高齢社会対策説明「高齢社会フォーラム・イン東京」
牧野利香
内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付
参事官(高齢社会対策担当)
内閣府で高齢社会対策担当をしております牧野と申します。本日は、皆さま、こんなにたくさんお集まりいただきましてありがとうございます。私からは、高齢化の現状 と高齢社会対策ということで、毎年出しております白書の中から抜粋して説明します。 内容を改めて見ますと、きょうの大臣のご挨拶の内容と、それから清家先生の講演の内容と若干かぶるようなところがございまして、そのバックデータだと思ってご覧いただけると参考になるかなと思います。
人口動態にみる高齢化の状況
○高齢化の現状
まず、高齢化の現状ということで基礎的な数字のご説明でございますけれども、棒グラフが日本の人口でございます。既に、減少局面に入っておりまして、2010年から、もう総人口としては減ってきております。一方で、いろいろな線が入っていますが、赤い折れ線をご覧いただきますと、これが日本の高齢化率といって、全体の人口に占める65歳以上人口の割合でございます。直近の数字が真ん中の赤い丸で示しておりますけど、27.7%と4分の1を超える人が今、65歳以上ということでございます。
○人口構成の移り変わり
これが将来どうなるか、 2065年まで予測を引き延ばしていきますと、 38.4 %。4割近くが65歳以上になるという、そういう社会というのが予 測されているということでございます。この次のグラフですけど、日本の高齢化率という のを世界と比べたものです。左側が欧米諸国と比べたもの、それか ら右側がアジア諸国と比べたものということでございますけれども、 いずれも日本が赤線になりますけれども、日本の高齢化率というの が非常に急速なスピードで上がってきていると。しかも、世界最高水 準にまで上がってきているというのが、非常によく分かると思います。特に、アジアは今でもかなり先陣を切っているのですが、実は中国や、 韓国なども後を追って急速に高齢化していくということで。特に、 アジア諸国から日本というのは注目されている状況にございます。
○健康寿命が延びている
それから、健康寿命、平均寿命、男女別に分けてグラフ化しております。例えば、男性をご覧いただきますと、平均寿命のほうは2001年から2016年までで2.91年延びました。他方、健康寿命というのは、2.74年になっております。ということは、この間に平均寿命と健康寿命の差が広がっているという、少し広がっているということなのです。高齢化すると有病率は当然、高まりますので、健康寿命というのを延ばすのが大変になってくるわけですけれども、清家先生の言っている健康寿命を延ばすということが、いかに大変かということがお分かりになるかと思います。本当に意識して健康ということに気をつけていかなければ、なかなか健康寿命を平均寿命以上に延ばしていくというのは大変だということでございます。
○65歳以上の者のいる世帯数及び構成割合
それから、高齢化の中でもう一つ気になる事象というのがありまして、家族形態の変化ということもあり、一人暮らし高齢者の方が大変増えております。折れ線グラフが、一人暮らし高齢者の数を全体の高齢者の数で割った割合ですが、女性は大体、2割ぐらい。それから、男性は13.3%が一人暮らしということになっておりまして。このような方、やはり何かあったときに家族の手助けが得られないということで、社会で支えていかなければいけないリスクも高い方が増えているということも、今後の懸念点であるというふうに思います。
○就労、社会参加の状況
それから、就労、社会参加の状況でございますけれども、先ほど、労働力率について清家先生からお話があったかと思いますけ れども、これが現在までの労働力人口比率の推移でございます。赤い線は、現役世代です。先ほど、おっしゃったように 30代女性や、女性の社会進出が進んだということもあり、77.6%まで増えております。一方、高齢者のほうも真ん中の緑の線になりますけれども、特にその65~69歳の層が今、労働力という意味では増えてきております。これは定年制度に関する制度見直しとかも影響がありますけれども、実はちょっと細かく見ると、女性の50代、60代のかたがたの働いている率っていうのが、ここ10年ぐらいすごく上がってきております。恐らく、旦那の年金が心配な奥さんたちというのが、結構、働きに出られているのかなと私は思っているのですが。そういう意味では、いろんな制度の変更に伴って高齢者の働く意欲というのは今、高まってきているのではないかというふうに思います。
それから、働くというだけではなくて、きょうのシンポジウムでもいろいろ話が出てくると思うのですが、広い意味での社会参加活動に加わっていただくというのも、高齢者のかたがたにとって健康寿命を延ばすという意味でも非常に重要なことなんじゃないかなというふうに思っております。ところが、これは平成28年の調査結果ですけれども、特に活動はしてないというお答えになっている方が7割ぐらいでございまして。現在は、働く以外の社会的な貢献活動に参加されている方というのは、今、3割ぐらいということになっております。働くだけではなくて、さまざまな社会参加活動をこれからも広げていくことが大事だと考えております。社会的な活動をしていてよかったと思えることとして特に多いのが、地域に安心して生活するためのつながりができた。それから、新しい友人を得ることができたということで、お金に換えられないいろいろメリットがあると考えております。
政府の取組み
○高齢社会対策大綱の3本柱
政府の取り組みを少し最後に簡単にご紹介します。高齢社会対策大綱というところで、去年の 2月ですけれども、今後5年間の大きな方向性ということで閣議決定をいたしました。その中で、2の基本的考え方、真ん中より下の所に書いてありますけれども、大きな3本柱で施策を進めてくことにしております。1つは、年齢による画一化を見直して全ての人が活躍できるエイジレス社会を目指すということ。それから2点目として、地域で暮らし続けられるような、そういうコミュニティーをしっかりとつくっていくこと。それから3点目として、技術革新の成果を生かすというところを大きな3本柱に掲げております。具体的な施策としては、少し細かいので省略いたしますけれども、就業所得のところで、まさに清家先生がお話しいただいたのと、ほぼ同じような内容が並んでおります。それから、健康福祉のところもいろいろ内容が並んでおりますが、最近、特に力を入れておりますのが認知症対策です。やはり認知症になると本人も大変ですし、周りも大変ということがあるので、まず予防から始まって認知症になっても地域で生活していけるような環境づくりということで、昨年12月に閣僚級の会合というのもつくられたところでございます。それ以外に、学習及び社会参加の促進、それから生活環境の整備といったようなことも進めているところでございます。このあたりにさせていただきますけれども、国としてはさまざまな環境整備を進めているところですけれども、やはり大事なのは、高齢者ご自身、それから地域の皆さまというのが誰でも活躍していける、当事者になっていろいろな活動をしていただくということだと思っております。この後のシンポジウムで具体的な話が、いろいろ出てくるかと思いますので、ぜひ、午後もご参加いただけますとありがたいと思います。きょうは、どうもありがとうございました。