第1章 高齢化の状況(第3節 1)

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第3節 高齢者の暮らし~経済や生活環境に関する意識(1)

65歳以上の高齢者のいる世帯は、平成27(2015)年現在2372万4千世帯と、全世帯(5036万1千世帯)の47.1%を占めている。そのような中、近年、例えば高齢者の孤立や自動車による死亡事故の加害者になることなどが社会的問題となっている。またその一方で、健康寿命の延伸など身体状況の改善や、いわゆる「シルバーエコノミー」といった高齢者向け市場の活性化に寄せられる期待の高まりなども見られる。平成28年度は、それらの背後にある高齢者の経済や生活環境に関する調査を実施した。この白書では当該調査のうち高齢者の意識にかかる項目に着目し、経済、生活環境、社会活動への参加について、結果の紹介とともに特徴的な事項を考察する。(資料出所は特に断りのない限り内閣府「高齢者の経済・生活環境に関する調査」(平成28年)。)

内閣府「高齢者の経済・生活環境に関する調査」(平成28年)

  • 調査地域:全国(ただし、平成28年4月に発生した「平成28年熊本県熊本地方を震源とする地震」の影響を鑑み、大分県と熊本県の調査は中止とした。)
  • 調査対象者:全国の60歳以上(平成28年1月1日現在)の男女個人(施設入所者は除く)
  • 調査時期:平成28年6月4日~6月26日
  • 有効回収数:1,976人(標本数男女あわせて2,920人)
  • [都市規模区分]
  • 大都市 東京都23区・政令指定都市
  • 中都市 人口10万人以上の市
  • 小都市 人口10万人未満の市
  • 町村 郡部(町村)

1 経済

(1)経済的な暮らし向きについて「心配ない(計)1」と考える人は6割を超える

経済的な暮らし向きについて、「心配ない(計)」と回答する人は64.6%、「心配である(計)2」は34.8%となっている。性・同居形態別にみると、男性単身世帯では約5割(48.4%)が「心配である(計)」と回答している。「心配である(計)」の割合が特に高いグループとしては男性単身世帯(48.4%)、女性の二世代世帯(親と同居)(48.1%)が挙げられる。なお、女性は単身世帯で「心配である(計)」と答えた者は40.3%となっている。(図1-3-1)


(注1)「心配ない(計)」は、「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」と「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」の計
(注2)「心配である(計)」は、「家計にゆとりがなく、多少心配である」と「家計が苦しく、非常に心配である」の計

(2)1か月あたりの平均収入額(年金含む)は、「10万円~20万円未満」の世帯が全体の32.9%で最も多い

1か月あたりの平均収入額(年金を含む)を全体でみると、「10万円~20万円未満(年額では120万円~240万円未満)」(32.9%)が最も多く、以下、「20万円~30万円未満(年額では240万円~360万円未満)」(26.4%)、「5万円~10万円未満(年額では60万円~120万円未満)」(15.2%)と続く(図1-3-2)。

特に単身世帯では月収10万円未満が男女とも4割弱と高い(表1-3-3)。

表1-3-3 1か月あたりの平均収入額(年金を含む)の同居形態別比較
  10万円未満 10万~20万円未満 20万円以上 不明
全体 20.2% 32.9% 44.3% 2.7%
男性単身世帯 37.4% 36.3% 25.3% 1.1%
女性単身世帯 36.8% 47.3% 13.4% 2.5%

(3)貯蓄の目的について、すぐに使わない目的が約5割

貯蓄の目的については、「万一の備えのため」(47.5%)と「子供や家族に残すため」(2.6%)の計、すなわちすぐに使わない目的が50.1%と約5割となっている。その他、生活の維持のためなど、何らかの理由で貯金をしている人が全体の7割以上ある一方、「貯蓄はない」も22.7%見られる。年齢層が若いほど、「普段の生活を維持するため」に貯蓄をしている人が多い。

性・同居形態別にみると、男性単身世帯以外の世帯では、おおむね「万一の備えのため」が最も多いが、男性単身世帯では「貯蓄はない」が46.2%で最も多い(図1-3-4)。

(4)60歳を超えても子や孫の生活費をまかなっている男性が全体の3割

学生を除く18歳以上の子や孫がいる人は全体の83.4%(図1-3-5)。そのうち、子や孫の生活費をまかなっているのは20.8%(「生活費のほとんど」と「生活費の一部」の計)。特に男性では60~64歳の層で34.6%と、他の年齢層に比べて高く、60代前半の男性では約3分の1が子や孫の生活費をまかなっている(図1-3-6)。生活費をまかなっている子や孫のうち約8割は仕事をしている(図1-3-7)。

(5)【考察】単身世帯における男女別の傾向

経済について、ここでは男性単身世帯と女性単身世帯を対比して見ていきたい。

上述のとおり、1か月当たりの平均収入額が10万円未満の割合は、男女ともに単身世帯では約4割(全世帯20.2%)であったが、男性単身世帯では経済的な暮らし向きをみると、「心配である(計)」(48.4%)との回答が女性単身世帯(40.3%)より明らかに高い。そこで、貯蓄についてみると、男性単身世帯では「貯蓄はない」との回答が46.2%と半数近くに上る(女性単身世帯では30.8%)。また、男性単身世帯は持ち家でなく賃貸住宅に住む比率も41.8%と高めである(全世帯では11.7%。女性単身世帯では22.9%)(図1-3-8)。男性単身者で「心配」が多いことの背景にはこうしたストック面の状況が影響していると考えられる。

図1-3-8 住宅の種類
  持ち家 賃貸住宅 「高齢者向け住宅・施設」と「その他」の計
全体 87.1% 11.7% 1.2%
男性単身世帯 58.2% 41.8% 0.0%
女性単身世帯 75.1% 22.9% 2.0%
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