伊藤 ミツ子さん 86 歳
長崎放送のアナウンサー経験を生かし、地域行事の司会・解説・講演などで活躍。
NBC 長崎放送開局時の第1期の女性アナウンサー
伊藤ミツ子さんは、長崎県立女子専門学校を昭和23年に卒業後、金融機関に就職しましたが、友人がNBC長崎放送のアナウンサー募集の願書を持って来たことがきっかけで、同放送局の就職試験を受けることになりました。
伊藤さんは、元来内向きの性格で、人前で話をすることなどできないと思っていました。ところが「競争率が高い」ということを友人から聞いて、負けん気がむくむくと湧いてきて「挑戦したい」と思い立ちました。そして見事合格し、NBC 長崎放送の開局と同時に、第1期のアナウンサーとなりました。それが昭和28年のことでした。
戦後の混沌とした時代から60年間のアナウンサー人生
戦後の混沌とした不安に満ちた時代に、伊藤さんは全国的に普及していなかったラジオ・テレビ放送という未知の文化へ一歩踏み出しました。そして、以後60年間という歳月をアナウンサーとして活動しました。
長崎の歴史、文化を象徴する「長崎くんち」や「長崎郷土芸能大会」で司会をする傍ら、アナウンサー指導を行うなど、アナウンスを通じて地域貢献活動を行ってきました。
昭和38年、伊藤さんは、必ず復職するという条件で、出産を契機にNBC 長崎放送を退社しました。しかし、出産後に「子供に寄り添う時間を大切にしたい」という思いが強くなり、時間を自由に使えるフリーアナウンサーに転向しました。その後、県・市国際文化協会などから司会アナウンスの仕事の依頼も増えてきました。
「ありがとう」の言葉がなによりも励みになる
伊藤さんは、20年前から現在に至るまで、月1回、日本舞踊や郷土芸能の解説などを務めるほか、話し言葉に興味がある方を対象にした講演会「みなつき会」を開催、20代から40代を中心に幅広い世代の参加者を集めています。「言葉のオシャレをしましょう」を合言葉とした同会には、20年前から参加を続けている方もいます。
伊藤さんは、様々な場面での司会やアナウンスの依頼を責任を持って全うするため、体調管理に留意してきたおかげで、86歳の現在も健康な声帯に恵まれています。
伊藤さんの健康の秘訣は、やはり「心を込めたアナウンス活動をすること」のようで、「皆さんから『よかった』『ありがとう』という言葉をもらうこと」が一番の励みになるそうです。「言葉が整えば心も整う」と語り、これからも末永く活動を継続していくそうです。