第2章 高齢社会対策の実施の状況 

(3)公的年金制度の安定的運営

ア 持続可能で安定的な公的年金制度の確立

 我が国の公的年金制度は、年金を受給する高齢者世代をサラリーマンや自営業者等の現役世代が支える世代間扶養の仕組みを基本としており、国民生活において欠くことのできないものとなっている。
 こうした公的年金制度の基本的な考え方や重要性について、年金週間(11月6〜12日)等において、その広報、普及を図るとともに、特に、国民年金については、平成15年度から十分な所得が有りながら度重なる納付督励によっても理解が得られない未納者に対しては強制徴収を実施することなど徹底した保険料収納対策を講じている。
 また、少子高齢化の急速な進行が予測される中で、将来にわたって持続可能な安心できる制度を確立するための制度改革が急務の課題となっている。平成15年度においては、まず9月に、給付と負担に関する課題について、厚生労働大臣が試案を公表するとともに、社会保障審議会年金部会においては、それまでの1年半以上にわたる議論が「年金制度改正に関する意見」として取りまとめられた。これらを踏まえ、11月には、厚生労働省において、「持続可能な安心できる年金制度の構築に向けて(厚生労働省案)」を取りまとめ、公表した。これを受けて、政府・与党で議論が進められ、16年2月に、1)保険料水準の上昇を抑え、その水準を18.3%に固定するとともに、この範囲内で年金を支える力に対応して、給付水準を調整する仕組みを導入すること、2)将来的にも、給付水準は、現役世代の平均的収入の50%を上回る水準を確保すること、3)前回の制度改正で課題として残されていた基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げへの道筋を明確に示すこと(16年度着手、21年度までに完全引上げ)などを内容とした国民年金法等の一部を改正する法律案を、第159回国会に提出した(図2−3−8)。

図2−3−8 年金制度改正案の概要

図2−3−8 年金制度改正案の概要

 年金額等については、物価の変動に応じて自動的に額を改定することとなっているが、物価が下落した平成12年度からの3年間は特例措置に基づいて据え置かれ、15年度においては、本来であれば過去3年分と合わせてマイナス2.6%の改定を行うところを、14年分の消費者物価の下落分(マイナス0.9%)のみの改定を行った。
 平成16年度の年金額においても、15年度の物価スライドと同様、現役世代の賃金が低下している中で、保険料を負担する現役世代との均衡の観点から、高齢者の生活に配慮しつつ、特例として15年の消費者物価の下落分(マイナス0.3%)のみの年金額等の改定を行うこととし、この特例措置の実施のため、平成16年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例に関する法律案を第159回国会に提出した。

 

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