第2章 第2節 6 全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築のための基本的施策
第2節 分野別の施策の実施の状況
6 全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築のための基本的施策
「全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築のための基本的施策」については、高齢社会対策大綱において、次の方針を示している。
今後の超高齢社会に対応するために、高齢者のために対応が限定された社会ではなく、高齢社会に暮らす子どもから高齢者まで、全ての世代の人々が安心して幸せに暮らせる豊かな社会を構築する。そのために、高齢者のみならず、世代間の交流を通じた若者や子育て世代とのつながりを醸成するとともに、若年者や女性の能力を積極的に活用するなど、全ての世代が積極的に参画する社会を構築するための施策を推進する。
(1)全員参加型社会の推進
ア 若年者雇用対策の推進
(ア)大学などの新卒者・既卒者に対する就職支援の推進
新卒者・既卒者の就職支援のため、全国の「新卒応援ハローワーク」(平成26年3月末現在、57か所)を中心に、ジョブサポーターを活用し、学生等にきめ細かな支援を行うとともに、大学等と一体となった就職支援や中小企業とのマッチングを推進した。
また、大学等の未就職卒業者を減少させるため、大学等に対して、新卒応援ハローワークの周知に努めるとともに、ジョブサポーターによる学校担当者制や相談窓口設置・出張相談の強化等を実施した。
(イ)若者と中小企業とのマッチング強化
「若者応援企業宣言」事業などを通じて、企業の魅力発信や就職関連情報の開示を進めること等により、若者が適切な職業選択ができるような環境作りに努めるとともに、「若者応援企業」の周知や面接会の開催等を行い、若者と中小企業のマッチングを強化した。
(ウ)フリーター等の正規雇用化の推進
全国のハローワークにおいて、フリーター等に対し、支援対象者一人ひとりの課題に応じて、正規雇用化に向け、一貫したきめ細かな支援を実施している。特にフリーター等の多い地域では、「わかものハローワーク」(平成26年3月末現在、3か所)等を中心に、正規雇用化の支援を実施した。
また、職業経験、技能、知識から安定的な就職が困難なフリーター等について、「トライアル雇用奨励金」等を活用し、正規雇用化の支援を実施した。
イ 雇用・就業における女性の能力発揮
労働者が性別により差別されることなく、また、働く女性が母性を尊重されつつ、その能力を十分に発揮できる雇用環境を整備するため、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和47年法律第113号)に沿った男女均等取扱いが徹底されるよう周知啓発、指導を行うとともに、事業主と労働者の間に紛争が生じた場合には円滑かつ迅速な解決が図られるよう援助を行った。平成25年12月に改正男女雇用均等法施行規則等を公布し、26年7月からの施行に向け、改正内容について周知徹底を図った。
また、実質的な男女労働者間の均等を確保するためには、男女労働者間に事実上生じている格差の解消を目指す企業の自主的かつ積極的な取組(ポジティブ・アクション)が不可欠である。このため、企業が具体的な取組を行うことができるよう、必要な助言及び情報提供を積極的に行い、その一層の促進を図った。具体的には、ポジティブ・アクションの取組やポジティブ・アクション情報ポータルサイトを活用した女性の活躍状況の情報開示についての個別の企業に対する働きかけを実施するとともに、ポジティブ・アクションに積極的に取り組む企業に対する中小企業両立支援助成金の支給額加算の実施、「均等・両立推進企業表彰」の実施、経営者団体と連携した「女性の活躍推進協議会」の開催等を実施した。
さらに、男女労働者間の格差について企業内での実態把握や気づきを促す「男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン」や「業種別『見える化』支援ツール」の作成・普及により、ポジティブ・アクションの具体的取組を支援するとともに、メンター制度やロールモデルの普及促進により、女性労働者が就業を継続していけるような環境づくりを支援した。
このほか、個別企業の女性の活躍状況等を内閣府ホームページに掲載することにより、企業における女性の活躍促進を図った。
また、「食料・農業・農村基本計画」等を踏まえ、農業経営や6次産業化の取組等において女性の更なる活躍を推進するため、補助事業の実施に当たって、プランづくりへの女性の参画や女性による事業活用の促進等、女性の能力発揮を促進する施策を実施した。
さらに、女性の活用に積極的な企業を表彰することで、そのような企業のすそ野を広げるため、東京証券取引所と共同で、「女性活躍推進」に優れた上場企業を、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄(「なでしこ銘柄」)として選定し、平成26年3月に26社を発表した(図2-2-19)。また、女性を始めとした、多様な人材の能力を最大限発揮させることにより、イノベーションの創出、生産性向上等の成果を上げている企業を選定し、「ダイバーシティ経営企業100選」として平成26年3月に46社(大企業25社、中小企業21社)を表彰した(図2-2-20)。
ウ 非正規雇用労働者対策の推進
非正規雇用対策については、非正規雇用の労働者の雇用の安定や処遇の改善を図るため、正規雇用への転換、人材育成、処遇改善など、企業内でのキャリアアップを支援するための総合的な対策として、「有期・短時間・派遣労働者等安定雇用実現プロジェクト」を実施した。具体的には、正規雇用転換、人材育成、処遇改善など非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進する事業主に対する包括的な助成措置としてキャリアアップ助成金を創設し、その活用の上で、配慮するよう努めることが望ましい事項をまとめた「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン~キャリアアップ促進のための助成措置の円滑な活用に向けて~」の周知等をハローワークが中心となって推進した。
また、平成25年6月に閣議決定された日本再興戦略を受けて、職務等に着目した「多様な正社員」モデルの普及・促進を図るため、成功事例の収集、周知・啓発を行うとともに、25年9月より、「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」を立ち上げた。
こうした取組のほか、派遣労働者、有期契約労働者及びパートタイム労働者といった非正規雇用の態様ごとの法制面での対応として、派遣労働者の一層の雇用の安定、保護等を図るため、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)の改正法案を第186回通常国会に提出するとともに、有期契約労働者については、労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号。以下「改正労働契約法」という。)の周知等を行った。
また、パートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保、正社員への転換を推進するため、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律に基づく指導、専門家による相談・援助、職務分析、職務評価の導入支援、助成金の活用による支援等を行っている。さらに、パートタイム労働者の均等・均衡待遇の更なる確保等を図るため、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案を、第186回通常国会に提出した。
エ 子育て支援施策の総合的推進
子どもと子育てを応援する社会の実現に向けて、平成22年度から26年度までの5年間で目指すべき施策内容と数値目標を盛り込んだ、少子化対策基本法第7条に基づく大綱に基づき、総合的な子育て支援を推進している。
また、平成17年4月に全面施行した「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号。以下「次世代法」という。)に基づき、地方公共団体においては、地域における子育て支援や母性、乳幼児の健康の確保・増進、教育環境の整備等を内容とする地域行動計画、企業等においては、従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員をも含めた多様な労働条件の整備等を内容とする一般事業主行動計画が策定され、これに基づく取組が進められている。
地域行動計画は、5年を1期としてすべての地方公共団体に策定が義務付けられており、都道府県及び市町村においては、平成21年度中に策定した後期行動計画に基づき、取組が進められた。一方、一般事業主行動計画については、20年12月に次世代法が改正されたことにより、23年4月1日から届出等が義務となる企業は常時雇用する従業員数301人以上企業から101人以上企業へ拡大された。26年3月末現在で、都道府県労働局への届出が義務付けられている従業員101人以上の企業の98.4%が届出済みとなっており、策定・届出が努力義務となっている100人以下の企業において21,072社が既に届出済みとなっている。さらに、次世代法に基づき企業が行動計画に定めた目標を達成したことなどの一定の基準を満たした場合は、申請を行うことで厚生労働大臣から認定される仕組みが19年4月から開始され、26年3月末現在で1,818社が認定を受けている。
平成24年8月に成立した子ども・子育て関連3法に基づく子ども・子育て支援新制度(以下、「新制度」という。)では、「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という基本的な認識の下に、全ての子どもが健やかに成長し、「子どもの最善の利益」が実現されるよう、質の高い教育・保育及び地域子ども・子育て支援事業を実施し、妊娠、出産から育児までの切れ目ない支援を総合的に推進することとしている。
具体的には、(ア)認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)及び小規模保育等への給付(「地域型保育給付」)の創設、(イ)認定こども園制度の改善、(ウ)地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実を図ることとしている。実施主体は基礎自治体である市町村であり、地域の実情等に応じて幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援に必要な給付・事業を計画的に実施していくこととしている。
新制度は、平成27年に予定されている消費税率10%への引き上げの時期に合わせ、早ければ27年4月に本格施行となる予定である。
このため、有識者、地方公共団体、子育て当事者、子育て支援当事者等が子育て支援の政策プロセス等に参画・関与できる仕組みとして、平成25年4月に内閣府に設置した子ども・子育て会議において、新制度の本格施行に向けた具体的な検討を進め、同年8月には子ども・子育て支援の意義や施策に関する基本的事項等について定めた基本指針の概ねの案を公表し、また各種の施設・事業の基準等について26年1月までに概ねの内容を取りまとめた。