第3分科会「高齢社会フォーラム・イン東京」

「次世代を育むジィジとバァバの力」

コーディネーター
澤岡 詩野
(公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団 主任研究員)
パネリスト
桑原 静
(シゴトラボ合同会社/BABAラボ代表)
竹内 俊晴
(わくわく農園チーム・グランパ代表)
朝山 あつこ
(特定非営利活動法人キーパーソン21代表理事)
澤岡 詩野氏

 実は、このテーマを決めましたときにも、検討会の中で、「ジィジ」がいいのか、「ジジィ」がいいのか、「ジジ」がいいのか、どれだったら皆さんにとって当たりさわりのいい言葉なのか、どれだったら呼ばれてもいいんだろうねということが結構真剣に議論されました。その中で決定したのが「ジィジとバァバ」になります。ですので、今日の分科会に参加していただいて、皆様がお帰りになられて、地域であったり、いろいろな場でこのお話をしてくださるときは、間違えずに「ジィジとバァバの力」というふうに言っていただけたらと思います。

○人口構造の変化と家族の在り方

 まずこの第3分科会、「次世代を育むジィジとバァバの力」、このテーマ、なぜ私がそもそもこのテーマに関心を、まあ、皆さんと一緒に共有させていただきたいと感じたかといいますと、スライドをお願いできますでしょうか。私が、今、映っている、このパソコンのほうにスライドを切りかえていただけたらと思いますが、おそらく午前のセッションから参加をいただいた方は、こういったお話というのは、それから、おそらく今日御来場いただいている方の中には、既に地域でいろいろなことをやられている方が多いのかなと思っております。ですので、あえてこのあたりの数値を、全部羅列していますが、御説明させていただかなくても、皆さんのほうがよく知っているよという方もいらっしゃるのかなと思うんですが、まず、今の日本の社会、1つ大きく捉えますと、やはり人口構造が大きく変化している、それからもう1つ、家族がやはりあり方が異なってきているというのが挙げられるのかなと思います。

 人口構造の中でいいますと、2つの大きな数字、出生率と高齢化率というところが挙げられるかと思いますが、出生率に関しましても、今、1.42、これは昭和46年の2.14からしますとすごい落ち込み方ですね。今、国は、子供を、ある意味、生めよ増やせよみたいなことも言っていますが、なかなかそれがうまくいっていない。私、今、40になりますが、私自身、周囲の働いている女性を見ていましても、子供1人産んだはいいけど、2人目はもう無理という方が多いのが現状です。そういった中で、高齢化率、高齢の方々、65歳以上の方々がどんどん増えていく、さらには75歳以上の占める割合が、特に都市部のほうでは非常に顕著に高くなっていくというお話。

○独居高齢者と未婚率の増加

 それからもう1つ、この下の四角になりますが、家族形態の変化もいろいろな言葉で語られています。例えばおひとり暮らしの高齢の方がどんどん増えていますねとか、それから若い世代のお話でも、生涯未婚率、これ、50歳時まで未婚の方という方になりますが、生涯未婚率は20年前の2倍、男性では20.1%と呼ばれています。ですので、今、50歳の生涯未婚の方、これが10年後、日本は団塊世代が後期高齢化していくとか、そういったことも言われていますが、生涯未婚の方々がどんどん高齢者になっていく、これも日本の1つの大きな課題かなとも言えると思います。

 さらに、同居率の低下というところで、家族力がどんどん下がってきているねというお話、また、昔であれば、同居という住まい方は、お子さんと一緒にいて、1つ、心強いよねというお話によくなっていたかと思うんですが、今の大きな方は、未婚のお子さんと、それも子供さんがまだ親に、どちらかというと依存しているような、そんなような同居も増えてきているというふうな、大きくざっくりいろいろな数値を並べてみましても、日本の社会も、人のつながりのあり方が大きく変わってきているんだなということが得られます。

○新しいつながりを求めて

 さらに、2014年80.2歳、これも、男性も0.2歳ぐらいまた延びたというお話がありますね。それから女性も、2014年、平均寿命86.6歳、これも0.2歳ぐらいまた延びたというところで、2060年には、何と男性は84.2歳、女性は90.9歳まで寿命が延びると言われています。ここで見ていただきたいのは、高齢の方が増える、寿命が伸びた、単にそれだけではなくて、急激に、戦後すぐ、まあ、ちょっとたったぐらいのときには、男女ともに平均寿命は60歳前後でした。それが、この50年、60年の間に一気に20年ぐらい寿命が延びている。そこに人のつながりのあり方、地域社会のあり方、社会保障のあり方、夫婦のあり方、いろいろなことが追いついてきていない、そういう意味では、新たな人のつながり、地域社会のあり方を考えていかなければならない、今が過渡期なのかなと。我々は、今、これからこういった社会、どういうふうにして考えていけばいいのかを考えていく時代なのかなというところです。

○地域崩壊

 さらに、新聞紙上をにぎわせましたが、地方自治体、地域が消滅するというデータが出ています。これはどういうふうにとったデータかといいますと、子供さんを生む年齢の女性がどれぐらい減っているか、増えているかというところで消滅自治体の可能性というところ見たときに、今までは過疎の地域の課題と言われていた話が、実は豊島区とか足立区、杉並区は消滅自治体の候補に入っているということで、これは皆さん、かなりインパクトがあるデータだったのかなと思います。そこで、今、地域でつながる地域力を今からつくれるか、これが将来を左右する課題なのかなというのが、まずは皆さんで共有していきたい大きな課題なのかなと思います。例えば町内会、自治会がもう成り立たない、子ども会ですらも成り立たない地域とか、それから都心の中でも限界集落と言われているような地域、買い物にすら困っている高齢の方が出てきたりとか、孤独死というのも高齢者の方のお話と言われていますけれども、こういったお互いの顔を見知っていない社会では、若者が孤独死しているということも非常に大きな課題として挙げられたりもします。

 こういった地域崩壊が招くものという中で言いますと、犯罪率の増加であったり、それからあとは、最近、悲しいお話で言いますと、児童虐待の増加というのもよく聞きますね。これ、あった後に必ず聞きますのが、近所の方にインタビューをしますと、あそこのお子さんはいつも顔を腫らしていておかしいと思ったのよとテロップが入りながら語る近所の方というのが出てきますけれども、それを見るたびに、何で気づいていて、そこに手を差し伸べてあげられなかったんだろうと、ちょっと悲しい気持ちになるニュースもすごく増えていたりもします。

○子育てをめぐる環境の変化

 さらにもう1つ、虐待にまで至らなくても、最近、この言葉を皆さん御存じでしょうか。「子育て」というのは「子供」「子」「育て」というふうに書きますが、孤立して、お母さんひとりで子育てをして、その結果、追い込まれて、どうしていいのかわからなくなって、虐待をしてしまうとか、育児放棄をしてしまう、ノイローゼになってしまう、そういったお母さんが増えている。それは、今までは生活苦のおうちのお話であるとか言われていましたけれども、データをいろいろ調べてみますと、結構高学歴のお母さん、収入も恵まれているおうちのことだったりもしまして、こういった、地域、近所に何か起きたときに相談できるような人がいれば、もしかしたら何かが変わっていたのかもしれないという、子育てをめぐる環境の変化というのも挙げられます。

○子供の貧困-収入格差がもたらす影響

 さらにもう1つ、今日お話を聞いていただく上で、皆さんの心にとどめていただいてお話を聞いていただきたい話の中に、子供の貧困の課題ということが挙げられます。これは先進国での貧困率ということが出ている数字ですが、最初に日本が貧困率ということを意識したときの新聞が、これは2009年の記事になります。ですので、また数値はちょっと変わってきているのかなと思うんですが、最初に政府がしっかり調べたデータが新聞などで出されたのが2008年、2009年ということで、今日はこの毎日新聞のデータを持ってこさせていただいています。日本は非常に豊かな国だと言われていますが、やはりこのデータが出たときに、日本中でみんながショックだったのは、日本というのは貧困、最近でありますと、富裕層とお金のないおうちのギャップが非常に広がっているというお話もありますが、これが如実にあらわれているのがこのデータなのかなと。

 そして、大人のおうちの家庭の事情が、それが実は子供さんが教育を受けられるかとか、そういった、子供が育つ環境の課題であったりもするということで、さらには、そういった子供の進学率などを見ていますと、高校すら出られないような子供というのも増えています。そういった中で、負の連鎖、貧困の連鎖という課題が日本の大きな課題になっているということで、このお話にも少し触れさせていただきました。

○さまようお一人様

 もう1つ、キーワードとして、、「彷徨う『おひとり様』」と書かせていただいていますが、生涯未婚の方がどんどん増えている。それから、もう1つ、これは私自身の課題でもあるんですが、共働きで子供のいない夫婦の課題。20年後、定年退職した後、私たち、地域で絶対孤立しているよねと。

 子供がいないということは、地域に係わるきっかけが全くないまま年を重ねてしまう、そして退職した瞬間、夫婦2人で、または1人で、地域の中で完全に埋没してしまう、そういった方が、今、どんどん増えているというのも、1つ、地域をめぐる課題なのかなと言えます。

○地域コミュティの本来の在り方

 これだけの課題が山積みの地域、今、子育て支援ということで、お母さん同士でいろいろ助け合ったりとか、高齢者の孤立防止ということでサロン活動であったりとか、いろいろなアプローチがされています。でも、そこでちょっと残念なのが、1つの世代が1つの世代、高齢者が高齢者を、そして子育てをしているママたちが子育てをしているママといったところで、でも本当は地域って違いますね。いろいろな世代が住んでいて、いろいろな人がいるのが地域であって、障害を持っている人、持っていない人、若い人、若くない人、いろいろな人がいるのが地域で、それが本来は、お互いができることで支え合う、お互いができることでつながっているのが地域コミュニティーの本体のあり方なのかなと。そういう中で、ですが、私の世代を考えてみましても、隣近所でおみその貸し借りをするとか、近所でちょっと見守り合うというのは、もう違和感のある世代です。

 そういう意味では、今日、皆さんと一緒にともに考えさせていただきたいのは、他世代、特に子供をめぐる環境というのが悪化している、それからシニアの方々、それも知識・経験を持ったたくさんのアクティブシニアと言われている方が地域にどんどん出てきている中で、この2つの世代がともにお互いに刺激し合って、新たな地域のつながり、地域コミュニティーを作っていけば、日本はもっともっと明るい超高齢社会が来るのではないかと。

○地域をつなぐジィジとバァバ

 でもそのためには、多分、黙っていてもそんな循環は生まれないよねということで、仕組みと仕掛け、どんなことがあればそれがうまく回っていくのかな、そういったことも含めて、今日は地域ということ、あとはジィジとバァバ、それから地域の子供、「孫育て」という言葉もはやっていますが、そういったアプローチをどう作っていくか、そういった循環をどう作っていくかということを、これはちょっと見づらい図ですが、これは、実は知人の世代間交流を研究しています東京都健康長寿医療センターの倉岡さんという方が提唱しているモデルですが、モデルといいましても、これは見ると当たり前のことです。地域で、例えば「このまちの昔はね」と、一番左端に書いてあるところ、読み聞かせです。シニアの方々が地域の子供たちに、地域の歴史であったり、いろいろなことを読み聞かせをしています。そこで大きくなった次の円の先に来るのが、公園で遊んでいたりすると、その地域のシニアがちょっと体を壊したりとかいうことで、そういった読み聞かせの活動から引いて椅子に座っています。ちょっとまったり時間を過ごしているところで、普通であったりすると、公園でおじいちゃんとおばあちゃんと子供世代が触れ合うというのは少なかったりするんですけれども、昔、読み聞かせをしてくれたおじいちゃんだ、あ、あの子、たくましくなったな、何かお互いにちょっと交流が生まれる。その先に、この子供が大きくなります。そしておじいちゃん、おばあちゃん、ちょっと弱ってきたりもします、ジィジ、バァバ。

○地域次世代モデル

 そのときに、いろいろな循環、子供、孫がどんどん大きくなって、今度は孫世代が地域のシニアにパソコンを教えたりとかというところで、何かいい循環がめぐられるのが地域なのかなと。こういう循環、「とぎれないつながりを力に『30年後の幸せタウン』」と書いてあるんですが、今の孫育て、今のジィジ、バァバが地域の子供さんたちを育てるということが、30年後のすてきな地域のあり方を作っていく、これがこのモデルになります。

 ですので、何かこういったモデルを生み出すための、結構時間はかかることだと思いますが、そのためにどうしたらいいのかなというようなことも含めて、今日は、先駆的な取組をされている御三方にお話をしていただこうと思っております。私の前振りがちょっと長くなってしまいましたが、私、前座ですので、これからが本番になります。

 今日は御三方ということで、竹内さん、桑原さん、朝山さんにお話をいただくんですが、今日は、それぞれ異なる、大きなアプローチは「次世代を育むジィジとバァバの力」の循環を生むということで活動されているんですが、まず最初にお話しいただく竹内さんは、わくわく農園チーム・グランパ代表ということで、どちらかといいますと、地域の農業が趣味であったり、関心を持って、得意だというようなシニアが、その力を生かして、地域で農業、農ということをキーワードに、地域の孫育てをしているというアプローチになります。

 そして、次にお話しいただきます桑原さんは、ちょっとタイプが違いまして、ビジネスという視点もしっかりと織り込まれまして、地域で知識と経験をジィジとバァバが生かして新たな働き方をつくり上げようというようなことを考えられているのが、この桑原さんになります。

 最後にトリでお話しいただく朝山さんですが、朝山さん、いろいろな広い活動をされている中で、今日はここの部分をお話しいただきたいなということも1つお願いさせていただいていますのが、川崎で活動されているんですが、川崎の中でも、生活保護とか、なかなうまく学習とか、そういったところにたどり着けない子供たち、そういった子供たちに、地域のシニアの力を生かして、そういった学習支援とかキャリア教育、そういったことをいろいろとやられているのが朝山さんになります。ですので、ちょっと異なるアプローチで、今日はこれからお話をいただこうと思います。

【竹内】 ただいま御紹介いただきました、わくわく農園という学校農園をやっております竹内と申します。

よろしくお願いします。

○チーム・グランパ-学校農園

竹内 俊晴氏

 では、御紹介に、チーム・グランパという名前でございますけれども、これは、我々、仲間がおりまして、今現在でも、7人プラス奥さん2人を加えて9人でやっているんですが、この学校農園は7年前に発足いたしまして、地元の鳥が丘小学校という学校の専属農園でございます。生徒数、約650人。もちろん、今日の命題でありますように、まさしくジィジとバァバの集まりでございます。

 学校農園という定義は、これは横浜市の環境創造局が行っている施策の中で、きちんと栽培収穫体験農園あるいは環境学習農園として位置づけて、助成制度がございます。この経過については、お手元に資料で事実関係を説明してございますので、話の中からは時間の都合で割愛させていただきます。

 もともと私は、15年ほど前から、多少、趣味というものを中心に、農園をやりたい、野菜づくりをしたいということで、約70坪、家庭菜園にしてはちょっと広目の、普通の宅地を一生懸命畑地にかえるというところから、この農園、農業、あるいは野菜づくりに手を染めたというところでございまして、私はもともと電気エンジニアでございまして、それまで農業体験はゼロでございます。ただし、そういったいろいろなシナリオを作って、どうやったらうまくいくであろうかという発想は、これは技術屋であったって、農家であったって、どんなことをやっても同じということで、そう多く体験を積んだわけでもないんですけれども、そういう実感を持っております。もともと私も神奈川県下で活動を活発にしていますNPOの子供出前教室を盛んにやっているかながわ子ども教室、今日は関係者も見えておられますが、そこで子供たちの教育に関連もちょっと持っておりましたので、その発想の上で、子供たちに是非、今の、私が数年培ってきた野菜づくりについての、まあ、多少うんちくを含めて、関わりを持って一緒にやっていきたいなというふうに発想したわけでございます。

高齢者フォーラム第三分科会資料 高齢者フォーラム第三分科会資料

 この作業というのは、確かに地道な、泥臭い、まさに土を相手ですから、自然を相手ですから、作業を続ける段階で、7年という、そんなに長い年月ではございませんけれども、経過を振り返ってみますと、大体3つのポイントがあったのではないかと思っております。

 1つは、先ほどの経験豊富な面々が集まったというんですけれども、それは全く違いまして、ほとんど素人が集まって始めました。その素人のジィジ、バァバが思いを結集して、今の現在の活動をどうやって継続してきたかというプロセスを御説明したいと思います。

 もう1つは、相手が学校です。学校のこういう農園の事業の中でうまく活用するという発想が最初からうまくいったわけではございません。ですから、そういった学校を引っ張り込んで活動を、つまり我々と学校の連携を軌道に乗せるには時間がかかりました。その経過で何を私たちが学んだかということが2つ目のポイント。

 それから、子供たちが、この7年あまりの学校農園で何を得たであろうか、あるいは私たちが逆に何を学んだのだろうかというようなことも、ちょっとかいつまんで説明したいと思っております。

 チーム・グランパというのは、先ほどちょっと前置きがありましたけれども、ちゃんとそういう助成制度がございますので、事業認可の申請をいたしまして、一応ちゃんとした目的と趣旨がありましたので、横浜市から直ちに認可を受けております。市としましても、あるいは、最初のスタートは約1,000平米、300坪、300坪というのは1反ですね、そこの助成制度からスタートしたのでございますが、一応地主にとっても、高齢化が進んで、なかなか手が回りかねる農地もあるんですね。そこが有効活用されるということは、お互いに互恵関係にあるということで、最初からその辺の障害はございませんでした。むしろ喜んで、市も、農家の地主も一緒になって協力してくれるという形ができたのが、いろいろ都市部においては幸いなことであったろうと思っております。

 メンバーは、先ほど言いましたように10人以下のメンバーですけれども、食材に日ごろからちょっと関心を持っておられる料理教室のメンバーに声をかけました。だから、あっという間に10人近く集まったという背景がございます。

○自然とのかかわり方

 最初は、農園をつくるというと、やっぱり家庭菜園の延長で考えますから、新鮮な野菜が身近で育てられて、それが家庭で消費できる、使えるということを期待するという素朴な動機が中心でしたけれども、実際やってみますと、300坪というと大変です。10人でやってもなかなか大変です。

 しかし、その大変な作業をやりながら、私たちは、ただ収穫して食べて喜ぶということではなしに、野菜を育てるというプロセス、野菜も生きものですから、自然とのかかわりをじっくり理解しながら、育てることによって学ぶ、学んで、また勉強する、それが喜びにつながるといったことが循環し始めまして、大げさに言いますと、作物、つまり生物の生命力の大きさ、力強さ、そういったことを大いに体で体験でもって知ったということが非常に大きかったのではないかなと思います。

 単に野菜を育てるというと農耕技術ということになりますけれども、種まき、植えつけ、水やり、その他、肥料をどうやってやったらいいかということも、それをただ手順どおりに、決まったとおりにやるというのはだめなんですね。

 もちろん自然相手ですから、今年あたりは非常に苦労しましたけれども、年々、天候を見ながら、折り合いをつけながら、いつ種をまき、いつ植えつけということは、やはりその都度違うと。ただそのとき大事なのは、ここは農業技術の講習ではございませんので省きますけれども、野菜たちの表情を見ようじゃないか、様子を見ようじゃないかと。それが水を欲しがっているのか、肥料を欲しがっているのか、それを見ながら、水をやったり、肥料をやったりということ。

○五感で確かめる

 それから、それがまた1つ1つ作物によっても違うわけですね。乾燥を好む、あるいは水をどんどん欲しがる、作物によって全然違うので、相手をよく見ながらそういった作業をやるということも大きな学びの点でございました。ただ、その学ぶといっても、見ただけではだめなんですね。さわってみる、あるいは感覚的に、自然の中の生きものとしての見方がありますから、そういうのを、大げさに言うと五感でもって感じるというのが農家の本質ではないかと思ったぐらいでございます。あと、そういったことを生活の一部で一生懸命やればやるほど、私たちの得るもの、喜びが大きいということも、まさに体験でもって得た実感でございます。

 それから、これは後で言いますけれども、650人の子供たちを相手に活動するということが、いかに我々シニアの、いわば力になるか、こういったことを、やってみて初めて、体でもって、極端に言いますと650人の孫がいるという感覚さえいたします。

 それから、メンバーですけれども、そういった喜びを共有し合ったということもありまして、7年間で、まあ、やむにやまれずというか、病気等で2人は欠けたりしましたけれども、また2人入ってきて、全くほぼ同じメンバーでやっておりますが、経費の負担は多少ありますけれども、それに余りあるものを得るということで仲よくやっております。中には自分たちの野菜を作って食べる喜びから、この数年間でそれまでの人生の一生分の野菜を食べたよというような、極端な喜びを語る方もおられます。

○学校農園の設立にあたって

 これがチーム・グランパの私たちの実感ですけれども、学校との連携をどうやって進めたかということにちょっと触れさせていただきます。学校農園の存在意義、活用について、最初に申し上げましたけれども、最初から先生方の理解を得られたわけではないんです。やはり学校というのは、基本的に言うと、こう言っては学校関係者に申し訳ないですけれも、やっぱりちょっと保守的、あるいは用心深い、これは当然ですね。ですから、この話を持ち込んだときも、徒歩7分の、そう遠い距離ではないんですけれども、授業で行くには遠いと。あるいは、必ず問題児がいると。私たちも、低学年が中心ですから、低学年の場合は特にその問題児の扱いというのが、ある意味で、学校の先生方の悩み事、その不安があるということ。

 それからもう1つ、これは、休耕地に近い農地を利用するために、学校の名前を大義名分として利用されているのではないかと、そういう、何と言いますか、被害者というような言い方ではないんですけれども、「そういったことで利用されるのもね」というようなことを先生方は言われた。

 ただ、そういったことは最初にわかったのではなくて、つき合を長くしている間に漏れてきて、我々が知ったことです。そういった心配をいろいろされる先生というのは、私は別に悪く思っていません。

 もっともなことだと思っています。そういう不安をしっかり考えるということは、むしろ優秀な先生ではないかと思うんです。一番いけないのは無関心な先生です。その先生方にどうやって働きかけるかというのが私たちの初期の苦労でした。

○食べてわかる、実感する

 ですから私たちは、その先生方に極力負担をかけない形で、これを是非子供たちに教えたいなということから注意深く進めましたけれども、やっぱり何といっても一番わかりやすいのは収穫体験です。ですから、1年生のジャガイモ掘り、2年生のサツマイモ掘り、それから続くキャベツとか白菜の収穫、わかりやすいです。ですから、そういうことから農園に親しみを持つというか、それから徐々に、その収穫物が、途中、どういう段階で成長し、たくましく育っていくかということを観察させる、これを授業で、クラスごとに交代で毎週のようにやるというプログラムを準備いたしました。

 もう1つのポイントは、私たちも半端ではないものですから、そういう食材をたくさんつくります。キャベツなんかでも400株ぐらい、ジャガイモ、サツマイモは500キロ以上つくります。それを給食に提供するわけですね。給食に提供した場合に、やっぱり全校生徒が食べるわけですから、これはわくわく農園でできた作物だよと言うと、やっぱり受け方が違うというようなことで、徐々にそういったわくわく農園のかかわり方を増やしていったというのが経緯でございます。

○子供たちの感じ方が変わる

 私たちがまず感じたのは、農園のそういう、いわば来たときの喜びなんかをどうやって感じてくれるかということですけれども、子供が一番早いです。先生方よりも何よりも、子供が一番素早く反応してくれました。これはうれしいことでした。2年生が、特に生活科という科目があるんですね。ですから、それまではプランターにちょっとしたトマトを植えるとかナスを植えるという程度でお茶を濁していたのが、しっかりした農園で作物が育つ姿というのは丸きり違うわけですね。ですから、それをしっかり子供がキャッチして、観察日記だとか、あるいはそのときのイメージを絵に描かせるということの、その表現が、農園と係わるようになったら全く変わってきたということでして、その変わってきたのを、今度は子供以上に先生方が違った視点で評価をし始めたわけですね、違ってきたと。絵が、これはフェイスブックに出したりもしているんですけれども、我々大人の発想を超えて、すばらしい、子供の感受性がもろに出てくる。例えばサツマイモの収穫をしますと、真ん中にいっぱいにサツマイモをかくわけです。自分はちょっとそこで万歳をする格好をかくとかという、大人がかけない印象と絵を描きます。その影響というのは我々の想像以上のものがありまして、これは先生方が、ある意味、びっくりするまではいかなくても、これは変わってきたという実感を持っていただいた1つの論拠だと思います。

 それから、さっき給食に出す食材のことをお話ししましたけれども、給食に出された場合に、わくわく農園の作物だよと言うと、生徒の食べ方が違うそうです。それで、そのためには、低学年だけではなくて高学年もわかるように、給食調理室の前にキャベツならキャベツを展示して、今日はこれを使っているよ、これはわくわく農園よと、学校がちゃんと紹介してくれるようになった。これは大きかったと思います。

 だんだんそういう形で、学校の先生方にも理解が深まると、自然ですけれども、積極的にこれを授業に活用すべきであるという、そういうことを提唱する、学校の先生方のリーダーが出てきたんですね。これは私たちのすごい味方になっているというか、ありがたいことでございます。

○ボランティア協議会

 ただもう1つ私が強調したいのは、その最大の後押しになったのは校長先生です。今から4年前に新任校長が来ました。それまでは、地域とのかかわり、あるいは地元の方との連携ということに対してあまり関心がなかった。それが、4年前に来た先生は、地域とともに学校をよくする、地域と一緒に連携して子供の教育の実をもっと高めるというか、充実させるという考えの持ち主で、それを強いリーダーシップで、学校の中で先生方に説いた、これが大きかったですね。

 具体的に言いますと、ボランティア協議会を発足させた。それがうまく、みんなでよくしようという意思の確認ができたわけでしょうか、2年前から、一般的には敬遠されがちな、学校の学校運営協議会というのが発足しました。これはすごい権限があるものですから、中には教職員の人事に関して教育委員会に意見を述べることができるなんていうことがあるものですから、モンスターペアレントなんかが入ったら大変ですよ。今日はたまたま、その委員長もここに来ておられますけれども、まあ、それはともかくとしまして、そういうことができる学校になってきたと。それはやっぱり校長先生のリーダーシップが大きかったということは強調したいと思います。

 もう1つ強い味方になってくださったのは、給食管理と食育担当教諭の存在です。この先生が非常に熱心で、我々のそういう活動を側面から非常に支援してくださいまして、さっき言った給食のレシピの問題、それからありがたいことに、年々、作物を提供する食材の料理からどういう給食のメニューになったということまで克明に記録をして、写真に撮って、そしてなおかつ、それに対する生徒の感想を寄せ書きにして、立派な1冊の年間レポートを作ってくださいました。これはすばらしい内容で、毎年1回、その贈呈を、ここ3年、受けておりますけれども、私たちの宝物です。よくぞここまで我々のことを認め、そして評価してくれているんだなと。ですから、我々もそれを見ると、ますますこれはしっかりやらなきゃという、いわば感謝の気持ちのやり取り、これが非常にまた大事だし、大きかったなと思います。

 それから、だんだん定着するに従って、言ってみれば学校教育ということですけれども、一昨年から授業参観、これは普通、学校の中でやりますね。父兄が来て授業を見てもらう。これを農園でやるようになったんです。子供たちもさることながら、それは日ごろ出入りしますが、お母さん方が初めて農園に来て、私たちの話を聞いて、子供たちが喜ぶ姿を見て、そしてお母さん方に対しても我々が野菜クイズを出したりして、一緒に勉強するというか、盛り上げようという形ができてきまして、それによってPTAの関係の方々も、わくわく農園という名前もさることながら、だんだん活動に対する理解を深めていってくださったと思います。PTAの会報なんかにもわくわく農園特集が出たりというようなこともしていただいております。

○環境学習農園

 それから、これは2年前ですけれども、それまでの栽培収穫体験農園というのを環境学習農園と、看板をかえました。これは横浜市とも相談の上ですけれども、もっと幅広く、いわば農業も、環境、あるいはその緑の世界をもっと日本で豊かにするというような施策にも結びつくので、環境学習農園というのにかえまして、活動の幅を少し広げました。

 ですから、野菜づくりだけではなくて、例えば1つ具体的な例を挙げますと、給食調理室の横に生ごみ乾燥機を設置しました。これは大分費用もかかりますけれども、電源も、ちゃんと工事もやりまして、そういった生ごみによるリサイクル堆肥をつくるとかというのも、これも教材の1つなんですね。そういうこともやりましたし、これは実は私たちの独力だけではなくて、NPOの日本食品リサイクルネットワークという全国ネットがあります。そこの協力をいただいております。生ごみ乾燥機だけでも400万しますから、我々独自ではとても無理です。まあ、そういうこと、お手元の概況説明の中にその写真も入れていますので、後で御覧になってください。

 それからもう1つ上げるならば、我々のメンバーの中に森林インストラクターの資格を持った人がおります。その方を中心にして、全国森林インストラクターの会という、これもNPOの法人がございますけれども、連携しまして、自然環境観察学習とか、あるいは林間学校といった学校行事のサポートも一緒に協力してやるという形になって、学校への支援活動の幅を広げつつございます。

 そういうふうに、鳥が丘小学校の学校教育の中におけるわくわく農園の位置づけが明確になってきて、私も、先ほど御紹介しました学校運営協議会の委員に教育委員会からも推薦、委嘱されまして、メンバーに入っております。6年半以上、7年近くたって、やっとここまで学校との関係が来れたかなと。信頼関係を築き上げるというのは、やっぱり地道なお互いのコミュニケーションと、時間がかかるものだなというのが学校に対する感想でございます。

○子供たちに変化が-体で感じる力

 子供たちがどうかかわったかというのは、やはり子供たちが、元気に成長してたくましく育っていく野菜の姿を見てどんなことを感じてくれるのか。あるいは、花が咲いて実がなるナス、キュウリ、トマト、また花が咲かなくても育つ野菜もたくさんあるわけですけれども、例えばキャベツが丸くなったり、白菜が膨らんだりということに新鮮な驚きをどうやって受けとめてくれるかなと。あるいは、収穫まで成果がわからない。ジャガイモとかサツマイモがそうですね。ただ、掘ったときの驚き、あるいはその姿の迫力に子供たちがどういうふうに感動してくれるのか、あるいは、雌花と雄花があるよとか、それをミツバチがどういう役割を果たしているかというようなことまで含めて話したときに、自然におけるそういう連鎖を子供たちが本当にわかってくれるかなという、いろいろなことがございますけれども、これは、私たちが期待した以上に、子供たちはしっかりと把握してくれるというか、感じ方が違うんです。我々はすぐ頭の中でまず理解しようとします。ただ子供は、先ほど冒頭に、私たちが勉強したという以上に、子供たちは五感をもって、体全体でそういうものを感じる力がある、そういう能力があるということがますます感じられます。それは、農園に来たときの子供たちのまなざしだとか態度、それからその後の日記や絵画、さっきちょっと触れましたけれども、絵を描かせると、それにしっかりと表現されております。

○食育の重要性

 例えば、1つ食材、食べるということに関しては、一般的に、大体8歳から10歳までに、そういう食に対する基本的なすり込みがされると。だから、おふくろの味とかふるさとの味というのは、大体8歳からせいぜい10歳までにすり込まれるそうですね。だから、特に低学年における、広く言えば食育、食べることに対する関心を植えつけるというか、教えるというのは、やっぱり小学校の中の大切な科目、授業ではないかなと思われるわけでございます。ですから、ただ単なる味覚による記憶だけではなくて、あらゆる体験、あるいはそういった実感というものと一緒にすり込まれる。だから、これはビタミンがたくさんあってどうのこうのという知識で食育するのは非常に片手落ち、だから、そういう食に対する理解を深めるチャンスをいかに作って、子供たちの体験として、これは自然に体が欲する、体がおいしいと思うというような教育ができたらなと思います。だから、食育というのは奥が深いなということをつくづく感じるわけでございます。

○農業から派生する「教育」

 それから、農園における授業については、もちろん農業の基本的な、肥料の問題とか何かということも話しますけれども、やはり我々にしか語れないことがありますね。例えばサツマイモの植えつけをするときには、このサツマイモは、「薩摩」というのはどこの地名? と言っても、今の小学生は知らないです。例外は、今年6月の初旬に、私が同じように質問したときに、1人だけ、「鹿児島県だよ」と言った生徒がいました。106人の中でたった1人。これが問題児です。先生1人が1人連れてきた問題児です。これがぼそっと言ったので、私はびっくり仰天して、みんなに「正解」と、「100人のうち1人だけだ、みんなで大拍手」と言いましたけれども、問題児って頭が悪いわけではないんですね、協調性がないとか、多少問題があっても。そういう農園における授業で子供たちが心を開放される。そして、問題児だろうと、ますます心を開いて生き生きするというのも教育の1つではないかなと。

 そのサツマイモの薩摩という話だけではなくて、吉宗さんという江戸時代の将軍さんが、青木昆陽という偉い学者が薩摩から持ってきたのがサツマイモであり、というようなことを教えるし、それから私たちが、70過ぎの人間だったら体験済みですけれども、終戦銃後の食料がないときは、このサツマイモが主食であったと。朝昼晩サツマイモで命をつないだ人はむしろ幸せな人であった、学校のグラウンドをイモ畑にして、イモを作って命をつないだんだという話もします。これは我々ジィジ、バァバしか語れない事実なんですね。そういうことも機会を捉えてお話をしております。事業?の一環ですね。

○土の感触がもたらすもの

 それから、今の子供たちは土に直接触るというのはなかなか勇気が要ることのようですね。我々は裸足になって通学していましたし、土をいじるなんていうのは日常茶飯事でしたけれども、サツマイモの苗を植えさせるときにどうしても手を使う、これができない子がいるんですよ。ですから、土から得るというのは、今のアトピーだとか何かの問題も、免疫力が低いのもそういったことだと思います。だから、土を手でさわる、その感触、触ることによって得るものはたくさんあるのではないかということでございます。

○今後の展望

 それから、最後になりますが、今後についてですけれども、私たちは、ただ学校だけではなくて、老人サロンという、まあ、地域の老人クラブ、これの食事会なんかがボランティアでサポートされていますけれども、それにも食材として出す。あるいは老人クラブのグランドゴルフ大会の景品に農園の作物を出すとか、そんなことで地域の人にも愛される農園を目指すということも多少やっております。

 直接作物ではないんですけれども、実は、ここ4年になりますけれども、約300平米の農地の中にレンゲソウの種を4キロまきまして、300平米の広大なレンゲソウ畑を……、このレンゲソウ畑というのは、今、都市部では珍しいですね。我々もびっくりするぐらいきれいなレンゲソウ畑ですが、4月に入学してきた1年生を、4月の末に、そのレンゲソウ畑に招待します。レンゲソウ摘みという遊びも最近はしたことのない生徒がいるんですけれども、ここで遊びなさいというと、花摘みどころか、寝っ転がったり、転げ回ったり、あるいは、どれが花か茎かわからないぐらいにレジ袋いっぱいに詰め込んだ子供がいたり、精一杯、生き生きと遊んでもらいますけれども、それもやはりわくわく農園を身近に感じて、農園が楽しい場所である、おもしろい場所であるということが、我々の食育の入口、スタートにしているというところで、いろいろ枠を広げることになったかなと思います。

 そのほか、こいのぼりを揚げたり、七夕飾りをしたり、いろいろなことを通じて、生徒に日本の、言ってみれば農耕文化の国ですから、この農耕文化の伝統、お祭りだって何だって、それにルーツがあることがたくさんあるわけですね。これを思い起こさせるように、私たちも、日々少しずつ、実を上げていきたいなと思っております。

 長くなりましたけれども、こういったことを一生懸命やれば、今、世に問われているプロダクティブエイジングの一助を少しずつ具体化できるのではないかなと。今後も精進を続けたいと思っております。

 ありがとうございました。


桑原 静氏

【桑原】 皆さん、改めましてこんにちは。桑原静と申します。本日は、このBABAラボという事業について皆さんにお伝えしていきたいと思います。  ババアでもバァバでもなくBABAラボについて説明していくんですが、主にこのBABAラボという、この名のとおり、おばあちゃんたちの雇用をつくるという取組と、あともう1つは、おばあちゃんだけでなく、実際にはここにゼロ歳の赤ちゃんから86歳のおばあちゃんまで集っているんですが、そうした多世代の取組について、主にこの2点について、今日、皆さんにお伝えできればと思っています。

○100歳まで働けるものづくりの工房

 BABAラボは何をやっているところかといいますと、100歳まで働けるものづくりの工房というのをやっています。100歳まで働けるというと、本当に100歳まで働けるのかとよく聞かれるんですが、実際には、86歳が一番上ですね、いろいろなものを作っているというところです。ちょっと見えにくいですが、BABAラボは、一軒家をお借りして、そこを工房にしてミシンを置いて、いろいろなものを作っているんですが、隣のおしゃれなカフェの前で撮った写真ですね。この隣に工房があります。先ほども言いましたように、ゼロ歳から85歳、この間誕生日が来て86歳に一番年上の方がなったんですが、30歳から86歳の方が働いていて、30代、40代の方は、まだお子さんが小さい方も多いので、子連れでここに来て皆さんで働いています。

30歳~85歳 BABAラボ

○いつまでも働きたい

 そもそも何で、この100歳まで働ける工房をこの地域につくろうと思ったかというところですけれども、私がそもそも、個人的な理由というか、おばあちゃん子だったということもありまして、自分のおばあちゃんを通して地域のシニアの方々を見たときに、お勤めが終わって、定年の後、地域に戻って何をするかというと、何もしていない方もいるんですが、大体の方が何か役に立てることをしたいな、もう一度働きたいなと思っている。

 ところが、1回会社を辞めると、自分の好きなこととか、経験や知識を生かして働ける場所というのはなかなかないですね。年をとってからも満員電車に揺られて毎日どこかに通いたいと思っている方はいらっしゃらないと思うんですね。だから、その地域で歩いていける距離で、年金だけじゃなくて、プラスアルファ稼げるような場所が、しかも自分の得意と経験を生かせるような場所があればいいなと思って、自らこの場所を立ち上げることにいたしました。

○孫育てグッズの制作

「孫育てグッズ」

 さっきからものづくりものづくりと言っているんですが、じゃあ、何を作っているのかというところを話しますと、孫育てグッズというのを作っています。孫育てグッズって、あまり聞いたことないですよね。子育てグッズというのは多分当たり前に聞いていると思うんですが、孫育てグッズというのは、おじいちゃん・おばあちゃんが孫の面倒を見るときに使いやすい、使ってみたいなと思わせるようなグッズを作っています。

○安全な子育て用品

 例えば、今、我々で一番お金をかけて開発に取り組んでいる哺乳瓶という商品がございまして、発売はまだなんですが、この哺乳瓶も、今、売っている子育てグッズの哺乳瓶というのは、まずメモリがとても見にくい。あとは、こういう、大体プラスチックかガラスのつるつるした素材なので、お水を入れるとかなりの容量になるんですね。それを上げていると、肩や腕に負担があったり、あとは手の力がどうしても弱ってきているので、調乳のときに熱いお湯を入れているのに滑りやすかったり、安全性があまりないというか、ちょっと危険な事故を起こす可能性があるという、例えば哺乳瓶だったり、あとは、今、若いお母さんたち、まちで赤ちゃんたちを、おんぶじゃなくて抱っこしているのをよく見かけますね。ここに、コアラ、カンガルーみたいに抱っこしているんですが、実はあれはどういうことかといいますと、前で抱っこしているので、とめ金が後ろについているんですよ。そうすると、おばあちゃんたちが孫の面倒を見るときに、抱っこはできるけれども、後ろのとめ金がとめられない。中途半端にとめているので落下事故が起こったり、あと間違った扱いをしていたりとか、あとは、例えばベビーカーもあるんですが、今、ベビーカーも、欧米のベビーカーがちょっとおしゃれで人気があるんですが、そうすると欧米の赤ちゃんサイズにつくられているので、乗せるところが高い位置にある。そうすると、下から赤ちゃんを抱えて、よっこらしょと上に乗せなくてはいけない。そうするとやっぱり腰や体に負担があるということで、だったらおじいちゃん・おばあちゃんがもっと扱いやすいような子育てグッズがあったらいいんじゃないかと、そういったものを、集まった地域のおばあちゃんたちが実際に経験した知恵を生かして、アイデアを出し合って開発したらおもしろいんじゃないかなということで、この孫育てグッズのアイデアが出てきました。

○近くに住む高齢者がきっかけ

理想な家族の住まい方

 一応社会的な背景といいますか、その孫育てグッズは本当にニーズがあるのかというところですが、先ほど澤岡さんの説明にあったように、同居はとても減っているんですね。これは15年前のグラフかな、に比べると半分以下に減っている。ところが、同居は減っているんですが、近居される方がとても増えています。これはどういうことかといいますと、今、共働きの家庭が増えていて、大体パパ・ママが働いている家庭がほとんどです。

 そうすると、子供に熱が出たときに保育園は預かってくれない。どうするかというと、おじいちゃん・おばあちゃんを呼び寄せて面倒を見てもらうと。毎回呼び寄せるのも大変だから、どっちかの家の近くに住まいをつくったり借りたりして、手を借りようと、そういうことを考えているお母さん・お父さんが多くて、それでこの近居という数字が伸びているというところにあらわれています。なので、このデータを見て、孫育てグッズ、これからももっといけるんじゃないかなとにらんだ理由でもあります。

○孫消費が増えている

年間の「孫消費」

 実際に、年間の孫消費というのも、10年前から比べると、約倍ですね、その孫にかけるお金というのが増えていて、これはまだ、近くに住んでいればよりかけるという、そういったデータもあるんですけれども、やっぱり孫の数、子供の数が減っていて、1人の孫に対する消費の額が増えているというところにもあるのかなと思っています。

○一番人気商品は布団

 そんなわけで、我々はさいたま市の南区、ちょうど埼京線で言うと武蔵浦和駅というところが近いんですが、そちらのほうに一軒家を借りて、孫育てグッズというものをみんなで一緒に作っています。その作り手が、おばあちゃんであったり、子育て中のお母さんであったりしています。

手を動かしてつくる

 実際に孫育てグッズというのはどういうものかというと、まず1つは、手を動かして作る孫育てグッズというのがございます。BABAラボというのはブランド名にもなっているんですが、BABAラボの一番人気商品はこちらの抱っこ布団というグッズでして、ただの布団じゃないかと一見思われるかもしれないんですが、昔、座布団で赤ちゃんを抱っこしたという経験のある人いませんか。

 いらっしゃいましたね。首の座っていない赤ちゃんをじかに抱っこするととても怖いんですね。私でさえ初めての子育てのときには抱っこするのが怖かったんですが、やっぱり年をとってきて、おばあちゃん、ひいおばあちゃんになると、孫を抱っこすることにとても恐怖感を抱くんですね。

 首の座っていない赤ちゃんをじかに抱っこするのは怖いんですが、それがちょっと、こういった座布団とか布団のようなものがそこにクッションとして入りますと、抱っこがとてもしやすくなります。このまま寝ちゃった赤ちゃんを誰かにバトンタッチしたり、そのままベッドに置いたりとかするときにとても便利だということで、今、この抱っこ布団が人気です。

孫を抱く祖母

 どういった方が買われているかというと、一番多いのが、やっぱりおばあちゃんが自分のために買うという方が多いですね。あとは、一度買って、孫を育てるときにとても便利だったので、おばあちゃん友だちに、お孫さんができたときにプレゼントするという方もいますし、あとは社内で、職場で上司に孫が生まれて、もっとおじいちゃん、孫の面倒を見なさいよということで、職場でお金を出し合って、そのおじいちゃん、上司にプレゼントするという方もよくいらっしゃいます。これは抱っこ布団ですね。一番売れるときには、月200個ぐらいですかね、売れるときがあります。

○おばあちゃんのアイデアから生まれた商品

孫と遊ぶ祖母

 次に人気なのは、こちらの、バッグに、この角度だとちょっと見えにくいんですが、電車やバスのつり革みたいなものがついていて、これもおばあちゃんスタッフのアイデアからできたものです。孫を預かって、孫と一緒にスーパーに買い物に行くと。自分はお会計のときにどうもとろとろしてしまうと。お会計のときにお財布を探っている間に孫がどこかに行ってしまう。そのときに、お会計の間だけ、ここを持って待っていてねと言える何かがついていればいいなということで、バックに手すりをつけるという、こういった商品をつくりました。子供が離しちゃえば迷子になっちゃうんですけれども、ちょっとここを持っていてねというと、結構子供は喜んで持っています。持つところが、蛇の顔がついていたり、動物の尻尾の形になっていたりとか、いろいろ工夫しています。

○孫と着るTシャツ

 あとは、密かな人気商品は、動物のモチーフの、これは、今、ライオンですけれども、還暦Tシャツですね。赤いTシャツなんですが、孫と一緒にお祝いするとき、晴れの日に使うようなTシャツを販売しています。こちらは、今、動物園の売店のほうでも売っておりまして、うれしいことに、動物園の売店で買ってくれて、また次に動物園に来るとき、それをおそろいで着てきてくれるというお客さんもいるようで、そういったことを聞くと、またそれを作っているおばあちゃんたちの励みになっております。  こういった感じですね。工房の中は、本当に一軒家で、普通の住まいを借りて、このあれだとわからないですけれども、ミシンをいっぱい並べて、そこでいろいろ、あれ作ろう、これ作ろうという話をしながら試作をして、みんなで検討して物を作っております。

工房での物作り 還暦Tシャツ

○コラボ商品の開発

 自分たちの手で作る以外に、ほかの商品はコラボして作っております。さっき言った哺乳瓶ですが、これは3Dプリンターで作った、まだ試作の段階ですが、哺乳瓶というのを、今、鋭意開発中でございます。こちらは芝浦工業大学という大学のデザイン工学部と一緒に、この形を研究して、おばあちゃんたちに実際に使ってもらいながらデータをとって、この形にしております。この開発にもう3年もかかっておりまして、時間も金も予想以上に大変かかってしまって、ようやくこの冬に発売にこぎつけるという、今、段階に来ております。あと売らなきゃいけないという大きなハードルがありますが、そういう段階でございます。

 あとは、これはまだ企画中の商品ですが、おもちゃですね。おじいちゃんと孫が一緒に地元を、自分の住んでいるところを歩いて、その歩いた自分のところの地域の地図をおもちゃとして一緒に作り上げるというおもちゃでして、これも地元の埼玉大学の脳科学の先生と一緒に研究しまして、通称、「ぼけないおもちゃ」と呼んでいるんですが、おじいちゃんがこれで孫と一緒に遊ぶと、脳が活性化してぼけないというところを売りにして発売しようかなと思っております。

 あとは、そういったハードではなくて、ソフトに寄っているところもありまして、お母さんがおばあちゃんに孫を預けるときに、今日はこんな健康状態ですよ、今日は熱はないですよ、こういうところにちょっと連れていってねみたいな、そういう連絡ノート、孫を預けるときの連絡ノートみたいなものも、今、開発しております。こちらは、今、サンプルを作って、地域の人たちに渡して、記入してもらって、それを商品化していきたいなと思っています。

コラボしてつくる 人形の赤ちゃん 企画中の商品 あずける日ページ

○孫育て情報サイト

孫育て情報サイト

 あとは、商品のほかには孫育て情報サイトというのも4月にオープンしました。孫育てグッズを売る中でよく耳にする話題がありまして、おじいちゃん・おばあちゃん世代とパパ・ママ世代のギャップが大きいんですね。パパ・ママ世代はおじいちゃん・おばあちゃんに孫を預かってもらいたいと。おじいちゃん・おばあちゃんは孫がかわいいけれども、やっぱりずっと預かっていると疲れますね。でもそういうことも、孫かわいさについつい許してしまって、その疲れがたまって、ある日、爆発して、パパ・ママ世代とけんかになったりとか、パパ・ママ世代は、例えばおやつは甘いものをあげてほしくないのに、おじいちゃん・おばあちゃんが孫かわいさであげているところに何も言えないと。特に義理のお母さんだとなおさら言えないとか、そういったいろいろなギャップがありまして、そういったところを何か埋められる情報を提供できればいいなということで、今、この孫育て情報サイトというのも運営を始めております。

○BABAラボの働き方

 ちょっと話は戻りますが、BABAラボで実際に働いている人たちは、今、登録だけだと、約50名ぐらいの方が参加しています。50名の内訳ですが、全部正社員ではありません。正社員は1名と書いてありますが、私ですね。私だけが正社員で、あとアルバイトが5名おります。アルバイトのほかは、大体の方が内職の請負契約というのをしています。さっきのTシャツだったら、例えばライオンの部分の型紙を切ったら幾ら、ミシンをしたら幾ら、刺繍をしたら幾らという細かい料金表がありまして、それで一月やってもらった分を次の月にお支払いするという、そういうシステムをとっております。この内職請負契約が、今、30代から80代の方までいろいろいるというところですね。あとは、そういった縫い物だとか、手作業はできないけれども、やっぱりBABAラボに何かしら参加したいなというボランティアの方もいます。ボランティアの方は、この家に来て、賄いなんかを作ってくれるんですね。みんなで食べるお昼を、カレーですね、カレーを作ってくれています。ひどいときは、ひどいと言っては作ってくれる人にいけないですね、毎日カレーというときがあって、今日もカレー、明日もカレーという、賄いがほぼカレーというときもあります。

 年代的には、実はBABAラボということで、最初は50代から上のおばあちゃんを集めようと思ったんですが、実はふたをあけてみると、何と半分が30代の子連れのお母さんたちと今はなっています。理由としては、最初はもちろんシニアの方を集めたんですが、このBABAラボに是非参加したい、お手伝いさせてくださいという方が増えてきて、そのお母さんたちに理由を聞きますと、自分の親は遠くに住んでいると。

BABAラボで働く人たち BABAラボの働き方

○実は若いママが多い

 でも子供が生まれて、やっぱり核家族、その小さい単位ではなくて、子供におばあちゃんの温かさというのを経験させてあげたいという理由と、もう1つは、自分が今は30代だけれども、自分が70代、80代になって年をとったときに、こうやって生き生きと働いているおばあちゃんたちを間近で見ることが自分の希望になるという意見ですね。それでBABAラボのおばあちゃんたちを応援したいからお手伝いさせてくださいという人がどんどん増えまして、今、4年目に入ったんですが、気づけば3、40代のお母さんたちがあふれているという状況になっております。

 なので、実際、工房の中は、その3、40代の方が連れてくる幼稚園のお子さんとか赤ちゃんとかと80代のおばあちゃんと、本当にいろいろな世代の人が、あれつくろう、これつくろうと、そういう仕事の会話もあるし、昨日旦那とこんなことがあったみたいな、そういう家族の愚痴なんかも言い合ったり、そういうのをカレーを食べながら、女性っていろいろ話題が飛びますでしょう、ああだ、こうだというのを1日中、プライベートも仕事も垣根なく、いろいろな話が飛び交っているというのがBABAラボでございます。最初に来た方は、すごくうるさくてびっくりすると思いますよ。おじいちゃんとか、耳を塞いで出ていく人がいるんです。とにかく女性陣がいろいろな話題をギャーッとしゃべっているので、耐えられないといって出ていく人もいます。

○超ワークシュエリング

 まとめになりますが、一応内職の仕事なので、そのBABAラボに来てみんなとおしゃべりしながら作業をしてもいいし、忙しい方は自宅に持って帰って、子供が寝てからゆっくりやったりとか、そういう方もいます。なので、作業自体は自宅工房でもどこでもオーケーです。

 子連れ、孫連れ出勤可能ですね。今日は出勤日なのに、うちの嫁がお孫さんを置いていっちゃったといって、よく孫連れで来る方もいらっしゃいます。

 「超ワークシェアリング」と書いたんですが、本来なら、そのTシャツを1枚仕上げる作業も、手が器用な人ならあっという間に1人で仕上がってしまうんですね。なので、本当なら、こんな40人も50人もかかわらなくていいと思うんですが、それをあえて作業を細分化して、いろいろな人ができるようにした結果、まあ、こちらの管理は大変なんですね、ここを誰がやって、あれをやって、今月誰が幾らやったという管理は大変ですけれども、そのかわりいろいろな人がかかわれて、地域で、一人一人の稼げる額は少ないけれども、超ワークシェアリングということで、参加できる人は増えているという、こういった状況でございます。1人どのぐらい稼いでいるかというのが気になると思うんですが、多い月で、一番内職をやっている人で5万円ぐらいですかね、ちょうどアルバイト出るぐらい。大体平均は7、8千円前後の人が多いですかね。全然作業をしないでおしゃべりばかりしている人は、1月100円とか、そういう人もいます。多分タグを10枚ぐらいつけて、あとはしゃべっていておしまいという、1月これしかやっていなかったの? みたいな、びっくりするときもあります。まあ、そういう人もいます。なので、おばあちゃんとかは、8月は暑いから来ないでお休みとか、そういう人もいますね。もう8月は来ないわ、みたいな人もいます。その辺は自由に、だから管理側が大変ですね。さっきのアルバイト5名というのは、みんな40代のお母さんたちが管理をしています。製造管理とか、人の管理ですね、管理側におります。

○地域にもたらす効果

 BABAラボの効果としましては、シニアや、その子たちのお母さん、主婦だった人たちの、地域で人材の活用ができているということですね。あとは、これは本当に自分は意図していなかったところですが、多世代間の交流というのが生まれたと。自分も母の世代からあれやこれや言われるとどうしても反発しちゃうんですね。そこが、1個世代を飛び越えて、おばあちゃんの世代から言われたら素直に聞けるとか、そういったこともありまして、この多世代間の交流というのがすばらしいなと思っています。さっきの竹内さんのお話にあったように、自分の孫だけじゃなくて、そのBABAラボに来ている子供たちがみんな自分の孫のようにかわいがってもらっていて、そういう交流がすばらしいなと私も思っています。

 あと「1人暮らしのシニアの見守り」と書きましたが、BABAラボの内職のスタッフの中には、旦那さんを亡くしてひとりで暮らしているというおばあちゃんも結構多くて、そういった方には、いつ来るの? と、来なかったら電話をしたり、どうしたの? 体調が今日は悪かったのと、そういう連絡をきちんととることで、BABAラボにかかわってくれる人だけに対象はなってしまうんですが、このひとり暮らしのシニアの見守りというところも多少は担えているのかなと思っております。

 こういった感じで、にぎやかにわいわいやっています。またこの後のディスカッションのときに、いろいろ将来の展望とか、いろいろな苦労みたいなところはお話ししていきたいと思っております。

地域にもたらす効果 BABAラボのメンバー

 以上、BABAラボでした。ありがとうございました。


朝山あつこ

【朝山】 私は、大人も子供も自分を生かして生き生きと仕事をして生きていってほしいと願って活動している、キャリア教育の認定NPOの代表をさせていただいております朝山あつこと申します。

 私がこれからお話しさせていただきますのは、実はシニアの世代のジィジやバァバのためにやっている活動ではないんですね。完全に子供のための問題でございまして、私は3人の息子を育てる普通の専業主婦だったんです。子供の学校が、長男が中学2年生のときに崩壊してしまいまして、大変な状況になったということがあったんです。長男が中学2年生、当時13歳、14歳でしょうか。今は30歳になりまして家族もおりますような状況でございますけれども、そんなことがありましたので、ちょっと視点が違うかもしれませんが、御了承をいただけたらと思います。

○キーパーソン21設立の契機

 きっかけは長男の中学校の学校崩壊、長男の中学校が崩壊してしまったんです。妊婦の先生がナイフで刺されて死んじゃったという事件、覚えていらっしゃいますか。日本が全国的に、そういう、学校が崩壊するというようなことがあった時代だったので、覚えていらっしゃる方いらっしゃいますね。そんなことがあった時代に、うちの長男の通っておりました中学校が、御他聞に漏れずと言っていいかどうかわかりませんけれども、大変荒れた学校になりました。私、子育て1年生というか、1人目の息子ですから、よくわからなかったわけです。そのときに、子供たちが片や暴れる、片やおとなしく引きこもってしまう、元気がない、何が起こっているんだろうと、私は母親としてよくわからなくなりました。

 何でこういうことが子供の世界の中で起きているんだろうと。先生方もすごく戸惑っていらっしゃるんですね。大変困った状況が起きていたということがありました。

 そんな中で、息子が高校へ行かないと言ったんです。私、すごくびっくりして、高校へ行かないという選択肢があったのか、本当に驚きました。私は専業主婦で子供を育てておりましたけれども、核家族の中で育って、当たり前のように中学に行き、当たり前のように高校、大学に行き、当たり前のように仕事をして生きていくというように育てられてきたんですね。そんな中でおりますと、息子も当たり前のように大学に行って、勉強が好きなら大学院に行って、もしかしたら海外に留学するチャンスがあれば留学したり、で、一生懸命自分の好きな仕事をして、きれいなかわいい、自分の大好きな人と結婚して生きていくと勝手に思い込んでいた。そういうレールで生きていくんだと、3人の息子に対してですね。なので、高校へ行くのが当たり前だと。当たり前か当たり前じゃないかも考えないぐらい当たり前だったので、びっくりしたんです。これは長男に1本取られたと思いました。そのとき以来、人生というのはいろいろな生き方があって、いろいろな選択肢があって、いろいろな考え方があって、いろいろな生き方をしていくということが大事なんだ。それを決めるのは大人でも社会でもなくて、子供本人が自ら決めていくことなんだということに気づいたんですね。

大人も子供もわくわくして生きる第三の居場所 キーパーソン21を始めるきっかけ キーパーソン21設立

○わくわくエンジンとは

 母親として、何を息子に残せるだろう。財産でもないな、知識でもないな、何を残してあげられるんだろうと考えたときに、これですね、「わくわくエンジン」とキーパーソンでは呼んでいるんですけれども、自分の本心、気持ちが素直に向いて、わくわくして動き出さずにいられない原動力のようなものを探し出す、これが私が母親として唯一できる、子供に残してあげる唯一のことだというふうに思ったんです。

 じゃあ、息子3人にはいろいろな経験をさせながら、いろいろな方と出会いながら、いろいろな中で自分を生かして、生き生きと仕事をして生きていってほしいと思って、それなら何とかやれるかもしれない、自分の息子たちだけなら。でも息子には友だちがいたんですね。暴れん坊になっている友だち、片や元気がなくなってしまっている友だち、その友だちとやっぱりみんなで、将来、社会に出て、仕事をして生きていくという仲間と考えたときに、うちの子供だけのためにやったのではだめだと思って、これを日本中の子供たちのためにやろう、「すべての子どもたちが自分を活かしていきいきと仕事をして生きていってほしい」、こう願って、2000年12月にキーパーソン21という任意団体を立ち上げました。ですから、この時点で既にシニアのためではないんですね。子供のためにやるということを始めたわけです。

 日本の子供たちの姿というのはいろいろあるんですけれども、小学生のころには、お嫁さんになりたいだとか、いろいろ楽しい思いをしているんですけれども、なぜか日本の中学生・高校生って、だんだん、どうせ俺なんかだめでしょうとか、つまらねえとか、勉強する意味わかんねーしとか、何やりたいんだからわかんないんだけどとかと言っているのが日本の実態です。いろいろなデータが出てきますけれども、白書の中にも、40歳になったとき自分が幸せになっていると思う子供の割合が7か国中最低、これは本当の話です。大学生と言えば、就活自殺とかをしちゃうわけですね。何をやればいいんだかわからないと。まあ、最近、就活はよくなっているみたいですけれども、自殺をしてしまうなんていうことが起きているわけです。

キーパーソン21設立 日本の子供たちの姿

○自分発見プログラム

 それで、キーパーソンさんは何をやりたいの? ということですけれども、これは2つ別々なのでやりにくいんですけれども、子供を中心に家庭と学校があるんです。でも子供って社会の宝ですね。行政とか、シニアとか、企業とか、団体とか、いろいろな皆さんのお力で育てていくものなんです。それを日本中の子供たちに、自分のわくわくエンジンを発見して生き生きと仕事をして生きる社会、そして地域社会、企業などを含めたあらゆる立場の大人たちが子供の可能性を引き出すために本気で力を注ぐ社会、これを作りたいと思ってキーパーソン21を立ち上げました。キャリア教育のプログラムというものを作っておりまして、これを話すと長くなってしまうんですが、これまで15年間の間にプログラムを受けた子供の数が3万人以上ということで、私たちは学校の授業の中で、先ほどの竹内さんと同じように、先生方に御理解をいただきながら、学校とともにプログラムを開発し、実践してきているという団体でございます。

 子供にとってすごく大事なのは、この「自分を知る」ということなんですね。

 こんなことが俺は得意なんだとか、こんなことなら頑張れちゃうとかと思うようなものは何なのかを知るということがすごく大事。それから、いろいろな経験をしたり、それこそ農園の経験をしたり、BABAラボのようなところでおばあちゃんやいろいろな方と接触しながら、こういう人たちがいるんだとか、こういう考え方があるんだと多様な経験をするということをしながら、そして子供というのは自分の道を選びながら自立していくものだというふうに考えております。

 プログラムは、めっちゃ楽しいゲームで作っていたりとか、大人が係わるということをすごく大事にしています。ですから、うちは教材販売会社ではありませんので、教材を子供に売って、自分でやりなさい、これで将来のことを考えられるでしょう、なんていうやり方はしていません。全て大人が係わるということを大事にしています。ですから、手間もかかるし、人の手が入っていて、1個のプロジェクトをやろうと思うと、いろいろ連絡だとかもすごく手間がかかるわけです。今日もうちのスタッフがその辺に3名ぐらいいるんですけれども、手間をかけてやってくれているわけです。

 で、チームワークでやる。人間というのはひとりで生きていけません。でも、ゲームが流行したりとか、一人っ子家族のお子さんが多かったりとかすると、なかなかチームワークをもって生活するということが減ってきてしまっている。こういうことを大事にプログラムを作ってきています。

キーパーソン21の描く理想の姿 子供たちへのキャリア教育

○自分を生かす

夢!自分!発見プログラムとは

先ほどから「わくわくエンジン」という言葉を使っているんですけれども、わくわくエンジンというのは何だと思います? 皆さんの中にも全員にあるものなんです。わくわくして動き出さずにいられない原動力のようなものなんです。それを探し出すということをすごく大事にしているんですけれども、それには理由があります。わくわくエンジンがわかると、エネルギーの行き先がわかるようになるんです。自分を生かすことができるようになるんですね。

○動き出せない子供たち

 子供たちが迷っていて、どうしたらいいかわからないという子が、今、日本の中に蔓延しています。そういう子供たちが、一人一人がいいところを持っていて、エネルギーを持っているわけですから、そのエネルギーを引き出すということを、私たちは、今、しなくてはならない現状に日本の中が置かれています。という実態があります。昔はほっといても、さっき樋口さんのお話の中でも、「引きとめる母ちゃんを振り捨てて」だっけ、とめてくれるなおっかちゃんと言って行っちゃうみたいな話ってちょっとあったと思うんですけれども、今、そういうことって減っちゃっているわけです。出ていきなさいと言っても、一歩踏み出せない若者が増えてしまっているという現実なんです。そうすると、やっぱり大人が一人一人の子供に対して丁寧に、この子にはどういう力が潜まれているんだろうということを探し出すということを、大人側が手を尽くし、心を砕いて子供たちを引き出してあげるということが必要になっているんです。

○大人が気づくべきこと

同じ野球でもわくわくする理由は違う!

 例えば、野球が好きという人、たくさんいらっしゃいますよね。野球大好き、子供も野球が好きなんですよ、サッカー人気もありますけれども。A君、B君、C君は、みんな野球が好きと言うんです。わくわくすると言うんですよ。でも大人はすぐ、野球選手になれば? とか言うんですね。でも野球選手になれる人なんて、東大に入るより難しいじゃないですか。なれないわけですよ。そうすると中学・高校ぐらいで諦めるわけです。どうせ俺はだめだ、残念、みたいな感じになっていっちゃうんですね。

 でも違うんですよ。A君は、何で野球にわくわくするの? と言ったら、作戦や戦略を立てるのがおもしろかったんだよと言うんですよ。B君は、チームで何かを達成するために自分が役に立っているのが楽しかったんだよと言うんですよ。C君は筋トレとかが好きなんですね。日々の小さな成長を感じるのがすごい楽しいと言うんです。A君、B君、C君、みんな野球が好きだけれども、その中でわくわくする理由って、結構違っていたりするんです。これって大人はなかなか気づきにくいことなんです。だから、野球といったら、その野球以外にいろいろなお仕事がある。この3つって、どれも全部、どこの会社へ行っても必要じゃないですか。作戦を立てるのも、チームのために尽くすのも、日々の成長を感じるのも、どこへ行ったって、会社の中で必要ですね。そういうことを大人が気づいてあげることによって、その子の人生とか、エネルギーの行き先が変わっていくわけです。

○一人一人を認める

 私たちが一番大事だと思っていることは、一人一人を認めるという行為です。そういうことがわかると、子供は勇気を持って一歩を踏み出すことができるようになるんです。実は私たち、うちの団体にはシニアチームというのがありまして、これは子供たちが一歩を踏み出すためにやっているんですけれども、実はシニアチームがシニアの皆さんのためにやっているプログラムがありまして、それは2度目の一歩と言っているんですね。子供も大人も一歩踏み出すときにはちょっと勇気が要ったりするわけです。でも、何にわくわくするんだろう、何が楽しいんだろうとわかったときに、踏み出すことができるんです。まあ、そんなことをやっています。

 わくわくエンジンがわかると、どういうふうに子供たちが変化していくかということですけれども、例えば中学3年生の男子B君、この子は貧困家庭の子供です。生活保護を受けています。私たちの学習室に通ってきている子です。僕は幸せな家庭を築きたいんだよ。そのためにはお金を稼がなくてはならないことはわかっている。でもどうせ働くなら好きなことをしたい。一生懸命働きたい。で、俺って結構、物を作るのが好きなんだよねと、プログラムをやる中で気づいたんです。建築に関する仕事がしたいと言い出したんです。どうもおじいちゃんが宮大工だったらしいんです。で、建築科のある学校に行って資格を取りたい、勉強したいと言い出したんですよ。

一番大事なことは、一人ひとりを認めるという行為 キーパーソン21の事例

○目標を見つけるということ

 この子はどういう子かというと、中3の9月からうちの学習室に来たんですけれども、来たとき、成績は「おいっちに、おいっちに」。5段階評価の1と2しかないんです。6時半から8時半まで学習室をやっているんですけれども、8時25分に来るんですよ。あと5分というときに来るんですね、もう終わるというときに。わざとそうしているのか、よくわからないんですけれども。じゃあ、5分だけ勉強しようといって5分やるんですけれども、まあ、そのぐらいの子だったんです。

 提出物も出したことがない。高校受験をするというと内申点というのが関係あるんですね。そうすると、内申点というのが取れていないと、行きたい学校をなかなか受けられないわけですよ。「ねえねえ、提出物出している?」と聞いたら、「え、提出物? 出してないけど」って。「出すんだよ、出さないと、それ点数になるよ」と言ったら、「え、提出物って、出すんだったんですね」と言っているような子なんですよ、うそのような本当の話なんですけれども。その子が勉強したいと言い出したんです。

 それで、勉強してくれるのはいいんだけれども、建築科の学校に「おいっちに、おいっちに」の成績の中で行こうと思ったら、神奈川県内だと、ある何とか高校の工業科の定時制でないとなかなか難しいねという話になった。けれども私たちは全員全日制に行かせることを目標にしていたので、ちょっと頑張ったんです。そうしたら、結論、全日制高校の建築科に受かって、見事、行けたんですよ。というわけで、そのエネルギーとか、目標とか、自分がやりたいことは何なのかということが見つかったときに人間は頑張って動き出すということのあかしなんです。まあ、そんなことがありますということですね。

○貧困率の現状

 いろいろな問題が起きていますと。子供を取り巻いて、いろいろ直面する問題がありますということです。貧困というところでいくと、先ほど澤岡さんが御説明してくださいましたので、私が説明するまでもないことかとも思うんですが、実態として知っていただきたいのは、本当に貧困率が上がっているんです。今、16%とかになっていると思います。貧困家庭って、貧困という言葉って、困窮とは違うんですよ。困窮というのは困っている状態のことです。貧困というのは困窮よりさらに一歩進んだ状況のことなんです。まあ、そういう子たちがいる。

 生活保護を受けている人というのが、例えばうちだと、川崎の中では生活保護受給家庭で育つ中高生が2,000人もいるんですよ。びっくりですね。その貧困の連鎖率というのは25%、ですからうちの塾、勉強の学習室に通っている子も、4人に1人は、もう一回、生活保護になっちゃうわけです。生活保護になるということは、働かないということなんです。働かないということは社会的負担ということです。もちろん本当に生活保護を受けなければいけない人たちには当然のごとく福祉がされるべきなんです。だけれども、この子たちには勉強するチャンスがないだけなんです。生まれた環境が違うから、生まれた環境がたまたまそこだったから、勉強する環境、大人が支援してくれる環境がないからそうなっているだけなんです。

今、日本の子供たちが直面している問題 子供の貧困

 例えばいろいろな障害を持っているとか、そういう子は大変かもしれない。だからフォローしていってあげなければいけないけれども、この子たちにはチャンスがなかっただけなんです。ですから、この子たちにチャンスを提供すれば、必ず高校に行って、社会で意欲を持って自立して、社会に貢献する人になっていくことができるんです。それを私たちはやっています。

 生活保護になると、年間8,000万から1億円のコストがかかります。私たちの税金です。だけど、この事業って、私たち、5、600万で受けているんですけれども、全員、意欲を持って、将来、仕事をしたいと言ってくれるわけなんです。安いですよ。めちゃめちゃ費用対効果が高い、これをあまり言うと嫌がられるかもしれないんですけれども。だから子供のうちに策を打ってあげれば、すごく元気になって、成長して、社会に貢献してくれる子供たちがたくさん育つということなんですね。ということを言いたいんです。

貧困世帯の子供の学力向上を妨げる要因

 その子たちが少年院における、この辺ですね、貧困ということは犯罪率も高くなるわけですよ。御記憶にあるかどうかわかりませんが、川崎市で中学1年生の子供が殺されましたね。あの事件も、やったほうもやられたほうが貧困家庭の中にあります。もし私たち大人がその子たちの面倒をちょっと見てあげることができていたなら、あの事件は起きなかったかもしれないと私は思っています。

○生き生きした人生をサポート

 今もこの事業を頑張り続けているんですけれども、子供には可能性があるんです、全ての子供に。今日のテーマは、私たちは貧困解消のために活動している団体ではないんですね。子供が自分の人生を生き生きと生きていくために大人がサポートするということをしている団体なんです。その中の、たまたま教育環境のない貧困家庭の子供たちへの支援もしているということなんですけれども、まあ、こういう問題が起きていますということです。いろいろな問題がありまして、進学しなくていいんじゃない? と親が言ったりとか、お金がないから大学に行けないわとか、高校に行けないわとか、親が健康じゃないから家事をやらなきゃいけないんだとか、あと、今、日本の中には外国の血が流れている子供たちがものすごく増えています。そうすると、親が日本語を話せないから、全部通訳を、親の通学とか、いろいろなことを全部自分がやらなければいけないとか、住環境が厳しくて、これぐらいの6畳一間ぐらいのところに家族6人ぐらいが住んでいて、子だくさんで、小さい弟たちもいるから勉強する環境がないみたいな子とか、そういう子供たちのためには、無償で学習しやすい場を設けて、学力を向上させるということがすごく大事なんです。

 日本は識字率が100%だと思われている方が多いと思うんですけれども、実は違います。九九が言えないだとか、時計が読めないだとか、アルファベットが読めないという子がたくさんいます。そのまま社会に出たらどうなるかといったら、契約書でだまされちゃいますね。そうすると犯罪が起きたりとか、まあ、幸せが見えない感じがしますね。そんなことが起きていますというのが実態です。そういう、川崎の事件につながるようなことも、塾をやっていると見えてくるというのがあります。

○学習支援・居場所つくり事業

学習支援・居場所つくり事業

 こんな感じですね。川崎市の中原区において、学習支援・居場所つくり事業というのをやっております。うちの事業の中の1つのものとしてやっております。そして、私たちは3つの方針を立てています。第3の大人のいる場所です。絶対に見捨てないという安心感を子供に与えます。それは、シニアの皆さん、誰だってできますよね。おまえはだめだ、おまえはだめだと言われたら、おまえはだめな子になっちゃうんです。いい子だね、すごいね、できたねと褒め続けられると、子供も頑張れるんです。大人もそうだと思います。そして学力の向上では、この子たちは、学校や塾では、まあ、塾に行けない子が多いんすけれども、おまえはだめだ、おまえはだめだと、やっぱり言われ続けてきているんです。九九が言えなかったら、そりゃだめだと言われちゃいますね。先生だって見切れないというのが実態だと思います。でも私たちは、九九が言えなかったら、「あ、足し算できるんだ、えー、すごいじゃん」と言います。そうやって、「できた」の喜びを、1つ1つ、小さな喜びをかみしめるということをさせています。

 それから、この子たちって、高校へ行っても、ゴールデンウイークか夏休みぐらいに中退しちゃうという、これも1つ、日本の中の問題です。東京都では5,000人の中退者が毎年出るんです。中退率が、東京都知事も、ここを何とかしないとその子たちの行き場がないということで、すごい問題に思っていらっしゃる。私たちは、単に高校に行くということを目標にさせていないんです。高校に行って、その後どうするかという未来に希望や意欲を持つ、こうしたいという希望を持たすということが私たちの得意分野としてやっていることで、この3つを大事にしています。そうすると、茶髪でピアスのにいちゃんも、やんちゃなA君も、初め来たとき、集中力が3分だったのが90分になっちゃったんですよ。

大人たちの3つの役割 変わっていく自分の気持ち

 私、誰とも話していないんだと、学校でいじめられていたBさんは、うちのシニアのサポーターたちに応援されて、今年、テニス部のキャプテンになったんですね。行動がすごく主体的で、意欲を持つようになった。そんなことを私たちはやり続けております。

 うちの団体は300人の個人会員と法人会員がおりまして。私もバァバでした、ここでした。仲間に入れてください。そして、大学生が活動したり、小・中・高校生、こういうぐるぐる回るような関係の中で組織が動いております。大体こんな感じですね。年齢層はこんな感じ。男女比は五分五分です。多様な人たちが動いてくれているというような団体、高校生からシニアまでの幅広い年齢層の方が参加ということです。この方はシニアですね。一緒に小学校へ行って、給食を食べて、子供たちにプログラムを実践したりとかですね。

300人の個人会員 組織構成

 これはわくわく学習室、さっき申しました貧困家庭の子供への支援です。この子、こういう大学生なんかと、シニアのおじいちゃん、ジィジと、こんな若いかわいい人たちとかと、一緒にみんなで場を作っていっています。

 これは定時制高校ですね。ワタナベさん、ジィジが活動しております。

 これもうちのスタッフですけれども、こういう若いかわいい人ともおつき合いができますよ。

 こんな感じで、よく懇親会やパーティーもやります。

 ジィジ、バァバの声をちょっとお知らせいたしますと、私たちは子供たちを元気にする活動なんですね。だけどシニアの人とか大人の人も、ジィジ、バァバもみんなハッピーになっちゃうんです。シニアの声を読み上げますと、「自分の二度目の一歩が踏めた」、おっしゃるんですよ。「家庭以外の居場所ができた」「自信を持てた」「人を認められるようになった」

 おまえはだめだと言わなくなったと。それから「大切なものが見えた気がする」、何でしょうね。「若い人たちと話す機会ができた」「大学生の友達ができた」、上から目線じゃなくて、大学生の友だちができたというんですよ。

小学校で わくわく学習室で 懇親会も

 「大学生の就職のサポートができた」「会社員時代には思いもしなかった経験ができた」「過去の仕事のスキルが役に立った」「次世代育成に貢献できるチャンスをもらった」「給食が食べられた」「仲間ができた」、まあ、こんなことを言ってくれております。

 ということで、これまでの仕事のスキルや人生の経験を生かして、私たちは皆様のことを大歓迎いたしますので、よろしかったら御一緒に活動していただけたらと思っております。

ジイジ、バアバの声 これまでの仕事のスキルや経験を活かす

 あなたもキーパーソンということで、どうもありがとうございました。

キーパーソン21の会議

 今日のこの場といいますのは、何か1つの答えを、これが正しいよねという答えを見出そうとする場ではございませんでして、皆さんで、新しい地域づくりって、おそらくこういうことがキーワードになり得るよねということをまずは共有する場、こういったいろいろなアプローチの仕方があるんだよということを一緒に考える場と、今日はしていきたいと考えております。ですので、そういったお気持ちで、今日、最後まで聞いていただけたらと思います。

 では、まずディスカッションに入っていくわけですが、同じようにジィジとバァバの力が次世代を育てているというようなアプローチなんですが、全く異なる御三方ですので、それぞれ、ほかの方の活動というのも聞かれるのは多分初めてだったりすると思うんですが、例えば竹内さんから見られて、桑原さん、朝山さんの取り組みというのがどういう印象、感想、可能性を感じたか、それから、またちょっとこういうことも聞いてみたいなということがもしあればですが、そういったこともありましたら、まず、じゃあ、竹内さんから、お時間の関係もありますので、簡潔に聞いていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

【竹内】 今日のお話は、また取組のテーマといいますか、形がいろいろ違いますけれども、私は、自分の体験も、それから皆さんの体験も含めてお聞きしたのは、共通しているのはわくわく感だと。自分がわくわくして、あるいは自分が楽しんでやるというのがやっぱり基本にあるのかなと思いました。それは、シニアが一番生き生きできるためには、よく言われることですけれども、今日3Dという言葉がありましたけれども、前から言われているのは、教育、教養というのが大事だと。というと、すぐ生涯教育を思いつかれるかもわかりませんけれども、今日行くところがある、今日用事がある、そういう教育、教養なんですね。だから、目的を持って、何か楽しみを持ってそこに出かけていって、何がしかのコミュニケーションをする。それに伴ってわくわく感を感じて、それがまた生き生きと活動できるといった点では、テーマが違っても、私は全部共通だというふうなことを感じました。ありがとうございました。


【桑原】 私もその教育ではないですけれども、子供も大人も、もちろんおじいちゃん・おばあちゃんも、その役割がある、その地域に誰か自分を望んでいる人がいるという、そういった環境がやっぱり生きる力になるんだなと思いました。おじいちゃん・おばあちゃんもそれで長生きするだろうし、子供もそれで、じゃあ、将来、何になろうかと前向きに考えられる、その役割というのが大事なんだなと思いました。

 質問としては、BABAラボはおばあちゃんだけなので、今、そのおじいちゃんの巻き込み方というのはどういう工夫があるのかなというところをちょっと知りたいですね。

【澤岡】 どうもありがとうございます。私も実は桑原さんのお話、バァバはすごくみんな輝いて、美しい女性たちがたくさん出ているんですけれども、どう見てもジィジがあまりいらっしゃらなかったので、あわせて御二方に、まず桑原さんからの質問ということで、その男性の巻き込み方、ジィジがこれからどう巻き込まれるかというようなお話をいただけたらと思うんですが、あわせて私からもついでに桑原さんに御質問させていただきますと、BABAラボとしては、これから何かジィジに対するアプローチというのも考えていることがありましたら、お二方が御回答いただいた後に、また御回答いただけたらと思います。

【竹内】 難しい御質問ですね。ただ、男性と女性の違いは確かにありますね。女性のほうは、私は横のコミュニケーション、あるいは、非常にとりとめのない話であっても、わりに主婦同士のコミュニケーションというのは地域で生まれがちなんですね。そういうコミュニケーションが下手なのが男性なんですよ。つまりジィジなんですよ。ですから、気持ちがあっても、ちょっとコミュニケーション不足からチャンスをつかみかねているという、潜在的ジィジのパワーというのが絶対にあると思います。

 だからアンケートでもよく、何か目的を持って行動したいけれども何から始めていいかわからないという、きっかけを探しているジィジは多分潜在的にあるから、それをどう引き出してくれるか。これは何でもテーマ、その人が少しでも、こういうことで社会のために、あるいはそういう社会のためにというよりも、自分が元気になるために、それから、感謝を受けたら自分のパワーがどんどん出てくるという、その喜びを、何かきっかけをつかめれば、テーマはいろいろあっても、可能だと思います。

 私自身も65歳まで電気エンジニアと申し上げました。65歳から突然農園という、農業に関心を高めていってここまで来たということもありますし、きっかけだと思いますね。それをつくる方法は、例えば女性がたくさんいる場には寄りやすいですよ。絶対にそう思います。だからうまくそれを呼び寄せる働きかけをしてほしいと思います。

【澤岡】 では朝山さん、いかがでしょうか。

【朝山】 多分BABAラボの中身って育児という感じなのでバァバがいっぱい来てくれるんだと思うんですけれども、うちの団体って、男性のジィジが多いんですね。何でかなと、今、初めて考えたんですけれども、一番初めに、この団体を立ち上げたときに来てくださったコンドウさんというおじいちゃんも、ある新聞記事を読んで電話をくださったんですよ。任意団体としてスタートして6か月目のときにお電話をくださって、女性ばかりで大変でしょう、やっぱりこういう組織を作っていくときには男性の力が必要なんだよと仰ってくださった。だから、この団体、危なそうと思ってくださることも1つこつかなと思ったり。あとは、今、うちの経理はサイトウというおじいちゃんが一手に引き受けてくれているんですけれども、やっぱり経理とかって男性のほうが強かったりする方が多くないですか。そうでもないですか。

 気のせいかな、わからないですけれども、何か助けてあげなきゃみたいな感じで来てくださる方が多かったりとか。あとワタナベというのが活動してくれていたんですけれども、ちょっと病気になってしまったので、経営のところで、「ノウハウが足りなかったら僕が役に立つよ」みたいな感じで仰ってくださって、男の人の得意分野と女の人の得意分野って違うと思っていて、今のバァバ世代は働いていなかった女性の方も多かったと思うんですね。だから子育てというところには得意分野として生かせるけれども、今の時代のジィジは働いてきている人たちですから、仕事をするということがあって貢献ができるのと、あとうちの団体の場合、若者が、高校生や大学生が仕事を持って自立をしていくということの分野なので、自分の働いてきた経験というものをプラスアルファとして考えやすいんですね。経験がそのまま子供に生かせるわけではないけれども、イメージが湧く、将来を決めるとか、働くということに対してイメージが湧くので、男性が多いのかなと勝手に思ったりします。つまり、何か男性が活躍しやすいものをネタにされたら男性がいっぱい来るんじゃないでしょうか。

【澤岡】 ありがとうございます。今、出てきたワタナベさんに関しましては、私もちょっとおつき合いをさせていただいていたんですが、2人でお茶を飲んでいると、「うちの代表さあ、ああじゃない? だから僕が後ろからちゃんとサポートしてあげなきゃだめなんだよ」と、うれしそうに仰っているワタナベさんの笑顔を、今、思い出してしまって、まさにそこですよね。

【朝山】 そうなんです。だから、代表はだめなほうがみんな助けてくれるというセオリーは、うちでは成り立っているんですね。

【澤岡】 今、こういった話も出てきましが、BABAラボがあるくらいなら、単純な思考なんですけれども、「JIJIラボ」とかがあってもいいんじゃないかと、ちょっと思ってしまうんですが、何かそういったことというのは考えていらっしゃいますか。

【桑原】 実は、今、それを計画しておりまして、今、商品をいろいろ作って売っているんですけれども、その商品開発のところと、その販売、営業のところの力がちょっと足りないので、そこをおじいちゃんたちの力に頼ろうかなと、今、BABAラボ内で話が出ておりまして、そこで「JIJIラボ」というのを、営業部隊で、商品開発をするかはわからないですけれども、つくろうかなと思っているんですね。

 まずはリーダーというか、中心になる人を、今、スカウト活動に励んで、いろいろな会で、「JIJIラボ」をやりたいんですけどという話をして、スカウトをしているところです。でもなかなか、ああ、それいいね、こうやってやればいいじゃんと言ってくれる人はいるんですけれども、お願いしますと言うと、みんな「うーん」みたいな、ちょっと忙しいんだよとか、俺はちょっとな、みたいな人が多いので、なかなかいなくて、もし皆さんの中に「JIJIラボ」をやりたい方がいらしたら、ぜひBABAラボまで御連絡ください。

【竹内】 今の話を引き継いだ格好ですけれども、会社でいろいろな役割を果たしてきた男性は、やはりマネジメントだとか、あるいは企画という面では経験が豊富なんですね。だからそういったところが、さっきもちょっと話が出ましたけれども、経営だとか、あるいは企画面で活用されたら能力が引き出せると思うし、それから私の場合は、農家というのは、野菜のノウハウはすごくポテンシャリティが高いけれども、そのマネジメント、それから役所に対するいろいろな事業申請の書類づくり、こういうのに関しては二の足を踏むんですね。だから、それは全部私たちがやってあげますということが、一歩が踏み出せるわけですよ。だから、そういう企業経験者の、これは何でもない常識なんだけれども、必ずしも一般化されていないようなところを引き出したら、ジィジの活躍の場がもっと広がると思います。

【澤岡】 竹内さん、ありがとうございます。そうですね、あまり意識していなかったんですが、今日ここに男性が、この並びにジィジが1人だけだったという、それこそジィジを代表する、今、1つアドバイスをいただけたのかなと思いますが、では朝山さん、この御二方の取組などを聞かれて、何か感じられたこととか質問がございましたらお願いします。

【朝山】 さっき樋口さんのお話の中で、「ファミレス社会」という言葉が、聞いた方は耳にされたと思うんですけれども、聞いていない方のために、ファミレス社会は、あのレストランのファミレスではなくて、ファミリーレス、ファミリーがない社会に、今、日本は突入しつつある、地域が崩壊するとか。そういう中で、まさにこのわくわく農園も、BABAラボも、ファミリーなんだなという印象をすごく受けて、何かすごいうれしい気持ちになりました。どちらにも私も参加したい、「私も入れて」と思うような、そんな気持ちになりました。

 うちの活動の中でも、御二方の活動のように、ダイナミックにそういう場が、交流の場という感じではなくて、学習支援という形であったり、学校への支援という形だったりするんですけれども、やっぱりファミリーのような、さっきの話でいくと、ワタナベは実は亡くなったんですね、こういう話をしていいかわからないんですけれども。そうすると、子供がお焼香をあげに行かせてくださいと言うんですよ。だからそういうのって、ちゃんとつながっていくというか、ファミリーなんだなという感じを勝手に持ったりするので、そういう印象をすごく受けて、大事な活動だなと思いました。

【朝山】 そういうことを目指して初めからそうされていたのか、結果としてそうなったのか、どちらですか。

【竹内】 やはり何かのつながりというのは、つまり共有するものがあるということが大事ですね。大げさに言えば志。それからまた、趣味の世界だけではなくて、何か一緒にしようとしたときに、ある種の志の共有がない限り長続きしない。その志がどこで共有できるかということを最初にもくろむ、探すという作業が、最初のスタートのときは非常に肝心かなと。

 私は、一番最初にお話ししましたように、チーム・ブランパを結成するときに、ふっと頭に描いたのは食材のこと、野菜をつくるということは食材を扱うことですから、料理教室のメンバーに話したら共感を得られるのではないかということから、だからそういう、まず最初のきっかけは、共有するものがあったということが、今の長続きしている1つの要因ではないかなと思いました。

 だから、今までのいろいろな活動をお聞きしても、何かそういう志を共有するきっかけがどっかでできたんだろうなと、あるいは作ったんだろうなと、それがスタートのときには一番大事ではないかと、そんな感じを持っていますね。できたら、共有するものがあればファミリーになれるんですよ。常にそれで会話が回るし、それがポテンシャリティにつながっていくわけですね、目標の1つですから、と思います。

【桑原】 私はちょうど子供が生まれて起業したんですけれども、やっぱり子供を育てていくときに、自分たちの家族というか、血のつながりの中だけではなくて、社会の中で育てていきたいなという気持ちが強かったので、なのでBABAラボを作って、そこに自分の子供を置いて、いろいろな他世代と交流して、でも、それが自分の子供だけじゃなくて、いろいろな子供たちが集まってというのは結構最初から意識していましたね。

 途中からまた1個ギアが入ったというのは、最初、仕事に人を当てはめていたんですけれども、途中から、そうではなくて、入ってくる人を、来る者拒まずで、来てくれる人に対して仕事を当てはめるというところを意識してだんだんやるようになっていったら、さらに世代が広がって、いろいろつながりが増えてきたかなと。今後、職場を通してか、ちょっとわからないですけれども、その疑似家族みたいなところはもっと地域にたくさんできてくればいいなと思いますね。

【竹内】 それと、さっきの共有するものの、最初もそうですけれども、その後、そういう感激なり体験が、よかったねと共有し合えることがまた大切ですね。

【竹内】 これ、実物を持ってきたんですけれども、こういうのが毎年、我々にプレゼントとしてあるわけなんです。これは学校給食の食材を提供した全てのメニューが、調理室の、いわゆる料理のプロセスまで含めて全部記録されていて、年間のそういう料理なりレシピの感想が、生徒たちの寄せ書きでこれにくっついているんですよ。こういうものを、これは1冊しかもらえませんけれども、そのファミリーで共有して、よかったねという共感を得るというのが、ファミリーとして、またこれがすごいパワーの、あるいは元気のもとになるんですね。これは実物です。これが26年度で、これが25年度です。こんな立派なものを。これを出してもらうようになるのが、やっぱり学校との間にまた時間がかかったと、こういうことですね。

会議の進行者

【澤岡】 確かにそうですね。家族であれば、ずっと時間軸、過ごしてきた時間の長さもありますので、おそらく共有するものって何だろうと考える必要もないぐらい何かがあるのかもしれないですけれども、疑似家族とか、新たなファミリーというお話を考えるときには、時間をかけて共有するものが何なのかと……。

【竹内】 増やしていく。

【澤岡】 はい、一緒に考えていくということが、作っていくということがすごく重要なポイントなのかなと思って、今、伺っておりました。

 私からも質問させていただきたいんですが、今日お招きさせていただいた御三方といいますのは、世間的には、それこそキーパーソンさん、BABAラボさん、それからチーム・グランパさんといいますと、知っている人は知っている、まあ、当たり前ですが、その評価といいましても、成功している方々、成功している取組だというふうに、よく皆さん評価をされます。ですが、おそらく何かやはり……、あら探しをするわけではなくて、うちはうまくいっています、完璧ですというところでしたら、それはそれで、そう答えていただけたらと思うんですが、何か、今、抱えている課題といいますか、大きな壁とか、そういったことがありましたらお伺いしたいなというのが1点。

 もう1つ、2点目としましては、こういったことをやっていく上では、一般的に、今、地域で活動を展開していく上では、自治体とか公的な機関、そういったところとどう連携をしていくのか、あとは、やはりお金のかかることだったりすると思いますので、そういった活動助成であったりとか、そういった、世間的によく言います紐つきのお金をどう使っていくかとか、そういった運営面の部分でいろいろシビアなことというもあるのかなと思いまして、課題にもなるのかなとは思うんですが、そういったことも含めて、今、立ち向かっている壁といいますか、と、それからあとは、自治体さんとか公的な機関、そういった部分とのおつき合いの仕方といったことに関してもそれぞれにお答えいただけたらと思うんですが、これに関しては順番というよりは、もし、今、私、こういうことを考えていますということを一番最初にお答えいただけるようであれば、どなたでも。特に御指名はいたしません。いかがでしょうか。じゃあ、ジィジからまずよろしくお願いいたします。

【竹内】 今の御質問といいますか、ポイントの、まず公的機関あるいは自治体の助成というものをどうやって引き出すかということですけれども、これは、どうしても自治体は、推進策をいろいろ提案はするけれども、呼び込むことがもう1つ一般に浸透しないという面があるんですね。だから、やはり基本的には、やりたい人が、その自治体の制度なり、助成制度を引っ張り出すような積極性が一番ものを言うのではないかなと。

 実はたまたま横浜市の担当官が、今日、お見えなんです。

 そういう行政の力を引き出すとか、アピールするというのがまず我々がやらなきゃいけないことなのかなと。そういう積極性というのは、やっぱりやる目的を持った人が主体的に動かないと効果が薄いというか、せっかくいい制度があるのに引っぱり出せない。という感じを私自身は持っています。

 それからもう1つ、自分たちの悩みというのは、我々の平均年齢は70歳を超えているわけです。最近、若い人をと言ったら、60歳代が2人おりますけれども、私なんかは最高齢で78歳です。ですから、あと10年というと、ちょっと自信がないですね。だから、10年先を見たときに今の活動が継続できる後継者探し、これは全てのいろいろな団体の悩みでしょうけれども、どうやって引っぱり出せるかというのは、さっき言った共通の、あるいは共有できる目標なり目的を皆さんに説明したり、あるいは知ってもらうということをもう少し積極的にやらないかんのかなと、これは当たり前のことですけれども。

 そのときに、やはりこういうことをすればあなたの力が生かせるということでは、ちょっと説得力が弱いんですね。やっぱり本人が体験したいとか、さっきわくわく感と言いましたけれども、日常の中で自分なりのわくわく感がどうやったら感じられるかというところの説明が一番肝要なんですね。と私は思って、そういう、言ってみれば自分自身の姿を見せることもそれですけれども、そういった喜び、わくわく感を、来て、見てもらうというようなところから、そういう人探し、人材探しをやろうかなと思うんですけれども、これがなかなか難しいですね。言い得て簡単、やって難しいというのが人材探しだと思っています。

【桑原】 そうですね、竹内さんと同じく、壁は人に尽きると思いますね。初期だったら、BABAラボといいながら、おばあちゃんが最初は集まらなかったという致命的な壁がありまして、結局どうやっていったかというと、地域のおばあちゃんたちになじみのある公民館なんかで手芸教室を開いて、そこで、手芸好きなの? こういうのをやるんだけど、どうかな? というのを一人一人声をかけて、1人入っては1人抜け、2人入っては2人抜けみたいのを繰り返して、おばあちゃんたちが定着するまで1年以上はかかりましたね。10人ぐらい集まってくれば、あとは楽しそうだわと、どんどん集まってくるんですが、最初の人集めがとても苦労しました。

 人以外にお金などでもいつも苦労しているんですけれども、結局今も、その哺乳瓶にお金がかかります。資金を回収するためには売らなきゃいけない。でもそれって、一見お金の問題にも見えるんですけれども、やっぱりどう売っていくかとか、その商品がどうおばあちゃんのためになる商品なのかとか、そういうのを考えるのはやっぱり人なので、じゃあ、どんな人とアイデアを出して、どんな人とその販売の戦略を練っていくかとか、やっぱり人ですね。

 人とのつながりというところは、いつも課題というんですか、アンテナ張って、どんなところにどんな人がいるかなと、いつも見渡しているという、課題とはちょっと違うかもしれませんね。いつもそういう状態ですね。公的機関とのつながりといいますと、うちは自己資金で始めているので、最初はそんなに苦労なかったんですが、今、哺乳瓶の金型をつくるときには、ものづくりの補助金というのを申請して、今、それを使っています。でも、これをただの補助金と見てしまうと、ありがとうという感じなんですけれども、使い方としては、融資を受けたというか、税金を使って投資してもらったという、そういう気持ちでいます。やっぱりその哺乳瓶をきちんと売って、その投資してもらった分を返していくと。補助金というのは別にもらえるお金ではないので、将来的には事業を介してきちっと売っていかなきゃいけないお金なので、そういう気持ちを忘れずに使うということですね。公的機関とのつき合いというのは、だからそこがウィン・ウィンになることで、そういうお金を投資してもらったり、大学とのつながりで口をきいてもらったりとか、そういう支援を受けることはあるんですが、その逆としては、やっぱり地域の雇用をつくるとか、地域でシニアの雇用をつくるとか、経済効果を上げるとか、多世代で取り組み、その地域のブランド価値を上げるみたいな成果をきちんと上げて、それをきちんと数値化して行政に提供する。そうすると行政のほうも、うちの地域ではBABAラボさんという、こういう取組があって、それで地域が盛り上がっているんですよと向こうも言える。何かお互いがそういう得をする関係になれるというのは、いつも気を使ってやっているところではあります。

【朝山】 課題だらけで、どれを言えばいかわからないんですが、人とお金というのは常に課題です。それは当たり前過ぎる課題なのであれなんですけれども、私たちの団体の特徴としての課題は、子供に向けてやるということをしているんですけれども、子供にだけやってもだめで、学校でプログラムをやるときには、その先に先生という大人がいるんですよ。学校ではない、子供個人のプログラムを、今、やっているんですけれども、個人に対してプログラムをやるときには、その先に必ず親がいるんです。大人というものがついて回る。子供にだけ納得のいくプログラムをやってもだめで、やっぱり丸ごと、先ほど竹内さんも仰っているように、先生の御理解、校長の理解がすごく必要というところにとても苦労をし続けてきています、竹内さんのことが本当によくわかりますという感じなんですけれども。先生は、この日本の社会が変わってきているという、その画一的な養育をし続けてきたのでは、これから子供を育てるという意味で難しいのだということへの転換がなかなかしにくいので、理解を促進するのが私にとっては困難に感じていること。

 あとは親も、一辺倒な価値観で子供の進学とか将来のことを考えてしまいがちなので、こういう一流企業に入れば楽よとか、一生安泰よみたいな話ってどこに行ってもあると思うんですけれども、そうではない子もいるということを理解する、親の理解という、大人の理解の促進というところは大きな課題なので、去年ぐらいから特に強化をし始めているところです。ということが1つ大きな課題です。社会の変化にうまくバランスをとりながら進むみたいな、NPOが10歩先へ行ってもだめなんですね。半歩先へ行くぐらいの進め方をするというのが大事だなと思っています。

 それから自治体との連携というのは、おかげさまで、経産省、文科省、神奈川県や川崎市とはいろいろと組ませていただいて、やらせていただいております。都度、課題はたくさんありますけれども、うまくいくときは、やりたい行政側がいて、やりたいNPOがいるという意図が一致したときにすごくハッピーになる。でもそこに何かずれがあったりすると、あれ? 何か違うんだけど、となっちゃうと、ちょっと不幸が起きるときもあります。

 私たちとして、これからは自治体に提言をどんどんしていきたいなと思っておりまして、団体も大きくはないですけれども、私が代表としての仕事として、PR、キーパーソンの活動をもっと知っていただくとか、そういうところに出ていって提言をしていくような段階に、今、移ろうとしているところです。なので、キーパーソンのプロモーションをしていただけるシニアの方がいらっしゃったら、後で是非お声かけください。

【竹内】 公的機関ではないんですけれども、目的をうまく説明すれば協力してもらえる団体というのはたくさんあるというのを私たちは感じております。こちらの横浜市の環境創造局の、特に窓口である農政事務所という公的機関ですけれども、お手元に配った資料にも書いています。関係先ということで、日本食品リサイクルネットワーク、これはNPOです。ここは、ここに書いていますように、リサイクル堆肥の無償提供を農園にする。これは販売ではないんです。春・秋に軽トラック1杯、350キロに400キロ積んで、毎回運んでもらう。これが無償です。堆肥をこれだけ有償で買ったら、それだけで費用が相当高くなります。それからもう1つ、横浜市の直営のグリーン事業協同組合というのがあって、ズーラシアの横で、例えば植栽、園芸業者の剪定グッズなんかをリサイクルして、農業に使えるリサイクル堆肥を作っているんですけれども、これも、我々学校農園という趣旨に対しては、無償で、いくらでも持っていっていいですという形でいただいております。

 それから、これは御紹介しましたけれども、森林インストラクターのメンバーとのつながりで、これもNPOで、森林インストラクターネットワークの方々の協力もまたいただいているということで、関連する、いわばそういう団体との協力体制というのも、うまくネットワークができれば非常に大きな力になるというふうに実際の作業を通じて感じておりますので、つけ加えさせていただきます。

【澤岡】 ありがとうございました。やはり御三方のお話の中に非常に共通するものを感じましたのが、イギリスやオランダ、こういった、いわゆる政府が主導でとかということではなくて、住民、住んでいる人たちが、思いでいろいろとやっているNPOであったり、ボランティアであったり、そういった活動を、去年もいろいろと調査に行かせていただいたときに、向こうの団体さんは、すごく見える化、相手に対してどういう、地域に対してどういう効果があるのかということの見える化ということを、すごく一生懸命、そのPRとか、プロモーションとか、いろいろなことで、今、言葉で出てきましたけれども、連携する相手と、朝山先生がおっしゃった、そのウィン・ウィンになるためには、こういう効果があるよということをちゃんと見せることができるということにすごく力を割いていたという印象を受けました。

 そういう意味でも、今日御登壇いただいた方々は、そういったことを非常に一生懸命やられて、人を集める、それから公的な機関との連携、いろいろなところに関しても、そこを非常にうまく使っていらっしゃるのかなということを、お伺いしていて、印象として感じております。

 私、実は質問したいことがまだまだたくさんあるんですが、残りが30分を切りましたので、一旦、会場の中で、おそらくいろいろなアプローチでやられていらっしゃる方が今日は来ていただいていると思うんですが、もし、今日、こんなことを聞いてみたいというような御質問がありましたら……、その御質問をいただく前に、それぞれの団体で自分が活躍してみたいというお話に関しましては、終わった後に個人的にお話をいただくということで、何か御自身で、今、取り組まれている活動、それからこんなことをやりたいと思っているというようなことに照らし合わせまして、何か御質問とか、そういったことがございましたらいかがでしょうか。

【質問者】 質問というよりも、先ほど困ったとおしゃっていたので、意見ですけれども、桑原さんなんかが、男性の参加が少ないと。ここに来られている男性は、多分、もういろいろなことをやっていて忙しくて、ちょっと声をかけられても、とても今から……、という人が多いと思うんです。

【質問者】 実は2週間ほど前に、私はいろいろなことをやっていますけれども、そのうちの1つで、消費生活絡みの講座のボランティアの先生なんかをやって、後期高齢者ですけれども、それで、呼ばれて行ったのは、私は世田谷区ですけれども、それのシルバー人材センターの、ある地域の何とか組、区の中に7つか8つぐらいブロックが分かれていて、そこが年に2回ぐらい総会をやって、あと懇親会をやる。その前に何か有益な、勉強になりそうなことを1時間弱、4、50分でも聞いて、あと懇親をしましょうと、そういう場で、なるべくコストをかけないで有益な話をしてくれるところだと大歓迎されるわけですね。

 私はこの2年ぐらいで、住んでいるところから自転車で10分ぐらいのところで、悪質商法とか特殊詐欺に引っかからないようにという講座をやったこともあれば、震災対策というか、地震のときあなたは大丈夫? というようなテーマで行ったんですけれども、大体7、80人の参加者の7割以上は男性なんですよ。それは、何らかの社会貢献というか、どちらかというと若干の小遣いでもとかということもあるのかもしれないけれども、何か仕事のチャンスがあればといって集まってくるような人たちは、実を言うと男性なんですね。それで、有益なことがあったらもっとやってもいいと思っている人も結構いるんです。だから、そういうところに行かれて、自分たちの話を、話はただでしますよと言って行かれたら、乗ってくる人は結構いるんじゃないのかなと思いました。

 あとは、私なんかもいろいろなことを始めた中のきっかけは、区のお知らせというか、機関紙みたいなものでの募集で委員に応募してとかということから、だんだん枝葉がついていろいろなことをやっていますけれども、ああいう行政のやっておられるお知らせは、いろいろうまく活用されるといいんじゃないかなと思いましたね。

 あとそれから、朝山さんが何か仰っていたもので、子供というのはいろいろな可能性を秘めていてという話がさっき出ていたと思いますけれども、知的発達障害者を手伝う活動もしているんですけれども、全然わからない素材がいるんですね。私は、知的発達障害者の合唱の練習を手伝う、月に1回集まって、手伝い出してもう7、8年になるんですけれども、歌の会なんだけれども、歌はどうしようもないぐらい下手くそなのに、何かのときにピアノが弾けるということがわかったら、そのお母さんはピアニストなんですけれども、3人の子供、ほかの2人は健常者だけれども、ピアノをとても上手に続けてやってこれているのはこの子だけだというようなこともあって、人間というのはいろいろな才能があるんだけど、というか、バランスよくわるわけじゃないんですね。才能というのは、バランスよくはないんだけれども、すごいものを持っているという子供さんはいますね。だから子供の才能を見つけてあげるということをいろいろ工夫されると、すごい人材を発掘できるんじゃないかなと思いました。

 あともう1つ、この辺に座っている我々のグループで、幼稚園との世代間交流というのもやっていますけれども、子供さんたちに昔の遊びなんかを教えていても、昔の遊びを教えてあげるなんていうのは年に1回とか、頻度が少ない。だけど、保育園の先生も一緒だと、先生にいろいろなことを覚えてもらうと、それは、我々がやりたいことがその後もフォローされた形で活動は広がるんですね。だから我々が直接やらなくても、きっかけだけ作ってあげると、今の若い先生たちが、自分が育ってくる過程では身についていないようなことを我々シニアの世代が何かやってあげるということは、とても広がりがあっていいんじゃないかなと思いましたので、朝山先生なんかのやっておられる活動の中でそういうことをやっていただけるといいなと思いました。

 質問とおっしゃったのに、こっちがべらべらと長話をしまして失礼いたしました。

【澤岡】 どうもありがとうございました。そうですね、確かにさっき竹内さんが仰っていた、先生が学ぶことというのも非常に大きくて、それが、ふだん日常的に小学生の方々にお会いしている先生方が学ぶことでより大きな効果が得られるというお話にも何か共通する部分もあるのかなと思って、今、伺っておりました。

【質問者】 それでは質問をいたします。竹内さんのお仕事は前から聞いておりまして、竹内さんとも一緒のNPOで別の仕事をやっているんですけれども、子供に科学を教えるというNPOをやっていまして、小学校に行って、小学校の部活というか、課外活動でそういうものを教えたりしているんですけれども、これは、校長先生がかわるとがらっと変わるんですよ。熱心な校長先生、それから、それに気づいてくれる校長先生がおられると、それはずっと続くんですけれども、今、お話を伺った鳥が丘小学校というのは、校長先生にお目にかかったことがありますけれども、大変立派な方ですね。その方がおられる限りは大丈夫だと思うんですけれども、その先生がかわって、志を同じくする先生が来られたらいいんだけれども、そういうものに全く関心のないような方が、万が一ですよ、来られたりすると、これは大変困ることになると思うんですね。

 今のお話をお伺いしますと、行政とのつながりはよくできているし、地域の人とのつながりもよくできているし、それから保護者の人たちにもシンパを十分作っておられるようですけれども、学校は校長がかわると本当にがらっと変わるんですよ。その辺の心配が1つあって、その辺、竹内さんたちはどんなふうにお考えになっておられるのか、それを1つお聞きしたいと思います。

 それから、こっちのほうに移りますけれども、桑原さんの仕事は、育児というのは僕なんかもだめなんですよ。全然つながらない。ですから質問のしようもないので、すごいなと思いながら質問できないんですけれども。

 その辺、どんなふうにして作られたのか、その辺を教えていただけましたら私たちの大変参考になるんじゃないかと思うので、その辺を質問としてお願いしたいと思います。

【澤岡】 どうもありがとうございます。では、竹内さんの、その校長先生の問題ということで、まずは御意見をいただけたらと。

【竹内】 実は今年の3月、ひやひやしたんですよ。今の校長が4年目だったんです。で、交代するかもわからないと御本人が言っていたんです。交代すると、やはり学校の中の基本方針は校長が最終的に決断することが多いんですね。だから校長のリーダーシップといいますか、ある種の学校運営の基本理念というのは非常に柱になるから大事だと思います。

 ただ私は、その場合に備えて何が大事かと考えたのは、やはり生徒、先生方、それから父兄、この応援団がしっかりしていたら、どんな校長がきても説得する基盤があるなと思いました。その基盤を全くゼロに蹴飛ばしてでも自分の方針を押しつける校長先生は長くいないと思います、多分。やはり教職員の協力があってこそ学校運営がうまくいくんですね。あるいは父兄の協力もPTAを含めてうまくいくんですね。ですから、校長がかわったら、確かにリーダーシップという面では大事だけれども、それを説得するだけの基盤づくりというのをしっかりしておけば、私は半分はうまくいくんじゃないかと。それから先はやってみないとわかりません。

【澤岡】 ありがとうございます。簡単に一言で言ってしまうと、そういう理解力のない校長先生は、おそらく自然淘汰されていくような……。(笑)

【竹内】 まあ、淘汰まではいかないかもわかりませんけれども、さっき言いましたように、その学校に長くいられないということにはなるでしょうね。

【朝山】 苦労を話し出したら終わらなくなってしまうので、端的に申しますと、うちは15年前にこのNPOをつくったので、NPO法が1998年に制定されたんですね。2000年に任意団体として立ち上げていますので、先生方に何か言いに行っても、NPOって何? どこの馬の骨? と言われちゃったんですよ。

 だからそういう苦労からスタートしていて、まだ学校が閉鎖的で、地域に開放されていないときにスタートをしようとしていたので、そこのところはすごくしんどかったですね。門前払いを何度もいろいろな学校から食らいました。教育委員会に言ってくださいと言われたりしました。一時は学校とおつき合いしない形で、大学だとか地域の市民館みたいなところでやったりしていました。

 そんなことを経ていって、経産省とか内閣府、厚生労働省、文科省と4省連合で、若者自立調査プランというのが始まって、そこから、キャリア教育って必要みたいな話にだんだんなっていったので、認知されるようになって、で、経産省のプロジェクトを受託できたりとか、文科のプロジェクトを受託できたりということが起きて、だんだんに国と一緒にやっていけるようになっていったと。

 でも、こんな働いたことのない主婦がやったものですから、いきなり国の事業をやらされたら大変なことになっちゃうわけですね。国の事業をやるということは、本当に緻密な、1円、ちゃんと決算を出さなきゃいけないわけですから、そういうところで、やっぱりシニアの方が、ジィジ、バァバがすごく協力してくださってやってくださいましたね。それはすごく助かりました。

 あとは、企業の力をおかりして、企業のこども園プロジェクトという形でやっていたんですけれども、リーマンショックが来て、企業が、2社残して、富士通とアルバイトタイムスという企業以外全部一気に撤収なんていうときもありました。

 その後に、企業に頼っていてはいけないんだと気づいて、会員組織、個人は共感すればちゃんとお金を払ってくれるわけですよ。企業は企業のお金ですから、ぱっと撤収しちゃうんだけれども、その企業の一緒にやってくださっていた社員の方が、会員になるよと言って、皆さん会員になってくださったんです。そういうふうに何か支えられて、いつも何か困難に直面するんですけれども、いつも誰かが助けてくれる。シニア世代の方が助けてくださったり、主婦の方が助けてくださったりという形で、助けられてやってきている。

 経済的にはなかなか大変なんですけれども、なので8本足で立っているような感じです。うちの場合、1つの事業で立つということができないんです。1本の事業だと潰れちゃう。企業が撤収したらアウト、行政がこの方針を変えますと言ったらアウト、だから、会員だったり、学校からいただくお金だったり、企業からいただくお金だったり、そういうたくさんの、いろいろな種類のお金で成り立っているというようなやり方をやったりとかしております。

【澤岡】 立てないと、今、謙虚におっしゃいましたが、今、会場からも、いや、8本も立てられるってすごいという、そのリスクを分散できる1つの底力がついていらっしゃるNPOという、皆さん驚かれたと思いますが、どうもありがとうございます。

【質問者】 私、この3人の方それぞれが、それぞれすばらしい活動をしているということでは感心させていただきまして、それでもなお、ちょっと私が気になることを言わせていただきたいなと思います。もともと私はボランティアセンターの関係の仕事をしておりまして、定年退職して10年以降は、それに関係するボランティア活動をしているんですけれども、3人の皆さんの共通するところは、やっぱりボランタリズムというのをそれぞれの方がその心の中に持っていて、自分が誰かのためにやったら、実は自分のためにすごくよかったというものをいただけているということを、3人ともそういうふうに受けとめました。

 それから、竹内さんのところで、私、ちょっと気になるのは、わくわく農園の9名の方というのは、皆さん男性がメンバーですか。男女いろいろ。それで、その方たちが常に実際の事業をされているわけですよね。行政は応援団をしてくださっているわけですね。私は、横浜市って応援がすごい上手なのも知っているんですけれども、今日、この看板を見たときに、わくわく農園というのを大きく出して看板をつくった最初のところのほうがよかったんじゃないかしらと。むしろ、その教育というのはサブタイトルでやると、行政がすごく支援しているなというのがわかるように、一般市民の人が、自分たちのまちにはこういうわくわく農園があるんだよというような誇りにするには、こういうグランパの方々が、民間のこういう方がやっているよというのをPRするほうがいいんじゃないかと。今日は行政の方がいらっしゃっているというので申し訳ないですが、私の感想としては、そういうふうに受けとめています。もう少しやり方があるかなと。学校でお互いに、行政と、それからボランティアさんと、皆さんの関係がものすごくすばらしいと思って、そういうことを承知の上で、でも市民に対する、それからそこを通りかかる人たち、地方から来た人たちに対して、この人たちがやっているんだよというのをもっと表に出してもいいんじゃないかなというふうに感じました。

 それからBABAラボさんですか、実は私、障害児をボランティアの人がおもちゃで遊ばせるというおもちゃの図書館というのを作るとき、最初にかかわって、今でもその活動に参加しているんですが、皆さん99%が女性です。やはり女性の力で、子供一人一人の、障害のある子供さんの個性をつかんで、その子供に合った遊ばせ方というのは、やっぱり男の人は無理なんですね。

 それで、男性が参加してくださるところを見ますと、おもちゃを修理してくださるんですね。どこかに、移動おもちゃ図書館に行くとき運転をしてくださる。それは口コミなんですよ。それで、会員の中の人の誰か、息子さんとか、御主人とか、そういう人が最初参加しながら広がっていくので、私は、そんなに心配しないで、どんどん声をかけたらいいと思っています。女性だけでもすばらしい活動をしている、その、今ある人たちを見ていますと、そういう感じを受けます。

 それから朝山さんは、私の友人で、諏訪でフリースクールを始めた人がいるんですね。その方が、川崎の中原区にすごくいい活動をしているところがあって、ヒロコさん、どこだどこだと言われて、私も今日初めて来て、あ、ここだというのを……、というのは、私も新城で、中原区に住んでいるものですから……。

【澤岡】 どうもありがとうございました。

 本当でしたら、あと30分ぐらいお時間をとって、もう少しディスカッションを深めたい部分でもありますが、今日は3時半までの会場の使用ということで、ここら辺で御質問タイムというところを締めさせていただきたいと思います。

 ここからは、残りあと4分ほどになりますが、皆さんに、あと追加で、プラス5分ほどいただきまして、最後に、この御三方が、今までの長い蓄積、取組をされてきていますが、今後の展望といいますか、今後こういうことにチャレンジしてみたいなとか、こういう課題解決を図ってみたいなと、そういったことを、これから、お時間が限られておりますので、お一人当たり1分半で、ここからはお話しいただきまして、最後の締めとさせていただきたいと思います。

 まず、では竹内さんからお願いいたします。

【竹内】 私どもの農園を中心とする学校とのかかわり方、食育に結びつく活動というふうに位置づけてはいますけれども、やはり今、共通のいろいろな話題になっています、地域における存在感というのをいまいち広げていきたい、地域とのかかわりをもっと深めたい、そのためには学校だけではなくて、地域の皆さんとの、いわば農園の運営といいますか、そういう喜びを共有できたらなというふうに考えております。

【桑原】 私は、年金プラスアルファ、アルファというのはお金だったり、あとは地域とのつながりだったり、そういったものがつくれる働く場所というのを、そういったBABAラボみたいな場所をいろいろな地域にもっと展開していきたいと思っています。自分がBABAラボとしていろいろ支店を出していくのもよし、あとそういったことをやりたいと言っている人にもどんどんノウハウを提供して、いろいろな地域で、みんなが働きたいと思ったときにふらりと働けるような場所というのをどんどん作っていきたいと思っています。あとは「JIJIラボ」も頑張ります。

【朝山】 先ほども申しましたけれども、私たち、学校教育の現場に入ってやらせていただいているんですけれども、今後は、もちろんそれも並行してやるんですけれども、結局のところ、一人一人の子供のところに落とし込まないと、なかなかその子の幸せになっていかないので、集団のキャリア教育から、徐々に個人、この子はどういう未来に進みたいのかというところに落とし込めるプログラムの強化をより充実して、発展させていきたいと思っております。そのためには、やっぱり親の理解、先生の理解、大人たち、企業や、行政や、皆様と御一緒に子供を育てるんだという意識を当たり前のこととして認識してもらえるような社会風土を作っていけたらなと思っております。

【竹内】 すみません、1つ言い忘れました。学校、特に小学校の先生方、これは忙しい。それからまた科目をたくさん持っているのでなかなか余裕がない中で、ポテンシャリティの面から言うと、私たち、ちょっと不満が多いんですが、そこの学校の先生の研修だとか育成という面にお役に立てばなというのが夢のまた1つです。

【澤岡】 竹内さん、さっき、10年後は自信がないと、ちょっとおっしゃいましたけれども、今のお話を伺っていると、10年じゃちょっと足りないようなところもあるのかなと思って、今、伺っておりました。おそらく日本の社会を変えていくジィジの力、バァバの力の、まさにこちらはお手本の方がお隣にいらっしゃるんだなと思っております。

 最後、私のパソコンにつないでいただけますでしょうか。先ほどもお見せした、この図なんですが、今、御三方に報告いただきました中で、おそらくここの中に入っていることが、全て、皆さん、今、いろいろなアプローチで取り組まれていらっしゃるのかなと思います。それこそ年金がこれからどんどんお金が少なくなっていく中で、今、桑原さんが仰っていただいたような、年金プラスアルファの働き方が地域でできるようなことということもすごく重要になってくるというお話だったり、皆さんのお話の中にこういったことが全て含まれているのかなと思いました。

 そういう意味でも、今日は確かに、世代間、ジィジとバァバ、それから孫世代がどうつながるか、お互いにどういい連携、これは綱引きになっているんですが、お互いにいいつながりを作っていくかということが大きなテーマではありましたが、さらに大きなテーマといたしましては、新たな時代の地域づくり、人とのつながり、そういったことを考える上での大きな具体的な取組のあり方を皆さんに考えていただけたのかなと思っております。

 今日、お忙しい中、貴重な御報告をいただきました御三方に、皆さん、拍手をいただけたらと思います。

 どうもありがとうございます。