第2章 高齢社会対策の実施の状況(第2節 6)
第2節 分野別の施策の実施の状況(6)
6 全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築のための基本的施策
「全世代が参画する超高齢社会に対応した基盤構築のための基本的施策」については、高齢社会対策大綱において、次の方針を示している。
今後の超高齢社会に対応するために、高齢者のために対応が限定された社会ではなく、高齢社会に暮らす子どもから高齢者まで、全ての世代の人々が安心して幸せに暮らせる豊かな社会を構築する。そのために、高齢者のみならず、世代間の交流を通じた若者や子育て世代とのつながりを醸成するとともに、若年者や女性の能力を積極的に活用するなど、全ての世代が積極的に参画する社会を構築するための施策を推進する。
(1)全員参加型社会の推進
ア 若年者雇用対策の推進
(ア)新卒者等の正社員就職の支援
平成27年9月11日に成立した「青少年の雇用の促進等に関する法律」(昭和45年法律第98号。以下「若者雇用促進法」という。)に基づく、①新卒者の募集を行う企業による職場情報の提供の仕組み、②ハローワークにおける一定の労働関係法令違反に係る求人者の求人不受理、③若者の雇用管理が優良な中小企業についての認定制度(ユースエール認定制度)等について、積極的な周知を図るとともに、その取組を促進した。
また、全国57か所の新卒応援ハローワーク等を拠点に、ジョブサポーターが新規学卒者等の在学中から就職、職場定着までの一貫した支援を実施した。
さらに、事業主に対して既卒3年以内新卒扱いについて周知を行うとともに、既卒者等の新規学卒枠での応募機会の拡大及び採用・定着の促進を図るため、平成28年2月より、既卒者及び中退者を対象とした助成金制度を創設し、当該助成金を活用した既卒者等の応募機会の拡大を推進した。
さらに、若者の非正規雇用割合や早期離職率が高い業種について、業界ごとの多様な若者の活用状況や雇用管理上の課題を踏まえつつ、コンサルティング等を新たに実施することにより、企業の自主的な雇用管理改善による「魅力ある職場づくり」の取組を推進した。
(イ)フリーター等の正社員就職の支援
全国28か所のわかものハローワーク等を拠点に、担当者制による個別支援、正社員就職に向けたセミナーやグループワーク等各種支援、就職後の定着支援を実施するとともに、職業訓練への誘導・あっせん機能を強化し、フリーター等の正社員就職を促進した。
また、職業経験、技能、知識の不足等から安定的な就職が困難なフリーター等について、「トライアル雇用奨励金」等を活用し、正規雇用化の支援を実施した。
イ 雇用・就業における女性の能力発揮
労働者が性別により差別されることなく、また、働く女性が母性を尊重されつつ、その能力を十分に発揮できる雇用環境を整備するため、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和47年法律第113号。以下「男女雇用機会均等法」という。)に沿った男女均等取扱いがされるよう周知徹底し、指導を行うとともに、事業主と労働者の間に紛争が生じた場合には円滑かつ迅速な解決が図られるよう援助を行った。
また、事業主による妊娠、出産、育児休業・介護休業等の申出・取得を理由とする不利益取扱いは、既に男女雇用機会均等法等で禁止されているが、近年、上司・同僚からのハラスメントも問題となっている。そのため、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法が改正され、上司・同僚による職場における妊娠、出産、育児休業・介護休業等の申出・取得に関するハラスメントの防止措置を講じることが事業主に対し新たに義務付けられた(平成29年1月1日施行)。
上記ハラスメント防止措置が事業主により適切に講じられるよう、都道府県労働局において説明会及びハラスメント対応特別相談窓口を開設し、改正法の周知を図った。
女性の職業生活における活躍を一層推進するため、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)が平成28年4月に全面施行された。国・都道府県・市区町村における行動計画策定率は100%となっている。同法に定める、自社の女性活躍の状況把握、課題分析、行動計画策定を簡易に行える「一般事業主行動計画策定支援ツール」の提供や、中小企業における法に基づく取組を支援することを目的とした「中小企業のための女性活躍推進事業」を実施するとともに、実際に行動計画に定めた目標を達成した事業主に対する助成金の支給、さらに企業の女性の活躍状況に関する情報や行動計画を公表できる場として「女性の活躍推進企業データベース」の提供などにより、事業主の取組支援を行った。また、9月には、同法に基づく国及び地方公共団体の取組を中心に、一覧化して掲載した「女性活躍推進法「見える化」サイト」を開設した。
また、企業における女性の活躍を推進するため、ポジティブ・アクション(男女労働者間に事実上生じている格差の解消を目指す企業の自主的かつ積極的な取組)を推進している企業を公募し、「均等・両立推進企業表彰」を実施した。
さらに、男女労働者間の格差について企業内での実態把握や気づきを促す「男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン」の普及を図った。
さらに、法に基づき、地方公共団体が策定する地域の女性の職業生活における活躍についての推進計画による取組について、地域女性活躍推進交付金等により支援を行った。
また、「食料・農業・農村基本計画」等を踏まえ、農業経営や6次産業化の取組等において女性の更なる活躍を推進するため、地域計画づくりへの女性参画の要件化や女性による事業活用の促進等により、女性の能力発揮を促進する施策を実施した。
さらに、各社の取組を加速化していくことを狙いとして、東京証券取引所と共同で、「女性活躍推進」に優れた上場企業を、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄(「なでしこ銘柄」)として選定している。24年度から開始し、28年度は、29年3月に47社を発表した(図2-2-18)。また、女性を含め多様な人材の能力を活かして、イノベーションの創出、生産性向上等の成果を上げている企業を「ダイバーシティ経営企業100選」として表彰し、ダイバーシティ経営のすそ野の拡大を図っている。24年度から開始し、28年度は、「長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の推進」「経営層への多様な人材の登用」などの重点テーマを設定し、「新・ダイバーシティ経営企業100選」として、平成29年3月に31社(大企業13社、中小企業18社)を表彰した(図2-2-19)。
ウ 非正規雇用労働者対策の推進
雇用情勢が着実に改善しているタイミングを捉え、正社員を希望する方の正社員転換や非正規雇用を選択する方の待遇改善を推進することが重要である。このため、厚生労働大臣を本部長とした「正社員転換・待遇改善実現本部」において、今後5年間の正社員転換・待遇改善に係る目標や取組をまとめた「正社員転換・待遇改善実現プラン」を平成28年1月に策定した。また、各都道府県労働局にも本部を設置し、同年3月までにそれぞれの地域プランを策定した。これらのプランに基づき、非正規雇用労働者の正社員転換・待遇改善を強力に推進している。
また、平成28年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」を受けて職務等を限定した「多様な正社員」モデルの普及・拡大を図るため、「雇用管理上の留意事項」の周知と合わせて、シンポジウムやセミナーの開催、モデル就業規則の作成、コンサルティング等の支援を行った。
こうした取組のほか、派遣労働者、有期雇用労働者及びパートタイム労働者といった非正規雇用の態様ごとの法制面での対応として、派遣労働者については、平成27年9月に施行された「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律(平成27年法律第73号。以下「労働者派遣法改正法」という。)」の内容を解説したパンフレットを作成し都道府県労働局で配布するとともに、都道府県労働局が説明会を開催する等により周知を行った。有期雇用労働者については、25年4月に全面施行された「労働契約法の一部を改正する法律」(平成24年法律第56号。以下「改正労働契約法」という。)の周知等を行った。
また、パートタイム労働者については、パートタイム労働法に基づく是正指導等により同法の着実な履行確保を図った。
エ 子育て支援施策の総合的推進
「少子化社会対策基本法」(平成15年法律第133号)第7条に基づく大綱等に基づき、子育て支援施策の一層の充実や結婚・出産の希望が実現できる環境の整備など総合的な少子化対策を推進している。
また、平成17年4月に全面施行した「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号。以下「次世代法」という。)に基づき、地方公共団体においては、地域における子育て支援や母性、乳幼児の健康の確保・増進、教育環境の整備等を内容とする地域行動計画、企業等においては、従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員をも含めた多様な労働条件の整備等を内容とする一般事業主行動計画が策定され、これに基づく取組が進められている。
地域行動計画は、5年を1期としてすべての地方公共団体に策定が義務付けられており、都道府県及び市町村においては、21年度中に策定した後期行動計画に基づき、取組が進められた。一方、一般事業主行動計画については、従業員数101人以上企業について策定・届出が義務付けられており、29年3月末現在で、当該企業の98.1%が届出済みとなっている。また、策定・届出が努力義務となっている100人以下の企業においては、24,087社が届出済みとなっている。さらに、次世代法に基づき企業が行動計画に定めた目標を達成したことなどの一定の基準を満たした場合は、申請を行うことで厚生労働大臣からくるみん・プラチナくるみん認定を受けることができ、29年3月末現在でくるみん認定は2,695社、プラチナくるみん認定は118社が認定を受けている。
24年8月に成立した子ども・子育て関連3法に基づく子ども・子育て支援新制度(以下、「新制度」という。)では、「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という基本的な認識の下に、全ての子供が健やかに成長し、「子どもの最善の利益」が実現されるよう、質の高い教育・保育及び地域子ども・子育て支援事業を実施し、妊娠、出産から育児までの切れ目ない支援を総合的に推進することとしている。
具体的には、(ア)認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)及び小規模保育等への給付(「地域型保育給付」)の創設、(イ)認定こども園制度の改善、(ウ)地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実を図ることとしている。実施主体は基礎自治体である市町村であり、地域の実情等に応じて幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援に必要な給付・事業を計画的に実施していくこととしている。
新制度が平成27年4月に本格施行された後は、各自治体において直面している運営上の課題等に関する情報交換・意見交換などを行い、状況の把握に努めるとともに、パンフレットやQ&Aの作成、説明会の開催等を通じて、保護者や事業者、自治体等の関係者に新制度の周知を図り、制度の円滑な運用に努めた。
また、平成27年度予算に引き続き、28年度当初予算においては、消費税10%への引上げが延期される中にあって、量的拡充のみならず、消費税10%への引上げにより確保する0.7兆円程度の財源の確保を前提に実施を予定していた「質の向上」に係る事項を全て実施するために必要な予算が計上された。
また、新制度の本格施行にあわせて、内閣府に「子ども・子育て本部」を設置し、認定こども園、幼稚園、保育所に対する共通の給付や小規模保育等への給付等の財政支援を内閣府に一本化した。一方で、学校教育法体系及び児童福祉法体系との整合性を確保する観点から、内閣府、文部科学省及び厚生労働省が引き続き密接な連携を図りながら事務を実施していくこととした。
平成28年度からは、多様な就労形態に対応する保育サービスの拡大を行うため、子ども・子育て支援法の改正によって新設した仕事・子育て両立支援事業において企業主導型保育事業を実施し、企業が主導して設置する事業所内保育施設について、その整備・運営に係る費用の一部を助成している。
本事業では、設置場所を企業の敷地内に限定していないことから、例えば、中小企業等が共同で設置・利用するもの、自企業の事業所内ではなく、利用する従業員や地域の子供の利便性を考慮し、駅近接地に設置するものなど従業員や各企業のニーズに沿った創意工夫の下、事業が展開されている。
上記に加え、同年度から企業主導型ベビーシッター利用者支援事業として、多様な働き方をしている労働者がベビーシッター派遣サービスを就労のために利用した場合に、その利用料金の一部を助成している。