第1章 第3節「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会報告書
~尊厳ある自立と支え合いを目指して~」について
第3節 「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会報告書~尊厳ある自立と支え合いを目指して~」について
平成23(2011)年10月14日、内閣総理大臣を会長とする「高齢社会対策会議」が開催され、新しい高齢社会対策大綱の検討を開始する方針が示された。本方針に基づき、23(2011)年10月21日から24(2012)年2月23日にかけて5回にわたり開催された「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」(座長;清家篤慶應義塾長)で報告書(「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会報告書~尊厳ある自立と支え合いを目指して~」)がとりまとめられた。
本報告書では、世界に前例のない速さで高齢化が進み、世界最高水準の高齢化率となり、どの国もこれまで経験したことのない超高齢社会を迎えた我が国においては、これまでの「人生65年時代」を前提とした高齢者の捉え方についての意識改革をはじめ、働き方や社会参加、地域におけるコミュニティや生活環境の在り方、高齢期に向けた備え等を「人生90年時代」を前提としたものへ転換させ、全世代が参画した、豊かな人生を享受できる超高齢社会の実現を目指す必要があるとの認識が示された。
このような考え方のもと、我が国の高齢者を取り巻く課題として、本報告書では6つの課題を整理し、今後の我が国の超高齢社会に向けた基本的な考え方として6つの考え方をとりまとめ、提示した。
本節では、その課題と基本的な考え方について内容を紹介する。
1 超高齢社会における課題
(1)「高齢者」の実態と捉え方の乖離
社会の様々な分野の第一線で活躍してきた経験を持つ「団塊の世代」が2012年から65歳になり、団塊の世代には、これまで社会の様々な分野の第一線で活躍してきた経験を活かし、今後の超高齢社会を先導する役割が期待されている。
また、我が国の平均寿命が延伸を続けるなか、65歳を超えても元気であると認識し、就労や社会参加活動を通じて現役として活躍している人たちが多くなっているため、高齢者を一律に区切って支えられる人と捉えることは実態にそぐわなくなってきていると考えられる。
活躍している人や活躍したいと思っている人を年齢によって一律に「支えられている」人であると捉えることは、その人たちの誇りや尊厳を低下させかねないと考えられる。
また、高齢者を65歳以上の者として年齢で区切り、一律に支えが必要であるとする従来の「高齢者」に対する固定観念が、多様な存在である高齢者の意欲や能力を活かす上での阻害要因となっていると考えられる。