第3分科会「高齢社会フォーラムin東京」

「コロナ禍も紡いできた地域のつながりを途絶えさせないためには?」

コーディネーター
澤岡 詩野
(公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団研究部 主任研究員)
パネリスト
竹上 恭子
(東京都三鷹市井の頭一丁目町会 会長)
吉田 心弥
(社会福祉法人日高市社会福祉協議会 コミュニティソーシャルワーカー)
大下 裕子
(横浜市南区睦地域ケアプラザ 生活支援コーディネーター)

〈要旨〉
 第3分科会では、「コロナ禍も紡いできた地域のつながりを途絶えさせないためには?」をテーマに、パネリスト3名による地域活動の発表が行われました。竹上恭子様には、町会長として若手の力や助成金を活かし、コロナ禍だからこそ地域のつながりを感じてほしいと工夫して実施されたさまざまなイベントや、ネットを利用した情報発信の取り組みをご報告いただきました。吉田心弥様には、コロナ禍で社会福祉協議会の仕事や視点を見つめ直されるなか、職員自身があまり得意でなかったネット活用による講座等の開催を地域のボランティアの方と協働して実現されたお話をいただきました。大下裕子様には、住民主体の地域の居場所「いっぷく処」の立ち上げとコロナ禍での活動の工夫、放課後クラブの児童との交流など、制限のある中での「できること探し」の取り組みと支援の様子をお話いただきました。

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【澤岡】 皆さんこんにちは。今日は第3分科会にご参加をいただきありがとうございます。今回はオンラインで初めて内閣府のフォーラムをやるということで、おそらく今までこのフォーラムのことをご存じなかった方とか、いわゆる北海道とか遠隔地でなかなか東京のこちらのほうに参加することが難しかった方や、これまでこのフォーラムにいろんな事情で参加できなかった方にもご参加していただいているのではないかと思っております。今日は短い時間ですが、よろしくお願いいたします。

 これから「コロナ禍も紡いできた地域のつながりを途絶えさせないためには?」をテーマに分科会を始めていきたいと思います。日本全国から地域という場でさまざまな方々がご参加してくださっていると思われます。おそらく役所関連の方、社会福祉協議会、地域の活動者の方々、それから個人のお立場で今の地域をコロナ禍の中でどうしたらいいのだろうと思い悩む方々まで、さまざまなお立場の方が参加くださっていると思われます。それぞれの立場からのヒントを得ていただくのは、この分科会の1つの目的としてもちろんのところです。ですがもう1つ、コロナと向き合いながらも、今皆さんお住まいの関わられている地域を元気にしたい、そんな同じ思いで動くほかの立ち位置の方々の動きや想いを知っていただきながら、新たな「今までは組んでいなかった、でもあそこと組んだらいろんな連携が生まれる」そんな分科会になればとも考えております。

 今回いろいろな方々にご参加いただいていると思います。まず最初に皆さんに「コロナの影響を自分事として感じるようになったのはいつ頃でしょうか?」と問いかけさせていただきます。私の感覚で考えていきますと、地域を研究する研究者としては、通いの場であったり、サロンであったり、そういった場がお休みになるとか、講座やセミナーが対面での開催が難しいという中止の連絡、こういったものが増え始めたのが2月後半ぐらいからだったと思います。それから、5歳児の母という個人の立場から考えていきますと、一番リアルに感じましたのが、保育園の登園自粛要請が出始めた4月頃だったかなと思っております。皆さんはどうでしょう。みなさんが活動者として、そして個人のお立場として、自分事としてコロナをリアルに感じ始めたのはいつぐらいからだったでしょうか。皆さん、いろんな答えを思いつかれたのではないでしょうか。今2回目の宣言が出ていますが、宣言が出た頃から考えていくと1年ぐらい経過しようとしているのではないかなと思います。誰がここまで長引くと考えたでしょうか。本当に長いですよね、1年。

 この長期化するコロナの影響を、実は研修者としてシニアの皆さんに今インタビューをさせていただいています。その際に聞こえてくるのが「コロナが怖い」「家族にハイリスクの方がいらっしゃる」「家族が止める」などの理由で、外出や人と会わない。1日暗いニュースばかりのテレビを眺めてため息をつく。気がついたら誰ともまともな会話をしなくなって1週間、2週間経っている。そんな毎日を過ごしているという方に多く出会います。

 これが1カ月ならまだしも1年です。1年続けばどんな元気な人も、体も心も落ちていってしまうのは、当たり前のことですよね。さらに深刻だと感じますのが、アクティブに活動されていた方、地域を引っ張ってこられたシニアの方々の中にも、同じような傾向が見えていることです。新たな担い手が入ってこない中で、今まで地域を引っ張らなきゃ、あの人の笑顔を生み出したいからと頑張ってきた。でも、そろそろ年だしこのコロナが潮時かなと、活動を閉じるほうに気持ちが行きかけているリーダーさん、それから担い手といわれる方々が増えているようにも感じます。皆さんの周囲ではどうでしょうか。

 皆さん、想像してみてください、皆さんの関わる地域の1年後の姿を。問題を抱える人は、コロナが始まる前よりも増えています。これまで外に出ていた人が、先ほど藤原先生の話にもありました「フレイル」という状況に陥った中で閉じこもり続ける。多分、そういった方々にはこれまでとは違うアプローチが必要になってくるかもしれません。今まで頑張って地域を支えてきた人や活動の中には、コロナが落ち着いても立ち上がれない、そんなところも増えてしまっているかもしれません。慢性的なパワー不足だった地域というというところが、さらにパワー不足になり深刻化していっています。

 先日お会いした自治会長さんが、つぶやいていらっしゃいました。「澤岡さん、このままじゃ地(澤岡) 域が死んじゃうよ」そうおっしゃっていました。一方で「活動を立ち上げること、これも確かに力が必要。でもね、シニアを中心にした活動者の中では、休んでしまったこの活動を再開するほうが力が必要。だから、怖いこともたくさんある。でも形を変えてでも、小さくてもできることを続けている」そんな地域活動のリーダーさんにも出会います。

 そうなんです。これまで長い時間をかけて積み重ねてきた活動、紡いできたつながりを完全に止めてしまってはいけないのです。今まで目指してきた活動とかつながりの姿とは、かけ離れているかもしれません。道ですれ違った時にいつもより大きなアクションで手を振る、こんなサロンのリーダーさんがいます。「回覧版に付箋で一言『元気?』と手書きで書いて貼り付けて次のお宅に回すようにしている」という民生委員さんもいます。「自分は家族の病気を考えると活動を休んでいる。でもリスクと戦いながら学習支援の場を再開した仲間に、応援しているという気持ちを時々電話をしたり絵手紙で伝えている」という市民団体のリーダーさんもいらっしゃいます。もしかしたら、これも立派な活動、つながりなのかもしれません。どんなに小さなことでも地域で大事にしてきた何かを途絶えさせないこと、続けていくことが、コロナで地域を殺さないために重要なこと、今できることではないでしょうか。

 感染予防と地域活動を続けること、このバランスはすごく難しいことと思われます。その中でとかく「できないこと探し」に目がいってしまったり、「コロナの前は良かったよね」「あんなことができていた」今までできていたことに目を向けてしまいがちの方も多いのではないでしょうか。地域づくりに関わる専門職の皆さんのなかにも答えの見えないコロナのこの状況の中で、「できないこと探し」に目がいってしまう、どう動いてよいかが見えなくなっているという方も少なくないと思います。

 今回の分科会では、町内会、社会福祉協議会、地域包括支援センター(横浜市ではケアプラザと呼んでいます)という異なる立場から、誰もが安心して豊かに暮らしていく地域、これはコロナの前から共通する願いだったと思います。その誰もが安心して豊かに暮らしていく地域にするための「できること探し」、さらに新たに「できそうなこと探し」、ここに取り組む三者をお招きしました。お三方には今できている成功談だけではなく、コロナとは関係なくそもそもどんな地域にしたいのか、ここに対してのお話をいただき、そこに向けて動くプロセス、過程を丁寧にお話いただくようにお願いいたしました。短いお時間ではありますが、お三方それぞれに20~25分ずつお話をいただきます。そして残りの時間を、深めるためのディスカッションとして使っていけたらと思っています。

 私の前置きがちょっと長くなってしまいました。ではお一方目のご報告に移りたいと思います。お一方目は、東京都三鷹市井の頭一丁目町会で会長をされている、竹上さんにお願いをしたいと思います。町内会というのは、皆さんおそらく身近なところで一番近いところにおありになる地域の住民組織だと思います。まさに住民同士の支え合い、地域をつなぐお立場で動かれている竹上さんに、まずはご報告をお願いしたいと思います。では竹上さんよろしくお願いいたします。

パネリスト 竹上恭子氏のお話

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【竹上】 井の頭一丁目町会の竹上です。どうぞよろしくお願いいたします。

 「こういう時だからこそ地域のつながりを感じてほしい」この思いはコロナが始まってからずうっとありまして、今もその気持ちを持っています。この写真は、ミニトマトを手の上に乗せている女の子です。これは後でご説明をしたいと思います。

 まず、井の頭一丁目町会とはどういう町会かをご紹介したいと思います。今日は全国からお話を聞いてくださっていると聞いています。武蔵野市吉祥寺というのは有名かと思いますが、その近くの三鷹市の東の端に位置しています。世帯数は約2,000世帯ですけれど、そのうち町会に入っている世帯は880世帯。全体に戸建てが多いのですが、最近低層マンションも増え、それに伴って若い方たちが増えてきています。住所と町会名が一致しているというのも、1つ特色かなと。とても分かりやすいです。一丁目に住んでいる人は一丁目町会ということです。ただ一部隣の町会に属している所もあります。

■町会の目標「いつまでも住み続けたくなる町」

 町会の目標は、まずは安全安心な町。防災に力を入れ、「防災を考える会」を毎月開催しています。「ご近所のつながりが最大の防災」と私たちは考えていまして、班ごとの防災お茶会・防災ランチ会などを開催しています。コロナ禍で今はストップしてしまっていますけれど。そして防犯パトロール。町内のパトロールを月2回行っています。あと学童保育所の子供たちの帰宅見守りもやっています。 11月から1月末の5時ぐらいの時間というのは、本当に真っ暗です。その真っ暗な中、子供たちが帰ってくるのをパトロール隊が平日毎日見守りをしています。このパトロールは1月末で終わりなのですが、そのパトロール隊員の方に「3カ月間、ご苦労様でした」とお声をかけたら「明日から寂しくなる」とのお返事。子ども達との交流がうかがえ、いい活動になっていると思います。

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 また、「いつまでも住み続けたくなる町」というのが私たちの目標でもあります。いろんな居場所づくりを実施しています。みんなのブックカフェ、麻雀、ヨガ、碁木会、三金落語会なども、居場所として開催しています。あとは、多世代交流ができるイベントを、今まで数多くやってきました。キャンドルナイトも5回やり、初笑い寄席はもう10回以上やっています。井の一リレーおもしろ講座という一丁目町会のおもしろい方たちにお話をしてもらうという講座もやり、防災イベントも、楽しくなければ人は集まらないと、いろんな工夫をした防災イベントを開催してきました。いのいちリビングやハロウィンなどは、後ほどご紹介したいと思いますが、これは若い人たちが活躍して開催ができているイベントです。

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■「おたがいさま」のつながり作り

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 このような目標を私たちは持っているのですが、その居場所づくりの1つ「みんなのブックカフェ」のことをご紹介したいと思います。これは私が町会に提案をして始めたものです。夫が転勤族でいろいろ転々としてきまして、15年前に三鷹に落ち着きました。そこで何か自分らしい活動ができないかと考えたのが、「みんなのブックカフェ」です。移動図書館が来るこの三鷹台児童公園の地区公会堂で、隔週火曜日開催しています。午前は赤ちゃんとママの会、午後はどなたでもということで、多世代が交流できる場を目指して、活動を続けています。ご近所同士が顔見知りになれば「おたがいさま」のつながりができますね。昔はそういうのがいっぱいあったと思うのですが、今はご近所同士が知り合う機会が少ないので、そういう機会にしたいという思いがありました。顔見知りになれば「おたがいさま」で自然な支え合いができるのではという思いを込めて、12年間活動を続けてきました。特に子育て中のママたちを応援したいという気持ちがありまして、どんなことやりたい?と要望を聞いて、講座やイベントなどを開催してきました。

 3年前になりますが、あるママから「この三鷹台児童公園でプレーパークをやりたい」と相談を受けました。プレーパークというのは冒険遊び場。子供たちが遊びを作る場、やってみたいと思うことを実現できる場で、今全国的な活動として広がっています。それをこの公園でやりたいという相談でした。それでみんなで考えようと、「公園を考えるワークショップ」を早速2回連続で開催し、自由に意見を出し合いました。その意見を、すぐにできること、少し時間がかかること、大分時間がかかることの3つに分けました。そして、「すぐにできることをやってみよう」と「いのいちリビング」を、2カ月後には開催することができました。この「いのいち」は井の頭一丁目にちなんでつけています。いつもの公園がリビングになる。子供から大人、おじいちゃんからおばあちゃんまで、みんなが集う公園を目指すイベントで、若いメンバーが考えてくれました。そのメンバーに対して私たちシニアチームや高校生、大学生がサポートするという、多世代で作るイベントになりました。ミニライブをやったり、子供店員カフェをやったり「みんなのみたか」という、とても良い活動されている三鷹のグループがあるのですが、そちらの皆さんにご協力いただいて、皿回しなどいろんな昔遊びを教えていただきました。

 このイベントがとてもうまくいったので、次は何をやろうかと、どんどんアイディアが出てきました。「お月見会をやろう」「団子の作り方をおばあちゃんに教えてもらおう」と、多世代ができるイベントを考えてくれました。ハロウィンパレードや「いのいちリビング」も連続して4回開催することができました。また夏休みには、ジャブジャブプールというイベントも。大きなプールを買って、大人も子供もみんなで水遊びをしました。そして、2回目のハロウィンパレードへと、続々と面白いイベントをみんなが企画してくれて、それも多世代で実施することができました。

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■コロナ過でのつながり作り

 そこにコロナがやってきたということなのですが、今までこんな風に地域のつながりを作ってきた。コロナだからといってこれを止めたくないという思いがありました。

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こういう時にこそ地域のつながりを感じてもらいたい。町会活動としてできることはないか。3密を避けて、と言われた時には3つの青空イベント。そして外出自粛になった時には、3つのステイホーム応援事業を考えました。3月の末に、「いのいちリビング×Let's防災」を企画していました。ほんとに楽しいイベントを企画してくれていたのですが、3月初めには延期を決めました。掲示板に延期のお知らせを出す横に、それに代わることはできないかと考え、お散歩を勧めることを企画しました。室内での活動はできないけれども、外であれば大丈夫。地域の皆さんに、「散歩に出て三鷹台児童公園に青空休憩所を用意しますので立ち寄ってください」というもの。井の頭地域包括支援センターの方にもご協力いただけて、相談コーナーを設けることもできました。「青空休憩所」の写真がこれです。Facebookで青空休憩所のご案内をしたところ、スポーツジムで体操を教えている方から「ぜひ協力をしたい」と連絡をいただいて、この休憩所で体操指導をしてくださいました。外であればおはなし会も大丈夫だろうと、子供たち、お母さんお父さんに向けての「青空おはなし会」も開催しました。

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 3つ目に「青空撮影会」も企画しました。幼稚園の卒園式、小学校の卒業式も縮小された形で開催される。何か子供たちに楽しい思い出を私たちが作れないかと、「メモリアルフォトを撮りませんか?」というイベントを企画したのですが、残念ながらこの2日前に東京都から外出自粛が出てしまったために、延期となりました。落ち着いたらぜひ実施したいと思っています。

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 外出自粛になったため、「青空休憩所」も「青空おはなし会」もできなくなりました。今度はステイホーム、家にいる皆さんを応援することができないだろうかと、3つのことを考えました。1つ目は「電話でおしゃべりプロジェクト」。高齢の方や小さいお子さんがいる方、学校がお休みになっていたので、1人で留守番をしている子供たちに向けて、「電話でおしゃべりしませんか?」というプロジェクトを企画し、このようなチラシでご案内をしました。希望者は電話でおしゃべりしたい方、協力者は、希望者に電話をかけて話し相手になってくれる方。携帯の電話プランが定額の方、電話料金の負担がない方に限ってという形で開催しました。思ったほど希望は多くなかったのですが、高齢者とサポーター3組、親子と大学生2組、高齢者と大学生1組というような形で実施をし、この後も高齢者とサポーター2組は継続しています。そして2つ目は「ミニトマト100鉢プレゼント」。私自身、ステイホーム中にミニトマトの苗を買って育ててみたところ、それがすごく楽しくなってきた。この楽しさを皆さんに共有できるといいかなということで、ミニトマト100鉢をプレゼントしようと計画をしました。ただ苗をプレゼントするだけだと、土が要りますし、鉢も要りますし、肥料も要ります。買い物にも出られないこういう状況なので、全てセットになっているものがないかと色々探し、何とか全て揃ったものを探すことができました。これには若いメンバーが協力してくれて、育て方のポイントのプリントを、大人向け子供向けに作ってくれました。さらに「育てよう!いのいちのトマトたち」というFacebookにアルバムを作り、皆さんに写真を送ってもらって、アルバムに載せるというのも、若いメンバーが全部担当してくれました。資料の1ページの写真は、最初に収穫したミニトマトを手のひらに乗せている女の子の写真ということだったのです。

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■情報発信の大切さ

 Facebookのお話をちょっとしたいと思います。東京都の「地域の課題解決プロボノプロジェクト」に私たちの町会は参加し、情報発信の大切さと、その方法を詳しく学ぶことができました。情報発信の方法としてFacebookだったらなんとかやれるのではと、翌年スタートさせました。コロナ禍では、こういう時にこそFacebookで発信をしていかなければと思い、町会の「ミニトマト鉢プレゼント」「電話でおしゃべりプロジェクト」の情報だけではなくて、地域情報も掲載をしていきました。三鷹市の取り組みや子育て支援の動きなど、毎月10回以上更新をし、徐々にシェアをしてくださる方も増えて、毎回500名ぐらいの方にご覧いただけるようになりました。そして、Facebook をもっと活用できないかということで、昨年、「Facebook町会員」というのも新たに作りました。これは入会したいけれども近くに班がないとか、ご夫婦とも働いていて班に入って当番をやるのは無理かなという方向けのものです。町会便りはFacebookで見てもらう。そして1つ条件をつけて、災害時に周辺の状況をFacebookに投稿する。班に入らないほうが楽なことは楽なので、こういう条件をつけて災害時には協力してくださいということで、「Facebook町会員」というのを作りました。今6世帯入ってくれています。

 ステイホーム応援事業の3つ目ですが、このFacebookのカバー写真に、皆さんから投稿してもらったものをアップしていこうと、町内のお気に入りの場所やお気に入りのもの物の写真を送ってくださいと募集しました。ここに載っているのは、私の好きなまちかど子供版で、小学1年生の子が送ってくれた写真です。「お気に入りの場所から眺めた大きな木。ど~こだ?」というこんな写真をカバー写真として使いました。

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 8月、夏休みに何か子供たちに楽しいイベントができないかなと思いました。おじいちゃんおばあちゃんの所にも行けない、旅行にも行けない、盆踊りなど町の夏のイベントが全部ストップしてしまっていたので、何かできないかと、この「シャッターアートスタンプラリー」を企画しました。「イノイチサードプレイスプロジェクト」という、一丁目の中で今すごく面白い活動が始まっていまして、これはぜひYouTubeでも皆さんご覧いただきたいと思いますが、舟橋さんという方が空き家、空き店舗活用を進めているプロジェクトです。その空き店舗活用の1つの所にシャッターアートを描いてもらおうと募集したところ、2組応募があり、折角だから他のところにも描いてもらおうと、商店会にお声がけをし、お茶屋さんのところも描いてもらいました。それがどんどん広がって、今5カ所でシャッターアートができています。このシャッターアートを皆さんに知ってもらいたいという思いもあり、スタンプラリーをやってみました。「アートで夏を楽しもう」ということで、子供たちに少し夏祭りの雰囲気を味わってもらいたくて、よしずにプレゼントをつけて「最後に1つ好きなのを取ってね」という形でプレゼントしました。「浴衣も着てきてね」とお声がけしていたところ、こんな感じで浴衣も着てきてくれて、夏のイベントとしてはすごくいい感じになったかなと思っています。これが夏休みの終わる2日前だったのですが、あるママから「ようやくこういうイベントがあって、絵日記が書けます」という言葉を頂いて、私もとてもうれしく思いました。

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 このあとオンラインの取り組みを始めました。「シニアこそ、オンラインで交流を!」と考え、孤立を防ぎたいという思いから、ZoomとLINEのビデオ通話勉強会を少人数で4回開催し、17名の方が参加をしてくれました。この時に大学生が3人手伝ってくれて、マンツーマンで教えてくれました。先ほどの「イノイチサードプレイスプロジェクト」をやっている舟橋さんが講師を担当してくれました。このオンラインの講座をやったあとに、実際にどういうふうに使うのかというのを皆さんに体験していただくため、講演会を2回開催しました。Zoomでの講演会は、井の頭包括支援センターの加藤さん、そして三鷹市の生活環境部ごみ対策課の仲課長にお願いをし、2日間続けての講演会を開催することができました。まだZoomに自信がないという方たちは会場に来ていただいて、ハイブリッドでの講演会を開催することができました。これで終わってしまうと折角覚えたZoomの使い方を忘れてしまうかもしれない。そこで「Zoomでおしゃべりクラブ」というのを始めました。週1回2時間、10月からずっと継続をしています。これも1つの居場所作りになっているかと思っています。

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■更なるつながり作り

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 シャッターアートスタンプラリーがうまくいったので、10月にはハロウィンもできるのではと、密にならずにファミリー単位で回る方法を考えました。参加費は500円、これまで2回開催した時には受付で直接いただいていましたが、今回は事前決済のアプリを使いました。商店会にハロウィンメニューをテイクアウトできるようにお願いしました。商店会の応援にもなればと、若いメンバーが考えてくれました。町会から、わずかですけれども100円の金券を出し、より皆さんに利用してもらえるようにしました。こんな形で「ハロウィンお菓子ラリー」を開催しました。

 Zoomでの講演会、子育て世帯向けにもやりたいと、若いメンバーに相談したところ、性教育講演会を是非、という話が出まして、三鷹市の保健センターの方に在川先生をご紹介いただき、12月7日に「幼児期から家庭で始める性のおはなし」を開催することができました。先生のご厚意でアーカイブ視聴ができ、70名以上の参加を得ることができました。性教育がこれだけ大事だということを、大人の人たちにも見ていただきたい内容で、これを希望したママが「本当に聞きたかったことが聞けた。最後に涙が出てきました」と、うれしい感想を寄せてくれています。性教育というのは人権教育だなと、ほんとに私も感じました。すでに次の企画をしていまして、「思春期前後編」を2月15日に開催する予定です。Facebook でご案内しますので、もしご希望があればそちらから申し込んでいただければと思います。

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■三鷹市の取り組み

 三鷹市の取り組みを少しご紹介します。「地域活動にオンライン活用」ということで、地域コミュニティー向けICT講座というのが、12月から始まりました。井の頭地域がトップバッターで私も市民サポーターとして参加をし、井の頭地域に一番詳しいということで、コーディネーターを仰せつかり、連絡係進行係として参加をしました。2回のZoomの使い方の講座だったのですが、2回だけではなかなか覚えられない、自分の経験からもそのように思いましたので、毎週金曜日に「ミニ講演会+おさらい会」を開催しています。これも井の頭地域包括支援センターにご協力いただいて、専門職の方たちが毎回その専門のお話をしてくださる。ただのおさらい会よりは、専門のお話を聞かせていただくほうが参加率がいいのでは、と続けています。「シニアこそ、オンラインで交流を!」と、町会ではすでに実践をしていますが、その輪を広げていくため、井の頭地域全体に向けて、このような活動をやっています。

 先ほど藤原先生から、絵本の読み聞かせのお話が出ていましたが、私も絵本の読み聞かせ活動「おはなしい~の会」に参加しています。コロナ前までは保育園、学童保育所、赤ちゃんとママの会でのおはなし会を続けてきたのですが、コロナで活動が中断してしまいました。でも何とかできないかと、保育園の園長先生からの提案もあって「Zoomでおはなし会」を10月から開催しています。今までは毎週1回行っていたのですが、毎週はちょっと難しいので、2週間に1度開催をしています。10月から6回実施しています。こちら側では、パソコンの画面の前に絵本を出して読み聞かせをする。保育園では、その映像がプロジェクターで大きく映し出される。私たちが手遊びをするときなどは、うまく画面に収まるようにこんなふうに並んで。これが何とかうまくできているので、今後も続けていきたいと思っています。

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 外出がままならない本当に不安な日々ではありますが、「こういう時だからこそ地域のつながりを感じてほしい」とずっと思ってきました。まだ先が見えない状況ですが、今後も何とか工夫をしながらつながりづくりをしていきたいと思っています。

 三鷹台児童公園で「日曜カフェ」というのを始めようと若いメンバーが今、準備をしてくれています。公園に来た人にコーヒーやお子さんたちにジュースを飲んでもらう。そこでつながりを作っていこうという活動です。オンラインももっと活用していきたいと思っています。三鷹市の小学校ではもうタブレットが1人に1台貸与されていますので、子供達との交流もオンラインでできるのではないかと思っています。NPO法人エンリッチというところが、LINEの見守りサービスをやっているので、それも何か町会で使えないかと今相談を始めようとしているところです。

 今後も地域のつながりを作っていきたい。そして、そのつながりを地域の方に感じてほしいと思っています。これからもFacebookにいろいろな活動紹介をしてきますので、よかったらご覧いただければと思います。以上です。

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【澤岡】 どうもありがとうございました。私は横浜に住んでいるんですけど、近いですけどなかなか三鷹に伺うことができない中で、Facebookでいつも丁寧に発信をしてくださっていて、うちの町会自治会の広報よりも多分井の頭一丁目町会の広報のほうが、私はよく目を通させていただいてるんじゃないかというくらいに拝見させていただいています。でもそういう意味でも、新たな町会のあり方を見せてくださっているのかなと感じました。さらっとおしゃってましたけれど、「性教育の今度やるものをFacebookでご案内しているので、どうぞ申し込んでくださいね」って、これは町会の皆さんにではなく今YouTubeで見てくださってる全国の全ての方にですね。

【竹上】 はい。実はまだアップしてないんです。今は町会員向けの案内をしていまして、近日中に一般向けの案内をする予定です。前回も埼玉の方とか神奈川の方とかも参加してくださっていました。オンラインの良さですね。ご興味のある方はぜひ全国からご参加いただければと思います。

【澤岡】 驚きましたのが、やっぱりNPOでやるものでしたら「全国の皆さん世界中からどうぞ」ってありだと思うんですけれど、町会の会長が「どうぞ、どうぞ、皆さん地域関係なくどうぞ」ってすごい。でもそれが地域を強めてるんだなっていうふうに今伺っていて感じました。

 さらにはもう1つこの後のディスカッションでも深めさせていただきたいと思いますのが、「やっぱりこういう時だからこそ、つながりを感じてもらいたい」これってすごく重要な視点ですよね。逆を言えば、いろいろインタビューさせていただいてると、やっぱり若い世代が特に地域でリモートで仕事をするとか、外に出ちゃいけないというところでやっぱりつながりを感じたい。今までの普通にあったつながりが閉ざされてしまって、大学生も働いている人も高齢の方々も、みんながやっぱりつながりを感じたい。でもそこで感じられるのがやっぱり一番身近なところが地元で、地元のつながりにすごく敏感になっている。今まで地域に関わりのなかった人たち、そこに対してすごくいい接点が持てていて、もしかしてこれはコロナが終わった後、すごい力になっていくのかなと、そんな可能性も感じさせていただいて、すごくわくわくしながらお話を伺わせていただきました。また後のディスカッションで、深めさせていただけたらと思います。ありがとうございます。

パネリスト 吉田心弥氏のお話

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【吉田】 「紡いできたつながりを途絶えさせない」ということで、社会福祉法人日高市社会福祉協議会から、私吉田がご説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず前段に、これは先週の金曜日に撮った写真なんですけども、私はボランティアコーディネーターとして業務をさせていただいており、そこで撮った写真です。ここにいるのが一応私です。この間、ボランティアサポーターズクラブのメンバーとオンラインで会議をした様子です。皆さんなかなか初めての中、工夫して参加をしてくださって、こういう状況下でもこうして笑顔に溢れているというのがすてきだなと思ったので、最初に載せさせていただきました。

 本日お話をさせていただくんですけども、吉田心弥と申します。社会福祉士の資格を持っていまして、現在日高市の社会福祉協議会で、ボランティアコーディネーターとコミュニティーソーシャルワーカーを兼務しております。尊敬している人はバイスティックさんということで、バイスティックの七原則(ウィキペディアとかでも出てくると思うんですけども)を提唱された方です。この方の七原則を常に考えて行動するようにしています。ここにあるイラストは、鹿山という社協の職員が描いてくれたイラストです。一応吉田を模しているようです。

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 埼玉県日高市ですが、埼玉県のやや南の方、黄色い部分に位置しております。雰囲気としては、こちらは桜が咲いている頃の写真ですが、こんな感じで山が多く巾着田の曼珠沙華が有名な土地です。こちらの写真の提供も日高ガイドという日高市内を案内してくださっているボランティア団体さんに「出るので写真をください」と言ったらくださいました。

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 日高市の概要です。人口が約55,000人、高齢化率が32.4%です。やや高齢化が進んでいる地域です。世帯数が約24,000世帯です。日高市をより詳しく見ていきますと、自治会が79自治会ありまして、地域包括支援センターが3カ所。学校区でみますと6学校区に分かれています。ボランティアセンターに登録しているボランティア団体が今98団体。サロン、居場所を作っている団体が、社協で把握している限り26団体というような形になっています。社協は大体市の真ん中辺に位置しています。

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 社会福祉法人日高市社会福祉協議会は?ということで、先ほど澤岡さんのほうからも共有がありましたが、左側が社協のマーク、右側がマスコットかわせみくんで、こちらも先ほどの鹿山が作ったイラストになっています。社協は地域の福祉を推進することを目的としている団体です。通称社協と言いまして、私のいる地域福祉係という部分は、地域福祉の推進を担う社協の中核部署になっています。ボランティア活動に関することから、福祉教育、いわゆる子ども食堂といわれる活動の支援なども担当しております。

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■コロナ過でも前を向いて出来ること

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 社協がこれまで目指してきた地域というところですが、まず1つが顔の見えるつながりづくりというのをテーマに活動してきました。具体例として、サロンや見守り、子ども食堂などが挙げられると思います。また支え合いの仕組みづくりということで、地域おたすけ隊、ちょっと困ったことを協力会員の方が少しお助けしていくというような仕組みです。その他ボランティア活動、各種地域の会議なども支え合いになるかなと思います。また、福祉のまちづくりということで福祉教育。小学校などから依頼を受けて、障がいや福祉についてのお話を当事者の方と一緒にさせていただくような事業です。そのほか福祉スポーツ大会、主に福祉施設さんの参加や地域のボランティアの方などの参加でスポーツをする、スポーツを通して交流を深めるような事業です。福祉祭りというような、大きく分けると3つの分野で社協は事業を展開してきた背景があります。

 しかし、新型コロナウイルスの拡大に伴いまして、これら3つの要素につきましては、基本的に密集密接など、人と会うことを中心とした事業展開でしたので、基本的には中止や休止というような状況が続きました。そこで生まれたのが、「社協が地域の方と進めてきたことは不要不急なことなのかな?」というところで「私たちの仕事は必要なのだろうか?」と担当同士でも話をしていたりしました。

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 そんな中、視点の変更をする必要があるということで、何とかして前を向いていかなきゃというふうに考え直します。その中で子ども食堂や地域の食堂は、お弁当配布になりました。地域の方から今こそ食の支援が必要では?というような声があったり、積極的に新たな活動を開拓する団体が出てきます。「これまでやってきた火を絶やさないためにも、今何かやれる各地で活動しなきゃいけないんだ」「メンバーにYouTubeは得意な人がいるから、何かできないですか?吉田さん」と相談に来てくださったりする方が、少しずつ増えてきます。また、オンラインツールの活用ということで、私はすごい苦手だったんですが「この状況でも会議をしたいから勉強してください」とボランティアさんのほうからも言われまして、一緒に勉強させていただきました。また、ボランティア団体さんに呼びかけてフードバンクなども、食の支援として「今自分たちにできることは何かありますか?」ということから始まったようなことがあります。これらは、人と人とのつながりが生活の基盤、地域の方からも「何かできないかな?」という声が少しずつ大きくなっていきました。これはこれまでの活動や関係性、つなげてきたものがあったからこそ、今のニーズに合わせて変化することができるのかなとも思います。

 そこで私のほうでは、社協として選択肢を示していく必要があるのかなと感じました。そのような中実施しましたのが、第7回日高市地域福祉フォーラムで、テーマは「地域福祉にオンラインは不要?」というテーマでございます。例年、地域福祉フォーラムは、年度内の成果をまとめ発表共有するという意味合いを込めておおむね3月に実施していますが、急きょ10月に実施をしました。準備のスタートも8月末ぐらいから始めました。内容は今回コーディデーターをされていらっしゃる澤岡さんをお招きいたしまして、先ほど冒頭に出てきたボランティアサポーターに協力してもらいながら、つながりの質や、どんな人といると居心地が良いかという部分を大切に、オンラインが得意かどうかではなくて、やりたい何かがあるか、つながりたい誰かがいるか、そのための手段を持ってもらうというようなところを中心に澤岡さんにお話をいただき、牧IT研究所代表の牧さんに、実践報告ということでお話をいただきました。

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■オンラインならではの選択肢

 地域福祉フォーラムのねらいとして、3つの要素がございます。1つ目がつながる選択肢の提案。新しい生活様式に合わせた。地域福祉活動の展開の一例として、オンラインツールの活用を提案させていただきました。また「オンラインでも」や「オンラインなら」といったオンラインの強みの理解。オンラインだからこそつながれる、参加できる人もいるということで、テレビでよく見るけれどやるためのタイミングがなかった、きっかけがなかったという参加者も多くいらっしゃいました。そういう方々に実際にオンラインでの実施をすることで、やってみるというきっかけを作ることができました。

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 また、端末差を埋める工夫ということで、完全にオンライン化するのではなく、市内4会場からパブリックビューイングのような形で参加できるような環境を整備しました。こちらもポイントかと思いますが、操作が分からない人は、窓口で社協職員が直接操作説明をしたり、電話でも操作説明をさせていただきました。その中でも例えば、80代の男性、70代の男性、女性などが「初めてなんだけど、チャレンジしてみたいから教えてくれよ」ということで電話越しで、実際に社協と接点のなかった方もつながるきっかけができました。また、ボランティアと協働ということで、パブリックビューイングの会場では、地域のボランティア、先ほどのボランティアサポーターが事前にオンラインの体験をして、2名ずつスタッフとして協力をしてくださいました。そのメンバーというのが最初に吉田にオンラインを教えてくれた「吉田さん勉強してよ」と言ってくれた人たちです。コロナだけでなく寝たきりになっても、オンラインなら馴染みのサロンとつながれたり、新しいことにチャレンジする人と社協が直接つながることができるチャンスが出てきたり、目の前に目指したくなるアクティブシニアがいたりというような形で3つの要素がありました。仕組みとしては、このような市全域につながることができました。これが各会場での様子です。分散することによって、密集も防げるようになっています。事務局のほうも、こちら隣にいる方も地域のボランティアさんで、「操作が不安だからちょっと隣にいて」ということで、パーテーション越しに隣で操作の補助をしてくださっていました。

 実施までのプロセスというところでは、まず職員の知識経験不足、また8月9月の時点では、職員間の必要性の認識差というのも大きくありました。まだインターネット環境の不足であったり、備品の不足、先行事例が少ないなど、多くの問題が整っていない状態でやっていく必要がありました。

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 しかし実際にやってみると、オンライン参加者アンケートということで、オンラインから参加してくれた方25人しか回答が得られなかったんですが、初めて参加してくれた方が44%。約半分の方は今回初めてオンラインに挑戦してくださったという形になりました。また、今後もオンラインで参加できたほうがいいですか?というところでは、約7割近くの方が「オンラインで参加をしたい」と回答してくださっています。「目の前で講師が見られないので、講師の熱量が伝わらなくて嫌だ」というような話をほかの所で聞いていましたので実際どうかなと思ったのですが、日高では結構良い結果が出ました。

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 またこちらは驚くべきところなんですが、「講演会の内容は参考になりましたか?」というところでは、アンケートに答えてくださった方全員が「参考になった」と回答してくださいました。なかなかフォーラムをやっても、全てが参考になったとなるアンケートは少ないと思います。その辺やはり今のニーズに合わせた提案や実施ができたのかなと感じております。

 また会場で参加した方、ご自身で環境や端末がないためちょっと難しいという方です。「自分にもできるかな?」というところでは、自分にもできると思ったという方が7割ぐらいになっておりました。その後、社協のほうでオンライン関連の事業展開を実施していきまして、アロマを使ったオンライン講座、またサロン向けのオンライン講座、子ども食堂と高校生をつなぐオンラインでの活動などを実施していきました。ただオンラインは、あくまでつながるための選択肢の1つというところを、社協としても頭に置きながらの支援を展開していきます。

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 オンライン講座アロマについては、主に子育て世代をターゲットに、8月に実施しました。アロマを使ったリフレッシュ方法ということで、香りのサンプルを事前にお届けをしたり、カフェに協力いただいて個室からも参加できるような形を取りました。子どもを見ながら、家事をしながら参加できる、仲良し何名かで参加できるということで、参加の多様性が広がりました。また2回目の12月に実施しましたサロン向けのオンライン講座につきましては、講師を地元の住民の方にお願いし、貸し出しではなく自分のスマートフォン端末で体験をしてもらいました。すると、「地元にこういうのが得意な人がいたと知らなかった」と、講座後も地道に「あの人に聞けば分かるんじゃない?」と、地域にオンラインというものが浸透していく形になったと思います。

 また、子ども食堂と高校生ボランティアサークルということで、食堂のボランティアさんから「今お弁当配布になってるけど、それで本当にいいのかな?」「何かやりたいわ」という声をいただき、同時に高校生のボランティアから「コロナで活動がないんです」という相談をいただいて、そのような中でその2つをマッチングしてオンラインでつながせていただきました。ポイントとしては、複雑な機械は使っていません。同時に会場の人数も減らすことができました。学校から参加できるというところでは、なかなか学校終わりだとボランティア活動に間に合わなかったけども、これであれば参加できるということで、選択肢を増やすことができたかと思います。

 これらはコロナ禍じゃなくても活用できるんじゃないかと現在考えておりまして、むしろ日常的にオンラインを活動することで地域が豊かになっていくのではないかと考えています。

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今後の展開

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 今後の支援展開といたしまして、新たなつながりづくりということで、今まだ関わり始めたばかりなんですけども、高次脳機能障がいの当事者の方がいらっしゃいました。ベッドでの生活が中心になっている方なんですが、Facebook が得意なんですね。さっきの話にもありましたが、Facebookが得意で、社協のボランティアセンターの右下にずっとQRを載せさせていただいています。社協のFacebookとつながりのある方で、その方を囲む会がオンラインでできないかと思っています。自宅からでも顔の見える新たなつながりづくりということで、今後このようなつながり方というのも増えてくるのかな、またこれまで充足できなかった部分としてオンラインを組み込むことで実施できるのかなと、つながりをつくれるのかなと感じています。

 また寄り添い支援ということで、ボランティア団体が98団体あるのは日高市の強みだと思いますので、それぞれの団体にアンケートを実施しています。そこから合わせた支援をしていく予定です。コロナはボランティア活動が大きく変わるターニングポイントだと思っています。ボランティアセンター、社協としても丁寧な寄り添いの支援が求められていると感じています。

 またアイディアの提示ということで、先行事例をキャッチして地域へ提案していく。社会福祉の専門機関としての社会福祉協議会に役割というのは、今後ますます大きくなってくると感じています。先行事例や他市の情報もキャッチしつつ、各団体や地域に返していく。また同時に、寄り添った支援をしていくというのが、今後も継続していければと思っております。

 大変早口になりましたが、これで事例発表を終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

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【澤岡】 吉田さんどうもありがとうございました。すごくいろいろなキーワードが刺さってきたんですが、一番刺さったのはやっぱり、「社協が不要不急なのか?」ということ。皆さんそれを現場ですごく悩まれたというのは、心にぐさりときました。

 もう一点刺さりましたのはインターネットのお話。「うちの地域はできる人少ないし」や、「そんなの無理無理」と最初から諦める方も少なくありません。日高市では、まずは徹底して選択肢を示して、みんなのニーズを取って、そこにうまく合わせていくということをされているとのこと。オンラインもその選択肢の1つとして提示することで、無理と言ってきたところも、少しずつ地域の中でオンラインとどうやったらうちが活用できるかなという姿勢の方にも広がっていく。そんなふうにも感じました。この辺りは多分、今日YouTubeで参加されている方々もオンラインを地域にどう広げていくかとか、どう位置付けて行けばいいのかってすごく興味のあるところだと思います。ぜひ、またあとのディスカッションで深めさせていただけたらと思います。どうもありがとうございました。

パネリスト 大下裕子氏のお話

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【大下】 よろしくお願いします。では、先ほどもありましたが、横浜市の地域ケアプラザという仕組みが独特ですということでしたので、地域ケアプラザについてご説明したいと思います。

 この地域ケアプラザは、地域の身近な福祉、保健の拠点として、地域住民の福祉、保健活動やネットワークづくりを支援するとともに、住民主体による支え合いの地域づくりを支援するための施設で、約30年前の平成3年から整備が開始されているそうです。おおむね中学校圏域に1カ所、人口にするとおよそ25,000人に1カ所整備されており、現在約140カ所設置されています。

 この地域ケアプラザの運営は、横浜市の各区役所が行う指定管理者制度により選定された民間の社会福祉法人などが担っているためケアプラザの職員は、各法人の職員が従事しています。なので、私ですと社会福祉法人たすけあいゆいの職員で、地域ケアプラザに生活支援コーディネーターとして配属されているという形になります。

 住民の日々の暮らしを切れ目なく支えるためには、専門的な支援と住民による支え合いや取り組みの両方が必要ですが、横浜市地域ケアプラザ条例によって、地域ケアプラザはその両方が一体的に進められるようそれぞれの取り組みや活動を支援することと定められています。各地域ケアプラザには、多様な職種の職員が在籍しており、それぞれが担当する事業を進めると同時に、多職種が連携したり事業を組み合わせるなどして、プラザ全体で担当する地域の中に入り、地域に根差しながら取り組みを展開しています。より詳しい説明は、横浜市のホームページなどにあるので、そちらをご覧になっていただければと思います。

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 私がおります横浜市睦地域ケアプラザは、横浜市南区にあります。南区には8カ所の地域ケアプラザがあり、それぞれに第2層生活支援コーディネーターがおります。南区社会福祉協議会には第1層生活支援コーディネーターが、南区役所には地域包括ケア推進担当係長がおり、連携しながら生活支援体制整備事業を進めています。月に1度はこのメンバーを中心に連絡会を開催し、お互いの活動や市内の事例、情報を共有するなどしています。また生活支援コーディネーターのスキル向上を目指した研修も開催されており、生活支援コーディネーター自体もつながりの中で仕事をしています。

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 横浜市南区は、横浜市の中央部に位置しています。この中心にはシンボルとなる大岡川が流れ、それを挟むように平地部と丘陵部で成り立っています。横浜最古の寺である弘明寺(ぐみょうじ)や古くからの商店街も残っており、横浜の下町、下町情緒溢れるエリアと呼ばれることも多い区です。区内には横浜各地を結ぶ地下鉄や東京まで乗り入れる私鉄が通じており、市内18区中2番目に面積が狭い区ですが、人口密度は市内で一番高く、約19万5,000人が住んでいます。令和元年65歳以上の人口割合は26.9%となっており、横浜市の24.4%よりも高い割合を示しています。

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 横浜では隣接する複数の自治会と町内会がまとまり、連合町内会を組織しています。私が勤務している睦地域ケアプラザは、蒔田地区連合、堀ノ内睦町連合の2連合地域を担当していますが、今日はその内の堀ノ内睦町連合における住民団体「いっぷく処」の取り組みについてご紹介したいと思います。

 堀ノ内睦町地区は、堀ノ内町と睦町の2つの町から成り立っています。昭和の時代にはすぐ近くに路面電車が走り、商店街が栄えとても活気があったそうですが、時代の移り変わりとともに徐々に盛り上がりも変わり、お店も新しいマンションや住宅に建て替えられるなど、町の様子も変わってしまったそうです。ここ20年間の資料を見ると、堀ノ内町では高齢化率が徐々に上がってきています。ケアプラザは睦町にあり体操教室や講座を行っていますが、堀ノ内の方からは「商店街の通りを渡ってケアプラザまで行くのが大変」という声をいただくことがあり、ケアプラザでは堀ノ内町に交流の場、通いの場ができたらいいだろうと話していました。そこで何度か出張講座を実施。体操をしたりコーヒーを飲みながらおしゃべりをする場を作っていました。

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■地域住民が交流できる場「いっぷく処」について

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 ある時そうした取り組みを見ていた堀ノ内町のNさんから「実は以前から地域で住民が交流できる場を作りたかった」と相談があり、これが今日ご紹介する「いっぷく処」の始まりでした。2018年の年末、すぐにNさんは町内会館を会場として借りられるように、また町内会外の方も町内会館を利用できるように、町内会長に了解を取りました。あちこち動き一緒に活動する仲間を何人か見つけ、2月に団体「いっぷく処」を立ち上げ、3月には新年度の具体的な準備について話し合いを始めました。運営実績、地域の広報もゼロからのスタートでしたので、2019年4月~9月は、ケアプラザが主催する介護予防教室の後半の時間をいっぷく処にお願いし、お茶やおしゃべりゲームなどを楽しむ時間を運営してもらい、地域への周知を行う団体立ち上げ支援を行いました。10月からはいっぷく処が主催者として独立し、月に1回のペースでサロン活動を始めました。堀ノ内のそば打ち名人、元喫茶店のコーヒー名人、茶道の先生など、地域の人材を生かした企画を考えたり、交流の場になかなか出てこない男性高齢者が参加できるように作戦を立てたり、1人で外出しづらい高齢者は当日家までお迎えに行くなど、いっぷく処をきっかけにして新たな地域のつながりができるようさまざまな工夫がなされました。家に1人でいる高齢者からは、「テレビばかり見ているから、みんなと話せるのがうれしい」と好評でした。なぜかいっぷく処の日は雨になることが多いのですが、「雨が降ってもすぐ近くだから来たよ」と雨天でも多くの人が参加しました。

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■Withコロナの取組み

 2020年になり、次年度の計画も固まってきた頃、新型コロナで活動を休止することになりました。2020年5月下旬、そろそろ緊急事態宣言が解除されるという頃、いっぷく処も何かできないだろうかとNさんから連絡をもらいました。私もこの頃には生活支援コーディネーターの仲間や澤岡さんから新しい生活様式での各地の取り組みを教えてもらったり、活動再開に向けた参考資料をもらっており、何かできるといいなと感じていました。これまで熱心に地域活動なさってきた方でも、地域住民の孤立や健康状態の悪化を心配する一方、活動することで何かあったらどうしようと迷うお声も聞いていましたし、当時は自粛警察という言葉がよくニュースになったように、活動することに地域から反対の声が上がる可能性もゼロではなく、再開についてはいっぷく処のメンバーが十分に話し合い納得解を出すことが必要だと思いました。再開に向けての話し合いの場で、私はいっぷく処の皆さんが、今の状況をどう感じているのかお話を聞きました。近所で自粛生活によって大きく体調を崩した方はいなかったようですが、Nさんからは、この期間にお亡くなりになった独居高齢者の方がいて、もう少し地域とのつながりが作れたらよかったなという話がありました。

 話をしていく中で、「活動を通じて堀ノ内の日常の関係性につなげることが、いっぷく処の目的だよね」という声が出てきました。本当ならそのためにより多くの人へより多世代へと活動を広げたいけれど、新しい生活様式では大勢を集めることはできません。「このコロナの状況下、今は新しい人を集めるよりも、これまでつながっていた人とのつながりを途切れさせないことを大切にしよう」と話がまとまっていきました。「少人数でサロンをやろう」「1人で過ごしている高齢者はきっと誰かと話したいだろう」「盛り上げるよりも話をする場を作ろう」と決まりました。早速実際に机、椅子を並べ、密にならない会場レイアウトを検討しました。その結果、参加者の上限数も明確になり、これまでの参加者から人数を絞って呼びかけをすることになりました。

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 6月中旬、4カ月ぶりのいっぷく処に12名が参加しました。久しぶりに見かける参加者のお顔は、皆さん晴れ晴れしていて、町内会館の入口に立っていた私に「やっと出掛けることができた。楽しみにしてたよ」と声をかけてくれました。この日始まりの時間をもらい、地域包括支援センターの職員と一緒にアンケートを取りました。自粛期間中に体力や気力が落ちていないかみるために作ったアンケートで、この日来ていた方は何人かが「歩く速度が遅くなった」「最近物忘れが気になる」と回答しましたが、皆さん、散歩やラジオ体操をしたり、編み物や脳トレドリル、パソコンに取り組むなど、何かしらの工夫をして毎日のリズムを作っていたことが分かりました。ひと月後は七夕。短冊を書いたリ笹飾りをするなどしながらおしゃべりの時間を楽しみました。

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 七夕直前の土曜日。いっぷく処で地元の神社に七夕の笹を飾る企画を立てました。近所の小学校の中にある放課後クラブにも声をかけ、子供たちといっぷく処の参加者とで、神社からもらった竹に飾り付けをしました。神社の鳥居の高さを超す笹飾りに「色とりどりで気持ちが明るくなるわ」と、通りがかった方からも声をかけてもらいました。すぐ近くのデイサービスにNさんが声をかけてあり、デイサービスの利用者さんから預かった短冊も一緒に飾ることができました。コロナの影響でできることが限られている時期だからこそ、季節行事がいつもより色鮮やかに感じました。

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 8月は暑さを避けるため、もともと活動はお休みです。8月下旬、秋の活動に向けた話し合いを行いました。いっぷく処が自主運営を始めてもうすぐ1年。これまで7回いっぷく処を開催し、延べ110名の参加者がありました。メンバー自身がいっぷく処の活動についてどう感じているかを聞いてみました。「サロンでの工作や遊びを楽しみにしている参加者もいる」「町で会った時には楽しみにしているから、また何か考えてね。と声をかけてもらった」「七夕の企画がうれしかったと声をかけてもらった」など、いっぷく処をきっかけに、町の中でも参加者と会話ができるようになったという話を教えてもらいました。「参加者もいっぷく処に慣れてきて、やってもらうばかりでなく何かやりたそう。ちょっとしたお手伝いをお願いしてもいいかも」「運営する側だって楽しみながらやることが大切だよね」と、スタッフと客という役割ではなく、人と人としての関わり合う場を作ろうという声も出てきました。「地域の方の協力を得るだけでなく、地域のイベントにいっぷく処として協力し、地域の盛り上げ役を担っていくことで、より活動が充実するのではないか」という意見も出てきました。

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■新たな選択肢や可能性

 この頃にはニュースなどで、冬の感染症大流行の予測が話題に出るようになっていました。全国のいろいろな団体が形を変えたり、新しい取り組みを始めているように、いっぷく処にもいろいろな選択肢や可能性があると感じていました。少人数のサロンとして再開をしましたが、この形で続けていくのか、それとも新たな取り組みを始めるのか、話し合うタイミングだと思いました。サロン型以外にも選択肢があることを感じてもらいつつ、同時にどんな活動に関心がありどんな活動に難しさを感じるのかを知りたく、いろいろな事例をリストアップし、皆さんに見てもらいました。「いっぷく処に参加する高齢者は、スマホやパソコンをするのは難しそう。他の方法がいいと思う」「子供からお手紙をもらった元気がもらえそう」などと話しているうちに、「何かを作ることで地域のつながりが感じられるような取り組みがいいんじゃないか」「みんなに鶴を折ってもらい千羽鶴にしよう」「11月に地区社協で開催される作品展に出展しよう」という企画が立ち上がりました。いっぷく処の参加者には、作品展という外出のきっかけができる、作品展に見に行ってもらうことは、地域を盛り上げるお手伝いにもなると、いろいろな可能性も見えてきました。

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 9月中旬、できる時にサロン型で活動をしておこうと、いっぷく処を開催しました。過去の参加者から人数を絞って声かけをし、当日は10名が参加しました。「最近動かなくなった」という声も地域から聞いていたので、ケアプラザの看護師に相談し、介護予防体操を紹介してくださるボランティアさんに来てもらい、まずは体操や脳トレ、栄養に関するミニ講座を開きました。そして、講座のあとボランティアも参加者もいっぷく処のメンバーも一緒になって鶴を折りました。折り鶴というと細かい作業を嫌がる参加者もいるだろうと予想していたのですが、予想に反し「休んで水分補給してね」と何度声をかけても誰も手を止めないくらい、皆さん夢中になって折っていました。同じ折り紙でも折り慣れない作品だと難しい、面倒くさいという声が出たかもしれませんが、鶴だと体が折り方を覚えていたり、懐かしさがあったりで夢中になれるのかなと思いました。「家でも折ってくるよ」「孫と一緒に折る」「爪楊枝できっちり仕上げたい」と折り紙を持ち帰る方もいました。あとで折り紙が足りなくなったからと、Nさんのおうちまで追加の折り紙をもらいに来た方もいたそうです。

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 10月中旬、千羽鶴作成に向けて2回目のサロンを開催しました。できるだけ多くの方に折り鶴に関わってもらいたいと、前回参加していない方に声かけをしました。再び介護予防のボランティアさんに来てもらい、今回の参加者にも体操や脳トレを体験してもらいました。このひと月でいろいろな方が鶴を折ってくださったので、鶴は結構な数が集まっていました。この日は会場にいた皆で一緒に、鶴の色分け作業もお願いしました。皆さんが折った鶴とは別に、過去に地域の方が折ってくださっていた鶴も混ざり、気づけば2,000羽を超える折り鶴が集まっていました。改めて作業日を設け、ご近所の方にもご協力いただき、いっぷく処のメンバーで2つの大きな作品を仕上げました。写真はこの後のスライドで見ていただきます。

 少し時間がさかのぼりますが、10月初め、七夕の時に参加してくれた小学生の放課後クラブから、ハロウィンにいっぷく処とコラボをしたいと相談がありました。周辺にはハロウィンイベントを企画する町内会や子供会がありますが、コロナへの懸念から中止が相次いでいました。そういった状況もあり、大々的にはできないものの、短時間、少人数、屋外で子供たちにお菓子を渡すだけなら、とお手伝いすることになりました。イベント当日サロンの参加者3名に声をかけ、お手伝いに来てもらいました。毎日児童の登校を見守っているボランティアさんと民生委員さんにもNさんが声をかけ、総勢10名が町内会館と神社の2カ所で子供たちを待ちました。消毒やお菓子の渡し方をあれこれシミュレーションしたり、Nさんが素手で手渡ししなくていい仕掛けを作ってきたり、皆が安全に楽しめる方法を工夫しました。お菓子はクラブが用意しました。楽しそうな雰囲気に寄ってきた子供たちに、「クラブの子じゃないからお菓子は無いよ」と断らなくていいよう100人分のお菓子を用意してくれました。子供たちが「トリック・オア・トリート」と言ったら「お菓子をどうぞ」と言って、子供たちにお菓子を取ってもらう。これだけのやりとりですが、近所の未就学児やたまたま通りかかった中学生も参加するなど、多世代が一緒に笑顔になれる場ができました。クラブの職員さんは「来年のハロウィンもいっぷく処とコラボをしたい。もっとすてきな企画にしたい」とおっしゃっています。

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■折鶴が紡ぐ地域の力

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 11月、堀ノ内睦町地区社協が主催する趣味の作品展がケアプラザで開催されました。作品展には、地域の方が絵画や写真、手芸品などさまざまな作品を出品します。いっぷく処では千羽以上の折り鶴を千羽鶴と壁面飾りに仕上げて出展しました。脱線しますが、この2,000羽以上集まった折鶴、今度は使いきれないかもしれないという問題が出てきました。「千羽鶴にたくさん使ったらどう?」と案を出してみましたが、「千羽鶴は1,000羽よ」と却下。いろいろな人に折ってもらいお披露目を待っている折鶴たち。急きょ色分けした折鶴を透明の箱にたくさん詰め、それを作品として出展させてもらうことになりました。もう1つ参加者に千羽鶴の案が出てきた時、作品展終了後の作品のおしまいの仕方が気になりました。町内会館にしばらく保管させてもらうことはできても、ずっと置いておくことはできません。ゴミに出すのも気が引けます。「いろいろな人の思いを無下にしないよう、おしまいの仕方を最初に決めたほうがいいな」と話してみた結果、「地元の神社でお焚き上げをしてもらう」と決まりました。3日間開催された作品展は、鶴を折った方が何人か見に来ていました。「私もこれいくつか折ったのよ」「立派な作品になったね」と作品をめでるように話してくれたり、「コロナで出かける場所がなくなった」「友達と一緒に千羽鶴を見に来ることをとても楽しみにしていた」と涙ぐむ方もいました。鶴を折った方で作品展に来られたのは一部の方でした。まだ完成作品を見ていない方もいました。11月末にいっぷく処を開く予定だったので、そこで作品を見てもらおうと話していたのですが、新型コロナの再流行が始まり、年内のサロン活動をお休みすることになりました。

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 「このまま何もせずに年を越していいのかな?」この言葉を皮切りに、メンバーからいろいろなアイディアが出始め、千羽鶴の写真を収めたカードを作り、お礼の言葉を添えて鶴を折ってもらった方にカードを配ろうと決まりました。作業日を作りメンバーでお礼の言葉を一枚一枚手書きし、色画用紙に写真を貼り、表紙には小さな折り鶴を飾りました。社協から作品展の参加賞としてお菓子をもらっているので、きれいな袋にお菓子とカードをセットにし配る準備をしたのですが、その作業の過程で1つだけ私といっぷく処で議論になりました。それは写真でした。「作品だけでなくいっぷく処のみんなが一緒に写っているほうがいい」という私。それに対して「こんな顔が写っていてもありがたくないわよ」「捨てるに捨てられなくて迷惑じゃない?」「化粧もちゃんとしていないのに嫌よ」と言ういっぷく処の皆さん。「でも絶対この写真が励みになる人がいるから」と説得してなんとか採用してもらいました。後日メンバーの1人から電話をいただき「カードを配ったところ、一緒に折り鶴を折ってくれた孫にも、千羽鶴を見せてあげられる」と喜ばれたとのことでした。「この人は誰?お名前は?」とメンバーの写真を見て聞いてくれたそうで、「自分たちの写真を撮って良かったな」とおっしゃっていました。その他にも完成作品を写真で見て、「みんなの力ってすごいな」「立派な作品になったな」と喜んでもらったという話も聞きました。その後の緊急事態宣言の発出により、1月のいっぷく処もお休みをしました。

 ですが、皆さん何もできないと後ろ向きになるのではなく、この期間を生かして、このwithコロナの時代に何ができるのか、できること探しをしようと話しています。

【澤岡】 どうもありがとうございました。実はこの話を伺うのは何度目かであるのですが、今回も「納得解」と使われていた言葉が刺ささりました。ありがとうございました。

パネルディスカッション

お三方からいろいろなキーワードが出できました。皆さんお互いにお立場も地域も違うということで、それぞれに感想と他の方々のご報告へのご質問等がありましたら、順番に出していただけたらと思います。

【竹上】 吉田さんの活動聞かせていただいて、このコロナ禍ですごく頑張っていらしたんだなと思いました。ご自身はITスキルはちょっと弱かったけれども、それをちゃんとボランティアの方が助けてくれて、パブリックビューイングを市内4カ所でやったというのはすごいことですね。窓口で社協の職員の方が直接操作の説明をしてくださるというのは、サービスと言うとおかしいですけど、いつでも行けば教えてもらえるというのがあると、自分で試してみようという方が増えるんじゃないかなと思いました。オンラインを使っていろんな試みをされていて。その中で子ども食堂と高校生のつながりを簡単な器材で実践されたというところを、もう少し詳しくお話を伺いたいと思いました。

【吉田】 コメントしていただいてありがとうございます。本当に福祉の仕事の人には、対人援助とか顔を合わせてなんぼだという方が、多分多いかなと思います。私もそういうタイプで、オンラインとか、携帯を新しく買っても移行とかは弟たちにお願いをしたりとか、やり方が分からなかったんです。でも、ボランティアさんたちが「こういう中でもつながりたいから、もう覚えて」といろいろ教えてくださいました。

 そういう経験からも、やっぱり直接教えてもらったり「あの人に聞くといろいろ教えてくださる」と分かるとやっぱりきっかけが掴みやすいというところでは、どこかに委託したりコールセンターみたいなところにお願いをするんじゃなくて、あくまで社協の窓口で職員が目の前で一緒にお伝えをするというところがいいのかなと思いそういう形を取っていました。

 子ども食堂と高校生のオンラインについては、今お弁当とかフードパントリーのような形で展開している食堂さんも多いと思うんですけど、最初にもあったように活動の意味を見直すというところで、食の支援はもちろんですけども、求めていたのはぬくもりなんじゃないかなという話をボランティアさんたちともする中で、そうであれば短時間の中でお弁当を渡すだけではなくて何かワンアクションあったほうがきっかけが掴みやすいんじゃないかなということで、何かできないかとみんなで話しているところに、たまたま高校生のほうから「何かしたいんだけど」という縁がつながるような形でお話をいただきました。

 そこで社協としてもオンラインという手段を持っていたので、画面越しなんですけどもちょっとクイズのように「これ書いた人いますか?」とか「3文字の野菜で緑色の野菜をみんな描いてみてください」とか、短い時間でできるようなレクリエーションを考えてもらって、それらを実際にやってみることができてすごく良かったなと思っています。

【竹上】 ありがとうございました。高校生の活躍があるというのが素晴らしいですね。大下さんに伺いたいんですけど、「いっぷく処」というお名前がいいですね。これはどなたが考えられたんでしょうか。

【大下】 これは担い手をされている皆さんがいろいろ候補を出す中で、気軽に寄ってほしい、ほっとしてほしいというニュアンスから「いっぷく処」と決まったと思います。

【竹上】 ほっこりするいいお名前ですね。ネーミングはすごく大事だと思いますけど、すてきな名前だなと思いました。いっぷく処の活動の中で男性高齢者の方の参加を促す工夫をされた。これはどこでもあるんですね、地域活動には女性は割と参加が多いですけど、男性シニアがなかなか参加してくれない。どういう工夫をされたか教えていただけますか。

【大下】 1つは、企画も先ほどそば打ちとか出てきたと思うんですけど、ただ単におしゃべりだけだと多分男性は来づらいだろうということで、食べるのならいいんじゃないか、そばならいいとか、コーヒーなら来てくれるんじゃないかと、イベントの工夫をしているというところもありますし、あとはこれは皆さんの粘り勝ちかなと思うんですけども、何回も何回も声をかけている中で「何だったら来れる?」「何だったら興味がある?」みたいな形で、お一方はなかなか来なかったんですが、「将棋ならいいかも」とおっしゃったということで、急いで将棋を用意して将棋ができる男性を探して、この日に待ち合わせをしましょうみたいに、個人に合わせて来やすいことをアレンジしていくという動きもやりました。こんな形でいっぺんにたくさんは来ないですけれども、少しずつ定着してくれる方が増えてきています。

【竹上】 お一人ずつその人のニーズに合わせてということですね。一度足を運ぶとそこの雰囲気が分かって、行こうかなとなりますものね。最初のきっかけがやっぱり大事だなと思います。

【大下】 「諦めずに何回も何回も声をかけるんだ」と、常日頃おっしゃっています。

【竹上】 確かに、諦めないこと大事ですよね。あと作品展を目標に皆さんで鶴を折られたというのもすごくいいですね。手先を使うのでもちろん脳トレにもなりますし、それで目標の1,000羽を越えて2,000羽になったという。

【大下】 そうなんです。数えたら超えていました。

【竹上】 すごいですね。達成感もありますし。千羽鶴をさらにまた別の作品に仕上げたというところはすごくすてきだなと思いました。ハロウィンもされたということで、近くの子供たちと一緒だったんですか。どういうつながりでされたのか。ハロウィンを多世代で楽しむというのは私たちもやりたいことではあるんですけど、今のところ私たちは見守りをシニアチームがやっていて、何カ所かお菓子をもらえるスポットがあって、一部高齢の方に担っていただく部分を作ってはいるのですが、どういう形で進められたかを教えていただきたいと思います。

【大下】 今おっしゃられたのとそう変わりはないかなと思うんですけども。きっかけは近くに小学校がありまして、その中にある放課後クラブさんが地域ともっと関わりたい、ハロウィンもやりたい、でも今年はコロナでいろんなことができなくて、せめて町を歩いてお菓子をもらうならできるんじゃないかということで、地域に出たいんだというお話がありました。その時にこちらのほうでは、いっぷく処というのが近くにあるなと分かりますので、ここがマッチングしてくれるとすごくいい場ができるんじゃないかなということと、たまたま七夕の時やほかの時にもつながりはすでに何回か持っていましたので、いっぷく処にしてもそのクラブさんに協力することはそんなに初めてのことではないし、気持ち良くできる関係だったというところで、まずはそこでセッティングをしました。

 この時にスタッフだけがやるということも手としてはあったんですが、もうちょっと高齢のいつも来ている参加者の方たちに自分たちも出番として出てくれるような場を作りたいなと思ったのと、「トリック・オア・トリート」という言葉に「どうぞ」と返している場面が浮かんだ時に、やっぱりおじいちゃんおばあちゃんがいてくれたらすごくいいなというのがありまして、参加者の方にもお願いをして来てもらいました。そんなことをしていたらNさんのほうで、「いやいや日頃の民生委員さんにも来てもらえばいいんじゃないか」とか「登下校を見守っている方にも来てもらおうよ」ということで膨らませていただきました。

【竹上】 そういうのはいいですね。普段からのつながりがある方たちが、だんだんそこに参加されて輪が広がっていった。私もぜひそんなふうに次回のハロウィンは考えたいと思います。ありがとうございます。

【大下】 ありがとうございます。

【澤岡】 ありがとうございます。では次に吉田さんからお願いいたします。

【吉田】 いろいろと詳しく教えていただき、ありがとうございました。最初に竹上さんですけど、町内会の会長としていろいろな地域のコーディネートをされていてすごいなと思いました。中でもやっぱり何かをやる時に、周りがいろいろと一緒になって動いているというのがお話の中からすごく伝わってきて、みんながイベントを企画してくれていたりとか、チラシも別の方がやってくださっていたりとか、輪ができ上がっていて、さらにそこにいろんなアイディアがどんどん乗ってくることでいろいろ継続された活動だったりいろんな活動が生まれてきているんだなとすごい感じました。中でもステイホーム応援の企画なんかもすごく面白いなと思って、「ミニトマトの100鉢プレゼント」なんかは、その発想はなかったなと思ってすごく勉強になりました。

 ご質問ですけども、これまでやってきたことを途絶えさせないためにも、いろんな活動をさらに展開されていったかと思うんですけども、その中での発想というのはどのように出てくるんだろうなと。100鉢プレゼントももちろんそうですが、青空の部分だったり、おはなし会だったり、その柔軟な発想、今までやってきたところから少し視点を変えた発想というのは、どういうきっかけで出てくるのかを、ぜひ聞かせていただけるとうれしいのですが、いかがでしょうか。

【竹上】 発想ですか。思いつくんですよね。「何かしたい」とまずは思うんですよ。「何かできることはないか」と。それで「この状況でできることは?」と考えます、みんなが喜んでくれること。ミニトマトなんかは、私自身がミニトマトの苗を買って家で育てるとこんなにわくわくするんだなって。今までそういうのに縁がなかったというのもあるんですけども、この年になってもミニトマト育てるのってこんなにうれしいものなんだと感じたわけですね。そしたら「皆さんも絶対そうじゃないかな」と思ったので。

 あと1つは三鷹市の「がんばる地域応援プロジェクト」という助成金制度があるんです。町会、自治会活性化の制度なんですけど。そこから助成金をもらえばすぐにできるなというのがあったんですね。コロナで町会の運営委員会もいつものように開催できないというところもあり、メールでのやりとりはしてはいたんですけども。そういう中で助成金を使うということがあれば、皆さん「じゃあ、いいんじゃないか」と。これが町会費を使うとなると、そこで合意形成をしっかり取らないといけなかったと思うんですけど、助成金があるんだったらそれで大丈夫かなということで。だから三鷹市様様です。三鷹市の助成金のおかげでやりたいと思うことも、割とすぐできたかなというところですね。あとやっぱり若い人が周りにいることが大きいですね。

 先ほどお話した「みんなのブックカフェ」という活動の中で、若い人と接する機会が多いので、いろんな人からヒントをもらっていますね。三鷹市は地域活動が盛んだといわれているんですけども、いろんな地域で活動している人たちの活動を見ていると、みんないろんなアイディアを持っていて、それに刺激されている部分も多い。常に何か新しいこと、面白いことやりたいねという気持ちがあって、それがコロナ禍の活動につながったのかなと思います。協力してくれる人が、周りにたくさんいるからできることではあるのですが、それは今までのつながりの中でできてきた。若い人とのつながりは、ブックカフェの活動などでできてきたものかなと思います。

【吉田】 ありがとうございます。ほんとに竹上さんご自身の「何か新しいこと、面白いことをしていきたい」「何かできることを探していきたい」という思いと比例するように、これまでやってきたことやつながってきたことからヒントを得ていくというところですね。ありがとうございます。また同時に合わせてついつい忘れがちになってしまうお金の部分や、どのようにやるのかという具体的な部分もしっかりと情報を得ることでその手段を確保したり整えた上で、実現していくというところではすごい勉強になりました。ありがとうございます。

 そうしましたら、大下さんのほうで「納得解」という言葉が、私も非常に印象に残りました。選択肢を広げる可能性があるというところで、話し合うタイミングというお話もされていて、すごく地域の声やつながり、話し合いを大切にしながら、生活支援コーディネーターとしていろんなアプローチをされているんだなと感じました。個人的にはハロウィンの企画で素手で渡さない工夫というのが、写真で見る限り多分、上からポトって落として下で拾うような形なのかなと思うんですけど。そういうちょっとした今の状況を楽しんだ工夫というか直接渡せないからこそできる工夫みたいなのは、すごい面白く、そういうところを一緒に作っていくのがすごいなと思いました。

【吉田】 お話の中でも話し合いというのを大事にされている、吸い上げたり、つなげたりすることを大事にされているように感じました。話し合う時に、コーディネーターの立場として意識していることや気をつけていることがもしあれば、教えていただきたいと思います。例えば、あまり合意形成を促しすぎないとか、どういうところに重きを置いて話し合いにコーディネーターの立ち位置で入っていくのかを、難しいかもしれないですが聞かせていただけるとうれしいです。

【大下】 話し合いの時というのは、ついついしゃべる方、話さない方が出てくるかと思うんですけど、皆さんの納得解を全部が全部出していくというのは難しい場面もあるんですが、できるだけ皆さんの声、「さっきの声は流れてしまったからもう1回拾ってみようか」とか、話し合いの中でちゃんと関わり合いができていくように交通整理する役なのかと感じています。

 なので、どうしてもこれはやっていただきたいなというところや、逆にやってほしくないなということは強く介入することもありますが、基本的には皆さんの活動で、皆さんが作り上げていく活動だと思うので、そのために関係性がほぐれていくというか、皆さんが関われるように応援しているという形かなと思います。うまく言えないですが交通整理役かなと思っています。

【吉田】 ありがとうございます。みんなの声を拾っていく、ちょっと流れがちな声も拾っていくというところでは、地域の中で交通整理、ファシリテートの部分でもすごく大事なのかなと思います。私もそこがなかなか苦手でうまくいかないことが、普段の現場の中で多くあるんですけども、みんなで作り上げていくという思いは、私も大事にしていければと思いました。ありがとうございます。

【澤岡】 ありがとうございます。では次に大下さんから皆さんにお願いいたします。

【大下】 まずは竹上さんのほうですけれども、ほんとにコロナの自粛が始まってちょっとしてから澤岡さんとお知り合いになりまして、早い時期から井の頭の取り組みというのは、私も澤岡さんを通じて教えていただいていました。チラシや取り組みを見るたびに、この速さで先駆的にできているというのがすごいなと、いつもその背中を追いかけているような気持ちで「こういうのがあるからやってみない?」と地域に話ももちろんするんですけども、何よりもスタートが早いなということを一番印象的に思っています。その取り組みの速さもですが、竹上さんのお話を聞いていると、私が普段接している町内会長さんと少し違うと思うのは、コーディネーターなのかなというところが印象としてあります。いろいろな方の「やりたい」も「参加したい」も、場を作ってそこにウェルカムな感じでコーディネーションをしていく。足りないところはつなげていくという形のこの動きが、知っている町会長さんたちとはちょっと違う動きで、これがいろんな事業に展開するコツなのかなと感じています。

 質問としましては、先ほどの報告の中で若い人、若手という言葉がとてもたくさん聞こえたと思います。若い人と一緒に何かをやりたいとか、若手をもっと巻き込みたいというのは、どこでもある悩みなのかなと思うんですけども、もしコツがあるとしたら教えていただきたいです。

【竹上】 今コーディネーターという言葉を使ってくださった、私も本当にそうだと自分で思っています。町会長というリーダーではないと思っているんですね。年齢的にも実は町会の委員の中で最年少なんです。ここで最年少というとおかしいんですけど。でも委員の中では一番若いということで、皆さん「竹上さん頑張ってるから応援しようよ」ぐらいの感じで、私が皆さんをリーダーとして引っ張っていくということではなくて、頑張っている人をみんなで応援しようみたいな委員の皆さんの考えもあるなと思っています。

 町会の活動はまちづくりだと思います。その町を住みやすくするという。そこはやっぱりいろんな世代の思いが形になっていかないといけないなと思うんです。私、町会長もそんなに長くやるつもりはないので、もう次にどんどん世代交代をしていきたいと思っているんです。そのためにも若い人たちにもっともっと地域のことを知ってもらいたい。知ってもらうためには実際に活動してもらいたいわけですね。活動してもらうためには応援をしていかないといけない。だからやりたいことをこちらが応援するよという立場が、やっぱり町会として必要かなと。若い人が全部を引き受けるのではなくて、アイディアとか当日の動きとかを若い人に任せ、お金のほうとか人数足りないところはこちらで誰かが入るというような形で、若い人がやることをこちらが少し支援をするというような形で動いているイベントが、先ほど紹介したものの中で多かったと思っています。

 逆に私がやりたいと思ったことを、若いメンバーが知恵を出してくれて応援してくれているという例もたくさんあります。おたがいさまでずっとやっている関係ができてくると、若い人も役に立っているという思いを強く持ってくれるのかなと思います。自分たちでやりたいことをやるだけじゃなくて、私がやりたいと思っていることを応援してくれるということで、それで役に立っていると思ってくれているかなという、そういう関係性があると若い人の出番というか、若い人の活躍の場は町にあるんだよということが分かってもらえるかなと。若い人たちが地域で体験できる場を作りたいと「みんなのブックカフェ」を始めた時の思いではあったので、それを言い続けてきたということは1つあるかもしれないです。思っているだけじゃなくて皆さんにも「こういう場にしたい」ということを言い続けてきたので、若い人が私のほうに相談に来てくれたというのはあったかもしれないです。やっぱり言わないと通じない部分もあるので、応援するよというこちらの気持ちが伝われば、若い人も参加してくれるんじゃないかなと思います。お答えになっているでしょうか。

【大下】 ありがとうございます。長い時間をかけてちょっとずつ積み重ねてこういういう感じなのかなと。

【竹上】 そうですね。地域のつながりはすぐにできるものではないとは思いますね。信頼関係ですからね。

【竹上】 やっぱり時間はかかるのかなと思います。でも本当に積み上げていく感じはあるので、時間をかけて少しずつ積み上げていけるといいかなと思います。

【大下】 ありがとうございます。吉田さんの方は、私が今回すごく勉強になったなと思うのは、どうしても職員として講座とか何かを進める時って、ちゃんと教えられるか、ちゃんと伝えられるかというところをすごく気にしてしまうので、自分が得意でない分野はちゃんとできるようになったら伝えようという考えなのかなと思うんですけども、吉田さんの事例を聞きながら、分からなかったら一緒に聞いてみればいいんじゃないかなと、そこのプロセスをつながりにつなげていったというところが、すごく私の中では学びだった、いい気づきだったと思いました。

 途中、意見の差があるというお話、オンラインに対して意見の差や認識の差があるというお話があったと思うんですけれども、それでもちゃんと取り組みとして実現させていく時にどういうことをしたのか、例えば反対だとストップしがちだと思うんですけれども、そこをどういう工夫をして実現するプロセスに乗っけていったのかというところを教えていただきたいです。

【吉田】 意見の差というところでは、職員間と地域の方と2つがありました。職員間については、みんなでひたすら体験をしたり勉強したりとか、比較的地域に進めていこうという職員は前向きで、まずやってみようかみたいな方が多かったので、まずはやってみるというところで進めていった形ですね。合意形成を取っていきました。地域の方のところでは、「オンラインは基本的に私たちじゃなくもっと若い人たちよ」と皆様言われるんですけど、「若い人たちはもうみんなできるんです」というお話を逆にさせていただいて、「だからこそ皆様ができる環境や、やってみようと思えるきっかけを社協が作りたいんです」と一定お話をして、説得みたいになるんですけども、必要性を少し訴えてみたりしてお話をさせていただくことが多かったです。

 ただ私のやり方もそうなんですけども、基本ちゃんとできるか分からないまま一旦突っ込んでみようという方向性が多いので、やってみたらなかなかここは難しかったなとか、今回の私の後ろ(画面背景のボード)もやってみたらちょっと文字が小さすぎて読めないよとかそういうこともあるので、やりながら学びながら地域と一緒にやっていっているような感じです。

【大下】 「やりながら学びながら」というのはとてもいいですよね。コツかなと思います。

【吉田】 ありがとうございます。

【澤岡】 どうもありがとうございました。お三方にそれぞれご質問で、多様な意味合いの多様な視点を深めていただけたと思います。残り時間があと5分となりましたので、もう少し本当は深めていきたいところではあるのですが、ここからはポイントをまとめていきたいと思います。

【澤岡】 おそらくはお三方ともに、多分コロナじゃなければこんなことしなかったよというところで、いろんな取り組みをやってこられているのだと思います。皆さんのお話に共通していたのが、それをやってみたことで新たな人たちのつながりが生まれたとか、新たな担い手さんが出てきたといった「新たな展開」が見えてきたということです。コロナの穴埋めではなくて、地域がより豊かになるためのアクションにつながっているという部分が、大きなポイントだと感じました。そのように見える重要な部分として「地域がどうあったらすてきなんだろう?」「豊かな地域ってどんな姿なんだろう?」「それぞれの活動がどんな意味があるのか?」という部分にたいして、非常に皆さん明確なビジョンをお持ちになっているからなのかなと思います。ですので、その活動の意味を見直したときに、今こういうことができません、だったら公園を使ってみよう、今までよりももっと若い人に声をかけてみようとか、オンラインやってみようとか、さらに言えば折り鶴もそうですよね。端から見れば単なる千羽鶴なのかもしれません。でも、人と人とをつなげている重要なポイントになっている折り鶴、と捉えることで見え方が違ってくる。やはりできないこと、できなくなってしまったことの「置き換え」を、皆さん積極的に考えられていて、その結果として新たな展開、さらに豊かな地域づくりにつながっているということを今日は教えていただいたように思います。

 今日ご参加のみなさん個々のお立場でいろんなヒントを得てくださったのではないかなと思います。そんなみなさんにもう一つ、今みなさんができなくなったことを置き換えてやられていることは、決してコロナの穴埋めではない、新たな地域、さらに豊かな強い地域を作るための種まきになっているんだなという視点をもつことをお願いしたいと思います。もう一度、できていること、できそうなことを振り返っていただけたらなと思います。

 ということで、ちょうど良いお時間になりました。来年また高齢社会フォーラムが開催されると思います。その時には皆さん、1年前の今日のことを、あの日があったから今こんな楽しい、こんな豊かな地域になっているんだなと、みんなで振り返ることができる、そんな種まきをしていただけたらなと思います。

 今日は本当に長いお時間どうもありがとうございました。登壇されたお三方、お忙しい時間の中で貴重な地域の宝を皆さんに発信してくださって、どうもありがとうございました。

第3分科会3_5