第2章 高齢社会対策の実施の状況 

(3)公的年金制度の安定的運営

ア 持続可能で安定的な公的年金制度の確立

 我が国の公的年金制度は、「一階部分」の国民年金(基礎年金)と「二階部分」の厚生年金保険、共済年金からなる「二階建て」の構成をとっている。国民年金(基礎年金)は、20歳以上の全国民が加入する制度であり、基礎的な給付を行うものである。被用者が加入する厚生年金保険、共済年金は、国民年金(基礎年金)に上乗せして報酬比例の年金給付を行うものである。厚生年金保険は、広く各産業分野の被用者が加入するが、共済年金は、国家公務員、地方公務員、私立学校教職員の職域ごとに3制度が並立している(図2−3−8)。

 
図2−3−8 年金制度の体系

図2−3−8年金制度の体系

 我が国の公的年金制度は、年金を受給する高齢者世代をサラリーマンや自営業者等の現役世代が支える世代間扶養の仕組みを基本としており、こうした仕組みをとることによって、長期間にわたる賃金や物価の上昇等の社会経済の変動に対応した年金給付を行うことが可能になる。
 こうした公的年金制度の基本的な考え方や重要性について、年金週間(11月6〜12日)等において、その広報、普及を図ると共に、特に、国民年金については、平成14年度から保険料収納事務が市町村から国へと移管されたことを契機として、電話や戸別訪問による納付督励の実施等徹底した保険料収納対策を講じている。
 また、少子高齢化の急速な進行等の状況の変化に対応して、将来にわたって持続可能で安心できる制度を確立するため、平成16年に行うこととなっている次期財政再計算に向けて、社会保障審議会年金部会等において、制度全般にわたる検討を行っており、14年12月には、それまでの議論を参考に、改革に向けた今後の議論のたたき台として、厚生労働省において「年金改革の骨格に関する方向性と論点」を取りまとめ、公表した(図2−3−9)。

 
図2−3−9 年金改革の骨格に関する方向性と論点について

図2−3−9年金改革の骨格に関する方向性と論点について

 年金額等は前年の物価の変動に合わせて改定を行うこととなっているが、物価が下落した平成12年度からの3年間は特例措置に基づいて据え置かれた。しかし、14年についても消費者物価指数が対前年比マイナス0.9%となったことに加え、15年度においては、年金額等を据え置いた過去3年とは異なり現役世代の賃金の低下傾向が明らかとなっている中で、保険料を負担する現役世代との均衡の観点から、15年度の年金の額等については物価スライドを実施することとし、法令どおりの取扱いであれば15年度の年金額等は、過去3年分と合わせてマイナス2.6%の改定となるが、高齢者の生活に配慮しつつ、14年分の物価指数の下落分のみの改定を行うこととした。この特例措置の実施のため、平成15年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例に関する法律(平成15年法律第19号)が成立した。

 

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