40万の人間、45万の人間が、38万円を医療費に払っている家庭なわけです。9割、85%以上を医療費に払っている。そういう家庭は、食費や光熱費や住宅費、教育費、払えないですよね。ではどうしているか。1,000兆円も借金しているわけですよね。その38/40問題を解決するのは、やっぱり医療費を抑制する。それはシニアが元気でいるしかない。それから、新しい産業を作る。アクティブシニアの産業、あるいは多世代交流の産業を作るということがポイントだと。
1万人、これは何の数字かわかりますか。年間、何かで死んだ人。どうですか。いかがですか。
(男性) 自殺。
松田 自殺は3万人。減った。交通事故は5,000人を切ったんですね。1万人というのは、お風呂で死ぬ人。入浴死。これはきちんとした統計は出ていないんですけれども、要は、住設機器とかが調べたところでいうと、脱衣所が寒いでしょう。風呂が熱いでしょう。だから、血管が縮んで開くからヒートショック。また出てきて寒いという。交通事故で死ぬ人が5,000人以下の国が、風呂場で1万人死んでいる。だから、高齢社会というのは、ピンチであり、チャンスであり、その課題を解決することが大事だということ。
直近のシニア調査、これは三菱総研でやったものですけれども、60代女性の主なストレス、病気、地震、子供、経済、1位は何だと思いますか。
(男性) 夫。
(男性) 旦那。
松田 女性にも聞いてみましょう。どうですか。60代女性の一番のストレス。
(女性) 夫。
松田 こちらの女性はどうですか。
(女性) 主人。
松田 そのとおり。答えは夫なんですね。そして左側、リタイア後に一緒に過ごしたい相手。男性は夫婦でいたいと思いながら、女性は1人か友達といたい。ここに悲しい老後のギャップがある。でも、これを大変だというのは誰でも言えるので、どう前向きに解決するかというのが今日のポイントになります。
○シニアの地域デビュー
もう一つ、シニアの地域社会デビューというテーマでいうと、これは去年の12月、NHKの「クローズアップ現代」で団塊パワーを活用せよというのがありまして、そこでゲストで出たんですけれども、得てして失敗してしまうシニアの方々の特徴。これは、実際、我々はたくさんのシニアにインタビューした中で、本当にうまくいかない、嫌われているシニアにテレビに出てもらおうと思ったんですけれども、断られまして、さすがNHK、NHKが誇るエキストラ陣が迫真の再現ドラマをやってくれたんですね。
例えばこういう人が自治会やコミュニティで嫌われる。一つは経歴自慢。「俺は○○建設の部長だった」とか。後ろの女性、嫌な顔しているでしょう。雑用を押しつける。「コピーとってきて」と。「老眼だから140%コピーで」とかね。ちなみにこの方、余りにも演技がうま過ぎて、ロケの当日、本当にみんなから嫌われちゃったという。
あと、なぜか団塊世代って学生運動をやっていたせいか、敵がいないと燃えない方が多い。すぐ派閥を作りたがる。これは女性もその傾向がある。あと、男尊女卑。女性がリーダーだと不機嫌になる人。どうですか。こういうところで思い当たるという人がいる場合は、軽くうなずいてください。実はこういう人は会社にもたくさんいます。
次に、だめな飲み会、こういうことをやっている自治会はだめだと。自慢話と武勇伝で終わっちゃう。
さらに、言葉のキャッチボールが大事だといいながら、言いたいことを一方的にぶつけるドッジボールになっているですとか。
大事なのは、過去の自慢話ばかりの人はだめ。昔の裃(かみしも)を脱げない人はだめだと。大切なのは、今、何かに夢中であって、今、汗をかいて恥をかいている人。ゆえに、アクティブシニアは過去を語らず今を語るということでございます。ここが、今日、私から申し上げたいということです。
では、ちょっと長くなってしまいましたけれども、これから各パネリストの方々から、実際に今進められている仕事から見て、シニアへの期待と課題といったことをお話ししていただきたいと思います。まず最初は、東北を緩やかに長期的に応援する会の代表の菊池一弘さんです。
パネリスト 菊池 一弘氏のお話
菊池 初めまして。東北を緩やかに長期的に応援する会の代表をしております菊池と申します。
松田さんが年の話から始めてしまいましたので、私も年齢の話から。私も年男でございまして、ことし36歳になります。ちょうど一回り、松田さんの下という形になります。今回、若手のポジションで呼ばれたんですけれども、36歳、どっちかというとそこまで若くないかなと自分なりには思っているんですが、一応若手で呼ばれたのは少しうれしいかなと思っております。
簡単に自己紹介させていただきますと、昭和53年生まれ、岩手県釜石市出身でございます。大学がちょっと変わっているところに行っておりまして、中華人民共和国の北京外国語大学という4年制の大学を卒業しております。現在、本業は「株式会社そのさき計画」という貿易とイベント等を行う会社を経営しております。そのほかにいろいろやっておりますが、それは後ほど説明させていただければと思います。基本的に全て、いろんなことをやっていますけれども、コミュニケーションエンジンとしての場の創造と運営ということで、場を作ってどうするかということをテーマに活動させていただいております。
「世界を少しだけ面白く」と書いておりますけれども、これが私の活動原理でございまして、職業や社会的立場、国籍などの違い、この断絶を越えて、毛色の違う人々が集まる場を運営して作ってきております。なぜそういうことを始めたかといいますと、私の場合、震災の影響がやはり大きかったんですね。私の出身の岩手県釜石市は御存じのとおり、今回の震災で1,000名近い方が亡くなっております。その後、被災地出身で何かできないかということで、人を集める場を運営するようになりました。その場を運営する中で、いろいろな気づきも学びもございまして、いろいろな立場の方が集まる場の運営ということを人生のテーマにしていきたいなと思ったのが、こちらの活動をするきっかけになっております。
変な会ばかり並びますけれども、そのさき計画という本業と、東長援会(東北を緩やかに長期的に応援する会)のほかに、「羊齧(ひつじかじり)協会」という、羊肉を食べる会をやっておりまして、これもただの料理を食べて楽しいなという会ではなくて、羊肉という取っかかり、タグを作るんですね。そのタグで人を集めると、例えば一つの場に羊肉を食べたいというだけに、政治家の方もいれば、弁護士の方もいれば、日本画家の方もいれば、何をやっているのかわからない方も来るという場ができるんですね。その場の運営を通して、ふだん絶対出会わない層を混ぜることによって、いろいろな化学変化が起こることを期待しております。やはりここは世代がすごく多様でして、前回の会は、下は16歳から上は72歳までという、すごく幅広い方が集まりました。会員数も500名を超えて、実は私がやっている中で一番にぎやかな会でもあります。
「朝の中国語プロジェクト」というのは、中国語教室って中間マージンをがっさりとられるから高いというのがありまして、先生には適切なお礼を、生徒には適切な月謝で中国語学校ができないかと。中国語を取っかかりに、私は中国の大学を出ておりますので、日中間の相互理解を生めないかということで開催しております。裏テーマとして、新しいクラスメイトを作りたい。社会人になると、本当に仕事の友達以外がなかなかできないんですね。なので、これをきっかけにもう一回、学生としてクラスメイトを作ってほしいなということで運営させていただいております。先月、いい話がありまして、ここで出会った40代のカップルが無事結婚しまして、これで新しいクラスメイトを作るという任務は達成したかなと思っております。
「Think Again岩手三陸」というのは、岩手県の沿岸の3市町村、被災した釜石市、陸前高田市、大船渡市というのは、実はそんなに仲がよくないんですね。今までは余り仲がよくなかったんです。地震で被害を受けた後も、釜石市の人が陸前高田に行く支援金をとったみたいな、非常に情けない話を繰り返した時期がありました。全体じゃないです。あくまで一部の人たちなんですけれども。そこで、私が発起人となりまして、3市町村のボランティア団体出身者及びそれにかかわる人たちを集めて共通のイベントを無理やりやってしまえば、仲よくなるんじゃないのかという、ちょっと見切り発車でスタートしたイベントなんですけれども、3市長の対談を初め、多くのコンテンツで、三つの市と東京の被災者、出身者の交流を図ったおかげで、非常に仲よくなりまして、その後、被災地へのバスツアーですとか、各種ボランティア団体がコンビになって、新しい企画が始まったりしております。
今までこのようなことを私はやっておりました。ここからわかるように、私は高齢社会を専門にやっているわけではございませんでして、このイベントをここ3年で30~40ぐらい開催しておりますけれども、その中で気になるところが世代間の断絶でございました。私の場合、どちらかというと、経験から始まって世代間を飛び越えたいなという考えに至ったという、ちょっと逆からのアプローチで始まっております。
○東北を緩やかに長期的に応援する会
今回、声かけをいただいた、東北を緩やかに長期的に応援する会、長いので東長援会と略させていただいております。簡単に申しますと、勉強会と懇親会を合わせたスタイルで、東北の復興者の生の声を首都圏在住者に届け、会員が東北に向き合うきっかけを提供することをメーンに活動しております。早い話が、よく勉強会って、高い段の上に先生がいて、バッと話して、終わった後、みんなで名刺交換をして終わりとか、そういう会が多いんですけれども、それを飲みながら行います。早い話、勉強会と飲み会を足したような会でして、おかげさまで、震災の年の5月よりスタートいたしまして、岩手、宮城、福島と13回、今回、岩手県大槌町で8月に14回目をやる予定なんですけれども、そういうスタイルで開催しております。
うちの会は特徴がありまして、基本的に私が岩手県釜石市出身なので、釜石ばかりやってしまうと思いきや、地域、年齢、職業、こだわらずにゲストの方をお呼びしております。左上からなんですけれども、これはAFP通信の伊藤記者、一番最初、トップバッターで話していただいた方、こちらは40代となります。その隣のマイクを持っているお兄さんなんですけれども、釜石市の副市長で、何と20代の副市長さんになります。隣が釜石市の食品会社の社長さんで50代、その隣の眼鏡とおひげの方が東海新報社という新聞社の取締役で60代、下のお二人が20代、一番端っこの方が、医療法人鉄祐会の理事長の武藤先生という方で40代になります。こちら、スマートプラチナ社会推進会議の委員もやっていらっしゃるみたいで、午前の会で所属している会の名前が出てびっくりしたばかりなんです。このように年齢に余りこだわらないでやっておりますので、こちらの会は最高齢82歳が参加されたことがあります。そのときの最年少が20歳だったので、その間、62歳の年の差ができる会になりました。
○世代間の断絶と弊害
このようにいろいろな会をやっております。職業も様々ですし、国籍も様々です。宗教、民族まではよくわからないんですけれども、すごく感じる違和感の一番は世代間の断絶なんです。早い話、テーマが決まっていれば、国籍とか出身とかは簡単に飛び越えられるんですけれども、それに年齢という壁ができてしまうと、なかなかこれが頑強で飛び越えられないんですね。例えば先ほどの羊を食べる会みたいなざっくりした会ですと、同じ興味を持つ方たちなので、どんどん自然と交流が進んでいくんですけれども、うちは年齢層を幅広く集めていますので、そうすると、なかなか違和感が出るんですね。先ほど松田さんのスライドにかぶるところなんですけれども、強烈な先輩風を吹かすシニアの方がまずいらっしゃいますと、それを見て若い人がススッと離れていくんですね。ミドル層、30代、40代の層は社会慣れしているので、面倒くさいなということでまた離れていってしまって、せっかく幅広い年齢層が集まる会なのに、高齢者が集まる部門、中年が集まる部門、若者が集まる部門と、もうばらばらになってしまうんですね。私として、そこら辺を全てまぜて新しい出会いを生みたいなというところなのに、世代間の格差があると、そういうところになってしまうなというところがあります。
その違和感を解消すべく、いろいろ行ってきました。どういうことを行ったかは後に回すとして、この前、100名ほどが参加するイベントを開催したとき、下は未成年から、上は70代後半まで集まったんですけれども、世代間がぐちゃぐちゃばらばらになって、みんな和気あいあいと楽しく懇親会まで行くことができました。共通のキーワードがあって、かつ柔軟な感性を持った人たちが集まることで、徐々にではありますけれども、世代間の断絶は解消されていくなというのを実感しました。でも、ただ集めて、その場はうまくいったなということではなくて、ちょっと仕掛けを行いました。仕掛けは後ほどお話しさせていただきます。
しかし、周りを見ると、復興支援やビジネス、社会生活の現場で、世代間の断絶によって、ふだん、普通にうまくいくことが全然うまくいかない現状が結構あるんですね。ちょっと変な言い方なんですけれども、シニアのグループは若い人のグループを「若造、若造」と言ってばかにするわけです。そういうことを言われて、若い人たちもいい気はしないので、「何だ、あの年寄りたち」ということで、同じようなことをやっている復興支援団体がいがみ合うという、非常に悲しいことが起こったりですとか、つぶし合ったりとか、そういうことが起こっている現状がまだ多々見られております。
○各世代の特性
これも私見なんですけれども、各世代の特性は何かなと。やはり若者は行動力。そのかわり、経験が一切ありません。イノシシみたいなものですね。思ったことに突っ込むだけ。ミドルは現役として社会慣れしている分、やっぱり面倒なことを嫌い、行動がやや保守的になりがちです。シニアの皆さんの経験と人脈というのはかけがえのないものなんですね。私はかなりいろいろな会でシニアの皆さんには助けられております。でも、やはり柔軟な行動力に欠けるところがあるなというところが私の本音でございます。でも、今回のフォーラムのテーマでもありますけれども、各世代、すごい特徴を持っているんですね。若者の行動力、柔軟な発想、ミドルの現役力、それをカバーするシニアの経験とつながり、この三つが補完し合い、シナジーを発揮したときに生まれるチーム力ですか、私は震災復興3年、すごい局面で実感してまいりました。
○世代間通訳の存在意義
では、シニア層が活躍するためにはどうしたらいいか。私が運営する場では、うまく世代間の断絶を埋めることができたとき、統計をとってみたんですね。幹事がある行動をしているときに、シニアが20代と肩を組んで飲んで、そのまま二次会でどこかに消えてしまうまで盛り上がる傾向にあることがわかりました。つまり、幹事があえて世代間の中に入って、ファシリテートするという役割を果たす専門の人間を置くことだったんですね。
先ほどの未成年と70代が集まってすごく盛り上がった会というのは、その担当、あえて世代間をつなぐためだけの人間を2人置きました。これを私は勝手に「世代間通訳」と名づけております。通訳というと大げさじゃないのかと言われますけれども、いろんな会をここ30回ほどやった中で、国籍で言葉が通じない以上に、年齢による壁って、本当に通訳が要るレベルだなというところを思ったんですね。今までこういう人って、場持ちがうまい人とか、宴会部長とか、幹事とかしか呼ばれていませんでしたけれども、それに世代間通訳という名称をつけることで役割が明確化するんですね。宴会をうまく仕切ってくれというんじゃなくて、今回、こういうイベントをやるので、あなたは年配の方と若い人をつなぐように行動してくださいとある程度指示を出すだけで、世代間の断絶というのはかなり解決しています。これは統計があるとかじゃなくて、私の経験則なんですけれども、かなり会が活性化いたします。でも、お互い認め合う、柔軟なマインドを持っている方が参加しているということが一番大事なのではないかなと私は思います。
高齢社会を迎えつつある今、話的には「シニアが、シニアが」と、シニアばかりに話が行きがちですけれども、我々若年層とかも、シニアの方に参加してもらうためにはどういう受け入れ体制を整えたらいいのかな、どういう方法が有効なのかなということを考えていく必要があるなと私は深く感じております。ちなみに私が運営する会は、幹事、事務局が20名おりまして、世代間通訳の概念というのを説明しているんですね。あと席順ですとか、イベントの構成を全世代向けにするですとか、うまく世代間通訳として各人が物事をまとめられるように運営を続けております。
では、世代間通訳を置いてどうなったんだということなんですけれども、小さいところでは先ほど話したように、20代の女性が60代の男性を誘って、その後、飲みに行った。それも20代のほうから誘ったそうです。そのような小さな交流の芽ができたということから始まり、シニアのアドバイスによって、新しい切り口のビジネスの交流会が立ち上がったり、被災地で関係各所の交渉が円滑に進み、イベントが大成功したという事例が、少しずつではありますが、増えてまいりました。
これは最近というか、先週の事例なんですけれども、私の運営する会で出会った方が音頭を取って、その方は40代なんですけれども、行政、大学を巻き込んで、岩手県、盛岡市、岩手大学、台湾政府及び台湾の華僑、この5団体が組み合わさりまして、岩手と台湾の友好を促進する懇談会が立ち上がりました。これもまた多世代にわたっておりまして、70代の岩手大学の客員教授の方から、私は一番末席で30代なんですけれども、30代までがオール岩手で取り組んでおります。この代表の方が私と仲よしといったら仲よしなんですけれども、世代間をつなぐ技法というのをいつも話している人間でございまして、そのおかげで30代から70代までが岩手と台湾をつなごうということで固まって行動を行っております。
このように世代間通訳という概念が広がり、意識的にそれに取り組む人が増えることで、世代間の断絶が埋まり、若者、ミドル、シニアともに、より力を発揮できる社会がつくれるのではないかなと思います。現時点で、あくまで私が自分ベースで話しているささやかな概念ではあるんですけれども、ちょっと理想論ではありますが、こういう小さなことの積み重ねで、どうにか世の中が変わっていくのではないのかなと思っております。「幹事の学校」という企画を実はやっておりまして、世代間通訳の概念を広められないかなといろいろ試行錯誤している状況です。30~40代が間に入るのが物事が一番うまくいくんですけれども、年齢層は関係ないので、多くの年齢層が集まるイベントのときとか、世代間通訳という概念を思い出して、中に入って一度調整をしてみていただければ、自分はすごく気を使って余り楽しくはないんですけれども、非常に会が盛り上がることは間違いないと思います。
体験談といいますか、高齢社会については流れの中での説明という形で恐縮ですが、これで終了させていただきます。
なお、世代間通訳の概念をまとめる上で、立教セカンドステージ大学木下ゼミのシニアの皆さんの御協力がございました。この考え自体、先生は80歳、学生さんも50代から70代の中に30代の私が入りまして、シニアと私で考えた概念でございます。
以上で私の発表を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
松田 菊池さん、ありがとうございました。世代間通訳というのがキーワードですね。
では、続きまして、マイスター60の取締役の髙平ゆかりさんにお願いします。髙平さんはシニアの社会参加、インターンシップといったことで、非常に幅広い御経験をお持ちで、これまで私どもとも幾つかジョイントでプログラムを進めておられます。では、髙平さん、よろしくお願いします。
パネリスト 髙平 ゆかり氏のお話
髙平 ありがとうございます。マイスター60の髙平と申します。短い時間ですけれども、よろしくお願いします。
先ほど年齢の紹介があったんですが、年齢のほうは差し控えさせていただいて、簡単に自己紹介すると、もともと人材業に長くおりまして、95年当時からシニアの派遣であるとか、再就職支援であるとか、人材紹介などに携わりまして、シニア関係に特化するために現在のマイスター60に入社して今日に至っております。
今日は当社で実際に行った様々な取組について、皆様に御案内をさせていただいて、その中から見えてきたシニアの意識改革の重要性、ここがどれほど重要だと感じているかということが少しでも伝わればなということで、タイトルとして「困ったシニアと愛されシニア~シニア・インターンシップの取組から~」ということでお話を進めさせていただきます。
さて、私どもの会社なんですが、まずどれほどの高齢者雇用の創出を今まで支援してきたかというのがこちらのグラフになります。当社は1990年に創立しまして、ちょうど今年で14年になるんですけれども、主に60歳以上を対象とした高齢者専門の人材会社としてやってきました。今年の3月末までの実績で5,604名。青と赤のところなんですが、職業紹介で60歳以上の方々を様々な企業に人材紹介、直接雇用に結びつけたというのが赤い棒。青い棒は、当社自らが採用させていただいた数です。特にリーマンショックがあった2007年以降ですが、このあたりは、いわゆる一般派遣と申しまして、派遣人材の方たちも含まれております。しかしながら、リーマン以前というのは、全て当社の正社員ですので、人材ビジネス的にいうと特定派遣と申しますが、仕事がなくても当社の社員として稼働していた方ということで、これだけの方々を創出してきましたということです。
次に、今のマイスター60の実像なんですけれども、過去3年間の従業員の数です。この数の中には、職業紹介をして他社に入った方は入ってございません。全部比べるために3月末日現在の数字を入れているんですけれども、見ていただければわかるように、当社ではもう既に平均年齢は65歳になっておりまして、65歳以上の方も175名在籍ということで、65歳以上が何と全社員の52%を占めるんですね。したがって、既に当社に至っては、いわゆる70歳現役というのは実現しているというふうに言えるかと思っております。ここで何が言いたいかというと、当社においてはたくさんのシニアの方、たくさんの高齢者の方たちに向き合って、様々な事例であるとか、様々なことを会社として経験してきた。そういうことから意識改革がどんなに大事かということについて、これから御説明をさせていただきたいと思います。
○困ったシニアと愛されシニアの相違
もちろんすばらしいシニアの方もいらっしゃって、私なんかもそういうシニアの方に出会うたびに、むしろ本当に勉強させていただき、かつ、こんな方がいたんだということで、出会えたことそのものに幸せを感じることが多くて、今、この仕事についているわけなんですが、他方で、ちょっと困ったシニアといいますか、いろいろ問題があるような方もいるようにお見受けします。なぜ困ったシニアがこんなに多いのかというところなんですけれども、恐らく会社中心の生活から、定年になりますと、個人中心の生活に変わる。そこで起きてくる御自身の環境の変化というのは、人間関係であったり、家族との共有時間の変化であったり、時間そのものの流れ、1日会社で過ごしていたものがおうちにいるというようなこと。それから、社会的な立場、あるいは交友関係。公私の時間が逆転するわけですね。そうすることによって、我慢する必要のない生活にどんどんなってくる。我慢する必要がない生活になってくると、何だか知らないですが、自己抑制がとれてくる。自己抑制がとれてくると、さらにより自分らしさを求めるというふうに言えるのではないかなと、長年、シニアの方たちと接してきて思うことです。
ここが一つの分岐点になっていまして、より自分らしさを求めるあり方というのが、かなり自己中心的でわがままな形で表面化する方と、どちらかというと、内面的なことに充実を求め、自己実現とか、ありのまま、「ありまま」と呼んでいますけれども、そういうふうに御自身の壮年期を位置づける方、2パターンあるのかなと思っています。ブルーのほうは困ったシニアに、ピンクのほうは愛されシニアにという感じが非常に見えてきています。
一つ、つい最近のトピックで気になったものがあったので、ここのところに載せておいたんですが、鉄道係員に対する暴力行為の分析によれば、60歳以上が最も多いということらしいんですね。20.6%。これはどういうことだろうというふうに皆様もお感じになるんじゃないかなとは思いますけれども、実際には、飲酒をしている方がさらに57.7%で、飲酒をしていない方が26.5%いらっしゃる。40代、50代、そして60代以上を加えると、何と全体の半数以上ということで、よく今どきの若者はキレやすいとか、そんなふうに表現しますけれども、逆ですね。今どきのシニアはキレやすい、そういうふうに言ったほうが非常に現実的ではないか。こういう困ったシニアというのは職場だけじゃなくて、地域社会ですとか、公的な場にも多数出現しているんだというところを示させていただきました。
○困ったシニアの様々な事例
では、マイスター60で、あるいは私自身が出会ったシニアの中で、具体的に困ったシニアの事例をここにお示ししております。わかりやすくするために、60歳以上で、かつ求職活動中の方と実際にお仕事についた方という両面でお話しさせていただくと、まず私ども人材会社ですから、いろいろお電話もかかってきますけれども、御自身の名前も名乗らずに、「仕事は本当にあるのか」ということでいきなり電話で聞いてくる。あるいは自分のことは話さずに、求人内容だけをとにかく根掘り葉掘り聞いてくる。人材会社のほうもそれぞれ都合がありまして、お話しできることとできないことがあるので、とても困るんですね。登録したのに仕事紹介がないと、途端に怒り出す。登録そのものは、基本的には登録を拒否することはございません。ただ、案件それぞれに求められるスキルセットといいますか、採用側の要件というのがあるので、それに合わないとなかなか御紹介が難しくなるわけなんですね。ところが、そういったことは全部無視して、「何だ、紹介してくれないのか」ということで怒り出す方。
それから、連絡もなく面談の予約であるとか、せっかく御紹介して会社訪問するのに、それをドタキャンする。それから、長々と自分のお話ばかりは大好きなんですけれども、こちらが質問すると、それには全然答えていただけない。あるいは答えになっていない。そういうことが結構あります。それから、条件が合わないので、仕事紹介は難しいですよと言っても納得せずに怒り出すということですね。先走りして、こちらの説明をよく聞かない。「ああ、わかった、わかった」「はい、わかった、わかった」、後から聞くと全然わかっていないんですね。とにかく「わかったよ」「わかってる、わかってる」と言っちゃう。そういう方に限って、後から出すべき書類ですとか、そういったことが全然わかっていなくて、場合によっては待ち合わせの時間すら間違えてしまう。そういうようなことがあります。
それから、見事、お仕事を開始された後でも、ここではかなり困った素養の方はスクリーニングされているつもりなんですが、それでもやっぱりあるんですね。具体的に言うと、ささいな理由で、1日、2日ですぐ会社を辞めてしまう。これは本当に自分の思い込みで、行ったら自分のパソコンがなかった、あるいは自分の机がなかった、そんなことで気分を害して辞めてしまう。やはり急に来たりするので、準備ができなかったかもしれないんですよね。まず話を聞いてくださいと言うんですが、何だか嫌だというようなことになったり、ちゃんと条件は聞いていたはずなのに、通勤時間が思ったより長かったとか、もう満員電車は乗りたくないんだよねとか、何のためにいろいろ説明したんだろうとこちらは思ってしまいます。
あと、指揮命令者に従わない。自分の判断で仕事を進めてしまう。これは皆さん、サラリーマン時代には考えられなかったことかと思うんですが、結構あるんです。あと、現場、職場のルールやマナーを守らない。あるいは、自己解釈でルールやマナーを軽視してしまう。当事者でありながら第三者のような批判や評論家的な態度。お手並み拝見みたいな感じですね。
それから、御自身の役割や任務の範囲を超えて、結果、最終的に周りに迷惑をかける。どんなことかというと、御自身はよかれと思って、9時から出勤すればいいのに8時前から行って、自分で率先して、例えばマンションのビル管理だったら周りを清掃したり、そんな作業をして、お掃除の方とか、オーナー会社の方に「すばらしいね。この人はすごいいね」と言われて、そういうことを繰り返していると、次の人が続かないんですね。実際にはビルの周りの清掃は請負の業務の中に入っていないわけです。したがって、プラスアルファのことをやっちゃっているんですね。なので、料金以外のことをやっていて、次の人が行ったときに、やってくれないじゃないかということになる。その方は、「そんなことはしなくていいんですよ。それは本当に契約に入っていませんから、やめてください」「いや、自分の性格は変えられないから、これはやめられないね。自分はお金を欲しいと言っているわけじゃないじゃないか」と開き直ってしまう。そんな方がいらっしゃいます。
それから、若手社員に嫌がられる言動を繰り返す。必要もないのに、受付の女性のところにふーっと行っちゃったりとか、何度も何度も必要もないのにふらふら歩いちゃうとか。それから、トラブル時に、我々は仲介役ですから、いろんな話し合いを申し入れるわけなんですが、それを時間の無駄と一括しちゃって、もう御自分で結論を決めちゃうんですね。本当にお話を聞いていただきたい。いい誤解とまずい誤解がいろいろありますので、そういったところが非常に苦労します。
それから、年下や異性の上長に対して面従腹背ですね。お手並み拝見、本当に派遣先であったり、再就職先に行ってもそういうことがあります。場合によっては、中小企業に大体再就職しますから、そこの社長さんと経営論を闘わしちゃったりして、気がついたら、「あっ、自分は雇われているんだった」と。どうしても大きな会社から小さな会社へ行くと、いろんなところのあらが見えて、「何だ、この会社はこんなこともできていないのか」みたいな、ちょっと上から目線になっちゃうんですね。そうすると、会社批判だとか、そんなふうになってしまう。そういうシニアがすごく扱いづらいとよく言われるんですね。したがって、そんなことに意識改革が必要です。
○現役学生によるFacebook講座
我々、いろんな取組をしているんですが、意識改革をするために、あえて学生とのコラボということで、一つ目は、デジタルハリウッド大学の現役学生による「高齢者の為のフェイスブック講座」というのを開催しました。こちらがシニアで、こちらが学生さんなんですけれども、本当にいい経験をしてもらったんです。質問のところに、学生のボランティアに対して、「ありがとう」とか「非常に助かった」という言葉があったのに反して、他方で、「関係者、ご苦労さまでした」というような感想だったり、「Facebook社の収益メリットはどこから発生するのか」「企業内でFacebookを利用するメリットはあるのか」などと学生に質問を浴びせかけるみたいな感想を書いてくる方もいます。学生は単純に高齢者に新しい世界をわかっていただきたい、ネット上から世代を超えた関係を作ってほしい、孤独死や無縁社会を予防する、そんなことを言っておられるだけなんですけれども、そんなような事例があります。
よくあるのに、こちらに書いてありますけれども、説明しているのに自分でどんどん操作を進めちゃって、動かなくなっちゃったりすると、「あれ、このPC壊れているんじゃないの」なんていうことを言う方もいらっしゃいます。
○高齢社員のための体験型意識改革研修
二つ目の事例なんですが、当社で行っております高齢社員のための体験型意識改革研修です。シニアのためのインターンシップ。これについては皆様のお手元にも、昨年度使わせていただいたパンフレットがあるかと思いますので、カリキュラムなどを見ていただければと思います。それらの内容の特徴を御案内させていただきたいんですが、まずキックオフミーティングですとか、OJTをするわけなんですけれども、大きな特徴としては、まず全員がハンドルネーミングでキックオフのときに呼び合います。つまり、これはどういうことかというと、出身会社であったり、本名、学歴といった経歴を全て遮断して、まず見知らぬ者同士が合宿をするというところから始まります。この目的としては、ありのままの自分を見つめる、ありのままの自分を他者に理解してもらう、あるいは他者を理解する、そういったコミュニケーションを図る訓練ということですね。
そのほかに我々の会社に来ていただいて、これは我々の会社の社員なんですけれども、いろいろと実務を経験していただきます。我々の会社のミーティングなども出ていただきますし、あるいは登録者の面談にも陪席していただいたり、直接面談していただいて、自分より年齢の上の方々の就労したいというお気持ちを聞いたり、そういった現場を訪問して、どんな活躍をしているのか、どんなふうに働いているのかということを見ます。こんな体験をしていただきます。
○ユニークなワークショップ
三つ目、ユニークなワークショップを用意しました。これは何かというと、世代間というのがさっきから話題になっていますけれども、まさに世代間、特に文化の違いというんですかね、そういったものも詳しく知っていただくために、こんな会を開きました。まず、アニメ「ヘタリア」鑑賞、メイドカフェのアルバイト体験記をシニアに聞いていただきました。それから、シニア向けFacebook講座の開催の体験談であるとか、デジタルハリウッド大学ですから、最先端のデジタルコンテンツの世界、こんなものも……。最終的には、こちらの先生は30代になるんですが、愛されシニアへの道ということでセッションを行いました。
ちょっと写真でイメージをつかんでいただけますか。こんなふうに若い学生がいて、彼はまだ大学2年生なんですけれども、自分で三つぐらい会社を起こしているんですね。仕事の場で年齢って関係ないと思う、成果次第なのではないですかみたいなことをバシッと言っておられました。それから、アニメの鑑賞会。シニアの「このアニメのどういうところが面白い?」とか、「どういうところが好きですか?」という質問に対して、「キャラ萌えってわかりますか」と言って、「???」となっているんですね。こういうしゃべり場を設定しました。まさに異世代交流と異文化交流ですね。こういうクロスカルチュラルな場を持って、インターンシップの中の一つとして、こういった活動をしています。
それから、これもインターンシップの説明会の状況ですね。これは先ほどお見せしたキックオフミーティングの夜の状況で、ちょっとお酒も入って、皆さんで懇親しているんですが、ハンドルネームですから、この方がどういう方かなんてわからないわけです。わからないけれども、こんなふうにすっかり打ち解けちゃっているわけですね。何ででしょうか。自分の持っていたよろいがここで通用しないし、そこを脱いじゃっているわけですね。素の自分同士で皆さん仲よくなったということではないかと思います。こういう気持ちのまま、社会やコミュニティに出ていけば、そんなに大きなギャップであるとか、コンフリクトは起きないんじゃないかなと思います。
インターンシップの気づきなんですが、Aさんは、自慢話は1度まで、偉そうにしない、ありがとうと言われるシニアになりたい。Bさんは、固定観念、先入観はとにかくだめ、何にでも一生懸命になる、当たり前を疑う、懐深いシニアになりたい、自分が変わらなければ相手も変わらない。こんなようなことに気づいたよという抜粋なんですけれども、こんな感じです。
最後になりますけれども、私からメッセージとしては、こちらのインターンシップは主に再雇用であるとか再就職、あるいは継続雇用のために、シニアの方々が65歳まで会社の中で、今度は現役ではない会社での貢献のあり方というのをしっかり考えていただくためのスキームで作っておりますけれども、意識改革というのは何も雇用継続ですとか再就労のためだけに必要だと思っていません。定年後から老後にかけての人生が非常に長くなっております。より個人の生活を豊かに、あるいは、より大事にするためにも、多様な世代の方々とのコミュニケーション能力のスキルアップは外せないのではないかと思います。私ども「マイスター60」の経営理念は高齢者の雇用創出です。その部分でとても大事な意識改革ということは、様々な手法を使って、これからも行っていきたいと思います。
なぜそんなことをするのか、最後に申し上げます。ちょっとしたボタンのかけ違いでお仕事が決まったり、新しい職場でもっと長く定着できたり、あるいは、その職場で必要とされる人材になれるんです。ちょっとしたボタンのかけ違いです。あるいは、ちょっとした意地を抑えていただくことで随分変わるという体験を私どもは大分しておりますので、このようなお話をさせていただきました。
私からのコメントはこれで終わります。ありがとうございました。
松田 髙平さん、ありがとうございました。
それでは続きまして、三菱地所の開発推進部エコッツェリア担当の中嶋さんから報告をお願いします。中嶋さんは、丸の内の仲通りを初めとしたコミュニティづくり、あるいはシニア、エコキッズと言われるような子供の社会参加に長く携わられております。今日はそういった知見からお話をいただきたいと思います。中嶋さん、お願いします。
パネリスト 中嶋 美年子氏のお話
中嶋 皆さん、こんにちは。三菱地所エコッツェリア担当をしております中嶋と申します。私自身はデベロッパーで働く人間の1人として、まちづくりの観点からちょっと考えていることとか思っていることをお話ししたいなと思っています。
今日、非常にいろんな方がお集まりいただいているんですが、松田さんから初めに年齢の話がありましたが、私は体年齢は24ぐらいなんですが、実際の年はちょっと秘密にしまして、団塊ジュニアということで御想像いただければと思います。私の両親がちょうど今、定年を迎えて、社会にどのようにかかわっていくかということを常に考えていたり、どっちかというと母のほうが元気だなというのを目の当たりにしながら、毎日過ごしているところでございます。
今日、実際に私も立ちながらお話をさせていただきたいんですが、会場にいらしている方にお伺いしたいんですが、もう既にこういったことに意識を向けられて、セミナーとか分科会に参加しているそうなんですが、いろいろ話を聞いたり、得た情報を誰に話そうかなというのをまず伺いたいんですが、どなたに話そうかなとか思っていることはありますか。
(男性) まず家内ですね。
中嶋 奥様と共有したい。そのほか、こちらの男性の方、いかがですか。
(男性) 私はもう77歳なんですが、同じ仲間で60代の人たちとやっぱり世代が違うんですね。今日はもっと若い人たちの世代の話ですから、そういった世代の違う人の話を若い人たちと話し合いたいなと。その参考にさせていただきたいなと思います。
中嶋 ありがとうございます。やはり御自身の御家族ですとか、もうちょっと若い方と情報を共有したいなというお話があるかと思うんですが、社会にかかわっていく中で、余り世代ではないんじゃないかなというふうに私自身は正直思っています。例えばテーマを変えて、最近、女性の社会進出とか、いろいろニュースなどでも取り上げられていると思うんですが、女性が全員、社会進出したいかといったら、そうじゃない女性もいっぱいいると思うんですよね。問題なのは、女性だからとか、シニアだからということではなくて、個人のモチベーション、先ほど松田さんからもありましたが、個人がどう前向きであったり、モチベーションを持っているということが大事であって、もしかしたら、私はもう年齢を重ねて、この自分が生きてきた星では大活躍したから、残りの余生はゆっくり過ごしたいんだよ、あんまり社会にかかわりたくなくて、ゆっくり過ごしたいんだよという人もいるんじゃないかなというのもあるので、個人として皆さんが今日をきっかけにどう考えていただけるかなというのを意見交換したいなと思っています。
○大丸有におけるシニアの活用
ちょっと前置きが長くなりましたが、私たちはデベロッパーなので、「大丸有」におけるシニアの活用に関する論点というふうに掲げています。「大丸有」というのは大手町・丸の内・有楽町エリアのことなんですが、市場の背景として、少子高齢化であったりとか、医療、介護、年金の社会保障負担の増加とか、いろいろあります。それにまつわる課題として、例えばリタイア後の孤独なシニアの社会課題が顕在化している。今までは役職があったりとか、座席があったりとか、毎日通う場所があったのに、ある日突然、例えば暑気払いに行く場所がなくなってしまうとか、忘年会に呼ばれなくなってしまうとか、飲み会に行く場所すらなくなってしまう。そういったシニアが寂しそうに、私の部署でも年配が去られるときというのは、何となく気を遣いながら、何となく寂しさを背中で感じているんじゃないかなというのを思いながら、私たち会社に残る人間も、次にお会いする月日を決めてからバイバイしましょうみたいなことをよく言うんです。私たちの部署の知り合いであればそういう対応ができますが、大丸有エリアは毎日23万人、20代から60代、70歳近くまで働いていますので、全員が全員、そこまで私たちの力でフォローできるわけではありません。その中で、街のソフトとして必要な対策というのをいろいろ考えなければいけないんじゃないかなと思っています。
例えばシニアの活用の仕方として、新しいマーケットでの開拓ですとか、シニアと連携したビジネス創出をしたり、シニアが集う場所として社会貢献をする仕組みをつくったり、立教大学などではシニア世代のための講義を行っている学部もありますが、「丸の内朝大学」といって市民大学を就業者向けに既に運営しております。その方法に倣って、今、シニア向けのプラチナ大学などもできないかという構想を練っているところです。その構想のところでは松田さんにも非常にお力添えをいただいているところなんです。
○大丸有のまちづくり
私たちというのは、まちづくりをする中で、ここ10年ぐらいの中で、丸の内ってすごくイメージが変わったと思います。この中で丸の内とか大手町、有楽町エリアで働いていたとか、実際によく通ったという方、いらっしゃいますか。――いらっしゃいますね。ちょっとお話を伺いたいんですが、この何年かでどんなイメージが変わったか、印象ありますか。
(男性) どっちかというと、ビジネス一本だったのが、アメニティというんですか、そういう多様性になってきたんじゃないでしょうか。
中嶋 そうなんです。大正解なんです。そう言っていただけると、まちを作ってきた私たちとしては大成功だなと思うんですが、ほかにイメージとかありますか。
(男性) 丸の内ビルも建て替わったりなんかしてというようなことの中で、これは三菱地所さんの基本的な戦略だろうと私は理解しています。
中嶋 大手町・丸の内・有楽町の場所を話すと、三菱村のように言われますが、実際に三菱地所は、あのエリアに104棟ぐらい建物があるんですが、そのうちの30棟ぐらい持っています。建て替えとかをいろいろしていく、まちづくりをしていく中で、ただビルを建て替えるだけではなくて、あのエリアの地権者の方々と一緒にまちづくりをしていったんですね。ビジネス街を、まちは多様性があるからこそにぎわいが増すんじゃないかということで、例えば飲食店をたくさんつくったり、ショッピングができるように、洋服屋さんですとか雑貨屋さんを入れたりですとか、そういった感じでにぎわいを増すためにまちづくりをしてきました。
そのまちづくりをする中で、「大丸有サステナブルビジョン」といって、ただ勝手にビルを建て替えて、はやりの店を入れれば、まちが多様性を増すかというと、そうではないんですね。これからのまちづくりというのは、やはり人とコミュニティの創造性を高めて、交流とイノベーションを起こして、サステナブルな社会の実現を目指しますという、長ったらしい文章が書いてあるんですが、やはり一言で言うと、きずなやコミュニティが大事なんじゃないか。その会社に出勤して、会社の人の顔と名前がわかるだけではなくて、町内会と一緒で、このエリアで働く人の横のつながりが生まれるからこそ、働きに来る喜びがあったり、楽しみがあるんじゃないかなというのを私たちはテーマにしています。
実はここ2年ぐらい、丸の内で盆踊りをやっているんですが、御存じの方いらっしゃいますか。――では、打ち水をやっていることを御存じの方いらっしゃいますか。――たくさんいらっしゃいますね。実は打ち水プロジェクトというのを10年ほど前に丸の内で始めたんです。初めは環境問題にまちとして取り組もうといったときに、そこに集う就業者の意識改革も必要だと。その意識を改革するためには、参加できるアクションが必要だということで、打ち水というイベントを行いました。その中で、ただ水をまくというイベントだけではなかなか意識改革ができない中で、10年をかけてまちのお祭りに仕立て上げていったんです。昨年から盆踊りをしまして、今年で2年目で、ちょうど先週末の7月25、26日で行ったのですが、まちで祭りをしたりすることによって、横のつながりというのが非常に生まれてくるんです。水をまくだ けだとなかなか参加しないんですが、そこで盆踊りや阿波踊りなどのイベントがあって、なおかつキッチンカーなどの屋台が並んだりすると、そこに集まってくる人は、ふだん働いている人はもちろんなんですが、その家族であったり、近隣住民なども集まってきます。そういったまちづくりの一環で、あるイベントを通してきずなが強くなったり、多様性が生まれてくる。これがコミュニティを作るときの手法だと思っています。
○デベロッパーからみるシニア活躍の場
これからシニアがどのような場で活躍していくかというのを、私たちデベロッパーとしても、今、一番重要な課題だと思っているんです。個人であったり、企業であったり、まちづくりのデベロッパーとしての今後の課題というのはあるんですが、既に私たち三菱地所の人間というか、まちづくり団体がやっている取組として挙げられるのは、まず個人へのターゲットだと思います。リタイア後に地域や家庭に居場所を見つけられない孤独なシニアの不安というのは、いろんなところで問題が取りざたされていると思うんですが、その活躍の場を、私たちはまず第一歩として作っています。
その事例として写真をお見せしたいと思うんです。これは、中央に年配の方がいらっしゃいますが、まちづくりの一環の中で、私たちは夏休みに「エコキッズ探検隊」という子供向けのワークショッププログラムを連日、7月末から8月にかけて行っています。その中で、例えば工作ができるワークショップとか、エリアの飲食店でプロのシェフからお料理を学ぶプログラムがあったりとか、最近ですと、一番はやりなのは理科実験教室なんです。中学受験を見据えたお子さんたちが夏休みに有意義な時間を過ごすために、理科実験教室に通わせたいんですが、私たちが一番売りにしているのは、シニアが先生となった理科実験教室です。いろいろな企業の役員経験者が集まっている一般社団法人の「ディレクトフォース」という団体があるんですが、ディレクトフォースという団体は、本業は企業のコンサルですとか、相談役ですとか、大学で教鞭をとったりしています。でも、余った時間は自分たちで理科教室みたいなものを立ち上げて、子供たちの理科嫌いをなくそうという思いを一心に、いろんな実験プログラムを開発しています。
これは冷却パックといって、パンとたたくと冷たくなるアイスノンみたいなものがありますよね。あれを作る教室なんですが、こういったプログラム、それ以外にも滑車の実験、飛行機、風力発電、マヨネーズづくり、とにかく15プログラムぐらいあるんですが、こういったプログラムを夏休みの「エコキッズ探検隊」というまちのワークショップでまず展開していただいています。
夏だけだと出番が少ないというお声をいただいていますので、秋以降は千代田区の教育委員会に私たちは駆け込みまして、是非学校の授業で、多世代間コミュニティにもなるし、最近は核家族が進んでいて、なかなかこういった世代と触れ合うこともないので、授業の先生として迎えてくれというお願いをしました。写真を見ていただくとわかるんですが、皆さん、非常に熱心ですし、真剣に教えています。
このディレクトフォースの団体さんは一つの例なんですが、千代田区だけではなく、全国を飛び回るほどの理科実験教室部隊となっていまして、もちろんもともとはボランティアでやっているんですが、やはり長く続けてもらうために、私たちも飲み代程度の謝金を1回お支払いしております。こういった方にしてみれば、子供たちの理科嫌いをなくすためのミッションを抱えているということでやりがいもありますし、また、同じ仲間と定期的に会えて飲めるという楽しみもあるんですね。なので、非常にモチベーションが続いて、通年で私などとも御一緒していただいております。
○大丸有プラットフォーム構想
ちょっと話が横にずれましたので、資料のほうに戻ります。シニアの活躍とか、嫌われるシニアとか、いろいろあるかと思うんですが、多分、嫌われるシニアだけじゃなくて、そういった方々と若い世代であったり、また同世代の方がどういうふうに受けとめるかということも大事だと思います。どこどこの会社の出身であるとか、どこどこの大学の出身であるとか、また、私の会社にも実は麻布会とか、栄光会とか、そういった中学、高校からの集まりなどもあるんですね。でも、きっとそのよろいって、大事なよろいであり、そのよろいがあるからこそ、これまで何十年戦ってきたものでもあると思うので、それをはがす場面ももちろん必要であるとは思うんですが、そのよろいをかぶっている方を受け入れる周りの体制も必要なんじゃないかなと私自身は思っています。
どんな強みでもいいと思うんです。別にどこかの役員経験者じゃなくてもいいと思いますし、その生きざまが格好よければ、若い世代と交流を持つきっかけができるんじゃないか。それは別に大丸有エリアの人だけじゃなくて、例えば大工の棟梁とかの生きざまだって格好いいと思いますし、デザイナーの、私たちにはないような感覚みたいなものを、私たち世代が一緒にお酒を囲んだり、何かこういったセミナーなどで一緒にする機会を得ることによって、勉強になるなという時間を持てるというのは、私自身がこれまでにもたくさんありましたので、是非、今日いらっしゃる皆さんが、自身でお考えいただいてもいいと思いますし、誰かと共有されるときには、偉くある必要もないし、私は無理によろいを脱ぐ必要もないと思います。でも、誰かのためにとか、皆さんもモチベーションが上がるときというのは、承認されたり、褒められたときというのは、幾つになっても変わらない。それは小学校のときからきっと変わっていないことなのではないかと思いますので、それはどうしたらいいかというのを考えてもらえれば、それほど難しいことではないと思いますので、また機会がありましたら、意見交換しながら、いろいろ教えていただき、相談に乗っていただき、是非諸先輩方から力を貸していただければと思います。
松田 中嶋さん、どうもありがとうございました。実際、私もこの理科教室を見に行きました。面白いですね。実験で元マヨネーズ会社の役員がマヨネーズを作らせるですとか、○○重工の人が水で船を走らせるということをやるんですね。子供は正直なので、愛想笑いだとか、適当なうなずきは絶対しないんです。つまらないときはつまらなそうな顔をしているし、面白いときは本当に目がパッと変わるんです。あの瞬間を見ると、これをやっていてよかったんだなとシニアの方々は言っていました。
面白いなと思ったのは、これはいろんな理科実験教室があるんですけれども、ある実験教室は、最初は非常に不人気だった。閑古鳥、鳴かず飛ばず。何でか。偉そう、上から目線、しかもつまらない。でも、さすが力のあるシニアというのは、自分たちの授業をビデオで撮って、みんなで見て、ここがおかしい、悪いというのを、現役時代のようにPDCAを回して、そうすると、めきめきとよくなるんですね。私が実際に丸の内に見に行ったときは、各テーブルにサポートのシニアが1人ずつついている。ちょっと遅れている子はその人が見てあげるというように改善し続けたら、もう大人気になっている。なかなか印象的ですよね。最初は閑古鳥だったのが、今や大人気になっているのは、ちょっとした努力、そういったもので変わっていくんじゃないかなということです。
前半の部分、こちらで報告を終わりますけれども、もしこの中で質問がございましたら、一つか二つ、受け付けたいと思います。会場の中で質問や御意見がある方がいらっしゃいましたら挙手をお願いいたします。
前半のお話について質疑応答
(会場A) 中嶋さんのお話が大変おもしろかったんですけれども、大変ひねくれた質問をするならば、なぜ三菱地所がそういうことをやっておられるのかというのが私はよくわからない。その辺は今日のセミナーの趣旨とは違うと思うんですけれども、もしもよかったらお答えいただければ大変うれしく思います。
中嶋 私自身も「三菱地所の人間です」というお話をして、「何をやっているんですか」「おじいちゃんたちと一緒に理科実験教室をやっています」と言うと、「は?」とみんなに言われるぐらいなんですが、三菱地所はやはりデベロッパーなので、ビルを建てて、そこでいろんなテナントさんに入ってもらって、賃料収入を得ることが本業です。でも、それだけではやっていけないというのが正直――最近ですと、例えばノマドワーカーで会社に出勤しないで家で仕事をする人が増えたり、必ずしも自分の机を持って仕事をするというスタイルが100%ではなくなってきているんですよね。虎ノ門ヒルズもオープンしましたし、もちろん六本木ヒルズもありますし、そうでなく恵比寿や新宿、日本だけじゃなくてアジアの拠点で、上海だったり、シンガポールだったり、いろいろある中で、まちの価値を上げるにはどうしたらいいかというのが社内の一番の課題になっています。その中では多様性を持って、例えばソリューション機能がまちにあるということが大事であり、丸の内にいろんな会社の本社機能が拠点を置きたいと思わせる、そういった要素がないと、私たちはだめだと思っておりますので、その要素づくりの一つとして、こういったシニアに対するビジネスであったり、子供であったりとか……。
今日はお話はしていませんが、丸の内で働けば健康になれる。例えば低糖質、減塩メニューのレストランがそろっているとか、ウエアラブル機能があって、それが本当にいいかどうかわかりませんが、心拍数であったり、エネルギー消費量が管理されるような機能がついたオフィスの提案とか、そういったこともやっていくというのが、私たち会社のイノベーションを起こすということで取り組んでいますので、その一つとして理科実験教室などにも精力を出してやっております。
(会場A) ありがとうございました。
松田 不動産会社もこれからはハードだけではなくてソフトが必要ということでしょうね。パソコンもハードだけでは動かないではないですか。ソフトがないと動かないということだと思いますね。
(会場B) 今のお話の続きですが、私も三菱のOBで、10年ほど前からある会で、千代田区の幼稚園とかこども園に年に1回か2回行って遊びのお手伝いをしております。それはそれで、子供たちと手をつないでいろんなことをやる楽しみがあるわけなんですが、最近の一つの特徴は、幼稚園もそうですし、こども園もそうですが、千代田区に幼児が増えてきているんですね。10年前に始めたころは、一つの幼稚園で1学年が7~8人、今は10数人。こども園なんていうのは1学年が30人、40人いる。ですから、我々10人ほど行って、100人ほどの子供を相手にするわけです。ある意味では、我々千代田区に住んでいるわけではないんですけど、昔、千代田区で働いていた者として、千代田区が住宅地としても生まれ変わってきたなと。そのお手伝いができるのがいいなと思っているんですが、そちらのほうはそんなことはお感じになられているかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
中嶋 大先輩がこの会場にいるんじゃないかなんて思いながらお話しさせていただく中で、やはりいらしたということなんですが、実際に「ディレクトフォース」という団体の方と小学校を回っていますと、実は全国いろんな地域に皆さん行っていらっしゃるんですね。それこそ被災地もそうですし、関西方面もいろいろ行っています。だけど、一番テンションが上がるのは千代田区だとおっしゃっていただいています。以前、自分が通った地域に貢献できるというのはすごくモチベーションが上がるし、通い慣れているので、電車の乗り換えなどもスムーズで、時間の感覚がつかみやすいので、とにかく千代田区で理科実験教室をやるというと、1回12~13人。給食を出しますので、事前に登録してくださいねとお声がけすると、12~13人といっているのに、17~18人来てしまいます。あまり多いと、1クラスが23人ぐらいで、生徒とあんまり変わらなくなってしまうので、せめて12~13人でと毎回お願いしているぐらいで、本当に思い入れのある場所ということで、皆さんが足取り軽やかに教室に来ていただいているのは私自身も感じております。
(会場B) 子供の数が増えている、幼児の数が増えているというのが大きな特徴だなという印象。それともう一つ言えば、外国人の名前の子供が10人のうち1人、2人というふうに入ってきているという意味で、日本も変わっていっているなという感じがしています。
中嶋 確かに外国籍のお子さんもいらっしゃいますし、特に学校によっては、越境入学というんですかね、自分の住んでいるところではないんだけれども、お父さんやお母さんの働いている学区内であれば通うことができるという仕組みがあるせいか、電車に乗って、麹町小学校などは半分ぐらいがそういった越境入学のお子さんみたいなんですね。なおかつ千代田区ですと、例えば保育園などでも待機児童数がゼロというふうに区の方もおっしゃっていますので、千代田区で子育てをしたいという私たち世代が非常に増えているんじゃないかなと思っています。それは区の教育委員会からのお話でも、すごく教育に力を入れていまして、環境モデル都市であるので、様々な体験を、環境教育だけではなく、幼稚園から中学まで、いろいろな場面を作っている努力の結果じゃないかなと考えております。
松田 では、前半のパネリストからの報告はここまでとして、一旦休憩を挟みまして、後半、パネリスト同士のパネルディスカッション、会場の皆さんとのディスカッションに進みたいと思います。前半の部分、ご清聴ありがとうございました。
後半
松田 それでは、お待たせしました。後半の部を開始したいと思います。
後半は、前半の各パネリストの発表を受けまして、パネルディスカッションということで進めたいと思います。各パネリストに対して、どういう意見、質問を持たれたかということを、パネラー同士での意見交換で進めたいと思います。
前半は各パネリストから、それぞれの立場から見たシニアの課題ということで、あえて言えば、よいシニア、愛されシニアと困ったシニアという話をしました。そして、シニアと多世代が経験を分かち合って、よりよい社会を作る、これを後半にディスカッションしていきましょうというのが狙いでございます。ここで申し上げたいのは、世代間の闘争とか、世代間の対立ということではない。世代間の共創、ともに作っていくというところがゴールであるということ。
それから、冒頭、モチベーションという言葉を申し上げさせていただきました。こちらはモチベーションを考える上で結構大事な調査結果なんです。これは三菱総合研究所がいろんな企業に対して職場のモチベーション調査、従業員の意識調査というのをやっているんですけれども、いろんなモチベーションの要素はあるわけですよね。それはポストや給料があり、どんな企業規模、業種、職種でもこの三つが必ず上に来る。実はそれは老後でも一緒ではないかということです。
一つ目は、自分が成長している実感。現役であれば営業マンとして成長している、財務マンとして成長しているということ。あるいはリタイアしても、ジョギングでタイムが伸びているですとか、絵がうまくなっているということ。
二つ目、誰かからの気づきというのは、社内でいえば、「ありがとう」や「おかげさまで」と言われること。冒頭、皆さんのモチベーションを聞いたときに、承認されるということが結構大きかったですよね。そういった誰かからの気づきということ。これはリタイアした後もそうですよ。よくシニアの方にインタビューしますけれども、リタイアした後、少なくなるのは何か。何でしょうかね。「ありがとう」とか「おかげさまで」と言われることが少なくなるというふうに教えてくれました。それは現役も老後も一緒だということ。
3番目、実はこの3番目が一番効く要因なんですね。深い話し合い。これができている職場というのはモチベーションが高い。辞めない。鬱になる人も少ない。深い話し合いとは何ですかというのは、平たくいうと青臭い議論ということですね。職場でいえば、俺たちの部署は一体何のために働いているんだ、我が社は何のためにあるんだ、と。ちょっと思春期が遅れてきちゃったようなね。今年度をどう乗り切るとか、この四半期をどうするかという話じゃない。老後もそうですよ。リタイアした後も、私は65歳から一体何のために生きているんだと。そういう青臭い議論ができるコミュニティというのは、やはりモチベーションが高い。
逆に、1番と2番があっても3番がないと、企業では人は転職する。外資系のコンサルティング会社、IT企業が辞めるのは、自分が成長していると思っていても、あるいは人から、お客さんから「ありがとう」と言われても、職場で、黙って来て、黙って帰って、フィードバックもなければ、それは辞めるわけです。それはコミュニティも一緒だと思うんです。この三つのモチベーションがあるということが、コミュニティでの生き生きするポイントかと思います。
では、今日の議論を振り返りますと、各パネリストから非常によい問題提起がありました。キーワードで出すと、菊池さんのところでいうと、世代間通訳というのがキーワードだと。世代間同士の通訳をする人材が必要だということ。髙平さんのところでいえば、愛されシニアと困ったシニアという二つがいるんだと。それを分け隔てるのは、髙平さんの言葉でいうと、実はちょっとしたボタンのかけ違いですとか、ちょっとした努力やちょっとした我慢が足りずに困ったシニアになってしまう可能性があるという話だったと思います。中嶋さんのほうでいえば、特に印象的だったのはシニアの理科実験を写真で見て、生き生きとしたシニア、生き生きとした子供、そういったものがまさに多世代共創、ともに作るモデルだと思いました。こういった各パネリストからの報告がありました。
では、パネリスト同士のQ&Aということで、まず菊池さんのお話しされた点について、髙平さんと中嶋さんから御質問、意見がありましたらお願いいたします。
パネリスト同士のQ&A
○世代間通訳の適正人材
髙平 では、私からでよろしいですか。菊池さんのお話、東北の支援も含めて、たくさんのイベントを企画されて、いろいろと活動されているのをとても興味深く拝見したんですが、私はやはり人材をやっていますから、世代間通訳に適した人材というか、適した方というのはいるものなのか。あるいは、実際なさった方の共通点というんですかね、そういったところについて、どんな方が非常にうまくいったとか、そういったお話を聞ければなと思います。
菊池 すばらしくやってくださる方というのは、やはり天賦の才能というもの、生まれ持ってコミュニケーション能力が高い人とか、そういうところになってしまうんですけれども、それだけじゃなくて、よく飲み会とかの幹事をやっている、イベントの仕切りのメーンじゃなくてもいいんですよね。サブ幹事みたいな形でやられているような方に、例えば年配の方がたくさんいらっしゃるので、その人たちにも参加してほしいので、うまく間に入ってくれというと、そういう事務局能力というんでしょうか、場の仕切りを経験したことのある方でしたらば、結構うまくイベントのサポートをしてくださいますね。
髙平 いろんな人の投げてくるボールというか、ストロークをとりあえず受けとめて、それでちゃんと返せる人ということですかね。
菊池 先ほどの松田さんの、ドッジボールではなくてキャッチボール、投げ返すのがうまいんじゃなくて、レシーブがうまい人。レシーブがうまくて、ちゃんと真ん中に返せるようなタイプの方ですと、意外とうまく動いて……
髙平 リベロタイプですかね。
菊池 そうですね。意外とうまくやっていただけるかなと思います。
髙平 わかりました。ありがとうございます。
松田 中嶋さん、どうですか。
○場の作り方と課題解決
中嶋 菊池さんのお話ですとか、資料とかを拝見すると、とにかくいろんな場を作って、そこでコミュニティをつくったり、課題解決であったりとか、いろいろ場によってテーマは違うと思うんですが、場を回す、設定するのってすごく大変だと思うんですよね。当たりの場もあれば、外れの場もあったりする中で、それから生まれる成功事例って、いろんな場を提供して、いろんなコミュニティづくりは私の会社のほうでもやっていますので、すごくそのお気持ちを察するんですが、時々、嫌になったりしないんですか。というか、逆に意図する方向性にその場が行かないことがきっとあると思うのですが、その辺のお話を共有させていただけるとありがたいです。
菊池 正直言いますと、ございます。その場を作って、新しい出会いですとか、そこの化学変化というのが物すごいんですよね。趣味みたいなものでやっているんですけれども、終わった後、泣きたくなるような場も結構ございまして……。
中嶋 その場を作って、コミュニティを作って、私たちの会社ですと、そこからどうビジネスアウトしていくかとか、どういう形づけをするのか、何のための場かということをよく問われるので、今日はぜひ菊池さんにその防御策を習いたいなと思ってお話を伺っていたんですが、やはり場を提供するのも大変ですし、そこから社会に実際に生きるものを見きわめるのもすごく大変だと思うんですが、そのノウハウを是非お聞かせいただきたいと思っているんです。
菊池 三菱地所さんに教えることは、私からはおこがましいので、特にはないとは思うんですけれども、あえて言うならば、イベントですとか、行事ですとか、必ず言われるんですよね。ゴールの設定、落としどころをどうするんだということ。私も昔は異常なまでにこだわっていて、そこに向けて構築していたことがあったんですけれども、このごろ、それがぐるりと回りまして、あえてゴールを設定しない。コンセプトはきちんと立てます。筋は通すんですけれども、ある意味、ゴールを決めてしまうと予定調和になってしまうんですよ。
例えばよくセミナーとかに出た場合、まず講演でお話があって、その後、いい話だったなと、懇親会があって、みんなで名刺交換して、翌日、お礼のメールを出して、Facebookで友達になって、「ああ、いい会に参加した」で終わるということが結構あるんですね。自分でそういうのが嫌だなと思いつつ、自分もそういうことをやってしまっていた。なので、このごろ、あえて崩してみる。落としどころは最低限決めますけれども、ガチッと決めるのではなくて、例えばいきなり絵を描かせてみる。今回の講演を聞いて、イメージを絵で表してくださいと、いきなり大振りなことを振ってみるですとか、微妙に壊し始めているというところに至っているので、あえて明確なゴールを決めないというのが、このごろ、ゴールにしつつあるなというところはあります。
中嶋 大筋はどんなところに向かっているんですか。
菊池 会によって違うんですけれども、東北支援の東長援会の場合は、気づきを得て、個人個人のアクションを起こしてほしいなというところが貫くコンセプト、大枠で、昔は、例えば講演者がいて、こういうことをやっているので、御興味がある方みたいな、軽い誘導みたいなことをしていたんですけれども、あえてそれはせずに、気づきと深い興味でいいのではないのかなというところがあった。ゴールの一歩手前であえてとめて、余韻を残すみたいな、説明が難しいんですが、かえってそうやると運営が難しくなってしまうというのはあるんですけれども、ちょっと曖昧であやふやな感じにしつつあるなというところはあります。
松田 今のゴール、出口を余り明確にしないほうがいいというのは、僕も感じるところがありますね。あと、髙平さんがインターンシップの中で、今、菊池さんが言われたような、自主性だとか、気づきを大事にするという点で、何か共通するようなことがもしあればどうぞ。
髙平 まさに私、インターンシップという、言ってみれば新規ビジネスを考えたときに、最初から収益を考えて企画をして云々ということは逆に考えませんでした。利益をとることを先行するとうまくいかないだろう。それよりもっと純粋に、シニアにとって意識改革がどれだけ大事か、今、ぎりぎりのところにいる人たちの背中を少し押して就労できるようにするためにはどうしたらいいかということを愚直なまでに考えていたときに、最初にまずやるべきは、どんな研修がいいのであろうか、そういったことをまず実験しようと思いました。
その実験過程の中で出てきたこと、ファクトを、いかにキャッチアップして、さらにそれを、今年度になるわけなんですけれども、次の企画にプラスをして、修正していってということで。おかげさまで当社は、必ずしも利益追求型ではなくて、もっとその前に高齢者の雇用創出をするということが一義的にあって、利益は後からついてくる、先義後利の考え方があるので、紹介であるとか、派遣で多少ですけれども利益が出たものを再投資するということで、シニア・インターンシップのほうにお金をかけて、ですから、昨年度は無料にさせていただいた。そのかわり、いろいろモニタリングということで御協力いただいたり、メディアにも一緒に出ていただいたり、今年度もほぼそのような形でやっていって、この試みがいろんな意味で社会の中のインフラの一つとして、モデルになればいいなと。だから、想定をして絵を描いてということは、むしろ違うんじゃないかなというところから入っていますね。
松田 僕も全くそれは同感で、よく企業でも団体でも、出口は何だという人がいますよね。幾ら儲かるんだと。でも、僕も思いますね。出口より入口だと思うんですね。先ほど言われた課題設定で、そこがポイントだと思います。だから、結果的に見ると、菊池さんの仕事なり髙平さんの仕事というのは入口視点というのかな、出口じゃない。そうすれば結果的に儲けはついてくるんだと。
髙平 そうですね。先ほど菊池さんがおっしゃったように、いわゆる化学反応というんですかね、そういうことが起き得る。政治やいろいろな社会の流れが変わることによって、実際に高齢者の年金の受給年齢がどんどん引き上がっていたりだとか、会社の中で雇用延長の問題が本当に出てきているんですが、他方で、その前に辞めてしまった方、失業者はたくさんいるわけですよ。その方たちにとっては何の保証にもならないんですよね。したがって、我々としてはそういった方たちのことも踏まえて、社会全体の中で、できるだけ長く働き続ける仕組み――仕組みなんていうのは自社だけではできませんが、少なくとも求職者の方たちに寄り添って、どういう形で就労マインドをリセットしたらいいのかということについて、すごく問題意識を持っています。
○思いやりの上に成り立つ世代間通訳
松田 菊池さんから特に東北の復興に関連して、そういった大きなプロジェクトを動かすには世代間の通訳、世代間の協力が必要だということだと思いますけれども、会場の皆さんの中でも、地元のコミュニティですとか、今進められているNPOなり仕事の中で、世代間の通訳が必要だと思われる方はいますか。――どういう場面で必要と感じられますか。
(会場C) 私の今までの感覚で言いますと、例えば私は日露戦争とか日清戦争というのは実感していません。したがって、インターネットの上で日清戦争というのはこういうものだったということを知ることはある程度可能です。ところが、戦後生まれの方というのは、大東亜戦争、つまり第二次世界大戦すら、経験的にいうと私の日清戦争と同じようなことになると思うんですよね。ということは、世代間というのは絶対値なんですよね。お金というのはある意味で相対値なんですけれども、1900年に生まれた人、2000年に生まれた人、これはもう絶対に違いがあるわけです。時間というものについていえば人類共通、あるいは宇宙でも共通の経過する価値ということの中で、世代間を埋めるのはそれなりの努力といいますか、お金がかかるといいますでしょうか、そういったことが必要だろうと私は思っております。
松田 ありがとうございます。どうぞ。
(会場D) 今の方のお話にも多少関連するんですが、菊池さんと髙平さんのお話を聞いて一番感じましたことは、皆さん、20代、30代で今の仕事に変わられているわけですね。先ほどの入口の話ではないけれども、変わられたときに、御自分の将来の生活のことまで、どこまで考えられたのか。私は昭和の時代、働いていたわけですが、働いていた40年間は、働くことによって家族を養い、子供を教育するというのが第一の仕事で、それを踏まえながら、一生懸命ボランティアもやる、働きもするというふうな生き方をしていた。それが最近の方は、先ほどの菊池さん、髙平さんの話では、20代、30代で仕事を変わられるという方が結構増えているみたいですね。20代、30代で仕事を変わられるという人が、100人のうち何人ぐらいいるのかなと。私の感じでは、多くてもせいぜい10人とか20人で、70人、80人は、今の働いている仕事をずっと延長して続けることによって自分の生活があると考えられておるんじゃないのかなと。
そういう前提であれば、世代間の相違というのがあっても、最後、中嶋さんがおっしゃられたと思うけれども、世代間の差というよりも、御自分の生きざまというか、考え方なんだ、決心のあり方なんだということをちょっとおっしゃられました。物の考え方というのか、世代によって考え方は違うとはいえ、基本はどうやって生きていくのかということなのかななんて、先ほどから悩みながら、どうせ私はあと10年か20年、悩んで生きれば終わりなんだけれども、ちょっとそんなことを思いながらお話を聞いていましたら、今、日露戦争と大東亜戦争の差の話が出ましたので…。
松田 それは世代を問わず、生き方というのは違うということですね。もう1人、御質問されたい方、どうぞ。
(会場E) 反対意見なんですけれども、私は40年間、コンピューターの仕事をしていまして、定年退職のときにキャリアカウンセラーの資格を取って、問題解決型の人間からヘルパー型の人間に変わったという経緯があるんです。世代間の交流の究極の話って、さっきの理科の実験じゃないかと思うんですね。子供とおじいさんの交流が、最初はうまくいかなかったのが、いろんなことをやって交流できるようになりました。これはまさしくお互いが相手の立場に立った気持ちになってでき上がったことであって、コミュニティがある程度同じような気持ちを共有しながら集まったものであるならば、相手の立場に立って会話をすれば、世代間というのを意識せずに交流できるんじゃないかというのが私の考え方なんですよね。
ですから、今、私はマンションの理事を担当していまして、やはり世代間とか、いろんな住む環境の違う方を取りまとめなきゃいけないんですけれども、まさしく自分の発言が相手に通じているかどうか、相手の顔色を見ながら、あるいは直接声に出してわかってもらえたかどうか確認しながら交流すればいいんじゃないかなと。ですから、世代間という意識をすればするほど世代間が出てくるわけで、そういうことは意識せずに、相手の立場に立った交流をすればいいんじゃないかなと思います。
松田 なるほど。どうぞ。
菊池 おっしゃるとおりなんですよ。基本はそこでして、こういう世代間通訳云々と言ってみたところで、まず参加者の方がお互い理解したいなとか、相手はどういう方なのかなとか、おっしゃったように思いやりですよね。そこがないと、何をやっても本当に焼け石に水じゃないですけれども、無駄なんですよね。なので、相手を思いやる、お互い尊敬し合う、相手の立場を考えるというのが私も同じく一番の基本、まずそこからだなと思っております。私の言う世代間通訳というのは、それがあって、その上に成り立つものであって、相手を思いやる気持ちを仲介するといいますか、促進させる形なんですね。なので、おっしゃるとおり、思いやりですとか相互理解があって、ちょっとプラスアルファの話としての概念として私は考えております。
松田 資料8ページの写真を最初に出しましたけど、確かにマンションの理事会とか地域の自治会でこうなっちゃうケースがあるんですよね。目上の人を尊びましょうになっちゃうので、これはやっちゃいけない。そういったときに、裃(かみしも)を脱いで、真っさらな目線に立てるというのは、今言われたような相手を思いやることでできるんですけれども、なかなかそうはいかない。そういったときに、菊池さんの進めているような世代間通訳、あるいは髙平さんが言われたようなちょっとしたトレーニングみたいなこと、あるいは中嶋さんが言われたような理科実験のようなアクティブシニアの姿を見れば、自然と相手を思う立場になるんだろうなということだと思います。
(会場E) 一言だけ添えると、キャリアカウンセリングの資格を取ったときに、問題解決型に走ったら絶対に資格は取れないんですよね。相手の話を聞いてあげるというヘルピングのスキルが重要であって、ですから、そういう気持ちになれば、ああいうおじさんみたいにならずに、裃(かみしも)を脱ぐというのは、自分を主張するんじゃなくて、相手のことを聞いてあげるという立場で交流ができるんじゃないかというふうに思います。
松田 次に、髙平さんに対する質問ですね。菊池さんから意見ですとか御質問がもしありましたら。
○愛されシニアの定義
菊池 髙平さんの仕事を聞きまして、私には務まるかなというぐらい、なかなかハードそうだなということを感じました。でました「愛されシニア」という言葉なんですけれども、いろんな要素が集まっているとは思うんですが、やっぱり一番愛される条件は何なんですかね。みんな、いろんな要素の複合体だとは思うんですけれども、あえて一言で、こういうシニアが、社内的といったらおかしいんですけれども…。
髙平 やっぱり包容力があるといいますか、懐が深いという方じゃないかなと思います。一見、おちゃめな方が人気がありますね。明るい、おちゃめな方が非常に人気といいますか、私が見てきた事例の中ではうまくいくように思います。
菊池 私の事例でも結構共通するところで、私は年配の先輩に失礼な言い方なんですけれども、男性シニアの場合、悪餓鬼のようなシニアが我々世代より下にめちゃくちゃ受けるんですね。多分、包容力というか、何というんですかね。
髙平ふだんはそんなに出ていかないんですけれども、何かあったときにはちょっとした知恵を出してくれる、こうなんだよということで、現役の方をサポートしてくれる。自分は1番じゃなくて、要は黒子役というんですかね、そういうことでキラッと光るものを持っていたりとか、そうすると若い人たちもすごく頼って、上司に言えないことも「○○さん、ちょっと話を聞いて」という感じになりますので、そのあたり、先ほどの世代間通訳じゃないんですけれども、やっぱり感情を認知する力が衰えていない方。もっと平べったくいうと、相手の気持ちになって人の話を聞くということですよね。むしろ聞き手、先ほどの方がおっしゃったように、問題解決よりまず聞くこと、そういう度量をお持ちの方なのかなと思います。
菊池 レシーブ力というやつですね。
髙平 そうですね。
菊池 なるほど。わかりました。ありがとうございます。
松田 中嶋さん、どうですか。
○シニア・インターンシップの考え方
中嶋 髙平さんのインターンシップのプログラムの中で、Facebookの使い方ですとか、キャラ萌え体験でしたっけ、メイドカフェか何かに行ったりとか、そういうものがいろいろあったと思うんですが、Facebookとかはイメージ的にシニアの方がなかなか使ったことがない機能、SNS機能とかというのでイメージが湧くんですが、キャラ萌え体験みたいな、社会科見学的な要素で入れられているプログラムなんですか。そのプログラムの内容の作り方とか、どういうふうにお考えになって作っていらっしゃるのかお聞きしたいなと思って……。
髙平 シニア・インターンシップを考えたときに、我々としては研修会社として何かを教えるのではなくて、何かを感じていただく研修にしようというのがまず一つ、一番大事なところであったんですね。したがって、我々が提供するものというのは、知識だとかそういうことではなくて、何らかの刺激、あるいは何らかの触発するような触媒、何かそういうきっかけになるものをシャワーのようにどんどん情報提供することで、研修生がそれをどういうふうに意味づけ、また自分の中で位置づけるかというのは、それこそ化学反応だと思っていました。
そのときに、やはりインパクトがあるのは、今、例えば日本で文化とまで言われているアニメだったり、秋葉原だったり、今の学生、30代の方、そういう方とのしゃべり場。先ほど深い話し合いとか、青臭い議論とか、そういう話が出ましたけれども、まさにそれだなと思って、しかも、ふだん接しない方ですね。
それから、デジタルハリウッド大学というのは本当に最先端のコンテンツビジネスを教えている学校ですから、その学生さんたちから、何を自分たちが学んでいて、どうしてそれが面白いと思っていて、これからどうしたいかなんていう話を聞くことで、自分の中で自分のセカンドキャリアといいますか、次の壮年時代をどういうふうに生きるかということのきっかけになればというふうに思ったんですね。
ですから、何か普通のことではそんなに変われないといいますか、刺激にならないと思ったし、今まで持っていた御自身の価値観であるとか視座というものをどうやって変えていくか、あるいは変えるまでもなく広げるか、何らかの形で進化するか。そういうことをすごく狙っての企画でした。
中嶋 こういったインターンシップは無料で提供しているんですか。そういうわけではないんですか。
髙平 昨年は無料で提供しました。多分今年もそれに近い形になると思います。
中嶋 登録者の方に呼びかけをして、御参加を促しているという形なんですか。
髙平 実は登録者の方ではなくて、企業人事の方にまずはアプローチをさせていただいて、この企画をし、いわゆる再雇用の対象者の方ですね。ですから、50代後半から60代、そういった方たち。ちょうど昨年4月に高齢者の法改正がありましたけれども、企業側は人を選べなくなっちゃったわけですね。希望者全員、再雇用しなくちゃならなくなったので、それに伴って企業の中のいろんなニーズがありますので、いろんな意味で意識を変えたいと。給料がいきなり20万とか25万になっちゃうわけですから、モチベーションが下がりますよね。それを何とかしたい。高齢者、高齢期には高齢期の就労に必要なマインドというのをいま一度リセットして、そういう話を人事の方とたくさんしていただいて、エプソンさんを初め数社の会社から派遣をしていただいたという格好です。
中嶋 ありがとうございます。
松田 僕は助走期間ということだと思いましたね。いきなり自分のセカンドキャリアを転職というのは、相当ハードルが高いと思うんですね。まさに助走期間の部分というのが、シニア・インターンシップの役割ということですかね。
髙平 我々の会社というのは60歳以上がターゲットだったわけなんですが、最近、実は50代の方がたくさん来ていて、何を言っているかというと、再雇用で残るのも地獄だし、外に出て転職して再就職をするのも地獄だし、いずれにしても大変なんだということ。ただ、何としてでも少なくとも65、あるいは70まで、経済的な理由もあるし、何とか働きたいんだと。そういうことで、50代前半から、60になってから再就職は難しいだろうから、50のときに次の10年、15年を見据えたいという方が御相談に見えることが増えてきていますね。
松田 実際、私もインターンシップを見学させていただいたんですけれども、非常に傾聴力が求められると思いました。人の老化を防ぐものは幾つかあるんですけれども、医学的に証明されている一つはポジティブシンキングということですね。ネガティブな人っているじゃないですか。何か言うと「俺の経験ではだめだ」とかネガティブに批評する人、そういう人は長生きできないそうです。もう一つ、長生きの秘訣は受容性。受容性というのは、聞いたときに「それ、いいね」と言える。傾聴できる。これは間違いなく老化を防ぐ、健康寿命を延ばすということだと思いました。
では、会場の皆さんの中で、マイスター60さん、髙平さんが話されたシニア・インターンシップについて、御質問や御意見がある方、もしいらっしゃいましたらお願いいたします。どうですか。自らインターンシップを経験してみたいという方ももしおられれば。どうぞ。
(会場F) 端的に伺いまして、そのインターンシップは、私は先ほど中嶋さんが聞いておられたように、登録しておられる方かと思ったんですけれども、人事が再雇用のまな板に乗った人を集めてとおっしゃったんですが、どのぐらい髙平さんのお目にかなったか、あるいは逆に言えば、箸にも棒にもかからなかった人はどのぐらいいるのかというあたりを、よければお聞かせいただければ。
髙平 箸にも棒にもとか、そんなことはなくて、特に今回、参加してくださった方たちは、逆にすごく意識も変わりましたし、いろんな意味で優秀だったなと感じています。ほかにも候補の方があったんですが、会社の中でどういう位置づけでこの研修を受けさせるのかとか、誰なのかとか、この研修は決してリストラを助長するものではなく、高齢社員を生かすための研修ということで、まず最初にお断りをして人事の方に営業をかけましたので、そういう意味ではリストラのためではないということをお話ししました。恐らく今までは、たそがれ研修とかいって、50代後半になってくると、年金の計算だとか、退職金は幾らですよとか、こんな話があったと思うんですが、再雇用をしてから5年、あるいはそこから先を見据えた何らかの研修が必要じゃないかなと思っております。お会いした方は皆さん、どなたも、特にこれはだめだということは思いませんでした。
(会場F) ありがとうございました。
松田 どうぞ。
○シニアの人材雇用
(会場G) 私も先ほど中嶋さんがお話しいただいた「ディレクトフォース」という、シニアの人間が集まっている団体に入っているんですけれども、そこで会員の就職先という人材紹介の仕事もやっているんです。クライアントというか、65から70になりますと、なかなか声がかからないというつらさがあるんですけれども、マイスター60ではどういうふうにクライアントを探してくるのか、何かコツがあったら逆に教えてほしいんです。
髙平 まず年齢は関係ない、年齢は背番号である、人生に定年なしというのが当社のスローガンなんですね。年齢じゃなくて何がどれぐらいできるのかとか、必ず人材ニーズの中には調達ニーズというのがあって、何をどういうふうにしたらどうなるんだというようなことで、ここは問題解決思考になっちゃうんですけれども、その方の職業能力といいますか、そういったものをかなり具体的にお示しして、こういうことであったらこういう方がいるんじゃないでしょうかという御提案ですよね。その方が67歳でしたと、年齢を言うのは最後ですよ。最初は絶対、年齢を言わないんですね。そうしないと、もうそれだけで「いや、ちょっと使いづらいから嫌だよ」と言われちゃうのが落ちなので、まず年齢は言わないです。どういう能力を持っている人、どういう経験値を持っている人、どういう方がいればいいですか、イメージありますかみたいなところから入って、この方、こういうことができるんですよ、こんな経験も持っています、そういう話をして、八分ぐらいまとまったところで、さて、この人は実は68歳ですとか、70歳ですみたいなときに、「おっ」と驚くんですが、今までこういう形で実績をこれだけやっていますので、年齢は関係ないですよねという話をするんですね。そこからはまたちょっと大変なんですけれども、最初から年齢は言わない、そこがコツですね。
松田 ありがとうございます。
では、最後に中嶋さんの発表に対して質問ということで、菊池さんから。
○地域育成と土地活用
菊池 中嶋さんの話を聞いてまず思ったことが、ノマドワークって出たじゃないですか。弊社も全員ノマドワークで、不動産屋さん等には一切貢献していない業種なんです。感想から入ってしまうんですけれども、大丸有エリアって、私、今までここで働いたこともないし、通過するか、飲みにはよく来るんですが、その程度のかかわりしかなかったんですけれども、話を聞いて、ノマドですので、私はどこでも仕事できるんですね。いつも新宿とか池袋とか渋谷方面だったんですけれども、中嶋さんのお話を聞いて、三菱地所さんが旗振り役になって、コミュニティより地域というんですかね、そういうのを作ろうとしているなというのをひしひしと感じたので、ノマドの拠点をここら辺に移そうかなと思いました。これは私の個人的な感想なんですけれども。
お聞きしたいことが、先ほど多世代の交流ですとか、そういうふうなことも考えているとおっしゃっていましたけれども、実際に多世代間、シニアや若手、ミドル等が交流するイベントですとか、新しい動きというのは、もし何か動いていることがあったらば実例を教えてほしいなと思います。
中嶋 まず一つ目、ノマドの拠点としてぜひ菊池さんにお勧めしたい場所が実はありまして、期間限定で弊社として、建て壊し前のビルというのは、数か月間しか貸しに出せませんので、なかなかオフィステナントなどが入りにくいんですね。そうすると、そのまま建て壊すまでの例えば半年間とか1年弱の期間というのは空き家状態になってしまうんですが、そこの有効活用として、実は今年の1月から来月の8月まで、仲通りに面している富士ビルの3階に3×3Labo(さんさんらぼ)という場所を設けています。ここは1月から8月までの期間限定で、その期間、2,000円で登録すれば、朝10時から夕方6時までは使いたい放題、ネット設備も、もちろんWi-Fiも完備しています。
実はそういったことをやるのは初めての試みでして、本当に1坪何十万という金額で、細かくは賃料のリーシングはどういうふうにやっているか、私も把握はしていないんですが、丸の内という場所で、例えば私がいる新丸ビルの10階のオフィスは、1時間4万円でセミナーをする際には貸しているんですね。これは定価です。なかなかそうなると、借り手はいないわけではないんですが、やはりそこに敷居があって、本当は入ってきてほしい、もっと一緒に時間というか、思いをともにしたい方々が入ってこられないというハードルがあったんですが、3×3Laboというところは、期間限定だし、運用も考えるのが大変だから、とにかくただで使っていいということで無料開放しています。セミナーをやっても早い者勝ち。とにかく場所取り合戦で、早く時間と場所を押さえてくれて、変なことをやられたら困るんですけど、内容は精査しますが、特に内容が問題ないものであれば、今、無料で貸しています。そのため、連日連夜、セミナー合戦で、こんなにこういう取組でやっている方は多いんだなというのがあります。
正直、私、運営側から見て、ここは丸の内エリアの空き地だなというふうに思っています。同じような貸しスペース、会議スペースは、例えば新丸ビルの私たちがいる10階ですとか、丸ビルホールとか、エムプラスとか、いっぱい弊社は抱えているんですけれども、あえて無料にしたことで寄ってくる、集まる方もいれば、その中で私たちのビジネスにどう近づけるかというのが課題であり、空き地は空き地で大事だなということもわかりながら、今後、その空き地をどう運用していくのかが一番重要かなというのを考えているところでもあります。
それから、多世代の交流の場ということで、先ほど私が盆踊りのお話をしましたが、その場が子供から年配の方まで集まる場になっているのではないかと思っています。プロジェクトとしては、プラチナシニア大学構想ですとか、そういった方の卒業生を人材として抱えながらビジネスアウトできるような、それをクラウドファンディングなどで投資をしてお金を集めていくような仕組みができて、新たなシニア層のビジネスプラットフォームみたいなものを構築できれば一番いいなと考えてはいますが、ノウハウですとか、具体的なプランといったものはまだ練っている段階です。
菊池 ありがとうございます。では、空き地も含めて、シニアの新しい活動も含めて、注目させていただければなと思います。ありがとうございました。
松田 では、髙平さんから。
髙平 私、地所といえば丸の内、丸の内といえば地所というのが頭の中にブランディング的にもう既に入っているんですけれども、お話を聞いて、単なる丸の内のリニューアルというか、まちづくりだけじゃなくて、コミュニティまで、さらにそのコミュニティを広げていく。一つのハブ機能みたいな、そういうコンセプトでやっているというのはよくわかって、なるほどなと思った次第なんです。
ただ、他方で、やっぱり丸の内というのは、日本で丸の内だけなんですよね。地方であったりとか、中堅の別の県の都市でそういった横展開を考えておられるのか、地方連携ですとか、東京一極集中でなかなか地方が活性化しないという話もあります。地方の中に様々な共生をしていかなければという声もよく聞きますので、地所さんとして地方連携、地方展開みたいなものは、丸の内のモデルで、ミニ丸の内でも結構なんですが、何か御計画とか、そういったものはあるんでしょうか。
中嶋 計画というわけではないんですが、皆さんのイメージの中で、地所といえば丸の内、丸の内といえば三菱地所だというお話は耳にたこができるぐらい、私どももたくさん聞いているんですが、決してそのつもりがないというのは御理解いただければなと思っております。三菱地所という会社は実は中小企業でして、社員は六百六十何人しかいない会社なんですね。私たちの思いとしては、日本といえば首都が東京で、その東京の目の前に広がる場所が丸の内であるから、日本の中心地であるという意識はある中で、丸の内だけが盛り上がればいいという考えは、私たちのグループ会社一丸となってそういった思いはありません。東京オリンピックも2020年に決まっている中で、東京というふうにはついているものの、日本をどうアピールしていくか。その中での丸の内の役割は、丸の内が地方のハブとなって、情報の集約点になるべきじゃないかと思っております。
既にお話ししたとおり、近隣のエリアですとか、近隣の就業者を対象に、「丸の内朝大学」というものを運営しておりますが、そこで「地域復興プロデューサークラス」といったものがあります。東京にいながら、三重の魅力であったりとか、新潟の魅力であったりとか、沖縄であったりとか、地方自治体の方と一緒になって、その土地の特徴ですとか、どういったアピール方法があるかというのを、エリアに働く就業者と一緒にプロジェクトとして考えております。その場所がまだ全国各地、例えば1都43県、全部とつながっているわけではないんですが、私たちの東京任せというふうに思っていただいては困る。地方、地域の方がどうアピールするか、その知見を丸の内であったり、東京の中心にいる情報発信力のある人間と、どうともに作っていきたいかという思いを共有してくださることが大事であり、私たちが旗を振るだけではやはり難しいというのが現状としてあるんですね。
その中で、私たちは地域に目を向けて、それを束ねるということが役目だと思っておりますので、朝大学を初め、それ以外の支店なども大阪であったりとか、もちろん仙台であったりとか、札幌などありますので、そういった支店との連携も踏まえながら、まちおこしというか、地域を東京に束ねて情報発信していくということはやってはいるんですが、やはり本業は不動産で、テナントでの賃料収入となりますので、地域活性とかが一番の主軸かというと、そこはやっていないわけではないんですが、見えにくいところがまだまだあるんじゃないかなと。ただ、先ほども話したとおり、ハードだけでは引っ張っていけないこともよくわかっている中で、ソフトの部分のコミュニティ、アウトプットをどう打ち出していくかということが弊社としても課題なのではないかなということは常々思っているところでございます。
松田 会場の中で中嶋さんの報告に対しての御意見とか御質問はございますか。どうぞ。
(会場H) 理科教室の件は非常に興味深く拝見したんですが、講師はどんな方がなさっていらっしゃるんですか。
中嶋 この会場にも所属されている方がいらっしゃるんですが、会社を定年された役員経験者の方が御紹介で、「ディレクトフォース」という一般社団法人に所属されていると伺っております。
(会場H) そこから講師の方が集まっていると。
中嶋 そうですね。「一般社団法人ディレクトフォース」の中で、お聞きしているところでは、多分、登山部とか、カラオケをするとか、ゴルフとか、いろいろあると伺っております。
(会場H) 私も500人のリタイアした講師を集めているNPOなんです。それであちこち、理科教室だとか、そういうところにも派遣しているんです。もう十数年のキャリアがあるんですが、古くなっちゃいまして、新しい人がそこに入ってきて、今まさに内部での世代間交流みたいなものが一つの課題にもなっているんですが、それ以外に、私たちから紹介する相手が、市民講座だとか、そういうところの講師で派遣しているんです。そうしますと、それを受けに来られる方はまちまちの年齢層、そこに対してどういう形で講演をやるか。そのとき、ずっと観察していますと、あえてこびないほうがいい。リタイア組というのは人生の経験者ですから、その道一筋の職業の専門家でもあるし、さっきおっしゃった太平洋戦争の経験者の方、あるいは疎開の経験者だとか、人生のいろんな分野の経験者が市民に向けてお話しなさる。こびないでそのまま話をすると、受け取る側もそういう形で素直に受け取ってもらえる。世代間であえてこびる必要がないんじゃないかと。先ほども話があったように、生きざまがそのまま伝わっていけばいいんじゃないかと感じているわけなんです。
○愛されシニア・困ったシニアの実例
松田 ありがとうございます。
では、パネリストの方に私から質問したいんですけれども、今日、多世代の視点ということで、髙平さんのお話の愛されシニア、困ったシニアでいうと、それぞれの目から見て、私にとっての困ったシニア、私にとっての愛されシニアというのを一言で言うとどういう人ですか。結構難しいですけれども、一言で簡潔に言うと、菊池さんにとっての困ったシニアってこういう人、愛されシニアってこういう人というのをお願いできますか。
菊池 困った方から言うと、私は年齢差とかを余り意識しないタイプなんで、この前も69歳と2人で北京旅行に行きました。こっちはそういう気持ちなのに、話しているときに「君は若いからまだわからない」と言われてしまうと、生きた年数が上じゃないと物はしゃべれないのかということで、私はつむじを曲げてしまう。いろんな例はあるんですけれども、「君はまだ若い」とか、そうして会話を一方的に打ち切って意見を押しつけられるのが、一番腹が立つとは言いませんが、一番だめだなと私や周りは思っております。
松田 わかりました。では、自分にとっての愛されシニアは何でしょう。
菊池 やっぱり女性は女性らしい方、男性は男性らしい方なんですよね。早い話が、先ほど申しましたとおり、人気のあるシニアは、男性の場合、悪餓鬼タイプが多いというと、年齢差は一切ないんですよね。遊び仲間のお兄さんぐらいの感覚になって、「○○さん、飲みに行きましょうよ」みたいな感じになります。でも、ただ悪餓鬼なだけじゃないんですよ。さっき生きざまという話が出ましたけれども、何かあったとき、こそっといいことを耳打ちしてくれる。何か困っているときに、陰で何となく応援してくれるみたいな、年齢は離れているけれども、30歳違いの兄みたいな形になるんですね。
女性の場合は、やはり女性らしさってすごく大事だなと思いました。この前、県のイベントで80代の女性2人と話したんですけれども、終わった後、「○○さんのメールアドレス聞けばよかった」という、同世代と合コンしたような感じになっていまして。男性らしいシニア、女性らしいシニアというのは、非常に親しみやすいというのがあります。
松田 ありがとうございます。では、髙平さん、私にとっての困ったシニアと愛されシニアというのを簡潔に言っていただければ。
髙平 困ったシニアに関しては、先ほどいろいろと事例を掲げさせていただいたんですけれども、要するに、自分自身を信じていないんですね。自信がないということなんだと思うんですが、自信というのは自分を信じると書きますよね。つまり、自分を信じられるだけのいろいろな思いに至っていないということで、自分で自分を否定している方というのは残念かなと思います。皆さんそれぞれにすばらしい点を必ず持っていらっしゃると思うんですね。そこのところまでも否定するような、自分をおとしめてしまうような、自分を信じられない方というのがちょっと残念かな、困っているなと思います。
他方で愛されシニアはどういう人なのかなと思うと、私がいいなと思う愛されシニアは、いろんな意味で潔い人ですね。自分の人生に対しても、そしてこれからの人生の完結に対しても、いろんな意味で潔く、かつ客観的に自分のことがわかっている方、そういう方は自己理解が進んでいますから、他人のこともよくわかる。だから、人の気持ちも理解できるということで、一言で言うと潔い人。
松田 なるほど、わかりました。中嶋さん、どうですか、一言で言うと。
中嶋 仕事柄、前職はマスコミにおりまして、マスコミ時代も報道におりましたので、取材ですとか、そういった現場で年配の方からいろいろ教えを請うことはあったんですが、困ったシニアというと、その場の空気が読めないというのが私自身あるんじゃないかなと思っています。そうすると、うまくいくものも物事が進まなくなるんじゃないかなと感じています。
愛されシニアというのであれば、後輩というか、私世代からいうのであれば、甘えさせてくれるというのが一言で言うとあるんじゃないかなと。俺たちはもう何かしてもらう側というよりは、私たちを甘えさせてくれるというシニアがすごく魅力的だなと思っています。
松田 それぞれ愛されシニアというのは、甘えさせてくれる、あるいは髙平さんの話でいうと潔い、菊池さんの話でいうと男らしい、女らしいというのがキーワードで出てきたかと思います。
今日、こういった討議をしてきたんですけれども、総括して、コーディネーターとしてまとめてみたいと思います。
○これからのシニア活用のアイデア
今後のアイデアということで、高齢社会フォーラムをやる中でこういったことが必要じゃないかということです。やはり世代間通訳の人材というのが決定的に不足しているなと思いました。こういったものを公的機関、あるいは民間のところでどんどん作っていくべきだということ。
二つ目は、脱たそがれ研修。たそがれ研修というのは、企業の中で、私、今年48歳になるんですけれども、50近くなると、セカンドキャリア研修とか、セカンドライフ研修というのがあるんです。それは、あなたがこれから50を過ぎると、給料はこういうカーブで減っていきます、ポストはなくなりますという、極めて元気が出なくなる研修らしく、それで「たそがれ研修」と言われている。それを50近くなってからやるのでは僕は遅いと思う。今日、ここに集っている皆さん、リタイアした人もいれば、現役の人もいるかもしれませんけれども、30代、40代ぐらいに、自分の60代、リタイアした後を考えておく。それはたそがれ研修では遅い。脱たそがれ研修というのを企業の人事研修に組み込んでやるんだということ。
三つ目、シニア義務教育制度。これはちょっと乱暴なんですけれども、小学校義務教育と同じように、65歳になったら学校に行かなきゃいけない。特区でもいいですよね。シニア義務教育特区。日本人は「行きましょう」と言っても一歩踏み出せないんです。義務だというと「しようがねえな」と言いながら結構燃えてしまう人が多い。
もう一つ、ストックです。小学校は全国で2万校、中学校は1万校、高校は5,000校、大学は800もあります。それが少子化で、今、スカスカなわけです。そうすると、集う場というのは地元でも大学でもあります。昔通った学校で幼なじみと会うのもいいし、自分の母校の高校や大学に通うのもよし。集う拠点を、例えば65歳以上義務教育特区制度のようにやって、そこで地域コミュニティでやっちゃいけないこと、やるべきこと、あるいは、高齢社会って何、健康づくりって何、コミュニティビジネスって何ということをもう一回学ぶんだというような仕組みですね。
4番目は、人生二期作か二毛作かということ。二期作というのは、米なら米、麦なら麦を1年に2回とること。二毛作というのは、米と麦とか、米と野菜みたく、違う種類のもの。私は、18や22や24で選んだ自分の会社が、転職したとしても、65で終えた自分のキャリアが全てだったとは思えないんですね。二期作の人は、ずっと営業マンだった人はリタイアしても営業マンをやりたいとか、経理だった人は経理に関係する、デザイナーだった人はデザイナーというのはありますけれども、リタイアした後、全く違う人生を歩むことだっていいのではないか。だって、1950年は60で死んでいたのが、今は80以上、多分90まで延びると思います。そういう世の中なので、人生二毛作というのがアクティブシニアのライフスタイルだなと思いました。
五つ目は制度設計です。これは地域社会に参加している人、あるいは、もう一回、シニア・インターンシップに通っている人ですとか、丸の内のシニア大学で学んでいる人、あるいは東北の復興に参加しているシニアは、何らかインセンティブがあるべきだと。それは補助金をばらまくものじゃないんです。さっき申し上げた税収40兆か45兆の国が、医療費38兆使っている国なわけですよ。そんなところに補助金なんてばらまく金はないとすると、減税です。そういうことをやっている人は、所得税なり、住民税なり、最近は相続税でしょうね。この減税をドライバーにする。それが制度設計ですよ。補助金頼みじゃなくてということ。
あるいは医療費。こういうところに参加している人は、多分、一般と比べて健康な人が多いんです。そういう人は、医療費は安くするべきなんです。あるいはプチ就労。これから地域コミュニティでちょっと働いた、あるいは大学で学んだ人は、時間制度で、例えば100時間働きましたといったら、自分が要介護4になった、5になったときに、その100時間を自分の介護に使える時間制度。介護保険で、今幾ら使っているか知っていますか。10兆円ですよ。医療費38兆、介護保険10兆の国。税収は今増えて45兆になったけど、債務超過です。であれば、今言ったような、自分のちょっとした労働や学習時間を将来の介護に使えるですとか、それから、ポイント制。エコポイントって一世を風靡しましたね。あれもできたときはいまいちの評判だったけれども、結局、環境にいいことをしたことは消費に還元できるとなると、結果的にうまく使われた。であれば、健康にいいこと、高齢化にいいこと、それをシルバーポイントというのは何となく地味なので、プラチナポイントみたいな形にしてやれば、それもいいだろう。つまり、補助金だとかに頼らない制度設計。それは減税であり、インセンティブであり、時間制やポイント制が大事だろうということです。
○新たな挑戦をするために
こういう話をいろんなところでするわけです。企業でもしますし、官庁でも自治体でも大学でもしますけれども、いい会場、いい職場というのは、「やろうぜ」「頑張ろう」「明日からやろう」となりますけれども、だめなコミュニティに限って、こういうリアクションがある。
資料の1番、「それは日本では難しい」とか、「うちの地域は特殊だ」とか、「そもそも制度が違う」というような、できない理由をロジカルに言って得意になっている人が結構多い。得てして優秀な人に多い。それは現役も老後も一緒。結局、そんなの俺の経験ではだめだと言ったところで、何の解決にもならないわけです。であれば、対案・代案ルール。否定、批評は結構ですけれども、必ず対案・代案を出す。これをするだけで、自治会もコミュニティもNPOも変わりますよ。是非やってください。言いたいことは紙に書いて、あるいは対案・代案ルールだけで劇的に変わるんだということ。
資料の3番、コミュニティ通訳不足症候群ってあるんですね。これは世代間通訳ですけれども、要は断絶するところがある。それを補うためのコーディネーターなりファシリテーターが必要だと。私たち三菱総研の中で、シニアの知見を高校生に生かしましょうというのを結構やったんです。高校生にシニアのキャリアを教える。そうすると、たくさん人数を経験すると、アンケート結果で人気のなかったテーマというのは特徴がある。何だと思いますか。君たちに伝えたいこと、これが大体人気がない。偉そう、上から目線、自慢話、武勇伝。人気があるテーマは何だと思いますか。君たちと一緒に考えたいこと、あるいは、君たちと一緒にやりたいこと。これは主語が「I」から「We」になるわけですよ。君たちに伝えたいことは、主語は「I」「俺が、俺が」になる。だけど、君たちと一緒に考えたいことだと「We」になるわけですよ。ちょっとしたことを言ってあげるだけで劇的に変わるというのは、こういった通訳が必要だということ。
4番目、居酒屋弁士というのは、お酒の席では雄弁なんだけれども、こういうところに来ると急に黙っちゃう人が世の中多い。東京だと神田や新橋にこういう人がよくいますよね。酒の席で盛り上がっちゃってね。お酒の席はいいことを言っているんですよ。要は、それを現場で使いましょうということ。
この分科会のまとめということなんですけれども、今日の「多世代からみたシニアの意識改革」ということをもう一回総括、まとめますと、お手元の資料18ページになるんですけれども、まず一つは、高齢社会とは何かというと、高齢者のためだけの社会じゃなく、多世代のための成熟した社会である。それはシルバー社会でなく、プラチナ社会だということです。
二つ目、その中でシニアは社会のコストでなく担い手であるということでございます。
三つ目は、多世代から見たシニアへの期待と課題というのを、今日、最前線で活躍されている第一線のパネリストから報告していただきましたけれども、非常に気づく点、ハッとする点、多かったと思うんです。ただ、これは世代間闘争じゃなくて世代間共創。お互いのいいところを意識しつつ、共に作っていくんだということが大事だということです。
4番目は、深い話し合いということですね。職場のモチベーション調査をやったときに、資料12ページの三つの因子があったときに、3番目の深い話し合いというのが職場では一番効くモチベーションだと。実はそれはリタイアした人のコミュニティでもあって、地域社会でも深い話し合い、我が地域はどうあるべきか、我がNPOはどうあるべきか、こういった青臭い議論をしているところが強いんだということです。そういうことが冒頭話したモチベーションの源泉になるということでございます。
最後、一歩踏み出せない人々を助けよ、ということです。ここに「一歩踏み出せない症候群」と書きましたけれども、今日、イイノホールに集まっている方々は既に一歩踏み出しているわけです。でも一方で、今回の高齢社会フォーラムの案内を見て、ここに来たいと思いながら来なかった人も多数いるわけです。あるいは、こういうことに興味がなくて引きこもっている人もいる。そういう一歩を踏み出せない人々というのを、アクティブなシニアが連携して、一歩、背中を押してあげる。これが大事だということでございます。
○プラチナの国を目指して
今日、長々と話しましたけれども、毎年、ダボスの世界経済フォーラムがありますよね。それは、経済のことが知りたければスイスのダボスへ行けと、今、世界中の人々がなっているわけですね。でも、これから日本がどうあるべきかというと、冒頭でお話しした、世界は今、日本をこう見ているんだと。子供が日の丸を背負ってつぶれそうな国だと思っているわけです。悔しいじゃないですか。であれば、これから高齢社会、多世代の社会を知りたければ、東京に来い、イイノホールに来いというぐらいの夢のある話にすべきだということです。
かつて15世紀にマルコ・ポーロが黄金の国ジパングといって世界中が憧れた日本が、これからプラチナの国ジパングとして世界が注目する、経済のダボスにかわって高齢社会、多世代社会の東京と言われるような夢のある話にしていきたいなというのが今日の結論でございます。今日、私の報告、あるいはパネリストの皆様の報告が、皆様の新しい気づき、あるいは一歩踏み出すきっかけになれば、コーディネーターとしてこれほどうれしいことはございません。今日は長時間、ご清聴ありがとうございました。