第2分科会「高齢社会フォーラム オンライン」

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「世界と一緒に考えよう!アクティブシニアの社会参加」

コーディネーター
松田 智生
(三菱総合研究所未来共創本部 主席研究員/チーフプロデューサー)
パネリスト
パオラ・カヴァリエレ
(大阪大学大学院人間科学研究科 特任准教授)
フランツ・ヴァルデンベルガー
(ドイツ日本研究所 所長)
堀田 一芙
(一般社団法人 熱中学園代表理事)

冒頭挨拶(松田智生氏)

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海外のメディアで日本の高齢社会が特集されるなど、世界一高齢化の進む日本がどこに進もうとしているのか、世界がその動向に注目している。シルバー社会からプラチナ社会への転換など、高齢社会の課題を解決した先進国のモデルが今、日本でも世界でも求められる中、「コロナ」がもたらした課題も含め、イタリア、ドイツ、日本からそれぞれ報告をいただき、後半は目指すべき高齢社会、アクティブシニア像を討議していく。

「『“高齢者だ”という実感』パンデミックがもたらしたイタリアのアクティブエイジング概念の限界」
(パオラ・カヴァリエレ氏)

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「アクティブシニア」という言葉の起源は1999年に遡り、ヨーロッパでは2012年を「アクティブエイジングと世代間の連帯のためのヨーロッパ年」と定めている。アクティブエイジング政策では、高齢者のポテンシャルを高めることが結果として「すべての人の質の高い生活」につながることを目指している。超高齢化社会のイタリアでは、2050年には約4割が高齢者になると予想されているが、2019年にようやく政府と国立衛生研究所などがアクティブエイジングの政策を導入した三カ年行動計画を開始。しかし、その直後にパンデミックが起きたことにより、政府は再び、「高齢者」は社会から隔離して保護すべき脆弱な対象というメッセージを政策を通して送り続けている。それを打破する提案として、「65歳以上は全員高齢者だ」という同質的で固定した概念を取り除き、AnnaLinaのようなアクティブシニアの方が従来行ってきたボランティア活動を参考に、ウィズコロナ時代では高齢者の新しいエンゲージメントの実現に取り組んでほしいと考える。

「世界と一緒に考えよう!アクティブシニアの社会参加」(フランツ・ヴァルデンベルガー氏)

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ドイツは高齢化が進む人口8600万人の国だが日本より人口が分散されており、多くが移民によって構成されているため、人口動態も日本ほど厳しくない。コロナ禍では厳格な禁止措置などが取られたが、特に高齢者への厳しい規制に対して、「個々の事情に配慮せず、一概に高齢者を他の国民と比べて不当に隔絶する措置は、科学的根拠に欠け、極めて単純化された高齢者のステレオタイプに依拠するものであり、一種の年齢差別である」とドイツの老年医学会が懸念も表明した。

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課題を解決するには、会話、宅配、SNSといった高齢者を孤立させない市民のサポートに加え、自治体の実行力も高めていく必要がある。また、アクティブエイジングでは慣れていた生活環境で変化が起きることが問題であり、最も重要なことはその判断を一人でせずとも、家族や友人、地域社会といったコミュニティがサポートできる体制づくり。ドイツは団体王国であり、所属できるサークルがたくさんある。私自身も退職までの5年の間に今後どうするか考えたい。

「知のボランティアによる地方創生 熱中小学校プロジェクトのご紹介」(堀田一芙氏)

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山形県にある廃校を活用して、7年前に「熱中小学校」という大人の学校が開校した。現在は国内に19校、シアトルに1校、平均年齢50歳の18~84歳の生徒が1000人ほど在籍し、社長、教師、シェフなど300人の方が知のボランティアとして講師を引き受けている。コロナになってからは、Zoomを全校に導入し、ハイブリッドでできるようにしたことに加え、事前の先生との会合にも使うようになった。もう一つの特徴は、越境が難しくなったことにより地元の講師を発掘しようという流れができ地元の良さをもう一度見直す機会になっている。コロナ中にはガンプ鈴木くんが北海道から沖縄まで人力車で移動する企画をやり、各地でイベントを行いながら2800km走った。熱中小学校では本心から面白いと思うことをやったり、パスポート制度を使って今まで会ったことがない人と交流し、他力創発で100歳でもキャリアが形成できる。そして、自分はそこでどうやって貢献できるのか、7歳の目で世界を見続けることが可能になる。

パネルディスカッション(全員)

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パオラ氏は、コロナ下でのイタリアの状態は現在普通に戻っているのか、ポストコロナではどう変わるのか、イタリアと日本におけるボランティア活動をする女性の特徴、男女比率に関する質問に対して答えた。フランツ氏は、ドイツの人口が分散しバランスがうまく取れている秘訣、戦後日本とどう違ったのか、政府と自治体と高齢者との役割に関する質問に答えた。堀田氏は、熱中小学校の発想はどこから来たのか、各地の熱中小学校はどのように連携しているか、2800kmを人力車で走ったガンプ鈴木さんを熱中小学校はどれだけ支援していたのかという質問に答えた。

その後、松田氏から新たな高齢者の社会参加モデルとして「逆参勤交代」の紹介があり、各パネリストと、企業や大学やNPOがそれぞれの立場で高齢社会に対してできることを討議した。また多世代の重要性や学校がアクティブシニアの拠点になるのでは、高齢者の定義を見直して高齢社会をもっとよくしていくには、といった議論が展開された。最後に、パオラ氏からは「高齢者という呼び方を変えて正しい言葉を使おう」、フランツ氏から「できないことではなく、できることを集中的に考えよう」、堀田氏から「先ずは楽しいことだけをやりましょう」というメッセージがでた。

総括(松田智生氏)

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コロナ禍だが、ピンチをチャンスに変える逆転の発想が必要であり、世界が知恵を出し、好事例を共有し、多世代で良い社会を創ることが大事。続ける、深める、広めることと、一歩踏み出す勇気が求められている。今日ここに参加した人の一歩が世界にとって大きな一歩となるはずだ。

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