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第2章 第3節 4 生活環境等分野に係る基本的施策

第3節 分野別の施策の実施の状況

4 生活環境等分野に係る基本的施策

「生活環境等分野に係る基本的施策」については、高齢社会対策大綱において、次のような方針を示している。

住宅は生活の基盤となるものであり、生涯を通じて豊かで安定した住生活の確保を図っていく必要がある。このため、将来にわたり活用される良質な住宅の供給を促進し、併せて、それらが適切に評価、循環利用される環境を整備することを通じ、高齢者が保有する住宅の資産価値を高め、高齢期の経済的自立に資するとともに、その資産の次世代への適切な継承を図る。さらに、高齢者の居住の安定確保に向け、重層的かつ柔軟な住宅セーフティネットの構築を目指す。

高齢者等全ての人が安全・安心に生活し、社会参加できるよう、自宅から交通機関、まちなかまでハード・ソフト両面にわたり連続したバリアフリー環境の整備を推進するとともに、子育て世代が住みやすく、高齢者が自立して健康、安全、快適に生活できるような、医療や介護、職場、住宅が近接した集約型のまちづくりを推進するものとし、高齢者向け住宅の供給促進や、地域の公共交通システムの整備等に取り組む。

また、関係機関の効果的な連携の下に、地域住民の協力を得て、交通事故、犯罪、災害等から高齢者を守り、特に一人暮らしや障害を持つ高齢者が安全にかつ安心して生活できる環境の形成を図る。

さらに、快適な都市環境の形成のために水と緑の創出等を図るとともに、活力ある農山漁村の再生のため、高齢化の状況や社会的・経済的特性に配慮しつつ、生活環境の整備等を推進する。

(1)豊かで安定した住生活の確保

「住生活基本計画(全国計画)」(平成23年3月閣議決定)に掲げた目標(〔1〕安全・安心で豊かな住生活を支える生活環境の構築、〔2〕住宅の適正な管理及び再生、〔3〕多様な居住ニーズが適切に実現される住宅市場の環境整備、〔4〕住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保)を達成するため、必要な施策を着実に推進した(表2-3-11)。

表2-3-11 「住生活基本計画(全国計画)」(平成23年3月閣議決定)における高齢社会対策に関する目標、成果指標及び基本的な施策

目標1 安全・安心で豊かな住生活を支える生活環境の構築

② 住生活の安心を支えるサービスが提供される環境の整備

【指標】

[高齢者の安定した住まいの確保]

・高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合 【0.9%(平17)→3~5%(平32)】

[地域における福祉拠点等の構築]

・生活支援施設を併設している公的賃貸住宅団地(100戸以上)の割合 【16%(平21)→ 25%(平32)】

【基本的な施策】

○医療・介護・住宅が連携し高齢者が安心できる住まいを確保するため、サービス付きの高齢者向け住宅の供給を促進する。

○ライフステージに応じた住み替えの促進を図るため、住み替え時の金銭負担の軽減等を図るリバースモーゲージの普及の促進等を行う。

○高齢者、障害者、子育て世帯等(以下「高齢者等」という。)の地域における福祉拠点等を構築するため、公的賃貸住宅団地等において、民間事業者等との協働による医療・福祉サービス施設や子育て支援サービス施設等の生活支援施設の設置を促進する。

○公的賃貸住宅の計画的な建替え、ニュータウン再生の支援等を通じて、高齢者をはじめとする居住者の生活の利便性の向上を図る。

④ 移動・利用の円滑化と美しい街並み・景観の形成

【指標】

[ユニバーサルデザイン化の推進]

・共同住宅のうち、道路から各戸の玄関まで車椅子・ベビーカーで通行可能な住宅ストックの比率 【16%(平20)→28%(平32)】

【基本的な施策】

○住宅及び住宅市街地のユニバーサルデザイン化を促進する。

○高齢者等の利便性の向上の観点を踏まえつつ、都心居住や街なか居住、中心市街地の活性化等を促進する。

目標4 住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保

【指標】

[高齢者等への配慮]

・高齢者(65歳以上の者)の居住する住宅のバリアフリー化率
一定のバリアフリー化(注1) 【37%(平20)→75%(平32)】
うち、高度のバリアフリー化(注2) 【9.5%(平20)→25%(平32)】
(注1)一定のバリアフリー化:2箇所以上の手すり設置又は屋内の段差解消に該当
(注2)高度のバリアフリー化:2箇所以上の手すり設置、屋内の段差解消及び車椅子で通行可能な廊下幅のいずれにも該当

【基本的な施策】

○高齢者等が、地域において安全・安心で快適な住生活を営むことができるよう、住宅のバリアフリー化や見守り支援等のハード・ソフト両面の取組を促進する。また、民間事業者等との協働により、公的賃貸住宅団地等の改修・建替えに併せた福祉施設等の設置を促進する。

資料:国土交通省
※「住生活基本計画(全国計画)」(平成23年3月閣議決定)における「住生活の安定の確保及び向上の促進に関する目標」は、上記のほか「2 住宅の適正な管理及び再生」、「3 多様な居住ニーズが適切に実現される住宅市場の環境整備」がある。
ア 次世代へ継承可能な良質な住宅の供給促進
(ア)持家の計画的な取得・改善努力への援助等の推進

良質な持家の取得・改善を促進するため、勤労者財産形成住宅貯蓄の普及促進等を図るとともに、独立行政法人住宅金融支援機構の証券化支援事業及び勤労者財産形成持家融資を行っている。また、住宅ローン控除等の税制上の措置により、良質な住宅の供給を促進している。

(イ)高齢者の持家ニーズへの対応

高齢者の多様な居住形態に対応した住宅供給を促進していく必要があるため、住宅金融支援機構において、親族居住用住宅を証券化支援事業の対象とするとともに、親子が債務を継承して返済する親子リレー返済(承継償還制度)を実施している。

(ウ)将来にわたり活用される良質なストックの形成

「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、住宅を長期にわたり良好な状態で使用するため、その構造や設備について、一定以上の耐久性、維持管理容易性等の性能を備え、適切な維持保全が確保される「認定長期優良住宅」の普及促進を図っている。

イ 循環型の住宅市場の実現
(ア)既存住宅流通・リフォーム市場の環境整備

「住まいるダイヤル」((公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)において、平成25年3月に、相談業務を通じて得た情報を元に事案の概要や消費者へのアドバイスを公表した。

また、安心してリフォームに取り組むための消費者支援措置の周知普及に向けて、大規模小売店舗、住宅フェア、リフォームショールーム等において、消費者向けセミナーを実施した。

平成23年度第3次補正予算(平成23年11月21日成立)により実施した復興支援・住宅エコポイント制度及び平成24年度補正予算(平成25年2月26日成立)により実施した住宅・建築物省エネ改修等緊急推進事業において、エコリフォームと併せて行うバリアフリーリフォームについても支援を行い、住宅の省エネ化と併せて、住宅のバリアフリー化を促進した。

さらに、消費者が中古住宅の取引時点の物件の状態・品質を把握できるよう、住宅の検査・調査を行うインスペクションの普及促進を図るため、建築士等の資格を有する者の活用等検査・調査を行う者の技術的能力の確保や検査・調査の項目・方法等の在り方について検討を行っている。

(イ)高齢者の高齢期に適した住宅への住み替え支援

高齢者等の所有する戸建て住宅等を、広い住宅を必要とする子育て世帯等へ賃貸することを円滑化する高齢者等の住み替え支援制度により、高齢者の高齢期の生活に適した住宅への住み替え等を促進している。

また、同制度を活用して住み替え先住宅を取得する費用について、住宅金融支援機構の証券化支援事業における民間住宅ローンの買取要件の緩和を行っている。加えて、高齢者が住み替える先のサービス付き高齢者向け住宅に係る入居一時金について、住宅融資保険制度を活用し、民間金融機関のリバースモーゲージの推進を支援している。

さらに、旧住宅金融公庫の融資について、返済期間中に自ら居住する要件を緩和し、高齢者等が所有する戸建て住宅等を子育て世帯等へ賃貸することを可能としている。

ウ 高齢者の居住の安定確保
(ア)良質な高齢者向け住まいの供給

高齢者が安心して暮らすことができる住まいの確保に向け、平成23年10月に「高齢者の居住の安定確保に関する法律等の一部を改正する法律」が施行され、介護・医療と連携した、「サービス付き高齢者向け住宅」の登録制度が創設された。このサービス付き高齢者向け住宅の供給促進のため、整備費に対する補助、税制の特例、住宅金融支援機構による融資を合わせて支援を実施している。

また、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅については、利用者を保護する観点から、①法令において定められている返還方法に基づき、前払金を返還する契約を締結することや、②対価としての位置づけが明らかでない権利金等を受領しないことを事業者に義務付けるため、平成24年4月より、改正老人福祉法を施行し、その適切な運用を支援している。

(イ)高齢者の自立や介護に配慮した住宅の建設及び改造の促進

加齢等による身体機能の低下や障害が生じた場合にも、高齢者が安心して住み続けることができるよう、「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」(平成13年国土交通省告示第1301号)の普及など住宅のバリアフリー化の施策を展開している(表2-3-12)。

表2-3-12 高齢者が居住する住宅の設計に係る指針の概要

○ 趣旨

・高齢者が居住する住宅において、加齢等に伴って心身の機能の低下が生じた場合にも、高齢者がそのまま住み続けることができるよう、一般的な住宅の設計上の配慮事項を示すとともに、現に心身の機能が低下し、又は障害が生じている居住者(要配慮居住者)が住み続けるために必要とされる、当該居住者の状況に応じた個別の住宅の設計上の配慮事項を示すもの。

○ 主な内容

・一般的な住宅の設計上の配慮事項

①住宅の住戸専用部分に関する部屋の配置、段差、手すり、通路・出入口の幅員、階段、便所、浴室等

②一戸建て住宅の屋外部分のアプローチ、階段等

③一戸建て住宅以外の住宅の共用部分及び屋外部分の共用階段、共用廊下、エレベーター、アプローチ等

・要配慮居住者のために個別に配慮した住宅の設計の進め方

①要配慮居住者及び住宅の特性の把握

②住宅の設計方針の検討及び住宅の設計

③設計の反映の確認

資料:国土交通省

また、住宅に係るバリアフリー改修促進税制による支援を行っている。

住宅金融支援機構においては、高齢者自らが行う住宅のバリアフリー改修について、高齢者向け返済特例制度を適用した融資を実施している。また、証券化支援事業の枠組みを活用したフラット35Sにより、バリアフリー性能等に優れた住宅に係る金利引下げを行っている。加えて、住宅融資保険制度を活用し、民間金融機関が提供する住宅改良等資金に係るリバースモーゲージの推進を支援している。

勤労者財産形成住宅貯蓄においては、一定のバリアフリー改修工事を増改築等の適格払出しの範囲に加えている。

(ウ)公共賃貸住宅

公共賃貸住宅においては、バリアフリー化を推進するため、原則として、新たに供給するすべての公営住宅、改良住宅(不良住宅密集地区の整備改善に伴い建設された住宅)及び都市再生機構賃貸住宅について、段差の解消等の高齢化に対応した仕様を標準化している。

この際、公営住宅、改良住宅の整備においては、中高層住宅におけるエレベーター設置等の高齢者向けの設計・設備によって増加する工事費について助成対象としている。都市再生機構賃貸住宅についても、中高層住宅の供給においてはエレベーター設置を標準としている。

(エ)住宅と福祉の施策の連携強化

国土交通大臣と厚生労働大臣が共同して策定した「高齢者の居住の安定の確保に関する基本的な方針」に基づき、都道府県において高齢者の居住の安定の確保に関する計画を定めることを支援している。

加齢等による身体機能の低下や障害が生じた場合でも、可能な限り自立かつ安心して在宅生活を営めるようにするためには、住宅設備等のハード面での配慮に加えて、医療・介護と連携したソフト面からの生活支援も行っていくことが重要である。このため、福祉施策と連携を図りつつ、高齢者向けの公共賃貸住宅の整備を推進している。

前述のバリアフリー化された公営住宅等の供給とともに、ライフサポートアドバイザーによる日常の生活相談、安否確認、緊急時における連絡等の生活支援サービスの提供を併せて行うシルバーハウジング・プロジェクトを実施している(平成23年度末現在、882団地(23,679戸))(図2-3-13)。

図2-3-13 シルバーハウジング・プロジェクトの概念図
(オ)高齢者向けの先導的な住まいづくり等への支援

高齢者等居住安定化推進事業により、高齢者等の居住の安定確保に資する住まいづくり・まちづくり等を行う事業の提案を公募し、先導性や普及性等に優れた事業に対して補助を行った。

(カ)公共賃貸住宅の適切な供給

地域における多様な需要に応じた公共賃貸住宅の供給を促進するため、以下のとおり公営住宅、都市再生機構賃貸住宅、公社賃貸住宅等それぞれの目的に応じた住宅の供給に努めている。

公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃の賃貸住宅の供給を行うことを目的に整備が行われており、平成22年度末のストックは約217万戸となっている。

都市再生機構賃貸住宅は、大都市地域等においてファミリー向け賃貸住宅を中心に供給されており、平成23年度末の管理戸数は約76万戸となっている。

公社賃貸住宅は、地方住宅供給公社により、地域の賃貸住宅の需要状況に応じ、住宅金融支援機構融資や地方公共団体融資等の資金を活用して供給されており、平成23年度末の管理戸数は約18万戸となっている。

また、既設公営住宅及び既設都市再生機構賃貸住宅について高齢者の生活特性に配慮した設備・仕様の改善を推進するとともに、特に老朽化した公共賃貸住宅については、居住水準の向上を図るため、建替え・改善を計画的に推進している。

(キ)高齢者のニーズに対応した公共賃貸住宅の供給

公営住宅においては、高齢者世帯を優先入居の対象とする高齢者世帯向公営住宅を供給している。また、地域の実情に応じて、高齢者世帯の入居収入基準を一定額まで引き上げることや入居者選考において優先的に取り扱うことを可能としている。

都市再生機構賃貸住宅においては、高齢者同居世帯等に対して、新規賃貸住宅募集時の当選倍率優遇、既存賃貸住宅募集時の優先申込期間の設定を行うとともに、1階又はエレベーター停止階への住宅変更を認めるなどの措置を行っている(表2-3-14)。

表2-3-14 公営住宅等の高齢者向け住宅建設戸数
年度 老人世帯向
公営住宅建設戸数
地域優良賃貸住宅
(高齢者型)
管理開始戸数
都市再生機構賃貸住宅の
優遇措置戸数
住宅金融支援機構の
割増貸付け戸数
賃貸 分譲
平成10年度 2,057 305 3,143 571 3,714 34,832
11 2,333 3,974 4,349
(946)
531 4,880 11,831
12 1,476 65 8,265
(2,317)
212 8,477 4,951
13 1,216 5,392 10,344
(4,963)
123 10,467 2,822
14 1,203 4,751 8,959
(4,117)
149 9,108 1,115
15 627 4,204 7,574
(3,524)
45 7,619 558
16 724 4,380 5,510
(3,353)
0 5,510 244
17 1,333 4,362 2,944
(1,662)
0 2,944 60
18 859 3,370 2,957
(1,294)
0 2,957 18
19 507 3,160 1529
(843)
0 1,529 0
20 303 2,981 1221
(684)
0 1,221 0
21 537 1,955 1,286
(612)
0 1,286 0
22 747 1,722 773
(386)
0 773 0
23 238 2,182 453
(309)
0 453 0
資料:国土交通省
(注1)地域優良賃貸住宅(高齢者型)管理開始戸数は高齢者向け優良賃貸住宅の管理開始戸数を含む。
(注2)都市再生機構賃貸住宅の優遇措置戸数には、障害者及び障害者を含む世帯に対する優遇措置戸数を含む(空家募集分を含む)。
(注3)優遇措置の内容としては、当選率を一般の20倍としている(平成20年8月までは10倍)。
(注4)( )内は高齢者向け優良賃貸住宅戸数であり内数である。
(注5)住宅金融支援機構の割増(平成10年に制度改正)貸付け戸数は、マイホーム新築における高齢者同居世帯に対する割増貸付け戸数である。この制度は平成17年度をもって廃止されたが、平成17年度中に申込みを受け付けた貸付け戸数を平成18年度以降に表示した。
(ク)高齢者の民間賃貸住宅への入居の円滑化

高齢者等の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するため、地方公共団体や関係事業者、居住支援団体等が組織する居住支援協議会が行う相談・情報提供等に対する支援を行った。

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