第1章 高齢化の状況(第2節 トピックス3)

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第2節 高齢期の暮らしの動向(トピックス3)

トピックス3 高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができる社会の実現へ~京都市居住支援協議会の取組~

政府では高齢者世帯などの住宅確保要配慮者の増加に対応するため、民間賃貸住宅や空き家を活用した賃貸住宅であって住宅確保要配慮者の入居を拒まないものの登録制度等を内容とする新たな住宅セーフティネット制度を平成29年度に創設し、住宅の改修や入居者負担の軽減等への支援を行っている。京都市では、この制度の創設に先駆けて、高齢であることを理由に入居を断らない民間賃貸住宅の登録・情報提供を行うとともに、社会福祉法人による「見守り」等のサービスを提供してきている。ここでは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができる社会の実現を目指し、京都市、不動産団体、福祉団体が連携して平成24年に設立した京都市居住支援協議会の取組と、京都市が目指す街づくりについて紹介する。

1 はじめに

平成22年3月、京都市では、住生活基本法(平成18年法律第61号)の制定や住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)(以下、「住宅セーフティネット法」という。)の制定、また、少子高齢化や人口減少社会の到来といった社会情勢の変化を踏まえ、「京都市住宅マスタープラン」(京都市住生活基本計画)を策定した。この住宅マスタープランにおいて、「民間賃貸住宅等の性能の向上による住宅セーフティネットの整備」「民間賃貸住宅等への入居の円滑化と居住支援」を掲げ、住宅確保要配慮者の居住の安定を確保するための受皿として民間賃貸住宅を活用すること、特に高齢者にあっては、可能な限り住み慣れた地域で住み続けることができるよう施策を展開していくことが示され、京都市の居住支援の取組がスタートした。

その後、不動産や福祉の関係団体との連携を深めて居住支援協議会の設置準備を進めていくという方針が決定され(平成23年度)、平成24年9月に京都市居住支援協議会(愛称:京都市すこやか住宅ネット)(以下、「協議会」という。)が設立されることとなった。

現在、協議会は、不動産関係団体4団体と福祉関係団体3団体、京都市(住宅部局と福祉部局)、京都市住宅供給公社で組織され、京都市からの負担金と協議会ホームページのバナー広告料を主な収入として運営されている。設立までの経過を踏まえ、住宅と福祉の両面から、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせる住まいの確保に向けた取組を推進している。

このコラムでは、協議会が取り組んでいる3つの事業を紹介する。

2 その1~すこやか賃貸住宅登録制度~

「すこやか賃貸住宅」とは、高齢であることを理由に入居を拒まない民間賃貸住宅のことである。協議会の設立当初からこの住宅の登録制度を立ち上げており、登録された「すこやか賃貸住宅」の住宅情報(間取り・家賃・築年月等)や空室情報をホームページで発信するとともに、入居希望者からの問い合わせの際には、これらの登録情報に基づいた情報提供を行っている。さらに「すこやか賃貸住宅」に物件を登録した、高齢者の住まい探しに協力を得られる不動産仲介事業者等を「すこやか賃貸住宅協力店」として、あわせてホームページで紹介しており、制度の普及促進を図っている。

平成30年3月31日現在、登録件数は5,038戸、122店となっている。

【京都市居住支援協議会の概要】
【京都市居住支援協議会ホームページ】

3 その2~高齢者すまい・生活支援事業~

原則65歳以上の一人暮らしの方等で見守り等の支援を必要とし、住み替えを希望している方を対象に、不動産事業者による「低廉な住まい」と、社会福祉法人による「見守り・生活相談等」のサービスを一体的に提供するものである。平成26年度に厚生労働省の「低所得高齢者等住まい・生活支援モデル事業」に採択され、京都市福祉部局において「高齢者すまい・生活支援モデル事業」として実施し、3年間のモデル期間を経て、平成29年度からは協議会の事業として継続実施している。

相談窓口は社会福祉法人(施設)が担っており、高齢者等からの相談等があれば、1本人と実施地域を担当する社会福祉法人及び必要に応じて「すこやか賃貸住宅協力店」が面談の上、対象の民間賃貸住宅の中から本人の希望に見合う物件を選定。2そして、本人と「すこやか賃貸住宅協力店」が物件の下見を行い、3本人と家主、「すこやか賃貸住宅協力店」、実施地域を担当する社会福祉法人との間で入居及び見守り・生活相談等のサービスの契約締結及び確認を行い、4入居後に実施地域を担当する社会福祉法人がサービスを提供する、という流れとなる。社会福祉法人と「すこやか賃貸住宅協力店」との協力・連携が特徴的で、協議会でなければ実現が困難な事業であり、全国的にも注目されている。

事業の運営に当たっては、協議会の構成団体の一つである京都市老人福祉施設協議会が協議会(平成28年度までは京都市福祉部局)から運営業務(事務局)を受託。平成29年度には2社会福祉法人(2施設)・5不動産事業者が新たに参画し、17学区(2行政区)の対象地域拡大を図ることができ、現在は10社会福祉法人(11施設)・11不動産仲介事業者が72学区(7行政区)で事業を展開しており、平成30年1月31日現在で、相談件数は延べ約1,200件、うち70件が成約に至っている。

また、事業を円滑に実施するための実務担当者会議として、事業を実施している社会福祉法人・すこやか賃貸住宅協力店と行政が出席する作業部会を隔月で開催することとしている。各施設での事例等についての情報共有・意見交換が、この事業に対する認識の共有に大きく役立っており、協議会の事業となって初めて開催した5月の作業部会では、サービスの内容等について、これまでのモデル事業での経験を踏まえた新たな提案が出されるなど、活発な意見交換が行われ、事業を継続していく上での重要な会議となっている。

【作業部会の様子】

4 その3~高齢期の住まいの相談会~

協議会のメンバーである、不動産・福祉・行政の3者でチームを組み、1組の相談者に対応する相談会を年4回開催している。高齢者からの多様な相談内容に対し、各分野の専門家がワンストップで的確な情報提供を行っている。

相談理由としては、1今後に備えた住み替え先の情報収集のため、2足腰の衰えなどの身体上の不安のため、といったものが多く、この2つで全体の半数近くを占めている。これらの相談に対し「すこやか賃貸住宅」や「高齢者すまい・生活支援事業」の情報提供はもちろんのこと、1公営住宅やUR等の安価な賃貸住宅、2サービス付き高齢者向け住宅等の高齢者向け住宅の紹介、3賃貸借契約、4介護保険制度の説明等を行っている。

5 今後の展開

今後は、「すこやか賃貸住宅」及び「すこやか賃貸住宅協力店」については登録件数を増加させ、「高齢者すまい・生活支援事業」では京都市内全域での事業実施を目指し、さらなる対象地域の拡大を図っていく。そのため、不動産仲介事業者や社会福祉法人への働きかけ、協議会の事業に対する市民の認知度を高める取組をさらに進めていく。

特に「高齢者すまい・生活支援事業」は、高齢者の住まいの確保だけでなく、住み替え後の生活に密接に関わるものであるため、相談者や利用者からの声、サービスを提供する社会福祉法人からの声を生かし、高齢者に寄り添った事業に発展させていく必要がある。家主にとって高齢者の入居にあたり不安低減につながるサービス、高齢者にとって入居後の見守り等の生活を支援するサービス、これらのサービスの充実を図っていくことが、住宅と福祉の連携の強化につながり、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができる社会に近づくものと考えている。

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