全体総括「高齢社会フォーラムin東京」
木村 民子(NPO法人高齢社会をよくする女性の会 理事、絵本アドバイザー)
松田 智生(株式会社三菱総合研究所プラチナ社会センター 主席研究員)
澤岡 詩野(公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団 研究部主任研究員)
【司会者】 それでは、お待たせいたしました。これより全体総括を始めさせていただきます。まずは第1分科会コーディネーターのNPO法人高齢社会をよくする女性の会理事、木村民子様から分科会のまとめについて発表をお願いいたします。木村様、よろしくお願いいたします。
【木村】 皆様、こんにちは。第一分科会のコーディネーターを務めました木村民子と申します。高齢社会をよくする女性の会の理事をしております。第一分科会のテーマは、「人生100年、誰もがいきいき まちづくり」ということで、講師の方お二人をお招きしました。当初、三人の予定だったのですが、お一人、佐々木都さんという方が、インフルエンザに罹られまして、今日は、残念ながら欠席ということになりました。その分、お二人のパネリストの方に十分話していただき、会場とも意見交換が深まったと思います。
まず、奥山千鶴子さん。奥山千鶴子さんという方は、皆様、プログラムでもおわかりのように、「NPO法人びーのびーの」を立ち上げた方です。横浜市の方で活動していらっしゃいまして、その「びーのびーの」は、子育て支援の拠点として、今では、横浜市で二つの施設が活動しているということです。奥山さんの着眼点というのは、この子育て世代と高齢者の人たちを結び付けようということで、いろいろな高齢者の方たちに力を借りて、ともに活動するということをしてらっしゃいます。それで保育園などもやっていらっしゃいましたし、そこに来るボランティアさんたちは、祖父母世代ということです。昔の井戸端会議をイメージしていただければ、おわかりかと思いますが、楽しく、ご一緒に活動しているというような報告がありました。それから横浜市の小規模保育事業というのがありまして、そこで、どんどん活動が広がっていったそうです。ある偶然から、篠原という土地に、ご縁がありまして、その土地を借り受けることができまして、そこに手作りで施設を作り上げたのです。リフォームも自分たち、それも高齢者の力を借りながら、あるいは子供たちと一緒に、いろいろな取組を行って、開設に至ったそうです。そこは、今でも活発に続いていらっしゃいますけれど、誰もが気軽におしゃべりし、食事もし、そして、楽しく過ごす憩いの場として、利用されています。それから、奥山さんは、日常生活の介護予防や日常生活相互支援事業と、この子育て支援というものを結び付けて、これからも活動していきたいと、そういうふうにおっしゃっておりました。少子高齢化の課題、これからはお年寄りが、介護されたり、支援を受ける側だけではなくて、みんなで支え合って、しかも、世代間交流しながら、世代を支え合って行こうという、そういうまちづくりを目指しているということで、大いに刺激を受けたところでございます。
小堀鴎一郎先生は、皆様よくご存じと思いますけど、森鴎外さんのお孫さんにあたられる方です。鴎という字を見れば、おわかりになると思いますが、娘さんが小堀杏奴さんで、その方がお母様になられます。小堀先生は、NHKの番組などでも、皆様、ご覧になったと思いますが、在宅医療のパイオニアとして、ドキュメンタリー放映されました。東大をお辞めになった後、いろいろな医療機関を経て、退職後、新座市で、在宅医療に取り組んでいらっしゃいます。先生のお話は、非常に示唆に富むものでしたけれども、強く印象に残ったのは、今の日本は、生かせる医療が中心で、死なせる医療というのが、あまりに注目されていないということをおっしゃっていました。在宅医療というのは、延命治療ではなくて、いかにその方らしく死んで、死んでいただくというのは変ですけど、あの世に旅立つ力添えをするという、そういうことが肝心だというようなお話をたくさん、実例を挙げて伺いました。パワーポイントでは、3例ほど伺いましたけれども、先生は、いわゆる在宅で恵まれた環境に暮らしてらっしゃる方ばかりでなく、生活保護を受けたり、障がいをお持ちだったりする方々とも、長年お付き合いされています。ご近所とのトラブル、特に猫の例があったのですけれど、そういうトラブルも先生が、身を乗り出して、ご近所との解決を図っていると。そんなことも在宅医療の一つだよということを、非常に身近な例として、お話しいただきました。
最後に、欠席された佐々木都さんですが、佐々木都さんは、実は、内閣府のエイジレス章というのがありまして、令和元年度エイジレス章を長野で受章された方です。この東京フォーラムに先駆けて、去年の10月に、エイジレス章の授章式があったのですが、残念ながら、その時は台風19号で、その授章式自体、長野フォーラムも流れてしまいました。それで、今回お招きしたのですが、やっぱり、ご出席できないということで、その長野フォーラムに向けたインタビュービデオを皆さんに見ていただきました。佐々木さんは、旅館の女将さんをしておられまして、92歳になられますけれども、やはり、地域で高齢者の集いのサロンを作ったり、本をお書きになったりという、非常に活発な活動をしていらっしゃいます。私たちの「人生100年、誰もがいきいき まちづくり」のテーマに相応しい方としてお呼びしたのですが。会場からは、非常に活発なご意見、あるいは、やはり、在宅医療、自分の死をどのように迎えるかというようなことも、ご質問やご感想、ご意見をいただきました。けれども、短い時間でしたので、ここでは申し上げませんが、非常に議論は深まったと思います。先生方も、その一つ一つに誠意をもってお答えいただきました。以上です。
【司会者】 ありがとうございました。続きまして、第2分科会から株式会社三菱総合研究所プラチナ社会センター主席研究員、松田智生様、よろしくお願いいたします。
【松田】 どうも、皆さん、こんにちは。第二分科会の総括をいたします。第二分科会、「世界と一緒に考えよう!アクティブ・エイジング」ということで、今回、ドイツ、イタリア、日本から、パネリストをお招きしまして、自分の国の高齢社会の状況、それから海外から見た日本の高齢化のイメージ、そして、これからドイツ、イタリア、日本、世界で、どうやってアクティブ・エイジング社会を築いて行くかという報告と討議をしました。
まず、ドイツのパネリストは、ドイツ日本研究所のヴァルデンベルガー所長から報告をいただきました。キーワードとして、やはり、コミュニティが出てきました。それは、町でお祭りがある、それから教会がある。つまり、集う場所があるということです。それから、ドイツの特徴として、小さな町が元気であるということ。それが、日本の地方の疲弊との比較ということで話をされました。
それから、次に、イタリアから、アランプレセさんという、車のフィアットの日本の法人のマーケティング本部長をされている方から、お話をいただきました。主に、彼女のアクティブなライフスタイルから見える示唆ということで、女性の社会参加が鍵を握る。今、彼女が、マーケティングの仕事で日本の多くのNPOとお付き合いしている中で、多くのNPOの代表が女性だということで、女性の社会参加が鍵を握るということです。それから、次のキーワードは、「Love」と「Share」という言葉です。LOVE・愛というのは、自分のやってきたことを愛する、自分のしてきたことを愛する。そして、「Share」っていうのは、そういったことをみんなで、シェアしましょうということで、「Love」と「Share」というキーワードが出てきたということです。
最後に、日本は、IoS、「Internet of Seniors」という、シニアをIT、インターネットを使って社会参加を促す牧壮さんがお話をされました。これから、シニアの引きこもりですとか、あるいは、台風や地震などの災害の情報収集、それから、ITを使って、新しい仲間や友達をつなぐ、昔の友達とつながるといったことで、「Internet of Seniors」というキーワードが、きわめて大事だということで、その取組を話されました。日本のそういった新しい先駆的取組、あるいは、ドイツやイタリアで進んでいる地域のコミュニティ、社会参加、家族とのつながりの融合こそが大事ではないかという議論になりました。そして、私の方から総括として、やはり、高齢社会、こういったものを日本だけじゃなくて、世界と一緒に考える機会が必要だということです。将来的には、ダボスの経済フォーラムのように、高齢化を考える国際会議を開いてはどうかと、そして、日本は、高齢化の先進国でありますけども、高齢化を解決した課題解決先進国だということを世界に強くアピールすべきだとまとめました。さらに、高齢社会というのは、高齢者だけがハッピーな社会でなく、多世代が輝く成熟した社会を目指すべきだと、それを日本と世界で考えていこうということで、総括をさせていただきました。今回の討議、分科会ですけども、非常に明るいというか、フレンドリーな感じで、僕は、5年ぐらい続けているんですけども、とても活発な雰囲気になりました。この分科会での議論したことが、これから世界でアクティブ・エイジングを考えるきっかけとなれば、コーディネーターとして、これほどうれしいことはありません。どうも、ご清聴ありがとうございました。
【司会者】 松田様、ありがとうございました。最後に、第3分科会から公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団研究部主任研究員、澤岡詩野様、よろしくお願いいたします。
【澤岡】 皆様、改めまして、こんにちは。今日は、長時間お疲れ様でしたと言いますか、皆さん、今日は、いろいろと気づきを得られたのではないかと思います。第三分科会は、今回、テーマとして、認知症にフォーカスを当てました。「認知症になっても皆がゆるやかにつながる地域の創り方」、かなり、大きなテーマで今回はシンポジウムを組ませていただきました。その中で、様々な、全国に優良事例があります。ですが、やはり、その一部を捉えただけでは、地域づくり、地域全体を動かしていくという視点にはなり得ないのかなあということで、今回は、板橋区の赤塚。この緩やかにつながる地域の作り方。このテーマに向けて種まきを始めている板橋区の赤塚にフォーカスを当てさせていただきました。この、板橋区の赤塚。住んでいる方もおっしゃっていましたが、都会田舎と表現できるくらい、都会と田舎、両方が共存していると言えるとおっしゃっていました。地縁が強く残っている一方で、新住民、特に子育て世代といった方々が、流入もされているということで、新旧の力がうまく交じり合えば、いい力になる。ですが、これが反目しあって、なかなか、地縁は地縁ということで、固まってしまえば地域がうまく回らなくなってしまう。そんな地域の中でどんなまちづくり、そして、その中で認知症の方、認知症になった方を、どのようにつながりを作っていくか、このような視点で、今日はご報告をいただきました。
ご報告をいただきました三者は、異なる視点で地域にアプローチをされている方々になります。お一方目の水野さんは、福祉の専門家、特に、若年性認知症の方々を、社会的にどう自立を支えるか、そういった視点で大きな活動をされている方になります。そして、お二方目、矢作さんは、まちづくりのNPO、こちらの活動をされている方になります。そして、お三方目の三枝さん、やはり、地域ということ、そして、コミュニティを語る上では一番地域づくりのベースとなる、原動力となっている町内会、自治会、この地縁組織の代表のお立場から、お話をいただきました。
お三方それぞれに、非常に貴重なお話をしていただいたんですが、今日は、すべてお話をさせていただきますと、お時間の関係で限られておりますので、お三方の中から出てきた共通することというのを、これから皆様にご報告させていただきたいと思います。やはり、大きい部分、お三方それぞれに出てきましたのが、言葉は違いましたが、「まちのつながりを育んでいく」、まず、これが一番重要なことなのではないかというポイントが出てきました。この、「まちのつながりを育む」、これだけ聞くと、何が認知症の人に対しての支えなのかというふうに疑問符を持たれる方もいらっしゃると思います。れは、最初にお話しいただきました水野さんから出てきました課題提起にもなりますが、認知症の方を支える家族、専門職、様々な支え手がいます。ですが、そこで支えられる部分というのは、やはり、生きている生活の中の、ごく一部と言えます。重要な部分としましては、認知症になった方の日常生活、普段の生活、その普通を如何に支えられるか。そのためには、隣近所の支え、地域の支え合いなくしては、なかなか成り立たないよねということを、視点をいただきました。じゃあ、この隣近所の支え、隣近所の力を借りる。これって、いきなり、じゃあ、隣の人が認知症になったから支えてあげてください。助けてあげてください。これって、なかなか難しいですよね。そういう意味で、やはり、日常的に、如何に地域で、まちのつながりがゆるやかに育まれているか、これが、重要なポイントだよねと、お三方からお話をいただきました。
そのためにはというところで、じゃあ、どうしたらそれが実現して行けるかということになります。そこでは大きく二つ挙げられるのかなと思います。 まず、一つ目は、認知症ここに限らず、になりますが、やはり、地域の多様な団体、認知症の支援をする団体だけが、連携すればいいのではなくて、子育て支援から、様々な支援団体、地域にあります、その町に関わる様々な団体が連携をする。お互い、つながりを持つことが、まず、スタートだよねというお話もいただきました。そして、二点目ですが、今、やはり、認知症の方を支えるとなりますと、認知症の人のための場づくり、認知症の人のための制度設計、そういったように視点が動きがちです。これも大事です。でも、今、欠けている部分としては、特化したつながりづくりのきっかけの場ではなくて、既に地域にある餅つきであったり、子育て支援のサークルであったり、その既にある様々なつながりのきっかけの場、ここに、じゃあ、認知症になった人がどう巻き込まれていくか、どう一緒に作っていく担い手になり得るのか、その既にある場に、どう巻き込んでいくか、そういった視点も重要だよねというお話が出てきました。
ここで、やはり、最後にちょっと感じたこと、これは、あくまで私の私見になりますが、今回は、認知症になっても、「皆がゆるやかに」というテーマ設定をさせていただきましたが、結局、もうこれは認知症になっても、ではなくて、認知症になっても、それから、子育てに困っても、障がいを持っても、これはもう、すべての人に、その主語が当てはまるのかな。○○になっても、重要なのは、緩やかな育み、つながりが育まれる地域、これを実現させていくために、如何にそのつながりのきっかけ、その種まきができるか。これは、おそらく認知症にかかる人だけではなくて、地域に生きるすべての人が、そういった視点を持って、地域、ご自身の日常生活を見ていくことで、もしかしたら、素晴らしい、豊かな地域社会が作られていくのかなということを、今日の分科会で教えていただいたようにも感じます。皆様も、ご自身の地域、ご自身の取組を、そういった視点で、もう一度、見直していただけたらなとも感じております。第三分科会の報告は、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
【司会者】 澤岡様、ありがとうございました。本日、コーディネーターを務めていただきました木村様、松田様、澤岡様に、どうぞ、今一度、大きな拍手でお送りください。