第2章 高齢社会対策の実施の状況(第1節 5)

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第1節 高齢社会対策の基本的枠組み(5)

5 総合的な推進のための取組

(1)社会保障制度改革国民会議について

第180回国会で成立した「社会保障制度改革推進法」(平成24年法律第64号。以下「改革推進法」という。)に基づき設置された社会保障制度改革国民会議(会長:清家篤慶應義塾長。以下「国民会議」という。)は、改革推進法に規定された社会保障制度改革の基本的な考え方や基本方針に基づき、平成24年11月から25年8月まで20回にわたり議論が行われ、同年8月6日に報告書が取りまとめられた。

国民会議の報告書等を踏まえ、社会保障制度改革の全体像や進め方を明示した「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案」が第185回国会に提出され、25年12月5日に成立した。

「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」(平成25年法律第112号。以下「社会保障制度改革プログラム法」という。)は、少子化対策、医療・介護、年金の各分野の改革の検討課題と法案提出の目途、措置を講ずべき時期を定めており、現在、同法に基づき、順次法案を提出し、これまでに子ども・子育て分野、医療・介護分野などで関連法案が成立するなど、改革を進めているところである。

また、社会保障制度改革プログラム法により設置された社会保障制度改革推進会議(議長:清家篤慶應義塾長)において、平成37(2025)年を展望し、中長期的に持続可能な制度の確立のための改革の総合的な検討が進められている。

(2)マイナンバー制度について

マイナンバー制度は、複数の機関に存在する個人の情報を同一人の情報であるということの確認を行うための基盤であり、社会保障制度・税制の効率性・透明性を高め、国民にとって利便性の高い公平・公正な社会を実現するための社会基盤(インフラ)である。

マイナンバー制度が導入されることにより、社会保障、税、災害対策の分野において、より効率的に国の行政機関、地方公共団体等が保有する個人の情報について、同一人の情報であるという確認を行うことが可能となるほか、これらの機関が保有する個人の情報について相互に照会、提供を行うことが可能となる。その結果、社会保障給付等の申請を行う際に必要となる添付書類が削減されるなど国民の利便性が向上するほか、社会保障や税に係る行政事務の効率化が図られることとなる。また、より正確な所得把握が可能となることで、社会保障・税の給付と負担の公平化が図られることとなるとともに、社会保障の分野で真に手を差し伸べるべき者を見つけることが可能となるほか、災害時における被災者等への積極的な支援への活用も期待されるところである。

マイナンバー制度については、平成25年5月に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号)が成立し、27年10月から住民票を有する全ての住民に対してマイナンバー(個人番号)の付番・通知が始まった。28年1月からは社会保障、税、災害対策の分野の行政手続においてマイナンバーの利用が始まるとともに、申請によるマイナンバーカード(個人番号カード)の交付も始まった。今後、29年より順次地方公共団体等の機関間における情報連携が開始される予定であり、これによって、各種申請の際の添付書類の一部が不要となる。また、情報連携に合わせてマイナポータルの運用も開始される予定であり、このマイナポータルでは、地方公共団体等の機関がマイナンバーの付いた自己情報をいつ、どことやりとりしたのかの確認、地方公共団体等が保有する自己情報の確認ができるほか、地方公共団体等から一人ひとりにあったきめ細やかなお知らせやサービスの提供を受けることができるようになる。

(3)一億総活躍社会の実現に向けて

平成27年10月7日に発足した第3次安倍改造内閣は、少子高齢化という構造的な課題に取り組み、若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、皆が包摂され活躍できる社会「一億総活躍社会」の実現に向けて取り組むこととし、「新・三本の矢」として、第一の矢「希望を生み出す強い経済」を「戦後最大のGDP600兆円」の実現という的に、第二の矢「夢を紡ぐ子育て支援」を「希望出生率1.8」の実現という的に、第三の矢「安心につながる社会保障」を「介護離職ゼロ」の実現という的に放つこととした。この「一億総活躍社会」に向けたプランの策定等に係る審議に資するため、「一億総活躍国民会議」が開催された。

平成28年5月18日の一億総活躍国民会議(第8回)で取りまとめられた「ニッポン一億総活躍プラン」(同年6月2日閣議決定)においては、高齢者の就労促進や、子育てを家族で支える三世代同居・近居しやすい環境づくりのほか、「介護離職ゼロ」に向けて、介護の受け皿整備に加え、介護の仕事の魅力を向上し、介護人材の処遇改善、多様な人材の確保・育成、生産性の向上を通じた労働負担の軽減を柱として25 万人の介護人材の確保に総合的に取り組むなど介護の環境整備を行うこと、また健康寿命の延伸と介護負担の軽減、障害者・難病患者・がん患者等の活躍支援、地域共生社会の実現について取り組むこととされた。

(4)働き方改革の実現に向けて

「ニッポン一億総活躍プラン」では、一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジとして「働き方改革」が位置づけられ、今後の取組として、いわゆる36協定における時間外労働規制の在り方について再検討すること等が記載された。そして平成28年8月3日の内閣改造にあたり新たに働き方改革担当大臣が任命されるとともに、総理が自ら議長となり、労働界と産業界のトップと有識者が集まって、これまでよりレベルを上げて議論する場として「働き方改革実現会議」が開催されることとなった。

そして、時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現などによる非正規雇用の処遇改善、テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方、高齢者の就業促進、病気の治療、子育て・介護と仕事の両立等が総理より会議での討議テーマとして指示され、第10回実現会議(平成29年3月28日)において、「働き方改革実行計画」が取りまとめられた。

討議テーマの1つである「高齢者の就業促進」については、2020年度までを集中取組期間と位置づけ、65歳以降の継続雇用延長や65歳までの定年延長を行う企業への助成措置を強化すること、新たに策定した継続雇用延長や定年延長の手法を紹介するマニュアルや好事例集を通じて、企業への働きかけ、相談・援助を行っていくこと、集中取組期間の終了時点で、継続雇用年齢等の引上げに係る制度の在り方を再検討すること等が盛り込まれた。

また、多様な技術・経験を有するシニア層が、一つの企業に留まらず、幅広く社会に貢献できる仕組みを構築するために、ハローワークにおいて高齢者が就業可能な短時間等の求人を開拓、年齢に関わりなく職務に基づく公正な評価により働ける企業を求人票で見える化すること、ハローワークと経済団体等の地域の関係者が連携し、U・I・Jターンして地方で働くための全国マッチングネットワークを創設すること、高齢者による起業時の雇用助成措置を強化すること、健康づくりやフレイル対策を進めつつ、シルバー人材センターやボランティアなど、高齢者のニーズに応じた多様な就労機会を提供すること等が盛り込まれた。

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