金林 利夫さん
自ら声帯を失った経験を生かし、食道発声の技術を習得し指導。
名前(年齢) | かなばやし としお 金林 利夫さん(82歳) |
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地域 | 神奈川県(綾瀬市) |
活動概要 | 声帯を失ったことで、食道発声の技術を身につけ、喉頭摘出手術を受けた人たちの社会復帰と親睦を図る組織において指導員を20年以上務める。これまで指導した人は延700名に及ぶ。受講者たちと定期的に親睦会も行っている。 |
(注)年齢は、平成26年4月1日時点
突然の病気が、新しい道を示してくれた。
金林利夫さんが突然の病魔に襲われたのは、働き盛りの50代後半のことでした。
咽頭癌で咽頭全摘出手術を受け、声帯から発声できなくなったことをきっかけとして、食道発声の練習を始めました。
食道発声は、極めて難しい技術ですが、金林さんは、必死の練習により咽頭摘出後1年足らず、平成3年の暮れには技術を習得しました。
その後、その高い技術を認められ、咽頭摘出手術により発声できなくなった人たちへの発声技術の指導などを行っている銀鈴会の神奈川銀鈴会会長から、指導員になるよう依頼があり、指導員として活躍を始めました。
指導員定年を過ぎてからも、なお現役で活躍。
神奈川銀鈴会で指導する金林さんの指導員歴は、すでに20年以上になり、これまでに指導した人数は延700名にも及んでいます。
指導員の定年である80歳を過ぎても、なお指導を続けており、今でも1回あたり100分程度の授業を週に2回行っています。
数多くの生徒さんたちの発声技術の向上に貢献するとともに、教えてきた人たちとは、その後も定期的に親睦会を行い、同じ苦しみを持つ者として一緒に苦悩や困難を分かち合っています。
ふたつの困難を乗り越えて、自らを高めていく。
実は、金林さんが咽頭癌の手術をした頃、奥様も体調を崩され、金林さんが食道発声の練習を始めた頃から13年間にわたって奥様の介護を続けてこられました。
家族の介護の傍ら、自らの発声技術を高め、他の人々に指導していくという大変な苦労を重ねてきた金林さんですが、「今後もできる限り指導員を続けていきたいと思います。家に一人でいるよりは外で活動している方が健康にも発声にもいいと考えているので、これからも続けていきたいです。また、指導員を育成する立場でもあるので、指導員の鏡となれるよう自分自身を磨いていきたいと思っています」と、その気持ちは常に前向きです。