第3章 平成30年度高齢社会対策(第2節 3)
第2節 分野別の高齢社会対策(3)
3 学習・社会参加
(1)学習活動の促進
ア 学校における多様な学習機会の提供
(ア)初等中等教育機関における多様な学習機会の確保
児童生徒が高齢社会の課題や高齢者に対する理解を深めるため、学習指導要領に基づき、小・中・高等学校におけるボランティアなど社会奉仕に関わる活動や高齢者との交流等を含む体験活動の充実を図っている。
(イ)高等教育機関における社会人の学習機会の提供
生涯学習のニーズの高まりに対応するため、大学においては、社会人入試の実施、夜間大学院の設置、昼夜開講制の実施、科目等履修生制度の実施、長期履修学生制度の実施などを引き続き行い、履修形態の柔軟化等を図って、社会人の受入れを一層促進する。
また、大学等が、その学術研究・教育の成果を直接社会に開放し、履修証明プログラムや公開講座を実施するなど高度な学習機会を提供することを促進する。
放送大学においては、テレビ・ラジオ放送やインターネットなどの身近なメディアを効果的に活用して、幅広く大学教育の機会を国民に提供する。
また、高等教育段階の学習機会の多様な発展に寄与するため、短期大学卒業者、高等専門学校卒業者、専門学校等修了者で、大学における科目等履修生制度などを利用し一定の学習を修めた者については、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構において審査の上、「学士」の学位授与を行う。
(ウ)学校機能・施設の地域への開放
児童生徒の学習・生活の場であり、地域コミュニティの拠点でもある公立学校施設の整備に対し国庫補助を行うとともに、学校施設整備指針を示すこと等により、学校開放に向けて、地域住民の積極的な利用を促進するような施設づくりを進めていく。
また、小・中学校の余裕教室について、引き続き、地方公共団体が社会教育施設やスポーツ・文化施設などへの転用を図れるよう、取組を支援していく。
(エ)学習成果の適切な評価の促進
高齢者を含めた一人一人の生涯にわたる学習活動の成果が適切に評価され、企業・学校・地域等での社会的な活用につながるようにすることが重要である。中央教育審議会答申(個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について(平成28年5月))を受け、様々な学習活動の成果が適切に評価される社会の実現に向け、「検定事業者による自己評価・情報公開・第三者評価ガイドライン」(平成29年10月)を踏まえた、検定試験の自己評価や第三者評価の普及・定着を図り、検定試験の質の保証・社会的活用の促進等を行う。
イ 社会における多様な学習機会の提供
(ア)社会教育の振興
地域住民の身近な学習拠点である公民館を始めとする社会教育施設等において、幅広い年齢層を対象とした多様な学習機会の充実を促進する。
また、高齢化問題等の地域の様々な現代的課題について、行政、企業、NPO、各種団体等で社会教育に携わる者が幅広く集まり、学びを通じた実践的な解決方策を検討するための研究協議会を開催し、地域課題解決の取組の普及・啓発を図る。
(イ)文化活動の振興
国民文化祭の開催等による幅広い年齢層を対象とした文化活動への参加機会の提供、国立の博物館等における高齢者に対する優遇措置やバリアフリー化等による芸術鑑賞機会の充実を通じて多様な文化活動の振興を図る。
(ウ)スポーツ活動の振興
いつまでも健康で活力に満ちた長寿社会を実現するため、「スポーツによる地域活性化推進事業」を行い、スポーツを通じた地域の活性化を推進するとともに、「体育の日」を中心とした体力テストやスポーツ行事の実施等、各種機会を通じて多様なスポーツ活動の振興を図る。
(エ)自然とのふれあい
国立公園等の利用者を始め、国民の誰もが自然とふれあう活動が行えるよう、自然ふれあい施設や体験活動イベント等の情報をインターネット等を通じて提供する。
ウ 社会保障等の理解促進
老後資産の確保の観点から、若年期から金融リテラシーを習得できるよう、iDeCo制度やつみたてNISA等の導入も踏まえ、勤労世代にとって身近な場である職場を通じた投資教育の推進を図る。
平成29年3月に改訂した中学校学習指導要領の社会科や技術・家庭科、平成30年3月に改訂した高等学校学習指導要領の公民科や家庭科において、少子高齢社会における社会保障の充実・安定化や介護に関する内容などが明記されたことを踏まえ、その周知を行う。
さらに、若い世代が高齢社会を理解する力を養うため、教職員を対象とした研修を実施するなど、教育現場において社会保障教育が正しく教えられる環境づくりに取り組む。
より公平・公正な社会保障制度の基盤となるマイナンバー制度については、情報連携の本格運用に伴い、介護保険を始めとした高齢者福祉に関する手続を含む事務において、従来必要とされていた住民票の写しや課税証明書等の書類が不要となっている。こうしたマイナンバー制度の取組状況について、地方公共団体等とも連携し、国民への周知・広報を行う。
エ ICTリテラシーの向上
平成29年11月から、情報通信審議会「IoT新時代の未来づくり検討委員会」の下に設置した「高齢者サブワーキンググループ」において、IoT、AI等が日常生活、職場や公共空間に広く浸透する時代を見据え、高齢者がICTを活用した社会参加を促すための具体策について検討し、ICT利活用を学ぶための環境整備や日常生活を支援するための技術開発などの提言を踏まえた具体的な取組を推進していくこととしている。
オ ライフステージに応じた消費者教育の取組の促進
消費者教育の推進に関する法律(平成24年法律第61号)に基づき設置された消費者教育推進会議における議論を踏まえて見直しが行われ、平成30年3月に変更について閣議決定がなされた「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(平成25年6月閣議決定)を指針として、消費者教育を推進する。具体的には、様々なライフステージに応じて生涯を通じた切れ目のない学びの機会を提供するため、消費生活センターを消費者教育の拠点として位置付け、消費者教育を担う多様な関係者や場をつなぐために間に立って調整をする役割を担うコーディネーターの育成・配置の促進に向けた支援などの取組を行う。
(2)社会参加活動の促進
ア 多世代による社会参加活動の促進
(ア)高齢者の社会参加と生きがいづくり
高齢者の生きがいと健康づくり推進のため、地域を基盤とする高齢者の自主的な活動組織である老人クラブ等や都道府県及び市町村が行う地域の高齢者の社会参加活動を支援する。また、国民一人ひとりが積極的に参加し、その意義について広く理解を深めることを目的とした「全国健康福祉祭(ねんりんピック)」を平成30年11月に富山県で開催する。また、平成29年3月に改正された「社会教育法」(昭和24年法律第207号)を踏まえ、高齢者等の幅広い地域住民や企業・団体等の参画により、地域と学校が連携・協働して、学びによるまちづくり、地域人材育成、郷土学習、放課後等における学習・体験活動など、地域全体で未来を担う子供たちの成長を支え、地域を創生する「地域学校協働活動」を全国的に推進する。加えて、高齢者がこれからの子供たち等の教育として注目されているプログラミング教育などに参画し、多世代間でICT利活用に関するスキルを学び合う機会を創出する地域活動を促進する。
さらに、企業退職高齢者等が、地域社会の中で役割を持って生き生きと生活できるよう、有償ボランティア活動による一定の収入を得ながら自らの生きがいや健康づくりにもつながる活動を行い、同時に介護予防や生活支援のサービス基盤となる活動を促進する「高齢者生きがい活動促進事業」を実施する。この事業については、地域支援事業の充実等に伴い配置される生活支援コーディネーターや協議体の活動により、浮き彫りになった地域課題の解決のために創出された「住民主体によるサービス」に資する活動や、地域共生社会の推進に向け、高齢者等が主体となり、多世代交流等の「共生の居場所づくり」に資する活動にも対応できるように拡充する。
加えて、高齢者を含む誰もが旅行を楽しむことができる環境を整備するため、ユニバーサルツアー商品化促進に向けて、有望コンテンツの調査を行い、経済活性化に資する旅行商品を検証することで、ユニバーサルツーリズムの更なる促進を図る。さらに、高齢者を含む訪日外国人旅行者の安全・安心を確保するため、旅館・ホテルにおけるバリアフリー化への改修の支援を実施する。
また、地域の社会教育を推進するため、社会教育主事等の専門的職員の養成等を図る。
(イ)国立公園におけるユニバーサルデザインの推進
国立公園において、主要な利用施設であるビジターセンター、園路、公衆トイレ等についてユニバーサルデザイン化や情報発信の充実等により、高齢者にも配慮した環境の整備を推進する。
(ウ)医療・介護・健康分野におけるICT利活用の推進
少子高齢化の進展や疾病構造の変化、これに伴う社会保障費の増大など我が国の医療・介護を取り巻く環境は大きく変化してきている。こうした中、ICTの活用による地域の医療機関、介護事業者等のネットワーク化とともに、個人が自らの医療・介護・健康データを管理、活用できる環境を実現し、個人が良質な医療・介護・健康サービスを享受することを通じて、国民の健康寿命が延伸する「健康長寿社会」の構築を図るべく、個人の医療・介護・健康情報を時系列的に管理できるPHR(Personal Health Record)機能の実現に向けた取組や、医療機関と介護施設の連携、医療機関と個人の連携(オンライン診療等)におけるデータ流通のルール作りに資する技術課題の解決等に向けた実証等を行う。
(エ)高齢者の余暇時間等の充実
高齢者等がテレビジョン放送を通じて情報アクセスの機会を確保できるよう、平成30年2月に策定した「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」を踏まえ、引き続き、放送事業者の自主的な取組を促すとともに、字幕番組、解説番組及び手話番組の制作等に対する助成を行うこと等により、字幕放送、解説放送及び手話放送の拡充を図っていく。あわせて、字幕付きCM番組の普及についても、字幕付きCM普及推進協議会と連携して取り組んでいく。
高齢者の社会参加や世代間交流を促進するため、東京及び地方都市において「高齢社会フォーラム」を開催する。同フォーラムを通じて、年齢にとらわれず自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送る高齢者(エイジレス・ライフ実践者)や社会参加活動を積極的に行っている高齢者の団体等を紹介する。
イ 市民やNPO等の担い手の活動環境の整備
市民やNPO等の活動環境を整備するため、特定非営利活動促進法の適切な運用を推進する。また、市民活動に関する情報の提供を行うための内閣府NPOホームページや、ポータルサイト等の情報公開システムの機能向上に取り組む。
さらに、多様な個人が能力を発揮しつつ、自立して共に社会に参加し、支え合う「共生社会」を築いていくため、地域住民や非営利団体、行政機関等による取組の充実が必要不可欠であるという認識のもと、地域課題対応人材育成事業「地域コアリーダープログラム」を実施する。高齢者関連分野の日本青年実務者9名をドイツに派遣するとともに、ドイツ、フィンランド及びニュージーランドから高齢者関連分野の青年リーダー9名を招へいし、それぞれ各地域で同じ課題に取り組む青年同士の交流を促し、高齢者関係機関及び施設の訪問並びに意見交換などを行う。
また、豊富な知識、経験、能力を有し、かつ途上国の社会や経済の発展に貢献したいというボランティア精神を有する中高年齢者が、海外技術協力の一環として、途上国の現場で活躍できるよう、JICAボランティア事業を独立行政法人国際協力機構を通じ引き続き推進する。