高齢社会対策は,就業・所得,健康・福祉,学習・社会参加,生活環境,調査研究等の推進の各分野にわたり着実に実施する。
一般会計予算における平成10年度の高齢社会対策の関係予算は,9兆 846億円であり,各分野別では,就業・所得4兆 4,078億円,健康・福祉4兆 5,395億円,学習・社会参加 591億円,生活環境 402億円,調査研究等の推進 380億円となっている。
高齢社会対策は,高齢社会対策大綱の基本的考え方に基づいて,策定し,各分野にわたる施策の展開を図る。
大綱の基本的考え方が特に反映されている施策として,平成10年度の新規施策を挙げれば,次のとおりである。
「高齢者の自立,参加及び選択の重視」については,地域住民として充実した生活を送るための地域リハビリテーション支援体制整備推進事業等がある。
「国民の生涯にわたる施策の体系的な展開」については,総合的かつ包括的な国民の健康づくりのための「健康日本21(仮称)」計画を策定するための検討事業等がある。
「地域の自主性の尊重」及び「施策の効果的推進」については,民間非営利組織等の積極的な参加により訪問介護(ホームヘルプサービス)を提供する事業を試行的に行う「都市部等住民参加型在宅保健福祉サービス推進試行的事業」等がある。
「関係行政機関の連携」については,健康福祉の観点からの都市づくりを推進するための健康福祉公園都市づくり促進事業等がある。
「医療・福祉,情報通信等に係る科学技術の活用」については,PHS等簡易無線端末を活用した高齢者等の公共交通機関の利用支援システムの開発,高齢者等が情報通信の利便を享受できる「情報バリアフリー」環境の整備のための研究開発等がある。
国際連合により,1999年(平成11年)が国際高齢者年とされていることからも,高齢者及び高齢社会に関する理解の促進等を図る。
65歳までの継続雇用を推進するため,継続雇用制度の導入又は改善に関する計画の作成指示,計画の適正実施勧告など事業主に対する指導や相談援助を行うとともに,各種の高齢者雇用関係助成金の活用により継続雇用の促進を図る。
能力開発給付金の支給等による企業における計画的な職業能力開発の推進,中高年齢労働者等受講奨励金の支給による個人の自発的な職業能力開発の推進などにより,労働者自身あるいは企業を通じての職業能力開発を推進する。
男女共同参画推進本部において,平成8年12月に決定された「男女共同参画2000年プラン」に基づき,女性労働者の能力の活用を始めとした男女共同参画社会の形成を目指した施策を総合的に推進する。
公的年金制度については,将来の負担が過重なものとならないよう給付と負担の適正化,公私の年金の適切な組合せ等制度全体の見直しを行うこととし,平成11年の財政再計算に向け,年金審議会における検討を引き続き進める。
壮年期からの健康づくりについては,老人保健法に基づく保健事業を着実に推進するため,保健事業第3次計画に従い,健康診査,機能訓練,訪問指導の充実等を総合的に推進する。
高齢者の保健・医療・福祉サービスについては,新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)(大蔵・厚生・自治3大臣合意)に基づき総合的に推進する。
各種の介護サービスの量的な充実,質的な向上を図るため,訪問介護員(ホームヘルパー),寮母・介護職員,看護職員等,OT(作業療法士)・PT(理学療法士)等の高齢者介護マンパワーを確保し,その資質を向上させる。
介護保険制度の円滑な導入に向けて,介護保険法に基づき市町村が策定する介護保険事業計画の作成準備に要する経費の補助等を行う。
民間事業者等の創意工夫をいかし,民間事業者による健康・福祉サービスを積極的に活用する。
「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(エンゼルプラン,文部・厚生・労働・建設4大臣合意)に基づき,子育て支援施策を総合的・計画的に推進する。
地方公共団体における生涯学習担当部局,都道府県生涯学習審議会, 生涯学習推進会議の設置を促進する。
生涯学習情報提供体制整備事業として,生涯学習情報の全国的な提供体制を国立教育会館に整備するとともに,都道府県段階において,コンピュータ等を活用して各種の学習機会に関する情報を適切に提供し,学習の内容や方法について助言・援助する体制の整備を推進する。
放送大学においては,衛星放送を含めテレビ・ラジオの放送を利用して大学教育の機会を提供する。
社会教育施設や教育委員会が開設する各種の学級・講座を始め,地域住民の多様な社会教育活動を総合的に推進するため,市町村が実施する地域社会教育活動総合事業に対し補助を行う。
地域において,ボランティア活動などを始めとする社会参加活動を総合的に実施している老人クラブに対し助成を行う。
ボランティア活動入門講座の開催,情報誌の発行,登録・あっせん・相談等を行う市区町村ボランティアセンター活動事業,地域の特性に見合ったきめ細かな福祉サ−ビスが効率的,総合的に提供される体制をつくる地域福祉総合推進事業(ふれあいのまちづくり事業)に対し補助を行う。
公営住宅については,老人世帯向公営住宅の供給を行うとともに,50歳以上の者の単身入居を認める。また,公団賃貸住宅においては,高齢者同居世帯等に対する入居又は住宅変更における優遇措置を行う。
住宅金融公庫においては,高齢者に対応した構造・仕様等をあらかじめ備えた住宅に対して割増貸付けを行うとともに,高齢者用の設備設置を行う場合に割増貸付けを実施する。また,平成10年度においては,高齢者向け優良賃貸住宅制度を創設する。
市町村の総合的な高齢者住宅施策の下,シルバーハウジング・プロジェクト事業を推進する。
鉄道駅,旅客船・空港ターミナルにおけるエレベーター・エスカレーター等の施設整備を促進するとともに,乗合バス事業者が行うノンステップバス等の導入を促進する。また,新たに,PHS等簡易無線端末を活用した交通ターミナル内での案内サービス,自動警報など,高齢者等の公共交通機関の利用を支援するシステムの開発を行う。
病院,百貨店,銀行等の不特定多数の人が利用する特定建築物のバリアフリー化を推進する。官庁施設については,身体障害者対応エレベーター,スロープ,視覚障害者用ブロックの整備など高齢者等に配慮した改修等を推進する。
市街地再開発事業,土地区画整理事業等における社会福祉施設等の円滑な導入のための補助を行う。また,福祉・医療施設と一体となった公園の整備等を推進する。
第6次交通安全基本計画等に基づき,高齢者への交通安全意識の普及徹底,高齢者等が安心してくらせる道路環境づくり,高齢者の安全運転対策等を推進する。
高齢者を犯罪や事故から保護するため,交番,駐在所の警察官を中心に,巡回連絡等を通じて高齢者宅を訪問するなどの施策を推進する。
病院,老人ホーム等の施設を守る土砂災害対策の重点的な実施,高齢化率の特に高い地域等が激甚な水害,土砂災害を受けた場合の再度災害防止を図る。
快適な都市環境の形成のため,都市公園等の整備を行う。また,活力ある農山漁村の形成については,平成10年度において新たに高福祉漁村づくりを推進する。
痴呆疾患,骨粗しょう症等の高齢者に特有の疾病については,長寿科学総合研究事業等において調査研究を進める。
福祉用具及び医療機器については,医療や福祉に対するニーズの高い研究開発を効率的に実施するためのプロジェクトの推進,多分野にわたる福祉機器技術開発の横断的基盤技術の研究の強化等を行う。
老人性痴呆の研究等については,長寿医療研究センター等において推進する。
国立大学等においては,老化等の長寿関連の研究を行うほか,科学研究費補助金等により大学等の研究者に対し研究費等の補助を行う。