萩森 和子さん 76 歳
一人の活動から始まった読み聞かせボランティア。
職場で培った技術がきっかけで始めた「おはなし会」
萩森和子さんは、当時共働きだった子供夫婦の代わりに、お孫さんのために広報副部長としてPTA活動をしていました。現役時代に電話交換手の仕事をしていた萩森さんは、若い頃に発声の指導を受けており、その語り口の美しさが評判となり、孫の通園する保育園から、園児たちに「おはなし会」をして欲しいと依頼されました。退職後「生きがいのある生活がしたい」と模索していた萩森さんは、「おはなしの会」を引き受けることにしました。園児たちのために大型の絵本や紙芝居など、様々な工夫をこらしましたが、「抱っこして昔話」は特に好評で、抱っこを待つ園児で行列が出来ました。紙芝居に集中するいたずらっ子の真剣な目、一冊読むごとに「ありがとう」の元気な声、帰り際に「また来てね」と伝える女の子。そんな日々に生きがいを感じて、「お話のおばあちゃんになろう」と決意しました。
一人の活動が大きな活動に
保育園のおはなしの会は定着し、一人で5年間続けました。本が大好きな園児が増えたと感謝され、聞く態度も見違えるように成長してきました。
「おはなしの会」はとても評判が良く、孫が入学した小学校からも「朝読書タイム」の立ち上げを依頼されました。しかし、当時500人いた児童に対して、一人ではとても対応出来ません。そこで萩森さんは「おはなしの会」で感じたやり甲斐を、若い保護者にも感じて欲しいと思い、友人を誘って会員を募集しました。すると、短期間で保護者とボランティア8名が集まり、「よみっこ」として読み聞かせをスタートできました。さらに翌年には19名の会員が集まり、小学校の全18クラスで「よみっこ」を開く体制が整いました。あっという間の出来事で、「やる気になれば、出来る」と全員で喜び合いました。
多くの仲間に恵まれて、心で本と向きあう
たった一人で始めた読み聞かせのボランティアは、多くの子供たちに夢を届けるのはもちろんのことですが、参加する母親世代の絆にもなっています。
子育てを終えた女性たちの集いの場づくりや、子育てや職場での人間関係に悩む母親など、様々な女性を「よみっこ」に誘い、子供たちのパワーと役員の思いやりで、困難を乗り越える手助けをすることが出来ました。
10年の活動にはたくさんのドラマがあり、ここまで活動が広がったのは、素敵な人たちに多く出会えたからだと語る萩森さん。今後は、「よみっこ」が単なる本読みではなく、心で本と向き合う「人間よみっこ」に成長するよう育てることが大事だと考えているそうです。