第3節 分野別の施策の実施の状況
1 就業・所得
○ 少なくとも65歳までの雇用の場を確保する企業の割合は、平成14年1月現在で68.3%と高い割合を示しているが、希望者全員を対象として65歳までの雇用を確保する企業の割合は27.1%にとどまっている(図2−3−1)。
図2−3−1 65歳までの雇用を確保する企業割合
○ 平成14年度においては、公共職業安定所が事業主に対して、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の指導を行う場合に、都道府県高年齢者雇用開発協会の高年齢者雇用アドバイザーが同行又はフォローアップ相談を行うなど、各都道府県労働局と同協会とが密接に連携を図り、効率的かつ効果的な指導・援助等を実施している。
○ 高年齢雇用継続給付については、失業者の給付とのバランスを図るため、給付率等の見直しを行うことを内容とする雇用保険法等の一部を改正する法律案を第156回国会に提出した。
○ 平成13年10月に施行された改正雇用対策法(昭和41年法律第132号)に、募集・採用時の年齢制限緩和の努力義務が規定されたことに伴い、その実効をあげるため、官民の職業紹介機関の窓口や、中央・地方の経済団体、地方自治体及びマスメディアへの働きかけ等を通じ、事業主への周知と理解の徹底を図っている。
○ 年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向け、平成13年4月より「年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議」において雇用システムの在り方や採用から退職までの条件整備の在り方について幅広く意見交換を行い、15年1月に最終報告書を取りまとめた。
○ 平成13年5月に策定された「第7次職業能力開発基本計画」(計画期間:13〜17年度)を踏まえ、雇用・能力開発機構都道府県センターにおけるキャリア形成支援コーナーの運営、キャリア・コンサルティングを担う人材の養成、個々の労働者のキャリア形成を支援する事業主に対して、キャリア形成促進助成金の支給等を行った。
○ 平成13年11月に、労働者の仕事と家庭の両立の負担を軽減するため、時間外労働の制限等を内容とする育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第118号)が成立し、14年4月から全面的に施行された。同法に基づき、労働者の仕事と育児・介護との両立を支援する施策を推進している。
○ 公的年金制度の基本的な考え方や重要性について、年金週間(11月6〜12日)等において、その広報、普及を図ると共に、特に、国民年金については、平成14年度から保険料収納事務が市町村から国へと移管されたことを契機として、電話や戸別訪問による納付督励の実施等徹底した保険料収納対策を講じている。
○ 少子高齢化の急速な進行等の状況の変化に対応して、将来にわたって持続可能で安心できる制度を確立するため、平成16年に行うこととなっている次期財政再計算に向けて、社会保障審議会年金部会等において、制度全般にわたる検討を行っており、14年12月には、それまでの議論を参考に、改革に向けた今後の議論のたたき台として、厚生労働省において「年金改革の骨格に関する方向性と論点」を取りまとめ、公表した。
○ 年金額等は前年の物価の変動に合わせて改定を行うこととなっているが、物価が下落した平成12年度からの3年間は特例措置に基づいて据え置かれた。しかし、14年についても消費者物価指数が対前年比マイナス0.9%となったことに加え、15年度においては、年金額等を据え置いた過去3年とは異なり現役世代の賃金の低下傾向が明らかとなっている中で、保険料を負担する現役世代との均衡の観点から、15年度の年金の額等については物価スライドを実施することとし、法令どおりの取扱いであれば15年度の年金額等は、過去3年分と合わせてマイナス2.6%の改定となるが、高齢者の生活に配慮しつつ、14年分の物価指数の下落分のみの改定を行うこととした。この特例措置の実施のため、平成十五年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例に関する法律(平成15年法律第19号)が成立した。
○ 平成14年6月より、雇用と年金に関する論点について、「雇用と年金に関する研究会」を開催し、労働経済を始めとする専門的な観点から、短時間労働者等への厚生年金の適用拡大や在職老齢年金制度の在り方等について検討を行った。15年3月には報告書「多様な働き方に対応できる中立的な年金制度を目指して」を取りまとめており、短時間労働者に対する厚生年金の適用については、就労形態の多様化等に対応し、被用者としての年金保障の充実等を図る観点から、適用を拡大する方向で検討を進める必要があるとしている。
○ 「公的年金制度の一元化の推進について」(平成13年3月閣議決定)にのっとり、厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律(平成13年法律第101号)が制定され、平成14年4月に農林漁業団体職員共済組合は厚生年金保険に統合された。
○ 平成14年4月には、確定給付企業年金法(平成13年法律第50号)が施行され、厚生年金給付を代行しない企業独自の年金のみの「確定給付企業年金」が新たな選択肢として加わった。なお、同法により、一定期間経過後に適格退職年金が廃止され、確定給付企業年金等に移行すると共に、厚生年金基金の代行返上も可能となることとなった。
○ 平成14年に、都道府県社会福祉協議会において、所有する住居に将来にわたり住み続けることを希望する低所得の高齢者世帯に対し、当該不動産を担保として生活資金の貸付を行う長期生活支援資金貸付制度を創設した。
○ 高齢者の財産管理の支援等に資する痴呆性高齢者等の権利擁護のための成年後見制度について周知を図っている。