第2章 高齢社会対策の実施の状況(第3節 1(2))

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第3節 分野別の施策の実施の状況

1 就業・所得

(2)勤労者の生涯を通じた能力の発揮

ア 勤労者の職業生活の全期間を通じた能力の開発

労働者が職業生活の全期間を通じて職業能力を有効に発揮するには、労働者個人が、職業生活の節目ごとに職業生活設計を考え、それに即したキャリア形成を含む職業能力開発ができるよう社会的な仕組みを構築していくことが必要である。

こうした考えの下、平成13年5月に「第7次職業能力開発基本計画」(計画期間:13~17年度)が策定され、職業能力のミスマッチの拡大に対応する観点から、労働市場が的確に機能するためのインフラストラクチャーの整備等を推進してきたところである。17年度は同計画を踏まえ、雇用・能力開発機構都道府県センターにおけるキャリア形成支援コーナーの運営、キャリア・コンサルティングを担う人材の養成、個々の労働者のキャリア形成を支援する事業主に対して、キャリア形成促進助成金の支給等を行った。

また、教育訓練給付制度の講座指定の見直し、大学・大学院等における委託訓練の実施を含む公共職業訓練の推進等、多様な教育訓練機会の確保、創出、幅広い職種を対象とした職業能力評価基準の策定に努めるとともに、職業能力に関する情報に容易にアクセスでき、入手できるポータルサイト「キャリア情報ナビ」(http://hrd.mhlw.go.jp)の運用を開始した。

公共職業訓練においても、中高齢者も対象に訓練を実施している。

企業退職後の就労-工場からケーキ店へ

イ ゆとりある職業生活の実現等

勤労者が、職業生活と家庭や地域における生活とを調和させつつ、生涯にわたってその能力を有効に発揮するためには、心身の健康を保ちつつ、仕事のための時間と家庭・地域・学習などのための時間を様々に組み合わせ、バランスのとれた働き方を選択できる環境を整備していくことが重要である。

このため、これまでの全労働者一律の計画的な労働時間の短縮を図る法律である「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」(平成4年法律第90号)を、単に労働時間短縮を図るためだけでなく、労働時間、休日、休暇等の設定を個々の労働者の健康と生活に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものに改善するための法律である「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」(平成4年法律第90号)へと改正したところである(図2-3-4)。

図2-3-4 時短促進法から労働時間等設定改善法への改正

また、勤労者が仕事を離れてボランティア活動に参加することにより、仕事、生活、地域のバランスをとれた勤労者生活を図ることを目的として、経営者団体、社会福祉協議会及びNPO・ボランティア支援団体の連携の下、勤労者がボランティア活動へ参加するきっかけづくりを行い、勤労者マルチライフ支援事業を12道県において実施し、インターネットによる情報提供、ボランティア活動体験プログラム等の実施、勤労者や企業に対する啓発活動を行っている。

ウ 雇用・就業における女性の能力発揮

全雇用者に占める女性雇用者の割合は上昇しており、女性の労働市場への進出が進んでいる(図2-3-5)。

図2-3-5 全雇用者に占める女性雇用者の割合

我が国の人口が減少局面に入りつつある中、労働者が性別により差別されることなく、かつ、母性を尊重されつつ、能力を十分に発揮できる雇用環境を整備することが以前にも増して重要となっている。また、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和47年法律第113号。以下「男女雇用機会均等法」という。)が施行されてから本年が20年目に当たり、平成9年に改正されてから10年近くが経過していることから、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止や、女性の坑内労働に対する規制の緩和などを内容とする「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案」を第164回国会に提出した。

また、男女雇用機会均等法の趣旨に沿った雇用管理が行われるよう、同法の周知徹底、企業への積極的な指導及び女性労働者と事業主との間の個別紛争の解決援助を行うとともに、女性の能力発揮促進のための企業の積極的取組(ポジティブ・アクション)を促進することにより、男女雇用機会均等確保対策を推進している。

さらに、「男女共同参画基本計画(第2次)」を平成17年12月に閣議決定し、男女共同参画の観点からも、高齢者が長年培った技能、経験等を活用し、意欲と能力に応じて働き続けることができる社会の実現のための施策を推進することとしている。

また、「食料・農業・農村基本計画」(平成17年3月閣議決定)等を踏まえ、女性が対等なパートナーとして、生涯を通じて、男性と共に農林水産業経営及びそれに関連する活動に参画していくことのできる社会の実現に向けた施策を推進した。

エ 職業生活と家庭生活との両立支援対策の推進

(ア)職業生活と家庭生活との両立のための制度の一層の定着促進

労働者が生涯を通じて充実した職業生活を送るためには、家庭生活との両立を図ることのできる環境を整備することが重要である。

育児休業制度等をより利用しやすい仕組みとするため、育児休業・介護休業の対象労働者の拡大、育児休業期間の延長や介護休業の取得回数制限の緩和等を内容とする「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律等の一部を改正する法律」(平成16年法律第160号。以下「改正育児・介護休業法」という。)が平成16年12月に成立し、17年4月から施行されている(表2-3-6)。

表2-3-6  育児・介護休業法の概要
 
1 育児休業制度
○労働者(日々雇用される者を除く。以下同様。)は、その事業主に申し出ることにより、子が1歳に達するまでの間(子が1歳を超えても休業が必要と認められる一定の場合には、子が1歳6か月に達するまで)、育児休業をすることができる。
 
2 介護休業制度
○労働者は、その事業主に申し出ることにより、対象家族1人につき、常時介護を必要とする状態に至るごとに1回、通算して93日まで、介護休業をすることができる。
 
3 子の看護休暇制度
○小学校入学までの子を養育する労働者は、1年に5日まで、病気・けがをした子の看護のために、休暇を取得することができる。
 
4 時間外労働の制限
○事業主は、小学校入学までの子を養育し、又は常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護を行う労働者が請求した場合においては、1か月24時間、1年150時間を超えて時間外労働をさせてはならない。
 
5 深夜業の制限
○事業主は、小学校入学までの子を養育し、又は常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護を行う労働者が請求した場合においては、深夜において労働させてはならない。
 
6 勤務時間の短縮等の措置
○事業主は、1歳(子が1歳6か月に達するまで育児休業をすることができる場合にあっては、1歳6か月)に満たない子を養育し、又は常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護を行う労働者で育児・介護休業をしない者については、次のいずれかの措置を、1歳(子が1歳6か月に達するまで育児休業をすることができる場合にあっては、1歳6か月)から3歳に達するまでの子を養育する労働者については、育児休業に準ずる措置又は次のいずれかの措置を講じなければならない。
・短時間勤務制度、フレックスタイム制、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、
・所定外労働の免除(育児のみ)、託児施設の設置運営(育児のみ)、
・育児・介護費用の援助措置
 
7 転勤についての配慮
○事業主は、労働者の転勤については、その育児又は介護の状況に配慮しなければならない。
 
資料:厚生労働省

改正育児・介護休業法の周知徹底を図るとともに、企業において改正を踏まえた規定整備が適切に行われるよう指導を行っている。また、労働者の権利が侵害されている事案について、労働者から相談があった場合は適切に対応している。

(イ)職業生活と家庭生活との両立支援事業

職業生活と家庭生活との両立支援事業として、育児や介護を行う労働者が働き続けやすい環境整備を推進するため、助成金の支給による事業主への支援や相談・情報提供による労働者への支援(フレー・フレーテレフォン事業)の実施、ファミリー・フレンドリー企業の普及促進、育児、介護等のために退職した者等に対する再就職支援等を行っている(表2-3-7)。

表2-3-7 労働者の職業生活と家庭生活との両立支援対策
 
 1 育児休業・介護休業を取得しやすく職場復帰しやすい環境の整備
(1) 育児休業制度・介護休業制度の定着の促進
育児休業制度・介護休業制度の定着に向けた相談・指導を行う。
(2) 育児休業給付の支給
育児休業取得者に対し、育児休業取得前の賃金額の40%相当額を支給する。
(3) 介護休業給付の支給
介護休業取得者に対し、介護休業取得前の賃金額の40%相当額を支給する。
(4) 男性労働者育児参加促進給付金(育児・介護雇用安定等助成金)
男性の育児休業取得を促進するなど、男性の育児参加を可能とするような職場づくりに向けた取組を行う事業主に対し、助成金を支給する。
(5) 育児休業代替要員確保等助成金(育児・介護雇用安定等助成金)
育児休業取得者の代替要員を確保し、かつ、育児休業取得者を原職又は原職相当職に復帰させた事業主に対し、一定額の助成金を支給する。
(6) 育児・介護休業者職場復帰プログラム実施奨励金(育児・介護雇用安定等助成金)
育児・介護休業取得者の円滑な職場復帰のためのプログラムを実施した事業主に対し、奨励金を支給する。
 2 育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい環境の整備
(1) 育児・介護費用助成金(育児・介護雇用安定等助成金)
従業員の育児・介護サービス利用料を補助する事業主に対し、助成金を支給する。
(2) 事業所内託児施設助成金(育児・介護雇用安定等助成金)
事業所内託児施設を設置・整備する事業主に対し、助成金を支給する。
(3) 育児両立支援奨励金(育児・介護雇用安定等助成金)
短時間勤務制度やフレックスタイム制等小学校就学前の子を養育する労働者が育児のために必要な時間を確保しやすい柔軟な働き方ができる制度を設けた事業主に対して支給する。
(4) ファミリー・サポート・センター事業
児童の預かり等の援助を受けることを希望する者と当該援助を行うことを希望する者との相互援助活動を実施している市区町村に対し、支援を行っている。
(5) 緊急サポートネットワーク事業
子どもの突発的な病気等、子育て中の労働者の育児等に係る緊急のニーズに対応し、スタッフを登録、あっ旋する緊急サポートネットワーク事業を展開している。
(6) フレーフレー・テレフォン事業
育児、介護等のサービスに関し、電話等により、相談を受けるとともに、地域の具体的情報を提供する。
(7) ファミリー・フレンドリー企業普及促進事業
仕事と育児・介護とが両立できる様々な制度を持ち、多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組を行うファミリー・フレンドリー企業に対する表彰の実施等、ファミリー・フレンドリー企業の普及促進を図る事業を総合的に行う。
 3 育児、介護等のために退職した者に対する再就職支援
(1) 両立支援ハローワーク
両立支援ハローワークを東京、大阪等全国12都市に設置し、各種の就職支援事業により育児・介護等の負担のためにすぐには就職できない方々等の再就職を支援する。
(2) 公共職業訓練
退職された方々の円滑な再就職を目的として、公共職業能力開発施設等において、職業訓練を実施する。
(3) 再就職希望登録者支援事業
育児、介護等のために退職し、将来的に再就職を希望する者に対し、キャリアコンサルティングの実施、セミナーの実施、情報提供等の援助を行う。
 
資料:厚生労働省

オ 多様な勤務形態の環境整備

(ア)多様な働き方を選択できる環境の整備

高齢者を含む労働者の就業ニーズの多様化への対応として、パートタイム労働対策については、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(平成5年法律第76号)に基づく指針(パートタイム労働指針)において示された、正社員とパートタイム労働者との均衡を考慮した処遇(均衡処遇)の考え方の浸透・定着を図るとともに、パートタイム労働者の処遇改善に取り組む事業主への支援等を実施している。

(イ)情報通信を活用した遠隔型勤務形態の開発・普及

テレワーク(情報通信技術を活用して、場所と時間を自由に使った柔軟な働き方:自宅やサテライトオフィスでの勤務等)が実現すれば、自宅等での勤務ができることから、高齢者にとって、通勤負担の軽減など身体的負担の少ない形態での就労が可能となる。また、退職後に、故郷等に移転する場合においても、テレワークによって専門能力を活用した就労が可能となる。これらのことからテレワークは、高齢者の就業機会の拡大及び高齢者の積極的な社会への参画を促進するための有効な手段となっている。

このような観点から、テレワークの普及を図るため、企業のテレワーク導入・運用を支援するための手引書として「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」を平成17年8月に公表した。また、同年11月には、産学官からなる「テレワーク推進フォーラム」を設立し、課題解決のための調査研究や普及活動を展開した。

また、企業や地域へテレワークを普及する観点からテレワーク推進上の課題把握、必要な支援方策の検討、推進方策の取りまとめ等を行った。

さらに、在宅勤務の適切な労務管理の在り方を明確にしたガイドラインの周知・啓発を行うとともに、テレワークシンポジウムの開催やテレワーク相談センターでの相談活動等により、テレワークの適正な就業環境の下で普及を図っている。

また、非雇用で、情報通信機器を活用し、個人が自営的に働く在宅就業については、在宅就業者の仕事の確保等に重要な役割を果たしている仲介機関に関する情報を収集・提供するシステムの運用等を行っている。

また、総務省等において、職員によるテレワークの試行を実施した。試行においては、円滑な情報共有や勤務管理面等での課題を整理した。

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