第2章 高齢社会対策の実施の状況(第2節 2)
第2節 分野別の施策の実施の状況(2)
2 健康・福祉
○持続可能な介護保険制度の運営
介護保険制度が定着し、サービス利用の大幅な伸びに伴い、介護費用が急速に増大している。このような介護保険制度の状況等を踏まえ、高齢者が住み慣れた地域で生活し続けることを可能とするために医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが包括的に確保される地域包括ケアシステムを深化・推進するため、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(平成29年法律第52号。以下「地域包括ケア強化法」という。)が平成29年6月に成立した。
具体的には、①全市町村が保険者機能を発揮し、自立支援・重度化防止等に向けて取り組む仕組みの制度化、②医療・介護の連携を推進するための市町村の取組に対する都道府県による支援、③さらに、地域共生社会の実現に向けた市町村の取組の推進、④介護保険制度の持続可能性の確保等を盛り込んだ。
○必要な介護サービスの確保
地域住民が可能な限り、住み慣れた地域で介護サービスを継続的・一体的に受けることのできる体制(地域包括ケアシステム)の実現を目指すため、平成29年度においても訪問介護と訪問看護が密接に連携した「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や、小規模多機能型居宅介護と訪問看護の機能をあわせ持つ「看護小規模多機能型居宅介護」等の地域密着型サービスの充実、サービス付き高齢者向け住宅等の高齢者の住まいの整備、特定施設入居者生活介護事業所(有料老人ホーム等)を適切に運用するための支援を進めた。
また、地域で暮らす高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実現に向けた手法として、全国の自治体に「地域ケア会議」の普及・定着を図った。
あわせて、介護人材の確保のため、地域医療介護総合確保基金の活用により、「参入促進」「労働環境の改善」「資質の向上」に向けた都道府県の取組を支援するとともに、介護福祉士修学資金貸付事業や再就職準備金貸付事業などにより、新規参入の促進や離職した介護人材の呼び戻し対策に取り組んだほか、ボランティアを行う中高年齢者への入門的研修・職場体験の実施等の取組を行った。加えて、平成29年度に、臨時に介護報酬改定を行い、介護職員処遇改善加算を拡充し、介護職員一人あたり月額平均1万円相当の処遇改善を実施した。なお、介護福祉士修学資金等貸付事業については、平成29年度補正予算において、貸付原資等の積み増しを行った。
○持続可能な高齢者医療制度の運営
平成27年5月に持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律(平成27年法律第31号)が公布され、被用者保険者の後期高齢者支援金について、被用者保険者間の支え合いを強化し、より負担能力に応じた負担とする観点から、総報酬割部分を平成27年度に2分の1、平成28年度に3分の2に引き上げ、平成29年度から全面総報酬割を実施することとされた。
○認知症高齢者支援施策の推進
認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会を実現すべく、平成27年1月に「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」(以下「新オレンジプラン」という。)を策定した。
新オレンジプランは、いわゆる団塊の世代が75歳以上となる2025年までを対象期間とし、7つの柱に沿って、認知症施策を総合的に推進していくもので、具体的には、①認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進、②認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供、③若年性認知症施策の強化、④認知症の人の介護者への支援、⑤認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進、⑥認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進、⑦認知症の人やその家族の視点の重視の柱に沿って施策を推進していくこととしている。
また、新オレンジプランでは、平成29年度末を当面の目標年度として、施策ごとの具体的な数値目標などを定めていたところであり、これまでの施策の進捗状況は概ね順調であったことから、平成29年7月に認知症高齢者等にやさしい地域づくりに係る関係省庁連絡会議を開催し、数値目標について平成32年度末までの目標に更新するとともに、施策を効果的に実行できるよう内容を充実させるなどの改定を行った。
○人生の最終段階における医療の在り方
平成29年度より「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」を開催し、国民、医療福祉従事者への意識調査を実施の上、国民に対する情報提供・普及啓発の在り方について報告書をとりまとめるとともに、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を、繰り返し話し合う重要性や在宅医療・介護の現場において活用する観点等から改訂した。