第1章 第2節 3 (1)高齢者の健康

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第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向

3 高齢者の健康・福祉

(1)高齢者の健康

ア 高齢者の半数近くが何らかの自覚症状を訴えているが、日常生活に影響がある人は5分の1程度

65歳以上の高齢者の健康状態についてみると、平成22(2010)年における有訴者率(人口1,000人当たりの「ここ数日、病気やけが等で自覚症状のある者(入院者を除く)」の数)は471.1と半数近くの人が何らかの自覚症状を訴えている。

一方、65歳以上の高齢者の日常生活に影響のある者率(人口1,000人当たりの「現在、健康上の問題で、日常生活動作、外出、仕事、家事、学業、運動等に影響のある者(入院者を除く)」の数)は、22(2010)年において209.0と、有訴者率と比べると半分以下になっている。これを年齢階級別、男女別にみると、年齢層が高いほど上昇し、また、70歳代後半以降の年齢層において女性が男性を上回っている(図1-2-3-1)。

この日常生活への影響を内容別にみると、高齢者では、「日常生活動作」(起床、衣服着脱、食事、入浴など)が人口1,000人当たり100.6、「外出」が同90.5と高くなっており、次いで「仕事・家事・学業」が同79.6、「運動(スポーツを含む)」が同64.5となっている(図1-2-3-2)。

また、現在の健康状態に関する意識を年齢階級別にみてみると、高齢になるにしたがって、健康状態が「よい」、「まあよい」とする人の割合が下がり、「よくない」、「あまりよくない」とする人の割合が上がる傾向にある(図1-2-3-3)。

イ 健康寿命が延びているが、平均寿命に比べて延びが小さい

日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、平成22(2010)年時点で男性が70.42年、女性が73.62年となっており、それぞれ13(2001)年と比べて延びている。しかし、13(2001)年から22(2010)年までの健康寿命の延び(男性1.02年、女性0.97年)は、同期間における平均寿命の延び(男性1.57年、女性1.46年)と比べて小さくなっており、22(2010)年における平均寿命と健康寿命の差は男女とも13(2001)年と比べて広がった(図1-2-3-4)。

また、健康についての高齢者の意識を、韓国、アメリカ、ドイツ及びスウェーデンの4カ国と比較してみると、60歳以上で「健康である」と考えている人の割合は、日本は65.4%でスウェーデン(68.5%)に次いで高い結果となっており、以下、アメリカ(61.2%)、韓国(43.2%)、ドイツ(33.5%)の順となっている(図1-2-3-5)。

ウ 高齢者の受療率は他の年代より高く、国際的にみても高齢者が医療サービスを利用する頻度は高い

65歳以上の受療率(高齢者人口10万人当たりの推計患者数の割合)は、平成20(2008)年において、入院が3,301、外来が10,904となっており、他の年齢階級に比べて高い水準にあるが、近年は減少傾向である(図1-2-3-6)。

図1-2-3-6 年齢階級別にみた受療率の推移

65歳以上の高齢者の受療率が高い主な傷病をみると、入院では、「脳血管疾患」(男性555、女性653)、「悪性新生物(がん)」(男性473、女性236)となっている。外来では、「高血圧性疾患」(男性1,293、女性1,706)、「脊柱障害」(男性1,125、女性1,126)となっている(表1-2-3-7)。

表1-2-3-7 主な傷病別にみた受療率(人口10万対)
 
65歳以上 65~69歳 70~74歳 75歳以上 65歳以上 65~69歳 70~74歳 75歳以上
入院 総数 3,186 1,865 2,526 4,630 3,387 1,291 1,924 5,120
悪性新生物 473 337 458 588 236 170 203 286
高血圧性疾患 15 5 6 28 39 4 8 71
心疾患(高血圧性のものを除く) 164 76 118 261 184 36 60 317
脳血管疾患 555 250 396 893 653 130 252 1,103
外来 総数 10,484 8,031 10,826 12,156 11,218 9,024 12,001 11,981
悪性新生物 484 340 493 589 234 227 254 228
高血圧性疾患 1,293 956 1,287 1,556 1,706 1,101 1,562 2,080
心疾患(高血圧性のものを除く) 406 245 368 555 316 144 237 439
脳血管疾患 376 218 346 517 315 129 248 440
脊柱障害 1,125 677 1,162 1,445 1,126 775 1,272 1,238
資料:厚生労働省「患者調査」(平成20年)より作成

高齢者の死因となった疾病をみると、死亡率(高齢者人口10万人当たりに対する死亡者数の割合)は、平成22(2010)年において、「悪性新生物(がん)」が967.5と最も高く、次いで「心疾患」576.8、「肺炎」391.2の順になっており、これら3つの疾病で高齢者の死因の約6割を占めている(図1-2-3-8)。

図1-2-3-8 65歳以上の高齢者の主な死因別死亡率の推移

国民の死亡場所の構成割合の推移をみると、昭和26(1951)年の時点では「自宅」が82.5%を占めていたが、平成22(2010)年には「病院」が77.9%を占め、「自宅」は12.6%にまで低下している(図1-2-3-9)。

図1-2-3-9 死亡場所の構成割合の推移

60歳以上の医療サービスの利用状況について、韓国、アメリカ、ドイツ及びスウェーデンの4か国と比較すると、日本は「ほぼ毎日」から「月に1回くらい」までの割合の合計が61.6%で最も高くなっている(図1-2-3-10)。

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