第3分科会「高齢社会フォーラム オンライン」
「コロナ禍から地域コミュニティの底力を磨く:ポイントはオンライン『も』」
- コーディネーター
- 澤岡 詩野
(公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団研究部主任研究員/工学博士/専門社会調査士) - パネリスト
- 齊藤 むつみ
(公益財団法人長野県長寿社会開発センター シニア活動推進コーディネーター) - 中山 浩一
(中野区宮桃町会 会長) - 朝倉 才
(中野区宮桃町会 副会長) - 江口 直子
(地域包括支援センター看護師)
冒頭挨拶(澤岡詩野氏)
デジタルやオンラインの活用はコロナ前から国をあげて様々な動きがあった一方、地域ではあまり進んでいなかった。そんな中、コロナによってそこかしこでオンラインを活用してみようという動きが見られるようになった。オンラインの活用はあくまで「手段」の一つであり、オンラインやデジタルに取り組むことで活動の交流や手段が増えると考えた時、みなさんの活動や地域ではどんなことができるか?本日はそんな視点で各地域にご報告いただく。
「まだまだイケる!オンラインでシニアの可能性が広がる」(齊藤むつみ氏)
長野県の総合五カ年計画重点政策の一つとして長寿社会開発センターでは人生二毛作社会の実現を県と共に行なっている。新型コロナの流行で交流・活動が自粛になる中、大学生とシニアをオンラインでつなぐ案が浮上。シニアの方に問いかけた結果、怖くて不安もあるが実は関心があるとの回答。そんな声を元に、スマートフォンの講座から始まり、Zoomを活用した「ズムチャレ」という講座も開催。できるだけわかりやすい手順書も作成し、長野圏域では現在までに50名弱の方が参加している。また、シニアの方の生きがいや居場所にもなっていた県内の信州型コミュニティスクールと共に子どもたちとのオンライン交流会を企画し、活動だよりでも紹介された。コロナ前からつながりがあったことなど、平時から多様な関係性を築き上げることでそれが非常時に活かされ、課題解決にもつながった。デジタルの活用で直接の交流の大切さを再認識し、今後はオンラインとリアル両方の良さを融合させた新たなつながり方も考えたい。
「宮桃町会ICTの取り組み」(中山浩一氏・朝倉 才氏)
中山 / コロナが発生し、2011年から宮桃町で行ってきた見守り訪問や活動を3ヶ月休止した際に孤独死が発生してしまった。これ以上の孤立化を防ぐため、すぐに訪問や活動を再開し、今は訪問を心待ちにしている方もたくさんいらっしゃる。活動を再開して本当に良かったと思う。
朝倉 / 宮桃町会では東日本大震災をきっかけにGmail(ジーメール)を取得、その後もDropbox(ドロップボックス)の取得、ホームページ開設などのICTを活用しはじめた。また、若い世代にもホームページの存在や活動を知ってもらうために、各種SNSも開設し、コロナがきっかけでZoom(ズーム)のアカウントも取得。
そんな中、毎月開催しているまちなかサロンの
「みやももカフェ」と帰省先の鹿児島県種子島を繋ぎ、旅気分を味わえるよう、ライブ中継も試みた。今やICTの活用は、町会にとって必要不可欠。しかし、ICTばかりに頼るのではなく、状況によってICTもアナログも活用することが重要。今後、支え合い活動など高齢者向けのICTの活用が増えていくに伴って、ICTのノウハウをわかりやすく丁寧に教えられる人材が必要となる。
「地域のつながりを紡ぐ伴走者、コロナ禍で見えてきたこと」(江口直子氏)
地域ケアプラザは、横浜市独自の福祉拠点となる施設で、地域の身近な相談窓口であると同時に、活動、情報提供の場を通して誰もが安心して暮らせる地域づくりに取り組む。緊急事態宣言発令で、ケアプラザや地域の機能停止が起こり、人と繋がることができなくなった。そんな時に操作方法を習得し、Zoomで講座が開催できるようにと指示があり、地域の知識のある人材を頼りにZoom練習会を開始。職員も共に成長していった。その後は講習会だけでなく、認知症サポーター養成をはじめとするさまざまな講座をオンライン開催し、昨年9月にはロバメイトフェスティバルもオンライン開催。当日は土砂降りの雨だったことや、福岡からバンドの生演奏があったり、実行委員もZoom活用により自信を持てた、などオンライン開催が功を奏し、アンケートでも好感触を得た。今後も新しい対話ツールであるZoomを活用しながら、新たな生きがいやつながりづくりの場を創出し、地域の人たちの生活がさらに豊かになることを願う。
パネリスト間の気づきの共有・質問(全員)
パネリスト間の気づきの共有・質問のアーカイブ視聴はこちらから
齊藤氏、宮桃町会、江口氏の順番でお互いに質問や感想を述べあう。齊藤氏からは、若い人からいろいろやってみたいという反響はあったかどうか、オンラインができる方をどのようにして発掘したのかという質問、中山氏からはつなぎ役が大事でつなぎ手を増やさなければならないという気づきの共有、朝倉氏からはZoomを具体的にどうやって高齢者に教えたのかという質問、江口氏からはやりがいを感じながら取り組むことで生き生きと健康寿命も延びる地域になるということや、命を守るためにつながることを諦めないという気づきの共有、最後に澤岡氏から全員へ向けて、各取り組みでどんな人が最初に巻き込む相手として適しているかという質問があった。
まとめの言葉(澤岡詩野氏)
各報告からどんなヒントを見つけたか、さらに2点視点を投げかけたい。一つ目は「勉強になったが、うちでは難しい」で終わらないでほしい。つぶやくことで新しい人材が現れることもある。二つ目は、オンライン活用をコロナを乗り越えるためではなく、数年後を見据えた種まきとしてみること。今までは歳を重ねるにともなって孤立化を辿る道が、オンライン「も」という手段で、緩やかにつながり続けることが可能になる。万能な道具ではないが、地域を豊かに強くしてくれる手段となれるかもしれない。オンライン活用で自分の地域の未来をどう豊かにしていけるかを一緒に考えるきっかけになることを願っている。